【翻訳】戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War【Daily MTG】
Tom LaPille
2011年03月18日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/134
Multiverseと呼ばれるマジックのセットを制作するのに用いられている意見交換用のデータベースがあり、このデータベースに残されたコメントを元に最新のデベロップメントに関する記事を書く、という由緒正しい伝統がウィザーズには存在する。
ウィザーズ社に入社する以前は読者としてこれらの記事を楽しませてもらっていたし、今やそれらを書く側となったことを私は楽しんでいる。君たちの多くもこれらの記事を楽しんでくれていると思う。
私がミラディンの傷跡に関するMultiverseの記事を書いてないことに誰か気づいたかもしれない。
書けなかった理由は、Mutliverseのミラディンの傷跡に関するファイルには、記事にするだけの面白おかしいネタが見つからなかったからだ。しかし幸いなことにミラディン包囲戦には話したくなるようなネタがたんまりとあった。
さあ、始めようか。
その前に、コメント読むのに必要な情報をいつものように以下へ記しておくよ。
Aaron Forsythe:
マジック・R&Dディレクター
Alexis Janson:
第1回 Great Designer Search(註)の優勝者
Doug Beyer:
マジック・クリエイティブ・デザイナー
Del Laugel:
マジック・シニア・エディター
Erik Lauer:
ミラディン包囲戦、リード・デベロッパー
Ken Nagle:
マジック・デザイナー
Mike Turian:
ミラディン包囲戦、デベロッパー
Mark Rosewater:
マジック・ヘッド・デザイナー
Tom LaPille:
私だ!
Ryan Miller:
デュエルマスターズ・デザイナー
Steve Warner:
デュエルマスターズ・デザイナー 兼 マジック・プレイテスター
Zac Hill:
ミラディン包囲戦、デベロッパー
さて、Multiverseの探訪の旅を楽しんでもらえただろうか。
私は次のセットであるAction(仮名)のデベロップメントに参加しているが、今回のような記事の1つや2つを書けるようなネタがたっぷり用意されている。
覚えている限りの今までのMultiverseのファイルの中でも特に多種多様なネタにあふれているから、これに関する記事を書くのが楽しみでしょうがない。
その記事を君たちも楽しんでくれるだろうと信じているよ。
Tom LaPille
2011年03月18日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/134
Multiverseと呼ばれるマジックのセットを制作するのに用いられている意見交換用のデータベースがあり、このデータベースに残されたコメントを元に最新のデベロップメントに関する記事を書く、という由緒正しい伝統がウィザーズには存在する。
ウィザーズ社に入社する以前は読者としてこれらの記事を楽しませてもらっていたし、今やそれらを書く側となったことを私は楽しんでいる。君たちの多くもこれらの記事を楽しんでくれていると思う。
私がミラディンの傷跡に関するMultiverseの記事を書いてないことに誰か気づいたかもしれない。
書けなかった理由は、Mutliverseのミラディンの傷跡に関するファイルには、記事にするだけの面白おかしいネタが見つからなかったからだ。しかし幸いなことにミラディン包囲戦には話したくなるようなネタがたんまりとあった。
さあ、始めようか。
その前に、コメント読むのに必要な情報をいつものように以下へ記しておくよ。
Aaron Forsythe:
マジック・R&Dディレクター
Alexis Janson:
第1回 Great Designer Search(註)の優勝者
Doug Beyer:
マジック・クリエイティブ・デザイナー
Del Laugel:
マジック・シニア・エディター
Erik Lauer:
ミラディン包囲戦、リード・デベロッパー
Ken Nagle:
マジック・デザイナー
Mike Turian:
ミラディン包囲戦、デベロッパー
Mark Rosewater:
マジック・ヘッド・デザイナー
Tom LaPille:
私だ!
Ryan Miller:
デュエルマスターズ・デザイナー
Steve Warner:
デュエルマスターズ・デザイナー 兼 マジック・プレイテスター
Zac Hill:
ミラディン包囲戦、デベロッパー
(註) Great Designer Search
2006年に行われたデザイナーの一般公募。このリストに載っているKen Nagleも最終予選まで勝ち抜いた3人のうちの1人。以下、このコンテストに関する記事(リンク先は英語)。episodeは1から7まである。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/designersearch/episode1
2010年10月に第2回が行われている。
第2回の2次試験の選択問題は日本の公式サイトにも載っている。
選択問題
http://archive.mtg-jp.com/reading/translated/010422/
Kemba’s Legion / ケンバの軍勢 (5)(白)(白)
クリーチャー - 猫(Cat) 兵士(Soldier)
警戒
ケンバの軍勢は、ケンバの軍勢につけられている装備品(Equipment)1つにつき、追加のクリーチャー1体をブロックできる。
4/6
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kemba%27s+Legion/Ken Nagle 3/12/2010:
《岩投げの小隊/Rockcaster Platoon》や《ナカティルの狩り群れ/Nacatl Hunt-Pride》みたいな、間抜けな白のデカいアンコモン野郎がまた1匹! やったね! (^▽^)
Aaron Forsythe 3/19/2010:
マジックのカードの中でも、こういうアンコモンのデカブツは特に好きだよ。
このカードや先輩に当たるカードたちについては以前にも記事で語ったことがある。《ルーアム・ジン/Ruham Djinn》、《岩投げの小隊/Rockcaster Platoon》、それに《歩哨の樫/Sentry Oak》などが同じジャンルに含まれる。私たちは基本的にこいつらが大好きだ。
ちょっと待って……Mike Turianが怒ってるぞ! みんな逃げろ!Mike Turian 3/23/2010:
じゃあなんで君たちは《ナカティルの狩り群れ/Nacatl Hunt-Pride》のとき、あんなに不満たらたらだったんだよ!?
最初、私はここで問題にされているカードが《ナカティルの戦群れ/Nacatl War-Pride》のことかと思った。
《ナカティルの戦群れ/Nacatl War-Pride》はなかなかにカッコいいカードなのだが、アンコモンとしては残念なことにルール的に複雑な点がいくつもあったからだ。
彼がここで問題にしている《ナカティルの狩り群れ/Nacatl Hunt-Pride》について、過去に何があったのかは私はよく知らない。
そのため推測することしか出来ないが、おそらく断片/Shardを表現するためのカードが自身でない色を起動コストとする能力を持つにも関わらず、その断片/Shardのメインカラーと自身の色が一致していないということを全メンバーが等しく納得していたわけではない、ということが原因ではないかと思う。
Mirran Crusader / ミラディンの十字軍 (1)(白)(白)
クリーチャー - 人間(Human) 騎士(Knight)
二段攻撃、プロテクション(黒)、プロテクション(緑)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mirran+Crusader/
包囲戦の対立を体現するために《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》的なカードを対で作ろう、というアイデアを最初に言い出したのが誰だったかは思い出せない。
何にせよそのアイデアは採用された。それらがどのような能力を持つべきかについては極めて明快だった。
感染/Infectが相手を殺すのに10点しかかからないとしたら、対となるべきは二段攻撃/Double Strikeに決まっている。
さてこれらのカードは存在を許されうるのか?
黒い片割れのテキストとそのプレイされた結果は満足のいくものだった。しかし、そのもう片方に関しては……?Zac Hill 02/01/2010:
分かったのはこいつが今までに存在したカードの中で特に酷いってことだ
Ken Nagle 01/19/2010:
こいつが出る前までは緑使うのも楽しかったのにな (´・ω・`)
Erik Lauer 01/22/2010:
だな。こいつはあからさまに酷すぎる。けど、もう少しテストしてみたい。警戒+先制攻撃のほうがいいかも。
Mike Turian 01/25/2010: (註)
ブロックするのは難しいかもしれないけど、巨大化する心配をしなくてよくなるのはいいニュースかもね
Erik Lauer 01/27/2010:
そいつは笑える!(註) Mike Turian
原文ではコメントした人の名前は略称で表されている。ここの略称は原文では「MJ」となっていたけど、参加者の一覧に「MJ」が略称のメンバーがいない。
Mで略称が始まるのは「MT(Mike Turian)」と「MR(Mark Rosewater)」のみ。記事内で一度も出てきていないのは「MT」なので「MJ」はおそらく「MT」タイプミスと推測した。
今までも私たちがカードの出来を確かめるのに使ってきた手法を試してみることにした。そう、今しばらくそのままでカードをプレイしてみることにしたのだ。
その結果、はっきりと示せる根拠があったわけではないが、このままでも大丈夫だろうということが徐々に分かってきた。
このカードは強いが、強すぎるということはない。Zac Hill 02/08/2010:
こいつは結局のところ世に出しても大丈夫だって俺の中の何かが囁いてるよ。
Steve Warner 02/10/2010:
こいつらが気に入った。もしかしたら白騎士と黒騎士のペアよりもみなの記憶に残るカードになるかもしれない。
もちろん、これでテスト完了なんてことにはしなかった。Zac Hill 02/16/2010:
緑がこれに対処するにはありえないようなコンボ決めるしかないぞ。
Erik Lauer 02/17/2010:
そうかな。赤がメインのデッキに対するプロテクション赤のほうがキツくない?
赤を散らした緑デッキは赤いクリーチャー除去を入れてることが多いけど、緑を散らした赤デッキはたいていの場合、緑のクリーチャー除去を入れてないでしょ。それとももしかして単色デッキに限った話?
Zac Hill 02/18/2010:
まず「その1:大抵の緑デッキは感染のために緑黒で組まれる」。だけど「その2:稲妻があれば問題なし」か。
気にしてたのはどっちかというと緑単色や緑白のサバイバルデッキだ。(註)
パラディンよりこいつが問題となのは、4点ってダメージに耐えられるクリーチャーがデッキにいないし、ブロックして生き延びるだけすら出来る奴がいない。
でも、まあ、今のままでいいとは思ってるけどね。(註) サバイバルデッキ
《適者生存/Survival of the Fittest》の能力を持つクリーチャー、《獣相のシャーマン/Fauna Shaman》を中心に据えたデッキの総称。
このカードをプレイすればするほど分かってきたのは、このカードには剣を装備させたい、ということだ。
《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》を装備させればさらなるプロテクションを得られるし、二段攻撃のおかげで剣の効果も2倍だ。
剣を帯びたこいつによって繰り出される極めて凶暴な攻撃を見たアーロンは、カードに変更の余地がないか調査するよう私たちに依頼を投げてきた。Aaron Forsythe 03/19/2010:
私にはインフレが行き過ぎているように思われる。装備品を身に付けたこいつは、楽しいと呼ぶには程遠い。
一段階弱めることはできないだろうか? アイデアとしては「その1:二段攻撃と感染を起動型能力にする」「その2:召喚コストを無色3点+有色1点にする」「その3:2/1にする」「その4:多色にする。赤白白と黒黒緑」。
パワーを変えずにバリエーションを増やしてみたんだが。
Erik Lauer 03/19/2010:
琴線に触れたのは2/1だね。
あとはプロテクション:アーティファクトを持たせて装備できなくするとかかな。だけどそれだとさらに強くなるだけかも。
Tom LaPille 3/19/2010:
タフネスを1にするがいいかな。
それでも十分に強いとは思う。ただ傷跡のPlague系カードで殺せるようになっちゃうけどね。ほかの選択肢はその場しのぎな感じがするな。
Erik Lauer 03/20/2010:
二段攻撃に起動コストがかかるのはいいと思うけど、感染が起動型になるのはちょっと気に食わないな(いや、感染はそのままで先制攻撃を起動型にしてもいいけど)
それからしばらくのあいだ、私たちはいくつかのプレイテストのセッションに集中して取り組んだ。
そのプレイテストで私たちは、私たちの生み出したバランスが正しいものだと証明するべく十字軍たちを最大限に活かせるデッキを十字軍抜きの最強デッキたち相手にプレイし続けた。
今時点、この証明は完了していない。しかし最終的に私たちは元々のバランスに問題はなかった、という判断を下した。
どちらの十字軍も構築を面白くしてくれるだろうと思っている。しかし環境を支配するほどに強すぎることもないだろう、とも。
私たちはこの意見書をアーロンへ提出し、彼はそれに満足した。今のところ、私たちは基本的に正しかったように思われる。Ken Nagle 03/21/2010:
不思議な感じだね。
ジョニー好きするような無害そのものの《Plague Vesicle》みたいなアーティファクトが色んなカードのパワーバランスを左右することになるなんてさ。
ここでKenのコメントに出てきた《Plague Vesicle》というのは今現在《伝染病の留め金/Contagion Clasp》と呼ばれているものだ。
私たちはこのカードを実際に今プレイされているよりもずっと高い頻度で用いていた。
私たちはプレインズウォーカーたちがより迅速に奥義へと到達させるべく増殖の効果を用いることを楽しんだが、その使い道においては私たちが思っていたよりも使い勝手の悪いカードだった。
私たちはスタンダード環境の未来をいつも的確に予想できるわけではないが、十字軍たちのケースに関しては上手く回っている。
White Sun’s Zenith / 白の太陽の頂点 (X)(白)(白)(白)
インスタント
白の2/2の猫(Cat)クリーチャー・トークンをX体戦場に出す。白の太陽の頂点をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/White+Sun%27s+Zenith/
開発が始まったばかりの頃、頂点/Zenithサイクルがファイルへ加えられたとき、それらはまとめてデザインされた。
そのうちの4枚は基本的に初期の状態のまま据え置かれたが、この1枚は違う。
最初、これは無色のトークンを生み出した。Erik Lauer 01/22/2010:
これと《清浄の名誉/Honor of the Pure》が入ってるTomの作ったデッキ使ってたんだけど、このカードが生み出すのって無色のトークンであって白じゃないんだね。
これ、合ってるの? 白・トークンとマイア・トークンはどっちもクリエイティブ的にはOKなの?
《白の太陽の頂点/White Sun’s Zenith》はトークンを生み出すカードにも関わらず、それは現環境でトークンと最も相性の良いはずの白いカードと上手く働かない。
ありがたいことに、クリエイティブからの返事はトークンを白にしてもよい、というものだった。ついでに、トークンは1/1か2/2のどちらかになるべきなのでそれも決めてくれ、とのことだった。Erik Lauer 01/27/2010:
Doug、決めたぜ! 白の2/2だ。猫の戦士は開発部の味方さ。
Doug Beyer 01/28/2010:
了解、回答ありがとう。確かSOMには2/2の白い猫トークン入りがいたはずだからちょうどいい(残念ながら単なる猫で無職だけどね)
このバージョンは最初、(X)(白)(白)のソーサリーだった。誰かが、ちょっとコストを上げてかわりにインスタントにできないか、というアイデアを出した。
また同時期にZac Hillが猫の祝祭(Cat Festival)というアイデアは最高だという結論に達していた。Zac Hill 02/01/2010:
猫の祝祭! いえーい!
Zac Hill 03/09/2010:
XWWWのインスタントでどうよ?
Erik Lauer 03/12/2010:
XWWのソーサリーから、XWWWのインスタント、と。
しかしErikはこのデザインが正解かどうか自信がなかったため、私たちに何か代替案があるかどうか意見を求めた。Erik Lauer 03/12/2010:
このままにするのと、インスタントのXWで、点数で見たマナコストがX以下の土地でないパーマネントを追放するのと、どっちがいい?
Aaron Forsythe 03/19/2010:
このまま。
Xの単位が猫の奴。
Tom LaPille 03/19/2010:
このままがいいな。
Ryan Miller 03/23/2010:
猫!
Mark Rosewater 03/25/2010:
猫大好き。
それはさておきこのサイクルは本当に使ってて楽しい。
猫、万歳!
Oculus / 眼魔 (1)(青)
クリーチャー - ホムンクルス(Homunculus)
眼魔が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、あなたはカードを1枚引いてもよい。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Oculus/Doug Beyer 01/05/2010:
ラヴニカの《検分するスプライト/Surveilling Sprite》は同じ能力で飛行持ちなのに。
Ken Nagle 01/19/2010:
青のドローカードが ま た 劣化するのか!
Zac Hill 01/20/2010:
だけどこいつは青いゾンビだろ!?(註)
MLG 02/11/2010: (註)
どこからどうみても《検分するスプライト/Surveilling Sprite》の下位互換。
Ken Nagle 02/22/2010:
君たちはど素人か? ホムンクルスは 飛 べ な い だろうが!
Aaron Forsythe 02/18/2010:
今のままでも青をやるときは必ず使うなあ。当時とは使われ方が違う気がする。(註) 青いゾンビ
フレイバー的な話をしているのか、青の2マナ1/1で能力持ちなのが《Drowned》を連想させるからなのか、意図は不明。ちなみに原文は「BUT IT’S A BLUE ZOMBIE ONEONEONE.」。
(註) MLG
原文ではこのコメントを残した人物名として「MLG」という略称が使われているが、今回の記事に「MLG」が略称のメンバーはいない。また似たような略称もないため、とりあえず原文ママにしておいた。
これに関しては私はAaronを支持する。
毎回必ず《眼魔/Oculus》をピックするというわけではないが、サイドボード行きになることもまた少ないカードだ。
ミラディン包囲戦でのこいつは、《生体解剖/Vivisection》の燃料として最適だし、セットに含まれる様々な装備品のどれかを持たせれば自身より少し大きいクリーチャーと相打ちをとりつつカードを引かせてくれる。
ラヴニカにはクリーチャーを生け贄に捧げるというテーマも装備品に比重が置かれていたわけでもない。そのため《検分するスプライト/Surveilling Sprite》の能力は当時よりもこの環境においてずっと有用なものとなる。
ここには記されていない会話の中で語られていたことに、すでに青はリミテッドで優遇されている、ということがあった。
《堕落した良心/Corrupted Conscience》と《ヴィダルケンの解剖学者/Vedalken Anatomist》はセットの中でもトップクラスのアンコモンだ。
またそれに加えて、《鋼の妨害/Steel Sabotage》、《水銀の噴出/Quicksilver Geyser》、《血清掻き/Serum Raker》などの非常に使い勝手の良いコモンがたくさん用意されている。
私たちはリミテッドにおける青の強さに満足しており、《眼魔/Oculus》をそのままにしておいても十分に有効活用できることが分かったので、下位互換として世に出すことにした。ちなみにこいつの当時の名は《Twigleg》だった。(註)(註) Twigleg
ドイツの小説家、コーネリア・フンケの書いた「Dragon Rider」というファンタジー小説の登場人物であるホムンクルスの名前がTwiglegというらしい。
参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Dragon_Rider
マジックのR&Dの伝統として、私は馬鹿げた仮定を問いかけてみた。Tom LaPille 03/03/2010:
《Twigleg》は飛べるかな? あとこいつはバスケでボッシュに勝てるかな?(註)(註) ボッシュ
マジック的に考えると《鉄のゴーレム、ボッシュ/Bosh, Iron Golem》。相手がこのデカブツでも、バスケ勝負で、かつ《眼魔/Oculus》が空を飛べればワンチャンスあるかもしれない。
この馬鹿な問いに、Aaronが反応してくれた。Aaron Forsythe 03/19/2010:
トロント・ラプターズのクリス・ボッシュには勝てないだろうね。(註) クリス・ボッシュ
クリス・ボッシュはアメリカのバスケットボールリーグであるNBAの選手。めっちゃ強い。《眼魔/Oculus》が飛べたとしても勝ち目はない。
ちなみに昨年までは文中にあるとおりトロント・ラプターズ所属だったけど、2010-2011シーズンからマイアミ・ヒートという別のチームへ移籍しているらしい。
参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Chris_Bosh
Steel Sabotage / 鋼の妨害 (青)
インスタント
以下の2つから1つを選ぶ。「アーティファクト呪文1つを対象とし、それを打ち消す。」「アーティファクト1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。」
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Steel+Sabotage/
Mike Turian 01/25/2010:
このカードがヴィンテージに与える影響については検討済み?
驚きだね。これはそうそう提起される問題ではないが、ここで挙がったようにまったく起きないというわけでもない。
単独で見ると、これは結構怖い質問だ。何しろこれは、私たちがあまりにも強過ぎる「壊れた何か」を生み出そうとしている可能性を示しているからだ。
幸いなことに、このカードは単なる一部のタイプのカードに対する「回答」となるカードに過ぎなかった。Erik Lauer 01/26/2010:
いい点をつくね (^▽^) 個人的にはこのカードは問題ないと思うよ。《Time Vault》を止められるようになるぐらいじゃない?
もしこのカードがヴィンテージに影響を与えるとすれば、私はむしろ喜ばしく思う。
《磁石のゴーレム/Lodestone Golem》をカウンターしたり、《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》をバウンスしたり、そういった崇高な仕事をしてくれるだろう。
私たちは《呪文貫き/Spell Pierce》がレガシーとヴィンテージに与えた影響について好ましく思っているし、このカードも同様のポジションに落ち着くことになると思うよ。Ken Nagle 02/16/2010:
ヴィンテージに悪影響を与えるかも、って判断を下したことって今まであったっけ?
Erik Lauer 02/17/2010:
下したとしてもそのせいでカード自体が大きく変更されることはないね。
ただ「カードを変更するだけの価値があるほどの何か」ってのはあるかもしれない。《三なる宝球/Trinisphere》みたいに。
Kenの質問はなかなか新しい視点だ。
私たちは、エターナルのフォーマットに適応させるためだけに新しいセットのカードを積極的にねじ曲げるようなことは滅多にしない。
なぜなら基本的にそのようなことはする必要がないからだ。
今や1万2千枚を超えるマジックのカードがあり、私たちがどんなカードを思い描こうと大抵の場合はすでにそれに対する「回答」は用意されている。
とはいえ、時には既存のカードとあまりに強い相互作用を起こしてしまうカードが生み出されることもある。例えば、《Mishra’s Workshop》と《三なる宝球/Trinisphere》のように。
そういった場合は私たちも何らかの対応を迫られる。
もっとも今回の《鋼の妨害/Steel Sabotage》のように何かに対する「回答」となるカードについては、新たなカードが活躍する助けになってくれるかもしれないという意味で非常に期待している。
Phyresis / ファイレクシア化 (1)(黒)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは感染を持つ。(それは、クリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyresis/
このカードはそれほど特筆すべき点があるようには見えないかもしれない。
ちなみに《ファイレクシア化/Phyresis》は誰かがファイレクシア人となった際に「感染する病気の名前」だ。そう考えるとこのカードがクリーチャーに「感染/Infect」を与えるというのはなかなか不思議な話だ。
それはさておき、このMultiverseという場所はマジックの編集者たちの能力の1つが遺憾なく発揮される場所でもある。その能力とは「セットに何か不自然な点がないか察知する」ことだ。
ほら、Delが何かに感づいたようだ。Del Laugel 01/22/2010:
今時点でこのセットには4つしかエンチャントがないぞ。
Erik Lauer 01/26/2010:
クリーチャー用のオーラを足そうとする意欲が、装備品に置き換わってしまいがちな気がする。さらにその他のアーティファクトが全体エンチャントの居場所を奪ってしまっているのかも。
Erikの言うとおりだ。
今時点では通常エンチャントが担当している分野は他に任されてしまっているが、今年の夏にはいつもの見慣れたエンチャントが君たちの元へお届けされるよ。
Burn the Impure / 不純の焼き払い (1)(赤)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。不純の焼き払いはそれに3点のダメージを与える。そのクリーチャーが感染を持つ場合、不純の焼き払いはそのクリーチャーのコントローラーに3点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Burn+the+Impure/Ken Nagle 10/29/2009:
これ、サイドボード行きになることがないよね。いつもメインに入ってる。
そのせいで相手が感染デッキを対策するつもりがないときまで対策されちゃってる感じなんだけど。
Alexis Janson 11/16/2009:
狙い通りだね。対立がサイドボードにじゃなくて表面に出てきてるってことだ。
Zac Hill 12/21/2009:
同感。
ここ最近の数ヶ月のあいだに、君はミラディン軍とファイレクシア軍のあいだで戦争が起きているということを感じ取れたかもしれない。私たちの生み出したカードのいくつかは実際にその戦争を暗示してさえいた。
このカードはその中でも特にその対立を明確に示している1枚だ。
いつか無邪気な子供がこのカードを手にとって、なんで感染/Infectに関する一言が付け加えられているんだろう、と不思議に思うかもしれない。それはあり得ることだが、私たちはミラディン軍とファイレクシア軍の衝突がカードから伝わるようにしたかった。
これはリミテッドにおいてその対立をはっきりと表現してくれるカードだ。
Lead the Stampede / 暴走の先導 (2)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーの一番上から5枚のカードを見る。あなたはその中から望む枚数のクリーチャー・カードを公開し、その公開したカードをあなたの手札に加えてもよい。残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lead+the+Stampede/Aaron Forsythe 02/18/2010:
これって《獣狩り/Beast Hunt》が弱すぎたことに対する埋め合わせかい?
Erik Lauer 02/24/2010:
多分だけど、本来は緑の特権なはずの《巨大化/Giant Growth》と《不屈の自然/Rampant Growth》をアーティファクトに持たせてしまったことと、緑のクリーチャーの約半数がライフを攻められないことに対する埋め合わせだと思うよ!
Erikの言い方は少々大げさだが、その内容自体は間違ってはいない。
リミテッドではマナマイアによって5色全てにマナ加速が用意されており、構築でも同様に《太陽の宝球/Sphere of the Suns》と《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》が存在している。
また、装備品によって《巨大化/Giant Growth》のような効果よりも基本的に効率よくクリーチャーをパンプすることが5色全てにおいて可能となっている。
それだけでなく、多くの緑のクリーチャーが感染/Infectを持っており「普通の」デッキをドラフトで組むことが難しくなっている。
Erikの理論に従えば、確かに緑はその埋め合わせとなる対価を得るべきなのだ。
《暴走の先導/Lead the Stampede》は、君のデッキの他の59枚のカード(もしくは39枚のカード)をほぼ全て土地とクリーチャーだけで満たすよう要求する。これはデッキ構築をするうえで、小さくはない制約だ。
しかしもしそうすることが出来たなら、このカードにはなかなかの価値が生じる。
私はここ最近、このカードが構築で使われているのをよく見かける。特に例をあげるとするなら、このカードと《緑の太陽の頂点/Green Sun’s Zenith》を最大限に生かしたエルフのコンボデッキがエクステンデッドに存在する。
Titan Forge / タイタンの炉 (3)
アーティファクト
(3),(T):タイタンの炉の上に蓄積(charge)カウンターを1個置く。
(T),タイタンの炉から蓄積カウンターを3個取り除く:無色の9/9のゴーレム(Golem)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Titan+Forge/Zac Hill 02/08/2010:
このカードは本当にイイね。
Aaron Forsythe 02/18/2010:
リミテッドで使ってみた。騙された。
Erik Lauer 02/18/2010:
リミテッドですごい役に立ってくれたけどなあ。
正しい回答が容易に発見できてしまうようなら、マジックはもっと退屈なものとなっていただろう。
見ての通り、プロツアー最終日まで勝ち残ったことのある2人が、ドラフトで同じカードを使った際の評価について正反対の感想を述べている。
やり込むに値するだけの奥深さをマジックに付与することに私たちが成功しているのを示す良い例と言える。
さて、Multiverseの探訪の旅を楽しんでもらえただろうか。
私は次のセットであるAction(仮名)のデベロップメントに参加しているが、今回のような記事の1つや2つを書けるようなネタがたっぷり用意されている。
覚えている限りの今までのMultiverseのファイルの中でも特に多種多様なネタにあふれているから、これに関する記事を書くのが楽しみでしょうがない。
その記事を君たちも楽しんでくれるだろうと信じているよ。
コメント
十字軍のバランスは、本当に「完全に壊れている」ギリギリ手前のラインで正常、といった感じで面白いです。
猫の祝祭!イエーイ!!
とても読みやすい構成だと思いましたよ。
十字軍のバランス調整のくだりが面白かったので訳したくなった、というのがきっかけです。やっぱりここがこの記事のハイライトな気がします。
猫大好き。