【翻訳】モダンというフォーマットとその未来について/The Modern Future【DailyMTG】
Tom LaPille
2011年11月04日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/167

 モダン週間も今日で終わりだ。今週は私にとって非常に親しみ深いテーマだった。モダンというフォーマットを実現するべく動いた中心の1人だからというだけではなく、テーマ週間にとりあげるというアイデアを売りこんだ張本人だからだ。

 私は過去にモダンに関する記事を2回書いている。1つ目(註)はマジックオンラインのコミュニティカップにこのフォーマットを用いる件について紹介したときの記事、2つ目(註)はその結果とプロツアーフィラデルフィア(註)のフォーマットがモダンに変更になったことを報告させてもらったときの記事だ。

 その後、プロツアーフィラデルフィアが開催され、いくつかのカードが禁止リストに加えられた。今日の記事はこのモダン・シリーズの3つ目の記事となる。
(註) 1つ目の記事
 原文では以下のURLへリンクが張られている。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/ld/144

(註) 2つ目の記事
 原文では以下のURLへリンクが張られている。1つ目の記事と同じなのでリンクミスかも
 http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/ld/144

 おそらくこっちが正解。内容は大会の結果に即しての禁止リストの更新、および記事にあるとおりプロツアーフィラデルフィアのフォーマットがモダンに変更になった件。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/ld/155

(註) プロツアーフィラデルフィア
 原文では以下のURLへリンクが張られている。プロツアーフィラデルフィアのカバレージ
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/ptphi11/welcome


 プロツアーフィラデルフィアのフォーマットにはモダンが採用された。私たちの正直な感想としては、フォーマットはかなりぶっ壊れていた。4ターン目が迎えられるようなフォーマットになることを期待していたのだが、実際はそうはならなかった。

 大量のコンボデッキが安定した3ターンキルをもたらし、コントロールデッキらしきものは全て《雲上の座/Cloudpost》によるビッグマナに追いやられ、これら両方のデッキに対抗できた数少ない攻撃的なデッキは、大量の妨害呪文が入っているものか、もしくはコンボデッキと同じかそれ以上の速度で相手を倒せるクロックを持ったものかだった。

 これは私たちの望んでいた姿ではなかったが、それから数週間というもの、プレイヤーたちはモダンに対する興味を増していったようだった。

 シアトル周辺のショップはモダンの大会をみずから開き、プレイヤーに常にない興味を抱かせる結果となった。またマジックオンラインでもモダンの大会が次々と開かれた。

 多くのプレイヤーはプロツアーで活躍したデッキをコピーし、一部のプレイヤーはオリジナルのデッキを生み出す作業に入った。これらのイベントはそれなりに成功を収めており、その事実は私たちを勇気づけた。

 しかし私たちはプロツアー時点でのフォーマットの状態を好ましいとは思っていなかった。前述した通り、それはあまりに速すぎる上に多様性に乏しかった。

 そのため私たちは禁止カードを増やした。

 それによって何がどう変わったか、変更後のデータはそれほど集まっていない。その理由は禁止カードが発表されて以降、このフォーマットに対するプレイヤーたちの興味が以前よりも薄れてしまったようだからだ。一部のプレイヤーは「モダンは死んだ」「もう何をしても手遅れだ」とまで言っている。

 なぜだろう?

 私はそういった「フォーマットが誤った方向へねじまげられた」ことに対する苦情をTwitterやEメールを通じて受け取っている。

 確かに私も不満に感じる気持ちは分からないでもない。しかし私自身この変更に関する議論と決定に加わっていた身として、この変更によって環境が必ずや改善されると信じている。

 それを証明できるのは時間だけだろう。

 この現象を説明づけるとすれば、単純に環境があまりに大きく変えられてしまったためだろう。一部のプレイヤーは確かに暗闇を手探りで進むかのように新たなフォーマットを模索することに楽しみを感じているが、大多数のプレイヤーはそうではなく、ある程度の指針を欲しがる。

 これがプロツアー予選のシーズンが来る前にプロツアーを開催する理由の1つであり、新たなフォーマットでまずグランプリを開催する理由の1つであり、また新セットのリリースのあとすぐに規模の大きいスタンダードの大会を開催する理由の1つでもある。

 プレイヤーはデッキリストを欲している。用意されたデッキリストをコピーしてすぐにプレイしたいプレイヤーたちがいるのだ。またどんなデッキをメタればいいのかを知りたいプレイヤーたちもいる。

 そこにある程度の前提があればこそ対応策や措置を講じることもできるわけだが、私たちがプロツアーのトップ8のうち7つのデッキを禁じてしまったことで、その前提が取り払われてしまった。現状では確かにこのフォーマットに対する動きが停滞してしまっても仕方がないと言える。

 この先を心配する人たちの気持ちも分かるが、モダンの未来を憂慮するには及ばないと言い切れるだけの材料もまたたくさん用意されている。以下がその理由だ。

理由その1:世界選手権がデッキリストをもたらしてくれる

 今月下旬に開催される今年のマジック世界選手権では、世界中のトッププレイヤーが最終目のトップ8へと勝ち進むためにモダンの構築デッキを3日目に披露してくれる。

 国別代表チームの3人のうちの1人もまたモダンのフォーマットでプレイすることになる。これによって大量のデッキリストが提供されることになり、このフォーマットに新たな幕開けをもたらすだろう。

 もし君が、使ってみて楽しいデッキのリストが用意されるのを待っていたのであれば、もしくは読みこむべき環境のメタが固まるのを待っていたのであれば、あと2週間ほどの辛抱だ。

 私たちは禁止リストがこれ以上更新されないことを願っているが、世界選手権後もまたフォーマットに多少の変更が加わる可能性は否定できない。何かが壊れているなら、それを直すのが私たちの仕事だ。モダンが長く続くためには、それに対する変更もまた必要経費だ。

 世界選手権の直後はまだ、プレミアイベントに属するような大会でモダン環境を経験したプレイヤーといえば、世界選手権に参加したプレイヤーかプロツアーフィラデルフィアに参加したプレイヤーに限られるだろう。

 しかし来年になればその範囲はグンと広がるはずだ。そうやって環境が広がってしまう前にフォーマットを「正しておくこと」は非常に重要なことだと私たちは考えている。

 いきなり先に進み過ぎた。ちょっと話を戻そう。

理由その2:私たちは来年からモダンを高いレベルでサポートしていく

 さっき私が、新しいフォーマットのデッキリストの種を撒いておくためにプロツアー予選のためにプロツアーを開催する、と言ったことを覚えているだろうか。今回もそれは変わらない。

 つい最近、私たちは2012年シーズンの最初のプロツアー予選がモダンでとりおこなわれると宣言したばかりだ。規模の大きいオンラインでないオープンな公認大会でモダンをプレイしたいのなら、来年の初めにさっそくその機会が待っているということだ。これらの予選を勝ち抜けば、来年開催される2つ目のプロツアーへの参加権が得られる。

 参加資格を問わないオープンな大会で、かつもっと賞金の高い大会に出たいと望んでいる君のために、私たちは2つのモダンフォーマットのグランプリを開催することにしている。

 1つはネブラスカ州リンカーンで2月に開催される。もう1つはイタリアはトリノで3月末に開催される。来年の残りのスケジュールについてはまだ発表されていないが、よほどのことがない限りはこれら以外にもモダンのフォーマットを用いたグランプリがさらに用意されることになると信じてくれていい。

理由その3:フォーマットが熟すのには時間がかかる

 モダンが死にかけているんじゃないかと心配している君のために、レガシーが生まれたときのことを話そう。

 レガシーというフォーマットは2004年に発表された。出来る限りたくさんのカードが利用可能で、かつローテーションのないフォーマットを生み出すために私たちはヴィンテージの制限カードをレガシーの禁止リストとして統合した。

 フォーマットの発表は華々しく行われたが、当初は不平不満しか聞かれなかった。

 プレイヤーたちはこのフォーマットをプレイできる場所を見つけられず、どのようなデッキが候補に上がるのかも分からず、プレイする前にカードを集める気にもならなかった。そのようなわけで大してプレイされることもなかった。

 初めてレガシーを採用したプレミアイベントは2005年11月に開催されたグランプリフィラデルフィアだった。フォーマットが発表されてから丸1年が経過していた。参加人数は約500人。初めて大規模な大会が開催されたフォーマットとしては悪くない人数だった。

 1ヶ月後、フランスのリールでまたレガシーを採用したグランプリが開催された。これにはグランプリフィラデルフィアのほぼ倍のプレイヤーが集まった。しかし次のレガシーの登場するグランプリは、2006年には無く、2007年のグランプリコロンバスを待たなくてはならなかった。

 それからまたレガシーのグランプリのない年を1年はさみ、2009年のシカゴグランプリのあと、2010年と2011年のそれぞれに2回ずつ開催されている。

 そうやって時が過ぎる中でいくつかのレガシーグランプリは稀に見る大盛況なイベントとなった。特に2010年のグランプリマドリードは、2,227人という史上最大規模のマジックの大会だった。

 ここまで説明した中には重要な大会が欠けている。そう、StarCityGames.comオープンシリーズだ。この大会はレガシーの成功に多大なる貢献をしている。

 この大会は2009年に始まり、それ以来途切れることなく続いている。この大会は、新たなデッキリストと高額の賞金が出るレガシーの大会の両方をプレイヤーに提供している。

 StarCityが週末に定期的なレガシーの大会を開くという決断を下すまで、レガシーは本当の意味では始まっていなかったのではないかと私は考えている。

 グランプリは確かに人気のある大会だ。しかしフォーマットが真に受け入れられたかどうかは世界中にある一般のショップがそのフォーマットで定期的な大会を開いてくれるようになったときであり、またそれらが広く認知されるようになったときだ。

 レガシーは今でこそ幅広い人気を集めているフォーマットだが、今の時点まで育つのに7年の歳月を要している。

 モダンはまだ生まれて数ヶ月であり、ショップが自らの手でイベントを開くようになってから1ヵ月やそこらしか経っていない。モダンとレガシーを今この瞬間に比べるのはあきらかに不公平というものだ。

 モダンにとっての良いニュースとしては、大規模な大会を開く、というサポートがレガシーよりもずっと早く与えられるということがあげられる。

 前述したとおり、最初のプロツアー予選にはモダンが採用されており、これによってたくさんのデッキリストとそれを用いるための機会が多くのプレイヤーに提供されるだろう。

 私たちはこれによってフォーマットが正しい方向へと進むのではないかと期待している。

私たちはモダンを楽しく息の長いフォーマットにしたい

 リアルタイム戦略ゲームやFPSのようなオンラインのデジタルゲームは、発売後も要所要所で調整が加えられることがある。単なる歩兵が強すぎたり、レールガンのダメージが高すぎたりしたときだ。

 これらはパッチで修正可能だ。平均的なプレイヤーは変更に気づかないかもしれないレベルの修正かもしれない。しかし熟練したプレイヤーはこれによって不均衡が是正されることを歓迎するだろう。

 マジックはアナログなゲームだ。そのため、デザインは慎重になされる必要がある。一度作ってしまった以上はもう何もできないのだ。

《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》が出来ることを後から変えることは出来ない。《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》はそのままであり続ける。何しろ私たちは物理的なカードを大量に印刷し終えたあとに、環境へばらまかれたそれら全てを回収してマナコストを修整したりはできないのだ。

 もちろん私たちはフォーマットに手を加えることはいつでもできるが、そうすることには当然強い抵抗感がある。よって私たちは気軽に変更を加えることは決してない。

 ここで述べたいことは、要するに私たちはモダンに末長く楽しまれて欲しいと思っている、ということだ。そう思ってないとすれば私たちはここまで心を砕いたりはしない。

 モダンには、大きく育つために必要なだけの時間とサポートが今後も提供される。

 そのサポートとは、高レベルな大会を開催していくことや、また皆がプレイしたいと思ってくれるようなフォーマットを作り上げることで成される。

 私たちは長い時間をかけてレガシーを管理してきた。その時間の中で私たちはプレイヤーが何を求めているのかを学び、その経験を活かすことでフォーマットを成長させてきた。モダンも同じように成長していくだろうと私は考えている。

 これからしばらくの間もプレイヤーたちはモダンについて不満に思うことがあるかもしれない。しかしこのフォーマットはマジックの他の分野に比べれば、まだ生まれたばかりの赤ん坊に過ぎないのだ。

 私たちは決してこのフォーマットを皮肉や当てつけのために生み出したわけではなく、このフォーマットが成熟するためのサポートを惜しむつもりもない。モダンが成長していく道のりを君たちが共に歩んでくれるのであれば幸いだ。

コメント

nophoto
KYK
2011年11月6日12:01

翻訳ありがたいです
モダンのこれからに期待したいですね

re-giant
2011年11月6日12:52

楽しんでもらえたのであれば訳した甲斐があります。
ありがとうございました。

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