長過ぎて1つの記事に収まらなかったため、前編/後編に分けてみる
【翻訳】このカードはゾンビですか?/I cc: Dead People【Daily MTG】
Mark Rosewater
2003年03月03日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr61
ゾンビ週間へようこそ!
今週はゾンビについて話したいと思う。意思無き脳みそ喰らいなのか、誤った認識をされている死にぞこないのアメリカ人なのか? もう少しちゃんと見てみようじゃないか。
ただ殺されはしないヤツラ
先週説明したように、私はデザイナーや開発チームの中でもフレイバー寄りな立場にいる。また私はR&Dの中でも特に公(おおやけ)に顔を出しているメンバーでもある。そのようなわけで、随分前から私はR&Dと様々なクリーチャーの種族との間の窓口として働いてきた。
私たちはあまりこのことについて語ることは無かったが、実は各クリーチャータイプはそれぞれごとに組合を持っており、それらの組合は自分たちのクリーチャータイプがカード上で正当に扱われているかどうかについて、常に目を光らせている。
勘違いしないで欲しいのは、組合たちは自分たちのクリーチャータイプが悪いイメージで表現されているかどうかについてはほとんど気にしていない(いや、そういう組合もいるにはいる。たとえば兵士(Soldier)とかは、そんな扱いを受けたら激怒する)。彼らはただ「本来あるべき姿で描かれること」を望んでいるだけだ。
異なる種族はそれぞれまったく異なる点を気にする。例えば天使(Angel)は「担当のアーティストは誰!?」という質問でいつもいつも私を煩わせる(天使たちは、Matt Wilsonが天使のイラストを描くためだけに生きていると思っているふしがある)。ドワーフ(Dwarf)は、背の高さのジョークに非常に敏感だ。そしてマーフォーク(Merfolk)は? いやいや、勘弁してくれ、それを語りだしたら終わらないよ。まだ未開封の嘆願書がこんなに積みあがっているというのに。
しかしこれに関する一番の頭痛の種はゾンビ(Zombie)だ。
なぜゾンビが頭痛の種なのか? それは彼らが自分たちの印象が誤って認識されていると感じているからだ。ゾンビたちは、いつも自分たちが誤解されていると思っており、そのため彼らの組合のリーダーであるガ・アーク(Ga’Aark)は私に間断なく手紙を送ってきている。
今日は、これらの手紙の中から何通かを君たちへ紹介しようと思う。そうすることで私が毎日何と取っ組み合っているかを分かってもらえるだろう。ちなみに組合たちから手紙が届き始めるのは、各セットのプレビューが始まったときだ。プレビューを見た組合員たちが手紙を送ってくるという寸法だ。
なお、最初のほうの何通かの手紙はRichard Garfield宛てに届けられている。私がWizards of the Coast社に加わるまでは、彼がこの楽しい仕事を担当していたからだ。
(ゾンビの歴史について、もうちょっと落ち着いたデザインで読みたいと思う人は、ここ(註1)をクリックしてくれ)
(註1) ここ
リンク先は元記事の最下段にあるリスト。コラム1つ丸々使って解説した各エキスパンションごとのゾンビカードが無味乾燥的にそのまま並んでいる。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr61#table
アルファ/Alpha
アルファ/Alphaに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
《スケイズ・ゾンビ/Scathe Zombies》、《ゾンビ使い/Zombie Master》
親愛なる ガーフィールド様
まずは私の自己紹介から始めさせて頂けますでしょうか。
私の名前はガ・アークと申します。アクセントは「ア」にございます。蘇生されたアンデッドたちの組合である「ゾンビーズ(The Zombies)」のリーダーを勤めさせて頂いております。
私の組合員たちが正当な扱いを受けているかどうか、それを確認させていただくのが私の仕事でございます。これはご連絡しなくてはなるまい、と感じた懸案事項がここにいくつかありますのでご確認下さい。
・その1
「ゾンビ」とは何か、どのように表現されるべきか。これは組合の間でも議論の耐えない点であります。大体のメンバーは現在の状況に大きな不満はないようですが、血気盛んな少数派はこの単語から多くの(私たちが払拭しようと日々努めている)否定的な既存概念が連想されると感じております。
一般の方々が「ゾンビ」と聞いたとき、意思の無い動く死体と同等と見なされるでしょう。死体を蘇生させた者の気まぐれな命令にも忠実に従うような生き物。
これが一般に流布しているイメージであることは認めましょう。しかし絶対的な真実からはほど遠いものです。何にせよ、私自身は「ゾンビ」という表現に大筋では賛成ですが、問題と捉える向きも存在するという事実を心に留め置いていただきたいのです。
・その2
《スケイズ・ゾンビ/Scathe Zombies》の能力をご存知でしょうか? あのアルファにただ1枚だけ(この点についてもまた後で述べたいことがあります)存在するゾンビです。
たった1枚のゾンビ! さてそのゾンビとは? 3マナで2/2の恐ろしい《スケイズ・ゾンビ/Scathe Zombies》です! さて彼に何が出来るのでしょうか?
何も。
そう、3マナを払って出てくるのはバニラの2/2です。忘れないでいただきたいのは、これは1体のゾンビではないということです!カード名は「Zombies」、そう複数形でございます。イラストも6体のゾンビが描かれております。
6体のゾンビが2/2ですか? あなた様は映画ドーン・オブ・ザ・デッド/Dawn of the Dead(註2)をごらんになったことがないですか!?
緑には同じ能力のクリーチャーが1マナ安く存在しております。獣同然の脳みそを持った《灰色熊/Grizzly Bears》です。イラストを見ると2匹ですね。
6体のゾンビがどれほど短い時間で2匹の灰色熊のはらわたを喰らい尽くせるのか、ご存知ないのでしょうか? また、あなたはゾンビが並みの人間よりずっと強靭であるという事実をお忘れと思われます。
・その3
ゾンビのロード、《ゾンビ使い/Zombie Master》について取り上げさせてください。
このセットには3体のロードがおります。ゴブリン、マーフォーク、そしてゾンビのロードですね。それぞれ皆様、対応する土地渡り(Landwalk)を授けてくださいます。これはよろしいでしょう。
それぞれゴブリンとマーフォークのロードは、配下の方々へ+1/+1を与えられます。さて、私たちのロードは? おお、なんということでしょう、彼は再生(Regeneration)の能力を授けてくださいました。あなたの2/2(もちろんバニラです)は、今や再生することができるようになったのです。
素晴らしい。ガーフィールドさん、いい仕事されてますね。
・その4
《食屍鬼/Scavenging Ghoul》の話でございます。グール(Ghoul)は、生きている者を食らうアンデッドですね。つまりこれはゾンビではないでしょうか? もし彼のクリーチャータイプをゾンビに変えていただくことが出来れば、こんなに嬉しいことはありません(註3)。
・その5
ゾンビの数についてお話いたしたく思います。
私たちは様々なジャンルに長い歴史を持っている種族でございます。ホラー、サイエンスフィクション、そしてなんと言いましてもファンタジー。
この長年の貢献に対して、マジックのカードではどのような扱いでしょうか? ゾンビに類するカードは3枚です。しかも実際にゾンビというクリーチャータイプを持っているのは、その中でわずかに1枚だけです。その1枚とは? 項目の2番をご参照いただけますでしょうか。
・最後に
これらを書きしたためております理由は、あなた様が話の分かる方だと思われるからです。これらの不当とも思える扱いはただの手違いであると確信しております。来たる次のセットでは必ずや是正されていることでしょう。
あなたの友人 ガ・アークより(註2) 映画ドーン・オブ・ザ・デッド/Dawn of the Dead
2004年公開のホラー映画。元気に走るゾンビが出てくる。
(註3) 《食屍鬼/Scavenging Ghoul》
当時は種族がグール(Ghoul)だったが、ガ・アークの願いが通じたのか、2007年の大規模クリーチャータイプ更新の際に見事ゾンビとなっている。なおこれ以降にも、当時はゾンビではなかったが今やゾンビのクリーチャーが多く存在する。
アラビアンナイト/Arabian Nights
アラビアンナイト/Arabian Nightsに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
なし
親愛なる ガーフィールド様へ
前回お送りさせて頂いた手紙では不必要なまでに強い調子で文章をしたためてしまったのではないかと後悔いたしております。私はただ自分の組合員のためにと思い行動している、つまらないただのアンデッドでございます。
マジックの初のエキスパンションであるアラビアンナイト。そのプレビューを確認させて頂いた私の驚きをご想像ください。
魔女やソーサレスからは、実にダークな雰囲気が感じられます。ジンやイフリートも、非常にセットの雰囲気に合っている思われます。
しかし、盗賊団、オーガ、ガーディアンはいかがなものでしょう。誰かが色の役割を見直す必要があるのではないでしょうか? この点についてはこれいじょう申し上げることはございません。
本日、筆をとりました理由は《Khabal Ghoul》についてでございます。
《食屍鬼/Scavenging Ghoul》を覚えていらっしゃいますか? そうです、前にお伝えしたようにグールはゾンビに含まれるのです。2つのセットがリリースされ、ゾンビであるにも関わらず正しくそう銘打たれたカードは4分の1に過ぎません。
今やグールは非常に恵まれた扱いを受けておりますが、誤解を恐れずにはっきり申し上げますと、私たちゾンビはこれに対し「クソむかついて」おります。
どうか、お願いです。ゾンビをお加えください。そしてお作りになった際には、どうかそれらをゾンビとお呼びいただけますでしょうか。
どうか、お願い致します。
あなたの友人 ガ・アークより
アンティキティー/Antiquities
アンティキティー/Antiquitiesに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
なし
親愛なる ガーフィールド様
まずはお詫び申し上げます。
矮小な死に損ないに過ぎない私のような存在が、世界に名だたる遊戯になるであろうマジックというゲームの創造者に対して多大なる無礼を働いたことをお許し下さい。
このアンティキティーというセットには明確なメッセージが感じられました(註4)。あなた様がアンティキティーのデザイナーを通じて私に送ったメッセージです。
そのメッセージはあまり雄弁で鮮やかでした。私があなた様へふざけた態度をとったことに対して、あなた様も私に当然の報復を行ったわけです。
深く承知いたしました。今後、無礼な態度は固く慎むように致します。そのうえで、多大なる影響力を有していらっしゃるデザイナーであるあなた様にこの哀れな死体の申し出をお届け致したく思います。
お願いです。どうか、どうかゾンビに多少の光をお当て下さいますよう、宜しくお願い致します。
あなたの友人 ガ・アークより(註4) アンティキティーというセット
アンティキティーはアーティファクトがテーマのセット。セット全体の枚数は85枚で、黒のクリーチャーはそのうちたったの4体しかいない。ちなみに4体のクリーチャータイプはそれぞれ、グレムリン、クレリック、ポルターガイスト、デーモン。
レジェンド/Legends
レジェンド/Legendsに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
なし
親愛なる ガーフィールド様
ちょっと待ってください。
いや、マジで、ちょっと待ってください。 ミイラ? 迷える魂? 歩く死体? 夜魔? 卑劣なる者? 地獄の番人? うちの奴らは血の気が引きましたよ。あ、いや、残ってる限りの血の気がです。
もうなんでもいいです。細かいこと言いません。もう《スケイズ・ゾンビ/Scathe Zombies》でもいいです。あ、いや、確かに今回の《Headless Horseman》も3マナで2/2のバニラですけど、そうじゃないんです。
ゾンビを下さい。
なんでもいいです。
あなたの友人 ガ・アークより
ザ・ダーク/The Dark
ザ・ダーク/The Darkに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
《The Drowned》
親愛なる ガーフィールド様
あなたはマジックのプレイヤーたちを相手にしております。
私は生肉喰らいの組合員たちを相手にしております。
私がこのまま彼らの要求に応えられない場合、残っている内臓も残らず食い荒らされてしまうことでしょう。
まず初めに感謝の意を捧げたいと思います。2体目のゾンビを作って下さったことに対するお礼です。しかし残念ながらこの《The Drowned》は私たちが求めているものとはちょっと違うのです。
まず色が青です。さらにその能力は私たちのロードが授けてくださるはずの能力そのものです。これではゾンビであることの有用性を高めることにはなりません。
もう1つ。あなたはフランケンシュタインという小説をお読みになられたことがありますでしょうか。このモンスター(註5)は死体のパーツをより合わせて作られたアンデッドです。あまり細かいことは言いたくないのですが、このクリーチャーは非常に「ゾンビ」だと思います。
それと《Eater of the Dead》です。「死体を喰らうもの」です。つまり彼は死体を食べるわけです。
おかしくないですか? なんでゾンビじゃないんですか!?
申し訳ありません。少々取り乱しました。あなたと事を構えたいわけではないのです。あくまで私の組合員が正当に扱われることを願っているのです。
冗談抜きで食われそうです。お願いします。
あなたの友人 ガ・アークより(註5) このモンスター
この単語にザ・ダークの《Frankenstein’s Monster》のカードデータがリンクされている。このカードの初出時のクリーチャータイプはモンスター(Monster)だった。なお2007年の例のアレで無事にゾンビ(Zombie)となっている。
フォールンエンパイア/Fallen Empire
フォールンエンパイア/Fallen Empireに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
なし
親愛なる ガーフィールド様
右足がありません。
なぜか分かりますか? それは彼らに食われたからです。
なんでそんなことをされたか分かりますか? それは彼らがマジでムカついているからです。
エキスパンションに放り込まれている黒のクリーチャーはスラル(Thrull)とクレリック(Cleric)、そしてウサギっぽいアバターが1匹。
私に餌をくれてもいい頃じゃないでしょうか。食べ残しの骨だけでもいいです。
あなたの友人 ガ・アークより
アイスエイジ/Ice Age
アイスエイジ/Ice Ageに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
《壊疽のゾンビ/Gangrenous Zombies》、《リム=ドゥールの軍勢/Legions of Lim-Dul》、《Lim-Dul’s Cohort》
親愛なる リチャードへ
ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
左足は無事です。
あなたが私たちに授けて下さいました3体のゾンビに対し、深く感謝いたします。これによって現在のゾンビの数は2倍以上となりました。
今後も手紙をお送りすることになるとは思いますが、今回の件が私をいかに歓喜させたかだけはお忘れなきようお願いいたします。
このリム=ドゥール(Lim-Dul)という方が気に入りました。今後も活躍されるとよいのですが。
あなたの友人 ガ・アークより
ホームランド/Homelands
ホームランド/Homelandsに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
なし
親愛なる リチャードへ
あなたに怒りをぶつけるべきなのか、感謝を捧げるべきなのか迷っております。8つのセットがリリースされ、私たちにはわずかに5体のゾンビがいるだけです。
ともに頑張りましょう。
最近、残った片足に組合員の視線を感じます。
あなたの友人 ガ・アークより
追伸:
ところでリム=ドゥールさんはどこに行かれたのでしょうか?
アライアンス/Alliances
アライアンス/Alliancesに収録されているゾンビ、およびゾンビ関連のカード:
《バルデュヴィアの死者/Balduvian Dead》、《Feast or Famine》
親愛なる ローズウォーター様
あなたが次の窓口担当だとリチャードから連絡がありました。宜しくお願い致します。
明るい話から始めましょう。6番目と7番目の当たる私たちの代表について感謝したいと思います(《バルデュヴィアの死者/Balduvian Dead》と《Feast or Famine》(註6)ですね)。
この日に至るまでに収録されたゾンビの中でも《バルデュヴィアの死者/Balduvian Dead》は最上級のゾンビと思われます。誠にありがとうございます。
さて、その上でお伝えしたいことがあります。アイスエイジがリリースされた際に、私にはある望みが芽生えてまいりました。
アイスエイジでの、屍術師リム=ドゥールの登場、および1セットに3体のゾンビ。もしかしたらこれが今後の主流となるのではないか、という望みです。
ところがそれ以降、2つのセットがリリースされた現在、新たに加わったゾンビはわずかに1体です。現在、ゾンビデッキを組もうとすると3色デッキになります(註7)。
私たちをお助けください。
あなたの友人 ガ・アークより(註6) 《Feast or Famine》
余談。《Feast or Famine》は、2つのモードのいずれかを選ぶインスタントだが、この両方の効果を剣に込めると効果が変わるだけでなく、桁違いの強さになる。詳細は以下のURLを参照のこと。
http://magiccards.info/mbs/en/138.html
(註7) 3色デッキ
《Drowned》が青のクリーチャーで、《バルデュヴィアの死者/Balduvian Dead》は黒クリーチャーだがその能力の起動コストには赤マナを必要とする。
後編へ続く
http://regiant.diarynote.jp/201102260757166492/
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