最後に(20220526 更新)
2022年3月31日 Card of the Day コメント (2) 今までたくさんの人に読んでもらえてありがとうございました。楽しかったです。個々のフォローしてる方々については別記事であらかた書いたので省略。画像の貼り付けで困ったり、書き間違えて日記全部が太文字になったり、とか色々あったけどこのDiarynoteという簡潔な仕組みはとても好みでした。運営の方へあらためて感謝を。
というわけであとはよしなしごと。31日以降も書き込んでく予定。ほぼ人は来なくなるだろうから、主に自分のために(関係ないけど「自分のために、自分が楽しむために」を大事にしてたから続けられたんだと思う。やっぱり反応があるかないかを主軸にすると、継続できるかが他人任せになってしまうので)
中東に赴任してた頃に始めたこのDiarynoteもサービス終了。日本に帰ってきてからもう10年以上(!)も経つのか。このブログの名前の由来も中東に住んでたのが由来になってる。個人的には気に入ってる。
日本に帰ってきたタイミングで「アラビア湾が見えるよ」から「アラビア湾が見えたよ」にした。文字の上に打ち消しを重ねる方法を色々模索した。背景画像にもタイトルを文字で入れたら、ブラウザ環境次第で字がズレてしまうことをコメントで指摘されて、今は実はシステム上のタイトルはピリオド( . )になってる。
このブログを始めたきっかけをちゃんと書いてなかった。以前、翻訳記事のまとめの中でこんなことを書いてた。
というわけで書いてみる。
会社に入って最初の数年は海外出張が多かった。そして海外出張中は忙しい時間とそうじゃない時間の差が激しかった。忙しい時間は当然仕事するとして、忙しくない時間は何してたかというとネットサーフィンしてた。
当時は学生時代の頃に遊んだマジック・ザ・ギャザリングが趣味の結構な割合をまだ占めてて、プレイする機会は減りつつも新セット情報をチェックしたり、デッキを考えたりすることは楽しかった。
そんなわけでネットサーフィンも主にマジック関連の情報を調べることが多かった……気がする。さすがにもう月日が経ちすぎてて当時の詳細は思い出せない。
ああ、少し思い出した。マジック以外では毎日更新されるネットの日記(当時はまだブログという言葉がなかった)や侍魂のような形式のテキストサイトを読み漁ってた気がする。多分。ろじっくぱらだいすとか読んでた(調べたらまだ続いてた。23周年だそうな。すごい)
何にせよ、時間つぶしがてら長々と読めるマジック関連のネット記事がないものかとネットの海を探索してて見つけたのが abomination.jp だった(確かそこからリンクを飛ぶ形で Braingeyser も見つけたんだっけ……ダメだ記憶が怪しい)。
abomination.jp を見つけたというより、マジックの小ネタが日めくりカレンダーのように並んでいるページを見つけて「これは長く時間がつぶせそうだぞ」と楽しませてもらってた。
最初は個人が自分で更新しているページかと思ってたんだけど、たまに訳者による注記みたいなものが挟まれてて「あれ? 公式なのか?」と少し混乱したりしながら読んでた。あと注記だけでなく「再登場」だけで終えてる日もあったり。
Faded Notes: MagicTheGathering.com記事 ── "Card of the Day"
http://abomination.jp/empire/misc.shtml
正直、どのタイミングで「ああ、これ公式で連載しているミニコラムの私訳なのか」と気づいたのかよく覚えてない。とにかくこの「2002年02月 ~ 2007年03月」の Card of the Day の私訳サイトがあったことが、この「アラビア湾が見えたよ」を始めるきっかけになったことだけは間違いない。
この abomination.jp でも触れられている有志によるMTG記事翻訳サイトが Braingeyser であり、同じくこのブログを始めるきっかけになっている。
Braingeyser
http://web.archive.org/web/20080511182042/http://braingeyser.at.infoseek.co.jp/index.html
Braingeyser の翻訳記事が面白くて繰り返し読み返すうちに、ようやくこのサイトが生まれた経緯(2ちゃんねるのスレッドに有志が勝手に翻訳をアップしてそれをまとめるために生まれたサイト)に気づき、元となっているスレッドがどうなっているのか気になって見に行った。
そうしたら一応スレッドは閑散としつつも生き延びていた。
そこで、どういう流れで始まったのかよく覚えてないけど「Zvi が書いた『歴代トップ50のアーティファクト』が中途半端にしか訳されてないから残りをみんなで訳し切ろうぜ」みたいなことになった。
手元に残ってるテキストファイルによると2009年の4~6月に歴代50個のうちの15個くらいを訳してたらしい。このころ、最初のうちは名無しで書き込み、途中から re-giant と名乗りだした。
MTG Sideboard Online 日本語版スレまとめ
http://blog.livedoor.jp/sideboard_online/
そのうち「The Top 50 Artifacts of All Time」も無事みんなで訳し終えて、また場が閑散としてきて、場つなぎ的に1人で Card of the Day の訳を始めて、それもまた滞り始めて(理由は覚えてない)。上記のスレの最後は 2009/10/21(水) だったもよう。
この Diarynote のブログを始めたのは 2010年11月(実際に更新したのは12月04日)からなので結構あいだが空いてる。何があったんだっけな。
手元にあるテキストファイルを漁ると、2009年12月や2010年02月も Card of the Day を訳してたっぽいから、過去ログが残ってないだけで2009年の年末から2010年の年始も上記スレにアップしてたのかもしれない。
ただ2010年の春から秋にかけてはほとんど翻訳してた形跡がないからここは他のことに時間を使ってたんだろうな。そういえば自分の個人サイト(非Diarynote)のほうに翻訳をアップしてたかも。2010年の秋ごろ。
確か硫酸さん(当時は名前が違ったかも。りゅ~さんだっけか)のコメント欄に「訳してみました」とアップした翻訳のHTMLを貼り付けた記憶がある。硫酸さんが過去日記消してるから確認するすべがない。
その後、外部ユーザとして関東の遅刻魔さんとかのコメント欄に書き込みつつ、2chの翻訳スレに書き込みつつ、2010年の12月頭くらいに Diarynote を開始してる(12月01日の日記にペンティーノさんから「始められたのですね」とコメントもらってた)。
始めた頃はたまに Card of the Day 以外の「日記」も書いてて、丁寧語で書いてた。何年か経ってから「なんか雰囲気違うな」と口調をあらためたバージョンに置き換えた。(続く……かもしれない)
というわけであとはよしなしごと。31日以降も書き込んでく予定。ほぼ人は来なくなるだろうから、主に自分のために(関係ないけど「自分のために、自分が楽しむために」を大事にしてたから続けられたんだと思う。やっぱり反応があるかないかを主軸にすると、継続できるかが他人任せになってしまうので)
中東に赴任してた頃に始めたこのDiarynoteもサービス終了。日本に帰ってきてからもう10年以上(!)も経つのか。このブログの名前の由来も中東に住んでたのが由来になってる。個人的には気に入ってる。
日本に帰ってきたタイミングで「アラビア湾が見えるよ」から「アラビア湾が見えたよ」にした。文字の上に打ち消しを重ねる方法を色々模索した。背景画像にもタイトルを文字で入れたら、ブラウザ環境次第で字がズレてしまうことをコメントで指摘されて、今は実はシステム上のタイトルはピリオド( . )になってる。
このブログを始めたきっかけをちゃんと書いてなかった。以前、翻訳記事のまとめの中でこんなことを書いてた。
Card of the Day の翻訳を始めたのにはさらに Abomination.jp というサイトの存在も大きかったけど、ただでさえ逸れている話がさらに話が逸れてしまうので省略。
https://regiant.diarynote.jp/201907150102437512/
というわけで書いてみる。
会社に入って最初の数年は海外出張が多かった。そして海外出張中は忙しい時間とそうじゃない時間の差が激しかった。忙しい時間は当然仕事するとして、忙しくない時間は何してたかというとネットサーフィンしてた。
当時は学生時代の頃に遊んだマジック・ザ・ギャザリングが趣味の結構な割合をまだ占めてて、プレイする機会は減りつつも新セット情報をチェックしたり、デッキを考えたりすることは楽しかった。
そんなわけでネットサーフィンも主にマジック関連の情報を調べることが多かった……気がする。さすがにもう月日が経ちすぎてて当時の詳細は思い出せない。
ああ、少し思い出した。マジック以外では毎日更新されるネットの日記(当時はまだブログという言葉がなかった)や侍魂のような形式のテキストサイトを読み漁ってた気がする。多分。ろじっくぱらだいすとか読んでた(調べたらまだ続いてた。23周年だそうな。すごい)
何にせよ、時間つぶしがてら長々と読めるマジック関連のネット記事がないものかとネットの海を探索してて見つけたのが abomination.jp だった(確かそこからリンクを飛ぶ形で Braingeyser も見つけたんだっけ……ダメだ記憶が怪しい)。
abomination.jp を見つけたというより、マジックの小ネタが日めくりカレンダーのように並んでいるページを見つけて「これは長く時間がつぶせそうだぞ」と楽しませてもらってた。
最初は個人が自分で更新しているページかと思ってたんだけど、たまに訳者による注記みたいなものが挟まれてて「あれ? 公式なのか?」と少し混乱したりしながら読んでた。あと注記だけでなく「再登場」だけで終えてる日もあったり。
Faded Notes: MagicTheGathering.com記事 ── "Card of the Day"
http://abomination.jp/empire/misc.shtml
正直、どのタイミングで「ああ、これ公式で連載しているミニコラムの私訳なのか」と気づいたのかよく覚えてない。とにかくこの「2002年02月 ~ 2007年03月」の Card of the Day の私訳サイトがあったことが、この「アラビア湾が見えたよ」を始めるきっかけになったことだけは間違いない。
この abomination.jp でも触れられている有志によるMTG記事翻訳サイトが Braingeyser であり、同じくこのブログを始めるきっかけになっている。
Braingeyser
http://web.archive.org/web/20080511182042/http://braingeyser.at.infoseek.co.jp/index.html
Braingeyser の翻訳記事が面白くて繰り返し読み返すうちに、ようやくこのサイトが生まれた経緯(2ちゃんねるのスレッドに有志が勝手に翻訳をアップしてそれをまとめるために生まれたサイト)に気づき、元となっているスレッドがどうなっているのか気になって見に行った。
そうしたら一応スレッドは閑散としつつも生き延びていた。
そこで、どういう流れで始まったのかよく覚えてないけど「Zvi が書いた『歴代トップ50のアーティファクト』が中途半端にしか訳されてないから残りをみんなで訳し切ろうぜ」みたいなことになった。
手元に残ってるテキストファイルによると2009年の4~6月に歴代50個のうちの15個くらいを訳してたらしい。このころ、最初のうちは名無しで書き込み、途中から re-giant と名乗りだした。
MTG Sideboard Online 日本語版スレまとめ
http://blog.livedoor.jp/sideboard_online/
そのうち「The Top 50 Artifacts of All Time」も無事みんなで訳し終えて、また場が閑散としてきて、場つなぎ的に1人で Card of the Day の訳を始めて、それもまた滞り始めて(理由は覚えてない)。上記のスレの最後は 2009/10/21(水) だったもよう。
この Diarynote のブログを始めたのは 2010年11月(実際に更新したのは12月04日)からなので結構あいだが空いてる。何があったんだっけな。
手元にあるテキストファイルを漁ると、2009年12月や2010年02月も Card of the Day を訳してたっぽいから、過去ログが残ってないだけで2009年の年末から2010年の年始も上記スレにアップしてたのかもしれない。
ただ2010年の春から秋にかけてはほとんど翻訳してた形跡がないからここは他のことに時間を使ってたんだろうな。そういえば自分の個人サイト(非Diarynote)のほうに翻訳をアップしてたかも。2010年の秋ごろ。
確か硫酸さん(当時は名前が違ったかも。りゅ~さんだっけか)のコメント欄に「訳してみました」とアップした翻訳のHTMLを貼り付けた記憶がある。硫酸さんが過去日記消してるから確認するすべがない。
その後、外部ユーザとして関東の遅刻魔さんとかのコメント欄に書き込みつつ、2chの翻訳スレに書き込みつつ、2010年の12月頭くらいに Diarynote を開始してる(12月01日の日記にペンティーノさんから「始められたのですね」とコメントもらってた)。
始めた頃はたまに Card of the Day 以外の「日記」も書いてて、丁寧語で書いてた。何年か経ってから「なんか雰囲気違うな」と口調をあらためたバージョンに置き換えた。(続く……かもしれない)
【Diarynoteのまとめ:その4】翻訳してきた記事を紹介する2
2022年3月24日 翻訳のまとめ コメント (2) 気に入った奴を紹介していこうと思ってたけどもう最後だし片っ端から紹介というか感想を書いていくことにする。需要があるかないかはもう知らない。
■2011年03月05日
【翻訳】ヴァンパイアに聞いてみよう!/Interview With Some Vampires【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103050019455223/
1つ前のゾンビの記事に続いて種族ネタ。マジック界にその名を知られたヴァンパイアたちによる座談会形式なので、ヴァンパイアそれぞれの個性が出るように一人称や口調を変えてみたり、カードテキスト紹介や太字処理などを入れてたら文字数制限をオーバーしたり、色々大変なことが多くて楽しかった。
内容としては、ヴァンパイアという種族カードの作ることの難しさ、競合する黒の種族であるデーモンの特徴、ヴァンパイアの未来について。
ちなみにこれが書かれたのは2006年なので、小粒のヴァンパイアがわんさか登場するイニストラードの世界は想定されていない。そこら辺のギャップも今読むと面白いかもしれない。
■2011年03月12日
【翻訳】ガンスリンガーじゃない、スペルスリンガーさ/Spellslinging【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103130139077253/
大会などのサイドイベントなどで主催者側のメンバーが来場者と次々と対戦するイベントについて紹介している記事。この1人のプレイヤーが次々と相手を変えて対戦し続ける形式を元々は「ガンスリンガー」と呼んでいたらしい。
そういうとき主催者側としてどんなデッキを使うべきか。Tier1のガチデッキを使うと初心者が楽しめないし、観客も楽しめない。じゃあどんなデッキが適切か……みたいな話。
■2011年03月19日
【翻訳】史上初の大乱闘戦について/Lost in the Shuffle: Grand Melee【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103220228564336/
マジックにいくつかある多人数対戦ヴァリアントルールの1つ、大乱闘戦に関する記事。プレイヤーたちは輪になって座り、自分からみて左側にのみ攻撃できる。呪文や効果は2席離れたプレイヤーにまでしか届かない。そんなフォーマット。
また多人数戦フォーマットを作るときに気を付けるべき点についても触れられている(生き延びることを主体にしたデッキばかりになるとつまらない、とか)
余談。Richard Garfield氏のメタゲームに関する記事がそこそこ反響あったので、それと同じく過去に Richard Garfield氏が過去に訳した記事を(2匹目のドジョウを狙って)訳した記事だった気がする。そして全然読まれなかった記憶がある。
■2011年03月26日
【翻訳】カードアドバンテージとは?:初級編/Card Advantage: A Brief Overview【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103292002351011/
カードアドバンテージについて書かれた記事。かなり初級編だけど個人的にはかなり勉強になった。そもそもカードアドバンテージとはなんぞや、から始まって、カードの質(Card Quality)によるアドバンテージと、カードアドバンテージ(Card Advantage)の違いやゲーム開始前に得られるカードアドバンテージについても触れられている。
マジックに限定されない内容なので他TCGプレイヤーの人でも楽しめるのでは、と思う……けど、そういう人がこの文章を読む可能性は限りなくゼロに近いので書いてもしょうがない気もする(でも書く)。
■2011年04月02日
【翻訳】ミラディン軍、おせっかいを焼かれるの巻/Mirran Meddling【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104152100134979/
ミラディン包囲戦の開発が4分の3ほど過ぎていたにも関わらずセットがイマイチ魅力的でないと開発リーダーが感じており、それを打破するべくどんな手がとられたか、という記事。
こんな風に上手く改善できたよ、という内容ばかりなので開発部の自画自賛を読まされているような気分にならないとも限らないけど、簡潔に書かれているのでそうでもない。
余談。今見ても記事のレイアウトにかなり苦心惨憺(くしんさんたん)したあとが見られる。引用ボックスと青文字と斜体と……などなど大量にフォントをいじってる。
あとひみつ日記によると「本命はこの次」とある。どうやらこの次の記事が本当は訳したかった記事で、ただそれを紹介するためにはこっちも訳さないといけない、ってことだった……のかな。たぶん。
さらに余談。この頃は公式サイトで週に一度更新される「Latest Development」(担当者:Tom LaPille)を毎週すぐに訳してた(元記事がアップされたのが02月25日で、拙訳のアップが04月02日)。なんでそんなこと始めたのかはよく覚えてない。本当にすることが無かったのかもしれない。
■2011年04月09日
【翻訳】戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104100753293540/
「Multiverse」と呼ばれるマジックのセットを制作するのに用いられている意見交換用のデータベース(コメント交わすチャットのようなもので、今でいうSlack的なもの?)に残されたコメントをネタにした、定期的に書かれるタイプの記事。
今回はミラディン包囲戦の開発時に残されたコメントの中から筆者(Tom LaPille)が面白いと感じたものを紹介している。
余談。ひみつ日記によると、03月18日の記事を04月09日に訳し終えたのでは時間をかけすぎ、とか、レイアウトに凝り過ぎて逆に読みづらくなっている気がする、とか当時の感想が色々書いてある。自分でもすっかり忘れてるので、もっとこういう感想を残しておいて欲しかったよ、過去の自分。
さらに余談。コメント欄の自分の書き込みによると「十字軍のバランス調整のくだりが面白かったので訳したくなった」らしい。なるほど。そしてこの記事を訳すなら1つ前のも訳しておいたほうがよい、と思ったのかな。たぶん。
■2011年04月16日
【翻訳】ファイレクシア化は道半ば/Halfway Compleated【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104210641077594/
2つ前の記事で、ミラディン包囲戦のミラディン陣営のカード開発に関する裏話が紹介されていた。そしてこれがファイレクシア陣営のカード開発の裏話。
こういう「このカードはこういう経緯で生まれた、こういう背景があってこの効果になった」という解説を読むのは好きなので、訳すのも楽しかった(気がする)。
余談。ひみつ日記によると「訳してたら、ミラディン陣営の記事へのリンクがあったので、まあ、仕方ないかとそっちも訳してみた。もっと言うとボール・ライトニングのくだりが紹介したかっただけ」とある。なるほどねえ(すっかり忘れてる)
■2011年04月23日
【翻訳】新セットの情報流出元について/New Phyrexia Leaks【DailyMTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104291459494870/
新セットの情報がリークされ、そのリーク元が明らかになった(そしてリークしたプレイヤーに処罰が与えられた)、という記事。マジック界隈でそこそこ話題になってたので(短いこともあり)すぐ訳してみた。そしたら、公式サイトにも邦訳があがってたので、こっちの拙訳は取り下げた(コメントで気づいた)
そしてこの日記で気づいたけど、そういえば「日記として上げた日付」と実際にアップした日付って違うんだった。当時は「平日は Card of the Day」「日曜日は週のまとめ」として使ってたので、土曜日を翻訳記事アップ用の曜日にしてた。何かを訳したら直近の土曜日に上げる、という感じ。
今調べたら、この記事の原文は04月28日にあがってて、04月29日に自分があげて、同日にもう日本語公式サイトにも邦訳があがってた。
■2011年04月30日
【翻訳】吸血いっとく?/Care for a Bite?【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201105011719012769/
2回目のヴァンパイア週間 (註)ということで書かれたヴァンパイア種族ネタのコラム(2回目)。コラム内でも「前に1回、ヴァンパイアネタやったね」とリンクが張ってある。Mark Rosewater による種族ネタの記事はハズレがないので訳してきた記事の中でも比較的おススメ。
ちなみに2回目のヴァンパイア週間が開催された理由は、新セットのゼンディカー(2009年)でヴァンパイアという種族がまた取り上げられることになったため。
余談。MTG Wikiでゼンディカーのヴィンテージカード(宝物カード)(註)について触れられてて、そんなことあったなあ、と懐かしく思い出した。この「過去に出たカードを詰め直しただけで刷り直したわけではない(だから再録禁止に引っかからない)」というウルトラC(死語?)な手段は本当に驚いた。
■2011年05月14日
【翻訳】マイク・フローレスのカード4段階評価
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201105301242053537/
なぜ訳したのかの理由が冒頭で説明されてるけど、正直なんでわざわざ訳したのかよく分からない。正直それほど需要がある(あった)とも思えない。もしかしたら他の方がフローレスのカード評価を訳してて、そこで使われてる「4段階評価」について解説しようと思ったのかもしれない。
■2011年03月05日
【翻訳】ヴァンパイアに聞いてみよう!/Interview With Some Vampires【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103050019455223/
1つ前のゾンビの記事に続いて種族ネタ。マジック界にその名を知られたヴァンパイアたちによる座談会形式なので、ヴァンパイアそれぞれの個性が出るように一人称や口調を変えてみたり、カードテキスト紹介や太字処理などを入れてたら文字数制限をオーバーしたり、色々大変なことが多くて楽しかった。
内容としては、ヴァンパイアという種族カードの作ることの難しさ、競合する黒の種族であるデーモンの特徴、ヴァンパイアの未来について。
ちなみにこれが書かれたのは2006年なので、小粒のヴァンパイアがわんさか登場するイニストラードの世界は想定されていない。そこら辺のギャップも今読むと面白いかもしれない。
■2011年03月12日
【翻訳】ガンスリンガーじゃない、スペルスリンガーさ/Spellslinging【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103130139077253/
大会などのサイドイベントなどで主催者側のメンバーが来場者と次々と対戦するイベントについて紹介している記事。この1人のプレイヤーが次々と相手を変えて対戦し続ける形式を元々は「ガンスリンガー」と呼んでいたらしい。
そういうとき主催者側としてどんなデッキを使うべきか。Tier1のガチデッキを使うと初心者が楽しめないし、観客も楽しめない。じゃあどんなデッキが適切か……みたいな話。
■2011年03月19日
【翻訳】史上初の大乱闘戦について/Lost in the Shuffle: Grand Melee【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103220228564336/
マジックにいくつかある多人数対戦ヴァリアントルールの1つ、大乱闘戦に関する記事。プレイヤーたちは輪になって座り、自分からみて左側にのみ攻撃できる。呪文や効果は2席離れたプレイヤーにまでしか届かない。そんなフォーマット。
また多人数戦フォーマットを作るときに気を付けるべき点についても触れられている(生き延びることを主体にしたデッキばかりになるとつまらない、とか)
余談。Richard Garfield氏のメタゲームに関する記事がそこそこ反響あったので、それと同じく過去に Richard Garfield氏が過去に訳した記事を(2匹目のドジョウを狙って)訳した記事だった気がする。そして全然読まれなかった記憶がある。
■2011年03月26日
【翻訳】カードアドバンテージとは?:初級編/Card Advantage: A Brief Overview【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201103292002351011/
カードアドバンテージについて書かれた記事。かなり初級編だけど個人的にはかなり勉強になった。そもそもカードアドバンテージとはなんぞや、から始まって、カードの質(Card Quality)によるアドバンテージと、カードアドバンテージ(Card Advantage)の違いやゲーム開始前に得られるカードアドバンテージについても触れられている。
マジックに限定されない内容なので他TCGプレイヤーの人でも楽しめるのでは、と思う……けど、そういう人がこの文章を読む可能性は限りなくゼロに近いので書いてもしょうがない気もする(でも書く)。
■2011年04月02日
【翻訳】ミラディン軍、おせっかいを焼かれるの巻/Mirran Meddling【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104152100134979/
ミラディン包囲戦の開発が4分の3ほど過ぎていたにも関わらずセットがイマイチ魅力的でないと開発リーダーが感じており、それを打破するべくどんな手がとられたか、という記事。
こんな風に上手く改善できたよ、という内容ばかりなので開発部の自画自賛を読まされているような気分にならないとも限らないけど、簡潔に書かれているのでそうでもない。
余談。今見ても記事のレイアウトにかなり苦心惨憺(くしんさんたん)したあとが見られる。引用ボックスと青文字と斜体と……などなど大量にフォントをいじってる。
あとひみつ日記によると「本命はこの次」とある。どうやらこの次の記事が本当は訳したかった記事で、ただそれを紹介するためにはこっちも訳さないといけない、ってことだった……のかな。たぶん。
さらに余談。この頃は公式サイトで週に一度更新される「Latest Development」(担当者:Tom LaPille)を毎週すぐに訳してた(元記事がアップされたのが02月25日で、拙訳のアップが04月02日)。なんでそんなこと始めたのかはよく覚えてない。本当にすることが無かったのかもしれない。
■2011年04月09日
【翻訳】戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104100753293540/
「Multiverse」と呼ばれるマジックのセットを制作するのに用いられている意見交換用のデータベース(コメント交わすチャットのようなもので、今でいうSlack的なもの?)に残されたコメントをネタにした、定期的に書かれるタイプの記事。
今回はミラディン包囲戦の開発時に残されたコメントの中から筆者(Tom LaPille)が面白いと感じたものを紹介している。
余談。ひみつ日記によると、03月18日の記事を04月09日に訳し終えたのでは時間をかけすぎ、とか、レイアウトに凝り過ぎて逆に読みづらくなっている気がする、とか当時の感想が色々書いてある。自分でもすっかり忘れてるので、もっとこういう感想を残しておいて欲しかったよ、過去の自分。
さらに余談。コメント欄の自分の書き込みによると「十字軍のバランス調整のくだりが面白かったので訳したくなった」らしい。なるほど。そしてこの記事を訳すなら1つ前のも訳しておいたほうがよい、と思ったのかな。たぶん。
■2011年04月16日
【翻訳】ファイレクシア化は道半ば/Halfway Compleated【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104210641077594/
2つ前の記事で、ミラディン包囲戦のミラディン陣営のカード開発に関する裏話が紹介されていた。そしてこれがファイレクシア陣営のカード開発の裏話。
こういう「このカードはこういう経緯で生まれた、こういう背景があってこの効果になった」という解説を読むのは好きなので、訳すのも楽しかった(気がする)。
余談。ひみつ日記によると「訳してたら、ミラディン陣営の記事へのリンクがあったので、まあ、仕方ないかとそっちも訳してみた。もっと言うとボール・ライトニングのくだりが紹介したかっただけ」とある。なるほどねえ(すっかり忘れてる)
■2011年04月23日
【翻訳】新セットの情報流出元について/New Phyrexia Leaks【DailyMTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201104291459494870/
新セットの情報がリークされ、そのリーク元が明らかになった(そしてリークしたプレイヤーに処罰が与えられた)、という記事。マジック界隈でそこそこ話題になってたので(短いこともあり)すぐ訳してみた。そしたら、公式サイトにも邦訳があがってたので、こっちの拙訳は取り下げた(コメントで気づいた)
そしてこの日記で気づいたけど、そういえば「日記として上げた日付」と実際にアップした日付って違うんだった。当時は「平日は Card of the Day」「日曜日は週のまとめ」として使ってたので、土曜日を翻訳記事アップ用の曜日にしてた。何かを訳したら直近の土曜日に上げる、という感じ。
今調べたら、この記事の原文は04月28日にあがってて、04月29日に自分があげて、同日にもう日本語公式サイトにも邦訳があがってた。
■2011年04月30日
【翻訳】吸血いっとく?/Care for a Bite?【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201105011719012769/
2回目のヴァンパイア週間 (註)ということで書かれたヴァンパイア種族ネタのコラム(2回目)。コラム内でも「前に1回、ヴァンパイアネタやったね」とリンクが張ってある。Mark Rosewater による種族ネタの記事はハズレがないので訳してきた記事の中でも比較的おススメ。
(註) ヴァンパイア週間
公式サイトでは(今はどうか知らないけど)毎週テーマを決めて、それにそった週間コラムが各曜日にあがってた(各曜日ごとにフレイバーに関するコラムとか開発部に関するコラムとか決まってた)。
ちなみに2回目のヴァンパイア週間が開催された理由は、新セットのゼンディカー(2009年)でヴァンパイアという種族がまた取り上げられることになったため。
余談。MTG Wikiでゼンディカーのヴィンテージカード(宝物カード)(註)について触れられてて、そんなことあったなあ、と懐かしく思い出した。この「過去に出たカードを詰め直しただけで刷り直したわけではない(だから再録禁止に引っかからない)」というウルトラC(死語?)な手段は本当に驚いた。
(註) ヴィンテージカード(宝物カード)
絶版カードの中でも特に貴重なカード(パワー9など)をそのまま最新セットであるゼンディカーのパックに放り込んであるもの。ゼンディカーが冒険の世界であり遺跡発掘などで宝物を獲得する世界観なのでそれを表現したかったらしい。普通に《Black Lotus》を引いた人とかいる、というとんでもない話。夢がある。
■2011年05月14日
【翻訳】マイク・フローレスのカード4段階評価
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201105301242053537/
なぜ訳したのかの理由が冒頭で説明されてるけど、正直なんでわざわざ訳したのかよく分からない。正直それほど需要がある(あった)とも思えない。もしかしたら他の方がフローレスのカード評価を訳してて、そこで使われてる「4段階評価」について解説しようと思ったのかもしれない。
【Diarynoteのまとめ:その3】翻訳してきた記事を紹介する1
2022年3月20日 翻訳のまとめ コメント (2) 気に入った奴を紹介していこうと思ってたけどもう最後だし片っ端から紹介というか感想を書いていくことにする。需要があるかないかはもう知らない。なおそれぞれ冒頭に記した日付はアップした日。
■2010年12月11日
【翻訳】刻印より出づるもの/Out of Imprint【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201012110110059581/
記念すべき(?)一番最初の「翻訳」カテゴリの日記。記憶が曖昧だけど翻訳スレ用に訳した奴を転載したやつだと思う。もう11年以上前か……この頃、小学生だった子がもう就職しててもおかしくないわけだ(実質、近い実例がいるけど)
ミラディンブロックで初登場した「刻印」というキーワード能力に関する記事。筆者は Tom LaPille 氏。この方の記事は Mark Rosewater 氏の次に訳してると思う。理由は彼が担当している Developmentコーナーの記事を毎週のように訳してた時期があるから。
記事の内容は「刻印」というキーワード能力の持つ特徴(欠点?)に関するもの。カード開発の裏話、特に反省点に関する記事は好きなので、この記事も結構好き。
■2010年12月23日
非動詞化な名詞もの/Nouns Unverbed : Magic Arcana
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201012241407286091/
翻訳記事というか、単なる休暇連絡を訳したもの。この頃はもう Card of the Day を訳すのを日課にしてたので、更新がしばらく空くことの背景を説明するついでに訳した……んだったっけ?(うろ覚え) これが翻訳カテゴリの2つ目の日記だった、というのは自分でも意外だった。
■2010年01月07日
時間旅行/Time Traveling : Daily MTG
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101100437461128/
また Tom LaPille 氏の記事。この頃はまだ「序文」とか「チームメンバーの紹介」とかを割愛する柔軟さが残ってたらしい。その後、翻訳精度の低さに対して、せめて記事全文を訳すくらいはするか、とメンバー紹介なども基本的に全部訳すようになった(そのせいでアップするまでにかかる時間が増えた)。
記事の内容はマスターズエディションというオンライン専用のセットに関するもの。ネットを拾い読みしただけだけど、そこまで評判が良かったわけでもないらしい。
マジックオンラインにお金を使ってない身としては、単に懐かしいカード名が多かったから、という理由と、ドラフトをどう想定して収録カードを決めたのかの解説が面白かったから、という理由で訳した(んだと思う、多分)
今みたらペンティーノさんからコメントもらってた。嬉しかっただろうな、当時の自分(さすがにその感情までは思い出せない)
■2011年01月12日
【翻訳】《 》の話。いや、だから《 》の話だよ。ほら、アンヒンジドのあいつ/Blankety-Blank【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101130407484233/
いまマジックをプレイしている人の何割が知ってるのか怪しいアンヒンジドというジョークセットに登場した名前を持たないカードに関する記事。
「Seinfeld(邦訳:となりのサインフェルド)」という人気海外ドラマがあったことはこの記事を訳して知った。後日、海外のゲームショップで、この「Seinfeld」を題材としたモノポリーを見かけて「へえ、これか。本当に人気ドラマなんだな」と思ったことをうっすら覚えてる。
文中で《Now I Know My ABC’s》とのコンボが紹介されてて「なるほど、そんなコンボが! AからZまで含む名前にしてしまえばいいのか!」と思ったら、ちゃんと「変更することの出来るカード名は実在するマジックのカード名のみ」というルールがあるらしく、そのうえでどうやってコンボを最適化するか、の解説だった。
あとこの頃は文末に註釈を全部集めてた。個人的に文中と文末(文庫本の場合、文中と巻末)を行ったり来たりするのが面倒で嫌いなので、途中からは文中に即註釈の内容を入れ込んでた。読者に、どっちがいいとか悪いとか意見を求めたことなかったけど、聞いてみれば良かったかな。
この記事の註釈をみてると「2004年の当時はまだマナバーンが健在」とか「バザーるでござーる」とか時代を感じさせ過ぎる文章が並んでて隔世の感がある。
■2011年01月15日
【翻訳】タイムマシンの作り方/How to Make a Time Machine【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101160649345352/
またしても Tom LaPille 氏の記事、かつまたしてもマスターズエディションに関する記事。前回よりもさらに詳しく、どうリミテッド(ドラフト)でまともに遊べるようにするか苦慮した話がなされている。古いカードのテキストもちゃんと文中に記載しているので興味ある人は読んでみて欲しい。
あとひみつ日記(Diarynoteの特徴的な仕様で相互リンクメンバー同士しか読めないようになってる日記の追記部分)によると、2011年にアップしたこの記事の誤植を2018年に修正したらしい。たまに自分の過去日記を読み返してたんだろうな(他人事)
■2011年01月26日
【翻訳】この土地は君の土地/This Land Is Your Land【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102090457431141/
最初に書いておくとリンク先に翻訳記事は存在しない。理由は、訳し終えたあとに公式訳を発見してしまったため。WebArchiveにしかないならまだしも、ちゃんと公式サイトに載ってたので、さすがに取り下げた。
なお、ひみつ日記に丸ごと貼り付けてあるのは秘密。
いま日記についてるコメント見て気づいたけど、公式訳の存在は人に教えてもらって気づいたらしい。覚えてなかった。
■2011年01月29日
【翻訳】カード名が殺されるとき/Name Killers【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101290607062000/
個人的に訳してきた記事の中でトップクラスにお気に入りの記事。内容は「カード名に使えない名前がある。その理由は……」というもの。
その名前がすでにカード名に使われているから、という基本中の基本なものから、既存のマジックにおける共通認識と矛盾するから、という解説を聞いてみれば「言われてみれば」なものや、将来のためにとっておいた大事な単語が使われてるから、という開発部特有の視点からのものなど多岐に渡る理由が紹介されてる。
おそらくマジックに限らず、どのTCGも同じ問題を抱えているはずなので、マジックに詳しくなくても(半分くらいは?)楽しめると思う(多分)
■2011年02月05日
【翻訳】リチャード・ガーフィールド博士によるメタゲーム考察/the metagame【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102050434584649/
これまた個人的に訳してきた記事の中でトップクラスにお気に入りの記事。自分が訳してきた記事を1つだけ紹介しろと言われたらたぶんこれを挙げる。
そしてこれまたマジックという枠組みに収まらない「メタゲームとはなんぞや」という内容なので、TCGに興味ある人や「メタゲーム」という単語に興味ある人におススメしたい(面白くなかったらごめんなさい)
余談。この記事には大量にボードゲームやTCGの名前が登場する。それらの邦訳がないかどうか調べたり、どんなゲームなのか簡単な説明を付けるために調べたり、と骨を折った記憶がある。楽しかった。
【翻訳】世界侵略:インベイジョン決戦/Body Snatchers of the Invasion【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102120926434131/
比較的人気の高いインベイジョンのカード個別解説記事。インベイジョンに慣れ親しんだことのある人にはおススメだけど、インベイジョン環境に馴染みがなくてもカード開発の裏話が好きな人は楽しめると思う。
余談。Mark Rosewaterがマジックにメカを登場させることに否定的なコメントを残してたのどの記事だっけな、と思ったらこの記事だった(リンク先は前編で、後編の《力の鎧/Power Armor》で述べてる)。具体的には原文で以下の通り。ただ当時においても過去形だったので最近はどうなのか知らない。
以下、引用:
For the record, I hated the mechs. Hated them! The only thing in the history of Magic I despised more in the creative was the guns in Portal: Second Age.
■2011年02月26日
【翻訳】このカードはゾンビですか?/I cc: Dead People【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102260801103424/
比較的おススメの記事。
Mark Rosewater がたまに書いてる種族ネタの記事の1つでゾンビを主題にしたもの。マジックになかなかゾンビカードが増えないことに業を煮やしたゾンビ組合の長が、開発部に送ってきた手紙を紹介する、という形になっている。セットごとのゾンビの数に一喜一憂する組合長の反応が面白い。
このブログで訳してきた記事の中でもかなり反応が良かった記事。キャラの口調や手紙という形式のレイアウトの工夫を含めて、訳すのは色々と大変だったけどその分思い出深い。
■2010年12月11日
【翻訳】刻印より出づるもの/Out of Imprint【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201012110110059581/
記念すべき(?)一番最初の「翻訳」カテゴリの日記。記憶が曖昧だけど翻訳スレ用に訳した奴を転載したやつだと思う。もう11年以上前か……この頃、小学生だった子がもう就職しててもおかしくないわけだ(実質、近い実例がいるけど)
ミラディンブロックで初登場した「刻印」というキーワード能力に関する記事。筆者は Tom LaPille 氏。この方の記事は Mark Rosewater 氏の次に訳してると思う。理由は彼が担当している Developmentコーナーの記事を毎週のように訳してた時期があるから。
記事の内容は「刻印」というキーワード能力の持つ特徴(欠点?)に関するもの。カード開発の裏話、特に反省点に関する記事は好きなので、この記事も結構好き。
■2010年12月23日
非動詞化な名詞もの/Nouns Unverbed : Magic Arcana
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201012241407286091/
翻訳記事というか、単なる休暇連絡を訳したもの。この頃はもう Card of the Day を訳すのを日課にしてたので、更新がしばらく空くことの背景を説明するついでに訳した……んだったっけ?(うろ覚え) これが翻訳カテゴリの2つ目の日記だった、というのは自分でも意外だった。
■2010年01月07日
時間旅行/Time Traveling : Daily MTG
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101100437461128/
また Tom LaPille 氏の記事。この頃はまだ「序文」とか「チームメンバーの紹介」とかを割愛する柔軟さが残ってたらしい。その後、翻訳精度の低さに対して、せめて記事全文を訳すくらいはするか、とメンバー紹介なども基本的に全部訳すようになった(そのせいでアップするまでにかかる時間が増えた)。
記事の内容はマスターズエディションというオンライン専用のセットに関するもの。ネットを拾い読みしただけだけど、そこまで評判が良かったわけでもないらしい。
マジックオンラインにお金を使ってない身としては、単に懐かしいカード名が多かったから、という理由と、ドラフトをどう想定して収録カードを決めたのかの解説が面白かったから、という理由で訳した(んだと思う、多分)
今みたらペンティーノさんからコメントもらってた。嬉しかっただろうな、当時の自分(さすがにその感情までは思い出せない)
■2011年01月12日
【翻訳】《 》の話。いや、だから《 》の話だよ。ほら、アンヒンジドのあいつ/Blankety-Blank【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101130407484233/
いまマジックをプレイしている人の何割が知ってるのか怪しいアンヒンジドというジョークセットに登場した名前を持たないカードに関する記事。
「Seinfeld(邦訳:となりのサインフェルド)」という人気海外ドラマがあったことはこの記事を訳して知った。後日、海外のゲームショップで、この「Seinfeld」を題材としたモノポリーを見かけて「へえ、これか。本当に人気ドラマなんだな」と思ったことをうっすら覚えてる。
文中で《Now I Know My ABC’s》とのコンボが紹介されてて「なるほど、そんなコンボが! AからZまで含む名前にしてしまえばいいのか!」と思ったら、ちゃんと「変更することの出来るカード名は実在するマジックのカード名のみ」というルールがあるらしく、そのうえでどうやってコンボを最適化するか、の解説だった。
あとこの頃は文末に註釈を全部集めてた。個人的に文中と文末(文庫本の場合、文中と巻末)を行ったり来たりするのが面倒で嫌いなので、途中からは文中に即註釈の内容を入れ込んでた。読者に、どっちがいいとか悪いとか意見を求めたことなかったけど、聞いてみれば良かったかな。
この記事の註釈をみてると「2004年の当時はまだマナバーンが健在」とか「バザーるでござーる」とか時代を感じさせ過ぎる文章が並んでて隔世の感がある。
■2011年01月15日
【翻訳】タイムマシンの作り方/How to Make a Time Machine【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101160649345352/
またしても Tom LaPille 氏の記事、かつまたしてもマスターズエディションに関する記事。前回よりもさらに詳しく、どうリミテッド(ドラフト)でまともに遊べるようにするか苦慮した話がなされている。古いカードのテキストもちゃんと文中に記載しているので興味ある人は読んでみて欲しい。
あとひみつ日記(Diarynoteの特徴的な仕様で相互リンクメンバー同士しか読めないようになってる日記の追記部分)によると、2011年にアップしたこの記事の誤植を2018年に修正したらしい。たまに自分の過去日記を読み返してたんだろうな(他人事)
■2011年01月26日
【翻訳】この土地は君の土地/This Land Is Your Land【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102090457431141/
最初に書いておくとリンク先に翻訳記事は存在しない。理由は、訳し終えたあとに公式訳を発見してしまったため。WebArchiveにしかないならまだしも、ちゃんと公式サイトに載ってたので、さすがに取り下げた。
なお、ひみつ日記に丸ごと貼り付けてあるのは秘密。
いま日記についてるコメント見て気づいたけど、公式訳の存在は人に教えてもらって気づいたらしい。覚えてなかった。
■2011年01月29日
【翻訳】カード名が殺されるとき/Name Killers【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201101290607062000/
個人的に訳してきた記事の中でトップクラスにお気に入りの記事。内容は「カード名に使えない名前がある。その理由は……」というもの。
その名前がすでにカード名に使われているから、という基本中の基本なものから、既存のマジックにおける共通認識と矛盾するから、という解説を聞いてみれば「言われてみれば」なものや、将来のためにとっておいた大事な単語が使われてるから、という開発部特有の視点からのものなど多岐に渡る理由が紹介されてる。
おそらくマジックに限らず、どのTCGも同じ問題を抱えているはずなので、マジックに詳しくなくても(半分くらいは?)楽しめると思う(多分)
■2011年02月05日
【翻訳】リチャード・ガーフィールド博士によるメタゲーム考察/the metagame【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102050434584649/
これまた個人的に訳してきた記事の中でトップクラスにお気に入りの記事。自分が訳してきた記事を1つだけ紹介しろと言われたらたぶんこれを挙げる。
そしてこれまたマジックという枠組みに収まらない「メタゲームとはなんぞや」という内容なので、TCGに興味ある人や「メタゲーム」という単語に興味ある人におススメしたい(面白くなかったらごめんなさい)
余談。この記事には大量にボードゲームやTCGの名前が登場する。それらの邦訳がないかどうか調べたり、どんなゲームなのか簡単な説明を付けるために調べたり、と骨を折った記憶がある。楽しかった。
【翻訳】世界侵略:インベイジョン決戦/Body Snatchers of the Invasion【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102120926434131/
比較的人気の高いインベイジョンのカード個別解説記事。インベイジョンに慣れ親しんだことのある人にはおススメだけど、インベイジョン環境に馴染みがなくてもカード開発の裏話が好きな人は楽しめると思う。
余談。Mark Rosewaterがマジックにメカを登場させることに否定的なコメントを残してたのどの記事だっけな、と思ったらこの記事だった(リンク先は前編で、後編の《力の鎧/Power Armor》で述べてる)。具体的には原文で以下の通り。ただ当時においても過去形だったので最近はどうなのか知らない。
以下、引用:
For the record, I hated the mechs. Hated them! The only thing in the history of Magic I despised more in the creative was the guns in Portal: Second Age.
■2011年02月26日
【翻訳】このカードはゾンビですか?/I cc: Dead People【Daily MTG】
日記リンク:https://regiant.diarynote.jp/201102260801103424/
比較的おススメの記事。
Mark Rosewater がたまに書いてる種族ネタの記事の1つでゾンビを主題にしたもの。マジックになかなかゾンビカードが増えないことに業を煮やしたゾンビ組合の長が、開発部に送ってきた手紙を紹介する、という形になっている。セットごとのゾンビの数に一喜一憂する組合長の反応が面白い。
このブログで訳してきた記事の中でもかなり反応が良かった記事。キャラの口調や手紙という形式のレイアウトの工夫を含めて、訳すのは色々と大変だったけどその分思い出深い。
しかし驚くくらいフォローしてる方々の日記内容とかフォローした理由とか覚えてない。ここ数年ほぼDiarynoteから離れてたし、フォローしてる方々の多くも長らく更新をされていないから仕方ない話なんだけど。
あと、まあ、どこに書くか迷ったのでここに書いておくと「日記にコメントをしたからといって必ずレスをもらえるとは限らない」という当たり前なことを分かってなかった頃があって、何度チェックしても返信がないことに悩んだりもした(ネット初心者か)。
さらに余談。フォローされたらほぼ自動的にフォローし返してた時期が昔あったので、そりゃフォローした理由思い出せない方々もいるよな、と気づいた。
■ 大鍋の放浪者さん
Diarynote の翻訳勢の1人、かつ格ゲー勢(だった気がする)。どなたか忘れたんだけど、Diarynote で投げキャラについて語ってる方がいて、その日記に「ポチョムキン使いなんで分かります」と書いたら「ポチョは投げキャラじゃないです」と返されたんだけど、この方の日記だったっけか(未確認)
■ dds666さん
DiarynoteのMtG界でトップクラスのフォロワーを持つ人(今現在で1119人)。ゲームを楽しんでる様子が伝わってくる日記。あと大鍋の放浪者さんのリアル知り合いっぽい。途中からハースストーンメインの日記になって、同じくハースストーンを遊ぶようになってた身としてはありがたかった(気がする)。
■ mrgreedさん
翻訳記事をアップするとTwitterで紹介してくれて、そこからの流入者がとても多かった。感謝。あとこのブログに比較的よくコメントくれた方でもある。感謝。
■ なかしゅーさん
言わずと知れた日本MtG界の有名人(いや世代によってはそうでないかもしれないけど)。なぜか相互リンクになってる。一度、なかしゅーさんのインタビュー動画を翻訳したことがあったからそのときかもしれない。
殿堂入りプレイヤー中村修平のインタビュー(動画)
https://regiant.diarynote.jp/201111190526336846/
■ モリカツさん
言わずと知れた日本MtG界の有名人(いや世代によってはそうでないかもしれないけど)。ちなみに(ご本人は間違いなく忘れてるだろうけど)学生時代に出入りしてたカードショップのプレイスペースに(まだトーナメントに出入りする前の)モリカツさんがよく出入りしてて一緒にプレイしてた。
何年も経ってモリカツさんがトーナメントシーンで活躍されるようになってから、プロプレイヤーの友人に「そういえばモリカツさんがよくプレイしてたカードショップ、お前がプレイしてた場所と同じっぽいぞ」と言われて「……あ! あの少年か!」と思い出した。明るくてよく喋り、一緒にプレイしてて楽しい人だった(気がする)。
というDiarynoteまったく関係ない思い出話。
■ naotaさん
Diarynote の翻訳勢の1人。結構な長文を訳される方。互いにコメントしたりされたりしてたような気がする(未確認)
■ 竜英傑、蛹さん
Diarynote の翻訳勢、かつ絵描き勢の1人。両方できる方はかなり少数派なイメージ。あとそれと(おそらく本人は覚えてないと思うけど)数少ない面と向かって言葉を交わしたことがあるDiarynote勢の1人。
確か会ったとき「名前の読み方分からないのでアラビアの人って呼んでました」って言ってた気がする。ただこちらも最初の頃、名前を「たこ」と読み間違えてたのでおあいこ(すいません)。余談。最初の頃はまだ「竜英傑」が付いてなかった。
■ マツショーさん
サイクリングの人。自分と違う趣味を持ってる方の日記は面白い(もちろんそれだけじゃなくて文章力があってこそ面白いわけだけど)。あと仕事めっちゃ忙しそう。
■ Radishさん
Diarynote の翻訳勢の1人にして四天王の1人(だと勝手に思ってる)。長文かつ実戦系の記事をよく訳されてた(気がする)。実戦系は賞味期限があるので手を出すのはそれなりに腕と胆力がある方のイメージ。
余談。いまRadishさんの日記をざっと見てたら、コメント数778件(!?)ある日記があった。そんな馬鹿な、と思ったら案の定スパムだった。
一時期、Diarynoteって妙に英語のスパムコメントがつくことがあって「あ、コメント付いてる……ってこれか」とガッカリさせられた記憶がある。毎回消してたけど、放置しとくとこうなるのか……記事の内容で付きやすいとかあるのかな。
■ 硫酸さん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。翻訳勢(だったかも)
過去日記を一気に消されたようなのでうろ覚えな記憶頼りになるけど、確かここで紹介されてたイカサマに関する記事を翻訳してみて、それを読んでもらえて嬉しかったのが Diarynote を始める気になった理由の1つだった……ような……どうだっけ(誰に聞いてる)
あとbunさんのところでも紹介したフェルドンの話も元々はこの方の日記で原文記事が紹介されてて知った気がする。訳したところコメントもらえて嬉しかった。
老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み/Loran’s Smile
https://regiant.diarynote.jp/201411270317089927/
余談。Twitterで一時期ブロックされてて悲しかった。今はなぜか解除されてる。不思議。
■ マイコロスさん
Diarynote の翻訳勢の1人。MtG以外の日記(主に映画)でも楽しませてもらっていた気がする。
■ とけいまわりさん
Diarynote の翻訳勢の1人。時事ネタかつ長文を扱う本格勢(な気がする)。ただ翻訳の主戦場は note のほう。結構、新しくDiarynoteを始められた方……だと思ってたんだけど今ちゃんとチェックしたら全然そんなことなかった(2012年01月)。
■ surucucuさん
Diarynote の翻訳勢の1人。読みは「するくく」さんでいいのかな。自分も含めてネットのハンドルって口に出して読むことを意識してない名前があったりするよね(ついでに書いておくと re-giant の読みは「れぎあんと」)
■ BluEさん
Diarynote の翻訳勢の1人にしてオリジナルセット作成を目指している方(だと思う)。この方のところにあるマーク・ローズウォーター記事リスト(翻訳済み・未翻訳)にはお世話になった。ありがとうございました
■ いとださん
Diarynote の翻訳勢の1人。バナーの、マジックしかないという顔、が好き。
■ どえらいもんさん
Diarynote の翻訳勢の1人にして四天王の1人(だと勝手に思ってる)。確か元々は違う名前で日記書かれてたはずだけど前の名前が思い出せない。確か「土門」って入ってた気がする。違ってたらすいません。
■ レベラーさん
Diarynote のMtG勢にしてTRPG勢。MtGでなんとかTRPG遊べないか、という試みをされてたのが印象深い。普通のTRPGでどうマジックのカードを活かすか、というレベルの話ではなく、本当にマジックのデッキを使ってTRPGを遊べないか、という野心的な試み。非戦闘時の判定ルールに苦労されていた印象がある(うろ覚え)。
余談。TRPGを遊ぶときにTCGのカードを使う、というのは個人的によくやってたけどマジックのカードはほとんど使わなかった。よく使ったのはモンコレとカオスギア。やっぱり「日本で一般的なファンタジーRPGのモンスターやアイテム」という面ではモンコレ最強だった。カオスギアのカードは建物や場所でよく使った(城カード)。MtGのカードは「絵画」過ぎて向いてなかった。
■ 生息条件(島)さん
いきなりご本人に関係ない話になってしまうけど、名前を見て「あー、そんな能力あったなあ……」としみじみしてしまった。こっちに島がないと死ぬ、相手に島がないと攻撃できない、だっけ。懐かし過ぎてタイムスリップしそう。
それはさておき(横に物をどかす動作)、楽しんでるという雰囲気が伝わってくる日記が多かった印象が強い。あとシミック大好きなところも伝わってきた。こういう「何が好き」を明確にしてる方は、それ関連のイベントや話題が生じたときに「あの人の反応が気になる」となるので、やっぱり日記の傾向は絞ったほうがアクセス数の面でもいいんだろうな、と思った(今更)。
ご本人関係ある話をすると、いつもゲームを楽しんでるな、MtGが好きなんだな、という雰囲気が伝わってくる日記が主だった記憶がある。見に行くときに身構える必要がないというか、安らぐというか。
■ らすねさん
Diarynote の翻訳勢の1人。印象に残ってるのは、1回だけ「re-giantさんをリスペクトして今週のまとめ」を書かれてたこと、あとたまにTwitterで翻訳記事を紹介してくれてたこと。
週のまとめと翻訳のまとめは正直なところ期待してるより反応が少なくて寂しかったので、あまり求められてる内容でもないんだろうなあ、と思いつつも書きたいままに続けてた。多少でも楽しんでくれてた人がいると分かると救われる。
あと、らすねさんは確か「カード名が殺されるとき」を推してくれてた気がする(たぶん)。自分でもかなり気に入ってる記事でもある。内容という意味でも、上手く訳せたという意味でも。
【翻訳】カード名が殺されるとき/Name Killers【Daily MTG】
https://regiant.diarynote.jp/201101290607062000/
■ ストライクさん:追記
ふと思い出したので追記。たまにストライクさんの日記でアンケート募集みたいなことをしてて、それには何度か参加させてもらった。
新セットのカードのベスト10とかだった気がする。日記が消えてしまっているようなのでもう確認するすべがないな……と思ってたら、過去の週のまとめに一部だけ載せてた(正しくはアンケート側に1位~5位を書いてて、まとめ側に6位~10位を書いてた)。下記のリンク先の「余談5」がそれ。
今週のCard of the Day (2011年01月 第4週) とか
https://regiant.diarynote.jp/201101300428451192/
■ 転生・勇者ひろさん
ゲームのやり込み記録を紹介されてた方。データが一気に吹っ飛んだらしくここ最近は別の話題が主だった。ドラクエ5の「仲間になる確率 1/256」のモンスターも4体そろえるレベルの常軌を逸したやり込み記事が読んでて楽しかった。次の転生先がどこになるか分からないけど、またどこかで世界を救ってくださることでしょう。お疲れさまでした。
■ M中さん
Diarynote の翻訳勢の1人にして四天王の1人(だと勝手に思ってる)。適当に四天王候補を挙げてきたけどそろそろ4人になったかな(数えてない)。確かこっちの翻訳にも一度か二度くらいツッコミを入れてもらった気がする(たぶん)。
ただここ数年はほぼ映画感想ブログとなっていて毎回楽しませてもらった。どの分野であっても「こういうところがダメ」とか「こうだったらもっと素晴らしい」というのをちゃんと言語化できる人は本当にすごい。
■ ミートボウズさん
長文面白日記担当。下ネタ成分込み。たまに書かれる書評というか感想文というか紹介文というかも好きだった。ああいうの、書くのに気力を必要とするからもっとコメント残せば良かった。あとご家族の話も楽しく読ませてもらった。双子育児の大変さは方々から聞こえてくるのでご夫婦大変だろうな……。
■ Hotmilkさん
DiarynoteにおけるMtGクラスタの下ネタ担当。この人のせいで門侵犯に異なる意味が生まれたのでウィザーズは怒ってもいい。listenerさんのところでジオン軍さんとセットでよくお見かけしたイメージ。
■ dendrobiumさん
こっちのブログより先に「Who’s The Beatdown」を訳されてた方。気づかずに訳して「既訳があるなら消すかなあ」と悩みつつも、自分の記事からリンクする先のために訳したので、残してる。一応カードの効果とかデッキ内容とかを補足してあるから差別化はできてるかな……(文章のみをサクッと読みたい方は向こうのが合ってる)
■ めぐすけ@ゆるふわさん
SSを書かれてる方というイメージが一番強いけど幅広く色んな日記を書かれてた方。TRPGネタもあった気がするけど気のせいかもしれない。
■ yuyaさん
Diarynote の野球勢(巨人ファン)かつMtG勢、途中からハースストーン勢。
■ 予告
次の「Diarynoteのまとめ」は翻訳してきた記事の中から特に気に入ったやつとか反応が良かったやつとかを紹介する予定。
あと、まあ、どこに書くか迷ったのでここに書いておくと「日記にコメントをしたからといって必ずレスをもらえるとは限らない」という当たり前なことを分かってなかった頃があって、何度チェックしても返信がないことに悩んだりもした(ネット初心者か)。
さらに余談。フォローされたらほぼ自動的にフォローし返してた時期が昔あったので、そりゃフォローした理由思い出せない方々もいるよな、と気づいた。
■ 大鍋の放浪者さん
Diarynote の翻訳勢の1人、かつ格ゲー勢(だった気がする)。どなたか忘れたんだけど、Diarynote で投げキャラについて語ってる方がいて、その日記に「ポチョムキン使いなんで分かります」と書いたら「ポチョは投げキャラじゃないです」と返されたんだけど、この方の日記だったっけか(未確認)
■ dds666さん
DiarynoteのMtG界でトップクラスのフォロワーを持つ人(今現在で1119人)。ゲームを楽しんでる様子が伝わってくる日記。あと大鍋の放浪者さんのリアル知り合いっぽい。途中からハースストーンメインの日記になって、同じくハースストーンを遊ぶようになってた身としてはありがたかった(気がする)。
■ mrgreedさん
翻訳記事をアップするとTwitterで紹介してくれて、そこからの流入者がとても多かった。感謝。あとこのブログに比較的よくコメントくれた方でもある。感謝。
■ なかしゅーさん
言わずと知れた日本MtG界の有名人(いや世代によってはそうでないかもしれないけど)。なぜか相互リンクになってる。一度、なかしゅーさんのインタビュー動画を翻訳したことがあったからそのときかもしれない。
殿堂入りプレイヤー中村修平のインタビュー(動画)
https://regiant.diarynote.jp/201111190526336846/
■ モリカツさん
言わずと知れた日本MtG界の有名人(いや世代によってはそうでないかもしれないけど)。ちなみに(ご本人は間違いなく忘れてるだろうけど)学生時代に出入りしてたカードショップのプレイスペースに(まだトーナメントに出入りする前の)モリカツさんがよく出入りしてて一緒にプレイしてた。
何年も経ってモリカツさんがトーナメントシーンで活躍されるようになってから、プロプレイヤーの友人に「そういえばモリカツさんがよくプレイしてたカードショップ、お前がプレイしてた場所と同じっぽいぞ」と言われて「……あ! あの少年か!」と思い出した。明るくてよく喋り、一緒にプレイしてて楽しい人だった(気がする)。
というDiarynoteまったく関係ない思い出話。
■ naotaさん
Diarynote の翻訳勢の1人。結構な長文を訳される方。互いにコメントしたりされたりしてたような気がする(未確認)
■ 竜英傑、蛹さん
Diarynote の翻訳勢、かつ絵描き勢の1人。両方できる方はかなり少数派なイメージ。あとそれと(おそらく本人は覚えてないと思うけど)数少ない面と向かって言葉を交わしたことがあるDiarynote勢の1人。
確か会ったとき「名前の読み方分からないのでアラビアの人って呼んでました」って言ってた気がする。ただこちらも最初の頃、名前を「たこ」と読み間違えてたのでおあいこ(すいません)。余談。最初の頃はまだ「竜英傑」が付いてなかった。
■ マツショーさん
サイクリングの人。自分と違う趣味を持ってる方の日記は面白い(もちろんそれだけじゃなくて文章力があってこそ面白いわけだけど)。あと仕事めっちゃ忙しそう。
■ Radishさん
Diarynote の翻訳勢の1人にして四天王の1人(だと勝手に思ってる)。長文かつ実戦系の記事をよく訳されてた(気がする)。実戦系は賞味期限があるので手を出すのはそれなりに腕と胆力がある方のイメージ。
余談。いまRadishさんの日記をざっと見てたら、コメント数778件(!?)ある日記があった。そんな馬鹿な、と思ったら案の定スパムだった。
一時期、Diarynoteって妙に英語のスパムコメントがつくことがあって「あ、コメント付いてる……ってこれか」とガッカリさせられた記憶がある。毎回消してたけど、放置しとくとこうなるのか……記事の内容で付きやすいとかあるのかな。
■ 硫酸さん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。翻訳勢(だったかも)
過去日記を一気に消されたようなのでうろ覚えな記憶頼りになるけど、確かここで紹介されてたイカサマに関する記事を翻訳してみて、それを読んでもらえて嬉しかったのが Diarynote を始める気になった理由の1つだった……ような……どうだっけ(誰に聞いてる)
あとbunさんのところでも紹介したフェルドンの話も元々はこの方の日記で原文記事が紹介されてて知った気がする。訳したところコメントもらえて嬉しかった。
老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み/Loran’s Smile
https://regiant.diarynote.jp/201411270317089927/
余談。Twitterで一時期ブロックされてて悲しかった。今はなぜか解除されてる。不思議。
■ マイコロスさん
Diarynote の翻訳勢の1人。MtG以外の日記(主に映画)でも楽しませてもらっていた気がする。
■ とけいまわりさん
Diarynote の翻訳勢の1人。時事ネタかつ長文を扱う本格勢(な気がする)。ただ翻訳の主戦場は note のほう。結構、新しくDiarynoteを始められた方……だと思ってたんだけど今ちゃんとチェックしたら全然そんなことなかった(2012年01月)。
■ surucucuさん
Diarynote の翻訳勢の1人。読みは「するくく」さんでいいのかな。自分も含めてネットのハンドルって口に出して読むことを意識してない名前があったりするよね(ついでに書いておくと re-giant の読みは「れぎあんと」)
■ BluEさん
Diarynote の翻訳勢の1人にしてオリジナルセット作成を目指している方(だと思う)。この方のところにあるマーク・ローズウォーター記事リスト(翻訳済み・未翻訳)にはお世話になった。ありがとうございました
■ いとださん
Diarynote の翻訳勢の1人。バナーの、マジックしかないという顔、が好き。
■ どえらいもんさん
Diarynote の翻訳勢の1人にして四天王の1人(だと勝手に思ってる)。確か元々は違う名前で日記書かれてたはずだけど前の名前が思い出せない。確か「土門」って入ってた気がする。違ってたらすいません。
■ レベラーさん
Diarynote のMtG勢にしてTRPG勢。MtGでなんとかTRPG遊べないか、という試みをされてたのが印象深い。普通のTRPGでどうマジックのカードを活かすか、というレベルの話ではなく、本当にマジックのデッキを使ってTRPGを遊べないか、という野心的な試み。非戦闘時の判定ルールに苦労されていた印象がある(うろ覚え)。
余談。TRPGを遊ぶときにTCGのカードを使う、というのは個人的によくやってたけどマジックのカードはほとんど使わなかった。よく使ったのはモンコレとカオスギア。やっぱり「日本で一般的なファンタジーRPGのモンスターやアイテム」という面ではモンコレ最強だった。カオスギアのカードは建物や場所でよく使った(城カード)。MtGのカードは「絵画」過ぎて向いてなかった。
■ 生息条件(島)さん
いきなりご本人に関係ない話になってしまうけど、名前を見て「あー、そんな能力あったなあ……」としみじみしてしまった。こっちに島がないと死ぬ、相手に島がないと攻撃できない、だっけ。懐かし過ぎてタイムスリップしそう。
それはさておき(横に物をどかす動作)、楽しんでるという雰囲気が伝わってくる日記が多かった印象が強い。あとシミック大好きなところも伝わってきた。こういう「何が好き」を明確にしてる方は、それ関連のイベントや話題が生じたときに「あの人の反応が気になる」となるので、やっぱり日記の傾向は絞ったほうがアクセス数の面でもいいんだろうな、と思った(今更)。
ご本人関係ある話をすると、いつもゲームを楽しんでるな、MtGが好きなんだな、という雰囲気が伝わってくる日記が主だった記憶がある。見に行くときに身構える必要がないというか、安らぐというか。
■ らすねさん
Diarynote の翻訳勢の1人。印象に残ってるのは、1回だけ「re-giantさんをリスペクトして今週のまとめ」を書かれてたこと、あとたまにTwitterで翻訳記事を紹介してくれてたこと。
週のまとめと翻訳のまとめは正直なところ期待してるより反応が少なくて寂しかったので、あまり求められてる内容でもないんだろうなあ、と思いつつも書きたいままに続けてた。多少でも楽しんでくれてた人がいると分かると救われる。
あと、らすねさんは確か「カード名が殺されるとき」を推してくれてた気がする(たぶん)。自分でもかなり気に入ってる記事でもある。内容という意味でも、上手く訳せたという意味でも。
【翻訳】カード名が殺されるとき/Name Killers【Daily MTG】
https://regiant.diarynote.jp/201101290607062000/
■ ストライクさん:追記
ふと思い出したので追記。たまにストライクさんの日記でアンケート募集みたいなことをしてて、それには何度か参加させてもらった。
新セットのカードのベスト10とかだった気がする。日記が消えてしまっているようなのでもう確認するすべがないな……と思ってたら、過去の週のまとめに一部だけ載せてた(正しくはアンケート側に1位~5位を書いてて、まとめ側に6位~10位を書いてた)。下記のリンク先の「余談5」がそれ。
今週のCard of the Day (2011年01月 第4週) とか
https://regiant.diarynote.jp/201101300428451192/
■ 転生・勇者ひろさん
ゲームのやり込み記録を紹介されてた方。データが一気に吹っ飛んだらしくここ最近は別の話題が主だった。ドラクエ5の「仲間になる確率 1/256」のモンスターも4体そろえるレベルの常軌を逸したやり込み記事が読んでて楽しかった。次の転生先がどこになるか分からないけど、またどこかで世界を救ってくださることでしょう。お疲れさまでした。
■ M中さん
Diarynote の翻訳勢の1人にして四天王の1人(だと勝手に思ってる)。適当に四天王候補を挙げてきたけどそろそろ4人になったかな(数えてない)。確かこっちの翻訳にも一度か二度くらいツッコミを入れてもらった気がする(たぶん)。
ただここ数年はほぼ映画感想ブログとなっていて毎回楽しませてもらった。どの分野であっても「こういうところがダメ」とか「こうだったらもっと素晴らしい」というのをちゃんと言語化できる人は本当にすごい。
■ ミートボウズさん
長文面白日記担当。下ネタ成分込み。たまに書かれる書評というか感想文というか紹介文というかも好きだった。ああいうの、書くのに気力を必要とするからもっとコメント残せば良かった。あとご家族の話も楽しく読ませてもらった。双子育児の大変さは方々から聞こえてくるのでご夫婦大変だろうな……。
■ Hotmilkさん
DiarynoteにおけるMtGクラスタの下ネタ担当。この人のせいで門侵犯に異なる意味が生まれたのでウィザーズは怒ってもいい。listenerさんのところでジオン軍さんとセットでよくお見かけしたイメージ。
■ dendrobiumさん
こっちのブログより先に「Who’s The Beatdown」を訳されてた方。気づかずに訳して「既訳があるなら消すかなあ」と悩みつつも、自分の記事からリンクする先のために訳したので、残してる。一応カードの効果とかデッキ内容とかを補足してあるから差別化はできてるかな……(文章のみをサクッと読みたい方は向こうのが合ってる)
■ めぐすけ@ゆるふわさん
SSを書かれてる方というイメージが一番強いけど幅広く色んな日記を書かれてた方。TRPGネタもあった気がするけど気のせいかもしれない。
■ yuyaさん
Diarynote の野球勢(巨人ファン)かつMtG勢、途中からハースストーン勢。
■ 予告
次の「Diarynoteのまとめ」は翻訳してきた記事の中から特に気に入ったやつとか反応が良かったやつとかを紹介する予定。
最後に何かを書こうと思って、何を書こうか迷った挙句、フォローしている方々についての思い出というか感想というかを書いてみることにする。その中で、このDiarynoteとの出会いとかも語れそうな気がする(たぶん)
本題に入る前に、念のため。Diarynoteを始めたのがすでに10年以上前(!)だし、もう更新されてない方も多いし、そんなわけで皆さんの印象はかなりぼんやりしている。
なんでフォローしたか思い出せない方も多い(すいません)。なので、まあ「たぶん」「気がする」が多い思い出話になりそうだけどそれで良ければお付き合いください。
■ ペンティーノさん
Diarynoteの翻訳勢、その中でも四天王クラス、かつベガ。早い、読みやすい、かつタイムリーな記事を訳されていたイメージが強い。
ペンティーノさんが攻略や環境に沿ったタイムリーな記事で耳目を集めてらしたので、こっちは逆に開き直ってフレイバー寄りなものや古い記事を訳していたところはある(たぶん。自分のことだけど10年前となるとさすがに記憶があやふや)
■ ライラックさん
自分で Diarynote を始める前から定期的に日記を巡回していた方の1人。更新頻度が高くて内容も面白かった。Diarynote始めてから相互リンクもらえたときは嬉しかった。
■ 関東の遅刻魔さん
野球ネタに楽しませてもらっていた方。広島ファン。友人に1人広島ファンがいるので内容もそこそこ理解できた。Diarynote始めたときに喜んでくださったのが嬉しかった。とあるユーザにコメント欄で異様に粘着されてて可哀想だったけど割って入るのもなんか違う気がして、あえて普通のコメント残すようにしてた。少しでも精神衛生上のプラスになってたなら幸いなんだけど。
■ testingさん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。そもそもこの方の Friday Magic Quiz を定期的にチェックしていて「なんか色々名前が左に並んでるな」と気づいたところでやっとDiarynoteというSNSという存在を知ったはず。
そんなわけでなんか眺める対象というか、こう見上げる位置にいる存在なイメージだったので相互リンクになったときは「Diarynoteでもうそんな長く活動したかあ」と感慨深かった。あと確か一度だけ翻訳記事にコメントもらえて嬉しかった。
■ ストライクさん
お気に入り日記の管理ページにある名前の一覧を見ながらこの記事を書いているんだけど、いま「あれ? ストライクさんがいない? すでにユーザアカウント消されてる?」と気づいたのでここに書いておく。
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。ただ確か最初はライザさんという方のアカウントで、その方が身内をモデルにしたMtG小説、ゴッドライザを書いてらした日記だったはず。
そして(明確にそうとは書いてなかったと思うけど)その方と付き合ってらっしゃったとおぼしきストライクさんがたまに代理(?)で更新されてて、ある時期から全面的にストライクさんの日記になってた。ほぼ毎日更新されてて分量も決まってて、巡回向きな日記だった。
若干関係ない話。MtGネットウォッチ板というスレが2ちゃんねるにかつて存在してて、そこの信憑性が本当に当てにならないと判断する助けになったのが、ストライクさんを男扱いしてたこと。
■ nosさん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。翻訳してる人だっけ、と思ってあらためて日記をチェックしたら実戦派の人(主にプレイ日記)の人だった。あと今読み返してて、たまに更新されるポエムというかSS(死語?)が楽しかったな、と思い出した。
■ DBAさん
自分で Diarynote を始める前から定期的に日記を巡回していた方の1人。パチスロ日記がメイン。あくまで日記上ではの話なので真偽は不明だけどどうやらトータルで勝ってる方らしい。カードショップの店員さんである灰猫さんの日記をチェックしていて、そこから知ったはず。
■ 灰猫さん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。前述のとおりカードショップの店員さん……だった。確か4~5年くらい前に閉店していたような気がする。カードショップ目線の日記が面白かった(売れ筋商品の話や問屋さんとの駆け引き(?)の話など)。あとゲームと読書を精力的に消化されてるイメージがある。こうありたい。
■ listenerさん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。限定構築環境に関する考察がメインの日記を書かれていて、その考察に対して多くのコメントが毎回ついててそれを読むのも楽しみだった。リミテッドに関わる記事(確率やシャッフル)によく反応していただいた印象が強い。
■ マエストロさん
Diarynote の面白下ネタ日記担当。更新頻度は低かったけど1発1発がホームラン級の記事だった。フォントいじりも多かったので職場で読むには向いてない日記だった(そもそも職場で Dairynote をチェックするな)。
■ Takuさん
Diarynote の翻訳勢の1人。主にLSVのカード評価を訳されていた方。
Diarynoteの翻訳勢はこうやってなんとなく自分の担当分野を決めてのんびり翻訳していたのが懐かしい(とはいえ勝手に翻訳する行為自体は若干グレーゾーンなので、その分野を「自分のシマ」みたいな捉え方してる人はいなかっただろうと思うけど)
あと Takuさんはあまり原文に拘泥しないで自由にネタ的な部分で自分の訳のカラーを出されていた印象がある。そういうところでも Diarynote の翻訳勢それぞれの特色があって楽しかった。
■ 高潮のさん
Diarynote の翻訳勢の1人、かつ Diarynote を始める前から知ってた方。知っていたとはいえ、もちろん面識があったわけではない。高潮のさんの話をするとなると、そもそもなぜMtGの翻訳に興味を持ったか、自分でもしようと思ったか、という話から始めることになる。
もう20年くらい前(!)のこと。ネットでMtGの記事を探しているときに面白い記事がいっぱい載ってるサイトが見つかった。今は無きそのサイトの名前は Braingeyser。
Braingeyser(web.archive版)
http://web.archive.org/web/20080511182042/http://braingeyser.at.infoseek.co.jp/index.html
このサイトの生まれた経緯もなかなか面白いもので、それを説明しようとすると、これまた今は無きサイトから話を始めることになる。
まず Sideboard Online というマジックの公式サイトがあった。言語は英語。人気があったので日本語版が作られたが、本家の更新に全く追いついておらず、それに対する意見などを書き込むための「MTGサイドボードオンライン日本語版スレ」が2ちゃんねるに立てられた(2001年12月)。
スレのかなり初期で「(公式が訳してくれないなら)有志が翻訳をのせるのはどう?」という名無しによる意見が出て、それに翻訳勢が「ちょっといいかも?」と同調したことで、スレに有志による翻訳が貼り付けられるようになっていった。
ただこの経緯には裏があって、どうやら最初に「有志が翻訳すれば?」と言い出した名無しと「いいかも」と乗っかった人物は実は同一人物(つまり自作自演)だったらしい。
何にせよこの流れで Sideboard Online の英語記事を勝手に翻訳して勝手にスレに貼り付ける人たちが増えていき、そのうち Sideboard Online 以外のサイトの記事も訳されるようになっていった。
そして、それらの翻訳を見やすくまとめたサイト、Braingeyser が作られた次第(余談: Braingeyser という名前はマジックの最初のセットに収録されていたカードの1つからとられている。効果は「(X)(青)(青) ソーサリー プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードをX枚引く」)
話が長くなったけど、高潮のさんは上記スレの有志の翻訳者の1人。スレでは「高潮の翻訳者」と名乗られていたもよう(余談:「高潮の ~」というのはマジックのカード名で登場する名称。英語カード名が「Tidal ~」で始まると日本語版は「高潮の ~」になる)。
さらに余談。上記の「MTGサイドボードオンライン日本語版スレ」はその後も一応は存続してた。2009年の頃、スレの主な話題は「The Top 50 Artifacts of All Time」のまだ訳されてないところを埋める作業だった。自分もなんとなく参加させてもらった。初めて regiant を名乗ったのもそのとき。
当時、作業していたテキストファイルの更新日付を見ると、残ってる限りで一番古いものが 2009年02月01日だった。まだ中東にいた頃だ(まあ、そもそも娯楽に乏しい中東に住んでたからこそ、翻訳に熱中できたというのはある)。その頃のスレをまとめてくれたものが以下のサイト。
MTG Sideboard Online 日本語版スレまとめ
http://blog.livedoor.jp/sideboard_online/
そしてこのスレで半年から1年くらい過ごして和訳に慣れてきたかな、と思い始めてから Diarynote に移った、という次第。
脇道にそれまくったので最後に高潮のさんの話に戻すと、この方は唯一 Diarynote 外でもやり取りがある方でもある。
■ しょっとこさん
Diarynote の翻訳勢の1人。ざっくり翻訳という方法で、必要な情報だけタイムリーに伝える訳のスタイル。逆にうちは前文とか記事途中の画像とか、とりあえず1から10まで全部訳す方法をとってる。
どっちがいい悪いではなくて、こっちで訳してる記事は主にかなり過去の記事を扱っており賞味期限がない。のんびりと訳したいように訳してていい。かつ翻訳の練習というか、訳に苦労することを楽しむ的な面もあるので、前文や人物紹介のような本筋に絡まない(あまり楽しくない)箇所もとりあえず全部訳してる。
正直、このサイトを続けたおかげで仕事でたまに発生する翻訳作業もそこそこ質が上がった気がする。職場のアメリカ人にも英訳した文章を「読みやすい」と言ってもらえたし。
■ rainさん
Diarynote の翻訳勢の1人。実戦系の記事を主に訳されていた。あと実際にプレイされている勢でもある。Diarynoteを始めた時点ですでに実戦からは遠く離れていた身なので、実際に遊んでる方々の日記はスポーツ観戦的な楽しみもあった。
■ ラッチさん
拡張アートを含めたMtG関連のイラストを描かれる方。あとMtG関連のお買い物の話も興味深かった(海外への発注など)。それと(おそらく本人は覚えてないと思うけど)数少ない面と向かって言葉を交わしたことがあるDiarynote勢の1人。
■ まみさん
サムネが可愛い。
■ マンダム/闇の腹心さん
長文で充実したMtG日記および日常日記を投稿される方。読み応えある日記なので更新あると嬉しかった(気がする)
■ bunさん
たまにコメントくれてた方。食が細い方でみんなに心配されてた。ある日を境にぷっつり日記が途絶えてみんな心配してるので、もしこれ見たら Diarynote が更新できなくなる前に日記書いて欲しい。
あと bunさんからもらったコメントの中で一番印象に残っているのは以下の翻訳(リンク先は前編で、後編のほうにコメントをもらっている。余談。この翻訳記事はこのブログで訳してきた文章の中でもかなり気に入っている訳の1つ)
老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み/Loran’s Smile
https://regiant.diarynote.jp/201411270317089927/
■ おんたいさん
ものを送り届ける仕事をしてる方っぽい。業種が異なる方の仕事に関する日記は色々発見があって楽しい。あと、なんというか、趣味やネタなど日記の端々から世代が近そうな感じが伝わってくる。
■ レオの飼い主@大佐☆さん
猫。最近、入院されてたようだけど無事退院されたようでめでたい。それはそれとして、猫日記を始めとしたストレスフリーな短い日記が多い(気がする(個人の感想です))ので構えず気楽に巡回できるフォロー先だった(はず)。
というわけでとりあえず書けたところまででアップしておく。全員分を書き終えるまでアップしないとすると「03月31日までに書き終わらずアップできないまま終わるリスク」と「ブログの文字数限界を超えるリスク」があるので。
これが最後の日記になるかもしれないので、ここで Diarynote という場を提供してくれた管理者の方へと、コメントをくれたり反応をくれたりしてくれた皆さんへ感謝の意を伝えておく。ありがとうございました。本当にとてもとても楽しかった。
本題に入る前に、念のため。Diarynoteを始めたのがすでに10年以上前(!)だし、もう更新されてない方も多いし、そんなわけで皆さんの印象はかなりぼんやりしている。
なんでフォローしたか思い出せない方も多い(すいません)。なので、まあ「たぶん」「気がする」が多い思い出話になりそうだけどそれで良ければお付き合いください。
■ ペンティーノさん
Diarynoteの翻訳勢、その中でも四天王クラス、かつベガ。早い、読みやすい、かつタイムリーな記事を訳されていたイメージが強い。
ペンティーノさんが攻略や環境に沿ったタイムリーな記事で耳目を集めてらしたので、こっちは逆に開き直ってフレイバー寄りなものや古い記事を訳していたところはある(たぶん。自分のことだけど10年前となるとさすがに記憶があやふや)
■ ライラックさん
自分で Diarynote を始める前から定期的に日記を巡回していた方の1人。更新頻度が高くて内容も面白かった。Diarynote始めてから相互リンクもらえたときは嬉しかった。
■ 関東の遅刻魔さん
野球ネタに楽しませてもらっていた方。広島ファン。友人に1人広島ファンがいるので内容もそこそこ理解できた。Diarynote始めたときに喜んでくださったのが嬉しかった。とあるユーザにコメント欄で異様に粘着されてて可哀想だったけど割って入るのもなんか違う気がして、あえて普通のコメント残すようにしてた。少しでも精神衛生上のプラスになってたなら幸いなんだけど。
■ testingさん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。そもそもこの方の Friday Magic Quiz を定期的にチェックしていて「なんか色々名前が左に並んでるな」と気づいたところでやっとDiarynoteというSNSという存在を知ったはず。
そんなわけでなんか眺める対象というか、こう見上げる位置にいる存在なイメージだったので相互リンクになったときは「Diarynoteでもうそんな長く活動したかあ」と感慨深かった。あと確か一度だけ翻訳記事にコメントもらえて嬉しかった。
■ ストライクさん
お気に入り日記の管理ページにある名前の一覧を見ながらこの記事を書いているんだけど、いま「あれ? ストライクさんがいない? すでにユーザアカウント消されてる?」と気づいたのでここに書いておく。
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。ただ確か最初はライザさんという方のアカウントで、その方が身内をモデルにしたMtG小説、ゴッドライザを書いてらした日記だったはず。
そして(明確にそうとは書いてなかったと思うけど)その方と付き合ってらっしゃったとおぼしきストライクさんがたまに代理(?)で更新されてて、ある時期から全面的にストライクさんの日記になってた。ほぼ毎日更新されてて分量も決まってて、巡回向きな日記だった。
若干関係ない話。MtGネットウォッチ板というスレが2ちゃんねるにかつて存在してて、そこの信憑性が本当に当てにならないと判断する助けになったのが、ストライクさんを男扱いしてたこと。
■ nosさん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。翻訳してる人だっけ、と思ってあらためて日記をチェックしたら実戦派の人(主にプレイ日記)の人だった。あと今読み返してて、たまに更新されるポエムというかSS(死語?)が楽しかったな、と思い出した。
■ DBAさん
自分で Diarynote を始める前から定期的に日記を巡回していた方の1人。パチスロ日記がメイン。あくまで日記上ではの話なので真偽は不明だけどどうやらトータルで勝ってる方らしい。カードショップの店員さんである灰猫さんの日記をチェックしていて、そこから知ったはず。
■ 灰猫さん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。前述のとおりカードショップの店員さん……だった。確か4~5年くらい前に閉店していたような気がする。カードショップ目線の日記が面白かった(売れ筋商品の話や問屋さんとの駆け引き(?)の話など)。あとゲームと読書を精力的に消化されてるイメージがある。こうありたい。
■ listenerさん
自分で Diarynote を始める前から日記を巡回していた方の1人。限定構築環境に関する考察がメインの日記を書かれていて、その考察に対して多くのコメントが毎回ついててそれを読むのも楽しみだった。リミテッドに関わる記事(確率やシャッフル)によく反応していただいた印象が強い。
■ マエストロさん
Diarynote の面白下ネタ日記担当。更新頻度は低かったけど1発1発がホームラン級の記事だった。フォントいじりも多かったので職場で読むには向いてない日記だった(そもそも職場で Dairynote をチェックするな)。
■ Takuさん
Diarynote の翻訳勢の1人。主にLSVのカード評価を訳されていた方。
Diarynoteの翻訳勢はこうやってなんとなく自分の担当分野を決めてのんびり翻訳していたのが懐かしい(とはいえ勝手に翻訳する行為自体は若干グレーゾーンなので、その分野を「自分のシマ」みたいな捉え方してる人はいなかっただろうと思うけど)
あと Takuさんはあまり原文に拘泥しないで自由にネタ的な部分で自分の訳のカラーを出されていた印象がある。そういうところでも Diarynote の翻訳勢それぞれの特色があって楽しかった。
■ 高潮のさん
Diarynote の翻訳勢の1人、かつ Diarynote を始める前から知ってた方。知っていたとはいえ、もちろん面識があったわけではない。高潮のさんの話をするとなると、そもそもなぜMtGの翻訳に興味を持ったか、自分でもしようと思ったか、という話から始めることになる。
もう20年くらい前(!)のこと。ネットでMtGの記事を探しているときに面白い記事がいっぱい載ってるサイトが見つかった。今は無きそのサイトの名前は Braingeyser。
Braingeyser(web.archive版)
http://web.archive.org/web/20080511182042/http://braingeyser.at.infoseek.co.jp/index.html
このサイトの生まれた経緯もなかなか面白いもので、それを説明しようとすると、これまた今は無きサイトから話を始めることになる。
まず Sideboard Online というマジックの公式サイトがあった。言語は英語。人気があったので日本語版が作られたが、本家の更新に全く追いついておらず、それに対する意見などを書き込むための「MTGサイドボードオンライン日本語版スレ」が2ちゃんねるに立てられた(2001年12月)。
スレのかなり初期で「(公式が訳してくれないなら)有志が翻訳をのせるのはどう?」という名無しによる意見が出て、それに翻訳勢が「ちょっといいかも?」と同調したことで、スレに有志による翻訳が貼り付けられるようになっていった。
ただこの経緯には裏があって、どうやら最初に「有志が翻訳すれば?」と言い出した名無しと「いいかも」と乗っかった人物は実は同一人物(つまり自作自演)だったらしい。
何にせよこの流れで Sideboard Online の英語記事を勝手に翻訳して勝手にスレに貼り付ける人たちが増えていき、そのうち Sideboard Online 以外のサイトの記事も訳されるようになっていった。
そして、それらの翻訳を見やすくまとめたサイト、Braingeyser が作られた次第(余談: Braingeyser という名前はマジックの最初のセットに収録されていたカードの1つからとられている。効果は「(X)(青)(青) ソーサリー プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードをX枚引く」)
話が長くなったけど、高潮のさんは上記スレの有志の翻訳者の1人。スレでは「高潮の翻訳者」と名乗られていたもよう(余談:「高潮の ~」というのはマジックのカード名で登場する名称。英語カード名が「Tidal ~」で始まると日本語版は「高潮の ~」になる)。
さらに余談。上記の「MTGサイドボードオンライン日本語版スレ」はその後も一応は存続してた。2009年の頃、スレの主な話題は「The Top 50 Artifacts of All Time」のまだ訳されてないところを埋める作業だった。自分もなんとなく参加させてもらった。初めて regiant を名乗ったのもそのとき。
当時、作業していたテキストファイルの更新日付を見ると、残ってる限りで一番古いものが 2009年02月01日だった。まだ中東にいた頃だ(まあ、そもそも娯楽に乏しい中東に住んでたからこそ、翻訳に熱中できたというのはある)。その頃のスレをまとめてくれたものが以下のサイト。
MTG Sideboard Online 日本語版スレまとめ
http://blog.livedoor.jp/sideboard_online/
そしてこのスレで半年から1年くらい過ごして和訳に慣れてきたかな、と思い始めてから Diarynote に移った、という次第。
脇道にそれまくったので最後に高潮のさんの話に戻すと、この方は唯一 Diarynote 外でもやり取りがある方でもある。
■ しょっとこさん
Diarynote の翻訳勢の1人。ざっくり翻訳という方法で、必要な情報だけタイムリーに伝える訳のスタイル。逆にうちは前文とか記事途中の画像とか、とりあえず1から10まで全部訳す方法をとってる。
どっちがいい悪いではなくて、こっちで訳してる記事は主にかなり過去の記事を扱っており賞味期限がない。のんびりと訳したいように訳してていい。かつ翻訳の練習というか、訳に苦労することを楽しむ的な面もあるので、前文や人物紹介のような本筋に絡まない(あまり楽しくない)箇所もとりあえず全部訳してる。
正直、このサイトを続けたおかげで仕事でたまに発生する翻訳作業もそこそこ質が上がった気がする。職場のアメリカ人にも英訳した文章を「読みやすい」と言ってもらえたし。
■ rainさん
Diarynote の翻訳勢の1人。実戦系の記事を主に訳されていた。あと実際にプレイされている勢でもある。Diarynoteを始めた時点ですでに実戦からは遠く離れていた身なので、実際に遊んでる方々の日記はスポーツ観戦的な楽しみもあった。
■ ラッチさん
拡張アートを含めたMtG関連のイラストを描かれる方。あとMtG関連のお買い物の話も興味深かった(海外への発注など)。それと(おそらく本人は覚えてないと思うけど)数少ない面と向かって言葉を交わしたことがあるDiarynote勢の1人。
■ まみさん
サムネが可愛い。
■ マンダム/闇の腹心さん
長文で充実したMtG日記および日常日記を投稿される方。読み応えある日記なので更新あると嬉しかった(気がする)
■ bunさん
たまにコメントくれてた方。食が細い方でみんなに心配されてた。ある日を境にぷっつり日記が途絶えてみんな心配してるので、もしこれ見たら Diarynote が更新できなくなる前に日記書いて欲しい。
あと bunさんからもらったコメントの中で一番印象に残っているのは以下の翻訳(リンク先は前編で、後編のほうにコメントをもらっている。余談。この翻訳記事はこのブログで訳してきた文章の中でもかなり気に入っている訳の1つ)
老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み/Loran’s Smile
https://regiant.diarynote.jp/201411270317089927/
■ おんたいさん
ものを送り届ける仕事をしてる方っぽい。業種が異なる方の仕事に関する日記は色々発見があって楽しい。あと、なんというか、趣味やネタなど日記の端々から世代が近そうな感じが伝わってくる。
■ レオの飼い主@大佐☆さん
猫。最近、入院されてたようだけど無事退院されたようでめでたい。それはそれとして、猫日記を始めとしたストレスフリーな短い日記が多い(気がする(個人の感想です))ので構えず気楽に巡回できるフォロー先だった(はず)。
というわけでとりあえず書けたところまででアップしておく。全員分を書き終えるまでアップしないとすると「03月31日までに書き終わらずアップできないまま終わるリスク」と「ブログの文字数限界を超えるリスク」があるので。
これが最後の日記になるかもしれないので、ここで Diarynote という場を提供してくれた管理者の方へと、コメントをくれたり反応をくれたりしてくれた皆さんへ感謝の意を伝えておく。ありがとうございました。本当にとてもとても楽しかった。
はじめに。
今回の記事は2002年に公式サイトで開催された企画「カードを作るのは君だ!(You Make the Card!)」の選考プロセスについて語られている。この企画は一般プレイヤーたちのアイデアや投票を元に、実際に収録されるカードを1枚作るというもので、2002年から2013年までのあいだに4回開催されている。
その記念すべき第1回目では「どの色にするか?」「どのカードタイプにするか?」など24段階のステップをプレイヤーたちの投票で決めていく形式だった。この企画の推移などについては以下のサイトに詳しい。
(MTG Wiki) 第1回:忘れられた古霊/Forgotten Ancient
http://mtgwiki.com/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%92%E4%BD%9C%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%AF%E5%90%9B%E3%81%A0!#.E7.AC.AC1.E5.9B.9E.EF.BC.9A.E5.BF.98.E3.82.8C.E3.82.89.E3.82.8C.E3.81.9F.E5.8F.A4.E9.9C.8A.2FForgotten_Ancient
今回翻訳した以下の記事は、5ステップ目の「カードの効果をどれにするか?」に関連した内容となっている。
5ステップ目より前の段階で「色は緑」「タイプはクリーチャー」などの大枠はすでに決まっていて、これらの条件にふさわしい能力を募集したところ5000以上の応募があり、それを開発部側で10個まで絞り込まれたあと、ステップ5で読者投票が行われた。
以下が絞り込まれたあとの10個の候補たち。
(1)
CARDNAMEは打ち消されない。
プロテクション(青)
CARDNAMEが戦場に出るに際し、クリーチャー・タイプを1つ選ぶ。
選ばれたクリーチャー・タイプを持つクリーチャー呪文は呪文や能力によって打ち消されない。
(2)
CARDNAMEが戦場から墓地に置かれたとき、あなたはライブラリーを公開してもよい。そうした場合、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーはその中から異なる名前のクリーチャー・カードを3枚選ぶ。あなたはその中から1枚を戦場に出し、残りをあなたの墓地に置く。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
(3)
CARDNAMEがいずれかのプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、あなたはあなたのライブラリーからCARDNAMEという名前のカードを1枚探して、戦場に出してもよい。その後、あなたのライブラリを切り直す。
(4)
CARDNAMEをブロックできるクリーチャーはすべて、これをブロックする。CARDNAMEがブロックされた状態になるたび、あなたはカードを1枚引いてもよい。
(5)
クリーチャーでない呪文は、それがエンチャント(クリーチャー)呪文でない限り、それを唱えるためのコストが(1)多くなる。
(6)
(X)(M),(T):あなたのライブラリーのカードを一番上からX枚公開する。あなたはそれらの中から点数で見たマナ・コストがX以下のクリーチャー・カードをすべて戦場に出す。その後、これにより公開されて戦場に出されなかったすべてのカードをあなたの墓地に置く。(余談)
ミラディンの傷跡の《起源の波/Genesis Wave》がかなり近い効果となっている。(X)(緑)(緑)(緑)のソーサリーで「あなたのライブラリーのカードを一番上からX枚公開する。あなたはそれらの中から点数で見たマナ・コストがX以下のパーマネント・カードを望む枚数戦場に出してもよい。その後、これにより公開されて戦場に出されなかったすべてのカードをあなたの墓地に置く」という効果。
(7)
CARDNAMEは打ち消されない。
CARDNAMEは呪文や効果の対象にならない。
CARDNAMEがいずれかのプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたび、このターン、そのプレイヤーはインスタント呪文を唱えることができない。
(8)
CARDNAMEが戦場から墓地に置かれたとき、あなたはそのクリーチャーを次の終了ステップの開始時にオーナーのコントロール下で戦場に出してもよい。
(9)
各プレイヤーのアップキープの開始時に、あなたがCARDNAMEという名前のパーマネントを4枚以上コントロールしている場合、あなたはこのゲームに勝利する。(余談)
ギルド門侵犯の《先端生物学者/Biovisionary》はほぼ同じ効果となっている。(1)(緑)(青)の 2/3 クリーチャーで「終了ステップの開始時に、あなたが《先端生物学者/Biovisionary》という名前のクリーチャーを4体以上コントロールしている場合、あなたはこのゲームに勝利する」という能力を持つ。
(10)
プレイヤー1人が呪文を唱えるたび、あなたはCARDNAMEの上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。
あなたのアップキープの開始時に、あなたはCARDNAMEの上からすべての+1/+1カウンターを取り除き、のぞむ数のクリーチャーの上に移動してもよい。
さて開発部は5000以上もの応募をどうやってこの10個にまで絞り込んだのか? そしてその5000以上もの応募から浮かび上がってきたマジックプレイヤーたちの嗜好の傾向とは? ……というのが今回の記事の内容となる。
【翻訳】プレイヤーが緑に望む効果とそれでも緑には許されない効果について/With Trends Like These【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年04月08日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/trends-these-2002-04-08
さて「カードを作るのは君だ!(You Make the Card)」のステップ5「どのメカニズムにするか?」(註)のための投票が締め切られた。結果は水曜日に発表される予定だ。
募集に対してなんと5000以上もの投稿があったわけだが、それらのプレイヤーたちのアイデアにはある種の傾向が見受けられた。せっかくなので今週のコラムでは私が発見したその傾向を皆と共有したい。
(註) ステップ5「どのメカニズムにするか?」
ステップ5のURLは以下の通り(英語)。今回の投票先となった10個のメカニズム候補が並んでいる。
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/feature/you-make-card-step-5-2002-03-29
ただその本題に入る前に、今回の企画である「カードを作るのは君だ!」に関連して皆から寄せられた質問に答えておこう。
■問い:どれだけプレイヤー側で決められるのか?(How Much Control?)
最初に取り上げるのはこの質問だ。カードが作られるにあたって、どれだけプレイヤーの意向が反映されるのか。プレイヤーがどこまで決められるのか。
シンプルに答えるなら、可能な限りプレイヤーたちに決めてもらうがすべてではない、となる。なぜプレイヤーが全てを決めてしまってはいけないのか?
その理由は、カードの完成形がプレイヤーたちのデザインにできる限り近いものになって欲しいからだ。うん? どういうことだろうね。
思い出して欲しいんだが、カードはデザインの段階を経たあと、必ず次の段階を経なければならない。それはデベロップメントだ。
デベロップメントでは、そのカードと同じセットの他のカードたちとのバランスをみる。いや、セットに限らず、ブロック全体でバランスを崩さないかもみる。
さらにはスタンダード環境だけでなく、他の構築環境でバランスを崩さないかもだ。そう、いかなる形であってもカードが環境のバランスを害さないよう、チェックするのがデベロップメントの仕事だ。
(余談)
原文ではここに「これだけあってもプレイヤーたちの青に対する憎悪には足りなかったらしい」という文言が入っている。おそらく何かここに用意されていた画像に対するキャプションらしい。
ソース見ても画像の内容は分からなかった。多分、青対策のカードだと思うけど……スクラーグノスとか? でも複数なんだよな。
さて、デベロップメントという段階を経ることを考えたときに選択肢は2つある。
1つ目は、プレイヤーたちに初めから終わりまで好きにカードを作らせて、出来上がったものをデベロップメントに手渡す。
2つ目は、デベロップメント側が受け入れ可能な、つまりほぼ変更する必要のない範囲にカードが収まるよう、プレイヤーたちの選択と投票のプロセスを私たちが手助けする。
そして私たちは後者の選択肢をとることにした。
なぜか? プレイヤーが好き勝手に決められる自由を得られるかわりに実際のカードが決めた内容とまったく異なってしまうより、プレイヤー自身が選んだ結果と実際のカード内容が一致することのほうが大切だと思ったからだ。
もちろん、次の質問は「そもそもデベロップメントを通さないといけないものなの?」だろうね。その答えは「すべてのカードは必ずデベロップメントを経る必要がある」だ。
確かに今回作ろうとしているカードは特別なものだ。しかしスタンダードのバランスを2年間ものあいだ崩し続けるリスクを冒してもよいと思えるほどには特別ではない。
そのようなわけで、私たちは可能な限りプレイヤーの選択がカードに反映されるように、可能な限りの段階を順に踏んでいるわけだ。
プレイヤーたちはカードのあらゆる要素を決定してもらう。たとえばマナコストだ。しかしそれは限られた選択肢の中から選んでもらうことになる。バランスのとれた(そしてそのうえで強い)カードであるためにね。
■問い:140文字制限はどうなった?(What Happened to the 140-Character Limit?)
今回絞り込まれたメカニズムの中にはいくつも「140文字制限」を守れていないものがあるじゃないか、という指摘をいただいている。その通り、私たちはメカニズムを募集するにあたって「140文字以内」という制限を設けていた。
実は、応募された文章は応募された時点では全てきちんと140文字に収まっていたんだ。
ただ皆に選んでもらうにあたり、きちんとカードの効果を理解してもらうため、正規のルールテンプレートに沿った形に直したらどうなるかのチェックを事前に行ったんだ。
大体の応募作品はルールテンプレートに沿った形にすることで文字数が元より増えてしまい、結果として投票する候補作品には140文字以上のメカニズムが並んだというわけさ。
■問い:なぜ投票先は10個しかないのか?(Why Only Ten Choices?)
なぜ応募された5000以上ものメカニズムのうち、投票可能なものがたった10個しかないのか。
それは投票を簡単にするためだ。
いや、まあ確かに君たちの中にも「5000個以上の応募? 簡単さ、全部目を通してやるよ!」なんて猛者もいるだろう。しかし読者の大半は正直なところそこまで求めてないはずだ。
また全応募を掲載するデメリットは他にもある。たとえばその場合、すべてのカードをルールテンプレートに沿った形に直すことができなくなる。時間が足りない。
君たちが楽しめるよう、私たちはかなりの労苦を支払って5000個以上の中から10個に絞り込んだ。応募されたメカニズムのアイデアのすべてとは言わないが、そのかなりの部分を取り入れることが出来たはずだ。
■問い:なぜこの10個なのか?(Why These Ten Choices?)
最後に取り上げたいのは、私たちがどうしてこの10個に絞り込んだのか、という問いだ。まず、選ばれた10個のメカニズムの選択基準はいくつかある。
1つ目として、私たちは面白そうと感じられるカード効果を選んだ。もちろんプレイヤーによって何を面白いと感じるかは異なるわけで(これについて論じた記事(註)があるので詳しく知りたい人は目を通してみてくれ)、私たちはより多くのプレイヤーにとって魅力的な品揃えとなるよう、可能な限りバラエティに富んだ投票先を用意したつもりだ。
(註) これについて論じた記事
原文では以下のURLへリンクが張られている。タイトルが「Timmy, Johnny, and Spke」というコラムで、マジックのプレイヤーは大きく3つのタイプに分かれると分析した記事。
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/timmy-johnny-and-spike-2002-03-11
非公式の和訳版がDiarynoteにある。
https://imatoki.diarynote.jp/201511031001008365/
2つ目として、私たちは過去に緑のカードが成し得ていない効果を持つカードをより優先的に選んだ(応募作の中には過去に登場済みの効果を持ったものも多く存在した)
最後に3つ目として、応募作の傾向から、より多くのプレイヤーが登場を望んでいるとおぼしき効果を選ぶことにした。応募作の傾向? どんな傾向があったというんだ?
そう、それこそが今日のテーマだ。ようやくだね。
■傾向は手段を正当化する(The Trends Justify the Means)
皆からの応募に目を通していて特に興味深かったのは、そこにある種の強い傾向が読み取れたことだ(その通り。私は実際にすべての、つまり5000個以上の応募作すべてに目を通した)。
たとえば特定のアイデアを何度も何度も目にした。これには私もデザイナーとしてなかなか啓発されるものがあった。
君たちが緑のクリーチャーというカードに何を求めているのか、何を望んでいるのか。それを知るとっかかりとなってくれたからね。
さて、私が読み取った主な傾向を紹介してみよう。
▼ 青対策(Anti-Blue)
黒対策となるカードのアイデアはいくつ投稿されたか、というと、そうだね、5000個の投稿うち大体30個くらいだろうか。
それに対して、青対策となるカードはいくつあったか? おおよそ1000個だ。全体の約5分の1が青対策だったわけだ。
私が数字を盛ってるんじゃないか,と疑う人もいるかもしれないね。いや、そんなことはないよ。どうやらかなりの数のプレイヤーが心の底から青を嫌っているようだ。
ん? なぜか、って? いや、私の中でも一応すでにいくつかの仮説は思いついてはいるんだが、これについてはもう少し掘り下げてから話そうと考えている。いつかね。
▼ 呪文や能力の対象にならない(Can’t be the target of spells or abilities)
おおよそだが10枚に1枚は「対象にならない」ことに関連したカードだった。ここから伝わってくるメッセージは「このクリーチャーをほっといてくれ、邪魔しないでくれ」という気持ちだ。
6マナ以上を支払って緑のトランプル付きのクリーチャーを召喚した次のターンに、相手から2マナをタップして《終止/Terminate》を唱えられたことがあるプレイヤーたちのフラストレーションが伝わってくるようだ。よく分かるよ。
▼ 打ち消されない(Can’t be countered)
ああ、うん、分かった分かった、その通り。確かにこれは1つ目に挙げた「青への対抗手段」のバリエーションの1つに過ぎない。ただ、これ単体で見かけることが本当に何度も何度もあって、別枠として取り上げるに値すると思われたんだ。
おっと言い忘れるところだった。君たちのご想像の通り、この効果は前述の「対象にならない」とセットで登場することが多かったよ。
▼ +1/+1カウンター(+1/+1 counters)
今回の試みで分かったことの1つは、君たちプレイヤーの中には+1/+1カウンター好きが非常にたくさんいる、ということだね。特に「~が起きるたび」にクリーチャーの上にカウンターを加える、という効果が多くみられた。
▼ クリーチャー・タイプ1つを選ぶ(Choose a creature type)
そしてまた今回の試みで分かったことは、君たちプレイヤーの中には非常に多くの種族デッキ好きがいるということだ。選ぶことで何が起きるかの効果はバラエティに富んでいたが、特に多かったのはそのクリーチャー・タイプ全員に+1/+1の修整を付与するというものだ。
(余談)
原文ではここに「皆から伝わってきたメッセージの中で特に目立ったものの1つは『大切な人を殺さないで』というメッセージだ」という文言が入っている。おそらく何かここに用意されていた画像に対するキャプションらしい。
ソース見ても画像の内容は分からなかった。少し前に名前が挙がってる除去呪文の《終止/Terminate》かもしれない。
▼ 戦場から墓地に置かれたとき(When CARDNAME goes to graveyard from play)
おそらくだが、この効果の根源にあるのは前述の「対象にならない」と同じ気持ちだろう。一言でいえば「このクリーチャーを殺さないでくれ」ということだ。
また興味深い点として、この「戦場から墓地に置かれたとき」の効果のほうが「戦場に出たとき」の効果よりも多く投稿されていた。
……というわけで、先週の候補たちを見てもらえば分かる通り、最終候補に残った10個の効果はこれらの傾向と大きなかかわりを持っている。
もちろんこれらとは異なる効果も確かに存在していた。他の色のものとされる効果を緑にも取り入れられないか、と頭をひねったプレイヤーたちの投稿作が以下だ。
▼ 対象のクリーチャーを破壊する(Destroy target creature)
緑がもっとも苦手とすることはクリーチャー破壊だ。
多くのプレイヤーが、今回作られるクリーチャーでこの弱点を補えないだろうか、と考えたようだ(その多くはタップ能力で相手を破壊しようとしていた)
確かに私たちも緑の可能性を広げるアイデアを望んではいたが、緑という色を定義づける象徴的な弱点を失わせることまでは考えていなかった。
▼ クリーチャーかプレイヤーにX点のダメージを与える(Deal X damage to target creature or player)
次に人気のあった弱点補強のアイデアがこれだ。そう、直接ダメージを与える能力をクリーチャーに与えるというものだ。
対象が限定されてさえいれば問題のない能力だが(例えば飛行クリーチャーのみを対象にできるなど)、制限のない直接ダメージはクリーチャー破壊と同じ問題を抱えている。あまりに「緑ではない」んだ。
▼ 対象の呪文を打ち消す(Counter target spell)
3番目に人気のあったのが呪文を打ち消す起動型能力をつけるというものだ。
色の候補を皆に選んでもらったとき、1位の緑に次ぐ投票数を集めた色が青だった。その票を投じてくれたプレイヤーたちにこそ、この能力に人気があったことを伝えておきたい。
いや、もしかしたらそのプレイヤーたちが青のクリーチャーのために温めていたアイデアをあらためて投稿したのかもしれないけどね。
いずれにせよ、この能力は前述の2つの能力と同様、根本的に「緑ではない」という1点で却下されてしまった。
……というわけだ。今日の私の書いた内容がまたちょっとした議論の種となるであろうことは想像に難くない。
もし「カードを作るのは君だ!(You Make the Card!)」の選考過程に君も一石を投じたいと思ったなら公式サイトの掲示板に君のコメントを書き込んでくれ。
さて、来週は特に評判の悪かったあのカードタイプ(註)について語ろうと思う。それまでのあいだ、君が一票投じた能力が一番票を集めるよう祈ってるよ。
マーク・ローズウォーター
(註) 特に評判の悪かったあのカードタイプ
この次の週は「エンチャント(クリーチャー)」についてのコラムだった。2020年現在でいう、エンチャント・タイプがオーラの呪文のうち、クリーチャーを対象とするもの(この説明でルール的に正しいか自信がないけど)。
【HS翻訳】バトグラ新実装の4人グループの影響について/How critical is the 4-person group queue problem【Reddit】
2020年9月12日 ハースストーンハースストーンのバトルグラウンドモードに新実装されたグループキュー機能(4人以下のフレンドで同じレート戦に参加できる機能)について、掲示板redditに問題提起した人がいた。その書き込みと、それについたコメントのうちのいくつかが興味深かったので訳してみた(つまりこれが全コメントではない)。
個人的には「全体のほんの数パーセントにすぎないトッププレイヤーたちを相手に商売をしているわけではない」というコメントがなかなか良い点をついてるのではないか、と思った。
【翻訳】バトグラ新実装の4人グループの影響について/How critical is the 4-person group queue problem【Reddit】
2020年09月09日
元記事:https://www.reddit.com/r/BobsTavern/comments/ipdhkk/discussion_how_critical_is_the_4person_group/
タイトル:4人グループ対戦の問題はバトルグラウンドの競技性にどれだけ深刻な影響を将来的に与えうるか
投稿者 bofur_hs
おはよう。bofur_hsと名乗ってる者だ。つい最近、配信者になったばかりだ(ほんの2日前だね)。あと、つい最近レートを13000台に乗せたばかりでもある(証拠:https://www.twitch.tv/bofur_hs/videos)。
最初に言っておきたいのは、このゲームが大好きだ、ということだ。問われる思考能力、各プレイヤーに平等な環境(なはずだ。平均的には)、最大効率をどう求めるかの問題。素晴らしいソロプレイ用のゲームモードだし、常にゲーム内容は向上している。
その上で問いたいのは、最新のパッチがこのゲームモードにもたらした要素についてだ。そう、グループキュー(4人以下のフレンドと同時にプレイすること)だ。
多くの高レートな配信者たちがブリザードがもたらしたこの新たなシステムを利用していることについて非難するつもりはない。ただ、本当にこのゲームモードのラダーが向かうべき方向なのかどうか、それが疑問なだけだ。
パッチが当てられてから1日かそこらで、多くの高レート(12000以上)にいるTwitch配信者たちがチームを組みつつ、どうすれば最大効率でレートを上げられるかを試行錯誤している。
この投稿をするため、そして返信をするためだけに新たにredditのアカウントを作ってみた。
今回のパッチがもたらしたものはこのバトルグラウンドというゲームモードにとって深刻な問題となる。なぜソロプレイよりチームを組んでプレイすることを推奨することになったのか(ソロプレイこそ、このハースストーンというゲームがずっと目指してきた方向性だというのに)。
一体全体、どこの誰がチームプレイを求めているのか。誰も求めてやしない! チームを組んで戦うことを選択したトップレイヤーの配信者たちはそうしたいからというより、せざるを得ないからチームを組んでいた。少なくとも確認した限りのほぼ全ての配信者たちはそう見えた。
これは視聴者のためになるのか。大会のためになるのか。平均的なプレイヤーのためになるのか。誰のためなのか。
もしチーム戦がブリザードの推し進めたい方向なら、単に4人vs4人のモードを用意してくれればいいだけの話だ。なんの問題もない。もし4人vs4人モードが用意したのに過疎ってなかなか対戦相手が見つからない場合? じゃあそもそもチーム対戦という要素が必要なかったというだけの話だね。
グループキューの要素を削除するか、何かしらの変更を加えるか、そのいずれかを求めるべきタイミングは今しかないと思ってる。もしかしたら違うかもしれない。でもそう信じている。
正直なところ、競技性ラダーの世界がこのグループキュー登場後も守られるか分からない。オンラインで一緒にチームを組んでくれるフレンドがいなければトップにいられない環境に煩わしさと疲労感をおぼえるプレイヤーもいるだろうし、適切な時間帯を狙わなければマッチングまでにかかる時間も悪化することになる(すでに早朝付近はかなりひどい)
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■返信1:bofur_hs への返信
投稿者:CabalWizard
まったくこれ以上ないほどに嫌な変更だ。おそらく二度とプレイしないだろうね。擁護すべき点が見つからない。今のレーティングは11,000~12,000のあいだを行ったり来たりしてるところだけど、あらゆる面で本当にひどい。
1対4はアンフェアだし楽しくもない。3ターン目に互いに示し合わせることは本当に強い。ダメージを食らわないというだけでもね。とても埋められる差じゃない。
それに対戦相手たちの戦団情報を共有できるのも本当にずるい。しかも自分の対戦相手がチームを組んでるかどうかを知る手段すらないんだ! 単に運がいいだけなのか、それともチームを組んでるのか、分かりようもない。
あからさまにこちらの戦団に対策を組まれてる場合、どうしてもチームによる情報共有を疑ってしまう。そのうえ、こっちの戦団を把握されてると確信できればまだ罠を仕掛けることもできるけど、相手がこっちの情報をつかんでるかどうかも分からないんだ。
誠実さについて。レーティングはこのゲームモードにおける唯一の「報酬」だ。それが今やいくらでも操作可能となった。順位表はほぼ無意味になる。何しろ互いを押し上げあうチームメートたちだらけになるだろうからね。
10位以内のプレイヤーはチームメートにサポートしてもらった奴らだろう。サポートしてもらえば、5位以下で終わることなんてないんだ(加えて、チームメートからダメージを食らうこともまずないから、ちゃんと示し合わせてれば3位より下に落ちることはないだろうね)
■返信1-1:CabalWizard への返信
投稿者:adwcta
昨晩、実際に高レートのプレイヤーたちとチームを組んで戦ってみたよ。フェアどころの騒ぎじゃないね。ブリザードはチートを奨励してるのかな。
ちなみにチームの誰かを勝たせようとする代わりに、チームメート全体の被ダメージ量を最小限にするプレイングを試みた。互いの行動を逐一共有するようなことはなくて、最小限の協力プレイで遊んでみたんだ。
それでも最初のゲームで1位から4位をチームで独占できたよ。そのまま5時間プレイした結果、チームメイトのうちで成功したほうで大体300くらいレーティングを上げることができた(トップをとっても60くらいしか上がらないレーティング帯だというのに)。それ以外のプレイヤーは大体プラスマイナスゼロかな。
昨晩の経験から分かったことは、5時間くらいあれば10,000のレーティングのプレイヤーを11,000台まで簡単に押し上げられるだろう、ってこと。あと、もちろんソロプレイの強さを測るという意味じゃ順位表はもう無意味だ。数週間後には順位表は4人チーム用だ。
バトルグラウンドはもう完全に前とは違うゲームだ。順位表の上を目指したいならこの新しい現実を受け入れる必要がある。
もしくはブリザードが正気に返って、チーム戦用のレーティングを用意してくれるか、グループキューの機能を無効にしてくれるか、のいずれかの対応をしてくれるのを待つかだね。
■返信1-1-1:adwcta への返信
投稿者:eeeeeefefect
1つ前の adwcta のコメントへの返信だ。ブリザードは別に君らみたいな上位0.1%を相手に商売しているわけじゃない。いや、フォーラムやredditに占める5%ですらない。もっと普通の広いプレイヤー層を相手にしているんだ。
市場調査をすればするほど新規プレイヤーを獲得するには(かつそのプレイヤーたちをつなぎとめるには)フレンドによる勧誘が一番だということが明らかになってる。
さてフレンド同士が遊び続けてくれるようにするにはどうすればいいか。フレンド同士で遊ぶことに実質的なインセンティブがあればいい。そうやって新規プレイヤーを増やすことだけがブリザード社員の評価基準で、ブリザードの金になる。
ブリザードの最初の頃の志は「まず遊んでもらえるゲームありき(gameplay first)」だった。それが失われてからもう随分経つ。Michale Morhaimeが去ったあとのブリザードは彼に顔向けできない状況だ。
今じゃあらゆるブリザードのタイトルから搾り取れるだけの金を搾り取るだけの会社だ。ブリザードを立ち去り損ねた開発メンバーたちはそれを認めないだろうけどね。
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■返信2:bofur_hs への返信
投稿者:dwhit266
言いたいことはよく分かるよ。それに新たなヒーローがさらにソロプレイヤーを不利にしてるよね。勝敗を当てればコインが3枚もらえるアイツだ。チームを組んでるプレイヤーたちは互いに情報を共有できるし、互いの勝敗をいじることができるんだから。
レートは12,000台までいってたけど今はそのメインのアカウントで遊ぼうとは思わない。昨晩、grinning goatたちがチームプレイするのを眺めてた。チームメイト以外の4人のプレイヤーたちが圧倒的に不利だと分かっててどうやってゲームを楽しめるのか疑問だね。チームメイト間でだけ調整しながら互いにダメージを与えすぎないようにできるってのに。
■返信2-1:dwhit266 への返信
投稿者:adwcta
dwhit266の言ってる grinnning goat のチームプレイに参加してた1人だ。先週、パッチの情報が流れたときからこの変更は不公平を生み出すだろうと話し合ってた。うちらは(いやトッププレイヤーのほぼ全員は、かな?)ブリザードにこの新しい要素は不公平だしゲームの面白さを損なわせるものだと訴えた。
それでもブリザードの開発部は、この変更はそれほどひどいことにはならないだろうし、そこまで問題ある使われ方もしないだろう、と返してきた。
うちらの言葉に耳を傾けてくれないとなると、プレイヤーとしてできることは開発側のその意見がいかに間違ってるかを行動を示すことだ。それもちゃんと皆に公開しつつだ。この新たな要素がぶっ壊れでソロプレイヤーは圧倒的に不利だということを分かってもらうためにね。何しろ、行動は言葉より雄弁だ。
個人的にはトップレイヤーは全員4人チームを組んでレートを爆上げすべきだ。ブリザードが状況を改善するまでね。
チームの1人のVictorは5時間で+300のレートを得た。彼のレーティング帯で考えるととんでもない早さだ。しかも別にうちらは彼だけに勝たせようとしてたわけじゃない。チーム全体でレーティングを上げようとしててそれだ。
レートがイマイチ上がらなかったほうのプレイヤーでも彼の半分程度にはレートを稼いでる。本気で訓練されたチームなら毎日+1000のレートを上位帯ですら稼ぐことができるだろうね。
もっとも上手くチームプレイをできるようになるには多少の時間がかかるだろう。それでも順位表からソロプレイヤーを締め出すのには1ヶ月もかからないはずだ。ブリザードが対策を講じない限りはね。
■返信2-1-1:adwcta への返信
投稿者:dwhit266
同意するよ。君らのやってることを非難するつもりはない。ブリザードの用意した舞台でそのとおり上手にプレイしてるだけだからね。ただ見ててつらいものはあったよ。すごいアドバンテージだ。実に不公平なバトルだった。
以前の君たちのプレイは楽しかった。公平な場で対戦相手を出し抜いてた。ただ他のソロプレイヤー4人が、自身がとんでもない不利を背負ってることすら知らずに参戦させられるのは本当にひどい話だね。
■返信2-1-2:adwcta への返信
投稿者:Z1vel
昨晩、君たちのチームプレイを観戦させてもらった。君たちの行動は間違ってないよ。このままレーティングを駆け上がって、ブリザードの連中に自分たちが間違ってると分からせてくれ。
もちろん普通のソロプレイのほうが見てて楽しいさ、でもブリザードがこのクソみたいな状況を改善してくれるまでは君たちのチームプレイを見させてもらうつもりだ。
トップ配信者がブリザードのゲームを宣伝してくれてるわけで、そんな君たちが4人チームプレイをしてるならそれが推奨されてるんだろう。ブリザードの目指す気楽なゲームが本当にそれだとは思わないけどね。
【HS翻訳】9月初日にレジェになれたトートランメイジのデッキ解説をする/Hit Legend with Tortllan Mage on day 1 of Sept season【Reddit】
2020年9月5日 翻訳【翻訳】9月初日にレジェになれたトートランメイジのデッキ解説をする/Hit Legend with Tortllan Mage on day 1 of September season【Reddit】
著者:u/summand
2020年09月02日
元記事:https://www.reddit.com/r/CompetitiveHS/comments/iku84i/hit_legend_with_tortollan_mage_on_day_1_of/
先月、僕はここでトートランメイジの使い方について書いた。ただこのデッキがあまりに革新的だったせいで、そのときはまだデッキのコンセプトをきちんとつかめていなかった。デッキを十二分に回した今ならば、新たなガイドを書くにふさわしい頃合いだと思う。
多くの人々はこのデッキをコンボデッキだと思っている。ただ僕の考えは違う。個人的には、このデッキは無限にバリューを出し続けることで対戦相手を圧倒するデッキだ。そういう意味では翡翠ドルイドに近い。《ナイトブレード/Nightblade》を10回使うだけが勝ちパターンではない(これについては後述する)
■デッキリスト(※コードは元記事参照)
# 1x (1) 智慧の宝珠/《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》
# 1x (1) ヴァイオレット・スペルウィング/Violet Spellwing
# 2x (1) ワンド泥棒/《ワンド泥棒/Wand Thief》
# 1x (2) 天文術師ソラリアン/《天文術師ソラリアン/Astromancer Solarian》
# 1x (2) 教団の新入会員/《教団の新入会員/Cult Neophyte》
# 2x (2) 終末予言者/《終末予言者/Doomsayer》
# 2x (2) ワンド職人/Wandmaker
# 1x (3) 大地の円環の遠見師/《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》
# 2x (3) ファイアブランド/《ファイアブランド/Firebrand》
# 2x (3) フロストノヴァ/《フロストノヴァ/Frost Nova》
# 2x (3) 冷たき影の紡ぎ手/《冷たき影の紡ぎ手/Frozen Shadoweaver》
# 2x (4) ボーン・レイス/《ボーン・レイス/Bone Wraith》
# 1x (4) 伝承守護者ポルケルト/《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》
# 2x (4) 幻影ポーション/《幻影ポーション/Potion of Illusion》
# 1x (5) ジャンディス・バロフ/《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》
# 1x (5) サンリーヴァーの戦魔術師/《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》
# 2x (6) ブリザード/《ブリザード/Blizzard》
# 2x (6) カルトゥートの守護者/《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》
# 2x (8) トートランの巡礼者/《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》
■デッキの仕組みについて/How the deck works
基本的には《性悪な召喚師/Spiteful Summoner》デッキと同じコンセプトだ。このデッキにはわずか3種類しかスペルが入っていない。《フロストノヴァ/Frost Nova》、《ブリザード/Blizzard》、そして《幻影ポーション/Potion of Illusion》だ。だから《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》がこれら3枚以外を持って来ることはない。
このデッキのメインターンに必要となるのは9マナだ。まず《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を出して《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選択し、1マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を得る。次に1マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を出してまた《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選ぶ。場には2体の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》がいるはずだから手札には1マナのこいつらが2体いるはずだ。
ただ普通はこれほど終盤となるとそれまでに対戦相手のボードはかなり危険な状態になっているはずだ。9マナ使って放置するということはそのまま敗北に直結してもおかしくないほどにね。だから10マナまで待ってから始めることのほうが多いだろう。そうすれば余った1マナで出す《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》で場をフリーズさせることができる。
1/1の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を手に入れてから動きは以下の通りだ。
(1) 手札の有用なミニオンをプレイする
(2)《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイする
(3)《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選ぶ
こうすることで両方の1/1のコピーが手に入るわけだ。この動作に加えて余った《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を使って敵の場をフリーズさせる。これで好きなミニオンを無限に出し続ける準備が整った。例えば無限に《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》を出して回復してもいいし、無限に《ナイトブレード/Nightblade》を出して対戦相手を倒してしまってもいい。このデッキを「シャダウォックメイジ」と呼ぶ人もいる理由がこれだ。
■一般的な勝ちパターン/General Win Condition
一番有名な勝ちパターンは「10ターン目まで生き延びて、あとは手順を繰り返して《ナイトブレード/Nightblade》から致死ダメージを叩き出す」だろうね。ただこれだけが勝ちパターンじゃない。実際のところ、この勝ちパターンを使えることは少ないはずだ。
前述の通り、このトートランメイジの強みは無限にバリューを叩き出して対戦相手を圧倒することだ。勝ちパターンは大きく分けて2つ。1つは無限にフリーズさせたり回復したりして敵の攻撃をしのぎきること。もう1つは対戦相手のボードをフリーズスペルでロックし続けて手元の1/1で殴り倒すこと。
ただ対戦相手がプリーストだったらこのいずれも上手くいかないかもしれない。僕のデッキに《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》が入っているのはこれが理由だ。
元々知られているトートランメイジデッキのリストとは結構違うことに気づいたかな。このデッキのベースになったのはEddieがGMで使ったデッキリストだ。そこにちょっと微調整を入れてある。
さらに元となったMessier7のオリジナルのリストには《爆雷/Depth Charge》のような防御用のカードが入っていた。10ターン目まで生き延びるためだ。あとコンボを1ターン早めるための《脱走したマナセイバー/Escaped Manasaber》も入っていた。つまり元々のデッキは「生き延びてコンボを発動させること」に特化されていたわけだ。
Eddieのデッキはそこに新たな勝ちパターンを加えていた。ボードコントロールだ。それを可能にするために《ファイアブランド/Firebrand》と《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》が追加された。さらにスペルを生み出せる軽めのミニオンも追加されている。これらのミニオンはなかなかのスタッツを持っているし《ファイアブランド/Firebrand》の価値も上げてくれる。さらには《退化の矢/Devolving Missiles》や《魔力喚起/Evocation》、《凍結光線/Ray of Frost》のような緊急回避策を手に入れられることもあるんだ。
■カードの役割と入れ替え候補/Included cards and some possible cards
キーカードは《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》、《フロストノヴァ/Frost Nova》、《ブリザード/Blizzard》、《幻影ポーション/Potion of Illusion》の4枚だ。
デッキ操作とサーチとして、《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》と《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》が入っている。これらのいずれも君に《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引かないよう手助けしてくれるし、さらに《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》はキーカードを見つける手助けもしてくれる。
スペル生成カードと《ファイアブランド/Firebrand》はデッキの柔軟性を高めてくれる。《ファイアブランド/Firebrand》は敵のボードをクリアする手段として非常に強力だ。
《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》は単体で非常に有能だ。強いテンポアドバンテージを得ることができるし、ときには勝ちにつながるだけのボードダメージ(盤面だけで出せるダメージ)をこれ単体で生み出してくれる。さらに《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引き切ってしまったあとにも勝てる可能性を残してくれる数少ないカードでもある。
防御的なカード、つまりコンボを始めるまでボードのコントロールを渡さずに君が生き延びるのを手助けしてくれるカードだ。コンボが回り始めたあとは、《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》と《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》はあらためて回復をもたらしてくれる。《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》、《ボーン・レイス/Bone Wraith》、《冷たき影の紡ぎ手/Frozen Shadoweaver》の3体は敵ヒーローの直接アタックも止めてくれるし、これらのカードはフリーズ系のスペルを引き切ってしまったあとさらに重要となる。
対策カードとしてはこのデッキにはシークレットローグ対策の《教団の新入会員/Cult Neophyte》しか入っていない。ただ君の環境で必要だと思うならこの枠は《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》に入れ替えてもいい。
他の対策カードとして、もし君が本当に安全策を取りたいなら《ブームピストル無頼/Boompistol Bully》を入れるという選択肢もある。ただ対戦相手がプリーストだと決まっているわけでもないので僕は入れていない。
《天文術師ソラリアン/Astromancer Solarian》はなかなか良いスタッツをしているし、《転生ソラリアン/Solarian Prime》1枚でゲームを決めてしまうこともある。あとこのカードの断末魔でデッキをシャッフルできることもときに有用に働く。ただコンボのときに《転生ソラリアン/Solarian Prime》のコピーは作らないほうがいい。ドロースペルや《ヨグ・サロンのパズル・ボックス/Puzzle Box of Yogg-saron》のように君のコンボを阻害するスペルが唱えられてしまう危険性があるからだ。
フィニッシャー、つまり無限ダメージを生み出すことでゲームを勝利に導いてくれるカードたちだ。僕のデッキでは《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》が使われているが、《ナイトブレード/Nightblade》を使うデッキのほうが一般的だ。またそれ以外では《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》や《砂漠のオベリスク/Desert Obelisk》という選択肢もある。それぞれ以下の通り一長一短があるので個別に説明しよう。
《ナイトブレード/Nightblade》は可もなく不可もない。ダメージ量は大きくないがダメージを与えるに際しての条件もない。
《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》はダメージ量が特に大きいので2ターンもあれば対戦相手を沈められるが、1つ大きな問題点がある。8マナなんだ。そのため君が《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》でデッキ順を変えたあと《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》のかわりにこのワニを引いてしまうかもしれない。
さらにワニがいると、6マナの《ブリザード/Blizzard》や《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》を引くのが遅れてしまう。それ以上に、このカードは8マナだから使ったあと最大でも2マナしか残らない。つまり《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》をコピーしつつ場をフリーズさせるには《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》のコピーが2枚必要となる。
《砂漠のオベリスク/Desert Obelisk》はとても面白いカードではある。ただ残念ながら面白いだけで実戦的ではない。自身のボードが身動きとれなくなってしまうし、対戦相手の場にミニオンが残っていると結果が非常に不安定になる。
《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》はダメージを与えるに際して条件がある。ただその分だけダメージ量は《ナイトブレード/Nightblade》より多いので早く決着をつけられるし、5マナしかかからない。さらに《ナイトブレード/Nightblade》にはできない芸当として、これはミニオンも対象にとれる。コンボを始めるまでのあいだ、除去としても使えるわけだ。対戦相手が《ラス・フロストウィスパー/Ras Frostwhisper》や《マリゴス/Malygos》のような危険なミニオンをプレイしても《ブリザード/Blizzard》に頼らずそれを除去することができる。
■上記以外の入る可能性があるカードについて/Other possible cards not included
《錆鉄騎の略奪者/Ruststeed Raider》は、有用な除去カードではある。ただあまりに防御的でもある。
《封印されし監視者/Imprisoned Observer》は、3マナで4/5と優れたスタッツで、敵ミニオン全体に2点ダメージを与えられる。非常に便利だが、いざコンボを開始するときに場にいられると実に邪魔でしょうがない。
《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》は、箒だけあって自分のボードを掃除するのに役立つ。さらには他にミニオンがいれば除去にもなる。ただあまりに単体で弱いのが問題だ。またもし箒があれば対戦相手のボードをクリアできるような状況であれば、単に次のターンを待てば同じトレードができるはずだ。箒を使えば追加で2体のミニオンを展開できるが、そうしなければいけない状況は正直ない。
《英才エレク/Educated Elekk》がいれば、もし2枚の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引き切ってしまってもデッキにまた埋め直すことができる。ただそのためには《英才エレク/Educated Elekk》を自分のターンに破壊する必要がある。つまり選択肢としては以下のいずれかだ。
その1、《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》も一緒に入れて《幻影ポーション/Potion of Illusion》と《英才エレク/Educated Elekk》と《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》を同時に使う。
その2、コンボを回したあとに手札の 1マナの《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》を使って《英才エレク/Educated Elekk》を破壊する。
いずれの場合も《英才エレク/Educated Elekk》を場に出しておくわけにはいかないからずっと手札で死に札として手札1枚分のスロットを占領する。つまりゴミだ。
■《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》と《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》の採用理由/Lorekeeper Polkelt : Why does this list use Sunreaver Warmage?
もしかしたら君は《ナイトブレード/Nightblade》のほうが《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》より良いのでは、と考えるかもしれない。実は僕も同じように考えていた。ただ何十回とプレイするうちに《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》のほうが上だと考えるようになった。その理由については前述のとおりだ。
ただまだ理由の半分しか説明していない。残りの半分は《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》との兼ね合いだ。
《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》は非常に強いカードだ。特にこのデッキにおいてはね。ただ同時に諸刃の剣でもある。並び替えたあとに5マナコストのカードを引き切れば君は否応なしに《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引くことになるからだ。《天文術師ソラリアン/Astromancer Solarian》によってデッキをシャッフルしたり、《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》でドローを回避したりすることもできるが、《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》の前にこれらのカードを引けるかは運次第だ。
つまり《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を使ったあと、君には制限時間が課されることになる。しかし現在のスタンダード環境には雄叫びで対戦相手本体にダメージを与えることのできる6~7マナ帯のミニオンはいない。
8マナの《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》であれば制限時間内に対戦相手を倒すことが可能だが、この8マナには色々と問題点があることは前述したとおりだ。
さて、どういうことかというと5マナのフィニッシャーを引いてから速やかにゲームを終わらせなければいけない……具体的には2~4ターン以内にだ! この条件を鑑みたとき、《ナイトブレード/Nightblade》はあまりに遅すぎる(ちなみにこのデッキに2枚の《ボーン・レイス/Bone Wraith》が入っている理由もこれで分かってもらえただろう)
■デッキからスペルを引いてしまったとき/When your spells are drawn from your deck
デッキのスペルを手札に引いてしまうとコンボが非常に困難になる。しかし実のところこのデッキに入っているスペルはどれも非常に単体で強力だ。だから全スペルを引き切ってしまったのでなければそこまで悲観すべき事態でもない。
《フロストノヴァ/Frost Nova》があれば1ターン寿命が延びるし、《終末予言者/Doomsayer》と同時に使えばボードもクリア可能だ。《ブリザード/Blizzard》は非常に強力な全体除去であり、また《フロストノヴァ/Frost Nova》と同じことができる。
《幻影ポーション/Potion of Illusion》を手札に引いてしまうことも常にマイナスではない。むしろ助かることも多い。例えばアグロ相手には《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》や挑発ミニオンをコピーしてもいい。さらに《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》をコピーすれば多大なアドバンテージが得られる。
これらに対処させるために対戦相手にカードを消費させたりミニオンをトレードさせたりできるし、ときにはそのままコンボ発動前に勝ってしまうこともあるだろう。
また8ターン目に追い詰められていて、かつ手札に《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》が1体しかいなければ、とりあえず《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》で場をフリーズさせて、次のターンに手札に引いてしまっていた《幻影ポーション/Potion of Illusion》でコンボを開始することができる。
もちろん《幻影ポーション/Potion of Illusion》を2枚とも引いてしまったらコンボは台無しだ。ただそれが敗北と同義ではないことに注意して欲しい。もし《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》をコピーできればそのままボードアドバンテージで押し切ることが可能だ。
コンボを回し始めたあとに2枚の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引いたのなら、そのままボードに出ているミニオンたちで勝利することもできるはずだ。
この状況になった場合、《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》は1マナの《フロストノヴァ/Frost Nova》として運用すべきだ。《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》、《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》、もしくは《転生ソラリアン/Solarian Prime》をコピーできるならしたい。
もし《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を使ったあとで、《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引いてしまうまでの残りターン数がわずかな場合は《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》を可能な限り多くコピーしておくべきだ。
■手札枚数の管理について/Hand Management Problem
《幻影ポーション/Potion of Illusion》は場にいる全ての味方ミニオンをコピーしてしまう。コピーしたくないミニオンを自らヒーローパワーで除去する、もしくは敵ミニオンに当てて処理するという手段もときに必要になる。
ただそれでも手札枚数があふれてしまうことはある。その場合、どのミニオンがコピーされないのか? これには場に出した順番が関係してくる。
例えば手札がすでに9枚で、そこに《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》経由で《幻影ポーション/Potion of Illusion》を唱えた場合は、場にいるミニオンのうち、一番最初に場に出たミニオンのコピーが手札に加わることとなる。
つまり……召喚した順番を暗記しなくてはいけないのか? いや、そうしなくていい方法がある。コンボを始めるとき、新たに出すミニオンを常に右側に置いていくんだ。
こうすれば左から右へと新しいミニオンが並んでいくことになる。どのミニオンが手札に加わってくれるのかすぐ把握できるはずだ。
念のため。《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》は「まず自分自身が場に出たあと」に2体の幻影を生み出す。大事なことなので覚えておこう。
上級者用にもう1つ書いておこう。もしコピーしたいミニオンがいるにも関わらず手札枚数の空きが足りないときは、不要なミニオンを1体プレイしてから《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイするんだ。
この場合、その不要なミニオンは「もっとも新しい」からコピーされることはなく、手に入れたかったミニオンのコピーが得られるはずだ。
■どうやってボードに空きを作るか/Board Clear Problem
理論上は無限にコピーを出していけるが、問題は自分の場には7体までしかミニオンを召喚できないということだ。そのため自分のミニオンをどうやって処理するかを常に考えておく必要がある。
敵の場にデカいミニオンがいてくれれば話は楽だ。しかしそうでない場合は自分のヒーローパワーや《終末予言者/Doomsayer》を使うことで空きを作ることとなる。
もっとも対戦相手の場にミニオンがいないのなら、単に君は手元の1/1で相手本体を殴ればいい。7点ダメージ(ヒーローパワーの1点をさらに追加で)毎ターン与え続けられれば対戦相手を倒すのに十分なダメージ量だ。そうなれば相手も君のボードをクリアせずにはいられない。
ミラーマッチの場合は《終末予言者/Doomsayer》を大事に扱うべきだ。《終末予言者/Doomsayer》が場を一掃してくれたあとに最初にミニオンを展開できるのは君だからね。
■対策カードや不利なマッチアップにどう対応するか/How to deal with counter cards/unfavorable matchups
多くのプレイヤーは《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》がこのデッキに対する強力な対策カードになると信じている。しかし実際はそうではない。
もし君が手札に8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を引いてしまっていたとしよう(《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を出したあとなら当然あり得る)。その場合、両方はプレイせずに、8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を手札に残すようにしよう。対戦相手は3マナのイルシアを使ったターンにこの8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を奪うことはできない。
ただもし対戦相手が《死者蘇生/Raise Dead》や ヒーローパワーの《ガラクロンドの奇知/Galakrond’s Wit》などで2体目の《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》を用意してきたとなると一気に厳しくなる。
それでも Eddie が GM week3 で証明してくれたように、仮にプリーストが2体目の《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》をプレイしてきたとしても、盤面から生み出されるダメージやファティーグダメージ、また稼いだバリューなどを生かして勝つことは不可能ではない。
(なおシークレットローグとの対戦時も注意すべきだ。相手がプレイした《ドラゴンの宝の山/Dragon’s Hoard》から《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》が生成される可能性があるからね)
アニマルドルイドとの対戦時に気を付けるべきなのは《生き息ドラゴンブレス/Living Dragonbreath》だ。対策はないわけではない。可能な限り対戦相手の場にミニオンを残さないように《ブリザード/Blizzard》や《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》をプレイしよう。それで完全に場を空にできないときは Khartut Defendor や《ボーン・レイス/Bone Wraith》を並べよう(この場合、《湖のスレッシャー/Lake Thresher》と《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》の組み合わせを意識すること)。
こうすれば対戦相手がいきなり《生き息ドラゴンブレス/Living Dragonbreath》を使ってきたとしても即死は避けられるはずだ。また対戦相手の場に7体のミニオンが並んで空きがなくなっているとき(《解き放たれしイセラ/Ysera, Unleashed》の能力で起こり得る)、《フロストノヴァ/Frost Nova》を使って相手のボードをロックするのも有効な手だ。
《ブームピストル無頼/Boompistol Bully》は君のコンボを邪魔することができる。しかしあくまで一時的なものだ。《若き酒造大師/Youthful Brewmaster》で使いまわすようなデッキはまずないから本質的な問題とはならない。
このデッキに対する本当の脅威は実質的に《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》だけだ。もし相手が《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》を《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》以外に使ってくれたなら即座に処理すべきだが、おそらくその場合は《影隠れ/Shadowstep》で回収されることだろう。もし相手が《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》で《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を除去したのなら、おそらくそのゲームは負けだ。ただもしそれがコンボがすでに回ったあとならば手元のリソースで勝ち切れる可能性もある。
このデッキが苦手とするのはアグロデッキだ。アグロ相手にどう生き延びればいいかは分かるだろうから事細かに説明はしない。他のデッキとの生き延び方の違いとして大きいのは、いつ《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイするかだ。
理想的には10ターン目にプレイしたいところだが、もしいけると判断するのであれば8ターン目にプレイしてもいい。手札に《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》が2体いる場合は2つの選択肢がある。1つ目、9ターン目に1体をプレイし盤面をフリーズさせて10ターン目に2体目をプレイする。2つ目、8ターン目に1体をプレイして盤面をフリーズさせ、それが生き延びたなら9ターン目に2体目をプレイし《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選び、それで作成した1/1で盤面をフリーズさせる。
もし手札に《幻影ポーション/Potion of Illusion》が1枚あるならば、8ターン目か9ターン目に盤面をフリーズさせる目的で《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイしてもいい。その《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》が生き延びられたなら手札の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を使ってコンボを開始しよう。
このデッキはシークレットローグにも弱いが注意点は対アグロデッキとほぼ同じだ。追加で注意すべき点があるとすれば《ワンド泥棒/Wand Thief》が持って来るかもしれない《ファイアーボール/Fireball》と《パイロブラスト/Pyroblast》の可能性だ。
爆弾ウォリアーとの対戦も厳しいものがある。理由は2つで、相手がデッキに4種類目のスペルを混ぜ込んでくること、さらにそのダメージが無視できない程度に大きいことだ。
ただ《フロストノヴァ/Frost Nova》か《ブリザード/Blizzard》のいずれかをデッキから引き切れればデッキ内のスペルの種類は3つに戻るのでコンボを無事回すことができる。
もしくは75%の賭けに出るかだ。2回連続で賭けに勝てればゲームはかなりこっちに有利になる。またコンボを回し始めたあとは極力手札を10枚に保とう。そうすることで引いた爆弾を発動させずに燃やすことができる。
■大会のリプレイから学べること/Some useful replays and GM games
このデッキに関して Eddie はかなりの使い手なので Eddie のリプレイを見て学べることは多いはずだ(もっとも Eddie の対戦以外にトートランメイジデッキの対戦がアップされていないこともあるが)。もし君が忙しすぎて試合を全部見るのが難しい場合、とりあえず以下の試合のリプレイをおススメしておく。
アメリカのGM Week3の最後の3試合目(註1)、Eddie は《幻影ポーション/Potion of Illusion》を2枚引いてしまうがデッキをミッドレンジ的にプレイすることで勝利している。
アメリカのGM Week3のグループBの最初の1試合目(註2)、対戦相手の Monsanto は《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》を2枚使ってきたが、Eddie は《幻影ポーション/Potion of Illusion》と《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》を上手く使うことでしのいでいる(余裕があればさらにアメリカのGM Week3の準決勝の2-3(註3)も見るといい)
アメリカのGM Week2のグループBの勝者の3試合目(註4)、Eddie はデッキに爆弾を混ぜられたことでコンボを失敗してしまう。しかしそこから《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》で爆弾を回避しつつ、ファティーグダメージと《転生ソラリアン/Solarian Prime》で bloodyface 相手に勝利している。
以下は僕自身のプレイした試合のリプレイだ。デッキを理解する助けになるかもしれない。
この試合(註5)では、早い段階でボードを支配することで、マリゴスドルイドにカードを友好的に使わせないことに成功している。
この試合(註6)では、2枚の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を手札に引いてしまったが、その《幻影ポーション/Potion of Illusion》を《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》に使うことでフェイスハンターに勝利できた。
この試合(註7)では、《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》入りのシークレットローグを相手にしたが幸い相手がそれをなかなか引けずにいた。最終的には相手の《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》で僕の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》は根こそぎにされてしまったが、残されたミニオンと《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》で勝利することができた。
▼ コメント欄から一部抜粋 (1)
【eddie7221994 によるコメント】
Eddieだ。この記事はトートランメイジデッキに関するとてもよいガイドで、デッキについて必要な知識が深く広くカバーされている。
ただ《封印されし監視者/Imprisoned Observer》に関していえば、これはデッキの中でもトップクラスに役立つカードだし、このデッキが終盤まで生き延びられるのはこのカードのおかげだ。
確かにコンボを回そうとするターンには邪魔に感じられるのは事実だけど、個人的にはトートランメイジデッキを組むならぜひ入れるべきカードだと思うよ。
▼ コメント欄から一部抜粋 (2)
【ShadeHS_ によるコメント】
素晴らしい無駄のないガイドだね。同じくこのデッキでレジェンドに到達したばかりだ。戦績は 27勝13敗(勝率68%)だった。それでこの記事を読んでいくつか聞きたいことと伝えたいことがある。
まず1つ目。《教団の新入会員/Cult Neophyte》がシークレットローグ対策とある。個人的にはシークレットローグとの対戦は、《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》さえなければ大した問題はなかった。
シークレットローグは序盤にきついプレッシャーをかけてくることもないし、無限にバリューを稼いでこられてもこっちのコンボの前には無意味だしね。
記事の中で《教団の新入会員/Cult Neophyte》がシークレットローグとの対戦時に特に大事になると書いた理由をもう少し詳しく知りたいな。
2つ目は爆弾ウォリアーだ。このデッキとの対戦はむしろ楽しみだったよ。確かに爆弾がスペルとして扱われるのは面倒だったけどね。
使ってたトートランメイジデッキには《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》を2枚入れてた(スロット的には《教団の新入会員/Cult Neophyte》の代わりだ)。
トップデッキで武器を引いてそのままこっちを殴り倒してくるようなデッキ全般に対抗するためさ。例えば、破片ダークハンター、パラディン(?)、アグロローグ、ガラクロンド爆弾ウォリアー。
こういうデッキ相手には《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》や《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》を優先的に探しつつコンボを目指して、中盤を無事生き延びられたら最終的に爆弾ダメージを超える回復量でゲームを決めてた。
そうそう。どうしても爆弾を引きたくないならそのためだけに毎ターン手札を満タンにしておくという手もある。いずれにせよ序盤を安定して生き延びるために《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》は必須なカードの1つだ。
爆弾が入った状態だと25%の確率で《幻影ポーション/Potion of Illusion》が引けないという問題の解決法は見つけられていない。何しろ《フロストノヴァ/Frost Nova》か《ブリザード/Blizzard》のいずれかを引き切るまでの時間を耐えるのは至難の業だからね。
ただ《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を引ければ、2回の75%に賭けないといけない事態は避けられる。まず最初の75%は自力で当てて《幻影ポーション/Potion of Illusion》を唱える。
そして、そのポーションで得た1/1のコピーは2枚目の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》(8マナ)を引くまで手札に抱えておく。そうすれば1ターンに2回、ポーションを探しに行けるからコンボをミスする可能性はかなり下げられる。
何にせよ、ホントにいいガイド記事だった。公開してくれてありがとう。他の記事も楽しみにしてるよ。
【著者 summand による返信コメント】
記事の書き方が誤解を招く表現だったかもしれない。《教団の新入会員/Cult Neophyte》を入れたのはシークレットメイジ戦で重要になるからじゃないんだ。
《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》がほとんどの試合で役に立たなかったから(ラダーをのぼる最中、一度も武器ローグや爆弾ウォリアーに会わなかった)、それよりは役に立つだろうと《教団の新入会員/Cult Neophyte》を入れたんだ。
シークレットローグの盤面は大体6~8ターン目に脅威になる。《クエスト中の冒険者/Questing Adventurer》や《エドウィン・ヴァンクリーフ/Edwin VanCleef》のせいでね。
こいつらはデカ過ぎてミニオンをぶつけて倒すのは不可能に近い。そのせいでこいつらの攻撃を止められずに負けた試合が何度かあった。ローグ戦の戦績は4勝5敗だ。
2枚目の8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を引くまで手札に1/1のコピーをとっておく、というアイデアはなかったな。本当にいい戦法だ。教えてくれてありがとう。
著者:u/summand
2020年09月02日
元記事:https://www.reddit.com/r/CompetitiveHS/comments/iku84i/hit_legend_with_tortollan_mage_on_day_1_of/
先月、僕はここでトートランメイジの使い方について書いた。ただこのデッキがあまりに革新的だったせいで、そのときはまだデッキのコンセプトをきちんとつかめていなかった。デッキを十二分に回した今ならば、新たなガイドを書くにふさわしい頃合いだと思う。
多くの人々はこのデッキをコンボデッキだと思っている。ただ僕の考えは違う。個人的には、このデッキは無限にバリューを出し続けることで対戦相手を圧倒するデッキだ。そういう意味では翡翠ドルイドに近い。《ナイトブレード/Nightblade》を10回使うだけが勝ちパターンではない(これについては後述する)
■デッキリスト(※コードは元記事参照)
# 1x (1) 智慧の宝珠/《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》
# 1x (1) ヴァイオレット・スペルウィング/Violet Spellwing
# 2x (1) ワンド泥棒/《ワンド泥棒/Wand Thief》
# 1x (2) 天文術師ソラリアン/《天文術師ソラリアン/Astromancer Solarian》
# 1x (2) 教団の新入会員/《教団の新入会員/Cult Neophyte》
# 2x (2) 終末予言者/《終末予言者/Doomsayer》
# 2x (2) ワンド職人/Wandmaker
# 1x (3) 大地の円環の遠見師/《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》
# 2x (3) ファイアブランド/《ファイアブランド/Firebrand》
# 2x (3) フロストノヴァ/《フロストノヴァ/Frost Nova》
# 2x (3) 冷たき影の紡ぎ手/《冷たき影の紡ぎ手/Frozen Shadoweaver》
# 2x (4) ボーン・レイス/《ボーン・レイス/Bone Wraith》
# 1x (4) 伝承守護者ポルケルト/《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》
# 2x (4) 幻影ポーション/《幻影ポーション/Potion of Illusion》
# 1x (5) ジャンディス・バロフ/《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》
# 1x (5) サンリーヴァーの戦魔術師/《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》
# 2x (6) ブリザード/《ブリザード/Blizzard》
# 2x (6) カルトゥートの守護者/《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》
# 2x (8) トートランの巡礼者/《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》
■デッキの仕組みについて/How the deck works
基本的には《性悪な召喚師/Spiteful Summoner》デッキと同じコンセプトだ。このデッキにはわずか3種類しかスペルが入っていない。《フロストノヴァ/Frost Nova》、《ブリザード/Blizzard》、そして《幻影ポーション/Potion of Illusion》だ。だから《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》がこれら3枚以外を持って来ることはない。
このデッキのメインターンに必要となるのは9マナだ。まず《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を出して《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選択し、1マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を得る。次に1マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を出してまた《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選ぶ。場には2体の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》がいるはずだから手札には1マナのこいつらが2体いるはずだ。
ただ普通はこれほど終盤となるとそれまでに対戦相手のボードはかなり危険な状態になっているはずだ。9マナ使って放置するということはそのまま敗北に直結してもおかしくないほどにね。だから10マナまで待ってから始めることのほうが多いだろう。そうすれば余った1マナで出す《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》で場をフリーズさせることができる。
1/1の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を手に入れてから動きは以下の通りだ。
(1) 手札の有用なミニオンをプレイする
(2)《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイする
(3)《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選ぶ
こうすることで両方の1/1のコピーが手に入るわけだ。この動作に加えて余った《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を使って敵の場をフリーズさせる。これで好きなミニオンを無限に出し続ける準備が整った。例えば無限に《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》を出して回復してもいいし、無限に《ナイトブレード/Nightblade》を出して対戦相手を倒してしまってもいい。このデッキを「シャダウォックメイジ」と呼ぶ人もいる理由がこれだ。
■一般的な勝ちパターン/General Win Condition
一番有名な勝ちパターンは「10ターン目まで生き延びて、あとは手順を繰り返して《ナイトブレード/Nightblade》から致死ダメージを叩き出す」だろうね。ただこれだけが勝ちパターンじゃない。実際のところ、この勝ちパターンを使えることは少ないはずだ。
前述の通り、このトートランメイジの強みは無限にバリューを叩き出して対戦相手を圧倒することだ。勝ちパターンは大きく分けて2つ。1つは無限にフリーズさせたり回復したりして敵の攻撃をしのぎきること。もう1つは対戦相手のボードをフリーズスペルでロックし続けて手元の1/1で殴り倒すこと。
ただ対戦相手がプリーストだったらこのいずれも上手くいかないかもしれない。僕のデッキに《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》が入っているのはこれが理由だ。
元々知られているトートランメイジデッキのリストとは結構違うことに気づいたかな。このデッキのベースになったのはEddieがGMで使ったデッキリストだ。そこにちょっと微調整を入れてある。
さらに元となったMessier7のオリジナルのリストには《爆雷/Depth Charge》のような防御用のカードが入っていた。10ターン目まで生き延びるためだ。あとコンボを1ターン早めるための《脱走したマナセイバー/Escaped Manasaber》も入っていた。つまり元々のデッキは「生き延びてコンボを発動させること」に特化されていたわけだ。
Eddieのデッキはそこに新たな勝ちパターンを加えていた。ボードコントロールだ。それを可能にするために《ファイアブランド/Firebrand》と《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》が追加された。さらにスペルを生み出せる軽めのミニオンも追加されている。これらのミニオンはなかなかのスタッツを持っているし《ファイアブランド/Firebrand》の価値も上げてくれる。さらには《退化の矢/Devolving Missiles》や《魔力喚起/Evocation》、《凍結光線/Ray of Frost》のような緊急回避策を手に入れられることもあるんだ。
■カードの役割と入れ替え候補/Included cards and some possible cards
キーカードは《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》、《フロストノヴァ/Frost Nova》、《ブリザード/Blizzard》、《幻影ポーション/Potion of Illusion》の4枚だ。
デッキ操作とサーチとして、《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》と《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》が入っている。これらのいずれも君に《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引かないよう手助けしてくれるし、さらに《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》はキーカードを見つける手助けもしてくれる。
スペル生成カードと《ファイアブランド/Firebrand》はデッキの柔軟性を高めてくれる。《ファイアブランド/Firebrand》は敵のボードをクリアする手段として非常に強力だ。
《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》は単体で非常に有能だ。強いテンポアドバンテージを得ることができるし、ときには勝ちにつながるだけのボードダメージ(盤面だけで出せるダメージ)をこれ単体で生み出してくれる。さらに《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引き切ってしまったあとにも勝てる可能性を残してくれる数少ないカードでもある。
防御的なカード、つまりコンボを始めるまでボードのコントロールを渡さずに君が生き延びるのを手助けしてくれるカードだ。コンボが回り始めたあとは、《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》と《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》はあらためて回復をもたらしてくれる。《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》、《ボーン・レイス/Bone Wraith》、《冷たき影の紡ぎ手/Frozen Shadoweaver》の3体は敵ヒーローの直接アタックも止めてくれるし、これらのカードはフリーズ系のスペルを引き切ってしまったあとさらに重要となる。
対策カードとしてはこのデッキにはシークレットローグ対策の《教団の新入会員/Cult Neophyte》しか入っていない。ただ君の環境で必要だと思うならこの枠は《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》に入れ替えてもいい。
他の対策カードとして、もし君が本当に安全策を取りたいなら《ブームピストル無頼/Boompistol Bully》を入れるという選択肢もある。ただ対戦相手がプリーストだと決まっているわけでもないので僕は入れていない。
《天文術師ソラリアン/Astromancer Solarian》はなかなか良いスタッツをしているし、《転生ソラリアン/Solarian Prime》1枚でゲームを決めてしまうこともある。あとこのカードの断末魔でデッキをシャッフルできることもときに有用に働く。ただコンボのときに《転生ソラリアン/Solarian Prime》のコピーは作らないほうがいい。ドロースペルや《ヨグ・サロンのパズル・ボックス/Puzzle Box of Yogg-saron》のように君のコンボを阻害するスペルが唱えられてしまう危険性があるからだ。
フィニッシャー、つまり無限ダメージを生み出すことでゲームを勝利に導いてくれるカードたちだ。僕のデッキでは《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》が使われているが、《ナイトブレード/Nightblade》を使うデッキのほうが一般的だ。またそれ以外では《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》や《砂漠のオベリスク/Desert Obelisk》という選択肢もある。それぞれ以下の通り一長一短があるので個別に説明しよう。
《ナイトブレード/Nightblade》は可もなく不可もない。ダメージ量は大きくないがダメージを与えるに際しての条件もない。
《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》はダメージ量が特に大きいので2ターンもあれば対戦相手を沈められるが、1つ大きな問題点がある。8マナなんだ。そのため君が《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》でデッキ順を変えたあと《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》のかわりにこのワニを引いてしまうかもしれない。
さらにワニがいると、6マナの《ブリザード/Blizzard》や《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》を引くのが遅れてしまう。それ以上に、このカードは8マナだから使ったあと最大でも2マナしか残らない。つまり《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》をコピーしつつ場をフリーズさせるには《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》のコピーが2枚必要となる。
《砂漠のオベリスク/Desert Obelisk》はとても面白いカードではある。ただ残念ながら面白いだけで実戦的ではない。自身のボードが身動きとれなくなってしまうし、対戦相手の場にミニオンが残っていると結果が非常に不安定になる。
《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》はダメージを与えるに際して条件がある。ただその分だけダメージ量は《ナイトブレード/Nightblade》より多いので早く決着をつけられるし、5マナしかかからない。さらに《ナイトブレード/Nightblade》にはできない芸当として、これはミニオンも対象にとれる。コンボを始めるまでのあいだ、除去としても使えるわけだ。対戦相手が《ラス・フロストウィスパー/Ras Frostwhisper》や《マリゴス/Malygos》のような危険なミニオンをプレイしても《ブリザード/Blizzard》に頼らずそれを除去することができる。
■上記以外の入る可能性があるカードについて/Other possible cards not included
《錆鉄騎の略奪者/Ruststeed Raider》は、有用な除去カードではある。ただあまりに防御的でもある。
《封印されし監視者/Imprisoned Observer》は、3マナで4/5と優れたスタッツで、敵ミニオン全体に2点ダメージを与えられる。非常に便利だが、いざコンボを開始するときに場にいられると実に邪魔でしょうがない。
《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》は、箒だけあって自分のボードを掃除するのに役立つ。さらには他にミニオンがいれば除去にもなる。ただあまりに単体で弱いのが問題だ。またもし箒があれば対戦相手のボードをクリアできるような状況であれば、単に次のターンを待てば同じトレードができるはずだ。箒を使えば追加で2体のミニオンを展開できるが、そうしなければいけない状況は正直ない。
《英才エレク/Educated Elekk》がいれば、もし2枚の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引き切ってしまってもデッキにまた埋め直すことができる。ただそのためには《英才エレク/Educated Elekk》を自分のターンに破壊する必要がある。つまり選択肢としては以下のいずれかだ。
その1、《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》も一緒に入れて《幻影ポーション/Potion of Illusion》と《英才エレク/Educated Elekk》と《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》を同時に使う。
その2、コンボを回したあとに手札の 1マナの《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》を使って《英才エレク/Educated Elekk》を破壊する。
いずれの場合も《英才エレク/Educated Elekk》を場に出しておくわけにはいかないからずっと手札で死に札として手札1枚分のスロットを占領する。つまりゴミだ。
■《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》と《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》の採用理由/Lorekeeper Polkelt : Why does this list use Sunreaver Warmage?
もしかしたら君は《ナイトブレード/Nightblade》のほうが《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》より良いのでは、と考えるかもしれない。実は僕も同じように考えていた。ただ何十回とプレイするうちに《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》のほうが上だと考えるようになった。その理由については前述のとおりだ。
ただまだ理由の半分しか説明していない。残りの半分は《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》との兼ね合いだ。
《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》は非常に強いカードだ。特にこのデッキにおいてはね。ただ同時に諸刃の剣でもある。並び替えたあとに5マナコストのカードを引き切れば君は否応なしに《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引くことになるからだ。《天文術師ソラリアン/Astromancer Solarian》によってデッキをシャッフルしたり、《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》でドローを回避したりすることもできるが、《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》の前にこれらのカードを引けるかは運次第だ。
つまり《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を使ったあと、君には制限時間が課されることになる。しかし現在のスタンダード環境には雄叫びで対戦相手本体にダメージを与えることのできる6~7マナ帯のミニオンはいない。
8マナの《ピット・クロコリスク/Pit Crocolisk》であれば制限時間内に対戦相手を倒すことが可能だが、この8マナには色々と問題点があることは前述したとおりだ。
さて、どういうことかというと5マナのフィニッシャーを引いてから速やかにゲームを終わらせなければいけない……具体的には2~4ターン以内にだ! この条件を鑑みたとき、《ナイトブレード/Nightblade》はあまりに遅すぎる(ちなみにこのデッキに2枚の《ボーン・レイス/Bone Wraith》が入っている理由もこれで分かってもらえただろう)
■デッキからスペルを引いてしまったとき/When your spells are drawn from your deck
デッキのスペルを手札に引いてしまうとコンボが非常に困難になる。しかし実のところこのデッキに入っているスペルはどれも非常に単体で強力だ。だから全スペルを引き切ってしまったのでなければそこまで悲観すべき事態でもない。
《フロストノヴァ/Frost Nova》があれば1ターン寿命が延びるし、《終末予言者/Doomsayer》と同時に使えばボードもクリア可能だ。《ブリザード/Blizzard》は非常に強力な全体除去であり、また《フロストノヴァ/Frost Nova》と同じことができる。
《幻影ポーション/Potion of Illusion》を手札に引いてしまうことも常にマイナスではない。むしろ助かることも多い。例えばアグロ相手には《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》や挑発ミニオンをコピーしてもいい。さらに《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》をコピーすれば多大なアドバンテージが得られる。
これらに対処させるために対戦相手にカードを消費させたりミニオンをトレードさせたりできるし、ときにはそのままコンボ発動前に勝ってしまうこともあるだろう。
また8ターン目に追い詰められていて、かつ手札に《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》が1体しかいなければ、とりあえず《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》で場をフリーズさせて、次のターンに手札に引いてしまっていた《幻影ポーション/Potion of Illusion》でコンボを開始することができる。
もちろん《幻影ポーション/Potion of Illusion》を2枚とも引いてしまったらコンボは台無しだ。ただそれが敗北と同義ではないことに注意して欲しい。もし《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》をコピーできればそのままボードアドバンテージで押し切ることが可能だ。
コンボを回し始めたあとに2枚の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引いたのなら、そのままボードに出ているミニオンたちで勝利することもできるはずだ。
この状況になった場合、《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》は1マナの《フロストノヴァ/Frost Nova》として運用すべきだ。《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》、《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》、もしくは《転生ソラリアン/Solarian Prime》をコピーできるならしたい。
もし《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を使ったあとで、《幻影ポーション/Potion of Illusion》を引いてしまうまでの残りターン数がわずかな場合は《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》を可能な限り多くコピーしておくべきだ。
■手札枚数の管理について/Hand Management Problem
《幻影ポーション/Potion of Illusion》は場にいる全ての味方ミニオンをコピーしてしまう。コピーしたくないミニオンを自らヒーローパワーで除去する、もしくは敵ミニオンに当てて処理するという手段もときに必要になる。
ただそれでも手札枚数があふれてしまうことはある。その場合、どのミニオンがコピーされないのか? これには場に出した順番が関係してくる。
例えば手札がすでに9枚で、そこに《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》経由で《幻影ポーション/Potion of Illusion》を唱えた場合は、場にいるミニオンのうち、一番最初に場に出たミニオンのコピーが手札に加わることとなる。
つまり……召喚した順番を暗記しなくてはいけないのか? いや、そうしなくていい方法がある。コンボを始めるとき、新たに出すミニオンを常に右側に置いていくんだ。
こうすれば左から右へと新しいミニオンが並んでいくことになる。どのミニオンが手札に加わってくれるのかすぐ把握できるはずだ。
念のため。《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》は「まず自分自身が場に出たあと」に2体の幻影を生み出す。大事なことなので覚えておこう。
上級者用にもう1つ書いておこう。もしコピーしたいミニオンがいるにも関わらず手札枚数の空きが足りないときは、不要なミニオンを1体プレイしてから《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイするんだ。
この場合、その不要なミニオンは「もっとも新しい」からコピーされることはなく、手に入れたかったミニオンのコピーが得られるはずだ。
■どうやってボードに空きを作るか/Board Clear Problem
理論上は無限にコピーを出していけるが、問題は自分の場には7体までしかミニオンを召喚できないということだ。そのため自分のミニオンをどうやって処理するかを常に考えておく必要がある。
敵の場にデカいミニオンがいてくれれば話は楽だ。しかしそうでない場合は自分のヒーローパワーや《終末予言者/Doomsayer》を使うことで空きを作ることとなる。
もっとも対戦相手の場にミニオンがいないのなら、単に君は手元の1/1で相手本体を殴ればいい。7点ダメージ(ヒーローパワーの1点をさらに追加で)毎ターン与え続けられれば対戦相手を倒すのに十分なダメージ量だ。そうなれば相手も君のボードをクリアせずにはいられない。
ミラーマッチの場合は《終末予言者/Doomsayer》を大事に扱うべきだ。《終末予言者/Doomsayer》が場を一掃してくれたあとに最初にミニオンを展開できるのは君だからね。
■対策カードや不利なマッチアップにどう対応するか/How to deal with counter cards/unfavorable matchups
多くのプレイヤーは《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》がこのデッキに対する強力な対策カードになると信じている。しかし実際はそうではない。
もし君が手札に8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を引いてしまっていたとしよう(《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を出したあとなら当然あり得る)。その場合、両方はプレイせずに、8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を手札に残すようにしよう。対戦相手は3マナのイルシアを使ったターンにこの8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を奪うことはできない。
ただもし対戦相手が《死者蘇生/Raise Dead》や ヒーローパワーの《ガラクロンドの奇知/Galakrond’s Wit》などで2体目の《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》を用意してきたとなると一気に厳しくなる。
それでも Eddie が GM week3 で証明してくれたように、仮にプリーストが2体目の《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》をプレイしてきたとしても、盤面から生み出されるダメージやファティーグダメージ、また稼いだバリューなどを生かして勝つことは不可能ではない。
(なおシークレットローグとの対戦時も注意すべきだ。相手がプレイした《ドラゴンの宝の山/Dragon’s Hoard》から《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》が生成される可能性があるからね)
アニマルドルイドとの対戦時に気を付けるべきなのは《生き息ドラゴンブレス/Living Dragonbreath》だ。対策はないわけではない。可能な限り対戦相手の場にミニオンを残さないように《ブリザード/Blizzard》や《サンリーヴァーの戦魔術師/Sunreaver Warmage》をプレイしよう。それで完全に場を空にできないときは Khartut Defendor や《ボーン・レイス/Bone Wraith》を並べよう(この場合、《湖のスレッシャー/Lake Thresher》と《空飛ぶほうき/Animated Broomstick》の組み合わせを意識すること)。
こうすれば対戦相手がいきなり《生き息ドラゴンブレス/Living Dragonbreath》を使ってきたとしても即死は避けられるはずだ。また対戦相手の場に7体のミニオンが並んで空きがなくなっているとき(《解き放たれしイセラ/Ysera, Unleashed》の能力で起こり得る)、《フロストノヴァ/Frost Nova》を使って相手のボードをロックするのも有効な手だ。
《ブームピストル無頼/Boompistol Bully》は君のコンボを邪魔することができる。しかしあくまで一時的なものだ。《若き酒造大師/Youthful Brewmaster》で使いまわすようなデッキはまずないから本質的な問題とはならない。
このデッキに対する本当の脅威は実質的に《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》だけだ。もし相手が《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》を《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》以外に使ってくれたなら即座に処理すべきだが、おそらくその場合は《影隠れ/Shadowstep》で回収されることだろう。もし相手が《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》で《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を除去したのなら、おそらくそのゲームは負けだ。ただもしそれがコンボがすでに回ったあとならば手元のリソースで勝ち切れる可能性もある。
このデッキが苦手とするのはアグロデッキだ。アグロ相手にどう生き延びればいいかは分かるだろうから事細かに説明はしない。他のデッキとの生き延び方の違いとして大きいのは、いつ《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイするかだ。
理想的には10ターン目にプレイしたいところだが、もしいけると判断するのであれば8ターン目にプレイしてもいい。手札に《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》が2体いる場合は2つの選択肢がある。1つ目、9ターン目に1体をプレイし盤面をフリーズさせて10ターン目に2体目をプレイする。2つ目、8ターン目に1体をプレイして盤面をフリーズさせ、それが生き延びたなら9ターン目に2体目をプレイし《幻影ポーション/Potion of Illusion》を選び、それで作成した1/1で盤面をフリーズさせる。
もし手札に《幻影ポーション/Potion of Illusion》が1枚あるならば、8ターン目か9ターン目に盤面をフリーズさせる目的で《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》をプレイしてもいい。その《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》が生き延びられたなら手札の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を使ってコンボを開始しよう。
このデッキはシークレットローグにも弱いが注意点は対アグロデッキとほぼ同じだ。追加で注意すべき点があるとすれば《ワンド泥棒/Wand Thief》が持って来るかもしれない《ファイアーボール/Fireball》と《パイロブラスト/Pyroblast》の可能性だ。
爆弾ウォリアーとの対戦も厳しいものがある。理由は2つで、相手がデッキに4種類目のスペルを混ぜ込んでくること、さらにそのダメージが無視できない程度に大きいことだ。
ただ《フロストノヴァ/Frost Nova》か《ブリザード/Blizzard》のいずれかをデッキから引き切れればデッキ内のスペルの種類は3つに戻るのでコンボを無事回すことができる。
もしくは75%の賭けに出るかだ。2回連続で賭けに勝てればゲームはかなりこっちに有利になる。またコンボを回し始めたあとは極力手札を10枚に保とう。そうすることで引いた爆弾を発動させずに燃やすことができる。
■大会のリプレイから学べること/Some useful replays and GM games
このデッキに関して Eddie はかなりの使い手なので Eddie のリプレイを見て学べることは多いはずだ(もっとも Eddie の対戦以外にトートランメイジデッキの対戦がアップされていないこともあるが)。もし君が忙しすぎて試合を全部見るのが難しい場合、とりあえず以下の試合のリプレイをおススメしておく。
アメリカのGM Week3の最後の3試合目(註1)、Eddie は《幻影ポーション/Potion of Illusion》を2枚引いてしまうがデッキをミッドレンジ的にプレイすることで勝利している。
アメリカのGM Week3のグループBの最初の1試合目(註2)、対戦相手の Monsanto は《精神与奪者イルシア/Mindrender Illucia》を2枚使ってきたが、Eddie は《幻影ポーション/Potion of Illusion》と《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》を上手く使うことでしのいでいる(余裕があればさらにアメリカのGM Week3の準決勝の2-3(註3)も見るといい)
アメリカのGM Week2のグループBの勝者の3試合目(註4)、Eddie はデッキに爆弾を混ぜられたことでコンボを失敗してしまう。しかしそこから《智慧の宝珠/Sphere of Sapience》で爆弾を回避しつつ、ファティーグダメージと《転生ソラリアン/Solarian Prime》で bloodyface 相手に勝利している。
(註) リンク
原文ではそれぞれYoutube動画へのリンクが張られている。
1:https://youtu.be/8kcr843Li-Q?t=2255
2:https://youtu.be/O-zJ4icul4s?t=80
3:https://youtu.be/RaERZcunGN8?t=1370
4:https://youtu.be/EhY7O6AugZA?t=2699
以下は僕自身のプレイした試合のリプレイだ。デッキを理解する助けになるかもしれない。
この試合(註5)では、早い段階でボードを支配することで、マリゴスドルイドにカードを友好的に使わせないことに成功している。
この試合(註6)では、2枚の《幻影ポーション/Potion of Illusion》を手札に引いてしまったが、その《幻影ポーション/Potion of Illusion》を《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》に使うことでフェイスハンターに勝利できた。
この試合(註7)では、《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》入りのシークレットローグを相手にしたが幸い相手がそれをなかなか引けずにいた。最終的には相手の《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》で僕の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》は根こそぎにされてしまったが、残されたミニオンと《ジャンディス・バロフ/Jandice Barov》で勝利することができた。
(註) リンク
原文ではそれぞれリプレイ動画へのリンクが張られている。
5:https://hsreplay.net/replay/eHQPQVvesGJmUEqb6WAsem
6:https://hsreplay.net/replay/VPtDZ9ZePM6pv3WBcLPb55
7:https://hsreplay.net/replay/7qpQzBdKjLZ27SgU3TJte3
▼ コメント欄から一部抜粋 (1)
【eddie7221994 によるコメント】
Eddieだ。この記事はトートランメイジデッキに関するとてもよいガイドで、デッキについて必要な知識が深く広くカバーされている。
ただ《封印されし監視者/Imprisoned Observer》に関していえば、これはデッキの中でもトップクラスに役立つカードだし、このデッキが終盤まで生き延びられるのはこのカードのおかげだ。
確かにコンボを回そうとするターンには邪魔に感じられるのは事実だけど、個人的にはトートランメイジデッキを組むならぜひ入れるべきカードだと思うよ。
▼ コメント欄から一部抜粋 (2)
【ShadeHS_ によるコメント】
素晴らしい無駄のないガイドだね。同じくこのデッキでレジェンドに到達したばかりだ。戦績は 27勝13敗(勝率68%)だった。それでこの記事を読んでいくつか聞きたいことと伝えたいことがある。
まず1つ目。《教団の新入会員/Cult Neophyte》がシークレットローグ対策とある。個人的にはシークレットローグとの対戦は、《フリック・スカイシヴ/Flik Skyshiv》さえなければ大した問題はなかった。
シークレットローグは序盤にきついプレッシャーをかけてくることもないし、無限にバリューを稼いでこられてもこっちのコンボの前には無意味だしね。
記事の中で《教団の新入会員/Cult Neophyte》がシークレットローグとの対戦時に特に大事になると書いた理由をもう少し詳しく知りたいな。
2つ目は爆弾ウォリアーだ。このデッキとの対戦はむしろ楽しみだったよ。確かに爆弾がスペルとして扱われるのは面倒だったけどね。
使ってたトートランメイジデッキには《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》を2枚入れてた(スロット的には《教団の新入会員/Cult Neophyte》の代わりだ)。
トップデッキで武器を引いてそのままこっちを殴り倒してくるようなデッキ全般に対抗するためさ。例えば、破片ダークハンター、パラディン(?)、アグロローグ、ガラクロンド爆弾ウォリアー。
こういうデッキ相手には《大地の円環の遠見師/Earthen Ring Farseer》や《カルトゥートの守護者/Khartut Defender》を優先的に探しつつコンボを目指して、中盤を無事生き延びられたら最終的に爆弾ダメージを超える回復量でゲームを決めてた。
そうそう。どうしても爆弾を引きたくないならそのためだけに毎ターン手札を満タンにしておくという手もある。いずれにせよ序盤を安定して生き延びるために《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》は必須なカードの1つだ。
爆弾が入った状態だと25%の確率で《幻影ポーション/Potion of Illusion》が引けないという問題の解決法は見つけられていない。何しろ《フロストノヴァ/Frost Nova》か《ブリザード/Blizzard》のいずれかを引き切るまでの時間を耐えるのは至難の業だからね。
ただ《伝承守護者ポルケルト/Lorekeeper Polkelt》を引ければ、2回の75%に賭けないといけない事態は避けられる。まず最初の75%は自力で当てて《幻影ポーション/Potion of Illusion》を唱える。
そして、そのポーションで得た1/1のコピーは2枚目の《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》(8マナ)を引くまで手札に抱えておく。そうすれば1ターンに2回、ポーションを探しに行けるからコンボをミスする可能性はかなり下げられる。
何にせよ、ホントにいいガイド記事だった。公開してくれてありがとう。他の記事も楽しみにしてるよ。
【著者 summand による返信コメント】
記事の書き方が誤解を招く表現だったかもしれない。《教団の新入会員/Cult Neophyte》を入れたのはシークレットメイジ戦で重要になるからじゃないんだ。
《酸性沼ウーズ/Acidic Swamp Ooze》がほとんどの試合で役に立たなかったから(ラダーをのぼる最中、一度も武器ローグや爆弾ウォリアーに会わなかった)、それよりは役に立つだろうと《教団の新入会員/Cult Neophyte》を入れたんだ。
シークレットローグの盤面は大体6~8ターン目に脅威になる。《クエスト中の冒険者/Questing Adventurer》や《エドウィン・ヴァンクリーフ/Edwin VanCleef》のせいでね。
こいつらはデカ過ぎてミニオンをぶつけて倒すのは不可能に近い。そのせいでこいつらの攻撃を止められずに負けた試合が何度かあった。ローグ戦の戦績は4勝5敗だ。
2枚目の8マナの《トートランの巡礼者/Tortollan Pilgrim》を引くまで手札に1/1のコピーをとっておく、というアイデアはなかったな。本当にいい戦法だ。教えてくれてありがとう。
【翻訳】イースターエッグをお届け/All in One Basket【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年04月01日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/all-one-basket-2002-04-01
マジックエッグ週間にようこそ! 復活祭のイースターということで復活と再誕のシンボルである卵(Egg)を今週のテーマにしたいと思っている。ああ、大丈夫さ、一週間の献立に困らないだけの卵ネタがマジックにはあるからね。
どんな卵ネタが披露されるか紹介しておこう。アンソニーは、多人数プレイにおける《三畳紀の卵/Triassic Egg》がいかにぶっ壊れかを解説してくれる予定だ。ベンは、《不明の卵/Dingus Egg》から今に至るまで、マジックにおける卵の歴史をたどる旅に連れていってくれる。
続けてジェイが、アラビアンナイトの《ルフ鳥の卵/Rukh Egg》とアングル―ドの《Chicken Egg》を使ったデッキの可能性を紹介してくれることになっており、そしてランディが《ダークウォーターの卵/Darkwater Egg》の開発秘話で週を締めくくる予定だ。
私の担当はおそらく一番面白いネタだろうね。ジャッジメントにおける卵関連のトリビアネタを紹介したいと思っているよ。……え? ジャッジメントと卵になんの関係があるんだ、って?
よしよし、じゃあ、さっそく卵探しの旅に出かけようか。振り落とされないようちゃんとシートベルトを締めておいてくれ。さあ、出発だ!
ことの始まりはおよそ1年前のことだ。私は開発部のリーダーであるビル・ローズと一緒に会社の一室にいた。これから開発に着手する予定のジャッジメントをどんなセットにするかについて話し合うためだ。
直前のトーメントは「黒いセット」という売り(註)を持つことでプレイヤーたちの興味を引く予定だった。そこで私たちはジャッジメントにもそういった「引き」が必要だと考えていた。
さて会社の一室であるビル・ローズのオフィスでオデッセイのカードを眺めていた私は、その中に《アトガトグ/Atogatog》を発見した。そのとき閃いたんだ。アングル―ド2(註)の出番だ!、とね。
この回想シーンの数年前にアングル―ドの続編は開発休止となっていた。そしてそのアングル―ドの続編(ここでは仮にアングル―ド2と呼ぼう)の開発には私も深く関わっていた。
宙に浮いた状態となりつつもすでに多くが完成していたアングル―ド2のカードたちをどうするかについては、休止となって以降もときたま話題に上がっていた。
いや、話題に上がっていただけでなく、そのうちの何枚かは実際に公式セットに居場所を見つけることに成功していた(例えば《火+氷/Fire+Ice》のような分割カード、そして、そう、前述の《アトカトグ/Atogatog》もその1つだ)。
ビル・ローズと私は良くも悪くも似た者同士だったので、《アトカトグ/Atogatog》のカードを掲げながら「今がそのときかもしれないぞ!」と叫ぶだけで意図は伝わったらしく大笑いしていた。
よく使われる言い回しの1つに「山をムハンマドのもとへ連れてこれないなら、ムハンマドを山のもとへ連れていく必要がある」という言葉がある。つまりはそういうことだ。アングル―ドのもとへ皆を連れていけないのなら、普通のセットにアングル―ドを(ほんの少しでも)連れてくればいいのさ。
使われなかったアングル―ド2のカードをジャッジメントに混ぜ込んでやるんだ。ご存じの通りトーメントは「黒色なセット」になったが、おそらくジャッジメントは「異色なセット」になるだろうね。
ところで覚えている人もいると思うが、アングル―ドの主要なテーマの1つに「ニワトリ(Chicken)」があった。それを受けて続編のアングル―ド2ではテーマの1つを「卵(Egg)」とする予定だった(つまり少なくともマジックにおいては「卵か先か、ニワトリが先か?」の論争に決着がついている、ということだ)。
すでに卵サイクル(註)がオデッセイに収録されていることもジャッジメントに卵関連のカードを登場させるにあたって追い風となる。
というわけで今ここに発表させてもらおう。
次のセットであるジャッジメントのテーマは「卵(Egg)」だ! 過去のマジックに登場した様々な「卵」なカードたちが水曜日にベンのコラムでも紹介されていたが、ジャッジメントでは君たちが見たこともないような奇妙な卵たちが登場することになるだろうね。
完成版のカードを見せるにはまだ時期尚早だが、いくつかのプレイテスト中の「卵」を君たちに披露する許可をもらってきたぞ。おっと、念のため。ここで紹介する以下のカードたちはまだ開発途中のものだ。実際に印刷されるバージョンそのものではないのでテキストがテンプレートに沿っていないものもある。注意してくれ。
▼《Egg Lotus》 (0)
Artifact
Sacrifice CARDNAME: Add one mana to your mana pool at the start of each main phase for every turn during the entire match.
(睡蓮の卵 (0)
アーティファクト
睡蓮の卵を生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を毎ターンのメインフェイズの開始時に加える。この効果はこの試合中ずっと持続する)
▼《Dodo Egg》 (2)(R)(R)
Creature - Bird Egg
CARDNAME comes into play with three hatch counters on it.
At the beginning of each turn, move a hatch counter to target permanent you control. If that permanent references a counter type in its rules text, the counter becomes that kind of counter.
If CARDNAME has no hatch counters on it, it gets +4/+3 and gains flying.
0/1
(ドードー鳥の卵 (2)(赤)(赤)
クリーチャー - 鳥・卵
ドードー鳥の卵はその上に孵化カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
毎ターンの開始時に孵化カウンターをあなたがコントロールする別のパーマネントの上に移動させる。
そのパーマネントのルール・テキストが何らかのタイプのカウンターを参照している場合、移動されたカウンターはそのカウンターの1つになる。
もしドードー鳥の卵の上に孵化カウンターが1個も置かれていないとき、それは+4/+3の修整と飛行を得る。
0/1)
▼《Jurassic Egg》 (4)
Artifact
As CARDNAME comes into play, choose a letter.
Whenever a card is played that has the chosen letter in its name, put a breeding counter on CARDNAME.
Remove X breeding counters from CARDNAME: Put an X/X green dinosaur token into play.
(ジュラ紀の卵 (4)
アーティファクト
ジュラ紀の卵が戦場に出るに際し、アルファベットを1つ選択する。
選択されたアルファベットをカード名に含むカードがプレイされるたび、ジュラ紀の卵に飼育カウンターを1個置く。
ジュラ紀の卵の上から飼育カウンターをX個取り除く:緑のX/Xの恐竜・クリーチャー・トークンを1体生成する。)
はてさて今年の国別選手権や世界選手権はいつもよりも賑やかで楽しくて混乱したものになるかもしれないよ。いや、まあ、私が今言ったことが本当だったらの話だけどね。どういう意味かって?
エイプリルフールだよ! そう、今日は4月1日さ! ちょっとしたお楽しみがなけりゃ、やってられないだろう?
さてさて。
現実の公式サイトは土地破壊週間を迎えている。私の今週の(本当の)コラムを読みたい人は以下のリンク先(註)を参照してくれ。ゴチ。
【翻訳】石の雨を避けたミーティングルームで/Tweak in Review【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年04月01日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/tweak-review-2002-04-01
土地破壊週間にようこそ! 今週はマジックにおける最古参のデッキタイプの1つを取り上げてみよう。
開発部は土地破壊に関して非常に興味深い視点を持っており、せっかくなので私はこの視点というものがどのようなものなのか、そしてそれが新たに作られる土地破壊カードのデザインにどのように影響しているのかについて書こうと考えていた。
ところがランディ・ビューラーがまったく同じテーマで記事を書く予定だと知ったので、それは彼に譲ることにした。もし前述の内容に興味があるなら金曜日にアップされる予定のランディのコラムをぜひ読んでみてくれ。
さて、代わりに今日の私のコラムではデザインという仕事の中で特に見過ごされがちな部分に語ろうと思っている。
土地を破壊する前に
本題に入る前に、先週のアンケートの結果をお伝えしたい。
フレイバーテキストに今後も下らないダジャレがあってもよいのかどうかについてのアンケートの結果は以下の通りだ。今までのアンケートの中でも特に接戦だったよ。
下らないダジャレはマジックに居場所があるか?
は い 1,792票(58%)
いいえ 1,277票(42%)
合 計 3,069票
さてこの結果から何が読み取れるのか? これは非常に複雑なテーマであり、クリエイティブチームも注目している問題でもある。チームの判断については今後のセットを待つことで結果も分かるだろう。
さて、本題に戻ろうか。
世に棲む日日
君たちの中に映画「バックドラフト」を見たことある人はいるかな? カート・ラッセルが燃え盛る炎に包まれた部屋から子供を抱えて飛び出してくるシーンがあっただろう。カートが部屋から広間に逃げ込めた直後に背後の部屋で大爆発が起きて火が噴き出してくるシーンだ。
おそらく多くの人が消防士に抱いているイメージはこれだろう。燃え盛る建物の中を駆け回り、取り残された子供たちを助けてまわるヒーローだ。
しかし現実において普通の消防士が燃え盛る建物に飛び込むのは年に数える程度のはずだ。いや、決して消防士の仕事を軽視しているわけではない。そもそも燃え盛る建物にただの一度でも飛び込めればそれは十二分に尊敬に値する。
私がここで言いたかったのは、消防士が日常的にこなしている仕事はそんなヒロイックなものではなくもっと平凡な仕事だということだ。危機一髪な救出劇よりも、たとえば消防車の手入れなどをしているはずだ。
そして同じ事がマジックのデザイナーにも言える。
確かにデザイナーたちは突拍子もない能力を持った派手な新カードの開発にその時間の一部を費やしている。しかしそれは仕事のごく一部であり、多くの時間はもっと平凡な作業に費やされているんだ。
そう、レアは確かに派手で面白い。しかしセットの生き死にを握っているのは何か。コモンだ。
……さて、この話がどう土地破壊の話につながるんだろうね?(私が「大丈夫だよ、ちゃんと今日のテーマのことも忘れてないよ!」と念押ししたコラムが過去にいくつあったか、数えてる人はいるだろうか)
うん、まず土地破壊カードは私たちがどのセットにも必ず1枚は含めるようにしている基本的なカードだ。そのため、これは開発部が日々こなしている業務の1つを紹介するのに特に適したカードということになる。
その業務とは微調整(Tweak)だ。
ひとひねりを加える
微調整とは何か? それはわずかな違いを除いて、既存のカードとまったく同じカードを作る作業だ。例えば《石の雨/Stone Rain》というカードがある。これは赤のソーサリー呪文で土地を破壊する。
アルファ版で初登場したカードでリチャード・ガーフィールドのデザインによるものだ。この《石の雨/Stone Rain》の微調整版の例といえば以下が挙げられる。
・《倒壊/Raze》:マナコストが安いが自身の土地も破壊
・《不毛化/Lay Waste》:サイクリングが付いている
・《滅却/Devastate》:土地を破壊でき、また全てにダメージを与える
・《ドワーフの地すべり/Dwarven Landslide》:キッカーでさらに土地を破壊
・《地の裂け目/Earth Rift》:フラッシュバックが付いている
微調整の目的とは何か。それは、古いカードのエッセンスを残しつつもカードに新鮮味が感じられる何かを持たせることだ。皮肉なことにこれは私のハリウッド時代のスキル(註)が生かされる分野でもある。
ハリウッドは、古いものを(より良い形で)焼き直し続けている場所だ。
これに関する面白い手法の1つとしては、ハリウッドで「Three-Beat」として知られている手法がある。既存のアイデア2つと混ぜ合わせて、新たなアイデアとして売りつけるんだ。
例を挙げよう。
映画「スパイキッズ」は、ジェームス・ボンドとグーニーズがハリウッドで出会ったことで生まれたものだ。ドラマ「ヤング・スパイダーマン」は、スーパーマンとドーソンズ・クリーク(訳注:アメリカのテレビドラマ)が出会って生まれた。映画「ビューティフル・マインド」は、グッド・ウィル・ハンティングと失われた私(訳注:原題は「Sybil」)が出会って生まれた。
信じてもらえるか分からないが、マジックのデザインという仕事にはこれと似通ったところがある。コモンを作る時だ。
コモンを作るためには、まず初めにマジックの基本的な役割(クリーチャー破壊、カードドロー、コンバットトリックなど)を埋めるカードを作る必要がある。しかし既存のカードそのものというわけにはいかない。
そこで「微調整」が始まる。以下に挙げるのが代表的な手法だ。
その1:ブロックの新メカニズムをつける
最初にデザイナーたちが目を向けるのはそのブロックで登場する新メカニズムだ。いずれにせよデザイナーはその新たなメカニズムをカードに取り入れる必要があるから、まさに相思相愛だ。
オデッセイブロックを例にとろうか。このブロックで新たに登場したメカニズムはフラッシュバックとスレッショルドだ。
まずは《地の裂け目/Earth Rift》を例として挙げるべきだろうね。石の雨がフラッシュバックと出会って生まれたわけだ。
それではスレッショルドは? うん、オデッセイのデザイナーたちは同様にスレッショルドについても試行錯誤を繰り返したんだが、結局スレッショルド持ちの土地破壊カードは生まれていない。これだ、と思えるアイデアが最後まで出なかったんだ。
その2:追加の効果をつける
ときには既存のカードをほぼそのままに、そこに少しの追加を加えるだけのことが最善の策となることもある。
プロフェシーの《滅却/Devastate》が良い例だ。これは《石の雨/Stone Rain》が《微震/Tremor》と出会って生まれたカードだ。
このタイプの微調整の難しい点は、元の効果と追加される効果になんらかのシナジーが必要という点だ。それはプレイする上でのゲーム的なシナジー、もしくはフレイバー的な面でのシナジーのいずれかとなる。もちろん両方を満たすのがより理想的だ。
その点ではこの《滅却/Devastate》は両方を満たしている。土地破壊デッキにウィニーを一掃する効果は有用だし、土地が破壊される際に「地震」的な効果が生まれるのも実に自然なことだ。
その3:ペナルティ能力をつける
上記の2つ以外でよく使われるテクニックに、コストを安くする代わりにペナルティ能力を付けるというものがある。
このカテゴリの例としてはウルザズ・サーガの《倒壊/Raze》がふさわしいだろう。「相手に《石の雨/Stone Rain》」と「自分に《石の雨/Stone Rain》」が出会ったわけだ。
《倒壊/Raze》は、《石の雨/Stone Rain》から2マナもそぎ落とされている代わりに自身の土地を1枚生け贄に捧げる必要がある。
デッキをよりアグレッシブにするよう仕向けつつ、どうやってこのデメリットをかいくぐろうかとプレイヤーに頭を使わせる良いカードだ。
その4:制限をかける
この微調整のパターンは直前のパターンの仲間とも言える。デザイナーは基本的な効果を1つ選んだあと、しかるのちにその効果や対象を元よりも制限するわけだ。もちろん効果が劣るかわりにマナコストは安くなる。
そうだね、基本でない土地しか破壊できない《溶岩のあぶく/Lava Blister》がこのカテゴリのカードと言えるかもしれない。《石の雨/Stone Rain》が《破滅/Ruination》と出会ったわけだ(ただ《溶岩のあぶく/Lava Blister》には懲罰者(Punisher)効果もついているのでイマイチ良い例ではないかもしれない)。
その5:呪文の速度を変える
前述されたもの以外でよく取られる選択肢としてはこれがある。インスタントをソーサリーにしたり、逆にソーサリーをインスタントにしたりする。
この微調整の話をするのに《石の雨/Stone Rain》はあまりよくない例となる。なぜなら開発部は土地破壊効果はソーサリーにすると決めたからだ(これに関しては金曜日のランディの記事に詳しい)。
例として挙げられそうなのはプレーンシフトの《リースの魔除け/Rith’s Charm》くらいだろうか。ただ正直、これを微調整版として挙げるのは自分でも厳しい気がしている。あえていえば《石の雨/Stone Rain》がインスタントの選択肢の1つに選ばれた、という感じかな。
その6:再録する
最後がこれだ。もちろんこれもありだ。そのままさ。厳密には微調整とは呼べないかもしれない。ただこれがセットの穴を埋めるための最適解となることはよくある話だ。
私がよく受ける質問の1つに「なんで再録するの?」というものがある。
この問いに本気で答えようと思ったらそれだけで1つのコラムになるだけの分量を必要とするが、手短に言えば(余談だが、先日、とある説明を「手短に言えば」で済ませたとき、蜂の巣をつついたような反応が返ってきたね。ふと思い出したよ)再録は他のどんな手法よりも的確にその仕事をこなしてくれるからだ。
《石の雨/Stone Rain》の場合、その「土地1つを対象とし、それを破壊する」というシンプルさを上回ることは非常に難しい。《石の雨/Stone Rain》が《石の雨/Stone Rain》に出会うわけだ。
そんなとき、開発部は同じカードをそのまま世に出す。
ときに私たちは再録し、ときに私たちは微調整を行う。《石の雨/Stone Rain》はこのカテゴリの例にまさにふさわしい(何しろ、つい最近まで《石の雨/Stone Rain》は最も多くの再録が行われたカードの1枚だったからね)
アルファ:初登場
アイスエイジ:再録
ミラージュ:再録
テンペスト:再録
ウルザズ・サーガ:調整版
メルカディアン・マスクス:再録
インベイジョン:調整版
オデッセイ:調整版
いってみればこの微調整は文章において決まり文句や常套句を使うようなものだ。オリジナリティのある新たな何かで表現したいときもあれば、逆に使い古された決まり文句がぴったり当てはまるときもあるのだ。
こんなに楽しい仕事はない
良いデザイナーになるための条件の1つはデザインの細かい仕事も楽しめることだ。コモンを作るのは決して汚れ仕事ではない。それは創造性と簡潔性を同時に達成する機会でもある。
このコラム、「Making Magic」はマジックのデザイナーたちの仕事を垣間見られるコラムだ。今日の記事がデザイナーの仕事の中でも特に平凡な(しかし決して退屈でない)仕事について、君たちになんらかの気づきを与えることが出来たなら幸いだ。
さて、来週はデザイナーの仕事の中で君たちもやったことのあるであろう何かについて話そうと思う。それまで、君たちが土地破壊デッキとの対戦時に十分な量の土地を引けるよう祈っているよ。
マーク・ローズウォーター
Mark Rosewater
2002年04月01日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/all-one-basket-2002-04-01
マジックエッグ週間にようこそ! 復活祭のイースターということで復活と再誕のシンボルである卵(Egg)を今週のテーマにしたいと思っている。ああ、大丈夫さ、一週間の献立に困らないだけの卵ネタがマジックにはあるからね。
どんな卵ネタが披露されるか紹介しておこう。アンソニーは、多人数プレイにおける《三畳紀の卵/Triassic Egg》がいかにぶっ壊れかを解説してくれる予定だ。ベンは、《不明の卵/Dingus Egg》から今に至るまで、マジックにおける卵の歴史をたどる旅に連れていってくれる。
続けてジェイが、アラビアンナイトの《ルフ鳥の卵/Rukh Egg》とアングル―ドの《Chicken Egg》を使ったデッキの可能性を紹介してくれることになっており、そしてランディが《ダークウォーターの卵/Darkwater Egg》の開発秘話で週を締めくくる予定だ。
私の担当はおそらく一番面白いネタだろうね。ジャッジメントにおける卵関連のトリビアネタを紹介したいと思っているよ。……え? ジャッジメントと卵になんの関係があるんだ、って?
よしよし、じゃあ、さっそく卵探しの旅に出かけようか。振り落とされないようちゃんとシートベルトを締めておいてくれ。さあ、出発だ!
ことの始まりはおよそ1年前のことだ。私は開発部のリーダーであるビル・ローズと一緒に会社の一室にいた。これから開発に着手する予定のジャッジメントをどんなセットにするかについて話し合うためだ。
直前のトーメントは「黒いセット」という売り(註)を持つことでプレイヤーたちの興味を引く予定だった。そこで私たちはジャッジメントにもそういった「引き」が必要だと考えていた。
(註) 黒いセット
トーメントは通常のセットであれば各色平均的に収録されているところ、「黒 40枚/青 28枚/赤 28枚/白 21枚/緑 21枚/その他 5枚」と枚数が大きく黒に偏ったセットだった。
さて会社の一室であるビル・ローズのオフィスでオデッセイのカードを眺めていた私は、その中に《アトガトグ/Atogatog》を発見した。そのとき閃いたんだ。アングル―ド2(註)の出番だ!、とね。
(註) アングル―ド
アングル―ドは公式大会では使えないジョークセットで、通常のマジックカードと見分けがつくように枠が銀色になっている(そのためアングル―ドセットのカードはまとめて「銀枠」とも呼ばれている)。記事の書かれた当時は銀枠セットはまだ初代アングル―ドの1セットのみで、続編は噂されつつも実現していなかった。銀枠セットの第2弾であるアンヒンジドが世に出たのはこの記事から2年半後。
この回想シーンの数年前にアングル―ドの続編は開発休止となっていた。そしてそのアングル―ドの続編(ここでは仮にアングル―ド2と呼ぼう)の開発には私も深く関わっていた。
宙に浮いた状態となりつつもすでに多くが完成していたアングル―ド2のカードたちをどうするかについては、休止となって以降もときたま話題に上がっていた。
いや、話題に上がっていただけでなく、そのうちの何枚かは実際に公式セットに居場所を見つけることに成功していた(例えば《火+氷/Fire+Ice》のような分割カード、そして、そう、前述の《アトカトグ/Atogatog》もその1つだ)。
ビル・ローズと私は良くも悪くも似た者同士だったので、《アトカトグ/Atogatog》のカードを掲げながら「今がそのときかもしれないぞ!」と叫ぶだけで意図は伝わったらしく大笑いしていた。
よく使われる言い回しの1つに「山をムハンマドのもとへ連れてこれないなら、ムハンマドを山のもとへ連れていく必要がある」という言葉がある。つまりはそういうことだ。アングル―ドのもとへ皆を連れていけないのなら、普通のセットにアングル―ドを(ほんの少しでも)連れてくればいいのさ。
使われなかったアングル―ド2のカードをジャッジメントに混ぜ込んでやるんだ。ご存じの通りトーメントは「黒色なセット」になったが、おそらくジャッジメントは「異色なセット」になるだろうね。
ところで覚えている人もいると思うが、アングル―ドの主要なテーマの1つに「ニワトリ(Chicken)」があった。それを受けて続編のアングル―ド2ではテーマの1つを「卵(Egg)」とする予定だった(つまり少なくともマジックにおいては「卵か先か、ニワトリが先か?」の論争に決着がついている、ということだ)。
すでに卵サイクル(註)がオデッセイに収録されていることもジャッジメントに卵関連のカードを登場させるにあたって追い風となる。
(註) 卵サイクル
オデッセイに収録されている5種類のアーティファクトで、無色2マナを友好色2色へとフィルターしつつカードと1枚引ける使い捨ての1マナアーティファクトを指す。イラストが綺麗。ちなみにこの卵サイクルをキーにした「サニーサイドアップ」(= 目玉焼きの英語名)という名前のデッキがある。
というわけで今ここに発表させてもらおう。
次のセットであるジャッジメントのテーマは「卵(Egg)」だ! 過去のマジックに登場した様々な「卵」なカードたちが水曜日にベンのコラムでも紹介されていたが、ジャッジメントでは君たちが見たこともないような奇妙な卵たちが登場することになるだろうね。
完成版のカードを見せるにはまだ時期尚早だが、いくつかのプレイテスト中の「卵」を君たちに披露する許可をもらってきたぞ。おっと、念のため。ここで紹介する以下のカードたちはまだ開発途中のものだ。実際に印刷されるバージョンそのものではないのでテキストがテンプレートに沿っていないものもある。注意してくれ。
▼《Egg Lotus》 (0)
Artifact
Sacrifice CARDNAME: Add one mana to your mana pool at the start of each main phase for every turn during the entire match.
(睡蓮の卵 (0)
アーティファクト
睡蓮の卵を生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を毎ターンのメインフェイズの開始時に加える。この効果はこの試合中ずっと持続する)
▼《Dodo Egg》 (2)(R)(R)
Creature - Bird Egg
CARDNAME comes into play with three hatch counters on it.
At the beginning of each turn, move a hatch counter to target permanent you control. If that permanent references a counter type in its rules text, the counter becomes that kind of counter.
If CARDNAME has no hatch counters on it, it gets +4/+3 and gains flying.
0/1
(ドードー鳥の卵 (2)(赤)(赤)
クリーチャー - 鳥・卵
ドードー鳥の卵はその上に孵化カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
毎ターンの開始時に孵化カウンターをあなたがコントロールする別のパーマネントの上に移動させる。
そのパーマネントのルール・テキストが何らかのタイプのカウンターを参照している場合、移動されたカウンターはそのカウンターの1つになる。
もしドードー鳥の卵の上に孵化カウンターが1個も置かれていないとき、それは+4/+3の修整と飛行を得る。
0/1)
▼《Jurassic Egg》 (4)
Artifact
As CARDNAME comes into play, choose a letter.
Whenever a card is played that has the chosen letter in its name, put a breeding counter on CARDNAME.
Remove X breeding counters from CARDNAME: Put an X/X green dinosaur token into play.
(ジュラ紀の卵 (4)
アーティファクト
ジュラ紀の卵が戦場に出るに際し、アルファベットを1つ選択する。
選択されたアルファベットをカード名に含むカードがプレイされるたび、ジュラ紀の卵に飼育カウンターを1個置く。
ジュラ紀の卵の上から飼育カウンターをX個取り除く:緑のX/Xの恐竜・クリーチャー・トークンを1体生成する。)
はてさて今年の国別選手権や世界選手権はいつもよりも賑やかで楽しくて混乱したものになるかもしれないよ。いや、まあ、私が今言ったことが本当だったらの話だけどね。どういう意味かって?
エイプリルフールだよ! そう、今日は4月1日さ! ちょっとしたお楽しみがなけりゃ、やってられないだろう?
さてさて。
現実の公式サイトは土地破壊週間を迎えている。私の今週の(本当の)コラムを読みたい人は以下のリンク先(註)を参照してくれ。ゴチ。
(註) 以下のリンク先
原文ではここで以下のURLへのリンクが張られている。土地破壊について書かれた「本当の」コラム。
https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/all-one-basket-2002-04-01
【翻訳】石の雨を避けたミーティングルームで/Tweak in Review【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年04月01日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/tweak-review-2002-04-01
土地破壊週間にようこそ! 今週はマジックにおける最古参のデッキタイプの1つを取り上げてみよう。
開発部は土地破壊に関して非常に興味深い視点を持っており、せっかくなので私はこの視点というものがどのようなものなのか、そしてそれが新たに作られる土地破壊カードのデザインにどのように影響しているのかについて書こうと考えていた。
ところがランディ・ビューラーがまったく同じテーマで記事を書く予定だと知ったので、それは彼に譲ることにした。もし前述の内容に興味があるなら金曜日にアップされる予定のランディのコラムをぜひ読んでみてくれ。
さて、代わりに今日の私のコラムではデザインという仕事の中で特に見過ごされがちな部分に語ろうと思っている。
土地を破壊する前に
本題に入る前に、先週のアンケートの結果をお伝えしたい。
(註) 先週のアンケート
この前の週のコラムはフレイバーテキストがテーマだった。その中で、フレイバーテキストにくだらないジョーク、特にダジャレが登場することは許容できるかどうかについて、コラムの最後にアンケートをとっていた。
フレイバーテキストに今後も下らないダジャレがあってもよいのかどうかについてのアンケートの結果は以下の通りだ。今までのアンケートの中でも特に接戦だったよ。
下らないダジャレはマジックに居場所があるか?
は い 1,792票(58%)
いいえ 1,277票(42%)
合 計 3,069票
さてこの結果から何が読み取れるのか? これは非常に複雑なテーマであり、クリエイティブチームも注目している問題でもある。チームの判断については今後のセットを待つことで結果も分かるだろう。
さて、本題に戻ろうか。
世に棲む日日
君たちの中に映画「バックドラフト」を見たことある人はいるかな? カート・ラッセルが燃え盛る炎に包まれた部屋から子供を抱えて飛び出してくるシーンがあっただろう。カートが部屋から広間に逃げ込めた直後に背後の部屋で大爆発が起きて火が噴き出してくるシーンだ。
おそらく多くの人が消防士に抱いているイメージはこれだろう。燃え盛る建物の中を駆け回り、取り残された子供たちを助けてまわるヒーローだ。
しかし現実において普通の消防士が燃え盛る建物に飛び込むのは年に数える程度のはずだ。いや、決して消防士の仕事を軽視しているわけではない。そもそも燃え盛る建物にただの一度でも飛び込めればそれは十二分に尊敬に値する。
私がここで言いたかったのは、消防士が日常的にこなしている仕事はそんなヒロイックなものではなくもっと平凡な仕事だということだ。危機一髪な救出劇よりも、たとえば消防車の手入れなどをしているはずだ。
そして同じ事がマジックのデザイナーにも言える。
確かにデザイナーたちは突拍子もない能力を持った派手な新カードの開発にその時間の一部を費やしている。しかしそれは仕事のごく一部であり、多くの時間はもっと平凡な作業に費やされているんだ。
そう、レアは確かに派手で面白い。しかしセットの生き死にを握っているのは何か。コモンだ。
……さて、この話がどう土地破壊の話につながるんだろうね?(私が「大丈夫だよ、ちゃんと今日のテーマのことも忘れてないよ!」と念押ししたコラムが過去にいくつあったか、数えてる人はいるだろうか)
うん、まず土地破壊カードは私たちがどのセットにも必ず1枚は含めるようにしている基本的なカードだ。そのため、これは開発部が日々こなしている業務の1つを紹介するのに特に適したカードということになる。
その業務とは微調整(Tweak)だ。
ひとひねりを加える
微調整とは何か? それはわずかな違いを除いて、既存のカードとまったく同じカードを作る作業だ。例えば《石の雨/Stone Rain》というカードがある。これは赤のソーサリー呪文で土地を破壊する。
Stone Rain / 石の雨 (2)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。
アルファ版で初登場したカードでリチャード・ガーフィールドのデザインによるものだ。この《石の雨/Stone Rain》の微調整版の例といえば以下が挙げられる。
・《倒壊/Raze》:マナコストが安いが自身の土地も破壊
・《不毛化/Lay Waste》:サイクリングが付いている
・《滅却/Devastate》:土地を破壊でき、また全てにダメージを与える
・《ドワーフの地すべり/Dwarven Landslide》:キッカーでさらに土地を破壊
・《地の裂け目/Earth Rift》:フラッシュバックが付いている
微調整の目的とは何か。それは、古いカードのエッセンスを残しつつもカードに新鮮味が感じられる何かを持たせることだ。皮肉なことにこれは私のハリウッド時代のスキル(註)が生かされる分野でもある。
(註) ハリウッド時代のスキル
著者のマーク・ローズウォーターには、ハリウッドでテレビの脚本家を勤めていた経歴がある(TVドラマ「ロザンヌ」のエピソードの1つなど)。
ハリウッドは、古いものを(より良い形で)焼き直し続けている場所だ。
これに関する面白い手法の1つとしては、ハリウッドで「Three-Beat」として知られている手法がある。既存のアイデア2つと混ぜ合わせて、新たなアイデアとして売りつけるんだ。
例を挙げよう。
映画「スパイキッズ」は、ジェームス・ボンドとグーニーズがハリウッドで出会ったことで生まれたものだ。ドラマ「ヤング・スパイダーマン」は、スーパーマンとドーソンズ・クリーク(訳注:アメリカのテレビドラマ)が出会って生まれた。映画「ビューティフル・マインド」は、グッド・ウィル・ハンティングと失われた私(訳注:原題は「Sybil」)が出会って生まれた。
信じてもらえるか分からないが、マジックのデザインという仕事にはこれと似通ったところがある。コモンを作る時だ。
コモンを作るためには、まず初めにマジックの基本的な役割(クリーチャー破壊、カードドロー、コンバットトリックなど)を埋めるカードを作る必要がある。しかし既存のカードそのものというわけにはいかない。
そこで「微調整」が始まる。以下に挙げるのが代表的な手法だ。
その1:ブロックの新メカニズムをつける
最初にデザイナーたちが目を向けるのはそのブロックで登場する新メカニズムだ。いずれにせよデザイナーはその新たなメカニズムをカードに取り入れる必要があるから、まさに相思相愛だ。
オデッセイブロックを例にとろうか。このブロックで新たに登場したメカニズムはフラッシュバックとスレッショルドだ。
まずは《地の裂け目/Earth Rift》を例として挙げるべきだろうね。石の雨がフラッシュバックと出会って生まれたわけだ。
Earth Rift / 地の裂け目 (3)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。
フラッシュバック(5)(赤)(赤)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)
それではスレッショルドは? うん、オデッセイのデザイナーたちは同様にスレッショルドについても試行錯誤を繰り返したんだが、結局スレッショルド持ちの土地破壊カードは生まれていない。これだ、と思えるアイデアが最後まで出なかったんだ。
その2:追加の効果をつける
ときには既存のカードをほぼそのままに、そこに少しの追加を加えるだけのことが最善の策となることもある。
プロフェシーの《滅却/Devastate》が良い例だ。これは《石の雨/Stone Rain》が《微震/Tremor》と出会って生まれたカードだ。
Devastate / 滅却 (3)(赤)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。滅却は、各クリーチャーと各プレイヤーにそれぞれ1点のダメージを与える。
Tremor / 微震 (赤)
ソーサリー
微震は、飛行を持たないすべてのクリーチャーにそれぞれ1点のダメージを与える。
このタイプの微調整の難しい点は、元の効果と追加される効果になんらかのシナジーが必要という点だ。それはプレイする上でのゲーム的なシナジー、もしくはフレイバー的な面でのシナジーのいずれかとなる。もちろん両方を満たすのがより理想的だ。
その点ではこの《滅却/Devastate》は両方を満たしている。土地破壊デッキにウィニーを一掃する効果は有用だし、土地が破壊される際に「地震」的な効果が生まれるのも実に自然なことだ。
その3:ペナルティ能力をつける
上記の2つ以外でよく使われるテクニックに、コストを安くする代わりにペナルティ能力を付けるというものがある。
このカテゴリの例としてはウルザズ・サーガの《倒壊/Raze》がふさわしいだろう。「相手に《石の雨/Stone Rain》」と「自分に《石の雨/Stone Rain》」が出会ったわけだ。
Raze / 倒壊 (赤)
ソーサリー
この呪文を唱えるための追加コストとして、土地を1つ生け贄に捧げる。
土地1つを対象とし、それを破壊する。
《倒壊/Raze》は、《石の雨/Stone Rain》から2マナもそぎ落とされている代わりに自身の土地を1枚生け贄に捧げる必要がある。
デッキをよりアグレッシブにするよう仕向けつつ、どうやってこのデメリットをかいくぐろうかとプレイヤーに頭を使わせる良いカードだ。
その4:制限をかける
この微調整のパターンは直前のパターンの仲間とも言える。デザイナーは基本的な効果を1つ選んだあと、しかるのちにその効果や対象を元よりも制限するわけだ。もちろん効果が劣るかわりにマナコストは安くなる。
そうだね、基本でない土地しか破壊できない《溶岩のあぶく/Lava Blister》がこのカテゴリのカードと言えるかもしれない。《石の雨/Stone Rain》が《破滅/Ruination》と出会ったわけだ(ただ《溶岩のあぶく/Lava Blister》には懲罰者(Punisher)効果もついているのでイマイチ良い例ではないかもしれない)。
Lava Blister / 溶岩のあぶく (1)(赤)
ソーサリー
基本でない土地1つを対象とし、それをそれのコントローラーが「溶岩のあぶくはそのプレイヤーに6点のダメージを与える」ことを選ばないかぎり、破壊する。
Ruination / 破滅 (3)(赤)
ソーサリー
すべての基本でない土地を破壊する。
その5:呪文の速度を変える
前述されたもの以外でよく取られる選択肢としてはこれがある。インスタントをソーサリーにしたり、逆にソーサリーをインスタントにしたりする。
この微調整の話をするのに《石の雨/Stone Rain》はあまりよくない例となる。なぜなら開発部は土地破壊効果はソーサリーにすると決めたからだ(これに関しては金曜日のランディの記事に詳しい)。
例として挙げられそうなのはプレーンシフトの《リースの魔除け/Rith’s Charm》くらいだろうか。ただ正直、これを微調整版として挙げるのは自分でも厳しい気がしている。あえていえば《石の雨/Stone Rain》がインスタントの選択肢の1つに選ばれた、という感じかな。
Rith’s Charm / リースの魔除け (赤)(緑)(白)
インスタント
以下から1つを選ぶ。
・基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。
・緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを3体生成する。
・このターン、あなたが選んだ発生源1つが与えるすべてのダメージを軽減する。
その6:再録する
最後がこれだ。もちろんこれもありだ。そのままさ。厳密には微調整とは呼べないかもしれない。ただこれがセットの穴を埋めるための最適解となることはよくある話だ。
私がよく受ける質問の1つに「なんで再録するの?」というものがある。
この問いに本気で答えようと思ったらそれだけで1つのコラムになるだけの分量を必要とするが、手短に言えば(余談だが、先日、とある説明を「手短に言えば」で済ませたとき、蜂の巣をつついたような反応が返ってきたね。ふと思い出したよ)再録は他のどんな手法よりも的確にその仕事をこなしてくれるからだ。
《石の雨/Stone Rain》の場合、その「土地1つを対象とし、それを破壊する」というシンプルさを上回ることは非常に難しい。《石の雨/Stone Rain》が《石の雨/Stone Rain》に出会うわけだ。
そんなとき、開発部は同じカードをそのまま世に出す。
ときに私たちは再録し、ときに私たちは微調整を行う。《石の雨/Stone Rain》はこのカテゴリの例にまさにふさわしい(何しろ、つい最近まで《石の雨/Stone Rain》は最も多くの再録が行われたカードの1枚だったからね)
アルファ:初登場
アイスエイジ:再録
ミラージュ:再録
テンペスト:再録
ウルザズ・サーガ:調整版
メルカディアン・マスクス:再録
インベイジョン:調整版
オデッセイ:調整版
(註) 調整版
それぞれの微調整版は、ウルザズ・サーガは《不毛化/Lay Waste》、インベイジョンは《疫病の胞子/Plague Spores》と《激情の耕作/Frenzied Tilling》、オデッセイは《地の裂け目/Earth Rift》
いってみればこの微調整は文章において決まり文句や常套句を使うようなものだ。オリジナリティのある新たな何かで表現したいときもあれば、逆に使い古された決まり文句がぴったり当てはまるときもあるのだ。
こんなに楽しい仕事はない
良いデザイナーになるための条件の1つはデザインの細かい仕事も楽しめることだ。コモンを作るのは決して汚れ仕事ではない。それは創造性と簡潔性を同時に達成する機会でもある。
このコラム、「Making Magic」はマジックのデザイナーたちの仕事を垣間見られるコラムだ。今日の記事がデザイナーの仕事の中でも特に平凡な(しかし決して退屈でない)仕事について、君たちになんらかの気づきを与えることが出来たなら幸いだ。
さて、来週はデザイナーの仕事の中で君たちもやったことのあるであろう何かについて話そうと思う。それまで、君たちが土地破壊デッキとの対戦時に十分な量の土地を引けるよう祈っているよ。
マーク・ローズウォーター
【非MTG翻訳】バニラ嫌いの車を治すことになったエンジニアの話/Car Allergic to Vanilla Ice Cream
ソース:Stephen Mann
元記事:http://beza1e1.tuxen.de/lore/allergic_car.html
私たちエンジニアは知っている。簡単に見える問題が簡単に片付かないこともあり、また、どんなに馬鹿げて見えようが真実は常に真実であることも。
さて、アメリカの大企業、ゼネラルモーターズのポンティアック部門へ届いた苦情は以下の通りだ(訳注:ポンティアックは自動車のブランド。2010年以降は作られていない)。
「私がこの件でお問い合わせするのは2回目です。しかし実のところお返事を頂けないのは仕方のないことだとも思っております。何しろ書いている私自身が馬鹿馬鹿しいと思ってしまうような問題だからです。
しかしそれでもこれは事実なのです。
まず私たち家族が毎晩の夕食のあとにデザートとしてアイスクリームを食べるという習慣があることをご紹介させてください。
もちろんアイスクリームと一言に言いましても様々な種類があります。そこで毎晩の夕飯のあとに私たち家族はまず今晩はどの味を食べたいかの投票を行います。それからあらためて私が店まで車を走らせてアイスクリームを買ってくるわけです。
これらは事実です。さらに私がつい最近、ポンティアックを購入させていただいたことも事実です。そして問題が始まったのがこのポンティアックを買ってからだということもまた事実なのです。
どういうことかと言いますと、このポンティアックはバニラ味のアイスクリームを買って店から帰ろうとするときだけ決まってエンストを起こすのです。他の味のアイスクリームを買ったときは問題なく発進できます。
馬鹿馬鹿しく聞こえることは重々承知のうえで、私は真剣にこの問題で悩んでいるということをお伝えしたいと思います。
教えてください。なぜポンティアックはバニラアイスを買ったときだけエンストを起こし、他の味のアイスクリームならば問題なく走れるのですか?」
この問い合わせを受け取ったポンティアック部門のトップは、当然ながらその内容には懐疑的であった。しかしいずれにせよ現場へとエンジニアを送り出すことにした。
さてそのエンジニアがまず驚かされたのは、出迎えた相手が教養あふれる真面目で裕福な男性であったことだ。
エンジニアは訪問のタイミングを夕食の直後に設定していたので、さっそく2人は車に乗ってアイスクリームを買いに出かけた。その晩に購入する予定のアイスはバニラ味であった。
そして店外の車に戻ってきた2人はエンストに見舞われた。
エンジニアはそれから3日連続で男性の家を訪ねた。次の夜はチョコレート味を買いに行き、車は問題なく発進できた。その次の夜はストロベリー味を買いに行き、車は問題なく発進できた。さらにその次の夜はバニラ味を買いに行き、車はエンストを起こした。
エンジニアは合理的な男だった。そのため、その車がバニラアレルギーである、などという結論で問題を片付けるつもりはなく、彼は原因を突き止めるまで足しげく男性の家に通い続けた。
その間、彼はメモを取り続けた。全てのデータを記録した。アイスを買いに行く時刻、用いているガソリンの種類、往復にかかった時間、などなど。
エンジニアがあることに気づくのにそう時間はかからなかった。バニラ味を買うのにかかる時間だけ、他の味を買うときよりも短かったのだ。
なぜそのようなことが起きうるのか。
それはアイスを売っている店の商品の配置に理由があった。その店ではバニラ味がもっともよく売れる商品だったので、客が手早くカゴに入れられるように店の入り口近くにバニラ専用のコーナーが設けられていたのだ。
それに対して他の味は店の奥の方に置かれており、それぞれ個別のコーナーも用意されておらず、結果として購入してから店を出るまでにかかる時間がバニラ味のときよりも長くかかった。
さて次の問題は、なぜ停めている時間が短いときだけ車を発進できなくなるのか、ということだったが、しかし(バニラ味が問題ではなく)時間が問題だと分かったことでエンジニアはすぐに答えに辿り着けた。
原因は蒸気閉塞だった。俗にベーパーロック現象とも呼ばれるこの問題は過熱され過ぎた液体から生じる泡が原因で発生する。
そして実のところ、男性の車には毎回この現象が発生していた。しかし長く停車しておけたとき(そう、バニラ味以外のアイスクリームを購入したとき)だけ加熱が収まり、問題なく車を発進できていたのだ。
そう。バニラ味を購入したときだけエンジンの冷却が不十分となりベーパーロック現象が解消されずエンストが発生してしまっていた、というのがこの問題の正体であった。
教訓:馬鹿げた苦情が真実の場合もある
(原文註:
この話は元々以下のサイト、Snopesにて明らかになったものだ
https://www.snopes.com/fact-check/cone-of-silence/ )
ソース:Stephen Mann
元記事:http://beza1e1.tuxen.de/lore/allergic_car.html
私たちエンジニアは知っている。簡単に見える問題が簡単に片付かないこともあり、また、どんなに馬鹿げて見えようが真実は常に真実であることも。
さて、アメリカの大企業、ゼネラルモーターズのポンティアック部門へ届いた苦情は以下の通りだ(訳注:ポンティアックは自動車のブランド。2010年以降は作られていない)。
「私がこの件でお問い合わせするのは2回目です。しかし実のところお返事を頂けないのは仕方のないことだとも思っております。何しろ書いている私自身が馬鹿馬鹿しいと思ってしまうような問題だからです。
しかしそれでもこれは事実なのです。
まず私たち家族が毎晩の夕食のあとにデザートとしてアイスクリームを食べるという習慣があることをご紹介させてください。
もちろんアイスクリームと一言に言いましても様々な種類があります。そこで毎晩の夕飯のあとに私たち家族はまず今晩はどの味を食べたいかの投票を行います。それからあらためて私が店まで車を走らせてアイスクリームを買ってくるわけです。
これらは事実です。さらに私がつい最近、ポンティアックを購入させていただいたことも事実です。そして問題が始まったのがこのポンティアックを買ってからだということもまた事実なのです。
どういうことかと言いますと、このポンティアックはバニラ味のアイスクリームを買って店から帰ろうとするときだけ決まってエンストを起こすのです。他の味のアイスクリームを買ったときは問題なく発進できます。
馬鹿馬鹿しく聞こえることは重々承知のうえで、私は真剣にこの問題で悩んでいるということをお伝えしたいと思います。
教えてください。なぜポンティアックはバニラアイスを買ったときだけエンストを起こし、他の味のアイスクリームならば問題なく走れるのですか?」
この問い合わせを受け取ったポンティアック部門のトップは、当然ながらその内容には懐疑的であった。しかしいずれにせよ現場へとエンジニアを送り出すことにした。
さてそのエンジニアがまず驚かされたのは、出迎えた相手が教養あふれる真面目で裕福な男性であったことだ。
エンジニアは訪問のタイミングを夕食の直後に設定していたので、さっそく2人は車に乗ってアイスクリームを買いに出かけた。その晩に購入する予定のアイスはバニラ味であった。
そして店外の車に戻ってきた2人はエンストに見舞われた。
エンジニアはそれから3日連続で男性の家を訪ねた。次の夜はチョコレート味を買いに行き、車は問題なく発進できた。その次の夜はストロベリー味を買いに行き、車は問題なく発進できた。さらにその次の夜はバニラ味を買いに行き、車はエンストを起こした。
エンジニアは合理的な男だった。そのため、その車がバニラアレルギーである、などという結論で問題を片付けるつもりはなく、彼は原因を突き止めるまで足しげく男性の家に通い続けた。
その間、彼はメモを取り続けた。全てのデータを記録した。アイスを買いに行く時刻、用いているガソリンの種類、往復にかかった時間、などなど。
エンジニアがあることに気づくのにそう時間はかからなかった。バニラ味を買うのにかかる時間だけ、他の味を買うときよりも短かったのだ。
なぜそのようなことが起きうるのか。
それはアイスを売っている店の商品の配置に理由があった。その店ではバニラ味がもっともよく売れる商品だったので、客が手早くカゴに入れられるように店の入り口近くにバニラ専用のコーナーが設けられていたのだ。
それに対して他の味は店の奥の方に置かれており、それぞれ個別のコーナーも用意されておらず、結果として購入してから店を出るまでにかかる時間がバニラ味のときよりも長くかかった。
さて次の問題は、なぜ停めている時間が短いときだけ車を発進できなくなるのか、ということだったが、しかし(バニラ味が問題ではなく)時間が問題だと分かったことでエンジニアはすぐに答えに辿り着けた。
原因は蒸気閉塞だった。俗にベーパーロック現象とも呼ばれるこの問題は過熱され過ぎた液体から生じる泡が原因で発生する。
そして実のところ、男性の車には毎回この現象が発生していた。しかし長く停車しておけたとき(そう、バニラ味以外のアイスクリームを購入したとき)だけ加熱が収まり、問題なく車を発進できていたのだ。
そう。バニラ味を購入したときだけエンジンの冷却が不十分となりベーパーロック現象が解消されずエンストが発生してしまっていた、というのがこの問題の正体であった。
教訓:馬鹿げた苦情が真実の場合もある
(原文註:
この話は元々以下のサイト、Snopesにて明らかになったものだ
https://www.snopes.com/fact-check/cone-of-silence/ )
先日アップした以下の記事の訳の苦労した点というか、楽しんだ点というか。
フレイバーにテキストを添えて/Add Text to Flavor
https://regiant.diarynote.jp/202001140642309735/
言い訳がましくならないように気を付けつつ。
まずタイトルについて。
原文のタイトルは「Add Text to Flavor」。実はあまり意味を読み解けてない。「Add Text to Flavor ~」で最後に名詞が来ていたら「~に風味をつけるためのテキスト」で分かりやすいんだけど……その名詞が省略されてるのかなあ。
いずれにしても「テキストを味付けに使いました」という意味だろう、と思って上記の訳にした。「テキストを隠し味に」とか「最後に少しテキストを足して」とかもありだったかな。
でも「フレイバー」は必要だろうし(なんの記事がタイトルで分かってもらうために)これでいいか。良しとしよう(自分に言い聞かせるように)。
次は翻訳以外の件。
Star City Gamesにもアップされているというのでダメ元で検索したらまだ残ってた。差分を訳して補足という形で足しこむか、と思ってたらリンク切れになった。コピッておくべきだった。残念。
ただそれほど大きな差異はなくて、あえて1つ挙げるとすれば註釈として足したグラフ(フレイバーテキストのうち何割が古典からの引用で、何割が歴史家的な第3者視点で……を示したパイグラフ)があったことくらい。
公式サイトの掲示板にもアップされた、とあるけどそれは見つけられなかった。さすがに17年前だしなあ。
これは《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》のフレイバーテキストで、ここで触れたいのは訳の話ではなくレイアウトの話。
DiaryNoteは記事の編集操作がシンプルで、太字か斜体か赤文字か青文字くらいしかフォントをいじれない。その中で、どうやって「ここは文章じゃなくてフレイバーテキストです」と示すかで迷った。正直、毎回迷ってる。
青文字や赤文字ではあまりに強すぎるし、Blockquoteを使って箱で囲うと注釈文と紛らわしくなる。今回は小文字(フォントサイズを1段階小さくする)で対応してみたけど、正解かどうか分からない。
大人しくそのままフォントをいじらないのが正解かもしれない……アンケートとりたいけど、そんな機能はないし、そもそも回答サンプルが2桁集まるとも思えないので、今後も試行錯誤を続けるしかないか。
ポイントは「Jerry Seinfeld」。前にも著者の記事に登場したのでこれが英国のコメディドラマの主人公(かつタイトル)であることは知ってた。ちなみに日本語のWikipediaでは「となりのサインフェルド」の項目で紹介されてる。
問題は、このドラマと登場人物が日本で知られているとは思えないこと、かつ見たことがないのでそれをネタしたセリフをそれらしく訳せる自信がないこと。
ここでかなり詰まってしまって、最後は固有名詞を使って訳すことを諦めた。勝手に作ったギャグの部分は……うーん……これのせいで筆者であるウィルさんが誤解されてしまったら申し訳ないな、とは感じる。
あらためて見ると「newsgroup」をどうして「ファンニュース」にしたのかよく分からない。「ファンサイト」が一番適切な気がする。そのうち直すかも。
あとマジック全然関係ない話としては、「Message Board」を「掲示板」としたあと「そういえばネットでの掲示板といえば BBS(Bulleton Board System)という略称が一般的だった時代があったな」とふと思い出した。
ここを読んだときは、ジャー・ジャー・ビンクスって本当に嫌われてるんだな、と思った。正直、友人たちと自宅に集まって見たときも不人気だった。
2002年の記事に登場してるということは……そうか、初登場は1999年なのか。20年以上前の前世紀だ。スターウォーズシリーズの新三部作すらそんな昔になってたとは。
ただ昔の映画とはいえスターウォーズの知名度は(「となりのサインフェルド」と比べて)日本でも高いから固有名詞を出してもいいかと思ってそのまま使った。ただ念のためと注釈はつけたけど。
翻訳の補足と言いつつあまり訳に関する話をしていないので、ここらで触れておく。ここで迷ったのは「Impersonal」という単語の訳。
最初、「特定のキャラクターのセリフがダメ」という話をしているのになんで「Impersonalである(非個人的である、個人に関連しない、客観的である)」という論調なのかが不思議だった。
あらためて文章全体をを読むと「プレイヤーという本当の主人公がないがしろにされている」という意味での「主体の喪失」なのね。理解した。
「some 16-year-old pothead’s half-baked D&D campaign」という表現の妙をどうしたらいいのか悩んだ挙句に上記の訳になった。「16歳」の部分を「中学生」「高校生」「ティーネイジャー」「中高生」とか色々試したけど、どうにも文章の中で浮いてしまうので最後はバッサリ切った。
あと「Pothead」という単語。「マリファナ常用者」を指す言葉らしい。なので直訳気味に訳すなら「16歳のマリファナ常用者が最後までちゃんと作り込まなかったD&Dのキャンペーン」だけど、比喩表現だろうから「薬でラリッた16歳が最後までちゃんと作り込まなかったD&Dのキャンペーン」のほうがそれらしいか。
とか色々やってたけど、どうしても「浮いて」しまうので簡略化してしまった。原文の妙に味のある文章が消えてしまうのであまり良くない。もしかしたら直すかもしれない。
各章のタイトルをまとめて並べてみる。訳しづらいものも多かったのでここのサイトに載せてる文章でも和英両方載せてみた。
それぞれ原文の持つ面白み(ネタ)を無視して分かりやすさを優先したり、極力近い形に訳そうとしたり、と訳し方が統一されていない。どちらかに合わせるべきだったかもしれない。
前者(分かりやすさ優先)の例としては、背景ストーリーの是非に触れている「Here’s a Story」がある。これは話を始める前置きとして使われる英語の定型句で、あえて訳すなら「こういうことだ。つまり~」という感じ(たぶん)。さらにここでは同時に言葉の意味をそのまま読んで「ストーリーがここにあって……」と読んでも、背景ストーリーについて語っている内容にフィットする。
そんな両方の意味にとれるような日本語のことわざや慣用句を見つけられれば最高なんだろうけど、労力がすごいかかりそうだったのでパスした。こういうところで悩み始めると一気に作業が停滞することを経験則で知ってるので。
あらためて何か妙案はなかったものかと再考してみると……うーん、カタカナの「ストーリー」が入ってる日本語の慣用句はそうそうない。ストーリーという単語の入ってる作品名をネタにするのもなかなか難しい(ネバーエンディングストーリー? 空からこぼれたストーリー?)。
やっぱり無理しなくて正解だった気がする(逃げ)
対して、原文に近い形に訳そうとした例としては「大鴉曰く/Quoth the Raven」がある。一応説明しておくと読者からの投稿の中にエドガー・アラン・ポーの小説から引用されたフレイバーテキストが紹介されていて、そのエドガー・アラン・ポーの有名な作品の1つに「大鴉(おおがらす)」と呼ばれる作品があって、その中で有名な一節が「Quoth the Raven」。意味は「大鴉曰く(= 大鴉の言葉を引用すると)」。
というわけで「現実の小説からの引用について」という章の内容、および読者が引用の例としてエドガー・アラン・ポーを挙げていたことなどを合わせ考えて、原文ではこの章タイトルになったものと思われる。
余談。この「Quoth the Raven」の中で繰り返し用いられる言い回しに「Nevermore」があり、マジックには同名のカード、《金輪際/Nevermore》がある。このカードが公式サイトの「Card of the day」で取り上げられたときの記事が以下で、かつこの週に紹介されたカードは、すべてエドガー・アラン・ポー作品に関連づけられたカードたちだった。
Card of the Day - 2012/03/09
https://regiant.diarynote.jp/201203092231401932/
今週のCard of the Day (2012年03月 第2週) とか (※関連付けの考察)
https://regiant.diarynote.jp/201203111223131373/
最後にもう1個だけ章のタイトルの訳に触れておく。「Different Strokes」を「十人十色」と訳したのについては、章の内容が好みに関する問題なので「蓼食う虫も好き好き」のほうが適切かもしれない……という思いも浮かんだんだけど、あまりに「和風」だなあ、と避けてしまった。そんだけ。
特に失敗したとは思っていないけど、あらためて読むと訳が固いなあ(いかにも翻訳した文章で、日本語としては若干不自然だなあ)と思う。
意訳を含むなら「ウィザーズで働く私たちは、君たちプレイヤー全員に例外なく楽しんでもらえるゲームを作ろうと日夜努力している。この目標に近づけば近づくほど、より君たちはゲームを楽しめるはずだし、誰もが幸せになれるはずだからだ」かな。
ただこれだと、ざっくり同じような意味をもつ文章を書いてるだけであって、翻訳と呼んでいいのか怪しい気がしてくる。でもあまりに不自然な文章のままにするのもなんだし……という行ったり来たりが楽しくて翻訳してる節はある。
末尾の「just a printout of all the cards」をどう訳せばいいのか。本物の「Godbook」の見た目が分からないこともあってなかなか難しかった。
一番楽しようとすれば「Godbookは、すべてのカードのただのプリントアウトだ」となる。さすがにこれはない。「~が載っている」くらいは欲しい。
次に「Godbookは、すべてのカードのただのプリントアウトが載っているものだ」となる。「ただの」の位置がいまいちなので変える……というような感じでちょいちょい変えていくと最終的には上記のような拙訳になる(変わりすぎでは?)
まず「basic puns seem to be frowned upon(基本的なダジャレは眉をひそめられてしまうようだ)」の部分はかなり変えてる。「Frowned upon」が難しかった。「眉をひそめる」だとちょっと深刻すぎるというか固すぎる。「つまらない」「嫌われる」なども考えたけど、最後は上記の通りで。
あと公式の日本語訳だとどこがダジャレなのか伝わらないので解説を付けた。ただ公式の日本語訳がダメというんじゃなくて……このフレイバーテキストをダジャレ込みの日本語にしようとすると「クマった」とか「熊手」とかを登場させる羽目になりそうで、銀枠ならまだしも通常のマジックじゃ無理(銀枠はそもそも英語版しか存在しないけど)。
引用が長くなってしまった。
ここはホントに色々難しかった。1行目は、シンプルでエレガントな「it is many things to many people」がどうにもシンプルかつエレガントに訳せなかった。悔しい。「人によって全く違った面を持つ」だとまた違うし。
2行目は、冒頭の「Mechanically」をどう訳すかという点が難所だった。あと特筆すべき点としては英語で「Style(スタイル)」となっているのをあえて別のカタカナ語である「タイプ」と訳したこと。
3行目はダジャレの場所で触れた「be frowned」をどう訳すべきか、というのと似た問題で、シンプルに「愛される/嫌われる」の対比でも良かったんだけど、なんか原文をもう少し尊重したい気持ちになってたらしく「bemoaned(渋面)」としてる
原文の「between a rock and a hard place」という言い回しを初めて知った。日本語にすらまだまだ知らない言い回しやら慣用句やらがたくさんあるのに、いわんや英語ときたら。
全ての本を読み終われないと同じで(新しく生まれるものを除いても)全ての言葉を知ることなんて無理なのかもしれないから、あまり深刻にならずにいよう。
大した話ではなくて「Palatable」という英語が難しかった、ということ。ちなみに意味は「口当たり(が良い)、美味しい」というような感じ。「Palate」という単語で「口蓋(口の中の上部)、味覚」などの意味になるらしい。知らない言葉はニュアンスが馴染んでないので訳しづらかった。
余談。ここの主張には「そうかなあ?」と思ってしまった。「あなたがゴブリン大好きなだけですよね」というか(著者のゴブリン好きは有名なので)……ゴブリン出しとけば多少ふざけたノリでも許されるだろう、というのが嫌いなプレイヤーもいるような気がする。
とりあえず訳に関する補足はここまで。
最後に、元記事の末尾に並んでいた「好かれたフレイバーテキスト・嫌われたフレイバーテキスト」の一覧の中でちょっと気になった奴を紹介してみる。
第7版のカードの中で「嫌い」のほうに入ってたフレイバーテキスト。このギャグは不発に終わったらしい。個人的には嫌いじゃない。
日本語版もいい訳だとは思うけど、悩んだ挙句にこれなのか、大して悩まずにこれに決めたのか、がすごい気になる。ところでこれ、読みは「いわお」だよね?(原文が人名なので)
第7版のカードの中で「好き」のほうに入ってたフレイバーテキスト。
最初に英語版を読んだときに「最初の文の末尾にある son がちょっと難しいな。息子でいい気もするけど、英語でこういう言いまわしのときって自分の息子に対してのときだけじゃないし」と思って、日本語版どうしてるんだろうと見たときの驚き。
両方とも「好き」のほうに入ってた。それぞれ《黒の万力/Black Vice》と《拷問台/The Rack》の能力を持つクリーチャー。フレイバーテキストも対になっていたのか。
フレイバーにテキストを添えて/Add Text to Flavor
https://regiant.diarynote.jp/202001140642309735/
言い訳がましくならないように気を付けつつ。
まずタイトルについて。
原文のタイトルは「Add Text to Flavor」。実はあまり意味を読み解けてない。「Add Text to Flavor ~」で最後に名詞が来ていたら「~に風味をつけるためのテキスト」で分かりやすいんだけど……その名詞が省略されてるのかなあ。
いずれにしても「テキストを味付けに使いました」という意味だろう、と思って上記の訳にした。「テキストを隠し味に」とか「最後に少しテキストを足して」とかもありだったかな。
でも「フレイバー」は必要だろうし(なんの記事がタイトルで分かってもらうために)これでいいか。良しとしよう(自分に言い聞かせるように)。
次は翻訳以外の件。
原文:
The sentiment was best summed up in a letter by Will Mistretta that was sent to me personally, posted on our Magic message boards, and appeared as an article on StarCityGames.com:
拙訳:
以下に紹介するのはその中の1つ、ウィル・ミストレッタからのメッセージだ。
多くのプレイヤーが私の記事に対して抱いたであろう激しい感情を上手く要約してくれたこのメッセージは、私個人宛にメールで届けられただけでなく、公式サイトの掲示板にも投稿され、さらに StarCityGamesのサイトに記事としてもアップされた。
Star City Gamesにもアップされているというのでダメ元で検索したらまだ残ってた。差分を訳して補足という形で足しこむか、と思ってたらリンク切れになった。コピッておくべきだった。残念。
ただそれほど大きな差異はなくて、あえて1つ挙げるとすれば註釈として足したグラフ(フレイバーテキストのうち何割が古典からの引用で、何割が歴史家的な第3者視点で……を示したパイグラフ)があったことくらい。
公式サイトの掲示板にもアップされた、とあるけどそれは見つけられなかった。さすがに17年前だしなあ。
原文:
"Bones scattered around us joined to form misshapen bodies, We struck at them repeatedly -- they fell, but soon formed again, with the same mocking look on their faceless skulls."
日本語訳:
我らの周囲に散らばった骨が集い、ちぐはぐな体に組み上がっていく。我らは何度も何度もそれを攻撃し、打ち倒した。しかし、すぐにまた、顔のない髑髏があざ笑うように立ち上がってくるのだった。
これは《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》のフレイバーテキストで、ここで触れたいのは訳の話ではなくレイアウトの話。
DiaryNoteは記事の編集操作がシンプルで、太字か斜体か赤文字か青文字くらいしかフォントをいじれない。その中で、どうやって「ここは文章じゃなくてフレイバーテキストです」と示すかで迷った。正直、毎回迷ってる。
青文字や赤文字ではあまりに強すぎるし、Blockquoteを使って箱で囲うと注釈文と紛らわしくなる。今回は小文字(フォントサイズを1段階小さくする)で対応してみたけど、正解かどうか分からない。
大人しくそのままフォントをいじらないのが正解かもしれない……アンケートとりたいけど、そんな機能はないし、そもそも回答サンプルが2桁集まるとも思えないので、今後も試行錯誤を続けるしかないか。
原文:
Funny undead? Did you really think Magic needed an even less funny psuedo-Jerry Seinfeld?
"What is the deal with those Drudge Skeletons? I mean really! What is up with that?"
拙訳:
笑えるアンデッドですか? 本気でマジックにお笑い芸人が必要だと信じていらっしゃるのでしょうか? 「何度壊しても元通りだぞ。これが本当の骨折り損のくたびれ儲けだ!」
ポイントは「Jerry Seinfeld」。前にも著者の記事に登場したのでこれが英国のコメディドラマの主人公(かつタイトル)であることは知ってた。ちなみに日本語のWikipediaでは「となりのサインフェルド」の項目で紹介されてる。
問題は、このドラマと登場人物が日本で知られているとは思えないこと、かつ見たことがないのでそれをネタしたセリフをそれらしく訳せる自信がないこと。
ここでかなり詰まってしまって、最後は固有名詞を使って訳すことを諦めた。勝手に作ったギャグの部分は……うーん……これのせいで筆者であるウィルさんが誤解されてしまったら申し訳ないな、とは感じる。
原文:
We hate the storyline and we hate the jokes.
Check the websites, check the newsgroups and message boards, ask the players face-to-face.
拙訳:
ストーリーなど要りません。ジョークも要りません。それが私たちの総意です。
ネットの意見をチェックしてみてください。ファンニュースでも掲示板でもいいです。プレイヤーに面と向かって確認するのもいいでしょう。
あらためて見ると「newsgroup」をどうして「ファンニュース」にしたのかよく分からない。「ファンサイト」が一番適切な気がする。そのうち直すかも。
あとマジック全然関係ない話としては、「Message Board」を「掲示板」としたあと「そういえばネットでの掲示板といえば BBS(Bulleton Board System)という略称が一般的だった時代があったな」とふと思い出した。
原文:
We’ve hated every storyline since Mirage/Visions with a passion. We’d rather have Jar Jar Binks in Magic than Gerrard or Kamahl.
拙訳:
私たちはミラージュ・ビジョンズ以降のストーリー志向を心から嫌悪しています。ジェラードやカマールが登場するマジックより、ジャー・ジャー・ビンクス(註)が登場するほうがまだマシと私たちは考えます。
ここを読んだときは、ジャー・ジャー・ビンクスって本当に嫌われてるんだな、と思った。正直、友人たちと自宅に集まって見たときも不人気だった。
2002年の記事に登場してるということは……そうか、初登場は1999年なのか。20年以上前の前世紀だ。スターウォーズシリーズの新三部作すらそんな昔になってたとは。
ただ昔の映画とはいえスターウォーズの知名度は(「となりのサインフェルド」と比べて)日本でも高いから固有名詞を出してもいいかと思ってそのまま使った。ただ念のためと注釈はつけたけど。
原文:
These annoying character make the flavor text impersonal and monotonous.
拙訳:
これら不快なキャラクターたちが登場するフレイバーテキストは単調なだけでなくそこにはプレイヤーが介在せず感情移入できません。
翻訳の補足と言いつつあまり訳に関する話をしていないので、ここらで触れておく。ここで迷ったのは「Impersonal」という単語の訳。
最初、「特定のキャラクターのセリフがダメ」という話をしているのになんで「Impersonalである(非個人的である、個人に関連しない、客観的である)」という論調なのかが不思議だった。
あらためて文章全体をを読むと「プレイヤーという本当の主人公がないがしろにされている」という意味での「主体の喪失」なのね。理解した。
原文:
They take the focus off the players and thrust it onto a bunch of unlikable, one-dimensional characters and situations that seem like they were drawn from some 16-year-old pothead’s half-baked D&D campaign.
拙訳:
プレイヤーという存在から目を背けた結果、生まれたのはまるで途中で完成を投げ出したD&Dキャンペーンのような世界観と画一的で好感のもてないキャラクターたちです。
「some 16-year-old pothead’s half-baked D&D campaign」という表現の妙をどうしたらいいのか悩んだ挙句に上記の訳になった。「16歳」の部分を「中学生」「高校生」「ティーネイジャー」「中高生」とか色々試したけど、どうにも文章の中で浮いてしまうので最後はバッサリ切った。
あと「Pothead」という単語。「マリファナ常用者」を指す言葉らしい。なので直訳気味に訳すなら「16歳のマリファナ常用者が最後までちゃんと作り込まなかったD&Dのキャンペーン」だけど、比喩表現だろうから「薬でラリッた16歳が最後までちゃんと作り込まなかったD&Dのキャンペーン」のほうがそれらしいか。
とか色々やってたけど、どうしても「浮いて」しまうので簡略化してしまった。原文の妙に味のある文章が消えてしまうのであまり良くない。もしかしたら直すかもしれない。
・十人十色/Different Strokes
・何が問題なのか/The Rub
・背景ストーリーについて/Here’s a Story
・大鴉曰く/Quoth the Raven
・まとめ/To Sum Up
各章のタイトルをまとめて並べてみる。訳しづらいものも多かったのでここのサイトに載せてる文章でも和英両方載せてみた。
それぞれ原文の持つ面白み(ネタ)を無視して分かりやすさを優先したり、極力近い形に訳そうとしたり、と訳し方が統一されていない。どちらかに合わせるべきだったかもしれない。
前者(分かりやすさ優先)の例としては、背景ストーリーの是非に触れている「Here’s a Story」がある。これは話を始める前置きとして使われる英語の定型句で、あえて訳すなら「こういうことだ。つまり~」という感じ(たぶん)。さらにここでは同時に言葉の意味をそのまま読んで「ストーリーがここにあって……」と読んでも、背景ストーリーについて語っている内容にフィットする。
そんな両方の意味にとれるような日本語のことわざや慣用句を見つけられれば最高なんだろうけど、労力がすごいかかりそうだったのでパスした。こういうところで悩み始めると一気に作業が停滞することを経験則で知ってるので。
あらためて何か妙案はなかったものかと再考してみると……うーん、カタカナの「ストーリー」が入ってる日本語の慣用句はそうそうない。ストーリーという単語の入ってる作品名をネタにするのもなかなか難しい(ネバーエンディングストーリー? 空からこぼれたストーリー?)。
やっぱり無理しなくて正解だった気がする(逃げ)
対して、原文に近い形に訳そうとした例としては「大鴉曰く/Quoth the Raven」がある。一応説明しておくと読者からの投稿の中にエドガー・アラン・ポーの小説から引用されたフレイバーテキストが紹介されていて、そのエドガー・アラン・ポーの有名な作品の1つに「大鴉(おおがらす)」と呼ばれる作品があって、その中で有名な一節が「Quoth the Raven」。意味は「大鴉曰く(= 大鴉の言葉を引用すると)」。
というわけで「現実の小説からの引用について」という章の内容、および読者が引用の例としてエドガー・アラン・ポーを挙げていたことなどを合わせ考えて、原文ではこの章タイトルになったものと思われる。
余談。この「Quoth the Raven」の中で繰り返し用いられる言い回しに「Nevermore」があり、マジックには同名のカード、《金輪際/Nevermore》がある。このカードが公式サイトの「Card of the day」で取り上げられたときの記事が以下で、かつこの週に紹介されたカードは、すべてエドガー・アラン・ポー作品に関連づけられたカードたちだった。
Card of the Day - 2012/03/09
https://regiant.diarynote.jp/201203092231401932/
今週のCard of the Day (2012年03月 第2週) とか (※関連付けの考察)
https://regiant.diarynote.jp/201203111223131373/
最後にもう1個だけ章のタイトルの訳に触れておく。「Different Strokes」を「十人十色」と訳したのについては、章の内容が好みに関する問題なので「蓼食う虫も好き好き」のほうが適切かもしれない……という思いも浮かんだんだけど、あまりに「和風」だなあ、と避けてしまった。そんだけ。
原文:
Our goal here at Wizards is to create the game that all of you want. The better we satisfy this need, the more you enjoy the game and the happier everyone is all around.
拙訳:
ウィザーズで働く私たちの目指すべきゴールは「君たちの誰もが求めているゲームを作ること」だ。この目的の達成に近づけば近づくほど、君たちはよりゲームを楽しめるはずであり、全員が幸せになれるはずだ。
特に失敗したとは思っていないけど、あらためて読むと訳が固いなあ(いかにも翻訳した文章で、日本語としては若干不自然だなあ)と思う。
意訳を含むなら「ウィザーズで働く私たちは、君たちプレイヤー全員に例外なく楽しんでもらえるゲームを作ろうと日夜努力している。この目標に近づけば近づくほど、より君たちはゲームを楽しめるはずだし、誰もが幸せになれるはずだからだ」かな。
ただこれだと、ざっくり同じような意味をもつ文章を書いてるだけであって、翻訳と呼んでいいのか怪しい気がしてくる。でもあまりに不自然な文章のままにするのもなんだし……という行ったり来たりが楽しくて翻訳してる節はある。
原文:
For example, we conduct a particular kind of market research called a "godbook study." A "godbook" is just a printout of all the cards.
拙訳:
例を挙げよう。私たちは「Godbook調査」という市場調査を行っている。「Godbook」というのはマジックのカードをそのまま一覧にして載せている本だ。
末尾の「just a printout of all the cards」をどう訳せばいいのか。本物の「Godbook」の見た目が分からないこともあってなかなか難しかった。
一番楽しようとすれば「Godbookは、すべてのカードのただのプリントアウトだ」となる。さすがにこれはない。「~が載っている」くらいは欲しい。
次に「Godbookは、すべてのカードのただのプリントアウトが載っているものだ」となる。「ただの」の位置がいまいちなので変える……というような感じでちょいちょい変えていくと最終的には上記のような拙訳になる(変わりすぎでは?)
原文:
Werebear, for example, shows that basic puns seem to be frowned upon (for more on puns, see the sidebar at the end of this article).
拙訳:
例えば《熊人間/Werebear》は分かりやすい定番なダジャレだが受けをとれなかった(余談。マジックのダジャレに関して興味や意見がある人はこの記事の最後に付けた追記も読んでくれ)
まず「basic puns seem to be frowned upon(基本的なダジャレは眉をひそめられてしまうようだ)」の部分はかなり変えてる。「Frowned upon」が難しかった。「眉をひそめる」だとちょっと深刻すぎるというか固すぎる。「つまらない」「嫌われる」なども考えたけど、最後は上記の通りで。
あと公式の日本語訳だとどこがダジャレなのか伝わらないので解説を付けた。ただ公式の日本語訳がダメというんじゃなくて……このフレイバーテキストをダジャレ込みの日本語にしようとすると「クマった」とか「熊手」とかを登場させる羽目になりそうで、銀枠ならまだしも通常のマジックじゃ無理(銀枠はそもそも英語版しか存在しないけど)。
原文:
One of Magic’s strengths is that it’s many things to many people.
Mechanically, R&D solves this problem by creating different styles of cards for different styles of players.
The result of this philosophy is that we create cards that are beloved by some and bemoaned by others.
拙訳:
マジックの強みとは何か。その1つは、様々なプレイヤーごとに全く違ったゲームの側面を見せる、ということが挙げられる。
それを踏まえて、開発部が今回の問題をどう解決しているかというと、異なるタイプのプレイヤーに向けて異なるタイプのカードを提供することで対応している。
さて、この哲学に沿ってカードを生み出すことによって何が起きるか? 生み出されるカードたちは、あるプレイヤーには愛されるものの、別のプレイヤーには渋面をもって迎えられることとなるのだ。
引用が長くなってしまった。
ここはホントに色々難しかった。1行目は、シンプルでエレガントな「it is many things to many people」がどうにもシンプルかつエレガントに訳せなかった。悔しい。「人によって全く違った面を持つ」だとまた違うし。
2行目は、冒頭の「Mechanically」をどう訳すかという点が難所だった。あと特筆すべき点としては英語で「Style(スタイル)」となっているのをあえて別のカタカナ語である「タイプ」と訳したこと。
3行目はダジャレの場所で触れた「be frowned」をどう訳すべきか、というのと似た問題で、シンプルに「愛される/嫌われる」の対比でも良かったんだけど、なんか原文をもう少し尊重したい気持ちになってたらしく「bemoaned(渋面)」としてる
原文:
This puts the creative director between a rock and a hard place. Making one group happy upsets another.
拙訳:
この事実がクリエイティブチームのリーダーを板挟みにする。なぜならあるグループを楽しませようとすると別のグループが楽しくなくなってしまうためだ。
原文の「between a rock and a hard place」という言い回しを初めて知った。日本語にすらまだまだ知らない言い回しやら慣用句やらがたくさんあるのに、いわんや英語ときたら。
全ての本を読み終われないと同じで(新しく生まれるものを除いても)全ての言葉を知ることなんて無理なのかもしれないから、あまり深刻にならずにいよう。
原文:
Goblins are a good example of where the two groups merge.
Goblins are by design humorous and thus are a more palatable way to introduce humor in a flavorful way into the game.
拙訳:
両方のグループを満足させ得る良い例としてはゴブリンたちだ。
ゴブリンはそもそもがユーモアを感じさせるデザインなので、フレイバーを重視しつつも無理なくユーモアを導入することができる。
大した話ではなくて「Palatable」という英語が難しかった、ということ。ちなみに意味は「口当たり(が良い)、美味しい」というような感じ。「Palate」という単語で「口蓋(口の中の上部)、味覚」などの意味になるらしい。知らない言葉はニュアンスが馴染んでないので訳しづらかった。
余談。ここの主張には「そうかなあ?」と思ってしまった。「あなたがゴブリン大好きなだけですよね」というか(著者のゴブリン好きは有名なので)……ゴブリン出しとけば多少ふざけたノリでも許されるだろう、というのが嫌いなプレイヤーもいるような気がする。
とりあえず訳に関する補足はここまで。
最後に、元記事の末尾に並んでいた「好かれたフレイバーテキスト・嫌われたフレイバーテキスト」の一覧の中でちょっと気になった奴を紹介してみる。
《花崗岩の装着/Granite Grip》(7th)
英語版:
“Let me introduce you to Rocky.”
日本語版:
君に岩男を紹介しよう。
第7版のカードの中で「嫌い」のほうに入ってたフレイバーテキスト。このギャグは不発に終わったらしい。個人的には嫌いじゃない。
日本語版もいい訳だとは思うけど、悩んだ挙句にこれなのか、大して悩まずにこれに決めたのか、がすごい気になる。ところでこれ、読みは「いわお」だよね?(原文が人名なので)
《針刺ワーム/Spined Wurm》(7th)
英語版:
“I wouldn’t stand in front of that wurm, son. ‘Course, I wouldn’t stand behind it neither. In fact, standing anywhere near that wurm’s not much of a plan. Running, now that’s a plan!”
-Wandering mage
日本語版:
あのワームの前には立たないほうがいい。もちろん後ろにも立たないほうがいい。というより、あのワームのそばに立つこと自体やめたほうがいい。どうしたらいいかっていうと、走って逃げるんだ!
――さまよれる魔道士
第7版のカードの中で「好き」のほうに入ってたフレイバーテキスト。
最初に英語版を読んだときに「最初の文の末尾にある son がちょっと難しいな。息子でいい気もするけど、英語でこういう言いまわしのときって自分の息子に対してのときだけじゃないし」と思って、日本語版どうしてるんだろうと見たときの驚き。
《万力機械人/Viseling》(NE)
英語版:
This may hurt a lot.
日本語版:
こいつはうんと痛いかもしれんぞ。
《拷問機械人/Rackling》(NE)
英語版:
This may hurt a little.
日本語版:
これは少し痛いかもしれんぞ。
両方とも「好き」のほうに入ってた。それぞれ《黒の万力/Black Vice》と《拷問台/The Rack》の能力を持つクリーチャー。フレイバーテキストも対になっていたのか。
【翻訳】フレイバーにテキストを添えて/Add Text to Flavor【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年03月25日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/add-text-flavor-2002-03-25
先週のフレイバーテキストに関するコラム(註)に対して情熱ほとばしるご意見を頂いた。今週のコラムでは基本デザイン(Basic Design)について話そうと思っていたが、予定を変更してその話題はまた後日にしよう。
以下に紹介するのはその中の1つ、ウィル・ミストレッタからのメッセージだ。
多くのプレイヤーが私の記事に対して抱いたであろう激しい感情を上手く要約してくれたこのメッセージは、私個人宛にメールで届けられただけでなく、公式サイトの掲示板にも投稿され、さらに StarCityGamesのサイト(註)に記事としてもアップされた。
それでは始めよう。
--- --- --- --- メッセージここから --- --- --- ---
よろしいでしょうか。マーク・ローズウォーターさん。
あなたがつい最近書かれたコラム、「The Write Stuff」に関してお伝えしたいことがあります。
何よりまず初めに、非常に良い記事でした。しかし賞賛の言葉はひとまず脇に置かせていただき、少々手厳しく聞こえるかもしれない批判の言葉をお伝えする必要があると感じております。
忌憚なく言わせて頂ければ、最初の頃のマジックのデザインチームは正しく素晴らしい仕事をなさっていました。そのかつてマジック・ザ・ギャザリングが持っていた最高の雰囲気を台無しにしてしまっているのが「ユーモア」やら「カジュアル」やらな雰囲気を持つ最近の安っぽいフレイバーテキストです。
台無しです。
どういうことか、あなたの記事からの引用で分かりやすく説明しましょう。あなたが「新しく」書いたという《蠢く骸骨/Drudge Skeleton》のフレイバーテキストに関する個所でこう述べられていますね。
『このフレイバーテキストはアンデッドとコメディは最高の相性を持つはずという私の信条を見事に反映している』
これは疑いようもなく、現状のマジックのフレイバーテキストのどこがどう間違っているかを的確に言い表している個所であり、ある意味でこれ以上ないほどに有用な文章です。ここで元々の《蠢く骸骨/Drudge Skeleton》のフレイバーテキストを紹介させてください。
Bones scattered around us joined to form misshapen bodies, We struck at them repeatedly -- they fell, but soon formed again, with the same mocking look on their faceless skulls.
我らの周囲に散らばった骨が集い、ちぐはぐな体に組み上がっていく。我らは何度も何度もそれを攻撃し、打ち倒した。しかし、すぐにまた、顔のない髑髏があざ笑うように立ち上がってくるのだった。
そして以下が前述のフレイバーテキストから置き換えられたあなたの作品です。
’The dead make good soldiers. They can’t disobey orders, they never surrender, and they don’t stop fighting when a random body part falls off.’
--Nevinyrral, Necromancer’s Handbook
死者は兵士に絶好である。 命令に逆らうこともなければ、降伏することもありえない。しかも、身体のどこかが取れたぐらいでは戦いをやめないのだから。
――ネビニラル「ネクロマンサーの手引き」
正直に言いましょう。差は一目瞭然です。
酷過ぎます。
とどまることを知らず歩みを続ける死者の軍団、それによってもたらされる避けられない死への恐怖というイメージが、まるで小学生の学芸会レベルのギャグにとって換えられたのです。
笑えるアンデッドですか? 本気でマジックにお笑い芸人が必要だと信じていらっしゃるのでしょうか? 「何度壊しても元通りだぞ。これが本当の骨折り損のくたびれ儲けだ!」
百歩譲ってシリアスな雰囲気が薄れたことに目をつぶったとしましょう。そうであったとしてもその代わりが「笑い」ですか? まったく笑えませんね。
あなたの前職がコメディドラマの脚本家であったことは存じ上げております。そのため前述のコメントをお伝えすることは非常に心苦しくもあります。しかしあなたのネタが不発に終わったことは事実であり、それを誤魔化すような体の良い慰めは不要と思われます。
もう1つお伝えしたい点があります(こちらはあなたに責任を負わせるべき事柄ではないのかもしれませんが、今回の問題点を説明するのには適切な例かと思われます)。
まず元々あった1993年の《幻影獣/Phantom Monster》のフレイバーテキストが以下です。
’While, like a ghastly rapid river,
Through the pale door,
A hideous throng rush out forever,
And laugh - but smile no more.’
- Edgar Allen Poe, ’The Haunted Palace’
まるで、おぼろな急流のごとく、
青ざめた扉を抜けて、
忌まわしき群れは次々と走り出で
あざ笑う ――― されどもはや微笑むことはない。
――― エドガー・アラン・ポオ「幽霊宮」
それに対して、第7版の《畏怖/Fear》のフレイバーテキスト(註)もひどかったですが、先週のコラムでも紹介されていた《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》(註)ときたら……マジックのカード上に「Butt(ケツ)」の文字を見たとき、私の中で何かが息を引き取るのを確かに感じました。
ダメです。申し訳ありませんが、失敗です。そうとしか言いようがありません。
アルファ版に思わず頭を抱えたくなるほどひどい表現がありましたか? アラビアンナイト、アンティキティ、レジェンド、ザ・ダークには? 1つでもありましたか?
ハッキリ言えます。誰も求めていないのです。皆を代表してこれを伝えるというのは嫌な仕事ですが、言わざるを得ません。私たちプレイヤーはあなたの考えるストーリーやフレイバーテキストを嫌悪しているのです。
マジックの開発部という人里離れた象牙の塔での生活が、あなた方とプレイヤーたちとの感覚のあいだに断絶を生んでしまったのかもしれません。いずれにせよ、私たちの誰一人としてあなた方のユーモアのセンスやら妙ちきりんな登場人物やらを求めてはいないのです。
ストーリーなど要りません。ジョークも要りません。それが私たちの総意です。ネットの意見をチェックしてみてください。ファンサイトでも掲示板でもいいです。プレイヤーに面と向かって確認するのもいいでしょう。
私たちはミラージュやビジョンズ以降のストーリー志向を心から嫌っています。ジェラードやカマールが登場するマジックより、ジャー・ジャー・ビンクス(註)が登場するほうがまだマシと私たちは考えます。
これら不快なキャラクターたちが登場するフレイバーテキストは単調なだけでなくそこにはプレイヤーが介在せず感情移入できません。
プレイヤーという存在から目を背けた結果、生まれたのはまるで途中で完成を投げ出したD&Dキャンペーンのような世界観と画一的で好感のもてないキャラクターたちです。
マジックとはプレイヤー自身がゲームの主人公だったはずです。
私たちという魔法使いが決闘するゲームだったはずです。
そう「私たち」です! それが今やどうでしょう、ネーミングセンスを疑うような「チェイナー」とかいう名前のチンピラが戦う世界? 私たちがそんなものを楽しむとでも?
認めるしかありません、マーク・ローズウォーターさん。どこかの時点で(おそらくはアライアンスからミラージュへと移りゆく頃に)あなた方は悲劇へと続く誤った道を下り始めたのです。
その先は進むほどにひどくなる一方だというのにあなた方はいまだに歩みを止めていません。
今のマジックに必要なもの、それは威厳と尊厳です。ジョークだのマスコットキャラクターだのを詰め込むたびにかつて偉大であったマジックという存在はその輝きを失っていく一方です。
かつてマジックを包んでいたその偉大なる輝きを完全に失ってしまえば、マジックはただの紙束に過ぎません。それに向き合わないといけません。
マジックは始まりがあまりにも偉大な存在であったがゆえに、輝きを失うまでにも長くかかりました。しかしあなた方はそれでもなお誤った道を止まることなく下り続けていこうとしています。このままではさすがのマジックであっても底の底を打つことになるでしょう。
私たちの大切なゲームであるマジックをこれ以上台無しにしないでください! 緊張感のある真剣なマジックを返してください。文学的な引用文を返してください。安っぽいダジャレや冗談を廃してください。
そして何より、カードのフレイバーテキスト欄にどうでもいいキャラクターたちの退屈なセリフを載せるのをやめてください。古典からの引用、特定の誰かではない冷めた歴史家による目線、それがアルファ版やアンティキティといった時代の主流だったはずです。
かつてのマジックはカッコ良かったです。今はそうではありません。私たちを今のダサいマジックから解放してください。
ここでかつての《ブーメラン/Boomerang》のフレイバーテキストを引用したいと思います。
’O! Call back yesterday, bid time return.’
- William Shakespeare, King Richard the Second
ああ!昨日を呼び戻せ、時よ戻れ。
――ウィリアム・シェイクスピア「リチャード二世」
お願いします。
ウィル・ミストレッタより
--- --- --- --- メッセージここまで --- --- --- ---
ここまでがウィルからのメッセージだ。
そしてここから先が、私からウィルへの返信となる。
ウィルへ。
まず初めに言いたいのは、君からのお便りは非常に素晴らしい、ということだ。君のメッセージはマジックにおけるいくつかの非常に重要な点に触れている。
(余談だが、もし自分が送ったメールを私のコラムに採用して欲しいと考えている人がいたら、ウィルのように十分に時間をかけて推敲を重ねたきちんとした文章を送ってくることをおススメするよ)
今日のコラムではこのメッセージで挙げられている問題点を1つ1つ取り上げていきたい。
それはつまらないのか?/That’s Not Funny
まず最近のフレイバーテキストが「安っぽくて誰でも思いつくようなユーモア」で「カジュアルな雰囲気」だと仮定しよう。さて、プレイヤーたちはそんな最近のフレイバーテキストが「かつて偉大だったはずのマジックを貶めている」と考えているだろうか?
この問題はマジックのクリエイティブチームのリーダーであるブレイディ・ドマーマスを長いこと悩ませているものだ。
ウィザーズで働く私たちの目指すべきゴールは「君たちの誰もが求めているゲームを作ること」だ。この目的の達成に近づけば近づくほど、君たちはよりゲームを楽しめるはずであり、全員が幸せになれるはずだ。
そのために私たちはアンケートをとったり、プレイヤーと直接話したり、さらにはプレイヤーの嗜好をより知ろうと大量の市場調査(Market Research)を実施したりしているわけだ。
なお君たちの想像どおり、フレイバーの好みは(カードのメカニズムに対する好みと同様に)プレイヤーによって大きく異なる。ウィル、君からのメッセージはある種のプレイヤーの持つ好みと主張を素晴らしく的確に言い表しているが、それが唯一無二の意見ではない。
例を挙げよう。
私たちは「Godbook調査」という市場調査を行っている。「Godbook」というのはマジックのカードをそのまま一覧にして載せている本だ。
私たちは統計をとるためのサンプルとして、数百人のプレイヤーを対象に様々のカテゴリ(メカニズム、イラスト、カード名、そしてもちろんフレイバーテキスト)ごとに2つの質問を投げかける。
その2つとは「最も好きなカードは?」と「最も嫌いなカードは?」だ。
まず最初はプレイヤーに自身の記憶を頼りに回答してもらう。それが終わったあと、今度は前述した「Godbook」の一部を手渡し、あらためてそれを見てもらいながら同じ質問に答えてもらう。
私たちは、記憶に頼る最初の調査方法(私たちはこれを open-ended survey と呼んでいる)から得た調査結果と後者の「Godbook」を見てもらいながらの調査結果とを組み合わせて使っている。
オデッセイのフレイバーテキストに関する調査結果が以下だ(訳注:調査結果は英語のフレイバーテキストに対してのもの。日本語は参照用に付記)
▼ 人気のあったフレイバーテキスト
《機知の戦い/Battle of Wits》
英語版:
The wizard who reads a thousand books is powerful.
The wizard who memorizes a thousand books is insane.
日本語版:
千冊の本を読破した魔術師は強力な魔術師になる。
千冊の本を記憶した魔術師は狂気の魔術師になる。
《ピット・ファイター、カマール/Kamahl, Pit Fighter》
英語版:
“I didn’t come to play. I came to win.”
日本語版:
「おれは遊びに来たんじゃない。勝ちに来たんだ。」
《リスの群れ/Squirrel Mob》
英語版:
An army of squirrels is still an army.
日本語版:
リスの軍勢とはいえ、軍勢は軍勢だからね。
《呪われた大怪物/Cursed Monstrosity》
英語版:
“Run away! It’s an…um…run away!”
- Nomad sentry
日本語版:
「逃げろ! そいつは……そ、そいつは……逃げろ!」
― 遊牧の民の歩哨
《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》
英語版:
“I want a banana this big!”
日本語版:
「このぐらい大きいバナナが欲しい!」
▼ 不人気だったフレイバーテキスト
《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》
英語版:
“I want a banana this big!”
日本語版:
「このぐらい大きいバナナが欲しい!」
《熊人間/Werebear》
英語版:
He exercises his right to bear arms.
日本語版:
彼は武器を帯びる権利を行使しているのさ。
《精神噴出/Mind Burst》
英語版:
As haunting as a zombie’s curse.
日本語版:
ゾンビの呪いのごとくつきまとう。
この調査から分かることの1つ目としては、どうやらプレイヤーはユーモアのあるフレイバーテキストが好きらしい、ということだ。好まれたフレイバーテキストのリストの中でユーモアに欠けているのは《機知の戦い/Battle of Wits》のフレイバーテキストくらいだろう。
《ピット・ファイター、カマール/Kamahl, Pit Fighter》や《リスの群れ/Squirrel Mob》のフレイバーテキストはあまり直接的なジョークではないが、《呪われた大怪物/Cursed Monstrosity》や《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》については完全にどこからどうみても受けを取りに行っている。
2つ目として分かることは、ユーモアのあるフレイバーテキストであれば何でも良いというわけではないらしい、ということだ。
例えば《熊人間/Werebear》は分かりやすい定番なダジャレ(註)だが受けをとれなかった(余談。マジックのダジャレに関して興味や意見がある人はこの記事の最後に付けた追記も読んでくれ)
クリエイティブチーム(カード名やフレイバーテキスト、そしてカードコンセプトなどを手掛けるチーム)の面々は、ここ1年ほどのあいだ、どういったユーモアがプレイヤーに受けるのか(そして受けないのか)を知るために多大な労力を支払っている。
さて、その研究結果は?
それについては今後発売されるセットを見てもらうしかない。
そして調査結果から分かることの3つ目、おそらくこれが最も重要な点かもしれないが、それは、同じフレイバーテキストであっても異なるプレイヤーは異なる評価を下す、ということだ。
前述のとおり《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》のフレイバーテキストは好きと嫌いの両方のリストに入っている。このゴリラのフレイバーテキストが大好きなプレイヤーもいれば、大嫌いなプレイヤーもいるということだ。
この調査結果はここウィザーズにおいても激しい議論の対象になった。
私たちももちろんプレイヤーたちが総じて忌避するようなフレイバーテキストを採用したくはない。では、プレイヤーの賛否が大きく分かれてしまうようなフレイバーテキストはどう扱ったら良いのか?
この調査に関連して私たちが収集したデータをもっと見たいという君のために、ウルザズ・デスティニー以降のGodbook調査結果をまとめたものを今日のコラムの最後に載せておいた。参照してくれ(註)。
十人十色/Different Strokes
この種の議論は突き詰めると最終的には「多様性(Diversity)」という点に帰着する。
マジックの強みとは何か。その1つは、様々なプレイヤーごとに全く違ったゲームの側面を見せる、ということが挙げられる。
それを踏まえて、開発部が今回の問題をどう解決しているかというと、異なるタイプのプレイヤーに向けて異なるタイプのカードを提供することで対応している。
さて、この哲学に沿ってカードを生み出すことによって何が起きるか? 生み出されるカードたちは、あるプレイヤーには愛されるものの、別のプレイヤーには渋面をもって迎えられることとなるのだ。
良い例は《機知の戦い/Battle of Wits》だろう。大半のプレイヤーのこのカードに対する評価は、大好きか大嫌いかのいずれかだ。
そして、このカードを好むプレイヤーたちが生み出すゲーム活性化の力は、このカードを嫌うプレイヤーたちが奪われたゲームの活力の総量を上回ると開発部は信じている。
マジックがフレイバーテキストに対して取っているアプローチも同様だ。私たちは様々なタイプのプレイヤーたちに向けて、様々なタイプのフレイバーテキストを提供している。
叙情的な一節もあれば、叙述的な一節もあり、その一方で審美的な一節もあれば……もちろん、そう、ジョーク的な一節もあるわけだ。
おそらく先日の私のコラムは、ジョークやユーモアに満ちたフレイバーテキストは他の種類のフレイバーテキストに比べて開発部でより重んじられている、という誤った認識を読者に与えてしまった。
しかし私はあくまで数あるフレイバーテキストの担当者の中の1人に過ぎない(さらにいえば最近ではほとんどフレイバーテキストに関わってもいない)。
先日のコラムでは、コメディ脚本家という前職を持った私が生み出したフレイバーテキストたちを紹介させてもらった。そのため、どうにもそれらはユーモアに偏った作品群となってしまった。
しかしユーモアというのはあくまでマジックにおける選択肢の1つに過ぎない。ユーモアを得意とする(私を含めた)担当者たちと同様、他の選択肢や雰囲気を得意とする別の担当者たちがいるんだ。
何が問題なのか/The Rub
残念なことに、メカニズムやイラストにおいては非常に有用な多様性という概念が、フレイバーテキストにおいてはそう上手くは働いてくれない。
なぜなら、フレイバーテキストは異なる感情を呼び起こすというだけでないためだ。フレイバーテキストはそれ以上に異なるプレイヤーに対して異なる機能を果たすという点がある。
あるプレイヤーたち(例えばウィル、君のような)にとって、フレイバーテキストとは世界観を意味する。
大きなモザイク画のかけらの1つであり、全て集まり1つの絵を指し示すべきものであり、1つでも余計なかけらが混じっていれば絵は台無しになってしまう。
その一方で、あるプレイヤーたちにとっては、フレイバーテキストはゲームの面白みを増してくれるものだ。こういったプレイヤーたちはマジックをプレイしている最中にフレイバーテキストを読み上げたりする。
他のカードと関連性のない単体で笑えるジョークはこういったプレイヤーに好まれる。なぜならこういったプレイヤーたちが楽しいと感じるマジックの側面をさらに面白いものにしてくれるからだ。
この後者のグループに向けて書かれたフレイバーテキストは、前者のグループの感情を害する。そして逆の場合よりもその不快度は大きい。
この事実がクリエイティブチームのリーダーを板挟みにする。なぜならあるグループを楽しませようとすると別のグループが楽しくなくなってしまうためだ。
どうすればいいのか?
今、模索されている解決法は、全体的な調和を崩さないようにしつつ一部には軽いユーモアを交えるという手法だ。
両方のグループを満足させ得る良い例としてはゴブリンたちだ。
ゴブリンはそもそもがユーモアを感じさせるデザインなので、フレイバーを重視しつつも無理なくユーモアを導入することができる。
背景ストーリーについて/Here’s a Story
君が挙げたもう1つの側面、それは背景ストーリーについてだ。君の主張によると背景ストーリーに焦点が移ることでゲームのクオリティが下がるらしい。
実のところ、クリエイティブチームのリーダーは同じ意見だ。君にとっては喜ばしいニュースだろう。
ウェザーライトサーガというのは私たちにとっても試みの1つだった。継続する長編物語はゲームの質を高めてくれるのだろうか?
世のプレイヤーたちからの回答は「ノー」だった(もっとも、ストーリーが気に入ったといってくれたプレイヤーたちもまた存在したことは付記しておきたい)。
現在では、マジックの方向性は「ストーリーを語ること(creating stories)」ではなく、より「世界観を語ること(creating worlds)」を重視している。
ライターやイラストレーターに対するクリエイティブチームからの最近の指示では、長大なストーリーの断片を個々のカードを通じて部分的に見せるという形を避けている。
代わりに、個々のカードからそのストーリーの舞台となっている世界観が伝わるような書き方/描き方を指示するものとなっている。
こう考えて欲しい。
エキスパンションはストーリーのかけら(キャラクター、クリーチャー、アイテム、場所など)を個々のカードを通じて見せてくれる。それらをつないでくれるのは小説本の役割となるだろう。
つまりカードを先に触れてから本を読んだとして、多くの要素が馴染み深く親しみがいのあるものに感じられつつも、ストーリー自体はまったく目新しいものになるわけだ。
大鴉曰く/Quoth the Raven
さて、現実の小説などからの引用についてだ。
これについての落としどころは数年前に決定されている。基本セットは現実の小説などからの引用を可とする。エキスパンションは不可だ。そう決めた理由は何か。私たちはマジックに他と異なる独自の世界と声を持って欲しいと願っているからだ。
現実の小説が登場した途端、プレイヤーは魔法使い同士の決闘の場という世界から連れ出されてどこか……なんというか……学校にいるかのような気分になってしまう。マジックはエンターテイメントであり知育玩具ではない。
まとめ/To Sum Up
フレイバーテキスト週間というイベントを設けたのは全てのプレイヤーたちからの反応が欲しかったからだ。
ウィル、君からのお便りと同様の意見は、先週他のプレイヤーたちから他の媒体を通じてたくさん寄せられた。
しっかりと耳を傾けさせてもらったよ。
クリエイティブチームの皆はフレイバーテキストをより良いものにするためにたゆまぬ努力を続けている。
君の提示した問題点についてもいくつかはすでに俎上に乗せられているし、まだ吟味されていない問題点についてはこれからだ。
ただ1つだけ言わせてもらいたい。
1人のプレイヤーが何百万というマジックプレイヤーの声全てを代弁することは不可能だ。他のプレイヤーたちの声もまた私たちに届いている。君の意見に応えようとするのと同じだけ、私たちは他のプレイヤーたちの声にも耳を傾けている。
バランスをとることは非常に難しくデリケートな問題だ。それでも私たちは目を背けることなく、状況を改善するべく取り組んでいる。
さて、来週は「上手くぶっ壊す」ことについて語りたいと思っている。それまで、君たちが簡潔でユーモアにあふれたフレイバーテキストと出会う機会があるよう祈ってるよ。
マーク・ローズウォーター
※追記:ダジャレについて
今週の記事の補足としてちょっと皆から意見を募りたい。ここウィザーズでもデリケートな話題として扱われているものだ。
ダジャレだ。例えば《始祖グリーヴィル/Root Greevil》のフレイバーテキストは不人気だ。よってダジャレは人気がないとも言える。
しかしウィザーズ社内のダジャレ擁護派によると「人はダジャレに対して眉をひそめるよう教え育てられている」らしい。だから「良いダジャレほど不人気であって当然」だと言うんだ。
さて、君たちはどう思う? 読んだ人がつい眉をひそめてしまうようなダジャレを今後もマジックに載せ続けるべきだろうか? ぜひ意見を寄せて欲しい。
Mark Rosewater
2002年03月25日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/add-text-flavor-2002-03-25
先週のフレイバーテキストに関するコラム(註)に対して情熱ほとばしるご意見を頂いた。今週のコラムでは基本デザイン(Basic Design)について話そうと思っていたが、予定を変更してその話題はまた後日にしよう。
(註) 前回のフレイバーテキストに関するコラム
前の週のコラムでは、著者が手掛けたフレイバーテキストのお気に入りトップ10を紹介していた。以下がそのコラムと拙訳。
原文:The Write Stuff
http://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/write-stuff-2002-03-18
日本語:フレイバーテキスト誕生秘話
https://regiant.diarynote.jp/201904230844474257/
以下に紹介するのはその中の1つ、ウィル・ミストレッタからのメッセージだ。
多くのプレイヤーが私の記事に対して抱いたであろう激しい感情を上手く要約してくれたこのメッセージは、私個人宛にメールで届けられただけでなく、公式サイトの掲示板にも投稿され、さらに StarCityGamesのサイト(註)に記事としてもアップされた。
(註) StarCityGamesのサイト
以下がその記事へのリンク。ちなみに今回のコラムと一部異なる(リンク先の方が微妙に文章量が多い)。ただ今日の記事をアップする前にあらためて確認したらもう消えてた。残念。
http://www.starcitygames.com/article/2715_An-Open-Letter-to-Mark-Rosewater--Enough-With-the-Stupid-Flavor-Text--Already-.html
それでは始めよう。
--- --- --- --- メッセージここから --- --- --- ---
よろしいでしょうか。マーク・ローズウォーターさん。
あなたがつい最近書かれたコラム、「The Write Stuff」に関してお伝えしたいことがあります。
何よりまず初めに、非常に良い記事でした。しかし賞賛の言葉はひとまず脇に置かせていただき、少々手厳しく聞こえるかもしれない批判の言葉をお伝えする必要があると感じております。
忌憚なく言わせて頂ければ、最初の頃のマジックのデザインチームは正しく素晴らしい仕事をなさっていました。そのかつてマジック・ザ・ギャザリングが持っていた最高の雰囲気を台無しにしてしまっているのが「ユーモア」やら「カジュアル」やらな雰囲気を持つ最近の安っぽいフレイバーテキストです。
台無しです。
どういうことか、あなたの記事からの引用で分かりやすく説明しましょう。あなたが「新しく」書いたという《蠢く骸骨/Drudge Skeleton》のフレイバーテキストに関する個所でこう述べられていますね。
『このフレイバーテキストはアンデッドとコメディは最高の相性を持つはずという私の信条を見事に反映している』
これは疑いようもなく、現状のマジックのフレイバーテキストのどこがどう間違っているかを的確に言い表している個所であり、ある意味でこれ以上ないほどに有用な文章です。ここで元々の《蠢く骸骨/Drudge Skeleton》のフレイバーテキストを紹介させてください。
Bones scattered around us joined to form misshapen bodies, We struck at them repeatedly -- they fell, but soon formed again, with the same mocking look on their faceless skulls.
我らの周囲に散らばった骨が集い、ちぐはぐな体に組み上がっていく。我らは何度も何度もそれを攻撃し、打ち倒した。しかし、すぐにまた、顔のない髑髏があざ笑うように立ち上がってくるのだった。
そして以下が前述のフレイバーテキストから置き換えられたあなたの作品です。
’The dead make good soldiers. They can’t disobey orders, they never surrender, and they don’t stop fighting when a random body part falls off.’
--Nevinyrral, Necromancer’s Handbook
死者は兵士に絶好である。 命令に逆らうこともなければ、降伏することもありえない。しかも、身体のどこかが取れたぐらいでは戦いをやめないのだから。
――ネビニラル「ネクロマンサーの手引き」
正直に言いましょう。差は一目瞭然です。
酷過ぎます。
とどまることを知らず歩みを続ける死者の軍団、それによってもたらされる避けられない死への恐怖というイメージが、まるで小学生の学芸会レベルのギャグにとって換えられたのです。
笑えるアンデッドですか? 本気でマジックにお笑い芸人が必要だと信じていらっしゃるのでしょうか? 「何度壊しても元通りだぞ。これが本当の骨折り損のくたびれ儲けだ!」
百歩譲ってシリアスな雰囲気が薄れたことに目をつぶったとしましょう。そうであったとしてもその代わりが「笑い」ですか? まったく笑えませんね。
あなたの前職がコメディドラマの脚本家であったことは存じ上げております。そのため前述のコメントをお伝えすることは非常に心苦しくもあります。しかしあなたのネタが不発に終わったことは事実であり、それを誤魔化すような体の良い慰めは不要と思われます。
もう1つお伝えしたい点があります(こちらはあなたに責任を負わせるべき事柄ではないのかもしれませんが、今回の問題点を説明するのには適切な例かと思われます)。
まず元々あった1993年の《幻影獣/Phantom Monster》のフレイバーテキストが以下です。
’While, like a ghastly rapid river,
Through the pale door,
A hideous throng rush out forever,
And laugh - but smile no more.’
- Edgar Allen Poe, ’The Haunted Palace’
まるで、おぼろな急流のごとく、
青ざめた扉を抜けて、
忌まわしき群れは次々と走り出で
あざ笑う ――― されどもはや微笑むことはない。
――― エドガー・アラン・ポオ「幽霊宮」
それに対して、第7版の《畏怖/Fear》のフレイバーテキスト(註)もひどかったですが、先週のコラムでも紹介されていた《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》(註)ときたら……マジックのカード上に「Butt(ケツ)」の文字を見たとき、私の中で何かが息を引き取るのを確かに感じました。
(註) 《畏怖/Fear》、《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
《畏怖/Fear》のフレイバーテキスト
英語版:
"Booga booga booga!"
日本語版:
ウォー ウォー ウォー!
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》のフレイバーテキスト
英語版:
“I may be small, but I can kick your butt.”
日本語版:
チビだと思っておれをなめると、痛い目を見るぞ。
ダメです。申し訳ありませんが、失敗です。そうとしか言いようがありません。
アルファ版に思わず頭を抱えたくなるほどひどい表現がありましたか? アラビアンナイト、アンティキティ、レジェンド、ザ・ダークには? 1つでもありましたか?
ハッキリ言えます。誰も求めていないのです。皆を代表してこれを伝えるというのは嫌な仕事ですが、言わざるを得ません。私たちプレイヤーはあなたの考えるストーリーやフレイバーテキストを嫌悪しているのです。
マジックの開発部という人里離れた象牙の塔での生活が、あなた方とプレイヤーたちとの感覚のあいだに断絶を生んでしまったのかもしれません。いずれにせよ、私たちの誰一人としてあなた方のユーモアのセンスやら妙ちきりんな登場人物やらを求めてはいないのです。
ストーリーなど要りません。ジョークも要りません。それが私たちの総意です。ネットの意見をチェックしてみてください。ファンサイトでも掲示板でもいいです。プレイヤーに面と向かって確認するのもいいでしょう。
私たちはミラージュやビジョンズ以降のストーリー志向を心から嫌っています。ジェラードやカマールが登場するマジックより、ジャー・ジャー・ビンクス(註)が登場するほうがまだマシと私たちは考えます。
(註) ジャー・ジャー・ビンクス
スターウォーズの新3部作シリーズに登場するキャラクター。コメディタッチなキャラクターだったがトラブルメーカーとしての出番が目立ち、多くのファンから総スカンをくらった不人気キャラとして有名。
これら不快なキャラクターたちが登場するフレイバーテキストは単調なだけでなくそこにはプレイヤーが介在せず感情移入できません。
プレイヤーという存在から目を背けた結果、生まれたのはまるで途中で完成を投げ出したD&Dキャンペーンのような世界観と画一的で好感のもてないキャラクターたちです。
マジックとはプレイヤー自身がゲームの主人公だったはずです。
私たちという魔法使いが決闘するゲームだったはずです。
そう「私たち」です! それが今やどうでしょう、ネーミングセンスを疑うような「チェイナー」とかいう名前のチンピラが戦う世界? 私たちがそんなものを楽しむとでも?
認めるしかありません、マーク・ローズウォーターさん。どこかの時点で(おそらくはアライアンスからミラージュへと移りゆく頃に)あなた方は悲劇へと続く誤った道を下り始めたのです。
その先は進むほどにひどくなる一方だというのにあなた方はいまだに歩みを止めていません。
今のマジックに必要なもの、それは威厳と尊厳です。ジョークだのマスコットキャラクターだのを詰め込むたびにかつて偉大であったマジックという存在はその輝きを失っていく一方です。
かつてマジックを包んでいたその偉大なる輝きを完全に失ってしまえば、マジックはただの紙束に過ぎません。それに向き合わないといけません。
マジックは始まりがあまりにも偉大な存在であったがゆえに、輝きを失うまでにも長くかかりました。しかしあなた方はそれでもなお誤った道を止まることなく下り続けていこうとしています。このままではさすがのマジックであっても底の底を打つことになるでしょう。
私たちの大切なゲームであるマジックをこれ以上台無しにしないでください! 緊張感のある真剣なマジックを返してください。文学的な引用文を返してください。安っぽいダジャレや冗談を廃してください。
そして何より、カードのフレイバーテキスト欄にどうでもいいキャラクターたちの退屈なセリフを載せるのをやめてください。古典からの引用、特定の誰かではない冷めた歴史家による目線、それがアルファ版やアンティキティといった時代の主流だったはずです。
(余談)
StarCityGames版ではここにフレイバーテキストの種類を比率で示したデータが表示されているがDailyMTG版では記載なし。
かつてのマジックはカッコ良かったです。今はそうではありません。私たちを今のダサいマジックから解放してください。
ここでかつての《ブーメラン/Boomerang》のフレイバーテキストを引用したいと思います。
’O! Call back yesterday, bid time return.’
- William Shakespeare, King Richard the Second
ああ!昨日を呼び戻せ、時よ戻れ。
――ウィリアム・シェイクスピア「リチャード二世」
お願いします。
ウィル・ミストレッタより
--- --- --- --- メッセージここまで --- --- --- ---
ここまでがウィルからのメッセージだ。
そしてここから先が、私からウィルへの返信となる。
ウィルへ。
まず初めに言いたいのは、君からのお便りは非常に素晴らしい、ということだ。君のメッセージはマジックにおけるいくつかの非常に重要な点に触れている。
(余談だが、もし自分が送ったメールを私のコラムに採用して欲しいと考えている人がいたら、ウィルのように十分に時間をかけて推敲を重ねたきちんとした文章を送ってくることをおススメするよ)
今日のコラムではこのメッセージで挙げられている問題点を1つ1つ取り上げていきたい。
それはつまらないのか?/That’s Not Funny
まず最近のフレイバーテキストが「安っぽくて誰でも思いつくようなユーモア」で「カジュアルな雰囲気」だと仮定しよう。さて、プレイヤーたちはそんな最近のフレイバーテキストが「かつて偉大だったはずのマジックを貶めている」と考えているだろうか?
この問題はマジックのクリエイティブチームのリーダーであるブレイディ・ドマーマスを長いこと悩ませているものだ。
ウィザーズで働く私たちの目指すべきゴールは「君たちの誰もが求めているゲームを作ること」だ。この目的の達成に近づけば近づくほど、君たちはよりゲームを楽しめるはずであり、全員が幸せになれるはずだ。
そのために私たちはアンケートをとったり、プレイヤーと直接話したり、さらにはプレイヤーの嗜好をより知ろうと大量の市場調査(Market Research)を実施したりしているわけだ。
なお君たちの想像どおり、フレイバーの好みは(カードのメカニズムに対する好みと同様に)プレイヤーによって大きく異なる。ウィル、君からのメッセージはある種のプレイヤーの持つ好みと主張を素晴らしく的確に言い表しているが、それが唯一無二の意見ではない。
例を挙げよう。
私たちは「Godbook調査」という市場調査を行っている。「Godbook」というのはマジックのカードをそのまま一覧にして載せている本だ。
私たちは統計をとるためのサンプルとして、数百人のプレイヤーを対象に様々のカテゴリ(メカニズム、イラスト、カード名、そしてもちろんフレイバーテキスト)ごとに2つの質問を投げかける。
その2つとは「最も好きなカードは?」と「最も嫌いなカードは?」だ。
まず最初はプレイヤーに自身の記憶を頼りに回答してもらう。それが終わったあと、今度は前述した「Godbook」の一部を手渡し、あらためてそれを見てもらいながら同じ質問に答えてもらう。
私たちは、記憶に頼る最初の調査方法(私たちはこれを open-ended survey と呼んでいる)から得た調査結果と後者の「Godbook」を見てもらいながらの調査結果とを組み合わせて使っている。
オデッセイのフレイバーテキストに関する調査結果が以下だ(訳注:調査結果は英語のフレイバーテキストに対してのもの。日本語は参照用に付記)
▼ 人気のあったフレイバーテキスト
《機知の戦い/Battle of Wits》
英語版:
The wizard who reads a thousand books is powerful.
The wizard who memorizes a thousand books is insane.
日本語版:
千冊の本を読破した魔術師は強力な魔術師になる。
千冊の本を記憶した魔術師は狂気の魔術師になる。
《ピット・ファイター、カマール/Kamahl, Pit Fighter》
英語版:
“I didn’t come to play. I came to win.”
日本語版:
「おれは遊びに来たんじゃない。勝ちに来たんだ。」
《リスの群れ/Squirrel Mob》
英語版:
An army of squirrels is still an army.
日本語版:
リスの軍勢とはいえ、軍勢は軍勢だからね。
《呪われた大怪物/Cursed Monstrosity》
英語版:
“Run away! It’s an…um…run away!”
- Nomad sentry
日本語版:
「逃げろ! そいつは……そ、そいつは……逃げろ!」
― 遊牧の民の歩哨
《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》
英語版:
“I want a banana this big!”
日本語版:
「このぐらい大きいバナナが欲しい!」
▼ 不人気だったフレイバーテキスト
《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》
英語版:
“I want a banana this big!”
日本語版:
「このぐらい大きいバナナが欲しい!」
《熊人間/Werebear》
英語版:
He exercises his right to bear arms.
日本語版:
彼は武器を帯びる権利を行使しているのさ。
《精神噴出/Mind Burst》
英語版:
As haunting as a zombie’s curse.
日本語版:
ゾンビの呪いのごとくつきまとう。
この調査から分かることの1つ目としては、どうやらプレイヤーはユーモアのあるフレイバーテキストが好きらしい、ということだ。好まれたフレイバーテキストのリストの中でユーモアに欠けているのは《機知の戦い/Battle of Wits》のフレイバーテキストくらいだろう。
《ピット・ファイター、カマール/Kamahl, Pit Fighter》や《リスの群れ/Squirrel Mob》のフレイバーテキストはあまり直接的なジョークではないが、《呪われた大怪物/Cursed Monstrosity》や《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》については完全にどこからどうみても受けを取りに行っている。
2つ目として分かることは、ユーモアのあるフレイバーテキストであれば何でも良いというわけではないらしい、ということだ。
例えば《熊人間/Werebear》は分かりやすい定番なダジャレ(註)だが受けをとれなかった(余談。マジックのダジャレに関して興味や意見がある人はこの記事の最後に付けた追記も読んでくれ)
(註) 《熊人間/Werebear》のフレイバーテキスト
原文の「He exercises his right to bear arms」は、普通に訳すと日本語訳にあるとおり「彼は武器を帯びる権利を行使している」となる。「bear(帯びる)、arm(武装)」だからだ。ただ熊人間であることを考えると「bear arm」はそのまま「熊の腕」ともとれる。
クリエイティブチーム(カード名やフレイバーテキスト、そしてカードコンセプトなどを手掛けるチーム)の面々は、ここ1年ほどのあいだ、どういったユーモアがプレイヤーに受けるのか(そして受けないのか)を知るために多大な労力を支払っている。
さて、その研究結果は?
それについては今後発売されるセットを見てもらうしかない。
(余談)
原文ではここに「ふざけたフレイバーテキストの評価は二極化される。愛と憎しみを隔てる壁は驚くほど薄い(Silly flavor text polarizes the community. It’s a thin line between love and hate.)」と書かれている。画像のキャプションと思われるが、画像はリンク切れか掲載されてない。
そして調査結果から分かることの3つ目、おそらくこれが最も重要な点かもしれないが、それは、同じフレイバーテキストであっても異なるプレイヤーは異なる評価を下す、ということだ。
前述のとおり《ゴリラのタイタン/Gorilla Titan》のフレイバーテキストは好きと嫌いの両方のリストに入っている。このゴリラのフレイバーテキストが大好きなプレイヤーもいれば、大嫌いなプレイヤーもいるということだ。
この調査結果はここウィザーズにおいても激しい議論の対象になった。
私たちももちろんプレイヤーたちが総じて忌避するようなフレイバーテキストを採用したくはない。では、プレイヤーの賛否が大きく分かれてしまうようなフレイバーテキストはどう扱ったら良いのか?
この調査に関連して私たちが収集したデータをもっと見たいという君のために、ウルザズ・デスティニー以降のGodbook調査結果をまとめたものを今日のコラムの最後に載せておいた。参照してくれ(註)。
(註) 調査結果
原文ではセット別の調査結果が記事の末尾にリスト化されている。
十人十色/Different Strokes
この種の議論は突き詰めると最終的には「多様性(Diversity)」という点に帰着する。
マジックの強みとは何か。その1つは、様々なプレイヤーごとに全く違ったゲームの側面を見せる、ということが挙げられる。
それを踏まえて、開発部が今回の問題をどう解決しているかというと、異なるタイプのプレイヤーに向けて異なるタイプのカードを提供することで対応している。
さて、この哲学に沿ってカードを生み出すことによって何が起きるか? 生み出されるカードたちは、あるプレイヤーには愛されるものの、別のプレイヤーには渋面をもって迎えられることとなるのだ。
良い例は《機知の戦い/Battle of Wits》だろう。大半のプレイヤーのこのカードに対する評価は、大好きか大嫌いかのいずれかだ。
そして、このカードを好むプレイヤーたちが生み出すゲーム活性化の力は、このカードを嫌うプレイヤーたちが奪われたゲームの活力の総量を上回ると開発部は信じている。
マジックがフレイバーテキストに対して取っているアプローチも同様だ。私たちは様々なタイプのプレイヤーたちに向けて、様々なタイプのフレイバーテキストを提供している。
叙情的な一節もあれば、叙述的な一節もあり、その一方で審美的な一節もあれば……もちろん、そう、ジョーク的な一節もあるわけだ。
おそらく先日の私のコラムは、ジョークやユーモアに満ちたフレイバーテキストは他の種類のフレイバーテキストに比べて開発部でより重んじられている、という誤った認識を読者に与えてしまった。
しかし私はあくまで数あるフレイバーテキストの担当者の中の1人に過ぎない(さらにいえば最近ではほとんどフレイバーテキストに関わってもいない)。
先日のコラムでは、コメディ脚本家という前職を持った私が生み出したフレイバーテキストたちを紹介させてもらった。そのため、どうにもそれらはユーモアに偏った作品群となってしまった。
しかしユーモアというのはあくまでマジックにおける選択肢の1つに過ぎない。ユーモアを得意とする(私を含めた)担当者たちと同様、他の選択肢や雰囲気を得意とする別の担当者たちがいるんだ。
何が問題なのか/The Rub
残念なことに、メカニズムやイラストにおいては非常に有用な多様性という概念が、フレイバーテキストにおいてはそう上手くは働いてくれない。
なぜなら、フレイバーテキストは異なる感情を呼び起こすというだけでないためだ。フレイバーテキストはそれ以上に異なるプレイヤーに対して異なる機能を果たすという点がある。
あるプレイヤーたち(例えばウィル、君のような)にとって、フレイバーテキストとは世界観を意味する。
大きなモザイク画のかけらの1つであり、全て集まり1つの絵を指し示すべきものであり、1つでも余計なかけらが混じっていれば絵は台無しになってしまう。
その一方で、あるプレイヤーたちにとっては、フレイバーテキストはゲームの面白みを増してくれるものだ。こういったプレイヤーたちはマジックをプレイしている最中にフレイバーテキストを読み上げたりする。
他のカードと関連性のない単体で笑えるジョークはこういったプレイヤーに好まれる。なぜならこういったプレイヤーたちが楽しいと感じるマジックの側面をさらに面白いものにしてくれるからだ。
この後者のグループに向けて書かれたフレイバーテキストは、前者のグループの感情を害する。そして逆の場合よりもその不快度は大きい。
この事実がクリエイティブチームのリーダーを板挟みにする。なぜならあるグループを楽しませようとすると別のグループが楽しくなくなってしまうためだ。
どうすればいいのか?
今、模索されている解決法は、全体的な調和を崩さないようにしつつ一部には軽いユーモアを交えるという手法だ。
両方のグループを満足させ得る良い例としてはゴブリンたちだ。
ゴブリンはそもそもがユーモアを感じさせるデザインなので、フレイバーを重視しつつも無理なくユーモアを導入することができる。
背景ストーリーについて/Here’s a Story
君が挙げたもう1つの側面、それは背景ストーリーについてだ。君の主張によると背景ストーリーに焦点が移ることでゲームのクオリティが下がるらしい。
実のところ、クリエイティブチームのリーダーは同じ意見だ。君にとっては喜ばしいニュースだろう。
ウェザーライトサーガというのは私たちにとっても試みの1つだった。継続する長編物語はゲームの質を高めてくれるのだろうか?
世のプレイヤーたちからの回答は「ノー」だった(もっとも、ストーリーが気に入ったといってくれたプレイヤーたちもまた存在したことは付記しておきたい)。
現在では、マジックの方向性は「ストーリーを語ること(creating stories)」ではなく、より「世界観を語ること(creating worlds)」を重視している。
ライターやイラストレーターに対するクリエイティブチームからの最近の指示では、長大なストーリーの断片を個々のカードを通じて部分的に見せるという形を避けている。
代わりに、個々のカードからそのストーリーの舞台となっている世界観が伝わるような書き方/描き方を指示するものとなっている。
こう考えて欲しい。
エキスパンションはストーリーのかけら(キャラクター、クリーチャー、アイテム、場所など)を個々のカードを通じて見せてくれる。それらをつないでくれるのは小説本の役割となるだろう。
つまりカードを先に触れてから本を読んだとして、多くの要素が馴染み深く親しみがいのあるものに感じられつつも、ストーリー自体はまったく目新しいものになるわけだ。
大鴉曰く/Quoth the Raven
さて、現実の小説などからの引用についてだ。
これについての落としどころは数年前に決定されている。基本セットは現実の小説などからの引用を可とする。エキスパンションは不可だ。そう決めた理由は何か。私たちはマジックに他と異なる独自の世界と声を持って欲しいと願っているからだ。
現実の小説が登場した途端、プレイヤーは魔法使い同士の決闘の場という世界から連れ出されてどこか……なんというか……学校にいるかのような気分になってしまう。マジックはエンターテイメントであり知育玩具ではない。
まとめ/To Sum Up
フレイバーテキスト週間というイベントを設けたのは全てのプレイヤーたちからの反応が欲しかったからだ。
ウィル、君からのお便りと同様の意見は、先週他のプレイヤーたちから他の媒体を通じてたくさん寄せられた。
しっかりと耳を傾けさせてもらったよ。
クリエイティブチームの皆はフレイバーテキストをより良いものにするためにたゆまぬ努力を続けている。
君の提示した問題点についてもいくつかはすでに俎上に乗せられているし、まだ吟味されていない問題点についてはこれからだ。
ただ1つだけ言わせてもらいたい。
1人のプレイヤーが何百万というマジックプレイヤーの声全てを代弁することは不可能だ。他のプレイヤーたちの声もまた私たちに届いている。君の意見に応えようとするのと同じだけ、私たちは他のプレイヤーたちの声にも耳を傾けている。
バランスをとることは非常に難しくデリケートな問題だ。それでも私たちは目を背けることなく、状況を改善するべく取り組んでいる。
さて、来週は「上手くぶっ壊す」ことについて語りたいと思っている。それまで、君たちが簡潔でユーモアにあふれたフレイバーテキストと出会う機会があるよう祈ってるよ。
マーク・ローズウォーター
※追記:ダジャレについて
今週の記事の補足としてちょっと皆から意見を募りたい。ここウィザーズでもデリケートな話題として扱われているものだ。
ダジャレだ。例えば《始祖グリーヴィル/Root Greevil》のフレイバーテキストは不人気だ。よってダジャレは人気がないとも言える。
しかしウィザーズ社内のダジャレ擁護派によると「人はダジャレに対して眉をひそめるよう教え育てられている」らしい。だから「良いダジャレほど不人気であって当然」だと言うんだ。
さて、君たちはどう思う? 読んだ人がつい眉をひそめてしまうようなダジャレを今後もマジックに載せ続けるべきだろうか? ぜひ意見を寄せて欲しい。
【翻訳】ピッチスペル誕生秘話/Free Play【DailyMTG】
2019年8月24日 翻訳 コメント (5)【翻訳】ピッチスペル誕生秘話/Free Play【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年08月19日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/free-play-2002-08-19
代替コスト週間へようこそ!
代替コストもしくはその頭文字をとってAPC(Alternate Playing Cost)と呼ばれる呪文に馴染みのない人のために説明しておくと、これはマナの代わりに別のコストを支払うことで0マナでも唱えられる呪文に関する言葉だ。
有名どころではアライアンスの《意志の力/Force of Will》、ビジョンズの《火炎破/Fireblast》、メルカディアン・マスクスの《噴出/Gush》などが挙げられる。
今週はAPC呪文がいかにして生まれたか、そしてこれらの誕生がどのような影響をマジックに与えたかを事細かに見ていこうと思う。
そうそう。このコラムはデザインに関するコラムだ。そこでAPC呪文をデザインするに当たって注意しなければいけないルールについても言及したいと思っている。一見簡単そうに見えるかもしれないが、そうでもないんだ。
さて、手始めにAPC呪文が誕生した瞬間を軽く覗いてみよう。
タップアウトしてから
つい先日アップしたアラビアンナイトに関するコラム(この記事(註)だ)のあと、私はクリス・ペイジから1通の手紙を受け取った。
ちなみにクリス・ペイジは、アンティキティ、フォールンエンパイア、アイスエイジ、そしてアライアンスなどの初期のマジックのデザインに関わった「East Coast Playtesters」というグループの1人だ。
先々週のアラビアンナイトのコラムを読んだクリスはいくつか補足情報を提供してくれた。そして彼とやり取りする中で、ありがたいことにアルファ版のプレイテスト中に書かれたとおぼしき古い書簡のコピーを提供してもらうこともできた。
その中にはリチャード・ガーフィールドとプレイテストメンバーたちとの間で交わされた手紙も含まれていた(ちなみにそのプレイテストのメンバーというのはクリス・ペイジ、スカッフ・エリアス(註)、ジム・リンなどだ)。
さて、手紙の中の1つに、はっきりそうと書かれているわけではないが、もしかしたらこれがピッチスペルの元となったアイデアではないかと思われる記述があった。
そのリチャードが書いた文章の一部を以下に紹介しよう。
キャントリップについて。
前にも書いたかもしれないが、考えれば考えるとほど、この案が気に入ってきた。キャントリップというのは誰もプレイしてないような呪文やそれ以外の弱すぎてデッキに入らないような効果を持ちつつも、その唱える際のコストを場に色マナのある土地があるかどうかにする……つまりマナ自体は不要なんだ!
何もできないだろうと思ってた対戦相手は驚き慌てることになるだろう。
そして唱えた瞬間にカードを1枚引く。これで手札の消費は補填される。典型的な「この手札があのカードだったらなあ」的な問題は解決だ。さらにカードの回転を高めてくれるから土地問題にも効果がある。
とはいえそういった副次的効果を除けば大して盤面に影響は与えない効果した持たないカードになるだろう。キャントリップのこれらの特徴のうち、一部だけ使ってみるという可能性もある。
興味深い点としてはリチャードがこの「キャントリップ」として挙げた効果のほんの一部分だけが実際に「キャントリップ」と呼ばれることとなり、それ以外の部分がピッチスペルとなった点だ。
マジックとはルールを破るゲームだ。新たなコンセプトを生み出す際にキーとなるのは、マジックというゲームの仕組みの中で特に確立された不変的と思われている側面を見つけることだ。
その上で、その固定観念を打ち破るメカニズムを生み出すんだ。リチャードとプレイテストメンバーたちは、土地を全てタップしたプレイヤーは無防備である、という点に目を付けたわけだ。
マナを生み出せないプレイヤーは対戦相手に何をされようと邪魔できない……そんな決まりに従う必要なんてないという思いから生み出されたのが初期のピッチスペルたちだったわけさ。
さて、時計の針を数年先まで進めてみよう。今は1995年の秋、そう私が初めて開発部に加わった日だ。その日、私はアライアンスのデベロップメントチームの打ち合わせに参加させられた。
最近ではデベロップメントチームといえば4~5人で構成されているが、アライアンスのチームは開発部のデザイナー以外の全メンバー(に加えて何人かの開発部以外のメンバー)によって構成されていた。たしか14人くらいの人数だったはずだ。
さて、私が加わったとき、すでにアライアンスの開発はかなり佳境に入っていた。初めてカードのカタログファイルを見たときのことをまだ覚えてるよ。このセットの目玉カードは間違いなくピッチスペルだ、と真っ先に思ったこともね。
より正確に言えばピッチスペルの《意志の力/Force of Will》こそこのセットの目玉になるだろう、とね(ちなみに当時の開発中の名前は《Stop Spell》だった)。
そう、アライアンスのデザイナーたち(スカッフ・エリアス、ジム・リン、クリス・ペイジ、デイヴ・ペッティ)はリチャードの暗示していた「無料の」呪文のアイデアを覚えており、それを実現するべく挑戦を試みていたのさ。
ルール外のルール
ここからさらに話は面白くなる。アライアンスのデザインチームのその挑戦とは一体なんだったのか? そして、その試みの障害とは?
まず1つ目の挑戦として、ピッチスペルには1つ大きな問題があった。マジックの色の役割は非常に繊細なバランスの元に成り立っている。プレイヤーは望むもの次第で異なる色を選ばざるを得ない。
しかし、もしプレイヤーが望むものを簡単にどんな色のデッキにでも散らして入れることができたらどうなるか。それすなわちカラーホイール(註)の崩壊だ。
カラーホイールをつなぎとめているのはマナだ。
たとえば呪文を打ち消したいプレイヤーは青マナが必要だ。しかしピッチスペルはそんなマナの必要性を無視してしまう。《意志の力/Force of Will》があればプレイヤーは青マナを有せずに相手の呪文を打ち消せてしまう。
つまりアライアンスのデザイナーは赤の魔法使いが気軽にデッキに打消し呪文を足せないよう、なんらかの手段で工夫する必要があったわけだ。
次に2つ目の挑戦として、デザイナーたちはなんとかピッチスペルをゲームの序盤から撃てるようにしたかった。
実のところ、《意志の力/Force of Will》が作られたの目的の1つは、プレイヤーが自分の最初のターンを迎える前に《対抗呪文/Counterspell》を唱えられるようにすることだった。誰だって自分の最初のターンが来る前に致命傷を負いたくはないだろう?
3つ目の挑戦として「土地を全てタップしているときにこそ使いたくなる効果でありつつも、アグレッシブに使ったときに相手を瞬殺してしまわないような効果」を思いつかなくてはいけなかった。
そして最後に、言わずもがなだが、4つ目としては彼らはこれらの条件を可能な限りシンプルに分かりやすくエレガントに達成する必要があり……実際に彼らはそれを達成した。この事実だけでも彼らのデザイナーとしての実力を証明するに十分と言えるだろうね。
さて実際にどんなカードが生み出されたのかは、君たちもすでに十分知っていることだし、ここは彼らがどんな思考プロセスを経たうえで結論に辿り着いたかを考えてみよう。
おっと、念のため。彼らがこのプロセスを経ているそのとき、私はまだ現場にいなかった。つまりここから紹介するのは、彼らはおそらくこのようにして問題を乗り越えていったのだろう、という私の推測だ。
さて、2つ目の挑戦として挙げた「ゲームの序盤から唱えられるようにすること」がもっとも制約として厳しいように見える。ここから始めてみようか。
カードをまだプレイしてない状態から払える代替コストといえばなんだろう? その状態で君が持っているリソースとは?
さて、ゲーム開始時に持っているリソースといえば、何よりもまず先に思いつくのはライフと手札だ。
ああ、もちろんそれ以外にも選択肢はあると言えばある。将来的なドローを諦めたり、対戦相手にリソースを与えたり……色々だ。しかしエレガントさという意味ではまずこの2つ、ライフと手札だろう。
さて、もしライフをリソースとした場合はどうなるか。もっとも大きな問題は色だ。このリソースを色と紐づけることは非常に難しい。
しかし逆に手札であればその問題をずっとエレガントに解決できる。何しろ手札には色がついているからだ。赤単色のデッキを使っているプレイヤーの手札は青いカードを持っていないんだ。
よってピッチスペルは適切な色のカードを捨てることを代替コストとすればいい。
ただ皮肉なことにアライアンスのデベロップメントチームはこれら2つのリソースは両方使うこととなった。ピッチスペルの中で青の呪文、《意志の力/Force of Will》だけが強すぎることが分かったからだ。
さて、ピッチスペルが機能することが分かったことで、チームは次の段階に進む必要があった。すなわち、ピッチスペルの魅力を減じることのないような素晴らしい効果を思いつかなくてはいけなかった。
まずカードはインスタントである必要がある。何しろピッチスペルは、こっちがタップアウトしてるときに使って相手を驚かせる「リアクション的な」カードだからだ。
さて、それを踏まえたうえで、どんなインスタントであるべきだとチームは考えたのだろうか。まず《紅蓮操作/Pyrokinesis》から見てみよう。
赤という色の主要なテーマは常に変わることなく「直接ダメージを与えること」だ。そしてそれは多くの場合においてインスタント速度で、だった。
つまり赤のピッチスペルがダメージ呪文となるのは至極当然のことだ。ただ、伝統的に赤の直接ダメージ呪文はクリーチャーもプレイヤーも対象にとれる汎用性の高いものだったが今回の場合はプレイヤーにも撃ててしまうとちょっとした問題がある。
もし《紅蓮操作/Pyrokinesis》がクリーチャーもプレイヤーも対象ととれるとなるとどうなるか。《紅蓮操作/Pyrokinesis》だけのデッキは対戦相手のターンが来る前にすら12点ダメージを本体に撃ち込めることになる。
1枚引けばさらに4点追加だ。そして2ターン後にはゲームが終わる。ピッチスペルの魅力は「驚き」であって「速度」ではない(もっとも、そう上手く狙い通りにいかなかったのは周知の事実ではあるが)
そんな感じで、アライアンスのデザイナーたちは能動的でなくより受動的な呪文となるよう細心の注意を払いつつピッチスペルをデザインしていった。
《紅蓮操作/Pyrokinesis》と《Contagion》はクリーチャーを除去し、《意志の力/Force of Will》と《古参兵の傷痕/Scars of the Veteran》は呪文とダメージを防ぐこととなった。
アライアンスのピッチスペルの中でもっとも攻撃的なカードである《狩りの報奨/Bounty of the Hunt》もどちらかというと相手へのダメージを高めるより自軍のクリーチャーを守るために使われたし、仮に攻撃的に使おうとした場合も3ターンキルをできるほどの速度ではなかった。
継続は力なり
前述の通りアライアンスのデザイナーたちはピッチスペルのゲーム序盤における強さを模索した。それに対し、ミラージュとビジョンズのデザインチーム(ビル・ローズ、ジョエル・ミック、チャーリー・カティノ、ドン・フェリーチェ、エリオット・シーガル、ハワード・カーレンベルク)はその逆の可能性を探った。
ゲームが進むにつれて盤面のリソースは積み重なっていく。この盤面のリソースをコストとして消費するピッチスペルはどうだろう?
デザインチームのサブリーダーであったビル・ローズによると、元々《火炎破/Fireblast》は場に並び過ぎた余剰の土地を生かすためにデザインされたそうだ。
(そうだね、君たちも知っての通り、実際の使われ方はそうではなかった。デザイナーの生み出したメカニズムの(別の)有用な使い道をプレイヤーたちが発見するというのは良くある話だ)
そしてそのコインの裏側を探索しにいったミラージュのデザイナーたちはそこに代替コストの新たな可能性が広がっていることを知ったんだ。
対応するタイプの色つきパーマネントを手札に戻したり生け贄に捧げたりするというコスト。対応する基本地形を手札に戻したり生け贄に捧げたりするというコスト。戦場以外の、例えば墓地などのカードをゲームから追放するコスト。
さらに言えば、これらのコストはゲーム序盤には支払うことができないため、より攻撃的な効果を持つピッチスペルのデザインが可能になった。
マスクスの下に隠された顔
次のピッチスペルに関する革新的発見はメルカディアン・マスクスのデザインの中でもたらされた。
このセットのデザインチーム(マイク・エリオット、ビル・ローズ、そして私の3人)は、ピッチスペルの再登場を画策していた。加えて、ただ復活させるに留まらず、さらなる深みを探ろうと決めていた。
そのため、このデザインチームは過去のピッチスペルから多くの気づきを得た上で、様々な試みを模索していた。
それは例えば、特定の色を対策するピッチスペル、対戦相手にリソースを与えることをコストとするピッチスペル、呪文カードではなく土地カードを捨てる必要のあるピッチスペルなどだ。
前述したマスクスブロックのデザインにおいて個人的に最も興味深かった点は、ピッチスペルの可能性がなんと広いのか、ということだった。
もちろんピッチスペルの可能性には危険性もあった。そして実際に開発部の歴史の中でその強さを過小評価し過ぎてしまったこともあった。
しかしそれでもなおピッチスペルという世界にはまだ多くの可能性が確かに残されている。私たちはまた何度でもここに足を踏み入れることになるだろう。
というわけで過去のメカニズムを再訪する小旅行は楽しんでもらえただろうか。このような記事を読んでもらうことで《意志の力/Force of Will》のように美しく洗練されたカードが生まれるまでには多くの難しい判断が下されていることを知ってもらえればと願っている。
来週もまたこのコラムでお会いしよう。次回は有名どころのカードの生まれたばかりの写真を紹介しようと思っている。それまで君たちが土地をフルタップしつつも意味ありげな笑みで対戦相手を翻弄できるよう祈ってるよ。
Mark Rosewater
2002年08月19日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/free-play-2002-08-19
代替コスト週間へようこそ!
代替コストもしくはその頭文字をとってAPC(Alternate Playing Cost)と呼ばれる呪文に馴染みのない人のために説明しておくと、これはマナの代わりに別のコストを支払うことで0マナでも唱えられる呪文に関する言葉だ。
有名どころではアライアンスの《意志の力/Force of Will》、ビジョンズの《火炎破/Fireblast》、メルカディアン・マスクスの《噴出/Gush》などが挙げられる。
Force of Will / 意志の力 (3)(青)(青)
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、1点のライフを支払うとともにあなたの手札にある青のカードを1枚、追放することを選んでもよい。
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Force+of+Will/
Fireblast / 火炎破 (4)(赤)(赤)
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、山(Mountain)を2つ生け贄に捧げることを選んでもよい。
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。火炎破はそれに4点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Fireblast/
Gush / 噴出 (4)(青)
インスタント
あなたはこの呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたがコントロールする島(Island)を2つ、オーナーの手札に戻すことを選んでもよい。
カードを2枚引く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gush/
今週はAPC呪文がいかにして生まれたか、そしてこれらの誕生がどのような影響をマジックに与えたかを事細かに見ていこうと思う。
そうそう。このコラムはデザインに関するコラムだ。そこでAPC呪文をデザインするに当たって注意しなければいけないルールについても言及したいと思っている。一見簡単そうに見えるかもしれないが、そうでもないんだ。
さて、手始めにAPC呪文が誕生した瞬間を軽く覗いてみよう。
(訳注) APC呪文
正直なところ日本だとAPCという俗称はほとんど根付いておらず伝わりづらい気がするので、以降は日本でもそこそこ知られている俗称である「ピッチスペル」の呼び名を使うことにする。
タップアウトしてから
つい先日アップしたアラビアンナイトに関するコラム(この記事(註)だ)のあと、私はクリス・ペイジから1通の手紙を受け取った。
(註) この記事
原文では「It Happened One Nights」。今回のコラムの2週間前に書かれたものでアラビアンナイトのカードがどうその後のデザインに影響を与えたかについて語っている。以下、そのコラムの拙訳。
(日本語訳) https://regiant.diarynote.jp/201906092347189528/
ちなみにクリス・ペイジは、アンティキティ、フォールンエンパイア、アイスエイジ、そしてアライアンスなどの初期のマジックのデザインに関わった「East Coast Playtesters」というグループの1人だ。
先々週のアラビアンナイトのコラムを読んだクリスはいくつか補足情報を提供してくれた。そして彼とやり取りする中で、ありがたいことにアルファ版のプレイテスト中に書かれたとおぼしき古い書簡のコピーを提供してもらうこともできた。
その中にはリチャード・ガーフィールドとプレイテストメンバーたちとの間で交わされた手紙も含まれていた(ちなみにそのプレイテストのメンバーというのはクリス・ペイジ、スカッフ・エリアス(註)、ジム・リンなどだ)。
(註) スカッフ・エリアス
アルファ版が出る前から開発とテストプレイに関わっているメンバー。同じカードは4枚までの制限ルールを初めてテストした人だったり、エキスパンションごとにカードの裏面を違うものにしようというアイデアを速攻で却下したりもするらしい(以上の話のソースは以下の MTG Salvation Wiki)。
https://mtg.gamepedia.com/Skaff_Elias
さて、手紙の中の1つに、はっきりそうと書かれているわけではないが、もしかしたらこれがピッチスペルの元となったアイデアではないかと思われる記述があった。
そのリチャードが書いた文章の一部を以下に紹介しよう。
キャントリップについて。
前にも書いたかもしれないが、考えれば考えるとほど、この案が気に入ってきた。キャントリップというのは誰もプレイしてないような呪文やそれ以外の弱すぎてデッキに入らないような効果を持ちつつも、その唱える際のコストを場に色マナのある土地があるかどうかにする……つまりマナ自体は不要なんだ!
何もできないだろうと思ってた対戦相手は驚き慌てることになるだろう。
そして唱えた瞬間にカードを1枚引く。これで手札の消費は補填される。典型的な「この手札があのカードだったらなあ」的な問題は解決だ。さらにカードの回転を高めてくれるから土地問題にも効果がある。
とはいえそういった副次的効果を除けば大して盤面に影響は与えない効果した持たないカードになるだろう。キャントリップのこれらの特徴のうち、一部だけ使ってみるという可能性もある。
興味深い点としてはリチャードがこの「キャントリップ」として挙げた効果のほんの一部分だけが実際に「キャントリップ」と呼ばれることとなり、それ以外の部分がピッチスペルとなった点だ。
マジックとはルールを破るゲームだ。新たなコンセプトを生み出す際にキーとなるのは、マジックというゲームの仕組みの中で特に確立された不変的と思われている側面を見つけることだ。
その上で、その固定観念を打ち破るメカニズムを生み出すんだ。リチャードとプレイテストメンバーたちは、土地を全てタップしたプレイヤーは無防備である、という点に目を付けたわけだ。
マナを生み出せないプレイヤーは対戦相手に何をされようと邪魔できない……そんな決まりに従う必要なんてないという思いから生み出されたのが初期のピッチスペルたちだったわけさ。
さて、時計の針を数年先まで進めてみよう。今は1995年の秋、そう私が初めて開発部に加わった日だ。その日、私はアライアンスのデベロップメントチームの打ち合わせに参加させられた。
最近ではデベロップメントチームといえば4~5人で構成されているが、アライアンスのチームは開発部のデザイナー以外の全メンバー(に加えて何人かの開発部以外のメンバー)によって構成されていた。たしか14人くらいの人数だったはずだ。
さて、私が加わったとき、すでにアライアンスの開発はかなり佳境に入っていた。初めてカードのカタログファイルを見たときのことをまだ覚えてるよ。このセットの目玉カードは間違いなくピッチスペルだ、と真っ先に思ったこともね。
より正確に言えばピッチスペルの《意志の力/Force of Will》こそこのセットの目玉になるだろう、とね(ちなみに当時の開発中の名前は《Stop Spell》だった)。
そう、アライアンスのデザイナーたち(スカッフ・エリアス、ジム・リン、クリス・ペイジ、デイヴ・ペッティ)はリチャードの暗示していた「無料の」呪文のアイデアを覚えており、それを実現するべく挑戦を試みていたのさ。
ルール外のルール
ここからさらに話は面白くなる。アライアンスのデザインチームのその挑戦とは一体なんだったのか? そして、その試みの障害とは?
まず1つ目の挑戦として、ピッチスペルには1つ大きな問題があった。マジックの色の役割は非常に繊細なバランスの元に成り立っている。プレイヤーは望むもの次第で異なる色を選ばざるを得ない。
しかし、もしプレイヤーが望むものを簡単にどんな色のデッキにでも散らして入れることができたらどうなるか。それすなわちカラーホイール(註)の崩壊だ。
(註) カラーホイール
原文では「Color Wheel」。マジックの色の役割は円を5つに切り分けたカラーパイの形で語られることが多く、その見た目を指して「カラーホイール(= 色の車輪)」と称することがある……という説明であってるか若干自信がないが、とりあえず「色の役割」と同じ意味にとってもらえれば大丈夫(のはず)。
カラーホイールをつなぎとめているのはマナだ。
たとえば呪文を打ち消したいプレイヤーは青マナが必要だ。しかしピッチスペルはそんなマナの必要性を無視してしまう。《意志の力/Force of Will》があればプレイヤーは青マナを有せずに相手の呪文を打ち消せてしまう。
つまりアライアンスのデザイナーは赤の魔法使いが気軽にデッキに打消し呪文を足せないよう、なんらかの手段で工夫する必要があったわけだ。
次に2つ目の挑戦として、デザイナーたちはなんとかピッチスペルをゲームの序盤から撃てるようにしたかった。
実のところ、《意志の力/Force of Will》が作られたの目的の1つは、プレイヤーが自分の最初のターンを迎える前に《対抗呪文/Counterspell》を唱えられるようにすることだった。誰だって自分の最初のターンが来る前に致命傷を負いたくはないだろう?
(余談)
原文ではここに「沼セット、モックス、モックス、ブラックロータス、暗黒の儀式で《精神錯乱》唱えます。7枚捨ててください」「なんてこった」という画像のキャプションが記載されているが、画像自体は記事が古すぎて載っていない。おそらく会話に登場するカード群が紹介されていたものと思われる。
3つ目の挑戦として「土地を全てタップしているときにこそ使いたくなる効果でありつつも、アグレッシブに使ったときに相手を瞬殺してしまわないような効果」を思いつかなくてはいけなかった。
そして最後に、言わずもがなだが、4つ目としては彼らはこれらの条件を可能な限りシンプルに分かりやすくエレガントに達成する必要があり……実際に彼らはそれを達成した。この事実だけでも彼らのデザイナーとしての実力を証明するに十分と言えるだろうね。
さて実際にどんなカードが生み出されたのかは、君たちもすでに十分知っていることだし、ここは彼らがどんな思考プロセスを経たうえで結論に辿り着いたかを考えてみよう。
おっと、念のため。彼らがこのプロセスを経ているそのとき、私はまだ現場にいなかった。つまりここから紹介するのは、彼らはおそらくこのようにして問題を乗り越えていったのだろう、という私の推測だ。
さて、2つ目の挑戦として挙げた「ゲームの序盤から唱えられるようにすること」がもっとも制約として厳しいように見える。ここから始めてみようか。
カードをまだプレイしてない状態から払える代替コストといえばなんだろう? その状態で君が持っているリソースとは?
さて、ゲーム開始時に持っているリソースといえば、何よりもまず先に思いつくのはライフと手札だ。
ああ、もちろんそれ以外にも選択肢はあると言えばある。将来的なドローを諦めたり、対戦相手にリソースを与えたり……色々だ。しかしエレガントさという意味ではまずこの2つ、ライフと手札だろう。
さて、もしライフをリソースとした場合はどうなるか。もっとも大きな問題は色だ。このリソースを色と紐づけることは非常に難しい。
しかし逆に手札であればその問題をずっとエレガントに解決できる。何しろ手札には色がついているからだ。赤単色のデッキを使っているプレイヤーの手札は青いカードを持っていないんだ。
よってピッチスペルは適切な色のカードを捨てることを代替コストとすればいい。
ただ皮肉なことにアライアンスのデベロップメントチームはこれら2つのリソースは両方使うこととなった。ピッチスペルの中で青の呪文、《意志の力/Force of Will》だけが強すぎることが分かったからだ。
(註) 《意志の力/Force of Will》だけ
《意志の力/Force of Will》は確かに代替コストに手札とライフを要求するが、実際にはこの《意志の力/Force of Will》以外にも手札とライフの両方を大体コストとして要求するピッチスペルがアライアンスにはある。黒猫のイラストで人気の《Contagion》がそれ。
さて、ピッチスペルが機能することが分かったことで、チームは次の段階に進む必要があった。すなわち、ピッチスペルの魅力を減じることのないような素晴らしい効果を思いつかなくてはいけなかった。
まずカードはインスタントである必要がある。何しろピッチスペルは、こっちがタップアウトしてるときに使って相手を驚かせる「リアクション的な」カードだからだ。
さて、それを踏まえたうえで、どんなインスタントであるべきだとチームは考えたのだろうか。まず《紅蓮操作/Pyrokinesis》から見てみよう。
Pyrokinesis / 紅蓮操作 (4)(赤)(赤)
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札にある赤のカード1枚を追放することを選んでもよい。
好きな数のクリーチャーを対象とする。紅蓮操作はそれらに4点のダメージを、望むように割り振って与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Pyrokinesis/
赤という色の主要なテーマは常に変わることなく「直接ダメージを与えること」だ。そしてそれは多くの場合においてインスタント速度で、だった。
つまり赤のピッチスペルがダメージ呪文となるのは至極当然のことだ。ただ、伝統的に赤の直接ダメージ呪文はクリーチャーもプレイヤーも対象にとれる汎用性の高いものだったが今回の場合はプレイヤーにも撃ててしまうとちょっとした問題がある。
もし《紅蓮操作/Pyrokinesis》がクリーチャーもプレイヤーも対象ととれるとなるとどうなるか。《紅蓮操作/Pyrokinesis》だけのデッキは対戦相手のターンが来る前にすら12点ダメージを本体に撃ち込めることになる。
1枚引けばさらに4点追加だ。そして2ターン後にはゲームが終わる。ピッチスペルの魅力は「驚き」であって「速度」ではない(もっとも、そう上手く狙い通りにいかなかったのは周知の事実ではあるが)
そんな感じで、アライアンスのデザイナーたちは能動的でなくより受動的な呪文となるよう細心の注意を払いつつピッチスペルをデザインしていった。
《紅蓮操作/Pyrokinesis》と《Contagion》はクリーチャーを除去し、《意志の力/Force of Will》と《古参兵の傷痕/Scars of the Veteran》は呪文とダメージを防ぐこととなった。
アライアンスのピッチスペルの中でもっとも攻撃的なカードである《狩りの報奨/Bounty of the Hunt》もどちらかというと相手へのダメージを高めるより自軍のクリーチャーを守るために使われたし、仮に攻撃的に使おうとした場合も3ターンキルをできるほどの速度ではなかった。
Scars of the Veteran / 古参兵の傷痕 (4)(白)
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札にある白のカード1枚を追放することを選んでもよい。
クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。このターン、それに与えられる次のダメージを7点軽減する。それがクリーチャーであるなら、次の終了ステップの開始時に、これにより軽減されたダメージ1点につき、それの上に+0/+1カウンターを1個置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Scars+of+the+Veteran/
Bounty of the Hunt / 狩りの報奨 (3)(緑)(緑)
インスタント
あなたは、この呪文のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札にある緑のカード1枚を追放することを選んでもよい。
1体か2体か3体のクリーチャーを対象とし、それらの上に3個の+1/+1カウンターを割り振って置く。これによりあなたがクリーチャーの上に置いた各+1/+1カウンターについて、次のクリンナップ・ステップの開始時にそのクリーチャーから+1/+1カウンターを1個取り除く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Bounty+of+the+Hunt/
継続は力なり
前述の通りアライアンスのデザイナーたちはピッチスペルのゲーム序盤における強さを模索した。それに対し、ミラージュとビジョンズのデザインチーム(ビル・ローズ、ジョエル・ミック、チャーリー・カティノ、ドン・フェリーチェ、エリオット・シーガル、ハワード・カーレンベルク)はその逆の可能性を探った。
ゲームが進むにつれて盤面のリソースは積み重なっていく。この盤面のリソースをコストとして消費するピッチスペルはどうだろう?
デザインチームのサブリーダーであったビル・ローズによると、元々《火炎破/Fireblast》は場に並び過ぎた余剰の土地を生かすためにデザインされたそうだ。
(そうだね、君たちも知っての通り、実際の使われ方はそうではなかった。デザイナーの生み出したメカニズムの(別の)有用な使い道をプレイヤーたちが発見するというのは良くある話だ)
そしてそのコインの裏側を探索しにいったミラージュのデザイナーたちはそこに代替コストの新たな可能性が広がっていることを知ったんだ。
対応するタイプの色つきパーマネントを手札に戻したり生け贄に捧げたりするというコスト。対応する基本地形を手札に戻したり生け贄に捧げたりするというコスト。戦場以外の、例えば墓地などのカードをゲームから追放するコスト。
さらに言えば、これらのコストはゲーム序盤には支払うことができないため、より攻撃的な効果を持つピッチスペルのデザインが可能になった。
(余談)
原文ではここに「マスクスブロックのこれら3枚のカードはピッチスペルのまた違った可能性を見せてくれた」という画像のキャプションが記載されているが、画像自体は記事が古すぎて載っていない。マスクスブロックのピッチスペル、かつ手札以外をコストとする呪文という意味では《噴出/Gush》、《殺し/Snuff Out》、《土地譲渡/Land Grant》あたりか。
マスクスの下に隠された顔
次のピッチスペルに関する革新的発見はメルカディアン・マスクスのデザインの中でもたらされた。
このセットのデザインチーム(マイク・エリオット、ビル・ローズ、そして私の3人)は、ピッチスペルの再登場を画策していた。加えて、ただ復活させるに留まらず、さらなる深みを探ろうと決めていた。
そのため、このデザインチームは過去のピッチスペルから多くの気づきを得た上で、様々な試みを模索していた。
それは例えば、特定の色を対策するピッチスペル、対戦相手にリソースを与えることをコストとするピッチスペル、呪文カードではなく土地カードを捨てる必要のあるピッチスペルなどだ。
前述したマスクスブロックのデザインにおいて個人的に最も興味深かった点は、ピッチスペルの可能性がなんと広いのか、ということだった。
もちろんピッチスペルの可能性には危険性もあった。そして実際に開発部の歴史の中でその強さを過小評価し過ぎてしまったこともあった。
しかしそれでもなおピッチスペルという世界にはまだ多くの可能性が確かに残されている。私たちはまた何度でもここに足を踏み入れることになるだろう。
というわけで過去のメカニズムを再訪する小旅行は楽しんでもらえただろうか。このような記事を読んでもらうことで《意志の力/Force of Will》のように美しく洗練されたカードが生まれるまでには多くの難しい判断が下されていることを知ってもらえればと願っている。
来週もまたこのコラムでお会いしよう。次回は有名どころのカードの生まれたばかりの写真を紹介しようと思っている。それまで君たちが土地をフルタップしつつも意味ありげな笑みで対戦相手を翻弄できるよう祈ってるよ。
先日アップした以下の記事の訳の苦労した点というか、楽しんだ点というか。
開発中のセットに付けられるコードネームの歴史/Codename of the Game
https://regiant.diarynote.jp/201907122033045570/
言い訳がましくならないように気を付けつつ。
まずタイトルについて書いてみる。タイトルの原文は「Codename of the Game」で、英語の慣用句の「Name of the Game」をネタにしている(意味は「最も重要な点」「一番肝心なこと」)。
本当に上手い人だったら日本語の慣用句やことわざの一部を「コードネーム」という単語に置き換えつつ、元の意味が伝わるようなタイトルを思い付けるんだろうな、とか考えつつ、素直に内容を表すタイトルにしてしまった(白旗)
原文では「Big / Small」となっている対比語を「重たい/軽い」と訳してみた。そのまま「大きな話題、小さな話題」という手もあったかもしれないけど「深刻な、真剣な」という意味での「Big」っぽかったので。
気になっているのは後半部分の「isn’t meant as a slight to」のくだり。正直、この文章単体で見ると、よく意味が分からなかった。個々の単語は知ってる言葉なんだけど……。
ただ、前後の内容を見るに「end up with みたいな否定的な書き方をしてるけど that expansion に対する何か意図があって(= meant)言ったわけじゃないよ」という意味にしかとれなかったのでそう訳した次第。
もしかしたら今回の記事で一番苦労した箇所かもしれない。見ての通り、原文だと間に挟まっているツッコミ(?)は全部同じにも関わらず、訳では(勝手に)徐々にトーンダウンしていってる。
色々と思考が行ったり来たりした挙句に上記の訳にしたんだけど、おそらく原文の「Ooooh」は著者自身が入れてる合いの手のようなものではないかと思う。
英語でホラー話や何か恐い話をするとき(もしくはされたとき)に入れる効果音的な言葉があって、それが「Ooooh」。音としては「オォー」ではなく「ウゥー」。
日本語で言うと……なかなか例を挙げづらいんだけど……あえていえば「ひゅ~どろどろ~」みたいな? 「Dark」というホラー的な単語をからかう意味で入れてるのかなあ。
ただそれを日本語して、さらには各文の末尾に放り込んであっても自然な日本語として読めるようにする、という手段がどうしても思いつかず、最終的には原文の「形」だけ借りたうえで、プレイヤーたちの反応として訳している。
うーん。いっそ、カッコ部分だけ全部見なかったことにするという手もあったかもしれない(ダメだよ)
ここの訳がどうこうというより、ここから長々と続くマッキントッシュ(マック)関係のくだり全体に関しては、アップル社の訴訟の話とか実際にあった話が絡むので色々と確認しながらの訳だった。
やっぱり実話が元ネタとなると嘘を書くわけにもいかないので確認は必要だし、このコラムで紹介されてる逸話が実は間違ってたらそれも合わせて確認しておくべきと思われるし……。
ただ、今回のマックの話のようにネットでも話題になったことがあり検索すれば情報が得られるからいいけど、ネットにも情報の無いような話となると限界が生じてくる(以前訳した、すでに亡くなられているマジックプレイヤーの逸話とか)
この箇所については2点ある。1点目としては原文の最後にある「~ has run its course」という言い方。これは「~ が自然消滅する、~ が自然な結果となる」というような意味らしい。知らなかった。
2点目としては、見ての通り、かなり日本語側だけが長くなっている。原文はそのまま訳すと「マッキントッシュの音声ファイルを自然と消滅させることを開発部が決断した」みたいな文章になってしまい、良く意味が分からない。
意味が自然な日本語になるようにしよう、と言い換えたり、付け加えたり、を繰り返していたら上記の文章になった。読みやすい(分かりやすい)と思うんだけど……はてさて。
英語で「インドの」は「Indian」となるけど、このままだといわゆるネイティブアメリカンを指しての「Indian」なのか、インドを指しているのか、が分からなくなるため、原文では注記が入ってる。
……けど、これ、日本語だと不要なんだよね。無理をすれば「インディアンの神話が元ネタだよ」「インディアン? いわゆるネイティブアメリカンか」「いや、そっちじゃない、本当のインディアン(インド人)だよ」という会話で表現できなくもないけど、さすがに原文からかけ離れ過ぎる。
話の流れに関わるようなネタでもないのでバッサリ切った。
見ての通り、カッコ内の補足などは原文とは違った語順で訳している。無理に原文通りに文末に持ってこようとすると補足したい箇所から遠くなって、逆に意味が分かりづらくなる(気がする)から。
ただわざわざこの箇所を紹介しようと思ったのはそれを説明したいからではなくて、ここで言及されている sideboard.com という今は亡きサイトが無ければ、このブログも無かった、という話。
正しく言うと……
1. Sideboard Online というマジックの公式サイトがあった
2. その和訳版である Sideboard Online Japan も作られた
3. でも日本語版のサイトは更新が途切れがちだった
4. 2chのSideboard Online Japanスレで不平不満があふれた
5. しまいにはスレで「自分らで勝手に訳すか」という話が出た
6. いつのまにかスレは英語マジック記事の翻訳スレになった
7. 翻訳された文章をまとめるサイト「Braingeyser」が作られた
……という流れがあったことなど何も知らずにその「Braingeyser」という翻訳記事サイトに偶然流れついて記事を読みふけり、自分でも訳すようになり、さらにそこから Diarynote の存在を知り……という流れで今ここにいる次第。
Card of the Day の翻訳を始めたのにはさらに Abomination.jp というサイトの存在も大きかったけど、ただでさえ逸れている話がさらに話が逸れてしまうので省略。
「Spellfire」が元ネタだったかもしれないことと「そろそろ Cheesy なセットを作らないとな」ということは(訳したほうでは2つの別の話として扱っているけど)原文では1つのことのようにも見える。セミコロンだし。
でも「Spellfire を元ネタにすること」がどのように「Cheesy であること」につながるのかイマイチ分からなかったので、諦めて上記のように訳した。何しろ「Spellfire」がどんなカードゲームなのか全然知らないので。
あらためて思うと「Cheesy」には「チーズっぽい(味がきつい、臭いが強い)」という意味以外に「派手な、くだらない」という意味もあることを考えると、これは銀枠セットの開発を匂わせてたのかもしれない。
最初の銀枠セット(公式大会で使えない銀枠のジョークカードのセット)であるアングル―ドとストロングホールドは両方とも1998年の発売だし。
長々と引用したけど、原文の意味がなかなか取れなくて困ったのは「R&D has since cracked down on this and is now the current keeper of the codenames.」の箇所。
「開発部はそれを厳しく取り締まった」「今ではコードネームの管理者となった」と読めるけど、それだとなんか変な気がする。当時から管理者だったのなら取り締まる理由は分かるけど、当時管理者じゃなかったなら厳しく取り締まる立場じゃないわけで……うーん。前後してしまう。
考え過ぎてる気もする。
疑問符を使わなかったり、カッコを使ったり、色々と原文どおりになっていないけど、元の文章のニュアンス(ノリ)はそこそこ上手く訳せたんでないかと思った(自画自賛)
開発中のセットに付けられるコードネームの歴史/Codename of the Game
https://regiant.diarynote.jp/201907122033045570/
言い訳がましくならないように気を付けつつ。
まずタイトルについて書いてみる。タイトルの原文は「Codename of the Game」で、英語の慣用句の「Name of the Game」をネタにしている(意味は「最も重要な点」「一番肝心なこと」)。
本当に上手い人だったら日本語の慣用句やことわざの一部を「コードネーム」という単語に置き換えつつ、元の意味が伝わるようなタイトルを思い付けるんだろうな、とか考えつつ、素直に内容を表すタイトルにしてしまった(白旗)
原文:
Over last few weeks, I’ve covered mostly "big issues" in my column. This week, I thought it would be fun to examine a small issue
拙訳:
実のところ、ここ数回に渡って非常に「重たい」内容の記事が続いてしまった。そこで今週は少し「軽い」内容を扱ってもいいかと思った次第だ。
原文では「Big / Small」となっている対比語を「重たい/軽い」と訳してみた。そのまま「大きな話題、小さな話題」という手もあったかもしれないけど「深刻な、真剣な」という意味での「Big」っぽかったので。
原文:
But eventually, you end up with a set named The Dark. This isn’t meant as a slight to that expansion.
拙訳:
しかし結局はこの慣習のせいでザ・ダークという名前のセットが生まれてしまった。別にセットに問題があったわけじゃない。
気になっているのは後半部分の「isn’t meant as a slight to」のくだり。正直、この文章単体で見ると、よく意味が分からなかった。個々の単語は知ってる言葉なんだけど……。
ただ、前後の内容を見るに「end up with みたいな否定的な書き方をしてるけど that expansion に対する何か意図があって(= meant)言ったわけじゃないよ」という意味にしかとれなかったのでそう訳した次第。
原文:
Coming this fall to a store near you . . . The Dark. (ooooh) What’s it about? Well, um, it’s in Dominaria and it’s very . . . dark (ooooh). Things are hard to see. Scary things. In the dark (ooooh).
拙訳:
この秋に君たちの元に届くであろう新セット、その名はザ・ダーク!(うおー!)どんなセットかって? えーと、うん、舞台はドミナリアで、とても……ダークな感じだ。(おおー)色々と見えづらくてね。ホラーな感じもあって……ダークな感じで。(おお……)
もしかしたら今回の記事で一番苦労した箇所かもしれない。見ての通り、原文だと間に挟まっているツッコミ(?)は全部同じにも関わらず、訳では(勝手に)徐々にトーンダウンしていってる。
色々と思考が行ったり来たりした挙句に上記の訳にしたんだけど、おそらく原文の「Ooooh」は著者自身が入れてる合いの手のようなものではないかと思う。
英語でホラー話や何か恐い話をするとき(もしくはされたとき)に入れる効果音的な言葉があって、それが「Ooooh」。音としては「オォー」ではなく「ウゥー」。
日本語で言うと……なかなか例を挙げづらいんだけど……あえていえば「ひゅ~どろどろ~」みたいな? 「Dark」というホラー的な単語をからかう意味で入れてるのかなあ。
ただそれを日本語して、さらには各文の末尾に放り込んであっても自然な日本語として読めるようにする、という手段がどうしても思いつかず、最終的には原文の「形」だけ借りたうえで、プレイヤーたちの反応として訳している。
うーん。いっそ、カッコ部分だけ全部見なかったことにするという手もあったかもしれない(ダメだよ)
原文:
As I explained in a previous column, early codenames were named after Macintosh sound files. That way, when an R&D member clicked open the set folder, the computer (back then they were all Macs) would make a sound.
拙訳:
以前、私のコラムで紹介したとおり、初期の開発中セットのコードネームはマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名からとられた。開発部のメンバーがコンピュータ(当時は全てマッキントッシュだった)を立ち上げ、開発ファイルの入ったフォルダを開くとその音が鳴るわけだ。
ここの訳がどうこうというより、ここから長々と続くマッキントッシュ(マック)関係のくだり全体に関しては、アップル社の訴訟の話とか実際にあった話が絡むので色々と確認しながらの訳だった。
やっぱり実話が元ネタとなると嘘を書くわけにもいかないので確認は必要だし、このコラムで紹介されてる逸話が実は間違ってたらそれも合わせて確認しておくべきと思われるし……。
ただ、今回のマックの話のようにネットでも話題になったことがあり検索すれば情報が得られるからいいけど、ネットにも情報の無いような話となると限界が生じてくる(以前訳した、すでに亡くなられているマジックプレイヤーの逸話とか)
原文:
This is the set at which time R&D decided that Macintosh sound file names had run their course.
拙訳:
コードネームにマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名を使おうというネタの継続を開発部が諦めたのはこのセットからだ。諦めた理由はごく単純で、サウンドファイル名のストックが尽きたからだ。
この箇所については2点ある。1点目としては原文の最後にある「~ has run its course」という言い方。これは「~ が自然消滅する、~ が自然な結果となる」というような意味らしい。知らなかった。
2点目としては、見ての通り、かなり日本語側だけが長くなっている。原文はそのまま訳すと「マッキントッシュの音声ファイルを自然と消滅させることを開発部が決断した」みたいな文章になってしまい、良く意味が分からない。
意味が自然な日本語になるようにしよう、と言い換えたり、付け加えたり、を繰り返していたら上記の文章になった。読みやすい(分かりやすい)と思うんだけど……はてさて。
原文:
When I asked Mike about the name, he told me that it was from Indian (India as opposed to American Indian) mythology.
拙訳:
作成者のマイクにカード名称の由来について尋ねたところ、マイクは「インドの神話が元ネタだ」と教えてくれた。
英語で「インドの」は「Indian」となるけど、このままだといわゆるネイティブアメリカンを指しての「Indian」なのか、インドを指しているのか、が分からなくなるため、原文では注記が入ってる。
……けど、これ、日本語だと不要なんだよね。無理をすれば「インディアンの神話が元ネタだよ」「インディアン? いわゆるネイティブアメリカンか」「いや、そっちじゃない、本当のインディアン(インド人)だよ」という会話で表現できなくもないけど、さすがに原文からかけ離れ過ぎる。
話の流れに関わるようなネタでもないのでバッサリ切った。
原文:
Here’s a trivia question that will someday make its way onto "Question Mark" (a daily trivia column I do on sideboard.com)
拙訳:
私は別サイトでトリビアネタのコラム「Question Mark」を連載しているんだが(ちなみにsideboard.comだ)、そこでいつか使うかもしれないクイズのネタをここで披露しよう。
見ての通り、カッコ内の補足などは原文とは違った語順で訳している。無理に原文通りに文末に持ってこようとすると補足したい箇所から遠くなって、逆に意味が分かりづらくなる(気がする)から。
ただわざわざこの箇所を紹介しようと思ったのはそれを説明したいからではなくて、ここで言及されている sideboard.com という今は亡きサイトが無ければ、このブログも無かった、という話。
正しく言うと……
1. Sideboard Online というマジックの公式サイトがあった
2. その和訳版である Sideboard Online Japan も作られた
3. でも日本語版のサイトは更新が途切れがちだった
4. 2chのSideboard Online Japanスレで不平不満があふれた
5. しまいにはスレで「自分らで勝手に訳すか」という話が出た
6. いつのまにかスレは英語マジック記事の翻訳スレになった
7. 翻訳された文章をまとめるサイト「Braingeyser」が作られた
……という流れがあったことなど何も知らずにその「Braingeyser」という翻訳記事サイトに偶然流れついて記事を読みふけり、自分でも訳すようになり、さらにそこから Diarynote の存在を知り……という流れで今ここにいる次第。
Card of the Day の翻訳を始めたのにはさらに Abomination.jp というサイトの存在も大きかったけど、ただでさえ逸れている話がさらに話が逸れてしまうので省略。
原文:
Also, I think this name might have been yet another poke at Spellfire; we kept joking about how we needed to make a "cheesy" expansion.
拙訳:
これもダンジョンズアンドドラゴンズTCG「Spellfire」が元ネタだったかもしれないし、そうでなければ単に当時「そろそろ『味の濃い』セットを作らないな」と冗談めかして言っていたことが原因かもしれない。
「Spellfire」が元ネタだったかもしれないことと「そろそろ Cheesy なセットを作らないとな」ということは(訳したほうでは2つの別の話として扱っているけど)原文では1つのことのようにも見える。セミコロンだし。
でも「Spellfire を元ネタにすること」がどのように「Cheesy であること」につながるのかイマイチ分からなかったので、諦めて上記のように訳した。何しろ「Spellfire」がどんなカードゲームなのか全然知らないので。
あらためて思うと「Cheesy」には「チーズっぽい(味がきつい、臭いが強い)」という意味以外に「派手な、くだらない」という意味もあることを考えると、これは銀枠セットの開発を匂わせてたのかもしれない。
最初の銀枠セット(公式大会で使えない銀枠のジョークカードのセット)であるアングル―ドとストロングホールドは両方とも1998年の発売だし。
原文:
This was the first codename not created by R&D. The Magic Brand team was talking about some future set and made up a name because it didn’t have one yet.
R&D has since cracked down on this and is now the current keeper of the codenames.
拙訳:
開発部以外がコードネームを決めた最初のセットがこれだ。マジックのブランドチームが未来のセットについて話す必要が生じて際に、そのセットに仮の名前として Armadillo と付けた。
しかし開発部としては、コードネームを決めるのはうちらの分野だという意地があったから、この勝手な行動を厳しく取り締まり、以降そういうことはなくなった
長々と引用したけど、原文の意味がなかなか取れなくて困ったのは「R&D has since cracked down on this and is now the current keeper of the codenames.」の箇所。
「開発部はそれを厳しく取り締まった」「今ではコードネームの管理者となった」と読めるけど、それだとなんか変な気がする。当時から管理者だったのなら取り締まる理由は分かるけど、当時管理者じゃなかったなら厳しく取り締まる立場じゃないわけで……うーん。前後してしまう。
考え過ぎてる気もする。
原文:
Why elements? I have no idea. But, hey, who says science never sees use later in life?
拙訳:
しかしなぜ元素名にしたのか……見当もつかない。いずれにせよ「化学なんて人生で使い道ないだろ」って言う人は考えを改めないといけないね。
疑問符を使わなかったり、カッコを使ったり、色々と原文どおりになっていないけど、元の文章のニュアンス(ノリ)はそこそこ上手く訳せたんでないかと思った(自画自賛)
【翻訳】開発中のセットに付けられるコードネームの歴史/Codename of the Game【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年08月12日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/codename-game-2002-08-12-0
そこそこ高級なレストランに行くとコース料理の合間にウェイターが小さなシャーベットを持って来てくれる。次の料理に備えて口の中を一度さっぱりさせてくれる箸休め的な理由だ。
今日のコラムもそれだと思ってくれ。
実のところ、ここ数回に渡って非常に「重たい」内容の記事が続いてしまった。そこで今週は少し「軽い」内容を扱ってもいいかと思った次第だ。
開発部の分厚いカーテンの裏に広がる世界の中でもこれまで紹介してきたものとはまた少し違った一面であり、そして(ここ数回の内容と違って)賛否の議論を生じさせないような内容(だと私が考えている)ネタだ。
セットの開発中の仮の名前、俗に言う「コードネーム」はマジックを構成する要素の中では決して重要度の高いものではない。しかし1つのコラムで取り上げてみるには十分面白いネタではある。
まずはコードをつないで
なぜセットにコードネームが存在するのか? どんな理由があって付けられるのか? うん、よくぞ聞いてくれた。
まずコードネームを必要とする最初にして最大の理由は、単純に開発部がウィザーズオブザコースト社のどの部署よりも製品開発において先んじているからだ。セットに名前を付ける仕事してる部署よりもさらにね。
そのため、今現在どのセットの話をしているのかが分かるような工夫が必要となる……というのがコードネームが必要な理由だ。
さて、なぜコードネームにはいつもふざけた名前が選ばれるのか? いやいや、最初からそうだったわけじゃないんだ。マジックが生まれた当初は、デザインチームが考案したちゃんとした名前が開発中のセットにコードネームとして与えられていた。
そして多くの場合、ウィザーズオブザコースト社がそれを発売する段階になった際、わざわざ変える必要もないか、と判断してコードネーム時の名前のままでセットは出荷されていった。
これで何の問題もなかったんだ。アラビアンナイトやアイスエイジといった名前だった頃はね。じゃあいつ問題になったか、というと、ザ・ダークという名前のセットが生まれてしまったときだ。
セットに問題があったわけじゃない。
ザ・ダークにはいくつもの素晴らしいカードが収録されていた。例えば《ボール・ライトニング/Ball Lightning》や《Preacher》といったカードだ。ここで言及している問題というのはセットの名前、それだけだ。
とりあえず文法的な問題は脇に置いておくとして(正しい英語の文法として「The Dark set」ではなくて「the The Dark set」になってしまうという点とかね)、単純にこの名前には意志が感じられない。
この秋に君たちの元に届くであろう新セット、その名はザ・ダーク!(うおー!)どんなセットかって? えーと、うん、舞台はドミナリアで、とても……ダークな感じだ。(おおー)色々と見えづらくてね。ホラーな感じもあって……ダークな感じで。(おお……)
コードネームの問題点は、というかネーミングという行為それ自体の問題点として、それが根付いてしまうということだ。最初に聞いたときは「なんじゃそりゃ」と思ってしまうような変な名前であっても何百回と聞いてれば「まあ、ありかな」と思えてくる。
そこで開発部は、間違ってもその開発中のコードネームのままでリリースしようなんて考えが起きないように、対策を考えた。コードネームのルールその1、それは「間違ってもそのまま製品化してしまうことのないような馬鹿げた変な名前でなければならない」というルールだ。
そうすることで、関係者全員が「ああ、実際に発売されるときはこの名前のままじゃないんだな」と聞いたその日から理解できるわけだ。
これがルールその1だ。つまりその後も様々なネーミングに関するルールが続々と生まれている(その通り。マジックでルールが定められているのはゲームプレイに関する部分だけじゃない)
どんなルールが生まれたかについては、このあとマジックのコードネームの歴史をご案内していく中で合わせて紹介させてもらおう。さあ歴史ツアーの始まりだ!
▼ アライアンス以前のセットについて
前述のとおり、アライアンス以前のセットに付けられていたコードネームは製品版の名前と同じだ。じゃあ、次にいこうか。
▼ アライアンスのコードネーム:Quack
実は以前にも私のコラムで紹介したことがあるが、アライアンスなど初期のセットは、コードネームをマッキントッシュ(註)のシステム用サウンドファイル名からとっている。
開発部のメンバーがコンピュータ(当時は全てマッキントッシュだった)を立ち上げ、開発ファイルの入ったフォルダを開くとその音が鳴るわけだ。馬鹿げてるって? その通り。だからこそそうしたのさ。
▼ ミラージュのコードネーム:Sosumi
元々のデザイン段階では、ミラージュは「Menagerie(動物園)」と呼ばれていた(ちなみにミラージュのデザイン自体は、アルファ版が発売されるよりも前から始まっている)
その後、ウィザーズオブザコースト社が設立され、このセットが開発部へと渡ったとき、あらためてマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名からコードネームを名づけられることとなった。それが Sosumi だ。
という話を記事で紹介したとき、読者からこんな情報が送られてきた:
「なんで「Sosumi」なんていう名前のシステム用サウンドファイルがあるのかについてですが、まずそもそもアップルは以前にアップルレコード(ビートルズ)ともめ事を起こしたことがあって、これは最終的にアップルコンピュータは二度と音楽事業に関わらないという誓約書を交わしたことで決着しました。
その後、アップルが無料のサウンドファイル込みでコンピュータを販売したんですが、あるプログラマが、サウンドを同梱することによってアップルレコードに訴訟を起こされる可能性があるのでは、と考えてシステム用サウンドファイルの1つを『So sue me(訴えてみろよ)』とも読める『Sosumi』(註)と名づけたらしいです」
▼ ビジョンズのコードネーム:Mirage Jr.
実のところ、このセットはコードネームを持たなかった。開発のかなり初期の段階で正式名が決まってしまっていたからだ(これほど早く決まったのはビジョンズが最後だ)
ただ、その正式名(ビジョンズ)が決まるまでのごく短いあいだ、私たちはそれを「Mirage Jr.」というコードネームで呼んでいた。
ああ、そうそう、言い忘れてた。前述した「Menagerie」だが、あまりに大きなセットだったので私たちはそれを2つに分けてリリースすることにした。それが「ミラージュ」と「ビジョンズ」だ。
▼ ウェザーライトのコードネーム:Mochalatte
コードネームにマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名を使おうというネタの継続を開発部が諦めたのはこのセットからだ。
諦めた理由はごく単純で、サウンドファイル名のストックが尽きたからだ(念のため付け加えておくと、サウンドファイル名を元ネタにコードネームを付けるという慣習は開発中のセットだけでなく、他のマジック関連商品でも同様に行われていた)
結局、デザインチームはその開発中のセットを空想上のコーヒー的な飲み物の名前で呼ぶことにした。なぜそうなったのかはよく分からないが、おそらくデザインチームのミーティングがよく近くのスターバックスで行われていたからだろうね。
▼ テンペストのコードネーム:Bogavhati
このコードネーム以上に聞いた人を戸惑わせたコードネームはなかったね。
命名の経緯としては、まずテンペストというセットは主要テーマの1つに毒(Poison)があった。そしてマイク・エリオットの提出してきたカード案の1つに《Bogavhati》という名の土地があった。その土地は、対象のクリーチャーを「毒性」にしてくれる代わりにあとで手札へ戻ってしまうというデメリットとセットとなる起動型能力を持っていた。
作成者のマイクにカード名称の由来について尋ねたところ、マイクは「インドの神話が元ネタだ」と教えてくれた。なんでも Bogavhati というのは毒蛇の地だそうだ。毒に関するセット(になると当時は思っていた)の名前にちょうどいいと思われたので、私はセットのコードネームにそれを用いることにした。
ちなみにこの英語名のつづりは、名称を口頭で聞いた私が勝手に作ったものだ。だからグーグルで検索してもマジック関連の記事しか見つからないだろうね。
そうそう。テンペストはその開発中のコードネームをセットに収録されたカードでネタにしている最初のセットでもある。そのカードとは、もちろん《ヴァティ・イル=ダル/Vhati il-Dal》だ。
▼ ストロングホールドのコードネーム:Rachimulot
私は別サイトでトリビアネタのコラム「Question Mark」を連載している(ちなみにsideboard.comだ)。そこでいつか使うかもしれないクイズのネタをここで披露しよう。
問題:マジックのセットのコードネームのうち、マジック以外のトレーディングカードゲームのカードが元ネタとなっているものは?
答えは、Rachimulot だ。これはダンジョンズアンドドラゴンズTCG「Spellfire」に収録されているカード名なんだ。さて、なぜこれが採用されたか。
ストロングホールドのデザインが行われていた頃に Spellfire がカード画像つきで紹介された。その中の1枚である Rachimulot というモンスターのイラストがあまりにも間が抜けてて開発部の皆の印象に残った(排水溝にいるゴム製のネズミのイラストだ)。
それがあまりに面白かったのでストロングホールドのコードネームとして使うことにしたわけさ。
▼ エクソダスのコードネーム:Gorgonzola
開発部が単語それ自体が面白い響きを持っているという理由だけでコードネームに採用し始めたのはこのセットからだったようだ。もしくは、これもダンジョンズアンドドラゴンズTCG「Spellfire」が元ネタだったかもしれないし、そうでなければ単に当時「そろそろ『味の濃い』セットを作らないな」と冗談めかして言っていたことが原因かもしれない。
▼ ウルザズ・サーガのコードネーム:Armadillo
開発部以外がコードネームを決めた最初のセットがこれだ。マジックのブランドチームが未来のセットについて話す必要が生じて際に、そのセットに仮の名前として Armadillo と付けた。
しかし開発部としては、コードネームを決めるのはうちらの分野だという意地があったから、この勝手な行動を厳しく取り締まり、以降そういうことはなくなった(コードネームのことを誰よりも気にしてるのがうちの部署だった、というだけのことかもしれないが)
何にせよ、この Armadillo が採用されたことによってコードネームのルール(面白い響き)はきちんと守られたわけだ。
そうそう、このセットは収録カードでコードネームがネタにされている2つ目のセットでもある。《冬眠/Hibernation》のカードイラストをよく見てくれ。アルマジロがいるだろう?
▼ ウルザズ・レガシーのコードネーム:Guacamole (註)
面白い響きの単語をコードネームにするというアイデアが生まれたとき、真っ先に思いついた候補は Guacamole だった。私が特に好きな「変な名前なもの」だったからだ(もっとも皮肉なことに Guacamole 自体はそれほど好きなじゃない)。思いついてから3セット目でようやく使うことができたよ。
▼ ウルザズ・デスティニーのコードネーム:Chimichanga
先週、アラビアンナイトに革新的なデザインがいくつも含まれていたという話をした。ここでコードネームの革新について紹介しよう。
そう、コードネームのシリーズ化だ。
おっと勘違いしないでくれよ。Chimichanga という単語はそれ単体で十分面白い響きを持っている。しかし同時にそれは1つ前のセットのコードネームと同じテーマ……メキシコ料理という点でも共通しているんだ。
そしてここで起きた命名ルールの革新は、その後のコードネームの方向性を完全に決定づけることとなった。
▼ メルカディアン・マスクス/ネメシス/プロフェシーのコードネーム:Archimedes、Euripides、Dionysius
ブロック全体を通して同じテーマでコードネームが名づけられた最初の例がこのマスクスブロックだ。さて、なぜギリシャ人の名前が並んだのか?
開発部が面白い響きの単語を思いつこうとしていたところ、当時の私のガールフレンド(現在の私の妻)であるローラから Archimedes という提案があった。さて同時にテーマを考える必要があるぞ、というわけで残りの2つもギリシャ人の名前にしたというわけさ。
付け加えると、他のテーマではなくギリシャ人の名前というテーマを選んだ理由は、単に変な響きというだけでなく、つづりが難しいからだ。
開発部はこう考えたんだ。単に響きが変だというだけでも面白いけど、他部署のメンバーが聞いたときにつづりで混乱するような名前だとさらに面白いんじゃないか、とね。
▼ インベイジョン/プレーンシフト・アポカリプスのコードネーム:Beijing、Hong Kong、Shanghai
ご覧のとおりインベイジョンブロックのコードネームは中国の都市名から取られている。マイク・エリオットがこのテーマを選んだ理由は、つづりが分かりづらい名前という直近の方向性に沿ったものだからだろう。ちなみに最初は違う名前が候補だったが、あまりにつづりが難しすぎたため変更を余儀なくされた。
▼ オデッセイ/トーメント/ジャッジメントのコードネーム:Argon、Boron、Carbon
つづりが分かりづらい単語を使って皆を困らせようという私たちの流れに待ったをかけたのがこのオデッセイブロックでのブランドチームのネーミングだった。
ブランドチームは間違えづらくシンプルなコードネームにしたいと考えたんだ。さらにここでコードネームに新たな革新がもたらされた。順序良く並ぶネーミングだ。見ての通りこれらの名前は「A、B、C」とアルファベット順になっている。
しかしなぜ元素名にしたのか……見当もつかない。いずれにせよ「化学なんて人生で使い道ないだろ」って言う人は考えを改めないといけないね。
▼ オンスロート/レギオン/2003年春発売予定のセットのコードネーム:Manny、Moe、Jack
ブランドチームの編み出したABC順の名前の付け方に開発部はちょっとイラッと来たので、代わりにあらかじめ順序の決まっている「3つでセットになっている名称」を使うことにした。
具体的には、オンスロートブロックの開発リーダーであったビル・ローズは Manny、Moe、Jack というコードネームを選択した。これの元ネタはアメリカで車のパーツなどを扱っている会社の名前(Pep Boys: Manny, Moe, and Jack)だ。
だがこのネーミングには1つ問題があった。名前自体に順序があるというルールは満たしていたが、大半の開発部メンバーは Pep Boys が近くにない地域で生まれ育ったせいで「Manny、Moe、Jack」の順序が分からず混乱したんだ。
▼ 2003年秋/2004年冬/2004年春発売予定のセット:Bacon、Lettuce、Tomato
ベーコンのデザインチームのリーダーは私だ。来月、このセットの開発はデベロップメントチームへと引き渡される(ちなみにデベロップメントチームのリーダーはランディ・ビューラーだ)
レタスのデザインはもう間もなく始まる。誰でもすぐにセットの順序が分かるコードネームを用いた初めてのブロックということになる。
▼ 2004年秋/2005年冬/2005年春発売予定のセット:Earth、Wind、Fire
信じるか否かは君次第だが、随分先に思えるこのブロックすらもすでにデザインの初期段階にある(訳注:この記事は2002年08月掲載)。
これらのコードネームはあと少しで Blood、Sweat、Tearsに決まるところだったが、2回続けてブロック最初のセットのコードネームが頭文字「B」で始まるのは好ましくない、という判断で下されたことで別の名称が採用された。
▼ 2005年秋/2006年冬/2006年春発売予定のセット
このブロックにはまだコードネームがないが、現時点の最有力候補は Huey、Dewey、Louie だ。
というわけでこれが現存する全てのコードネームだ。箸休めとしてはちょうど良かったんじゃないかな。次のコース料理はまた7日後に振る舞われるよ。メニューは「マナを必要としないカード」だ(おっと、念のため。土地じゃないぞ)
それまで、私と同じように君たちも自分の仕事を楽しめるよう祈ってるよ。
Mark Rosewater
2002年08月12日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/codename-game-2002-08-12-0
そこそこ高級なレストランに行くとコース料理の合間にウェイターが小さなシャーベットを持って来てくれる。次の料理に備えて口の中を一度さっぱりさせてくれる箸休め的な理由だ。
今日のコラムもそれだと思ってくれ。
実のところ、ここ数回に渡って非常に「重たい」内容の記事が続いてしまった。そこで今週は少し「軽い」内容を扱ってもいいかと思った次第だ。
開発部の分厚いカーテンの裏に広がる世界の中でもこれまで紹介してきたものとはまた少し違った一面であり、そして(ここ数回の内容と違って)賛否の議論を生じさせないような内容(だと私が考えている)ネタだ。
セットの開発中の仮の名前、俗に言う「コードネーム」はマジックを構成する要素の中では決して重要度の高いものではない。しかし1つのコラムで取り上げてみるには十分面白いネタではある。
まずはコードをつないで
なぜセットにコードネームが存在するのか? どんな理由があって付けられるのか? うん、よくぞ聞いてくれた。
まずコードネームを必要とする最初にして最大の理由は、単純に開発部がウィザーズオブザコースト社のどの部署よりも製品開発において先んじているからだ。セットに名前を付ける仕事してる部署よりもさらにね。
そのため、今現在どのセットの話をしているのかが分かるような工夫が必要となる……というのがコードネームが必要な理由だ。
(余談)
元々はここに画像が説明文と共に表示されていたらしいが、現在のアーカイブではその文章のみ表示されている。ちなみに説明文は「開発の初期の段階ではプレイテスト用のカードにもセットの実際の名前ではなくコードネームが記載されることになる」とある。
さて、なぜコードネームにはいつもふざけた名前が選ばれるのか? いやいや、最初からそうだったわけじゃないんだ。マジックが生まれた当初は、デザインチームが考案したちゃんとした名前が開発中のセットにコードネームとして与えられていた。
そして多くの場合、ウィザーズオブザコースト社がそれを発売する段階になった際、わざわざ変える必要もないか、と判断してコードネーム時の名前のままでセットは出荷されていった。
これで何の問題もなかったんだ。アラビアンナイトやアイスエイジといった名前だった頃はね。じゃあいつ問題になったか、というと、ザ・ダークという名前のセットが生まれてしまったときだ。
セットに問題があったわけじゃない。
ザ・ダークにはいくつもの素晴らしいカードが収録されていた。例えば《ボール・ライトニング/Ball Lightning》や《Preacher》といったカードだ。ここで言及している問題というのはセットの名前、それだけだ。
とりあえず文法的な問題は脇に置いておくとして(正しい英語の文法として「The Dark set」ではなくて「the The Dark set」になってしまうという点とかね)、単純にこの名前には意志が感じられない。
この秋に君たちの元に届くであろう新セット、その名はザ・ダーク!(うおー!)どんなセットかって? えーと、うん、舞台はドミナリアで、とても……ダークな感じだ。(おおー)色々と見えづらくてね。ホラーな感じもあって……ダークな感じで。(おお……)
コードネームの問題点は、というかネーミングという行為それ自体の問題点として、それが根付いてしまうということだ。最初に聞いたときは「なんじゃそりゃ」と思ってしまうような変な名前であっても何百回と聞いてれば「まあ、ありかな」と思えてくる。
そこで開発部は、間違ってもその開発中のコードネームのままでリリースしようなんて考えが起きないように、対策を考えた。コードネームのルールその1、それは「間違ってもそのまま製品化してしまうことのないような馬鹿げた変な名前でなければならない」というルールだ。
そうすることで、関係者全員が「ああ、実際に発売されるときはこの名前のままじゃないんだな」と聞いたその日から理解できるわけだ。
これがルールその1だ。つまりその後も様々なネーミングに関するルールが続々と生まれている(その通り。マジックでルールが定められているのはゲームプレイに関する部分だけじゃない)
どんなルールが生まれたかについては、このあとマジックのコードネームの歴史をご案内していく中で合わせて紹介させてもらおう。さあ歴史ツアーの始まりだ!
▼ アライアンス以前のセットについて
前述のとおり、アライアンス以前のセットに付けられていたコードネームは製品版の名前と同じだ。じゃあ、次にいこうか。
▼ アライアンスのコードネーム:Quack
実は以前にも私のコラムで紹介したことがあるが、アライアンスなど初期のセットは、コードネームをマッキントッシュ(註)のシステム用サウンドファイル名からとっている。
開発部のメンバーがコンピュータ(当時は全てマッキントッシュだった)を立ち上げ、開発ファイルの入ったフォルダを開くとその音が鳴るわけだ。馬鹿げてるって? その通り。だからこそそうしたのさ。
(註) マッキントッシュ
今では「マック」のほうが通りが良いコンピュータおよびOSの名称。90年代後半は冗談抜きでパソコンと言えばマック(アップル)だった。部室に転がっていた当時のパソコン雑誌の表紙にデカデカと「10年後、パソコンは全てマックになる」と書いてあったのを未だに覚えている。
▼ ミラージュのコードネーム:Sosumi
元々のデザイン段階では、ミラージュは「Menagerie(動物園)」と呼ばれていた(ちなみにミラージュのデザイン自体は、アルファ版が発売されるよりも前から始まっている)
その後、ウィザーズオブザコースト社が設立され、このセットが開発部へと渡ったとき、あらためてマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名からコードネームを名づけられることとなった。それが Sosumi だ。
という話を記事で紹介したとき、読者からこんな情報が送られてきた:
「なんで「Sosumi」なんていう名前のシステム用サウンドファイルがあるのかについてですが、まずそもそもアップルは以前にアップルレコード(ビートルズ)ともめ事を起こしたことがあって、これは最終的にアップルコンピュータは二度と音楽事業に関わらないという誓約書を交わしたことで決着しました。
その後、アップルが無料のサウンドファイル込みでコンピュータを販売したんですが、あるプログラマが、サウンドを同梱することによってアップルレコードに訴訟を起こされる可能性があるのでは、と考えてシステム用サウンドファイルの1つを『So sue me(訴えてみろよ)』とも読める『Sosumi』(註)と名づけたらしいです」
(註) Sosumi
個人的に確認した範囲では、最初に名づけたサウンドファイル名があまりに音楽的(ChimeもしくはXylophone)だったことで、それを理由に訴訟を起こされるのではと保守的な判断を下した上司に名称の変更を指示され、それ以前にも係争のせいで多くの修正が飛んできていたことに苛立っていた担当者(Jim Reekes)は「じゃあ訴えてみろよ」という怒りをオブラートとジョークに包んで「これは音楽とは何ら関係ない日本語です」という説明で「Sosumi」という名で提出した……らしい。
▼ ビジョンズのコードネーム:Mirage Jr.
実のところ、このセットはコードネームを持たなかった。開発のかなり初期の段階で正式名が決まってしまっていたからだ(これほど早く決まったのはビジョンズが最後だ)
ただ、その正式名(ビジョンズ)が決まるまでのごく短いあいだ、私たちはそれを「Mirage Jr.」というコードネームで呼んでいた。
ああ、そうそう、言い忘れてた。前述した「Menagerie」だが、あまりに大きなセットだったので私たちはそれを2つに分けてリリースすることにした。それが「ミラージュ」と「ビジョンズ」だ。
▼ ウェザーライトのコードネーム:Mochalatte
コードネームにマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名を使おうというネタの継続を開発部が諦めたのはこのセットからだ。
諦めた理由はごく単純で、サウンドファイル名のストックが尽きたからだ(念のため付け加えておくと、サウンドファイル名を元ネタにコードネームを付けるという慣習は開発中のセットだけでなく、他のマジック関連商品でも同様に行われていた)
結局、デザインチームはその開発中のセットを空想上のコーヒー的な飲み物の名前で呼ぶことにした。なぜそうなったのかはよく分からないが、おそらくデザインチームのミーティングがよく近くのスターバックスで行われていたからだろうね。
▼ テンペストのコードネーム:Bogavhati
このコードネーム以上に聞いた人を戸惑わせたコードネームはなかったね。
命名の経緯としては、まずテンペストというセットは主要テーマの1つに毒(Poison)があった。そしてマイク・エリオットの提出してきたカード案の1つに《Bogavhati》という名の土地があった。その土地は、対象のクリーチャーを「毒性」にしてくれる代わりにあとで手札へ戻ってしまうというデメリットとセットとなる起動型能力を持っていた。
作成者のマイクにカード名称の由来について尋ねたところ、マイクは「インドの神話が元ネタだ」と教えてくれた。なんでも Bogavhati というのは毒蛇の地だそうだ。毒に関するセット(になると当時は思っていた)の名前にちょうどいいと思われたので、私はセットのコードネームにそれを用いることにした。
ちなみにこの英語名のつづりは、名称を口頭で聞いた私が勝手に作ったものだ。だからグーグルで検索してもマジック関連の記事しか見つからないだろうね。
そうそう。テンペストはその開発中のコードネームをセットに収録されたカードでネタにしている最初のセットでもある。そのカードとは、もちろん《ヴァティ・イル=ダル/Vhati il-Dal》だ。
(余談)
元々はここに画像が説明文と共に表示されていたらしいが、現在のアーカイブではその文章のみ表示されている。ちなみに説明文は「この Bogavhati というカードはその名をテンペストのコードネームに転用され、かつテンペストのカード名《ヴァティ・イル=ダル/Vhati il-Dal》としても使われることとなった」とある。
▼ ストロングホールドのコードネーム:Rachimulot
私は別サイトでトリビアネタのコラム「Question Mark」を連載している(ちなみにsideboard.comだ)。そこでいつか使うかもしれないクイズのネタをここで披露しよう。
問題:マジックのセットのコードネームのうち、マジック以外のトレーディングカードゲームのカードが元ネタとなっているものは?
答えは、Rachimulot だ。これはダンジョンズアンドドラゴンズTCG「Spellfire」に収録されているカード名なんだ。さて、なぜこれが採用されたか。
ストロングホールドのデザインが行われていた頃に Spellfire がカード画像つきで紹介された。その中の1枚である Rachimulot というモンスターのイラストがあまりにも間が抜けてて開発部の皆の印象に残った(排水溝にいるゴム製のネズミのイラストだ)。
それがあまりに面白かったのでストロングホールドのコードネームとして使うことにしたわけさ。
▼ エクソダスのコードネーム:Gorgonzola
開発部が単語それ自体が面白い響きを持っているという理由だけでコードネームに採用し始めたのはこのセットからだったようだ。もしくは、これもダンジョンズアンドドラゴンズTCG「Spellfire」が元ネタだったかもしれないし、そうでなければ単に当時「そろそろ『味の濃い』セットを作らないな」と冗談めかして言っていたことが原因かもしれない。
▼ ウルザズ・サーガのコードネーム:Armadillo
開発部以外がコードネームを決めた最初のセットがこれだ。マジックのブランドチームが未来のセットについて話す必要が生じて際に、そのセットに仮の名前として Armadillo と付けた。
しかし開発部としては、コードネームを決めるのはうちらの分野だという意地があったから、この勝手な行動を厳しく取り締まり、以降そういうことはなくなった(コードネームのことを誰よりも気にしてるのがうちの部署だった、というだけのことかもしれないが)
何にせよ、この Armadillo が採用されたことによってコードネームのルール(面白い響き)はきちんと守られたわけだ。
そうそう、このセットは収録カードでコードネームがネタにされている2つ目のセットでもある。《冬眠/Hibernation》のカードイラストをよく見てくれ。アルマジロがいるだろう?
▼ ウルザズ・レガシーのコードネーム:Guacamole (註)
面白い響きの単語をコードネームにするというアイデアが生まれたとき、真っ先に思いついた候補は Guacamole だった。私が特に好きな「変な名前なもの」だったからだ(もっとも皮肉なことに Guacamole 自体はそれほど好きなじゃない)。思いついてから3セット目でようやく使うことができたよ。
(註) Guacamole
メキシコ料理の一種でアボカドを主原料としたペースト状の食べ物。日本語ではグワカモーレ、ワカモレ、ワカモーレなどと表記される。
▼ ウルザズ・デスティニーのコードネーム:Chimichanga
先週、アラビアンナイトに革新的なデザインがいくつも含まれていたという話をした。ここでコードネームの革新について紹介しよう。
そう、コードネームのシリーズ化だ。
おっと勘違いしないでくれよ。Chimichanga という単語はそれ単体で十分面白い響きを持っている。しかし同時にそれは1つ前のセットのコードネームと同じテーマ……メキシコ料理という点でも共通しているんだ。
そしてここで起きた命名ルールの革新は、その後のコードネームの方向性を完全に決定づけることとなった。
▼ メルカディアン・マスクス/ネメシス/プロフェシーのコードネーム:Archimedes、Euripides、Dionysius
ブロック全体を通して同じテーマでコードネームが名づけられた最初の例がこのマスクスブロックだ。さて、なぜギリシャ人の名前が並んだのか?
開発部が面白い響きの単語を思いつこうとしていたところ、当時の私のガールフレンド(現在の私の妻)であるローラから Archimedes という提案があった。さて同時にテーマを考える必要があるぞ、というわけで残りの2つもギリシャ人の名前にしたというわけさ。
付け加えると、他のテーマではなくギリシャ人の名前というテーマを選んだ理由は、単に変な響きというだけでなく、つづりが難しいからだ。
開発部はこう考えたんだ。単に響きが変だというだけでも面白いけど、他部署のメンバーが聞いたときにつづりで混乱するような名前だとさらに面白いんじゃないか、とね。
▼ インベイジョン/プレーンシフト・アポカリプスのコードネーム:Beijing、Hong Kong、Shanghai
ご覧のとおりインベイジョンブロックのコードネームは中国の都市名から取られている。マイク・エリオットがこのテーマを選んだ理由は、つづりが分かりづらい名前という直近の方向性に沿ったものだからだろう。ちなみに最初は違う名前が候補だったが、あまりにつづりが難しすぎたため変更を余儀なくされた。
▼ オデッセイ/トーメント/ジャッジメントのコードネーム:Argon、Boron、Carbon
つづりが分かりづらい単語を使って皆を困らせようという私たちの流れに待ったをかけたのがこのオデッセイブロックでのブランドチームのネーミングだった。
ブランドチームは間違えづらくシンプルなコードネームにしたいと考えたんだ。さらにここでコードネームに新たな革新がもたらされた。順序良く並ぶネーミングだ。見ての通りこれらの名前は「A、B、C」とアルファベット順になっている。
しかしなぜ元素名にしたのか……見当もつかない。いずれにせよ「化学なんて人生で使い道ないだろ」って言う人は考えを改めないといけないね。
▼ オンスロート/レギオン/2003年春発売予定のセットのコードネーム:Manny、Moe、Jack
ブランドチームの編み出したABC順の名前の付け方に開発部はちょっとイラッと来たので、代わりにあらかじめ順序の決まっている「3つでセットになっている名称」を使うことにした。
具体的には、オンスロートブロックの開発リーダーであったビル・ローズは Manny、Moe、Jack というコードネームを選択した。これの元ネタはアメリカで車のパーツなどを扱っている会社の名前(Pep Boys: Manny, Moe, and Jack)だ。
だがこのネーミングには1つ問題があった。名前自体に順序があるというルールは満たしていたが、大半の開発部メンバーは Pep Boys が近くにない地域で生まれ育ったせいで「Manny、Moe、Jack」の順序が分からず混乱したんだ。
(余談)
2003年春発売予定だったセットは「スカージ」という名でリリースされた。
▼ 2003年秋/2004年冬/2004年春発売予定のセット:Bacon、Lettuce、Tomato
ベーコンのデザインチームのリーダーは私だ。来月、このセットの開発はデベロップメントチームへと引き渡される(ちなみにデベロップメントチームのリーダーはランディ・ビューラーだ)
レタスのデザインはもう間もなく始まる。誰でもすぐにセットの順序が分かるコードネームを用いた初めてのブロックということになる。
(余談)
2003年秋/2004年冬/2004年春発売予定だったセットは実際のリリース時にはそれぞれ「ミラディン/ダークスティール/フィフス・ドーン」という名になった。
▼ 2004年秋/2005年冬/2005年春発売予定のセット:Earth、Wind、Fire
信じるか否かは君次第だが、随分先に思えるこのブロックすらもすでにデザインの初期段階にある(訳注:この記事は2002年08月掲載)。
これらのコードネームはあと少しで Blood、Sweat、Tearsに決まるところだったが、2回続けてブロック最初のセットのコードネームが頭文字「B」で始まるのは好ましくない、という判断で下されたことで別の名称が採用された。
(余談)
2004年秋/2005年冬/2005年春発売予定だったセットは実際のリリース時にはそれぞれ「神河物語/神河謀叛/神河救済」という名になった。
▼ 2005年秋/2006年冬/2006年春発売予定のセット
このブロックにはまだコードネームがないが、現時点の最有力候補は Huey、Dewey、Louie だ。
(余談)
2005年秋/2006年冬/2006年春発売予定だったこれらセットは、実際には「Ctrl/Alt/Delete」というコードネームを与えられた。なお実際の製品名はそれぞれ「ラヴニカ:ギルドの都/ギルドパクト/ディセンション」という名前だった。
というわけでこれが現存する全てのコードネームだ。箸休めとしてはちょうど良かったんじゃないかな。次のコース料理はまた7日後に振る舞われるよ。メニューは「マナを必要としないカード」だ(おっと、念のため。土地じゃないぞ)
それまで、私と同じように君たちも自分の仕事を楽しめるよう祈ってるよ。
【翻訳】マジックの世界に変化をもたらした千夜一夜/It happened one nights【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年08月05日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/it-happened-one-nights-2002-08-05
アラビアンナイト週間へようこそ!
今週はマジック初のエキスパンションに敬意を表す週となった。このセットをデザインしたのは誰あろうマジックの生みの親、リチャード・ガーフィールドその人だ。
さて今週の私のコラムでは、デザイナーの視点からアラビアンナイトを眺めてみたら面白いんじゃないかと思った。このセットが一体マジックの世界に何をもたらしたのかを知らしめるためだ。
この78枚のカードセットにどれだけの創意工夫が詰め込まれていたかを知れば、君たちもさぞかし驚き、かつ楽しんでくれることだろうね。
昔々、あるところに
おっと、本題に入る前にまず紹介したいことがある。アラビアンナイトという舞台の幕が開く以前、マジックを取り巻く環境がどのような状況だったのかだ。
そのときの状況について開発側の視点から語った記事はすでに今週のコラムでリチャードが書いてくれている。そこで私はアラビアンナイトがリリースされた当時の状況をプレイヤー側の視点から語ってみたいと思う。
アラビアンナイトが発売されたのは1993年の12月のことで、マジックが初めて世に出たのはその半年前の夏、それが地獄の門が開かれた瞬間だった。
アルファ版が店頭に現れ、即座に姿を消した。再版版であるベータ版が姿を消すまでにかかった時間はさらに短かった。
ただ、当時のマジックプレイヤーたちは非常に熱狂的ではあったが規模自体はとても小さかった。なぜプレイヤーの規模が小さかったのか? 理由はいくつかある。
1つ目の理由として挙げられるのは、当時のCEOであるピーター・アドキンソン(ウィザーズオブザコースト社の創設者の1人)のとったマジックの販売戦略だ。
彼は、マジックを積み込んだ車で太平洋沿岸を南北に移動しつつ、ホビーショップを見かけるたびに直接売り込みに行く、という手法でマジックを売り歩いた。
その結果、最初期のマジックはほぼアメリカ西海岸沿いの販売店にしか行き渡らず、マジック人気の広がりも主にその地域に限られたものとなったわけだ。
2つ目の理由として、マジックの最初に刷られた枚数自体がそれほど多くなかったことが挙げられる。単純にカード自体の枚数が少なかったせいでプレイヤー数も少なかったのだ。
今ならマジックを始めようというプレイヤーは店頭に行けばすぐにカードを購入してその日に始められる。実に簡単だ。しかし当時はそうじゃなかったんだ。
店頭に商品が並んでいることはまずなく、手に入れるためには店にカードが入荷するまで待つ必要があったし、入荷しても1日で売り切れるから当日しか買うチャンスはなかった。
私自身、ベータ版が発売されたとき、スターターとブースターパックをそれぞれ2箱ずつまとめて購入した。一緒にプレイして欲しい友人たちの分も確保しておくためだ。
さて、あらためて時計の針をアラビアンナイトが誕生した1993年の12月まで進めよう。
私はサンフランシスコに住んでる友人のデビッドを訪ねた。彼と出会ってから一緒に近くの喫茶店へ向かった。そこでマジックがプレイされているという噂を聞いたからだ。
そこにいたプレイヤーたちと話し込んでいると、店に入ってきたプレイヤーが「入荷してたぞ」と言ったんだ。
驚いたね。私が住んでるロサンゼルスの地元では、アラビアンナイトの入荷は1月になると言われてたからだ。もちろんこのチャンスを逃すつもりはなかった。私と友人はさっそくゲームショップへと向かった。
ただ、私が購入したのは数パックだけだった。何しろすでに地元で2箱予約済みだったからね(ちなみに、私が購入したこのアラビアンナイトの購入量は、ワイオミング州全体で販売されたアラビアンナイトの量のほぼ2倍だった)
私や友人たちは新たなセットの登場に興奮もしたが、同時に少し不安もあった。私たちはまだアルファ版やベータ版(註)に触れ始めたばかりで、私が出会うプレイヤーたちは、みんな私が見たこともないカードを持っていた。
当時のウィザーズオブザコースト社はカードの情報を厳しく管理しており、プレイヤーたちは実際にパックを開けてみないことにはどんなカードが存在しているのかを知る手段がなかったからだ(まだインターネットが今ほど普及していなかったからね)
そんな状況だったから、新たなセットの登場は急なことのように思われたんだ。
それに新しいセットはそれまでとまったく違う雰囲気だったことも困惑した理由の1つだ。アルファ版とベータ版は古典的な西洋風ファンタジーのに対してアラビアンナイトは……まあ、うん、アラビアンナイトだったからね。
それでも新しいカードを見るのは非常に楽しいことだった。いくつかのカードはまさに私好みだった。一番はなんといっても《Diamond Valley》(註)だ。
ただ、それ以外のカードはちょっと使い道が思いつかなかった。
(2)(黒)(黒)で毎ターン自分にダメージを与えてくる5/5のクリーチャーとかね。どこの間抜けがこんなのをデッキに入れるんだ?(どんなカードが気になる君は《Juzam Djinn》(註)で検索してくれ)
しかし何よりもアラビアンナイトが素晴らしかった点は、マジックという名のジェットコースターがまさに最初のデカい上り坂を全力で下ろうとしていることを教えてくれたことだ。これからが本番だぞ、とね。
気づかれない物語たち
大学に在学していたとき、幸運なことに「放送と映画(Broadcast and Film)」を専攻することができた。要はテレビと映画を学ぶ学問だ。これを専攻にしたことで私は授業と称してテレビ番組や映画を観賞することができた。
講義の1つは、初期の映画に関するものだった。その最初の授業で、私は「大列車強盗(Great Train Robbery)」という映画を見させられた。
1903年の映画で、映画の主な内容はカウボーイの一団が列車強盗をはたらくというものだ。映画の途中で、カウボーイたちが列車を襲うシーンとその列車が向かう先である駅のシーンとで、カメラが交互に切り替わった。
見終えたが、アマチュア制作のような映画で、それほど面白い出来ではなかった。映画のあと、教師が私たちに「なぜ私がこれを君たちに見せたか分かるかい?」と聞いてきた。
生徒の誰も分からなかった。そんな私たちに教師はこう説明した。
「途中で列車と駅とで交互にが場面が切り替わってただろう? カメラを交互に切り替えることで2つの離れたシーンで起きていることを観客に同時に見せるこの手法を最初に取り入れたのがこの映画だ」
革新的な何かが起きた瞬間というのはなかなか知られていないものだ。その何かの価値が認められた頃というのはそれがすでに普通のものとして一般に根付いてしまっている頃なので、誰かによって生み出されたものだということは忘れられている。
アラビアンナイトはまさに大列車強盗だ。
リチャードはトレーディングカードゲームというまったく新しいゲームを発明したことでは満足しなかった。彼はゲームを次のレベルへと押し上げたかった。
今日のこの記事ではリチャードがアラビアンナイトを通じてマジックにもたらした様々な革新について紹介していきたいと思っている。
念のため。これは網羅的なリストではなく、いくつか特筆すべきものを選んだリストに過ぎない。ほんの一部だ。
それと、それぞれがどれだけその後のマジックのデザインに影響を与えたかの度合いを1個から3個の星の数で示すことにした(もっともこれはあくまで私の主観だ)。星が多いものほどマジックに与えた影響が大きいと思ってくれ。
それでは始めようか。
▼ コントロールが移る効果/Stealing ☆☆
相手のパーマネント奪うというアイデアはアルファ版の時点ですでにあった(《支配魔法/Control Magic》と《秘宝奪取/Steal Artifact》だ)。アラビアンナイトではさらにそこへひとひねり加えたカードが登場した。
青のクリーチャーの《Old Man of the Sea》(註) は、それをタップし続けているあいだだけ対象のクリーチャーのコントロールを奪えるというカードだ。
この効果にはその後に多くの子孫が生まれている(一部だけ紹介すると《Willow Satyr》、《魂の歌姫ルビニア/Rubinia Soulsinger》、《Preacher》、《海の歌姫/Seasinger》、《メリーキ・リ・ベリット/Merieke Ri Berit》、《ルートウォーターの女族長/Rootwater Matriarch》、《棺の女王/Coffin Queen》、《占有の兜/Helm of Possession》などがある)
またコントロールを奪う効果に関していえば、アラビアンナイトの《アラジン/Aladdin》(註)によって、赤もパーマネントを奪うことが可能となった点が挙げられる。
この《アラジン/Aladdin》は(前述のカードと違い)これ1枚で複数枚のカードを奪うことができた。またこのカード以前と以後のマジックにおける変化は、目印無しにコントロールを得ることができるようになったことだ。
あなたがオーナーでないカードをコントロールしていることを示す他のカードが戦場に存在せずとも対象のカードのコントロールを得ることが可能となった、ということだ。
こうして過去に遡ると赤には元々コントロールを奪う効果があったという事実はなかなか面白い点だ。
最近になって開発部は、一時的なコントロール奪取(代表的なのは青の《命令の光/Ray of Command》だ)の効果を青から赤に移すという決断を下したわけだが、歴史を遡れば赤という色には元々その要素があったわけだ。(そうそう、《命令の光/Ray of Command》も元をたどればレジェンドの赤の魔法である《Disharmony》が元ネタと言えなくもない)
最後に《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》(註)も紹介しておこう。これは自分自身で自身のコントローラーを変更してしまう、というコンセプトをマジックに初めて登場させたカードだ。これ以降、「自分のカード」と「相手のカード」の境目が曖昧になっていったんだ。
▼ 対戦相手が起動できる能力/Abilities Activated by the Opponent ☆
前述の《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》がコントローラーの境目を曖昧にしたカードだとすれば、その境目をまったく無くしてしまったのが《Ifh-Biff Efreet》(註)と言えるだろう。
マジックにおける大原則の1つに、ルールに聖域なし、が挙げられる。さすがにこのルールは絶対不変だろう、とプレイヤーが考え始めるや否や、デザイナーは盆を引っくり返すんだ。
アラビアンナイトが登場するまで「私のものは私のもの、君のものは君のもの」だった。ああ、もちろん奪うことはできた。しかし奪ってコントロールを得た以上は「私のもの」であり、使えるのは私だけだった……そう、《Ifh-Biff Efreet》が登場するまではね。
▼ マナを出す以上のことができる土地/Lands That Did More ☆☆☆
ベータ版には15種類の土地があった。5種類の基本土地と10種類のデュアルランドだ。これら15種類の土地は全てタップしてマナを出す以上のことはできなかった。
しかしアラビアンナイトの開発に当たり、リチャードは土地のそれ以上の可能性に気づいたんだ。
……待てよ、もしかして土地にはタップしてマナを出す以上のことが出来るんじゃないか? カードを引いたり、ダメージを与えたり、象を再生したり(註)……そんな感じにアーティファクトやエンチャントのようなことができるんじゃないか、とね。
その後しばらく経ってから開発部は手綱を引き締めることにした。土地が土地たり得るのはマナを生み出すからだ、と定義したんだ。
おっと、もちろんマナを出す以外のことは一切まかりならん、という意味ではないよ(最近のカードを見てもらえば一目瞭然だとは思うが)
ここで言っているのは、土地は必ずマナを生み出すべし、という意味だ。マジックにおいて土地とはマナを生み出すことで初めて土地たり得ると決めたんだ。
▼ コイン投げ/Coin Flips ☆☆☆
アルファ版にはランダム性があった。まずプレイヤーはゲームを始める前にデッキをシャッフルする必要があったからね。
しかしアラビアンナイトでリチャードはさらに一歩踏み込むことにした。個々のカードそれ自体にランダム性があってもいいんじゃないか、とね。
例えば《スレイマンの壺/Bottle of Suleiman》だ。君は5/5の飛行するジンを得られるかもしれないし、得られないかもしれない。そんな不確定性があった。それ以外では《Mijae Djinn》や《Ydwen Efreet》などもまた違った形でランダム性を表現していた。
コイン投げのランダム性が大好きなプレイヤーもいたし、逆に大嫌いなプレイヤーもいた。そして開発部は、公式大会に出るプレイヤーたちよりもカジュアル環境のプレイヤーたちのほうがコイン投げを好むらしいと分かった段階で、コイン投げに関連するカードのパワーレベルを意図的に下げていった。
いずれにせよ、リチャードがコイン投げのようなランダム性を楽しむ心を持っていなかったら、《丸砥石/Grindstone》や《汚れた契約/Tainted Pact》、《切除するもの/Scalpelexis》のような最近のカードたちもまた存在しなかったことだろう。
▼ 累加アップキープとキャントリップ/Cumulative Upkeep and Cantrips ☆☆☆
開発部でよく議論の対象になる2つのネタがある。累加アップキープを持った最初のカードは何かということ、また、キャントリップを持った最初のカードは何かということだ(訳注:これら2つのメカニズムはいずれも一般的にはアイスエイジで登場したとされている)
まず累加アップキープの解答に関しては3つの候補(註)がある。
1つ目としてアルファ版の《停滞/Stasis》だ。リソースをロックしてしまうその効果とアップキープコストの支払いが組み合わさったことで、疑似的な累加アップキープのような動きとなっている。
2つ目としてはアイスエイジで実際に「累加アップキープ」とテキストに記載されていたカードたち、例えば《Maddening Wind》などだ。
3つ目としてはアイスエイジよりも前に発売されたアラビアンナイトの《サイクロン/Cyclone》だ。これは実際に毎ターンのアップキープの支払いが増加していく最初のカードだった。
次にキャントリップの解答だ。ただこちらは累加アップキープに比べるとずっと複雑なものとなる。
アルファ版にももちろんカードを引く効果はあった。しかしそれらはあくまでもカードを引くこと自体が目的であり、副次的な2番目の効果としてカードを引くものはなかった。
では他の効果のあとに追加で「カードを1枚引く」という効果が書かれていた最初のカードは、というとアラビアンナイトの《宝石の鳥/Jeweled Bird》(註)となる。
上記2つの問いの興味深い点としては、1993年12月発売のアラビアンナイトと1995年06月発売のアイスエイジのデザインが実は同時期になされていたということだ。つまりそれぞれの担当者の間でデザインのアイデアは共有されていたはず。
もしかしたら《Cyclone》の増加していくアップキープコストを見たアイスエイジのデザイナーが累加アップキープを思いついたのか……それとも逆だったのか? 今となっては誰にも分からない。
ただ、リチャード曰く、《宝石の鳥/Jeweled Bird》のアイデアはキャントリップよりも先に生まれていたらしい。ではキャントリップのアイデアの元ネタは、というと0マナの《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》だ。
この0マナのカードのように、プレイするために必要なリソースとして手札1枚以外に何も必要としないカードがあるなら、逆に、プレイするのリソースとしてマナ以外に何も必要としないカードがあってもいいのでは(つまりプレイ後も手札枚数が変わらないカードがあってもよいのでは)?
▼ 「魂の絆」効果/Spirit Link(註) ☆☆
この白の代表的な能力(註)の面白い点としては、初めて登場したのが実はアラビアンナイトだったという点、さらに初出時は白ではなく黒のクリーチャーの能力だったという点だ(ちなみにそのクリーチャーとは《エル・ハジャジ/El-Hajjaj》だ)。この能力が黒から白へと移ったのはアラビアンナイトから6ヶ月後に発売されたセット、レジェンドでのことだった。
▼ -1/-1 カウンター/-1/-1 Counters ☆☆
アルファ版で登場したクリーチャーに乗せて使うカウンターは2種類あった。
1つは +1/+1 カウンターでこれは《Rock Hydra》、《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》、《キノコザウルス/Fungusaur》が用いていた。もう1つは《機械仕掛けの獣/Clockwork Beast》が用いていた +1/+0 カウンターだ。
アラビアンナイトであらたに登場した3種類目のカウンターが -1/-1 カウンターで、これは《不安定性突然変異/Unstable Mutation》で用いられた。
これらのカウンターはその後も多くのカードに採用されたが、その後、開発部は+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが同時に用いられる状況は混乱を招いていると考えるようになった。また、これらのカウンターには用途的にも重複が見られるとして、より利用頻度の低い-1/-1カウンターは廃止されることとなった。
▼ 「~が戦場に出たとき」の効果/"As ~ Comes into Play" Choices ☆☆☆
アルファ版を遊んだプレイヤーたちは、インスタントやソーサリーは唱えた際にプレイヤーの意図を何らかの形で反映できることを知っていた(ああ、そうそう、インタラプトもだ)。
どういうことかというと、呪文を唱えるときにプレイヤーは、その呪文の対象やモードなどを好きに選択できるということだ(モードの選択とは、例えば《青霊破/Blue Elemental Blast》を唱える際に「赤の呪文1つを対象とし、それを打ち消す」のか「赤のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する」のかを選ぶような場合だ)
アラビアンナイトではこのアイデアをさらに1歩進めている。
リチャードはアラビアンナイトの《Jihad》というカードによって、使い捨ての呪文と同じくパーマネントもプレイされたときにその効果を選択できることを明らかにしたんだ。今では「~が戦場に出たとき(註)」のテキストで知られるこの発明は実に大量のカードデザインに影響を与えた。
▼ 一時的にゲームから追放する効果/Removed from Game as Limbo ☆☆☆
ゲーム外に追放する効果は《分解/Disintegrate》や《剣を鍬に/Swords to Plowshares》のようなカードが示すとおり、すでにアルファ版から存在した。
アラビアンナイトではこのアイデアを1歩進めている。すなわち、ゲームから追放されたカードが再度ゲームに戻ってくることが可能となったんだ。
アラビアンナイトのカードで一番分かりやすい実用例は何と言っても《Ring of Ma’ruf》(註)だろうね。このカードはゲームから追放されたカードを戻せた。さらにはゲーム開始時に存在しなかったカードまで手に入れることができたんだ。
ジャッジメントで願いシリーズ(註)を生み出したデザイナーたちがそのアイデアをこの型破りな指輪から得ていたことは間違いないだろうね。
ただ、より後世のカードたちに大きな影響を与えたカードといえば《Oubliette》(註)だ。このカードがなければゲームから取り除いた先が「一時的な保管所(Limbo)」として用いられることはなかっただろう。
どういうことかというと、ゲームから取り除いた先(今でいう追放領域)は、カードをただ使用済みとしてしまう墓地よりもずっと利用価値が高かったんだ。
そこは、一時的にゲームから取り除いておきたいカードを置いておくこともできたし、また参照用にカードを表示しておく場所としても使えた。
この領域の発見によって生まれた波紋は、フェイジング能力、《ちらつき/Flicker》、《呪文乗っ取り/Spelljack》などのような形で実にマジックの隅々まで広がっていった。
▼ 戦闘から除外する効果/Remove from Combat ☆☆☆
アラビアンナイトで《黒檀の馬/Ebony Horse》が登場するまで、マジックには「戦闘から除外する(Remove from Combat)」という概念が存在しなかった。確かに再生(註)という能力はアルファ版から存在していたが、当時のルールでは再生しても戦闘から除外はされなかったからだ。
この《黒檀の馬/Ebony Horse》というカードによって戦闘中に出来ることの幅が広げられた。これは再生能力を始めとした多くの戦闘中に効果を発する能力やカードに影響を与えることとなった。
▼ 特定のエキスパンションを参照するカード(註)/Expansion Hosers ☆
エキスパンションシンボルがゲームに影響するようになったのはアラビアンナイトの《City in a Bottle》の登場以降だ。もっともアラビアンナイト以前にはそもそもエキスパンションシンボル自体が存在しなかったことを考えると、当たり前に聞こえるかもしれないけどね。
その後、このカードの足跡をたどる形で、アンティキティの《Golgothian》、およびホームランドの《Apocalypse Chime》が生まれた(註)。
いくつもの夜を越えて
そんなわけで、アラビアンナイトがその後のマジックのデザインに与えた影響の大きさを分かってもらえただろうか。
全体のほんの一部を紹介するだけの短い旅ではあったが、1つのセットが起こした革新がマジックの進化にいかに根付いているかを少しでも伝えることが出来たならとても嬉しい。
ああ、それともし君がいつか「大列車強盗(Great Train Robbery)」を見る機会があれば、採点は甘めにつけてあげてくれ。君の好きな映画作品はまた別にあるだろうが、これ無しにはその作品も生まれなかったんだろうからね。
来週は、開発中のセットを呼ぶ仮の名前、そうセットのコードネームに関する不思議な世界に君たちをご招待しようと思う。それまで、隅に円月刀のエキスパンションシンボルが描かれたカードでマジックを楽しんでくれ。
Mark Rosewater
2002年08月05日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/it-happened-one-nights-2002-08-05
アラビアンナイト週間へようこそ!
今週はマジック初のエキスパンションに敬意を表す週となった。このセットをデザインしたのは誰あろうマジックの生みの親、リチャード・ガーフィールドその人だ。
さて今週の私のコラムでは、デザイナーの視点からアラビアンナイトを眺めてみたら面白いんじゃないかと思った。このセットが一体マジックの世界に何をもたらしたのかを知らしめるためだ。
この78枚のカードセットにどれだけの創意工夫が詰め込まれていたかを知れば、君たちもさぞかし驚き、かつ楽しんでくれることだろうね。
昔々、あるところに
おっと、本題に入る前にまず紹介したいことがある。アラビアンナイトという舞台の幕が開く以前、マジックを取り巻く環境がどのような状況だったのかだ。
そのときの状況について開発側の視点から語った記事はすでに今週のコラムでリチャードが書いてくれている。そこで私はアラビアンナイトがリリースされた当時の状況をプレイヤー側の視点から語ってみたいと思う。
アラビアンナイトが発売されたのは1993年の12月のことで、マジックが初めて世に出たのはその半年前の夏、それが地獄の門が開かれた瞬間だった。
アルファ版が店頭に現れ、即座に姿を消した。再版版であるベータ版が姿を消すまでにかかった時間はさらに短かった。
ただ、当時のマジックプレイヤーたちは非常に熱狂的ではあったが規模自体はとても小さかった。なぜプレイヤーの規模が小さかったのか? 理由はいくつかある。
1つ目の理由として挙げられるのは、当時のCEOであるピーター・アドキンソン(ウィザーズオブザコースト社の創設者の1人)のとったマジックの販売戦略だ。
彼は、マジックを積み込んだ車で太平洋沿岸を南北に移動しつつ、ホビーショップを見かけるたびに直接売り込みに行く、という手法でマジックを売り歩いた。
その結果、最初期のマジックはほぼアメリカ西海岸沿いの販売店にしか行き渡らず、マジック人気の広がりも主にその地域に限られたものとなったわけだ。
2つ目の理由として、マジックの最初に刷られた枚数自体がそれほど多くなかったことが挙げられる。単純にカード自体の枚数が少なかったせいでプレイヤー数も少なかったのだ。
今ならマジックを始めようというプレイヤーは店頭に行けばすぐにカードを購入してその日に始められる。実に簡単だ。しかし当時はそうじゃなかったんだ。
店頭に商品が並んでいることはまずなく、手に入れるためには店にカードが入荷するまで待つ必要があったし、入荷しても1日で売り切れるから当日しか買うチャンスはなかった。
私自身、ベータ版が発売されたとき、スターターとブースターパックをそれぞれ2箱ずつまとめて購入した。一緒にプレイして欲しい友人たちの分も確保しておくためだ。
さて、あらためて時計の針をアラビアンナイトが誕生した1993年の12月まで進めよう。
私はサンフランシスコに住んでる友人のデビッドを訪ねた。彼と出会ってから一緒に近くの喫茶店へ向かった。そこでマジックがプレイされているという噂を聞いたからだ。
そこにいたプレイヤーたちと話し込んでいると、店に入ってきたプレイヤーが「入荷してたぞ」と言ったんだ。
驚いたね。私が住んでるロサンゼルスの地元では、アラビアンナイトの入荷は1月になると言われてたからだ。もちろんこのチャンスを逃すつもりはなかった。私と友人はさっそくゲームショップへと向かった。
ただ、私が購入したのは数パックだけだった。何しろすでに地元で2箱予約済みだったからね(ちなみに、私が購入したこのアラビアンナイトの購入量は、ワイオミング州全体で販売されたアラビアンナイトの量のほぼ2倍だった)
私や友人たちは新たなセットの登場に興奮もしたが、同時に少し不安もあった。私たちはまだアルファ版やベータ版(註)に触れ始めたばかりで、私が出会うプレイヤーたちは、みんな私が見たこともないカードを持っていた。
(註) アルファ版とベータ版
マジックの最初のセットはリミテッドエディションという名前で、これは2回刷られている。最初の第一刷を「アルファ版」、第二刷を「ベータ版」と呼ぶ。基本的に収録されているカードの内容は同じだが、アルファ版の諸々のミス(誤植や印刷上の誤りなど)の多くがベータ版では修正されている。
当時のウィザーズオブザコースト社はカードの情報を厳しく管理しており、プレイヤーたちは実際にパックを開けてみないことにはどんなカードが存在しているのかを知る手段がなかったからだ(まだインターネットが今ほど普及していなかったからね)
そんな状況だったから、新たなセットの登場は急なことのように思われたんだ。
それに新しいセットはそれまでとまったく違う雰囲気だったことも困惑した理由の1つだ。アルファ版とベータ版は古典的な西洋風ファンタジーのに対してアラビアンナイトは……まあ、うん、アラビアンナイトだったからね。
それでも新しいカードを見るのは非常に楽しいことだった。いくつかのカードはまさに私好みだった。一番はなんといっても《Diamond Valley》(註)だ。
ただ、それ以外のカードはちょっと使い道が思いつかなかった。
(2)(黒)(黒)で毎ターン自分にダメージを与えてくる5/5のクリーチャーとかね。どこの間抜けがこんなのをデッキに入れるんだ?(どんなカードが気になる君は《Juzam Djinn》(註)で検索してくれ)
しかし何よりもアラビアンナイトが素晴らしかった点は、マジックという名のジェットコースターがまさに最初のデカい上り坂を全力で下ろうとしていることを教えてくれたことだ。これからが本番だぞ、とね。
(註) 《Diamond Valley》と《Juzam Djinn》
前者は、クリーチャーを生け贄に捧げるとタフネス分のライフを得られる土地。マナは出ない。アラビアンナイトに登場する谷が元ネタ。
後者は、本当は強いのにマジック黎明期は過小評価されたカードの代名詞として良く例に挙がるクリーチャー。当時はライフを得る効果が好まれた反面、自分のライフを削る効果はひどく嫌われたらしい。
気づかれない物語たち
大学に在学していたとき、幸運なことに「放送と映画(Broadcast and Film)」を専攻することができた。要はテレビと映画を学ぶ学問だ。これを専攻にしたことで私は授業と称してテレビ番組や映画を観賞することができた。
講義の1つは、初期の映画に関するものだった。その最初の授業で、私は「大列車強盗(Great Train Robbery)」という映画を見させられた。
1903年の映画で、映画の主な内容はカウボーイの一団が列車強盗をはたらくというものだ。映画の途中で、カウボーイたちが列車を襲うシーンとその列車が向かう先である駅のシーンとで、カメラが交互に切り替わった。
見終えたが、アマチュア制作のような映画で、それほど面白い出来ではなかった。映画のあと、教師が私たちに「なぜ私がこれを君たちに見せたか分かるかい?」と聞いてきた。
生徒の誰も分からなかった。そんな私たちに教師はこう説明した。
「途中で列車と駅とで交互にが場面が切り替わってただろう? カメラを交互に切り替えることで2つの離れたシーンで起きていることを観客に同時に見せるこの手法を最初に取り入れたのがこの映画だ」
革新的な何かが起きた瞬間というのはなかなか知られていないものだ。その何かの価値が認められた頃というのはそれがすでに普通のものとして一般に根付いてしまっている頃なので、誰かによって生み出されたものだということは忘れられている。
アラビアンナイトはまさに大列車強盗だ。
リチャードはトレーディングカードゲームというまったく新しいゲームを発明したことでは満足しなかった。彼はゲームを次のレベルへと押し上げたかった。
今日のこの記事ではリチャードがアラビアンナイトを通じてマジックにもたらした様々な革新について紹介していきたいと思っている。
念のため。これは網羅的なリストではなく、いくつか特筆すべきものを選んだリストに過ぎない。ほんの一部だ。
それと、それぞれがどれだけその後のマジックのデザインに影響を与えたかの度合いを1個から3個の星の数で示すことにした(もっともこれはあくまで私の主観だ)。星が多いものほどマジックに与えた影響が大きいと思ってくれ。
それでは始めようか。
▼ コントロールが移る効果/Stealing ☆☆
相手のパーマネント奪うというアイデアはアルファ版の時点ですでにあった(《支配魔法/Control Magic》と《秘宝奪取/Steal Artifact》だ)。アラビアンナイトではさらにそこへひとひねり加えたカードが登場した。
青のクリーチャーの《Old Man of the Sea》(註) は、それをタップし続けているあいだだけ対象のクリーチャーのコントロールを奪えるというカードだ。
この効果にはその後に多くの子孫が生まれている(一部だけ紹介すると《Willow Satyr》、《魂の歌姫ルビニア/Rubinia Soulsinger》、《Preacher》、《海の歌姫/Seasinger》、《メリーキ・リ・ベリット/Merieke Ri Berit》、《ルートウォーターの女族長/Rootwater Matriarch》、《棺の女王/Coffin Queen》、《占有の兜/Helm of Possession》などがある)
またコントロールを奪う効果に関していえば、アラビアンナイトの《アラジン/Aladdin》(註)によって、赤もパーマネントを奪うことが可能となった点が挙げられる。
(註) 《アラジン/Aladdin》
Aladdin / アラジン (2)(赤)(赤)
クリーチャー - 人間(Human) ならず者(Rogue)
(1)(赤)(赤),(T):アーティファクト1つを対象とする。あなたがアラジンをコントロールし続けているかぎり、そのコントロールを得る。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Aladdin/
この《アラジン/Aladdin》は(前述のカードと違い)これ1枚で複数枚のカードを奪うことができた。またこのカード以前と以後のマジックにおける変化は、目印無しにコントロールを得ることができるようになったことだ。
あなたがオーナーでないカードをコントロールしていることを示す他のカードが戦場に存在せずとも対象のカードのコントロールを得ることが可能となった、ということだ。
こうして過去に遡ると赤には元々コントロールを奪う効果があったという事実はなかなか面白い点だ。
最近になって開発部は、一時的なコントロール奪取(代表的なのは青の《命令の光/Ray of Command》だ)の効果を青から赤に移すという決断を下したわけだが、歴史を遡れば赤という色には元々その要素があったわけだ。(そうそう、《命令の光/Ray of Command》も元をたどればレジェンドの赤の魔法である《Disharmony》が元ネタと言えなくもない)
最後に《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》(註)も紹介しておこう。これは自分自身で自身のコントローラーを変更してしまう、というコンセプトをマジックに初めて登場させたカードだ。これ以降、「自分のカード」と「相手のカード」の境目が曖昧になっていったんだ。
(註) 《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》
Ghazban Ogre / ガズバンのオーガ (緑)
クリーチャー - オーガ(Ogre)
あなたのアップキープの開始時に、プレイヤー1人が他の各プレイヤーよりも多いライフを持つ場合、その最も多いライフを持つプレイヤーはガズバンのオーガのコントロールを得る。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ghazban+Ogre/
▼ 対戦相手が起動できる能力/Abilities Activated by the Opponent ☆
前述の《ガズバンのオーガ/Ghazban Ogre》がコントローラーの境目を曖昧にしたカードだとすれば、その境目をまったく無くしてしまったのが《Ifh-Biff Efreet》(註)と言えるだろう。
(註) 《Ifh-Biff Efreet》
Ifh-Biff Efreet (2)(緑)(緑)
クリーチャー - イフリート(Efreet)
飛行
(緑):Ifh-Biff Efreetはすべての飛行を持つクリーチャーとすべてのプレイヤーに1点のダメージを与える。この能力はどのプレイヤーも起動してよい。
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ifh-Biff+Efreet/
マジックにおける大原則の1つに、ルールに聖域なし、が挙げられる。さすがにこのルールは絶対不変だろう、とプレイヤーが考え始めるや否や、デザイナーは盆を引っくり返すんだ。
アラビアンナイトが登場するまで「私のものは私のもの、君のものは君のもの」だった。ああ、もちろん奪うことはできた。しかし奪ってコントロールを得た以上は「私のもの」であり、使えるのは私だけだった……そう、《Ifh-Biff Efreet》が登場するまではね。
▼ マナを出す以上のことができる土地/Lands That Did More ☆☆☆
ベータ版には15種類の土地があった。5種類の基本土地と10種類のデュアルランドだ。これら15種類の土地は全てタップしてマナを出す以上のことはできなかった。
しかしアラビアンナイトの開発に当たり、リチャードは土地のそれ以上の可能性に気づいたんだ。
……待てよ、もしかして土地にはタップしてマナを出す以上のことが出来るんじゃないか? カードを引いたり、ダメージを与えたり、象を再生したり(註)……そんな感じにアーティファクトやエンチャントのようなことができるんじゃないか、とね。
(註) 象を再生したり
アラビアンナイトの土地、《Elephant Graveyard》のこと。タップすることで対象の象(Elephant)を再生できる。場所が墓場なのに再生するのはちょっと不思議。墓場行って死のうと意気消沈してたけどやっぱり生きよう(という活力を魔法で与える場所)、みたいな感じなんだろうか。
その後しばらく経ってから開発部は手綱を引き締めることにした。土地が土地たり得るのはマナを生み出すからだ、と定義したんだ。
おっと、もちろんマナを出す以外のことは一切まかりならん、という意味ではないよ(最近のカードを見てもらえば一目瞭然だとは思うが)
ここで言っているのは、土地は必ずマナを生み出すべし、という意味だ。マジックにおいて土地とはマナを生み出すことで初めて土地たり得ると決めたんだ。
▼ コイン投げ/Coin Flips ☆☆☆
アルファ版にはランダム性があった。まずプレイヤーはゲームを始める前にデッキをシャッフルする必要があったからね。
しかしアラビアンナイトでリチャードはさらに一歩踏み込むことにした。個々のカードそれ自体にランダム性があってもいいんじゃないか、とね。
例えば《スレイマンの壺/Bottle of Suleiman》だ。君は5/5の飛行するジンを得られるかもしれないし、得られないかもしれない。そんな不確定性があった。それ以外では《Mijae Djinn》や《Ydwen Efreet》などもまた違った形でランダム性を表現していた。
(註) 《スレイマンの壺/Bottle of Suleiman》
Bottle of Suleiman / スレイマンの壺 (4)
アーティファクト
(1),スレイマンの壺を生け贄に捧げる:コインを1枚投げる。あなたがコイン投げに勝った場合、飛行を持つ無色の5/5のジン(Djinn)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体生成する。あなたがコイン投げに負けた場合、スレイマンの壺はあなたに5点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Bottle+of+Suleiman/
コイン投げのランダム性が大好きなプレイヤーもいたし、逆に大嫌いなプレイヤーもいた。そして開発部は、公式大会に出るプレイヤーたちよりもカジュアル環境のプレイヤーたちのほうがコイン投げを好むらしいと分かった段階で、コイン投げに関連するカードのパワーレベルを意図的に下げていった。
いずれにせよ、リチャードがコイン投げのようなランダム性を楽しむ心を持っていなかったら、《丸砥石/Grindstone》や《汚れた契約/Tainted Pact》、《切除するもの/Scalpelexis》のような最近のカードたちもまた存在しなかったことだろう。
▼ 累加アップキープとキャントリップ/Cumulative Upkeep and Cantrips ☆☆☆
開発部でよく議論の対象になる2つのネタがある。累加アップキープを持った最初のカードは何かということ、また、キャントリップを持った最初のカードは何かということだ(訳注:これら2つのメカニズムはいずれも一般的にはアイスエイジで登場したとされている)
まず累加アップキープの解答に関しては3つの候補(註)がある。
1つ目としてアルファ版の《停滞/Stasis》だ。リソースをロックしてしまうその効果とアップキープコストの支払いが組み合わさったことで、疑似的な累加アップキープのような動きとなっている。
2つ目としてはアイスエイジで実際に「累加アップキープ」とテキストに記載されていたカードたち、例えば《Maddening Wind》などだ。
3つ目としてはアイスエイジよりも前に発売されたアラビアンナイトの《サイクロン/Cyclone》だ。これは実際に毎ターンのアップキープの支払いが増加していく最初のカードだった。
(註) 3つの候補
① Stasis / 停滞 (1)(青)
エンチャント
プレイヤーは自分のアンタップ・ステップを飛ばす。
あなたのアップキープの開始時に、あなたが(青)を支払わないかぎり、停滞を生け贄に捧げる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Stasis/
② Maddening Wind (2)(緑)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
累加アップキープ(緑)(あなたのアップキープの開始時に、このパーマネントの上に経年(age)カウンターを1個置く。その後あな たがこの上に置かれている経年カウンター1個につきアップキープ・コストを1回支払わないかぎり、それを生け贄に捧げる。)
エンチャントされているクリーチャーのコントローラーのアップキープの開始時に、Maddening Windはそのプレイヤーに2点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Maddening+Wind/
③ Cyclone / サイクロン (2)(緑)(緑)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、サイクロンの上に風(wind)カウンターを1個置く。その後、あなたがそれの上に置かれている風カウンター1個につき(緑)を支払わないかぎり、サイクロンを生け贄に捧げる。支払った場合、サイクロンは各クリーチャーと各プレイヤーに、サイクロンの上に置かれている風カウンターの数に等しい点数のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cyclone/
次にキャントリップの解答だ。ただこちらは累加アップキープに比べるとずっと複雑なものとなる。
アルファ版にももちろんカードを引く効果はあった。しかしそれらはあくまでもカードを引くこと自体が目的であり、副次的な2番目の効果としてカードを引くものはなかった。
では他の効果のあとに追加で「カードを1枚引く」という効果が書かれていた最初のカードは、というとアラビアンナイトの《宝石の鳥/Jeweled Bird》(註)となる。
(註) 《宝石の鳥/Jeweled Bird》
Jeweled Bird / 宝石の鳥 (1)
アーティファクト
アンティを賭けてプレイしない場合、プレイを開始する前に宝石の鳥をあなたのデッキから取り除く。
(T):宝石の鳥をアンティにする。そうした場合、そのアンティにあるあなたがオーナーである他のすべてのカードをあなたの墓地に置く。その後カードを1枚引く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Jeweled+Bird/
上記2つの問いの興味深い点としては、1993年12月発売のアラビアンナイトと1995年06月発売のアイスエイジのデザインが実は同時期になされていたということだ。つまりそれぞれの担当者の間でデザインのアイデアは共有されていたはず。
もしかしたら《Cyclone》の増加していくアップキープコストを見たアイスエイジのデザイナーが累加アップキープを思いついたのか……それとも逆だったのか? 今となっては誰にも分からない。
ただ、リチャード曰く、《宝石の鳥/Jeweled Bird》のアイデアはキャントリップよりも先に生まれていたらしい。ではキャントリップのアイデアの元ネタは、というと0マナの《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》だ。
この0マナのカードのように、プレイするために必要なリソースとして手札1枚以外に何も必要としないカードがあるなら、逆に、プレイするのリソースとしてマナ以外に何も必要としないカードがあってもいいのでは(つまりプレイ後も手札枚数が変わらないカードがあってもよいのでは)?
▼ 「魂の絆」効果/Spirit Link(註) ☆☆
この白の代表的な能力(註)の面白い点としては、初めて登場したのが実はアラビアンナイトだったという点、さらに初出時は白ではなく黒のクリーチャーの能力だったという点だ(ちなみにそのクリーチャーとは《エル・ハジャジ/El-Hajjaj》だ)。この能力が黒から白へと移ったのはアラビアンナイトから6ヶ月後に発売されたセット、レジェンドでのことだった。
(註) 「魂の絆」効果
「クリーチャーがダメージを与えるたび、あなたは同じ点数のライフを得る」という効果を指している。名称の由来は《魂の絆/Spirit Link》というカードで、このカード自体の初出は1995年発売の第4版。
▼ -1/-1 カウンター/-1/-1 Counters ☆☆
アルファ版で登場したクリーチャーに乗せて使うカウンターは2種類あった。
1つは +1/+1 カウンターでこれは《Rock Hydra》、《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》、《キノコザウルス/Fungusaur》が用いていた。もう1つは《機械仕掛けの獣/Clockwork Beast》が用いていた +1/+0 カウンターだ。
アラビアンナイトであらたに登場した3種類目のカウンターが -1/-1 カウンターで、これは《不安定性突然変異/Unstable Mutation》で用いられた。
これらのカウンターはその後も多くのカードに採用されたが、その後、開発部は+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが同時に用いられる状況は混乱を招いていると考えるようになった。また、これらのカウンターには用途的にも重複が見られるとして、より利用頻度の低い-1/-1カウンターは廃止されることとなった。
▼ 「~が戦場に出たとき」の効果/"As ~ Comes into Play" Choices ☆☆☆
アルファ版を遊んだプレイヤーたちは、インスタントやソーサリーは唱えた際にプレイヤーの意図を何らかの形で反映できることを知っていた(ああ、そうそう、インタラプトもだ)。
どういうことかというと、呪文を唱えるときにプレイヤーは、その呪文の対象やモードなどを好きに選択できるということだ(モードの選択とは、例えば《青霊破/Blue Elemental Blast》を唱える際に「赤の呪文1つを対象とし、それを打ち消す」のか「赤のパーマネント1つを対象とし、それを破壊する」のかを選ぶような場合だ)
アラビアンナイトではこのアイデアをさらに1歩進めている。
リチャードはアラビアンナイトの《Jihad》というカードによって、使い捨ての呪文と同じくパーマネントもプレイされたときにその効果を選択できることを明らかにしたんだ。今では「~が戦場に出たとき(註)」のテキストで知られるこの発明は実に大量のカードデザインに影響を与えた。
(註) 今では「~が戦場に出たとき」のテキスト
当時の《Jihad》のルールテキストは「Choose a color. As long as opponent has cards of this color in play, all white creatures gain +2/+1. Jihad must be discarded immediately if at any time opponent has no cards of this color in play.」だった。
▼ 一時的にゲームから追放する効果/Removed from Game as Limbo ☆☆☆
ゲーム外に追放する効果は《分解/Disintegrate》や《剣を鍬に/Swords to Plowshares》のようなカードが示すとおり、すでにアルファ版から存在した。
アラビアンナイトではこのアイデアを1歩進めている。すなわち、ゲームから追放されたカードが再度ゲームに戻ってくることが可能となったんだ。
アラビアンナイトのカードで一番分かりやすい実用例は何と言っても《Ring of Ma’ruf》(註)だろうね。このカードはゲームから追放されたカードを戻せた。さらにはゲーム開始時に存在しなかったカードまで手に入れることができたんだ。
(註) 《Ring of Ma’ruf》
Ring of Ma’ruf (5)
アーティファクト
(5),(T),Ring of Ma’rufを追放する:このターン、あなたが次にカードを引く代わりに、あなたがオーナーであるゲームの外部にあるカードを1枚選び、それをあなたの手札に加える。
ジャッジメントで願いシリーズ(註)を生み出したデザイナーたちがそのアイデアをこの型破りな指輪から得ていたことは間違いないだろうね。
(註) 願いシリーズ
ジャッジメントで登場したゲーム外からカードを持ってくる呪文で白であればエンチャントかアーティファクト、緑であればクリーチャーという風に5色それぞれに存在した。これらは全て《 ~ の願い/ ~ Wish》という名称で統一されていたため、以降「願い」というとゲーム外からカードを持ってくる効果を指すようになった。
ただ、より後世のカードたちに大きな影響を与えたカードといえば《Oubliette》(註)だ。このカードがなければゲームから取り除いた先が「一時的な保管所(Limbo)」として用いられることはなかっただろう。
(註) 《Oubliette》
Oubliette (1)(黒)(黒)
エンチャント
Oublietteが戦場に出たとき、クリーチャー1体を対象とし、それとそれにつけられているすべてのオーラ(Aura)を追放する。そのクリーチャーの上に置かれているカウンターの種類と数を記録する。
Oublietteが戦場を離れたとき、その前者の追放されたカードをオーナーのコントロール下で、タップ状態かつ記録された種類と数のカウンターが置かれた状態で戦場に戻す。そうした場合、その他の追放されたカードをオーナーのコントロール下でそのパーマネントにつけられた状態で戦場に戻す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Oubliette/
どういうことかというと、ゲームから取り除いた先(今でいう追放領域)は、カードをただ使用済みとしてしまう墓地よりもずっと利用価値が高かったんだ。
そこは、一時的にゲームから取り除いておきたいカードを置いておくこともできたし、また参照用にカードを表示しておく場所としても使えた。
この領域の発見によって生まれた波紋は、フェイジング能力、《ちらつき/Flicker》、《呪文乗っ取り/Spelljack》などのような形で実にマジックの隅々まで広がっていった。
▼ 戦闘から除外する効果/Remove from Combat ☆☆☆
アラビアンナイトで《黒檀の馬/Ebony Horse》が登場するまで、マジックには「戦闘から除外する(Remove from Combat)」という概念が存在しなかった。確かに再生(註)という能力はアルファ版から存在していたが、当時のルールでは再生しても戦闘から除外はされなかったからだ。
(註) 再生
ざっくり説明すると、タフネス以上のダメージを受けたときにダメージを全て帳消しにするかわりにタップされて戦闘からも除外される能力。記事が書かれた当時は「再生後は戦闘から除外される」ことになっていたが、マジックの黎明期はまだそうではなかった。再生はその後もルールが二転三転しており、その結果、複雑すぎるという理由により今後は登場しないらしい(2019年06月現在)
この《黒檀の馬/Ebony Horse》というカードによって戦闘中に出来ることの幅が広げられた。これは再生能力を始めとした多くの戦闘中に効果を発する能力やカードに影響を与えることとなった。
▼ 特定のエキスパンションを参照するカード(註)/Expansion Hosers ☆
エキスパンションシンボルがゲームに影響するようになったのはアラビアンナイトの《City in a Bottle》の登場以降だ。もっともアラビアンナイト以前にはそもそもエキスパンションシンボル自体が存在しなかったことを考えると、当たり前に聞こえるかもしれないけどね。
その後、このカードの足跡をたどる形で、アンティキティの《Golgothian》、およびホームランドの《Apocalypse Chime》が生まれた(註)。
(註) 特定のエキスパンションを参照するカード
ここで紹介されているカードはいずれも簡単に言うと「特定のエキスパンションシンボルを持ったカードをまとめて破壊する」ことができる。なお2013年にルールが変わり、エキスパンションシンボルの有無ではなく、どのエキスパンションが初出かで判断するようになった(つまりエキスパンションシンボルを持たない再録されたカードも今では影響を受けるようになっている)
いくつもの夜を越えて
そんなわけで、アラビアンナイトがその後のマジックのデザインに与えた影響の大きさを分かってもらえただろうか。
全体のほんの一部を紹介するだけの短い旅ではあったが、1つのセットが起こした革新がマジックの進化にいかに根付いているかを少しでも伝えることが出来たならとても嬉しい。
ああ、それともし君がいつか「大列車強盗(Great Train Robbery)」を見る機会があれば、採点は甘めにつけてあげてくれ。君の好きな映画作品はまた別にあるだろうが、これ無しにはその作品も生まれなかったんだろうからね。
来週は、開発中のセットを呼ぶ仮の名前、そうセットのコードネームに関する不思議な世界に君たちをご招待しようと思う。それまで、隅に円月刀のエキスパンションシンボルが描かれたカードでマジックを楽しんでくれ。
【翻訳】ヴィンテージを流行らせるために出来ること、そして出来ないこと/Playing to Type 1【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年07月15日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/playing-type-1-2002-07-15
先月のコラムでは皆から送られてきたメールに対して私から色々と回答させてもらった。さてその中で、開発部がタイプ1(註)を今後どう扱うつもりなのかについて知りたい、というメールを取り上げた。
これに対しネットのタイプ1好きのコミュニティからは非常に大きな反響があった。それはあまりに大きかったので、こうして1つの記事にするに十分なトピックに思われたんだ。
今日の記事の目的は大きく分けて2つだ。
1つ目として、皆からもらった質問のうち、開発部がタイプ1をどうしたいと考えているかという問いに答えたいと思う。次に、タイプ1を遊んでいるプレイヤーたちから挙げられた現状の課題を1つずつこの記事で皆と共有し、それにどう対処すべきかをオープンに議論したいと考えている。
さて、先に進む前に前もって伝えておくことがある。私自身はもう何年もタイプ1をプレイしていない。つまり私はタイプ1のメタゲームをほとんど把握していない。
つい最近の全米選手権で、私はタイプ1の現状のメタゲームについてプロプレイヤーに話を聞く機会があった(気になる人もいるかもしれないから付記しておくとそのプレイヤーとは Pat Chapin だ。タイプ1というフォーマットに詳しいプレイヤーの1人と考えて間違いないだろうね)
前回の記事で私が述べたタイプ1に関する言葉はこのときの話をソースとしている。勘違いさせたようで申し訳ない。
今日は、現状のメタゲームを把握しているつもりだ、などとは絶対に言わないことを約束しよう。知ったかぶりで書いたりすれば大量の批判にさらされることは確実だからね。
ときには昔の話をしようか
タイプ1に関する懸念点について話をしようとするのであれば、まずはこのフォーマットの歴史について学んでおく必要がある。
用意がいいことに、ここにある時間逆行装置の目盛りはすでに1994年の前半にセットしてある。なんで1994年の前半なのかって? なぜならそれこそがタイプ1の生まれたときだからさ。
1994年以前のマジックにはデッキ構築に関する公式ルールが存在しなかった……え? そんなことないって? ごめんごめん、説明が間違っていたね。
確かに製品にルールブックが付属しており、そこには「公式ルール」が記載されていた。しかしそのルールにはデッキに同じカードを何枚まで入れてよいかという制限はなかったし、デッキ枚数は40枚以上であるべし、ということになっていた。
その後、1993年の終わりごろに「Duelist Convocation」という組織が作られた(興味のある人のために付記しておくと、この組織こそが現在のDCIの前身だ。そう、DCIの「DC」はこれが由来だ。ちなみにDCIの「I」は「International」の頭文字から来ている)
1994年の冬に Duelist Convocation が起こした活動の1つが、デッキ構築に関する公式ルールの発表だ。
当時、熱心なマジックプレイヤーたちは独自にルールを作りそれを共有して遊んでいたが、それらは地域によって異なるもので統一はされていなかった。
統一された構築済みフォーマットのデッキ構築ルールを初めて制定したのが Duelist Convocation だった。
デッキの最少枚数は60枚と定められ、同一カードはデッキに4枚までと定められた。そして最初の制限カードリスト(訳注:デッキに1枚までしか入れられないカード)が発表された。
当時はまだ禁止カードは存在しなかった。こうして初めての構築済みフォーマットが生まれた(ちなみに限定構築フォーマットであるシールド戦やブースタードラフトという遊び方は、非公式ではあったが多くのイベントでウィザーズオブザコースト社の社員によってすでに紹介されていた)
ただ生まれた当時、このフォーマットの名前はタイプ1ではなかった。マジック構築(Magic Constructed)と呼ばれていた。もしくは縮めて、単に Magic と呼ばれていた。最初の1年間はそれで何の問題もなかった。
しかし1年後の1995年の冬、ある非常に重要な出来事が起きた。ウィザーズオブザコースト社は、タイプ2と呼ばれる新たなフォーマットを発表したんだ(現在のスタンダードだね)。
好きなカードを使えるのではなく、特定のセットに限定されたカード群の中からデッキを構築しなくてはいけなくなったんだ。それに伴い、すでに存在していたフォーマットはタイプ1と呼ばれるようになった。
一夜にしてマジックの世界は2つに分かたれた。それに対する大半のプレイヤーたちの反応はいかばかりであっただろうか?
私たちにはとても受け入れられなかったね。自分で持っているカードを使えないだなんて、なんでウィザーズにそんなことを決められなければいけないのか、とね(念のため。当時の私は普通のプレイヤー側の立場だ……ウィザーズの社員ではなくね)
しかしウィザーズは方針を曲げなかった。そこで私たちプレイヤーもそれに従おうと努力した。正しく言えば、私たちプレイヤーの一部もそれに従おうと努力した。
その他のプレイヤーたちはタイプ1で遊び続けた。それでどうなったか? いや、これがそれなりに上手く回ったんだ。確かにそれまでとは変わってしまったが、これはこれで面白かった。
開発部がカードパワーの調整を学び始めたことで、タイプ2は多少大人しめなゲーム展開となった。それも悪くない、と思う一派もいた。
ところが、こんなのは私たちの愛するマジックではない、と思う一派もこれまたいたわけだ。こうしてマジックの歴史における最初のプレイヤー間の分裂が始まった。
そして時間が流れ、新たなフォーマットが次々と生じていった。
タイプ1とタイプ2の隔たりがあまりに大きくなり過ぎたことで、それらを埋めるためのタイプ1.5(ほぼタイプ1だが、タイプ1の制限カードが禁止カードとして扱われるフォーマット)が作られた。新たな分裂だ。
しかしタイプ1とタイプ2の隔たりはさらに広がり、そこに中間的なフォーマットを作る余地が生じた。こうして生まれたフォーマットがエクステンデッドだ。
また新たな分裂だ。
それと並行してリミテッド(開封したカードプールでそのままプレイするシールド、開封したカードプールから各プレイヤーが1枚ずつピックしていくドラフト)の世界にも変化があった。新たなプロツアーの誕生に伴い、それらも公式フォーマットに加わったのだ。
さらなる分裂だ。
1997年のプロツアーパリで登場したのは、これまたまったく新しいフォーマットであるブロック限定構築……というわけで、こうしてマジックプレイヤーという地図の境界線は1本また1本と増えていったんだ。
かつて1つのゲームだったはずのマジックは今や8つとなっていた(タイプ1、タイプ1.5、エクステンデッド、スタンダード(タイプ2)、ブロック構築、シールド、ブースタードラフト、ロチェスタードラフト)。ちなみに私はまだチーム戦について触れていない。
時計の針を現在に戻そう。
タイプ1は今なお滅びずに存続しているが、当時の隆盛は見る影もない。今はただ、少ないながらも敬虔な信徒を従えるのみだ。
一難去ってまた一難
最初に約束したとおり、私はこの記事でタイプ1のプレイヤーたちから送られてきた質問に答えたいと考えている。
念のため付け加えておこう。この記事において私が説明したいのは主に2つだ。
私たちが下してきた様々な決定がなぜなされてきたのかその背景を明らかにすること、そして、状況を改善するための対話を持つに際してどういった制限が課せられているのかを説明することだ。
それでは君たちからの質問を取り上げていこう。
「なぜタイプ1の大会がほとんど開かれないのですか? また、規模の大きいタイプ1の大会がほとんど開かれないのはなぜですか?」
初めに強調したいのは、この問題は開発部側の問題というよりどちらかといえば公式大会(Organized Play)の問題だということだ。しかしその上で、私の出来る限りの回答をしたいと思う。
法人としてのウィザーズオブザコースト社がマジックのプロモーションに割けるリソースは限られている。
おっと、説明が前後してしまうが、ここで私が用いる「タイプ1」という言葉が何を指すのかを明確にしておこう。
私がここで取り上げているタイプ1は「公式大会のフォーマットとしてのタイプ1」だ。
多くのプレイヤーにとって、タイプ1とは非公式のカジュアルなマジックを指す。タイプ1の禁止カードや制限カードを参照しつつも例外的に使用を認めたり、どんな古いカードでも(《サリッド/Thallid》でも《黒き剣のダッコン/Dakkon Blackblade》でも)使って良かったりする、そんなフォーマットを指してタイプ1と呼ぶ。もちろんそういうマジックを素晴らしいと思うし、そういうフォーマットでのプレイを私自身も楽しんだりしている。
しかし公式な意味でのタイプ1とそれに対するサポートの話となると、公式大会に関するものになる。そこに顔を出すのは並外れたパワーを持つカードたちだけだ。このことをまず頭に入れておいて欲しい。
さて、数あるフォーマットの中でどのフォーマットに注力するか、どこに多くリソースを割くか、それらを決定する際に特に注視する点は2つだ。1つは【人気度(Popularity)】、もう1つは【入手し易さ(Accessibility)】だ。
【人気度(Popularity)】
1つ目は人気度(Popularity)だ。いざというときに意思決定を最も大きく左右するのは「プレイヤーたちは何をプレイしたいんだろうか」だからだ。
もし「このフォーマットで遊びたい!」という君たちの声があれば、私たちもそれに応えるべく動くということだ。結局のところ、私たちは君たちに、つまりはプレイヤー全体にゲームを楽しんで欲しいと考えており、タイプ1(およびタイプ1.5)の話には、この1つ目の点が大きく作用してくる。
正直に言おう。私たちの集めたデータによるとタイプ1はそれほど人気のあるフォーマットではない。
私たちは毎年いくつの認定大会が開かれているかの記録をつけている。大会は大きく3つのカテゴリに分けて集計される。① 構築(スタンダード、エクステンデッド、ブロック構築)、② リミテッド(シールド、ロチェスタードラフト、ブースタードラフト)、そして ③ ヴィンテージ(タイプ1、タイプ1.5)の3つだ。
以下が、過去5年間の大会数だ(なお数字は1000単位で丸めてある)
年度 *1997 *1998 *1999 *2000 *2001
─────────────────────
① 11000 20000 20000 33000 47000
② *9000 19000 24000 31000 42000
③ *4000 *3000 *2000 *3000 *3000
(訳注:各所に挟まっている * は桁数をそろえるためのもの)
それぞれ①~③が各年度でどれだけの割合を占めているかを年度順に並べていくと「① 構築:46%、48%、43%、49%、51%」、「② リミテッド:38%、45%、52%、47%、46%」、「③ ヴィンテージ:17%、7%、4%、4%、3%」となる。
ヴィンテージの大会数は占める割合が他に比べて小さいというだけでなく、その占める割合自体も年度を経るにつれて徐々に小さくなっているのが分かると思う(公平性の観点から付け加えておくと、このフォーマットに対する私たちからのサポートの少なさもまた減少要因の1つではあるが)
そしてこの人気度という因子はタイプ1が抱える最も大きな障害であり……同時にタイプ1にとってのチャンスでもある。アンタップ状態のヴィンテージプレイヤー諸君。もしいるなら、ぜひ私たちに対して行動を起こして欲しい。
地元の大会運営者に「タイプ1やタイプ1.5の認定大会を開いて欲しい」と頼むんだ。非公式のプレイでいくらタイプ1を遊んでもらっても私たちには響かない。
タイプ1の大会数のデータが増加を示せば、私たちにもこのフォーマットに確かなポテンシャルがあることが伝わるだろう。
どう遊んでいるか、を伝えてくれることには意味がある。しかし、実際に遊んでいることを伝えてくれるのにはそれ以上の意味があるんだ。
【入手し易さ(Accessibility)】
2つ目は入手し易さ(Accessibility)、つまりそのフォーマットを始めるのがどれだけ容易かだ。ゲームを始めるのに必要なものとしては大きく分けて4つある。時間、対戦相手と対戦場所、お金、そしてカードだ。
最初の2つに関して言えば、タイプ1のハードルは比較的低い。1ゲームにかかる時間はそれほど長くないし、対戦相手も1人で済む。
しかし3つ目と4つ目のハードルはかなり高い。
おそらくカードの金額でいえば全てのフォーマットの中で最も高額と言えるだろう(念のため。戦略的に重要なカードの話をしている)。カード1枚で数百ドルかかることすら珍しくない。
さらにそれらのカードは刷られた枚数自体も限られており、手に入る地域も限られている。つまり多くのプレイヤーにとって手に入れること自体が不可能に近いということだ。
毎年のマジックインビテーショナルの大会で、私はタイプ1相当のフォーマットで大会を開催している。つまり古いカードでも一律全て使用可能なフォーマットだ(もっと今年のインビテーショナルでは開催できないだろう。今年はマジックオンライン上で開かれるからね)。
開催するたびに多くのプレイヤーから聞かされる不満は、これらのカードがいかに手に入れづらいかということだ。インビテーショナルに参加しているのはプロプレイヤーたちだ。つまり普通のプレイヤーよりもカードに触れる機会が多く、つぎ込む予算も大きいプレイヤーたちだ。
そのプレイヤーたちが問題と感じているということは、一般のプレイヤーたちにとってはさらに困難に違いない。
証拠とするにはいまいち具体性に欠けるかもしれないが、いずれにせよタイプ1が気軽に飛び込めるフォーマットではないことを示してはいる。俗にいう「敷居が高い」というやつだ。
大きいものとしてこれら2つの理由(お金とカード)により、タイプ1というフォーマットを全世界的なイベント(全世界から参加者を募るような規模の大会で、という意味)で採用することは難しい。
つまり、タイプ1の「プロツアー」は言うに及ばず、タイプ1の「グランプリ」の開催すら現実的ではないということだ。
大規模なタイプ1の大会が絶対に開けないと言っているわけではない。しかし、かなりの数のヴィンテージプレイヤーたちがいることを示せる地域でなければ実現は難しいだろう。
まとめると、タイプ1の大会が開かれない理由は、マジックプレイヤー全体(public as a whole)として見た場合にタイプ1を求めているという証拠(evidence)が得られないためだ。
逆に言えば、もし求めているのであれば、ぜひそれを見える形でデータとして示して欲しい。タイプ1の認定大会がもっとプレイされることで、私たちもタイプ1により注意を払うようになる。
とはいえ、プロツアーとグランプリに限っていえば、入手しづらさに加えて高額すぎるという現状がある限り、国際的な大会のフォーマットにタイプ1が用いられる可能性は低いと言わざるを得ない。
しかし、これまた言い換えれば、プロツアーやグランプリ以外の形式にこそタイプ1の可能性があるということだ。そしてそれらの形式の大会をいかに現在タイプ1が多く遊ばれている地域で開催できるかがカギだ。
「なぜカードを再版しないのですか? なぜプロキシ(代用カード)は許可されないのですか?」
前述にあげたように、タイプ1の普及の難しさの1つは値段にある、という説明に対して返ってくる反応は主に4つだ。1つ目としては私たちに同意してくれる声だ。まあこれに関して説明はいらないだろう。
2つ目として、タイプ1はプレイするのにそれほど高額ではない、という声だ。しかしこれは事実ではない。主要なタイプ1のデッキリストをかき集め、雑誌で紹介されているシングルカード価格でデッキの総額を算出し、デッキ当たりの総額を示してもいいが、結果はすでに分かりきっている。
この記事で私は君たちに正直でありたい。だから君たちもまた正直に答えて欲しい。タイプ1は高額なフォーマットか否か。もしあるプレイヤーが、よし明日からタイプ1を遊ぼう、と思ったときに貯金箱を叩き割る必要があるのかどうか。ある。これは事実だ。
3つ目として、この問題はウィザーズ社が作った「一部のカードに関しては絶対に再版しないというルール(再版ポリシー)」を破棄すればそれで解決する、という声だ。タイプ1で必須とされる高額カードを再版すれば済む話だと。
これはなかなかデリケートな問題だ。だからこそ、結論から言おう。
再版ポリシーがなぜ存在するか。それは非常に重要な理由からだ。
マジックはカードゲームであると同時にトレーディングカードでもある。ウィザーズオブザコースト社は、カードゲームとしてだけではなくトレーディングカードでもあるという約束事のもとでマジックを市場に売っている。多くの人々がすでに何千ドルとこのゲームに投資してくれているのは、私たちがポリシーを守ると信じているからだ。
私のが「Making Magic」という記事を書いているのは、マジックというゲームは様々な人たちのために存在していることを知ってもらうためでもある。これは私の記事の重要なテーマの1つだ。
その「様々な人たち」の中には、所持しているカードの価値を非常に重要視しているグループもいる(ちなみに割合として見たときに全体の中で決して少なくはない)。
私たちはこのグループの人たちにも責任がある。その責任において、特定のカードの再版はできない。これは交渉によってどうにかなる話ではない。
ただそれはそれとして再版可能な古いカードも多くある。トーメントとジャッジメントを見てもらえば分かるように、開発部も絶版となった古いカードを世に戻そうと努力している。
開発部もまたマジックというゲームが大好きだからだ。
開発部にはマジックが発売された当時から遊んでるプレイヤーもたくさんいる。中には世に出る前からマジックをプレイしているメンバーすらいる。つまり私たちもまた過去のマジックを今のプレイヤーたちと共有したいと思ってはいる。
しかし、それでもなお越えてはならない一線が確かにある。
そして金額的なハードルに対してよくある4つ目の反応として、プロキシ(代用カード)さえ認めてくれれば解決する、というプレイヤーたちの声がある。
回答はシンプルだ。
マジックは以下の2つのために存在している。
その1。マジックは偉大なるゲームだ。個人的には最高のゲームだ。そして開発部は純粋なゲーム好きの集団としてもそれを存続させる義務がある。
その2。マジックはウィザーズ社およびその親会社ハスブロの製品であり収益源だ。この2つ目をなくして1つ目は意味をなさない。
もし私たちがプロキシを認めたら、行きつく先は望まぬ終着点だ。多大なる混乱が待っているだろう。シングルカード市場への影響もある(この分野も私たちは気にかけているよ。ただ今日は掘り下げるのはやめておこう)
しかし何より問題なのは、プレイヤーの購買量がただちに減少することだ。それは私たちにとって望ましい事態ではないし、長期的な視野にたてば、君たちにとっても望ましい事態ではない。
収入が減るということは、ゲームにつぎ込める予算が減るということであり、大会の開催や公式サイトに費やせるお金が減るということだ。私はいつも「ゲーム会社」の「ゲーム」の部分についてばかり語っているが、実際のところ「会社」の部分も同じくらい重要だ。
まとめると、タイプ1のカードを再版すること、およびプロキシを認めること、これら2つはいずれもウィザーズ社の特定の面を直撃する。
私は今日の記事でオープンに議論したい、と書いた。他の分野については議論の場を設けることが出来る。しかしこれら2つについては無理だ。再版とプロキシに関しては議論の余地がない。
「なぜあなた方はリチャード・ガーフィールドが思い描いた未来から遠ざかろうとしているのですか?」
私はこれに類する苦言を本当に何度となく聞いてきたので、手っ取り早く解決することにした。答えを知っているであろう人物に直接聞いてきたよ。
「リチャード、開発部は君の思い描いた方向から外れていってるかい?」
「いいや?」
マジックは常に進化を続けるゲームとしてデザインされた、未踏の地を歩み続けるゲームだ。他の伝統的なゲームと一線を画する点は、変幻し続けるメタゲームがプレイヤーに新たなる適応を求め続ける点だ。今日、君が学んだ戦術は、明日には役に立たないかもしれない。
この揺らぎがゲームを常に目新しいものにしてくれる。だがそれは同時に、マジックは過去の常識を置き去りにし続けるようデザインされたゲームであることを示している。
問題は、プレイヤーが変化を好まないことだ。人間は習慣の生き物であり、根本的に変化を避ける生き物でもある。
絶え間ない変化を続けるゲームにおいては、特定のプレイヤーが好む側面から遠ざかる瞬間があることは避けられず、またそのことに傷つくプレイヤーがいることも避けられない。
開発部では広く知られている格言の1つに「プレイヤーは常に最初に遊んだセットを好む」がある。最初に触れたセットは必ずそのプレイヤーにとって特別なセットだ。
マジックの魔法に初めて触れた瞬間だからね。
そして多くのタイプ1プレイヤーにとって、それはアルファ版だ。
私の考えでは、タイプ1プレイヤーは誤った認識からアルファ版を優れたものだと信じているように思われる。
リチャード・ガーフィールドはデザイナーとして素晴らしい決断をいくつも下し、何枚もの素晴らしいカードが生まれた。それは事実だ。アルファ版には多くのパワーカードが含まれている。それも事実だ。しかしそれを持ってしてアルファ版は素晴らしいのか?
いいや、そうではない。アルファ版の素晴らしい点は個々のカードにあるのではない。リチャード・ガーフィールドがそこで表現した全体像そのものが素晴らしいんだ。
個々のカードごとにリチャードが選択した何かではない。ゲーム全体の持つ柔軟性、それによってデザイナーたちが常に異なる選択をし続けることができるという点なんだ。
アルファ版が持つ美しさとはこのゲームの持つ哲学そのものだ。アルファ版と(もしくはレジェンド、リバイズドなどなど君の好きなセットと)イマイチ違うから、という理由で昨今のセットを拒絶すること、それ自体がリチャード・ガーフィールドの思い描いた未来から外れることだ。
マジックは生き物だ。今まさに目の前で成長を続ける子供だ。去年までの赤ん坊の姿と見た目が違うからという理由で突き放すべきじゃない。
私はデザイナーとして過去から学ぶことを強いられている。過去の成功を、そして過去の失敗をだ。その上で、異端者となじられる覚悟で言うが、アルファ版は決して完璧ではない。欠点だっていくつもある。
これを最初に認めたのはリチャード・ガーフィールド自身だ。
当初のルールにはチーズみたいに大量の穴がある。フレイバーとまったく沿っていないカードもある。過去に存在したどのセットよりもカードパワーはアンバランスだ。じゃあこれらの欠点が理由でアルファ版は駄作と言えるのか? もちろんそんなことはない。
アメリカ合衆国憲法だって素晴らしい文書だが完全ではない。
今では多くの人が、奴隷だからという理由でその人が他の人の60%の価値しかないなどとは思わないし、裕福な地主の白人男性しか選挙権を持つべきでないなどとは思わない。しかしそれでもなお、偉大なる理想を示そうとした合衆国憲法が色あせることはないんだ。
そもそもリチャード・ガーフィールドが当初想定していたプレイ環境から現実が大きく乖離してしまった、ということは記しておくべきだろうね。
当初の想定では、プレイヤー1人当たりブースター15個くらいしか購入しないだろうと考えられていたし、カードのトレードも身内のグループ内でしか行われないだろうと思われていた。
もしこの想定が正しかったなら、《Ancestral Recall》や《Mox Sapphire》といったカードも問題のあるカードとはみなされなかっただろう。
勘違いしないで欲しいが、私はアルファ版を愛している。私が最初に触れたセットであり、最高のセットを決めるなら常に上位に来るにふさわしいセットだ。しかし完璧ではない。完璧だと信じるがゆえにそれが最高だと考えているならば目を覚ますべきだ。
ただ同時に1つ言っておこう。もし私がタイムマシンでアルファ版が生まれた時代に戻り、カードを好きに変更できる権利を得たとしよう。どうするか? 何一つ変更しないだろうね。
なぜか?
なぜならアルファ版はマジックというゲームが生まれた瞬間にあるべき姿だったからだ。まとまりがなく、混沌としていて、たまらなく楽しいセットだった。当時のマジックに関する思い出は最高に楽しいものばかりだ。
しかし現在のマジックは1993年のマジックではない。マジックのプレイヤーたちは知識を付けた。マジックというゲームをずっと深く理解している。
カードの組み合わせから何を得られるかを解読するのにかかる時間はずっと短くなった。マジックというゲームがどう機能するかにおいて公式大会の影響は無視できなくなった。バランスを欠いたセットで楽しめる環境ではなくなった。
アルファ版がもし今そのまま発売されたとしても、プレイヤーたちがそれを楽しむことはとても難しいだろうね。
在りし日からの変化を嘆くタイプ1プレイヤーは、今やマジックは9年前のマジックとは違うゲームなのだということを理解すべきだ。そしてそれは悪いことじゃない。幼かった子供は成熟し、それによってまた新たな面を見せてくれているのだからね。
それに私は決して在りし日のマジックを忘れろと言っているわけじゃない。マジックの歴史はマジックを構成する重要な側面の1つだ。
このゲームの最も熱心な歴史研究家の1人として(そしてトリビア好きの1人として)、ゲームの素晴らしい歴史をまだそれを知らぬプレイヤーたちに共有していきたいと思っている。
ただそれはあくまで思い出話としてあるべきものなんだ。
タイプ1の楽しさは、過去を現在とつなぐことができる点にある。子供の成長の過程を順繰りに懐かしく思い出すことができる。しかし子供は成長し、変わっていく。その変化を否定することは、その子自身を否定することにほかならない。
「なぜタイプ1向けのカードをデザインしないんですか?」
この質問に対する回答は、私がタイプ1のメタゲームを追わない理由と深く関係している。タイプ1のメタゲームに影響を与えるために私がデザインの分野で出来ることはほとんどない。何しろ新たなセットがリリースされるごとにタイプ1のパワーレベルは上がっていくんだ。
これが何を意味するかというと、セットがリリースされるごとに「タイプ1に影響を与えつつスタンダードのバランスを崩さないようなカードをデザインすること」はより難しくなっていくということだ。
デザインすることが不可能とは言ってない。しかし私が割けるリソースにも限りがあり、何に注力するべきかは選ばなければいけないんだ。
例えばスタンダードのメタゲームに関する情報は、ゲームの舵をどちらに向けるべきかの助けになる。特定のブロック構築環境を精査して得られる情報は、未来のブロックのデザインに大きな影響を与えるものだ。
繰り返すが、タイプ1と親和性を持てるように私のデザイン力を高めることもできなくはない。ただそれには君たちの助けが必要だ。
単刀直入に言おう。
現在のタイプ1に欠けているものが何か? 現在のタイプ1をかき回してくれそうな、かつ現実的に作成可能なカードとはどのような感じなのか? 君たちの考えをメールで教えて欲しい。
おっと念のために書いておこう。決して「こういうカードはどうですか」という個々のカードの意見を求めているわけではない。タイプ1により良い影響を与えるために私が掘り下げるべきエリアが知りたいんだ。
タイプ1の未来に君の足跡を残したくはないか? 今がそのときだよ。
タイプ1という環境は1つの記事で扱うにはあまりに大きすぎるネタだったが、全力は尽くした。君たちも記事を読む前よりはタイプ1を変えるために何が出来るかが見えてきたんじゃないかな。改善する余地のある事柄、そして議論の余地のない事柄を君たちに示せたつもりだ。
それにもちろん私のメールボックスの門戸は常に開かれている。タイプ1に関することで(もしくは関しないことでも)何か伝えたいことがあればいつでもメールを送ってくれ。常々言っているように、すべてに返信することはできないが、必ずや全てのメールに目を通すことを約束しよう。
最後は2つの前向きな話題で締めたいと思う。1つ目として、タイプ1に関する記事が少なすぎるという皆からの意見については私も同意だ。どうすれば公式サイトにタイプ1関連の記事を増やしていけるのかを考えたい。
2つ目として、以前からウィザーズ主催によるタイプ1の選手権(Type 1 Championship)を年1回で開催してみてはどうか、という議論があった。これがどれだけのプレイヤーの興味を引けるのか、皆からアンケートをとりたい。ぜひ回答してくれ(註)。
さて、今週はここまでだ。来週は私の好きなクリーチャータイプについて語ろうと思う。ヒントは《樫の力/Might of oaks》に何のイラストを描いて欲しいかの指示を出したのが私だということだ(註)。楽しみにしていてくれ。
それまで、君の初手に《Black Lotus》が来るよう祈ってるよ。
Mark Rosewater
2002年07月15日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/playing-type-1-2002-07-15
先月のコラムでは皆から送られてきたメールに対して私から色々と回答させてもらった。さてその中で、開発部がタイプ1(註)を今後どう扱うつもりなのかについて知りたい、というメールを取り上げた。
(註) タイプ1
使えるカードが最近発売されてまだ手に入りやすいセットに限定されるスタンダードというフォーマットに対して、過去からの全てのセットとカードが使用可能というフォーマットがタイプ1(例外的にいくつか禁止カードはある)。
これに対しネットのタイプ1好きのコミュニティからは非常に大きな反響があった。それはあまりに大きかったので、こうして1つの記事にするに十分なトピックに思われたんだ。
今日の記事の目的は大きく分けて2つだ。
1つ目として、皆からもらった質問のうち、開発部がタイプ1をどうしたいと考えているかという問いに答えたいと思う。次に、タイプ1を遊んでいるプレイヤーたちから挙げられた現状の課題を1つずつこの記事で皆と共有し、それにどう対処すべきかをオープンに議論したいと考えている。
(訳注) 原文ではこの箇所に「Jon Finkel plays Type 1 at the Syndey Magic Invitational.(シドニーのインビテーショナルでタイプ1をプレイする John Finkel)」と書いてある。おそらく元々の掲載時には写真が貼られていたと思われる。
さて、先に進む前に前もって伝えておくことがある。私自身はもう何年もタイプ1をプレイしていない。つまり私はタイプ1のメタゲームをほとんど把握していない。
つい最近の全米選手権で、私はタイプ1の現状のメタゲームについてプロプレイヤーに話を聞く機会があった(気になる人もいるかもしれないから付記しておくとそのプレイヤーとは Pat Chapin だ。タイプ1というフォーマットに詳しいプレイヤーの1人と考えて間違いないだろうね)
前回の記事で私が述べたタイプ1に関する言葉はこのときの話をソースとしている。勘違いさせたようで申し訳ない。
今日は、現状のメタゲームを把握しているつもりだ、などとは絶対に言わないことを約束しよう。知ったかぶりで書いたりすれば大量の批判にさらされることは確実だからね。
ときには昔の話をしようか
タイプ1に関する懸念点について話をしようとするのであれば、まずはこのフォーマットの歴史について学んでおく必要がある。
用意がいいことに、ここにある時間逆行装置の目盛りはすでに1994年の前半にセットしてある。なんで1994年の前半なのかって? なぜならそれこそがタイプ1の生まれたときだからさ。
1994年以前のマジックにはデッキ構築に関する公式ルールが存在しなかった……え? そんなことないって? ごめんごめん、説明が間違っていたね。
確かに製品にルールブックが付属しており、そこには「公式ルール」が記載されていた。しかしそのルールにはデッキに同じカードを何枚まで入れてよいかという制限はなかったし、デッキ枚数は40枚以上であるべし、ということになっていた。
その後、1993年の終わりごろに「Duelist Convocation」という組織が作られた(興味のある人のために付記しておくと、この組織こそが現在のDCIの前身だ。そう、DCIの「DC」はこれが由来だ。ちなみにDCIの「I」は「International」の頭文字から来ている)
1994年の冬に Duelist Convocation が起こした活動の1つが、デッキ構築に関する公式ルールの発表だ。
当時、熱心なマジックプレイヤーたちは独自にルールを作りそれを共有して遊んでいたが、それらは地域によって異なるもので統一はされていなかった。
統一された構築済みフォーマットのデッキ構築ルールを初めて制定したのが Duelist Convocation だった。
デッキの最少枚数は60枚と定められ、同一カードはデッキに4枚までと定められた。そして最初の制限カードリスト(訳注:デッキに1枚までしか入れられないカード)が発表された。
当時はまだ禁止カードは存在しなかった。こうして初めての構築済みフォーマットが生まれた(ちなみに限定構築フォーマットであるシールド戦やブースタードラフトという遊び方は、非公式ではあったが多くのイベントでウィザーズオブザコースト社の社員によってすでに紹介されていた)
ただ生まれた当時、このフォーマットの名前はタイプ1ではなかった。マジック構築(Magic Constructed)と呼ばれていた。もしくは縮めて、単に Magic と呼ばれていた。最初の1年間はそれで何の問題もなかった。
しかし1年後の1995年の冬、ある非常に重要な出来事が起きた。ウィザーズオブザコースト社は、タイプ2と呼ばれる新たなフォーマットを発表したんだ(現在のスタンダードだね)。
好きなカードを使えるのではなく、特定のセットに限定されたカード群の中からデッキを構築しなくてはいけなくなったんだ。それに伴い、すでに存在していたフォーマットはタイプ1と呼ばれるようになった。
一夜にしてマジックの世界は2つに分かたれた。それに対する大半のプレイヤーたちの反応はいかばかりであっただろうか?
私たちにはとても受け入れられなかったね。自分で持っているカードを使えないだなんて、なんでウィザーズにそんなことを決められなければいけないのか、とね(念のため。当時の私は普通のプレイヤー側の立場だ……ウィザーズの社員ではなくね)
しかしウィザーズは方針を曲げなかった。そこで私たちプレイヤーもそれに従おうと努力した。正しく言えば、私たちプレイヤーの一部もそれに従おうと努力した。
その他のプレイヤーたちはタイプ1で遊び続けた。それでどうなったか? いや、これがそれなりに上手く回ったんだ。確かにそれまでとは変わってしまったが、これはこれで面白かった。
開発部がカードパワーの調整を学び始めたことで、タイプ2は多少大人しめなゲーム展開となった。それも悪くない、と思う一派もいた。
ところが、こんなのは私たちの愛するマジックではない、と思う一派もこれまたいたわけだ。こうしてマジックの歴史における最初のプレイヤー間の分裂が始まった。
そして時間が流れ、新たなフォーマットが次々と生じていった。
タイプ1とタイプ2の隔たりがあまりに大きくなり過ぎたことで、それらを埋めるためのタイプ1.5(ほぼタイプ1だが、タイプ1の制限カードが禁止カードとして扱われるフォーマット)が作られた。新たな分裂だ。
しかしタイプ1とタイプ2の隔たりはさらに広がり、そこに中間的なフォーマットを作る余地が生じた。こうして生まれたフォーマットがエクステンデッドだ。
また新たな分裂だ。
それと並行してリミテッド(開封したカードプールでそのままプレイするシールド、開封したカードプールから各プレイヤーが1枚ずつピックしていくドラフト)の世界にも変化があった。新たなプロツアーの誕生に伴い、それらも公式フォーマットに加わったのだ。
さらなる分裂だ。
1997年のプロツアーパリで登場したのは、これまたまったく新しいフォーマットであるブロック限定構築……というわけで、こうしてマジックプレイヤーという地図の境界線は1本また1本と増えていったんだ。
かつて1つのゲームだったはずのマジックは今や8つとなっていた(タイプ1、タイプ1.5、エクステンデッド、スタンダード(タイプ2)、ブロック構築、シールド、ブースタードラフト、ロチェスタードラフト)。ちなみに私はまだチーム戦について触れていない。
時計の針を現在に戻そう。
タイプ1は今なお滅びずに存続しているが、当時の隆盛は見る影もない。今はただ、少ないながらも敬虔な信徒を従えるのみだ。
一難去ってまた一難
最初に約束したとおり、私はこの記事でタイプ1のプレイヤーたちから送られてきた質問に答えたいと考えている。
念のため付け加えておこう。この記事において私が説明したいのは主に2つだ。
私たちが下してきた様々な決定がなぜなされてきたのかその背景を明らかにすること、そして、状況を改善するための対話を持つに際してどういった制限が課せられているのかを説明することだ。
それでは君たちからの質問を取り上げていこう。
「なぜタイプ1の大会がほとんど開かれないのですか? また、規模の大きいタイプ1の大会がほとんど開かれないのはなぜですか?」
初めに強調したいのは、この問題は開発部側の問題というよりどちらかといえば公式大会(Organized Play)の問題だということだ。しかしその上で、私の出来る限りの回答をしたいと思う。
法人としてのウィザーズオブザコースト社がマジックのプロモーションに割けるリソースは限られている。
おっと、説明が前後してしまうが、ここで私が用いる「タイプ1」という言葉が何を指すのかを明確にしておこう。
私がここで取り上げているタイプ1は「公式大会のフォーマットとしてのタイプ1」だ。
多くのプレイヤーにとって、タイプ1とは非公式のカジュアルなマジックを指す。タイプ1の禁止カードや制限カードを参照しつつも例外的に使用を認めたり、どんな古いカードでも(《サリッド/Thallid》でも《黒き剣のダッコン/Dakkon Blackblade》でも)使って良かったりする、そんなフォーマットを指してタイプ1と呼ぶ。もちろんそういうマジックを素晴らしいと思うし、そういうフォーマットでのプレイを私自身も楽しんだりしている。
しかし公式な意味でのタイプ1とそれに対するサポートの話となると、公式大会に関するものになる。そこに顔を出すのは並外れたパワーを持つカードたちだけだ。このことをまず頭に入れておいて欲しい。
さて、数あるフォーマットの中でどのフォーマットに注力するか、どこに多くリソースを割くか、それらを決定する際に特に注視する点は2つだ。1つは【人気度(Popularity)】、もう1つは【入手し易さ(Accessibility)】だ。
【人気度(Popularity)】
1つ目は人気度(Popularity)だ。いざというときに意思決定を最も大きく左右するのは「プレイヤーたちは何をプレイしたいんだろうか」だからだ。
もし「このフォーマットで遊びたい!」という君たちの声があれば、私たちもそれに応えるべく動くということだ。結局のところ、私たちは君たちに、つまりはプレイヤー全体にゲームを楽しんで欲しいと考えており、タイプ1(およびタイプ1.5)の話には、この1つ目の点が大きく作用してくる。
正直に言おう。私たちの集めたデータによるとタイプ1はそれほど人気のあるフォーマットではない。
私たちは毎年いくつの認定大会が開かれているかの記録をつけている。大会は大きく3つのカテゴリに分けて集計される。① 構築(スタンダード、エクステンデッド、ブロック構築)、② リミテッド(シールド、ロチェスタードラフト、ブースタードラフト)、そして ③ ヴィンテージ(タイプ1、タイプ1.5)の3つだ。
以下が、過去5年間の大会数だ(なお数字は1000単位で丸めてある)
年度 *1997 *1998 *1999 *2000 *2001
─────────────────────
① 11000 20000 20000 33000 47000
② *9000 19000 24000 31000 42000
③ *4000 *3000 *2000 *3000 *3000
(訳注:各所に挟まっている * は桁数をそろえるためのもの)
それぞれ①~③が各年度でどれだけの割合を占めているかを年度順に並べていくと「① 構築:46%、48%、43%、49%、51%」、「② リミテッド:38%、45%、52%、47%、46%」、「③ ヴィンテージ:17%、7%、4%、4%、3%」となる。
ヴィンテージの大会数は占める割合が他に比べて小さいというだけでなく、その占める割合自体も年度を経るにつれて徐々に小さくなっているのが分かると思う(公平性の観点から付け加えておくと、このフォーマットに対する私たちからのサポートの少なさもまた減少要因の1つではあるが)
そしてこの人気度という因子はタイプ1が抱える最も大きな障害であり……同時にタイプ1にとってのチャンスでもある。アンタップ状態のヴィンテージプレイヤー諸君。もしいるなら、ぜひ私たちに対して行動を起こして欲しい。
地元の大会運営者に「タイプ1やタイプ1.5の認定大会を開いて欲しい」と頼むんだ。非公式のプレイでいくらタイプ1を遊んでもらっても私たちには響かない。
タイプ1の大会数のデータが増加を示せば、私たちにもこのフォーマットに確かなポテンシャルがあることが伝わるだろう。
どう遊んでいるか、を伝えてくれることには意味がある。しかし、実際に遊んでいることを伝えてくれるのにはそれ以上の意味があるんだ。
【入手し易さ(Accessibility)】
2つ目は入手し易さ(Accessibility)、つまりそのフォーマットを始めるのがどれだけ容易かだ。ゲームを始めるのに必要なものとしては大きく分けて4つある。時間、対戦相手と対戦場所、お金、そしてカードだ。
最初の2つに関して言えば、タイプ1のハードルは比較的低い。1ゲームにかかる時間はそれほど長くないし、対戦相手も1人で済む。
しかし3つ目と4つ目のハードルはかなり高い。
おそらくカードの金額でいえば全てのフォーマットの中で最も高額と言えるだろう(念のため。戦略的に重要なカードの話をしている)。カード1枚で数百ドルかかることすら珍しくない。
さらにそれらのカードは刷られた枚数自体も限られており、手に入る地域も限られている。つまり多くのプレイヤーにとって手に入れること自体が不可能に近いということだ。
(訳注) 原文ではこの箇所に「According to the latest issue of InQuest, the median value for these three cards combined is a whopping $950.00 US.(InQuestという雑誌の最新の記事によると、これらカード3枚の合計額の中央値はなんと950ドルだそうだ。)」と書いてある。おそらく元々の掲載時には高額なカードが3枚紹介されていたと思われる。
毎年のマジックインビテーショナルの大会で、私はタイプ1相当のフォーマットで大会を開催している。つまり古いカードでも一律全て使用可能なフォーマットだ(もっと今年のインビテーショナルでは開催できないだろう。今年はマジックオンライン上で開かれるからね)。
開催するたびに多くのプレイヤーから聞かされる不満は、これらのカードがいかに手に入れづらいかということだ。インビテーショナルに参加しているのはプロプレイヤーたちだ。つまり普通のプレイヤーよりもカードに触れる機会が多く、つぎ込む予算も大きいプレイヤーたちだ。
そのプレイヤーたちが問題と感じているということは、一般のプレイヤーたちにとってはさらに困難に違いない。
証拠とするにはいまいち具体性に欠けるかもしれないが、いずれにせよタイプ1が気軽に飛び込めるフォーマットではないことを示してはいる。俗にいう「敷居が高い」というやつだ。
大きいものとしてこれら2つの理由(お金とカード)により、タイプ1というフォーマットを全世界的なイベント(全世界から参加者を募るような規模の大会で、という意味)で採用することは難しい。
つまり、タイプ1の「プロツアー」は言うに及ばず、タイプ1の「グランプリ」の開催すら現実的ではないということだ。
大規模なタイプ1の大会が絶対に開けないと言っているわけではない。しかし、かなりの数のヴィンテージプレイヤーたちがいることを示せる地域でなければ実現は難しいだろう。
まとめると、タイプ1の大会が開かれない理由は、マジックプレイヤー全体(public as a whole)として見た場合にタイプ1を求めているという証拠(evidence)が得られないためだ。
逆に言えば、もし求めているのであれば、ぜひそれを見える形でデータとして示して欲しい。タイプ1の認定大会がもっとプレイされることで、私たちもタイプ1により注意を払うようになる。
とはいえ、プロツアーとグランプリに限っていえば、入手しづらさに加えて高額すぎるという現状がある限り、国際的な大会のフォーマットにタイプ1が用いられる可能性は低いと言わざるを得ない。
しかし、これまた言い換えれば、プロツアーやグランプリ以外の形式にこそタイプ1の可能性があるということだ。そしてそれらの形式の大会をいかに現在タイプ1が多く遊ばれている地域で開催できるかがカギだ。
「なぜカードを再版しないのですか? なぜプロキシ(代用カード)は許可されないのですか?」
前述にあげたように、タイプ1の普及の難しさの1つは値段にある、という説明に対して返ってくる反応は主に4つだ。1つ目としては私たちに同意してくれる声だ。まあこれに関して説明はいらないだろう。
2つ目として、タイプ1はプレイするのにそれほど高額ではない、という声だ。しかしこれは事実ではない。主要なタイプ1のデッキリストをかき集め、雑誌で紹介されているシングルカード価格でデッキの総額を算出し、デッキ当たりの総額を示してもいいが、結果はすでに分かりきっている。
この記事で私は君たちに正直でありたい。だから君たちもまた正直に答えて欲しい。タイプ1は高額なフォーマットか否か。もしあるプレイヤーが、よし明日からタイプ1を遊ぼう、と思ったときに貯金箱を叩き割る必要があるのかどうか。ある。これは事実だ。
3つ目として、この問題はウィザーズ社が作った「一部のカードに関しては絶対に再版しないというルール(再版ポリシー)」を破棄すればそれで解決する、という声だ。タイプ1で必須とされる高額カードを再版すれば済む話だと。
これはなかなかデリケートな問題だ。だからこそ、結論から言おう。
再版ポリシーがなぜ存在するか。それは非常に重要な理由からだ。
マジックはカードゲームであると同時にトレーディングカードでもある。ウィザーズオブザコースト社は、カードゲームとしてだけではなくトレーディングカードでもあるという約束事のもとでマジックを市場に売っている。多くの人々がすでに何千ドルとこのゲームに投資してくれているのは、私たちがポリシーを守ると信じているからだ。
私のが「Making Magic」という記事を書いているのは、マジックというゲームは様々な人たちのために存在していることを知ってもらうためでもある。これは私の記事の重要なテーマの1つだ。
その「様々な人たち」の中には、所持しているカードの価値を非常に重要視しているグループもいる(ちなみに割合として見たときに全体の中で決して少なくはない)。
私たちはこのグループの人たちにも責任がある。その責任において、特定のカードの再版はできない。これは交渉によってどうにかなる話ではない。
ただそれはそれとして再版可能な古いカードも多くある。トーメントとジャッジメントを見てもらえば分かるように、開発部も絶版となった古いカードを世に戻そうと努力している。
開発部もまたマジックというゲームが大好きだからだ。
開発部にはマジックが発売された当時から遊んでるプレイヤーもたくさんいる。中には世に出る前からマジックをプレイしているメンバーすらいる。つまり私たちもまた過去のマジックを今のプレイヤーたちと共有したいと思ってはいる。
しかし、それでもなお越えてはならない一線が確かにある。
そして金額的なハードルに対してよくある4つ目の反応として、プロキシ(代用カード)さえ認めてくれれば解決する、というプレイヤーたちの声がある。
回答はシンプルだ。
マジックは以下の2つのために存在している。
その1。マジックは偉大なるゲームだ。個人的には最高のゲームだ。そして開発部は純粋なゲーム好きの集団としてもそれを存続させる義務がある。
その2。マジックはウィザーズ社およびその親会社ハスブロの製品であり収益源だ。この2つ目をなくして1つ目は意味をなさない。
もし私たちがプロキシを認めたら、行きつく先は望まぬ終着点だ。多大なる混乱が待っているだろう。シングルカード市場への影響もある(この分野も私たちは気にかけているよ。ただ今日は掘り下げるのはやめておこう)
しかし何より問題なのは、プレイヤーの購買量がただちに減少することだ。それは私たちにとって望ましい事態ではないし、長期的な視野にたてば、君たちにとっても望ましい事態ではない。
収入が減るということは、ゲームにつぎ込める予算が減るということであり、大会の開催や公式サイトに費やせるお金が減るということだ。私はいつも「ゲーム会社」の「ゲーム」の部分についてばかり語っているが、実際のところ「会社」の部分も同じくらい重要だ。
まとめると、タイプ1のカードを再版すること、およびプロキシを認めること、これら2つはいずれもウィザーズ社の特定の面を直撃する。
私は今日の記事でオープンに議論したい、と書いた。他の分野については議論の場を設けることが出来る。しかしこれら2つについては無理だ。再版とプロキシに関しては議論の余地がない。
「なぜあなた方はリチャード・ガーフィールドが思い描いた未来から遠ざかろうとしているのですか?」
私はこれに類する苦言を本当に何度となく聞いてきたので、手っ取り早く解決することにした。答えを知っているであろう人物に直接聞いてきたよ。
「リチャード、開発部は君の思い描いた方向から外れていってるかい?」
「いいや?」
マジックは常に進化を続けるゲームとしてデザインされた、未踏の地を歩み続けるゲームだ。他の伝統的なゲームと一線を画する点は、変幻し続けるメタゲームがプレイヤーに新たなる適応を求め続ける点だ。今日、君が学んだ戦術は、明日には役に立たないかもしれない。
この揺らぎがゲームを常に目新しいものにしてくれる。だがそれは同時に、マジックは過去の常識を置き去りにし続けるようデザインされたゲームであることを示している。
問題は、プレイヤーが変化を好まないことだ。人間は習慣の生き物であり、根本的に変化を避ける生き物でもある。
絶え間ない変化を続けるゲームにおいては、特定のプレイヤーが好む側面から遠ざかる瞬間があることは避けられず、またそのことに傷つくプレイヤーがいることも避けられない。
開発部では広く知られている格言の1つに「プレイヤーは常に最初に遊んだセットを好む」がある。最初に触れたセットは必ずそのプレイヤーにとって特別なセットだ。
マジックの魔法に初めて触れた瞬間だからね。
そして多くのタイプ1プレイヤーにとって、それはアルファ版だ。
私の考えでは、タイプ1プレイヤーは誤った認識からアルファ版を優れたものだと信じているように思われる。
リチャード・ガーフィールドはデザイナーとして素晴らしい決断をいくつも下し、何枚もの素晴らしいカードが生まれた。それは事実だ。アルファ版には多くのパワーカードが含まれている。それも事実だ。しかしそれを持ってしてアルファ版は素晴らしいのか?
いいや、そうではない。アルファ版の素晴らしい点は個々のカードにあるのではない。リチャード・ガーフィールドがそこで表現した全体像そのものが素晴らしいんだ。
個々のカードごとにリチャードが選択した何かではない。ゲーム全体の持つ柔軟性、それによってデザイナーたちが常に異なる選択をし続けることができるという点なんだ。
アルファ版が持つ美しさとはこのゲームの持つ哲学そのものだ。アルファ版と(もしくはレジェンド、リバイズドなどなど君の好きなセットと)イマイチ違うから、という理由で昨今のセットを拒絶すること、それ自体がリチャード・ガーフィールドの思い描いた未来から外れることだ。
マジックは生き物だ。今まさに目の前で成長を続ける子供だ。去年までの赤ん坊の姿と見た目が違うからという理由で突き放すべきじゃない。
私はデザイナーとして過去から学ぶことを強いられている。過去の成功を、そして過去の失敗をだ。その上で、異端者となじられる覚悟で言うが、アルファ版は決して完璧ではない。欠点だっていくつもある。
これを最初に認めたのはリチャード・ガーフィールド自身だ。
当初のルールにはチーズみたいに大量の穴がある。フレイバーとまったく沿っていないカードもある。過去に存在したどのセットよりもカードパワーはアンバランスだ。じゃあこれらの欠点が理由でアルファ版は駄作と言えるのか? もちろんそんなことはない。
アメリカ合衆国憲法だって素晴らしい文書だが完全ではない。
今では多くの人が、奴隷だからという理由でその人が他の人の60%の価値しかないなどとは思わないし、裕福な地主の白人男性しか選挙権を持つべきでないなどとは思わない。しかしそれでもなお、偉大なる理想を示そうとした合衆国憲法が色あせることはないんだ。
そもそもリチャード・ガーフィールドが当初想定していたプレイ環境から現実が大きく乖離してしまった、ということは記しておくべきだろうね。
当初の想定では、プレイヤー1人当たりブースター15個くらいしか購入しないだろうと考えられていたし、カードのトレードも身内のグループ内でしか行われないだろうと思われていた。
もしこの想定が正しかったなら、《Ancestral Recall》や《Mox Sapphire》といったカードも問題のあるカードとはみなされなかっただろう。
勘違いしないで欲しいが、私はアルファ版を愛している。私が最初に触れたセットであり、最高のセットを決めるなら常に上位に来るにふさわしいセットだ。しかし完璧ではない。完璧だと信じるがゆえにそれが最高だと考えているならば目を覚ますべきだ。
ただ同時に1つ言っておこう。もし私がタイムマシンでアルファ版が生まれた時代に戻り、カードを好きに変更できる権利を得たとしよう。どうするか? 何一つ変更しないだろうね。
なぜか?
なぜならアルファ版はマジックというゲームが生まれた瞬間にあるべき姿だったからだ。まとまりがなく、混沌としていて、たまらなく楽しいセットだった。当時のマジックに関する思い出は最高に楽しいものばかりだ。
しかし現在のマジックは1993年のマジックではない。マジックのプレイヤーたちは知識を付けた。マジックというゲームをずっと深く理解している。
カードの組み合わせから何を得られるかを解読するのにかかる時間はずっと短くなった。マジックというゲームがどう機能するかにおいて公式大会の影響は無視できなくなった。バランスを欠いたセットで楽しめる環境ではなくなった。
アルファ版がもし今そのまま発売されたとしても、プレイヤーたちがそれを楽しむことはとても難しいだろうね。
在りし日からの変化を嘆くタイプ1プレイヤーは、今やマジックは9年前のマジックとは違うゲームなのだということを理解すべきだ。そしてそれは悪いことじゃない。幼かった子供は成熟し、それによってまた新たな面を見せてくれているのだからね。
それに私は決して在りし日のマジックを忘れろと言っているわけじゃない。マジックの歴史はマジックを構成する重要な側面の1つだ。
このゲームの最も熱心な歴史研究家の1人として(そしてトリビア好きの1人として)、ゲームの素晴らしい歴史をまだそれを知らぬプレイヤーたちに共有していきたいと思っている。
ただそれはあくまで思い出話としてあるべきものなんだ。
タイプ1の楽しさは、過去を現在とつなぐことができる点にある。子供の成長の過程を順繰りに懐かしく思い出すことができる。しかし子供は成長し、変わっていく。その変化を否定することは、その子自身を否定することにほかならない。
「なぜタイプ1向けのカードをデザインしないんですか?」
この質問に対する回答は、私がタイプ1のメタゲームを追わない理由と深く関係している。タイプ1のメタゲームに影響を与えるために私がデザインの分野で出来ることはほとんどない。何しろ新たなセットがリリースされるごとにタイプ1のパワーレベルは上がっていくんだ。
(訳注) 原文ではこの箇所に「Competitive Type 1 matches resemble rogues galleries of the most powerful cards in the game’s history.(公認大会で結果を残すタイプ1デッキのリストと過去に存在したぶっ壊れカードのリストの2つに大した違いはない。)」と書いてある。おそらく元々の掲載時にはタイプ1のパワーカードが紹介されていたものと思われる。
これが何を意味するかというと、セットがリリースされるごとに「タイプ1に影響を与えつつスタンダードのバランスを崩さないようなカードをデザインすること」はより難しくなっていくということだ。
デザインすることが不可能とは言ってない。しかし私が割けるリソースにも限りがあり、何に注力するべきかは選ばなければいけないんだ。
例えばスタンダードのメタゲームに関する情報は、ゲームの舵をどちらに向けるべきかの助けになる。特定のブロック構築環境を精査して得られる情報は、未来のブロックのデザインに大きな影響を与えるものだ。
繰り返すが、タイプ1と親和性を持てるように私のデザイン力を高めることもできなくはない。ただそれには君たちの助けが必要だ。
単刀直入に言おう。
現在のタイプ1に欠けているものが何か? 現在のタイプ1をかき回してくれそうな、かつ現実的に作成可能なカードとはどのような感じなのか? 君たちの考えをメールで教えて欲しい。
おっと念のために書いておこう。決して「こういうカードはどうですか」という個々のカードの意見を求めているわけではない。タイプ1により良い影響を与えるために私が掘り下げるべきエリアが知りたいんだ。
タイプ1の未来に君の足跡を残したくはないか? 今がそのときだよ。
タイプ1という環境は1つの記事で扱うにはあまりに大きすぎるネタだったが、全力は尽くした。君たちも記事を読む前よりはタイプ1を変えるために何が出来るかが見えてきたんじゃないかな。改善する余地のある事柄、そして議論の余地のない事柄を君たちに示せたつもりだ。
それにもちろん私のメールボックスの門戸は常に開かれている。タイプ1に関することで(もしくは関しないことでも)何か伝えたいことがあればいつでもメールを送ってくれ。常々言っているように、すべてに返信することはできないが、必ずや全てのメールに目を通すことを約束しよう。
最後は2つの前向きな話題で締めたいと思う。1つ目として、タイプ1に関する記事が少なすぎるという皆からの意見については私も同意だ。どうすれば公式サイトにタイプ1関連の記事を増やしていけるのかを考えたい。
2つ目として、以前からウィザーズ主催によるタイプ1の選手権(Type 1 Championship)を年1回で開催してみてはどうか、という議論があった。これがどれだけのプレイヤーの興味を引けるのか、皆からアンケートをとりたい。ぜひ回答してくれ(註)。
さて、今週はここまでだ。来週は私の好きなクリーチャータイプについて語ろうと思う。ヒントは《樫の力/Might of oaks》に何のイラストを描いて欲しいかの指示を出したのが私だということだ(註)。楽しみにしていてくれ。
それまで、君の初手に《Black Lotus》が来るよう祈ってるよ。
(註) アンケート
次週のコラムの冒頭でアンケート結果が紹介されていた。アンケート結果に関連する箇所だけ以下に紹介しておく。
Squirrel of My Dreams
原文URL:http://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/squirrel-my-dreams-2002-07-22
さて面白おかしいリスの世界に飛び込む前に、先週の話題の続きだ。まず最初にアンケート結果をお見せしよう。先週、タイプ1選手権(Type 1 Championship)に興味があるかどうかを聞いてみたが、結果は圧倒的な「はい」だった。
問い:タイプ1選手権を開催すべきか?
はい 3,428票 75.6%
いいえ 1,106票 24.4%
計:4,534票
公式大会の運営はタイプ1選手権の開催を約束してくれた。会場は来年のオリジンコンベンションとなる予定だ。
さらに、運営は今年のシドニーでの世界選手権でタイプ1のサイドイベントを開催することも約束してくれた。しかも今年に限らず今後のプロツアーでもタイプ1のサイドイベントが開催されるそうだ。
さらにさらに、公式サイトのSideboardもタイプ1の競技マジックに関する記事を定期的に掲載してくれると約束してくれた。タイプ1の記事を楽しみにしていてくれ。
また、先週以降、タイプ1を憂慮するメールを大量にもらった。多くの投稿が(もちろん約束通り全てに目を通してるよ)、このフォーマットに対するプレイヤーたちの熱狂を強く訴えかけてきていた。
それに加えて、タイプ1のためにどんなデザインの余地が残されているかについてたくさんの良いアイデアをもらえた。いくつかについてはさっそく次のセットであるベーコン(2003年の秋に発売予定のセットの仮名)に使えないか検討中だ。