長過ぎて1つの記事に収まらなかったため、前編/後編に分けてみる

世界侵略:インベイジョン決戦/Body Snatchers of the Invasion
Mark Rosewater
2005年08月08日
元記事:http://www.wizards.com/Default.asp?x=mtgcom/daily/mr188

 インベイジョン週間へようこそ!

 今週は私たちが探険するのは「歴代マジックの中でも随一のエキスパンション」だ(いや、まあ正直言うと「あの【放送禁止用語】なセットのことか!?」って言う人もいるけどね)。

 デザインチームの一員として、他のどこでも聞けないような見識を聞かせてあげよう。いや、ごめん、さすがに「どこでも」は言いすぎかもしれないな。R&Dの副責任者でありインベイジョンのリード・デザイナーでもあるBill Roseが今週の特集記事を書いてるから、彼も知っていることかもしれない。だから、私がこれから話すことは特集記事をのぞけば他のどこでも聞けないような話ということになるんだろう。

 私がこの記事を書いている今現在、Billはまだ彼の記事を書き終えていない。よって私は彼が何について語るのかよく分かっていない。

 話が重複する可能性を減らすため(それだけならまだしも互いの話が矛盾する可能性を避けるため)、私は個別のカードについてのみ話すことに決めた。Billはセットのメカニズムのデザインについて話してくれるだろうと願っている(彼とまったく相談してないわけじゃないから「~と願っている」というのはちょっと言いすぎかもしれない)。

 さて、カード個別の話に移る前に、舞台を整えさせて欲しい。

私の父について/Dad To The Bone

 まず初めに、私の父について知っておいてもらいたい点が3つある。

その1 私の父はマジックのプレイヤーである

 そのとおり、ここで登場したのは、私の実の父の話だ。

 1993年の10月、私は父を尋ねた。そのとき私は、その夏に見つけた新しいゲームを封切らずに新品のまま持っていった。いや、じらしてもしょうがないからはっきり言ってしまうと、私が持っていったのはマジックだ。

 何にせよ、私はとあるゲームのコンベンションでアルファ版をいくつか購入した。私が自分の発見したものの価値(私はマジックについて「70年代のD&Dと同じレベルのすごいことがゲーム界で起きようとしている」と伝えるためだけに、実際に電話口に父を呼び出したほどだ)に気づいたとき、私はベータ版が出るまで待ち焦がれるしかない状態だった。

 ベータ版が出たとき、私はスターター2ボックスとブースター2ボックスを購入した。なぜならもし友人たちもこのゲームに引きずりこむつもりならブツはこちらから提供する必要があることを知っていたからだ(ちなみに南カリフォルニアではベータ版が1日で売り切れた)。

 何にせよ、1993年の10月に私は父へ未開封のマジックを持っていた。私がゲーム好きとなった主な原因の1つは私の父であり、父がマジックを好きになるであろうことは間違いなかった。

 もちろん、その通りだった。

 それ以来、父はマジックを遊び続けている。主要幹線道路から多少外れたところに住んでいる父は、最近では主にマジックオンラインを遊んでいるらしい。

 さてここで2つ目に話すべき点に移る必要がある。

その2 私の父はタホ湖(註1)に住んでいる

 私はクリーヴランド(註2)で育った。しかしそんな地理的条件のみでは私の両親をスキーから遠ざけることは出来なかった。彼らはあまりにスキー好きだったので私にとっての家族旅行とは大抵の場合スキー旅行を意味していた。

 私たちは地元でスキーを始めた。

 次にニューヨーク州まで足を伸ばした。

 その次はバーモント州まで出向いた。

 しかし最終的に私たちはスキーのために西部まで出向いた。コロラド州、ユタ州、カリフォルニア州、ネバダ州、私はこれら全ての州でスキーをしたことがある。

 そのため父が何年も前に隠居を決めたとき(彼は比較的早い時期に退職した。両親が離婚してすぐの頃だ)彼はタホ湖へ引っ越した。タホ湖は、カリフォルニア州とネバダ州の境にありスキーを楽しむのに適した小奇麗な場所だ。引っ越す際、いつでも好きなときに来なさい、と言ってくれた。

 さらに「友達も連れてきなさい、何人でもかまわないから」とも。
(註1) タホ湖
 原文では「Lake Tahoe」。カリフォルニア州とネバダ州にまたがる湖。

(註2) クリーヴランド
 五大湖の1つであるエリー湖のほとりにあるオハイオ州の町。

その3 私の父はスキーのインストラクターだ

 クリーヴランドにいた頃、私の父は自分の診療所を持った歯科医だった(他に何人かの歯科医が父の下で働いていた)。しかし引退後、彼はちょっと違う仕事にチャレンジしてみることにした。

 スキー大好き人間が楽しみにために何をするか? なんとびっくり、彼はスキーを教えることを仕事に選んだんだ(余談だけど、彼は本当に腕のいいスキーインストラクターだ)。

 ある日、R&Dで「私の父はスキーのインストラクターで、タホ湖に近くに大きくて居心地のよい家を構えていて、いつでも何人でも友達を連れてきなさいと言ってたな」と皆にしゃべった。

 自分でそう言いながら「あれ? もしかしたら本当にそうしてみてもいいのかもしれないぞ?」という気持ちが自然と沸き起こってきた。

 そこで私はそうしたのさ。何人かの友達を連れてね。

 君も彼らをR&Dのメンバーとして知っているかもしれない。

 そう、タホ湖への最初の旅に参加したのはR&Dのメンバーでマジックに関わっている面子、それも全員だ。Bill Rose、Mike Elliott、William Jockusch、Charlie Catino、当時のリードデザイナーであるJoel Mickも参加したし、さらにはSkaff(註3)とRichard Garfieldまでもが参加者だった。まさに全員だ。

 実のところ、私たち全員が飛行機に乗っているとき、ふと私が思ったのは「もし今この飛行機が落ちたら、マジックも終わりだな」ということだった。

 あまりにたくさんの人数で押しかけたため、ベッドが足りなくなった。寝袋で寝る羽目になるのは誰かをどうやって決めたかって? シールド戦だよ。当たり前だろ?(ああ、分かった分かった、正直に言うよ。私は免除させてもらった。いや、だって私の父親の家だよ?)
(註3) Skaff
 原文でもフルネームの表記がなかったが、おそらくSkaff Eliasのこと。
 アルファ版が出る前から開発とテストプレイに関わっているメンバー。元々、プロツアーは彼のアイデアから生まれたものらしい。またエキスパンションごとにカードの裏面を違うものにしようというアイデアを速攻で却下したり、同じカードは4枚までの制限ルールを思いついた人だったりもするらしい(以上の話のソースは以下の MTG Salvation Wiki)。
 http://wiki.mtgsalvation.com/article/Skaff_Elias

 これに味をしめたR&Dは、その後も何度か父の家を訪問した。

 これがインベイジョンのデザインへとつながった。

 Billはインベイジョンのデザインのために小規模なチームを作ることにし、私とMike Elliottをメンバーとして任命した。私たち3人は過去にいくつもセットを手がけていたが、3人一緒にデザインチームを組んだのはこれが最初だった(そして今のところ、あれが最後だった)。

 Billはデザインのために会社を離れてちょっと遠出をしてもいいんじゃないか、と考えた。

 そうなると目的地は1つしかない。私たちは父の家へ向かった。

 インベイジョンはそういった意味でもユニークなセットだったが、核となる部分が1週間でデザインされた、という点でも変わっていた。忘れないで欲しいのは、私たちはタホにいたということだ。つまり3日に1回はスキーをしていた。

 さて、最初に述べたとおり、私はセットをあまり大きな視点から語るつもりはない。それはBillに任せる。

 そうではなくて、私はもっと現場に近いところから個々のカードたちの話をしようと思う。なお、ここで挙げるのは全てのカードについてではない。特に私の心の琴線に触れたカードたちについてのみ記事にしたいと考えている。

Absorb / 吸収 (白)(青)(青)
インスタント
呪文1つを対象とし、それを打ち消す。あなたは3点のライフを得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Absorb/

 オリジナルでは、以下のようなカードだった(対となるUndermineも同様だ)。
Absorb
WUU
Instant
Counter target spell. Gain X life where X is the converted mana cost of the countered spell.(註4)

 2つの理由からこれは採用されなかった。1つに、このバージョンは複雑すぎる。このカードはもっとシンプルでエレガントであるべきだと私たちは考えた。もう1つの理由は、ただでさえゲームデザイン上使われづらい重たい呪文をさらに迫害することになってしまうからだ。私たちは極力それを避けたいと考えている。
(註4) (ルールテキストについて)
 訳すとするなら「呪文1つを対象とし、それを打ち消す。あなたは打ち消した呪文の点数で見たマナコスト分のライフを得る」となる。なお、私訳のため、正式なテンプレートに沿っていない可能性がある。ごめんなさい。


Addle / 頭の混乱 (1)(黒)
ソーサリー
色を1色選ぶ。プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の手札を公開し、あなたはその中からその色のカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーはそのカードを捨てる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Addle

 私は《強要/Coercion》が好きだ。私は、相手に捨てさせるカードを自分で選択できるのが大好きだ。

 ウルザズサーガで私たちは《強迫/Duress》と《村八分/Ostracize》を作った。私はこいつらが好きだった。選択肢が狭いかわりにとても軽いところが特に(ああ、いや、確かにDuressの選択肢は狭いとは言いがたいかもしれない。まあ、だからこそ強いカードとして認知されることとなったんだろうけど)。

 さてインベイジョンだ。私はセットのテーマである「色」に沿うようにしたかった。この2つの願いを組み合わせた結果、デザインは非常に上手くいった。デザイン面での成功点としてもっとも美しいと思われる点は、軽い手札破壊にも関わらず「non-land(土地ではない)」の一語が入っていないことだ。

Alloy Golem / 合金のゴーレム (6)
アーティファクト クリーチャー - ゴーレム(Golem)
合金のゴーレムが戦場に出るに際し、色を1色選ぶ。
合金のゴーレムは、選ばれた色である。(それは同時にアーティファクトでもある。)
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Alloy+Golem/

 プレイヤーたちはいつも私たちにこう聞いてくるんだ。「色つきのアーティファクトは作らないの?」ってね。そして私はいつもこう答えるんだ。もう作ったよ、ってね。

 これがそうだ。礼はいらないよ。

Ancient Kavu / 年経たカヴー (3)(赤)
クリーチャー - カヴー(Kavu)
(2):年経たカヴーはターン終了時まで無色になる。
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ancient+Kavu/

 インベイジョンには一風変わった再録が多く詰め込まれていた。大半は新しい外見と変な名前で再録されている。このカードはミラージュの《烈火の精/Raging Spirit》の再録で、インベイジョンに再録された理由は「色」に関するテーマに沿ったカードだったからだ。

Armadillo Cloak / アルマジロの外套 (1)(緑)(白)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、+2/+2の修整を受けるとともにトランプルを持つ。
エンチャントされているクリーチャーがダメージを与えるたび、あなたはその点数に等しい点数のライフを得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Armadillo+Cloak/

 このカードのレアリティについては実に長い議論が戦わされた。最終的に私たちはこれをコモンに残すことにした。緑白には愛が足りない、と感じたのがその理由だ。

Assault / 暴行 (赤)
ソーサリー
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。暴行はそれに2点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Assault/
Battery / 殴打 (3)(緑)
ソーサリー
緑の3/3の象(Elephant)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Battery/

 これは《暴行 & 殴打/Assault & Battery》の話だ。

 うん、まず初めになぜ私が正式なカード名である《暴行+殴打/Assault+Battery》と書きたくなかったかを説明させて欲しい。

 分割カードに関しては「私の物だ」という思いを強く持っている。このカードが私のおこなってきたデザインの中でも特に好きだからだ(ちなみに私の中でこの順位づけはいまだに変わっていないが、ラヴニカはかなり近いところまで追い上げてきている)。

 分割カードについて当時のネーミング・チームは、単にカードの各半分がマジックのカードとして問題のない名前をもっていればよいという判断を下していた。

 その結果は不自然極まりないものだった。なぜならカードのメカニズムは明らかに1つのものが半分になっているにも関わらず、2つのカードの名前は互いに何ら関連のないものだったからだ。つけられたカード名は基本的にゴミだった。

 私はインベイジョン以前から(そして今後もおそらく)ネーミングに関する作業にも携わっていたが、このときは関わっていなかった。

 そこで私はBillの元へ行き、分割カードは超カッコいいんだからネーミング・チームはもっとカッコいい名前をつけるべきだ、と直談判した。Billの返事は、ただ文句を言うだけより出来ることがあるだろう?、だった。名前に関してどうすればよいのか、自分でより良いアイデアを出す必要があったのだ。

 そこで頭をひねってみたところ、降りて来たアイデアは「プレイヤーたちは各半分を関連づけたいはずだ。だったら名前で関連づければいいじゃないか」だった。

 名前が2つで1つになる? いや、もっといい方法があるぞ。2つの名前を&でつなげるとそのまま成句になるってのは?(註5)

 これはちょいと難しい仕事だった。なにせカードはすでにデザインされたあとだったからだ。それでも私は5つの分割カード全てに十分にカッコいい名前を考え付くことに成功したので、ネーミング・ルールに名前の変更を迫った。

 5つのうち、3つはしっくりきた。

 2つは変更された。

 ちなみにこの《暴行 & 殴打/Assault & Battery》がその2枚のうちの1枚だ。元々の名前は《ヒット & ラン/Hit & Run》だった(ネーミング・チームはそれよりも 暴行(Assault) と 殴打(Battery) のほうがメカニズムに合うと考えた)。

 ああ、そうそう、&マークの話だった。

 私の常々意図していたところでは、このカードはプレイヤーに&を使って呼ばれることになるはずだった。よって現在の名前が《暴行+殴打/Assault+Battery》であるこのカードは、カードリストに《暴行 & 殴打/Assault & Battery》という名で載るはずだった。

 しかし「&」という文字は、私がいまだに理解できない何らかの理由により、問題となったらしい。何にせよ、このカードの公的な呼び名は確かに《暴行+殴打/Assault+Battery》だが、私にとってはいつまでも《暴行 & 殴打/Assault & Battery》だ(註6)(分割カードのデザインについてもっと知りたいなら、私の書いたコラム「Split Decision」(註7)を読んで欲しい。面白い記事だよ。信じてくれ)。
(註5) &でつなげるとそのまま成句になる
 英語版の分割カードの名前はそれぞれを「and」でつなぐと1つの言い回しになる。さすがに日本語版のカードにはそれは受け継がれていない。

(註6) 《暴行 & 殴打/Assault & Battery》
 これ以降に出てくる分割カードの表記も全て + ではなく & が使われている。

(註7) Split Decision
 原文では以下のURLへのリンクが張ってある。
 内容は(当然のように)分割カードに関するMark Rosewaterのコラム。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr7


Barrin’s Unmaking / バリンのやり戻し (1)(青)
インスタント
パーマネント1つを対象とする。それがすべてのパーマネントの中で最も多い色であるか、最も多い色の1つと同じ色を持つ場合、それをオーナーの手札に戻す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Barrin%27s+Unmaking/

 奇妙な話だが、このカードは元々アングルード2(註8)で生まれる予定だった。知ってのとおり、アングルード2もまた「色」をテーマに扱っていたからだ(分かってるよ、確かにアングルードに入るほど変ちくりんには見えないかもしれない、でも見た目が人間っぽいのに毒を持たない野菜だってあるだろう?(註9))
(註8) アングルード2
 原文ではUnglued II。ちなみに製品化された際の正式名称はアンヒンジド

(註9) 毒を持たない野菜だってあるだろう?
 原文では以下のURLへのリンクが張ってある。
 アンヒンジドでは元々毒を持った人型の野菜クリーチャーという案があったらしい。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/arcana/688


Blind Seer / 無明の予見者 (2)(青)(青)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
(1)(青):呪文1つかパーマネント1つを対象とする。それはターン終了時まで、あなたが選んだ1色の色になる。
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Blind+Seer/

 プレイヤーたちはよく私たちにこう聞いてくるんだ。「ウルザってカード化されないの?」ってね。そして私はいつもこう答えるんだ。もう作ったよ、ってね。

 これがそうだ。

 Blind Seerはウルザが化けた姿だ(本当だ。小説や他の文献にだってそう書いてある)。

 礼はいらないよ。

Crimson Acolyte / 真紅の見習い僧 (1)(白)
クリーチャー - 人間(Human) クレリック(Cleric)
プロテクション(赤)
(白):クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時までプロテクション(赤)を得る。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Crimson+Acolyte/

 アポカリプスに関する最も大きな心残りの1つは、こいつの青バージョンと緑バージョンを作らなかったことだ。

Dream Thrush / 夢ツグミ (1)(青)
クリーチャー - 鳥(Bird)
飛行
(T):土地1つを対象とする。その土地は、ターン終了時まであなたが選んだ基本土地タイプ1種になる。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dream+Thrush/

 このカードが加えられたのは開発後半になってからだ。理由は、緑以外の色にもマルチカラーを手助けさせる方法はないか、色々と模索していたからだ。

Frenzied Tilling / 激情の耕作 (3)(赤)(緑)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、それをタップ状態で戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Frenzied+Tilling/

 私は対称的な(シンメトリカルな)デザインが大好きだ。このカードが生まれたわけは、赤は土地を破壊するのに対して緑は新しい土地を持ってくる、という対称性に気づかされたからだ。これらの相反する特性を1つのカードに収められないものか? ともに手をとりあって歩むわけにはいかないか? そんなわけでこのカードが生まれた。

Goham Djinn / ゴーアム・ジン (5)(黒)
クリーチャー - ジン(Djinn)
(1)(黒):ゴーアム・ジンを再生する。
すべてのパーマネントの中で、黒が最も多い色であるか、最も多い色の1つである限り、ゴーアム・ジンは-2/-2の修整を受ける。
5/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Goham+Djinn/

 このジンのサイクル(Goham, Halam, Ruham, Sulam, そしてZanam)もアングルード2から来たものだ。元は馬鹿っぽい名前と今とは違ったイラスト(今日のMagic Arcana(註10)を見てくれ)を持っていたが、その実、メカニック自体はそんなに馬鹿げていなかったため、これらは簡単に「現実の」マジックへやって来られたというわけだ。
(註10) 今日のMagic Arcana
 リンク先は以下のURL。5種のジンたちの元々の名前、イラスト、テキストが見られる。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/arcana/879


Harrow / 砕土 (2)(緑)
インスタント
砕土を唱えるための追加コストとして、土地を1つ生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーから、基本土地カードを最大2枚まで探し、それらを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Harrow/

 それを作れば彼が来るように(註11)、良いマナ加速カードを作れば彼らはやってくる。このカードのパワーバランスがいかに素晴らしいものだったか、それは冗談抜きに私を驚かせた。
(註11) それを作れば彼が来る
 原文は「If you build good mana fixers, they will come」。おそらく映画「フィールドオブドリームス」の一節「If you build it, he will come」から来ていると思われたので、元ネタを併記してみた。なお原文の「They」が何を指しているかは不明。
 以下のリンク先は映画「フィールドオブドリームス」のWikipediaの記事(リンク先は英語)。
 http://en.wikipedia.org/wiki/Field_of_Dreams


Kangee, Aerie Keeper / 巣を守るものカンジー (2)(白)(青)
伝説のクリーチャー - 鳥(Bird) ウィザード(Wizard)
キッカー(X)(2)(あなたがこの呪文を唱えるに際し、あなたは追加の(X)(2)を支払ってもよい。)
飛行
巣を守るものカンジーが戦場に出たとき、それがキッカーされていた場合、その上に羽根(feather)カウンターをX個置く。
他の鳥(Bird)クリーチャーは、巣を守るものカンジーの上に置かれた羽根カウンター1個につき+1/+1の修整を受ける。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kangee%2C+Aerie+Keeper/

 第6版で全ての鳥が鳥になったとき……ああ、ごめんごめん、全ての鳥のクリーチャータイプが鳥になったとき、プレイヤーからは怨嗟の声が上がった。

 彼らはファルコンの絶滅に怒りを覚えたんだ。

 念のためにつけくわえておくと、ファルコン自体がいなくなったわけじゃない。単にファルコンというクリーチャータイプがなくなっただけだ。

 なんでこれがそんなに騒がれたかって? とあるホームランドのクリーチャー、Soraya the Falconerがその理由だ。彼女のおかげで人々はファルコンデッキを組めたんだ。

 強いとは言い難いものではあったけど(いや「対象のファルコンはバンドを得る」のがどれほどのものよ?)それは確かに「ファルコン」デッキだった。

 そのようなわけでこのファルコン大好き人間の代表団は私たちの行った統合処理に憤りを覚えたわけだ。だけど、分かって欲しいのはこれによってもっと使い勝手のよい鳥のロードを作ることが可能になったわけさ。

 そしてインベイジョンのデザインで私はカッコいい鳥のロードを作った。

 ところがどっこい、開発チームはそのデザインを嫌った。

 開発チームが私のデザインのどこを嫌ったのか分からない(いや、私自身チームの一員だったわけだから、これはおかしな話かもしれないけどね)。何にせよ、他の何枚かのカードと同じようにこのカードも狙い撃ちにされた。

 最終的に、私が「いつか出すよ!」と何年も前から約束していた鳥のロードはとにかく世には出たわけだ。

 ゴミみたいな強さでね。

 がっかりさ。まったく。

 この借りはオンスロートブロックで返すよ。プレイするに値する鳥たちを出すことでね。
後編へ続く
http://regiant.diarynote.jp/201102120925214209/

コメント

nophoto
おつかれさまです
2011年2月12日14:39

MaRoの記事はいつも楽しいし、訳してると勉強になりますよね。
わたしは大好きです。

>なお原文の「They」が何を指しているかは不明。

引用先のWikipediaにも書いてありますが、そもそもフィールド・オブ・ドリームスのその台詞は「If you build it, they will come」と間違って書かれることが多く、「they will come」でも「he will come」でも基本的には同じことです。
そしてこの「If you bild it, he will come.」は、無計画に始めて偶然うまくいくことの例えとして使われます。
「この道を行けばどうなるものか」的な、とにかくやってみろ的文脈で使われることもありますが、無計画な事業を皮肉る場合に使われることの方が多いかも。
少なくとも新聞の見出しで積極的な意味で書いてあるのを見た記憶はないです。それは新聞の見出しだからだろうと言われたらそれまでですが。
ともあれ、そういうわけで、この「he/they will come」は何か具体的な事物を指すわけではありません。
日本語で言ったら何でしょうね。
「泥縄式」ともちょっと違いますし、「石橋を叩いて渡る」は逆だし…。

MaRoがどういうつもりでこう書いたかは想像するしかありませんが、多色セットに緑のこの種のカードが必要なのは明らかですから、いろいろ考えるより前に当然のつもりで作ったカードだし、読者も当然こういうカードがあるはずだと思ってるよね、てなところでしょうかね。

re-giant
2011年2月12日14:58

ああ、なるほど、有名なセリフなので転じてことわざのように
抽象的な意味合いにまで昇華されているっぽい、ということですね。

>この「he/they will come」は何か具体的な事物を指すわけではありません。

あれ? 原作の He は、特定の人物を指しているのか思ってました。
ネタばれになるのでここに書けないのがもどかしいですが(笑)

nophoto
仰るとおりです
2011年2月12日15:26

>あれ? 原作の He は、特定の人物を指しているのか思ってました。

はい。「フィールド・オブ・ドリームス」の中では彼を指しています。
上記は、この台詞が引用される場合の「he/they will come」を「彼 (ら) が来る」と訳す必要はない、というつもりでした。

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索