【翻訳】ドワーフに関する32の小コラム/Thirty-Two Short Columns About Dwarves【Daily MTG】
Mark Rosewater
2005年11月21日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/daily/mr203

適材適所

 J・R・R トールキンやゲリー・ガイギャックスやウォルト・ディズニーといった巨匠たちは、マジックが世に誕生するずっと前に、「ドワーフとはなんぞや」という命題に対する基本原則を制定してくださった。

 背が低い? その通り。

 穴を掘るのが好き? その通り(かも)。

 鎧を作るのが上手い? その通り。

 さて気になるのは(少なくともマジックのコラムで取り扱う上で気になるのは)、マジックザギャザリングが新たに生み出した「ドワーフとはなんぞや」が何かということだ。皆の興味を引けそうなネタでいうと以下のような感じか。

 ・ドワーフは(そして類人猿(Ape)も)基本地形ではない土地が大嫌い
 ・ドワーフは何かを爆破するのが大好き
 ・ドワーフは怒りっぽい
 ・ドワーフの髪型はモヒカン刈り(血気盛んなヤツは)
 ・ドワーフは「ケツ」と言うのが大好き
 ・ドワーフは不思議なことにバーバリアンとミニオンに対して支配力をもっている
 ・ドワーフは子馬をもっている
 ・ドワーフは子供のおもちゃから鎧を作ることができる
 ・ドワーフはどうやら野菜のカブが大好きらしい
 ・ドワーフの社会では戦士(Warrior)と放浪者(Nomad)は同じ働きをするらしい
 ・ドワーフは栄光の猛火の粋を極めたらしい(それが何であるにせよ)
 ・ドワーフには自警団と爆弾部隊と打撃部隊と秘術師と海の一族がいる
 ・ドワーフの男は自分の女に言い寄る奴がいないか気にする必要がない(婉曲的表現)
 ・ドワーフはフラーグのゴブリンのケツを蹴り上げる(そして「ケツ」と言うのが大好き)


それでパカはどうしたのか?

 以下に挙げているのは、私が《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》のフレイバーテキストについて以前コラムで語った内容だ。なお、コラムが書かれたのは遥か昔、2002年03月18日のこと。あいだに入っている赤文字は今回私が新たに書き足したコメントだ。参照用にカードデータも置いておこうか。
Dwarven Miner / ドワーフ鉱夫 (1)(赤)
クリーチャー - ドワーフ(Dwarf)
(2)(赤),(T):基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Miner/

フレイバーテキスト(原文):
 "Fetch the pestridder, Paka ─ we’ve got dwarves in the rutabagas!"
 ─ Jamul, Femeref farmer

フレイバーテキスト(日本語訳):
 パカ、虫殺しの薬を持ってきてくれ ─── カブがドワーフにやられとる!
 ─── フェメレフの農夫、ジャムール

 ~~~~~~~~~~~~~~~ ここから引用 ~~~~~~~~~~~~~~~

 私はときについついふざけてしまうという一面がある(驚かせてしまっただろうね。すまない)。アングルードではこの面を遺憾なく発揮する機会をもらったが、競技用マジックでは私のこの悪癖を披露することはほとんど出来ずにいる。

 ……と当時は書いていたが、これは真っ赤な嘘だ。《ラースの猿人/Apes of Rath》、《スクイーのオモチャ/Squee’s Toy》、《このぐらい大きいバナナが欲しい!》、《ズシーン! ズシーン!》、リス関連のカード……よく考えてみたらいつも披露しっぱなしじゃないか。

 ヨーロッパの古い言い伝えとトールキンの生み出した神話において、ドワーフは鉱夫として生み出されている。ドワーフは地面を掘り返すのが好きなのだ。

 そのとき私の頭に閃いたのは、リス(Gophers)も同様に地面を掘り返すということだ。ふむ、ドワーフがリスみたいに扱われてたら面白いんじゃなかろうか?

 ちなみリスはそれ自体が面白さだ。リアルなリスの話をしているわけじゃない。リスにまつわるネタが面白いんだ。
 一度、うちの芝生がリスに荒らされたことがあった。腹立たしかったよ。しかしリスという存在はやっぱりコメディ世界の金メダリストだ。(もし証拠を見せろというなら映画「Caddyshack」をおススメする)
 ドワーフを面白おかしくするためには(いや、ドワーフはもともと面白いんだが、さらに面白くするためには)、彼らをコメディな世界へ連れて行くべきでその乗り物こそがリスというわけだ。


 書き手というものは時が経つにつれて自身が過去に書いたものを不思議とより魅力的に感じられてくるものだ。理由はわからない。しかしこのフレイバーテキストは個人的に大傑作だと思っている。

 あまりにも傑作だと思ったのでセットへ収録されるよう全身全霊を賭けた。知ってるかもしれないが、コメディにはどれくらい面白いかを表すグラフみたいなものがあるんだ。こんな感じだ。

 ほんの少しだと面白い。それより少し多いとつまらない。度が過ぎるとまた面白い。

 これは真実だ。私が過去に書いた「Mons Made Me Do It」というコラムを読んでもらえればよく分かると思う。え? なんでここでゴブリンの話なんだ、って? おいおい、今週はドワーフ週間だ。なんでゴブリンの話をしないわけがあるんだい?(赤くて小さい奴らは面白いってことさ)

 私の計画は実にシンプルなものだった。フレイバーテキストのメンバーが第3段階に届くまでひたすらこのジョークを押し通すこと。そんなわけで私は機会があるごとにこのジョークを繰り返したわけさ。メンバーたちが私に殺意を覚えはじめた数週間ののち、ついにジョークはまた面白さを増す段階に届いた。

 この手法はカードのデザインでも有効だ。

 この引用にいくつか付け加えておきたい。まずなんで私が登場人物にPakaという名前をつけたのかというと、響きがこのフレイバーテキストにふさわしく田舎者っぽかったからだ。

 さらに虫殺しの薬の名前になぜ「Pestridder」というネーミングを用いた理由は、それが私が思いつける限りのファンタジーっぽい害虫駆除剤の名前だったからだ。そして「カブ(Rutabaga)」を選んだ理由はそれが野菜の中でも特に面白みを感じるものだったからだ。

 そうそう。このフレイバーテキストの中で一番面白い単語がどれなのかを書き忘れた。それは「また(Again)」だ。このカードが「面白いフレイバーテキスト」に終わらず「名作」と成り得た(と私は信じている)理由はこれだ。この文章が美しくまとまっているのは「普通でない」からではなく、むしろ「いつもいつも起きている」からなのだ。(訳註:実際のフレイバーテキストには「again」という単語が見つからない。なんかの勘違いかな?)

 ちょっと関係ない話をさせてくれ。私がまだ小さいころ、友達と「面白くない、面白い、とても面白い(Not Funny, Funny, Very Funny)」という遊びをしていた。遊び方は、まず1人がお題を決める(たとえば「野菜」のように)。別の1人がそのお題に当てはまるものを3つあげる。

 1つ目には、面白くないものをあげなくてはいけない。2つ目は面白いもの、ただし面白すぎないものをあげないといけない。そして3つはとても面白いものをあげないといけない。もしお題が「野菜」だったら、以下のような感じだ。

  お題「野菜!」

   1つ目:
      Corn/とうもろこし(面白くない)
   2つ目:
      Eggplant/ナス(面白い)
   3つ目:
      Rutabaga/カブ(とても面白い)

 試しにもう1回やってみようか。

  お題「動物!」

   1つ目:
      Bird/鳥(面白くない)
   2つ目:
      Cow/ウシ(面白い)
   3つ目:
      Platypus/カモノハシ(とても面白い)

 みんなもぜひ遊んでみてくれ。

 この箇所は省いてもよかったかもしれない。フレイバーテキストにはあまり関係ないくだりだからだ。しかし今あらためて読み返してみて、残しておくに値すると思われた。

 ~~~~~~~~~~~~~~~ ここまで引用 ~~~~~~~~~~~~~~~

 放火魔週間を楽しみにしていてくれ。そのときは《補償金/Reparations》のフレイバーテキストについて話そうと思う。(訳註:上記の引用元であるフレイバーテキスト週間のコラムで第1位のカードが《補償金/Reparations》だった)


ドワーフの狂戦士、ドワーフのイメージについて語る

 マジックで幸せそうなドワーフってやつを見たことがないことに気づいてたか? 悲しそうなやつでもいい。そもそも感情ってやつを表に出してるやつをだ。そう怒り以外のだ。

 そりゃどんな人間だってドワーフってやつがムカツくチビだってことは知ってるもんだ。俺たちゃ小さすぎて怒りがあふれんばかりだ。

 おおっと、気をつけろよ! 俺たちを馬鹿にしないほうがいい。煽られりゃ、すぐにでも殴り込みに行くぞ。殴るんでなけれりゃ、爆破しに行くかもしれん。それともお前らを燃やせる何かを持ち出すかもしれん。

 もちろん穴を掘ったり鎧を作ったりで忙しいときゃ別だ。ああ、もちろんお前らから見ればそれをしているときすら怒ってるように見えるんだろうがな。神がそうあれとドワーフに望んだ姿でしか人の目に映らないように神の御手が働いてるんだろうさ。

 俺たちがまったくお前らのイメージどおりの、かんしゃくもちでコミカルなキャラクターでなくなったら世界が崩壊する、ってな寸法だ。それがまた俺をいらだたせるんだ。まあ、でもお前らはそんな俺たちが大好きなんだろう。


ちょっとしたゲーム

 マジックには32体のドワーフがおり、そのうち21体の名前は「ドワーフの(Dwarven)」で始まる。ここでどの「Dwarven」が「どのセットに登場したか」を覚えているかどうか試すクイズを出してみようと思う。以下の「Dwarven ~」がそれぞれ最初に登場した基本セット/エキスパンション名と組み合わせてみて欲しい。

  <Dwarven ~>
                   <セット名>
 1) Armorer
                  a) アライアンス/Alliances
 2) Berserker
                  b) アルファ/Alpha
 3) Blastminer
                  c) アポカリプス/Apocalypse
 4) Driller
                  d) フォールンエンパイア/Fallen Empires
 5) Demolition Team
                  e) ホームランド/Homelands
 6) Patrol
                  f) ジャッジメント/Judgment
 7) Sea Clan
                  g) オデッセイ/Odyssey
 8) Strike Force
                  h) オンスロート/Onslaught
 9) Vigilantes
                  i) ビジョンズ/Visions
 10) Weaponsmith
                  j) ウェザーライト/Weatherlight


 答えは以下の通りだ(反転で表示)。

     <カード名>
                   <セット名>
 1) 《Dwarven Armorer》
                  d) フォールンエンパイア/Fallen Empires
 2) 《Dwarven Berserker》
                  j) ウェザーライト/Weatherlight
 3) 《Dwarven Blastminer》
                  h) オンスロート/Onslaught
 4) 《Dwarven Driller》
                  f) ジャッジメント/Judgment
 5) 《Dwarven Demolition Team》
                  b) アルファ/Alpha
 6) 《Dwarven Patrol》
                  c) アポカリプス/Apocalypse
 7) 《Dwarven Sea Clan》
                  e) ホームランド/Homelands
 8) 《Dwarven Strike Force》
                  g) オデッセイ/Odyssey
 9) 《Dwarven Vigilantes》
                  i) ビジョンズ/Visions
 10)《Dwarven Weaponsmith》
                  a) アライアンス/Alliances



構築環境におけるドワーフの輝かしい戦歴について

 確かプロツアーのフィーチャーマッチで《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》を見かけたことがあるような、なかったような……分かった分かった、ちゃんと言うよ。

 1998年、Scott Johnsが世界チャンピオンになるチャンスを失ったのは、Ben Rubinとの準々決勝の最終ゲームで《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》と《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》が彼を打ちのめした瞬間だった。

 本当の話さ。


我がドワーフ的人生(その1)

 私の「Making Magic」のコラムに共通するテーマの1つとして、コラムの要点を強調したいときに私のプライベートを用いる、ということがある。そして、今日、私たちはドワーフについて話している。

 さて「ドワーフであるということはどういうことか」を理解する助けとなるような私の過去の経験について、君たちと共有したら面白いんじゃないかと考えたわけだ。

 私は背の高い人間ではない。いや、実のところ、私は開発部でもっとも背の低いメンバーだ(状況は悪化する一方だ。何しろ新たに雇われるメンバーの平均身長は高くなるばかりだ)。

 私は背の低い家系に生まれた。私の両親も背は低いし、私の子供たちも背が低い。しかも私が結婚相手として選んだ人も背が低い女性だった。

 しかし思春期を迎えるまでは、私は単に背が低いというわけではなかった……私は「とても」背が低かったのだ。私はクラスで最も背が低い子だった。そう、もっとも背が低い男の子ではなくね。

 なんてこった。

 私たちのクラスには君たちが見たこともないほど小さい女の子が1人いた。彼女はピーターパンの劇でティンカーベルを演じた。縮尺があまり変わらなかったからだ。彼女は私より背が高かった。

 私はあまりにも背が低かったので、周囲の人々は私を実際よりも2歳か3歳か若いものだと思っていた。私が小さい子供がやるようなことをしていると、周囲の人々は私のことを天才だと思って拍手してくれた。

 ありがたいことに子供というものは(特に男の子は)優しい心を持っていて、身体的特徴などを理由にして仲間外れにするようなことはしなかった。

 ……そういえば聞いた話だが皮肉というものは活字だと伝わりづらいらしいね。

 さっきのは皮肉だよ!

 幼少期の頃、冬の休み時間に私が遊んでいたゲームは「大きい子から逃げろゲーム」というものだった(ここでいう「大きい」というのは「年上の」という意味じゃない。物理的に「私より大きい」という意味だ)。

 念のために言っておくと自分から進んで参加したわけじゃない。気が付いたらそういう遊びになってしまっていたというべきかもしれない。どういうことかというと、でかい子供たちはすぐ私をつかまえて雪の中に転がそうとするので逃げ回っていたのだ。

(ちょっとした余談。現在の私は夢であった仕事につくことが出来た上に素晴らしい家族にも恵まれている。対して雪の中で私を追い回していたやつらはおそらく離婚の慰謝料を支払うためだけに退屈でつまらない仕事をこなしているに違いない。因果は巡る。覚えておくように)

 さて、これから何が分かるか? 私がこのことから学んだのは、なぜドワーフがあんなにもぶっきらぼうな態度をとっているのかだ。

 彼らは「大きい子から逃げろゲーム」なんか遊ぶつもりはないんだ。むしろ「俺に触りたければそうするがいい、その額にツルハシをぶち込んでやるぜゲーム」を開催するだろう。

 私は確かにドワーフのようなぶっきらぼうな態度はもっていない(ツルハシもだ)。しかしそれでも小さいことによって被るあれやこれやについては理解できる気がする。


ドワーフに聞いてみよう

問い:戦闘で何体までのゴブリンなら一度に相手にできますか?

《バルソー》
「生死は? ……ああ、俺のな」

《沸血のドワーフ/Bloodfire Dwarf》
「6体。小さいやつなら7体まで」

《ドワーフ巡視部隊/Dwarven Patrol》
「10体から12体」

《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
「5体」

《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「7体」

《火花魔道士/Spark Mage》
「6体」

《爆弾兵団/Bomb Squad》
「15体」

《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「30から40くらいか」

《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「1匹かな……運が良ければ」

《ドワーフ自警団/Dwarven Vigilantes》
「9体」

《ムチ打ち人/Whipkeeper》
「14体」

《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「8体だ。相手がモグじゃなければな。モグ相手じゃ3体がいいとこだ」


ジョーの考えてることはよく分からん

 私はときどきゲームそれ自体の話ではなく、ゲームをプレイする人に焦点を当てた話をすることがある。R&Dに関するときでもよくそういう話をさせてもらっている。運の良いことに、ドワーフ関連でもネタがあった。

 さて、開発部にいる特権の1つとして、他のメンバーが作ったゲームのプレイテストに参加できる点が挙げられる。これはそういった話の1つだ。

 これはずっと前の話で、当時はまだリチャード(リチャード・ガーフィールドのこと)がオフィスにいた頃だ(今でも彼はときどき顔を出してはいるけれど、これは彼がウィザーズでフルタイムで働いていたときの話だ)。

 リチャードは家族向けのパーティゲームをデザインしようとしていた。ドイツのゲームに着想を得て、とある手ごろなゲームを彼は作り上げた。彼はそれを「Hive Mind」(集団意識)と呼んでいた。

(もしかしたらいつか「What Were You Thinking」(何考えてるの?)という名前で発売されるかもしれない。発売元はウィザーズ社以外かもしれないけど、もしEbayやおもちゃ屋さんで見かけたらぜひ手に取ってみて欲しい)

 ゲームの流れはこんな感じだ。まず君は質問をされる。それに対して「他のプレイヤーと一致するような回答」を書く。つまりポイントはもっとも多数派となれるよう、プレイヤーたちの考えを予想して「もっとも一般的な答え」を思いつくことだ。

 ほとんどの開発部のメンバーはこの「Hive Mind」がなかなか上手かったが、ただ1人、例外がいた。彼の名前はジョー・グレイスといった。

 マジックの仕事にはあまり携わっていなかったが、アングルードの《Timmy, Power Gamer》のイラストのモデルになった人物だ(当時の開発部で「もっともティミーな」プレイヤーが彼だったからだ)。

 理由は不明だが、とにかくジョーは「Hive Mind」が下手だった。

 いや、下手だった、は不正確だね。

 彼は「ド下手」だった。

 何らかの理由で、彼の遺伝子には「他人と同じ考えをする」という能力が欠けていた。それにも関わらず、ジョーはこのゲームに繰り返し参加した。ずっと下手なままではないと証明するためだ。

 しかし遊べば遊ぶほど、皆は彼はこのゲームに向いていないのだと確信せざるを得なかった。そしてジョーと「Hive Mind」を遊ぶのが最後になったゲームでのことだ。

 そのときのお題は「有名な3人のドワーフの名前をあげろ」だった(今日のコラムに関係ある話題だ、って言ったろ?)。皆が答えを書き上げた。

 ジョーは笑みを浮かべていた。彼は確信していたたのだ。ついに運命の女神は微笑んだのだ。これこそが俺の「お題」だ。今回に限って孤立することなどない。ついに有象無象の1人になれるのだ。ジョーは興奮のあまり、答えを最初に公開させてくれと申し出た。

 念のため。今回のお題は「有名な3人のドワーフの名前をあげろ」であり、他のプレイヤーと答えを一致させることがゲームの目的だ。

 ジョーは答えを書いた紙を取り出した。さらに自信のほどを見せつけるためか指まで鳴らした。「よし」と彼は始めた。「まずギムリ!」(余談ながら追記しておくと、他の皆の答えは「白雪姫と七人のドワーフ」に登場するドワーフたち、「ドーピー、グランピー、ドク」だった)


ドワーフの狂戦士、土地破壊とドワーフについて語る

 お前ら、なんで俺らドワーフがやっきになって土地をぶっ壊して回ってるか、知ってるか? ありゃ、好きでやってんじゃねえんだ! そうするように言われてるからやってんだ!

 ……あ? なんでそうするように言われるかって!? あいつら、俺らにトーナメント会場に顔を出して欲しくないのさ!

 みんな知ってることだろ、開発部の奴らは土地破壊カードをこれでもかとクソカードに変えてやがる。そりゃそうさ、誰だって土地を片っ端からぶっ壊されたくはないわな。

 さて、じゃあクソカードを背負わせるのにふさわしいのは誰だ? ちっこい奴らだ!

 それだけならまだしも、あいつら、たまに上質な土地破壊カードを作りはするが、それだけはなぜか絶対にドワーフにしねえんだ!

 俺たちだって、必要とありゃなだれの1つにくらい乗ってみせるぜ! だけど違うんだな、奴らは俺たちにダメなやつらのままでいて欲しいのさ。

 俺たちの居場所を見つけてくれようとしている? 10円レアのボックスの中にだろうよ!


ドワーフに聞いてみよう

問い:自分より背の高い相手とデートしたことありますか?

《ドワーフ徴募兵/Dwarven Recruiter》
「あるよ」

《地雷の敷設者/Mine Layer》
「ある」

《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「ある」

《Dwarven Trader》
「そもそも選択肢がないんだが」

《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「ある」

《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
「あるよ」

《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「自分より背の高い相手とデートはしない」

《Dwarven Armorer》
「ある」

《Dwarven Sea Clan》
「あいよ」

《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「もちろん」

《パーディック山の刀工/Pardic Swordsmith》
「ある」

《Dwarven Lieutenant》
「ある」

《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》
「ある」
「ある」
「ある」


ドワーフの嫌う言い回し

 "come up short" (足りない)
 "short comings" (短所)
 "short sighted" (短絡的)
 "short tempered" (短気)
 "for short" (短縮系で)
 "in short" (手短に)
 "short for" (短縮系で)
 "short of" (不足している)
 "short end of the stick" (貧乏くじを引く)
 "short films" (短編映画)
 "short people" (小さい人)
 "little people" (一般人)
 "vertically challenged" (縦方向にハンデを負っている = ちび)
 "ground lickers" (地をなめる人 = ちび)
 "low men on the totem pole" (トーテムポールの下段担当 = ちび)
 "small pickings" (重箱の隅をつつく)
 "small time" (取るに足らない)
 "small talk" (世間話)
 "small good that’ll do" (それで足りるだろ)
 "Smallville" (作品名。邦題:ヤング・スーパーマン)
 "feel small" (肩身が狭い)
 "a little" (少々)
 "little by little" (少しずつ)
 "pick it up a little"
 "little importance" (重要性が低い)
 "tiny dancer" (作品名)
 "tom thumb" (作品名。邦訳:親指トム)
 "wee _____ " (小さな ~)
 "little fella" (坊や、お嬢ちゃん)
 "knee high to a grasshopper" (バッタの膝くらいの高さ)
 "below knee level" (ひざ下レベル)
 "dwarf short" (小人症)
 "How’s the weather down there?" (下界の天気はどうだい?)
 "Would you mind shining my shoes?" (ちょうどいいや、靴磨いてくれよ)
 "Oops, I almost stepped on you." (あぶねえ、踏んづけるところだった)


我がドワーフ的人生(その2)

 さっきはその場にいるもっとも小さきものであることによって遭遇しうる物理的な危険性について述べた。次は精神的なものについて語ろうと思う。

 もしかしたら君たちは、あまりにも背が低いと逆にそれをあげつらう人もいないかもしれない、と考えるかもしれない(それによって何かが多少ましになるというわけでもないが、非常に背が高い友人たちによると、彼らもまた私とは正反対の方向において同じような境遇だったそうだ)。

 身長が私にとって大きな問題となったのは、それが周囲の皆にとっても大きな関心事だったからだ。私は同じ子供たちによってからかわれることに対する心の準備は出来ていた。しかし同様に大人たちからもからかわれることは予想していなかったのだ。

 分かるだろう? 私は大人たちは味方だと思っていたんだ。

 しかし私は負け犬だった(余談だが、私がUnderdogの大ファンなのはそれが理由だと思う)

 権威は弱者を守ってくれるんじゃなかったのか?

 大人は大人びた振る舞いをしてくれるんじゃないのか?

 そう考えるのが普通だろう。ところが大人たちも他の人間と同じように私の身長をからかいの種にした。なぜだかは分からないが、身長についてからかうことはひどいことだと思われていないふしがある。

 いや、だって考えてもみてくれ。背丈についてからかう人たちだって、太った子供を同じようにからかったりはしないだろう?(もしかしたらするのかもしれないけどね。もしそうだとしたらそれはとても悲しいことだ。大人たちは大人なんだからちゃんと大人びた対応をしてくれるはずだ、と子供が思ってはいけないということになる)

 しかし大人たちによるもっともひどい嫌がらせはここぞというときまで、そう、とある特別な夜まで大事にとっておかれた。

 それは私の初めての学内ダンスパーティだった。確かあれは私が小学校6年生のときだったと思う(そのとおり。私を成長させてくれるはずの思春期という時期は、逆に出来る限りその仕事を終えるのを先延ばしにしようと粘り続けたのだ)。

 小学生のダンスパーティというものを覚えていない(もしくは意図的に忘れた)みんなのために書いておこう。それはとてもダンスと呼べるような代物じゃなかった(まあ、私も今や老いぼれの身だ。もしかしたら今ではすっかり違うものになっているのかもしれないが、何にせよ、当時はそういうものだったと思ってくれ)。

 当時の子供たちはデートなんてしたことない子が大半で、大人としてはもっと積極的になれと後押ししたくてしょうがなかったらしい。

 大人たちはダンスパーティをたった一組のカップル、その2人っきりでスタートさせたんだ。ふむ。さて誰がふさわしいだろうか?

 いやいや、もっとも面白い取り合わせのカップル以外ありえないだろう? そう、たとえばもっとも背が低い男子ともっとも背が高い女子のカップルさ。

 それ以外ないだろう? せっかくのダンスパーティだ。

 すでに普段から十分に居心地の悪い思いをしている2人をさらにどん底に突き落とさなくてどうする? ……ちなみに私は逃げなかったよ。踊るように言われたし、なんというか先生に反抗するようなタイプでもなかったしね。

 私より頭2つ分は高い女子とダンスを踊りながら、私はひどく腹を立てていたことを覚えている。毎日、嫌な思いをしてきているだけでもたくさんだというのに、公立の小学校みずから率先して辱めを与えてくるとは!

 こんなことは間違ってる。これと同じくらいの辱めなんてありえるのか!? 一番にきびが多い男子と一番胸が小さい女子とか!?

 さてこれがドワーフの話とどう関係してくるのか。この出来事から私はなぜドワーフが単一の種として存続しているのかが分かったからだ。彼らは社交的ではないからだ。

 その理由は?

 自明のことだ。もし社交的だったらサイクロプスの女子とでもダンスさせられてることだろう。


ドワーフの狂戦士、あごひげについて語る

 なんでドワーフが誰も彼もあごひげを伸ばさせられてるのか、不思議に思ったことはねえか? 俺たちの顔を見たくねえからだよ。

 人間どもは狡猾さ。

 どうやって俺たち小せえ奴らを見張ってるか知ってるかい? テレビだろうが映画だろうが、とにかく出てくるドワーフは全部あごひげつきさ。ああ、ただ1人をのぞいてな。

 こうすりゃ、うちらの1人があごひげをそって歩き回ろうなんて考えようもんなら、何十人もの芸人どもにこう呼ばれるのさ。「おう、ドーピー!」ってな!
訳註:
 ドーピーはディズニーアニメの白雪姫に出てくる七人のドワーフの中で、唯一あごひげを生やしていないキャラクター。なおドーピー(Dopey)という名前は「お間抜け」もしくは「ぼんやり」というような意味をもつ。


ドワーフと小人症の違いについて

 君も気になってることだと思う。医学的な話をすると、ドワーフは小柄な体型をしており(4フィート10インチ以上であることはまれだ)、これは生物学的もしくは遺伝的な理由によるものだ。また特徴として全体的に小柄であり、腕と足と胴体がさらに相対的に短めでもある。小人症は医学用語で体型が小さい人の呼称だ。彼らは相対的に腕と足と胴体が短めでこれはホルモンの異常が原因だ。


生まれそうで生まれなかったドワーフたち

 ミラージュには《Dwarven Scouts/ドワーフの斥候》という呪文があった。これは赤の呪文で3体の1/2ドワーフ・トークンを生み出す効果だった。しかしこれは実際に世に出ることはなかった。何が起きたかって? これを見てくれ。
訳註:原文では以下のイラストが表示されている。
 http://www.wizards.com/magic/images/mtgcom/fcpics/making/mr203_scouts.jpg

 まあ、聞いて欲しい。私たちは「3体のドワーフが敵の陣地に潜入しているイラスト」を依頼したところ、この絵が出てきたんだ。これを見るや否や、私は当時のアート・ディレクターであったスー=アンの元へ向かった。

私:やあ、スー・アン。《ドワーフの斥候》のイラストを見たかい?
スー:ええ、見たわよ。気に入った?
私:実はそうでもないんだ。ちょっと問題があってね。
スー:なに?
私:一緒に確認したほうがいいと思ってね、イラストを持ってきたんだ。ほら、これだよ。
スー:Geofの色使いは素晴らしいと思うわ。
私:違うんだ。イラストの質は問題じゃないんだ。
スー:はいはい、じゃあ何が問題なの?
私:このカードの名前は《ドワーフの斥候》だ。
スー:それで?
私:もう1回カード名を言うよ。《ドワーフの斥候》だ。「ドワーフの」ね。
スー:やっと分かったわ。あなたはこれが斥候には見えないって言いたいのね。
私:違うよ! 私が言いたいのはこれがドワーフには見えないって話だ!
スー:見えるわ?
私:絶対に見えないね。
スー:ドワーフに見えないってことはないわ。
    イラストレーターの裁量に多少の幅は持たせてあげないとダメよ。
私:これは今回限りのオリジナルなクリーチャーじゃないんだ。
   ドワーフにはドワーフなりの見た目というものがあるんだ。
スー:ちょっと心が狭いんじゃないかしら。
    自分の見たいものだけを見ようとしてる気がするわ。
私:ドワーフには決まった見た目ってものがあるんだよ。特徴的な体型もしてるし、
   あごひげも生やしてる。イラストのクリーチャーたちはひげが生えてないじゃないか。
スー:ドワーフだからってあごひげが生えてなきゃいけないってことはないわよ。
私:いけないんだよ、マジックの世界だけじゃなくて、
   ここ何十年というポップ・カルチャーの歴史においてもね。
スー:ミラージュのドワーフはこうなのかもしれないわ。
私:これがドワーフに見えないということだけじゃなくて、
   これが別な何かに見えるということも分かってもらえるよね?
スー:何かって?
私:よく見てくれ。
スー:で?
私:チビで、緑で、尖った耳をしてる。
スー:ごめんなさい、何を言いたいのかよく分からないわ。
私:君はファンタジー世界に関わる仕事をしてるんだよね?
スー:まだ分からないわ。
私:ゴブリンだよ! こいつらはゴブリンだ!!
スー:私にはドワーフに見えるけど。
私:君にはそう見えるのかもしれないし、イラストレーターにもそう見えるのかもしれない。
   けど、世界の残りのみんなにはそうは見えないんだ。なんでか分かるかい?
スー:なんで?
私:こいつらがドワーフじゃないからさ! こいつらはゴブリンなんだよ!!
スー:あなたにとってはね。
私:そのとおり、私にはね。そしてファンタジー好きなら誰でもね!
   たとえばマジックのプレイヤーたちとかね!!
スー:そう言われても今更イラストを変更することはできないわよ。
私:え、いや、だけど私たちはドワーフのイラストを発注したんだよ?
スー:Geof Darrowの解釈ではこれがドワーフなの。
私:……分かった。分かったよ。どうやら相談する先を間違えたらしい。
   これはイラストの問題じゃないんだな。デベロップメント・チームのところに行くよ。

 そして《ゴブリン斥候隊/Goblin Scouts》が生まれたというわけさ。


ドワーフに聞いてみよう

問い:白雪姫に出てくるドワーフたちってリアル?

《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「あんなベッピンさんが7人のチビどもと1つ屋根の下に住んで何もないなんてあり得ねえ」

《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》
「たったの7人ぽっちで鉱山で働いてて、どことも知れない場所にある小さな小屋に詰め込まれて暮らすのがリアルかどうかだって?」

《血たぎるドワーフ/Dwarven Bloodboiler》
「あんな馬鹿っぽい歌をうたうドワーフはいない」

《Enslaved Dwarf》
「スリーピー(ねぼすけ)とかスニージー(くしゃみ屋)とかドク(博士)みたいにアホな名前したドワーフはいないよ。たぶんね」

《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「俺はそこそこリアルだと思ったけどな」

《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
「ドーピー(ぼんやり)だけは無い。30秒以上黙ってられるドワーフなんてあり得ねえ」

《Dwarven Trader》
「グランピー(怒りん坊)は俺のおやじに似てる気がする」

《Dwarven Lieutenant》
「口笛を吹くドワーフなんていないから。ああ、あと一列になって歩くドワーフも」

《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「エンディングは泣けたね」

後編へ続く
http://regiant.diarynote.jp/201305061530428933/

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