余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 今週もイニストラードの新カードたち。また今週も同じテンプレの使い回しかよ、と思った人もいるかもしれないけど、実は今週からフルスポイラーが発表されているので微妙に先週までと文面が異なっている。

余談2:月曜日 《肉屋の包丁/Butcher’s Cleaver》

 このカードを見ていると「うしおととら」や「からくりサーカス」で有名な漫画家・藤田和日郎の短編「美食王の到着」(短編集「暁の歌」収録)に登場した魔法の包丁を思い出す。切ったものをなんでも美味しく食べられるようになる包丁。

 しかしこのカードの場合、実際に切ったものを食せるのは人間のみというあたりに業の深さを感じるというか、イニストラードの世界観に潜む「本当に恐ろしいのは人間」という隠れたテーマが伝わってくる。

余談3:火曜日 《霊捕らえの装置/Geistcatcher’s Rig》

 この装置のイラストを含めて、イニストラードの青いカードに散見される「20世紀前半の当時に思い描かれた最先端技術っぽいメカ」を見ていると、1930年代の欧米を舞台にしたグループSNEの「ゴーストハンターRPG」を思い出す。懐かしい。

余談4:水曜日 《ケッシグの狼の地/Kessig Wolf Run》

 カード名の「Run」は何を意味してるんだろう。英語名だけ見るとまるでソーサリーみたいだ。効果は「あなたのクリーチャーは全てターン終了時まで速攻と先制攻撃を得ると同時に狼男でもある」という感じ。

 それはさておき「Run」の話。日本語版では「~の地」と訳している。簡単に調べた限りでは「Run」で「~が走り回る場所/土地」という意味はぎりぎりありそう。何にせよ、結構な意訳のように思う。

余談5:木曜日 《心なき召喚/Heartless Summoning》

 効果は、クリーチャー呪文のコストを(2)下げるかわりに自軍のクリーチャーが全て-1/-1されるというもの。イメージ的には、相手の意思を無視して木偶人形のような状態で弱体化したクリーチャーを召喚するかわりに、呼び出すのに必要な魔力は少なくて済む、ということらしい。

 それはさておき、ホラーを目指しているのは分かるけど、イニストラードの絵はなんか気持ち悪いのが多いなあ。このカードもぶよぶよと膨れた死体が天井から吊られているイラスト。

 Card of the Day のページの右側に表示されている広告が動く、という話を前に一度したと思う。今現在の広告は、この《心なき召喚/Heartless Summoning》の死体がぶらぶら揺れているイラストが表示されている。……売る気あるのか。

余談6:金曜日 《無形の美徳/Intangible Virtue》

 クリーチャー・トークンを全体強化するエンチャント。カード名の「Intangible」は、物理的な形や実体を持たないものを指す言葉で、今やってる仕事では「Intangible Asset(無形資産)」という使われ方でよく見る。

 気になったのは、クリーチャー・トークンって無形じゃないよね、ということ。

 これがスピリットを強化するならしっくりくるんだけど、イニストラードのトークン・クリーチャーはスピリット以外にも、狼やら天使やらホムンクルスやらゾンビやら、どれもこれも人間的な心には欠けているかもしれないけど実体のある生物が豊富に用意されている。

 ちょっとイメージがつかみきれないカード。

余談7:【翻訳】本場アメリカのGen Conで垣間見たEDH(以下略)

 最近、翻訳する記事を探す気力も時間もなかったところに折りよく「誰かこれ訳して」という記事を発見したので、これ幸いと訳してみた。どれほど需要があるのかは分からなかったけど、意外と読みにきている人が多くてびっくり。EDHって人気あるんだなー。

 この記事を含めて、Channel FireballやStar City Gamesの記事をたまに訳すと、公式サイトの記事は本当に読みやすい & 訳しやすいということを実感する。スラングや妙にこった言い回しを使っていないからかな。

 言い換えると、今回の記事のような「くだけた文章」を訳すときは公式記事を訳すときとは違う方向の発見があり、これはこれで勉強になるし、訳していて面白いこともある。「CVS」で「コンビニエンスストア」を指すとは知らなかった、とか。

 それはさておき。

 記事のほうにも少し書いたように、今回の記事は訳す際に色々と苦労した。

 苦労した理由は、はっきり言ってしまうと作者の言いたいことをよく分からなかったから。例えば「競技的なEDH」は結局ありなのかなしなのか(そもそも何をもってして「競技的(Competitive)」か否かを決めているのか)、公式の方針に納得いっているのかいないのか、今後のEDHがどのようになって欲しいのか、などなど。

 もちろん上記についての意見らしきことも書いてはあるし、よく分からないのはそもそも読解力や英語力が足りないせいかもしれないし、もしかしたら実際にEDHを遊んだことが一度もないからかもしれない(最後のが意外と大きいような気がする)。

 何にせよ、以下が訳に苦労したり訳に自信がなかったりした箇所。

(*1)
 僕らは大半のプレイヤーが集まっている端のテーブルへ向かった。そこではすでに上記のデッキに関する議論が声高に始まっていた。
 議論は徐々に危険なレベルまで白熱しだした。何人かのプレイヤーは、このまま我慢するくらいなら暴力行為にすら訴えそうな勢いだった。

原文:
 We headed over to where the majority of the players had collected at the end of one table and were already loudly discussing the offending players.
 Thinly veiled threats were being tossed out. Some guys were nearly to the point of threatening violence if they were forced to endure what had just happened.

 実際はこの2つの文章は異なる段落になっており、苦労したのは、新しい段落の1つ目の文章である「Thinly veiled threats were being tossed out」の訳。前の段落の末尾も載せておいたほうが分かりやすいかなと思ったので合わせて記載。

 ここは、あえて直訳するなら「徐々に/ゆっくりと + 明らかに/あらわになった + 脅威/問題点が + 投げかけられていた/放り出されていた」という感じになるのかな。普通に考えれば、ここでの「問題点」はエラヨウ使いのプレイヤーたちなんだろうけど、それらは別に「徐々に明らかに」なったわけではないから噛み合わない。

 というわけで、前後の文脈から推測してここに入りそうな文章で埋めてみたのが「議論は徐々に危険なレベルまで白熱しだした」という訳。原文無視とまではいかないけど、読みやすさ重視の結構な意訳。

(*2)
 話によると、エラヨウ使いのうちの1人を問い詰めたところ、相手はオンラインでも何度も議題に上がっているガチコンボや共謀の犠牲になったことが前にあり、今年は黙って犠牲者側に回るつもりはない、と言っていたらしい。

原文:
 Word was that one of the two had been confronted, and said that in years past, he was subject to the collusion and hard combos that had been talked about online, and this year, he wasn’t going to be a victim.

 訳自体はそこまで間違っていないと思うけど日本語がイマイチかもしれないと思った箇所。原文に引きずられた、と言えばいいのかな。

 「Collusion」は「陰謀」や「策略」などに当たる言葉で、EDHの場合は、自分以外のプレイヤーが結託して敵対してくる状態を指していると思われる。麻雀で言う「コンビ打ち」と言えばいいんだろうか。

 自分で訳しておいてなんだけど「共謀」はちょっと固いというか不自然というか……このコンビ打ち的なずるい行動について、EDHを遊ばれている方々のあいだで一般的に使われている呼称があれば知りたいところ。

(*3)
 僕が思うに、ウィザーズは彼らが表立って認めている以上にこのゲームについて深く理解しているんじゃないだろうか。

原文:
 I think Wizards has a deeper understanding of things than they let on.

 このあとの文章を何度も読み返したんだけど、結局この「Things」が何を指しているのかがよく分からなかった。「EDHに関する何か」だとは思うんだけど……なんなんだろう。

 「EDHがカジュアルなゲームであり競技には絶対的に向いてない」ということ? それとも「EDHを競技的に成功させるためにはどうすればよいか」ということ? 結局は「このゲーム」と訳したけど、そんな曖昧な単語で済ませている時点でやっぱり内容を理解したとは言えない気もする。

(*4)
 彼らは統率者戦という環境に対する初手は構築済みを通してだった。それがフォーマットにもたらしたものは新しいカードと新規参入者をたくさん生み出すのに役立ったということだけでなく、同時に確実にこのフォーマットへ競技性をもたらすために打てる最善手を打ってきたのではないか、というのが僕の懸案だった。

原文:
 Their first foray into Commander through the Pre-Cons not only infuses the format with new toys and has served to turn tons of new players on to the format, but it nails the best way to inject competition as far as I’m concerned.

 訳に関しては、色々と難しい中で特に「it nails the best way to inject competition」が分からない。

 「nail」をどう訳せばいいのかにかかっている(ちなみに、日本では「つめ」という意味で有名だけど、実際は「名詞:釘、動詞:くぎづけにする」という意味のほうが一般的だと思う)。俗語では「うまいことやる、成功する」という意味もあるらしいので、それかなあ、と思って訳してみた。

 んで、そうだとすると「best way(最適な方法、最も良い方法)」を「nail(上手いこと成功させる)」ということになる。つまり「最適な方法を成功させる」ということになり意味が通らない。

 ここは、この記事の中でも特に肝となる部分に思われたのでギリギリまで悩みまくった。

(*5)
 それは例えば構築済みを手渡され他のプレイヤーも構築済みを持っているようなバランスのとれた環境で戦うことだ。

原文:
 Something about being handed a pre-constructed product and being in a balanced environment with other pre-cons levels the field.

 最後の「a balanced environment with other pre-cons levels the field」で悩んだ。語順そのままに訳していくと「バランスのとれた環境 + ~によって + 他の構築済みデッキ + 平らにならす/平均化される + 場が」という感じかな。

 「pre-cons」が「pre-constructed decks」で合ってると思うんだけど、「全員が構築済みデッキを使えばバランスがとれるよ!」って主張はありえないような……つまり訳が間違っている気がする。だけどそうとしか解釈できない……けどおかしい気がして困った。最終的には原文準拠で。

(*6)
 2日間で5時間しか睡眠をとってないと細かいミスは増えるし、マッドサイエンティストみたいに狂ったような笑い声を上げ続けることになる。

原文:
 Five hours of sleep in two days will make you miss things the little things, like (for example) grossly overextending while cackling like a mad scientist.

 ここらを訳すときは、訳す側も体力と気力と時間がもう限界だったので、ノリと勢いでそれらしく仕上げただけになってる。あらためてゆっくり考えてみる。

 直訳するなら……「2日間で5時間の睡眠はあなたに細かい事柄を失わせる。例えば、マッドサイエンティストのようにわめきたてているあいだにひどく限度を超えることなどである」となる。

 もちろんこのままじゃまったく意味が分からない。

 まず間違いないのは「2日間で5時間しか寝てない。そんな状態だと……」で文章が始まっていること。つまり睡眠時間が足りないときに起き得ることが後に続くはず。

 睡眠時間が足りないと「make you miss things the little things」らしい。この「miss」は「失わせる」という意味ではなく、日本語のミスと同じく「が上手くできない、失敗する」という意味だと思う。

 それはいいんだけど「things the little things が上手くいかなくなる」って何なの? なんでここに2つの things が出てくるのかがよく分からない。「make you miss the little things」じゃダメなんだろうか。

 それに続くコンマ以降の文章も悩ましい。

 とりあえず「例えば~」で始まってることは間違いないんだけど、何の例を挙げているのかがよく分からない。「睡眠時間が足りないときにミスしやすい『何か』」の例なのか「睡眠時間が足りないときに『起こしやすいミス』」の例なのか。

 どっちでも同じじゃん、って言われそうだけど、日本語に訳そうとするとこれで色々違ってくる。例えばこれの前半部分が「2日間で5時間しか寝てないと、皿洗いでお皿を割ってしまう回数が増える」だったとすると「ミスしやすい『何か』」は「皿洗い」であり、「起こしやすいミス」は「皿を割ること」になる。

 話をズレた。閑話休題。

 後半は「Like [A] while [B]」という文章で、これが前半で述べている何かの例となる。これも捕らえ方としては2通りあって……

  (Like [A]) while [B]

  Like ([A] while [B])

 のいずれか。前者は「例えばひどくやりすぎてしまうことが例として挙げられる。その最中、僕はマッドサイエンティストみたいにわめきたてていた」となる。後者の場合「例えば、マッドサイエンティストみたいにわめきたてつつひどく何かをやりすぎること」となる。

 多分、この文章は何か特別な言い回しかことわざを用いていて、そのまま訳そうとしても意味が通じないんだと思う。つまり、負けを認めるので誰か助けてください。お願いします。

(*7)
 僕らがタクシー代に費やしたお金はチップを入れても40ドルほどだ。もしくは5杯分のLong Island Iced Teaだけの価値はある。

原文:
 Pretty sure our taxi in was about $40 after tip. Or five Long Island Iced Teas’ worth.

 投げっぱなし訳。今あらためて読んでみると「レンタカーを借りるくらいなら、その同じお金で Long Island Iced Tea を5杯飲んだほうがいい」ってことなんだと思う。

(*8)
 ランジェリーそのものな衣装もね。僕はアニメの大ファンってわけじゃないけど、見かけたいくつかコスプレは神に誓って素晴らしいものだったよ。

原文:
 And then there’s the lingerie. I’m not a huge anime fan, but god bless any IP that makes some of the sights we saw socially acceptable.

 まずはあえて直訳してみると「そしてさらにそこにはランジェリーがあった。僕は大のアニメファンではない。しかし、神の祝福あれ、どんなIPだろうと僕たちの見た風景のいくつかを社会的に許容可能にしてくれるなら」という感じ……違うな。

 直訳としても「そしてさらにそこにはランジェリーがあった。僕は大のアニメファンではない。しかし、神の祝福あれ、どんなIPだろうと僕らが見た風景のいくつかを許容可能にしてくれるIPであるならば」かな。

 まあ、要するにここで出てくる IP が何か分からないとどうしようもないという話。まさか Internet Protocol じゃないよな、これ。ここも正直お手上げなので、誰か優しい人に教えを請いたい。

コメント

nophoto
通りすがり
2011年9月28日20:54

原文を読んでませんが、それでも明らかに分かるところだけ。

>run
家畜などを好き勝手にさせておく囲い場のことを「run」と言います。
日本でも今や「ドッグ・ラン」という語は一般的じゃないんでしょうか。

>「Thinly veiled threats were being tossed out」
「thinly veiled」というのは、隠そうとしてるんだけど丸分かりだったり、そもそもそれほど隠そうともしてなかったりで、見え見えな状態を指します。
つまり、もともとそこらじゅうでイライラした様子を隠そうともしてなかった連中が集まって、とうとうその不満が爆発した様子を表現しています。

>「nail the best way」
確かに「nail」は日本語に直すのがなかなか難しいですね。
英語的には全部「釘で打つ」様から派生する意味なんですけれど。
ここでは、何かを広く明らかに示すことを意味しています。
掲示板に告知文や新聞の号外や指名手配書なんかを鋲で止めて示す感じです。

なお、「as far as I’m concerned」は、「わたしの意見では」とか「私見ですが」とかです。
(あるいは、「懸案」という日本語の意味をお間違えでは?)

>Or five Long Island Iced Teas’ worth.

ロング・アイランド・アイス・ティー5杯分のお金しか使わなかった、ということを言っています。
その価値があるとかではなく、そのくらい安かったということです。

re-giant
2011年9月28日21:57

もう翻訳やめるべきかと悩むほどボロボロですね。心底恥ずかしい。穴があったら死にたい。

>「thinly veiled」というのは、隠そうとしてるんだけど丸分かりだったり、そもそもそれほど隠そうともしてなかったりで、見え見えな状態を指します。

なるほど。考えてみたらVeilって隠すって意味でしたね。なんか勘違いしてました。

>掲示板に告知文や新聞の号外や指名手配書なんかを鋲で止めて示す感じです。

「これ、はっといて」ってことですね。いや「nail」だから「留めておいて」かな。

>なお、「as far as I’m concerned」は、「わたしの意見では」とか「私見ですが」とか

あらためて調べたらちゃんと成句として辞書に載ってました。言い訳のしようもないほどに。

>(あるいは、「懸案」という日本語の意味をお間違えでは?)

不安になってチェックしてみましたが、日本語は、なんとか大丈夫のようです。はい。

翻訳記事(と呼んでいいのか疑わしくなってきた)は、今後も読む方がいるかもしれませんし、時間見つけて指摘頂いた内容で修正しておこうと思います。色々ありがとうございました。

高潮の
2011年9月29日0:55

とりあえずわかりそうなところだけ。


:Distance between Bradley and Atlanta, where they decided to re-route our return connector: 967 miles.
「奴らが帰りの便の代替として提示した便の乗り継ぎ場所であるアトランタからブラッドリーまで:967 哩」みたいな感じでしょうね。おそらく帰りの便がなんらかの理由で欠航になって、代替便が提示されたのでしょうが、軽く調べた感じではおよそ考えられないようなルートです。もしかするとアメリカ合衆国ではよくある話、なのかも知れませんが、30 台半ばの大人がこの怒りようですからやはりいくらなんでもひどいのでしょう。
デルタ航空は数年前に倒産してた記憶があるんですが、いま調べたら連邦倒産法とやらの適用を受けた上で再生したそうで。

:All of the recent rumblings about what finally did in 5 Color as a format started to make more sense to me.
これは「5-Color」というフォーマットの話ですね。正直全くの門外漢なので想像するほかありませんが、
:最近聞く、フォーマットとしての 5-Color が最終的に辿った運命についての不平不満が、ようやく僕にも実感の持てるものになってきた。
みたいな感じでしょうか。端的に言えば、EDH も 5-Color と同じ運命になるのではないか、と危惧しているのでしょう。いや、5-Color がどうなったのか知らないのですが。

re-giant
2011年9月29日7:24

>デルタ航空は数年前に倒産してた記憶があるんですが

やっぱりダメだしされてるだけあって、経営状況もイマイチだったんでしょうか。係員に財布盗られた、ってのはさすがに追加料金か何かの比喩だと思いたいんですが。

>これは「5-Color」というフォーマットの話ですね。

あー。「5-color as a format」ってそういうことか。なるほど。「5-color」というフォーマットというと、あれですかね、5人対戦で1人1色受け持って、五芒星の線上にアタックが成立するというフォーマット。昔、少し遊んだような……気のせいのような。

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