余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 コメントで「ブロードウェーミュージカルのタイトル関連?」という予想があったけど、確認のしようがなくて困る。ミュージカルはほとんど知らない。

 シェイクスピアはまだ主要なタイトルくらいなら聞き覚えがあるので自己判断が効くけど、知らない分野のことを単語レベルで調べてもこじつけにしかならない気がする。

 一応、今週のカードの英語名だけ並べておくので気が向いた方は考察してみるよろし。

  ・月曜:Dream Coat
  ・火曜:Kismet
  ・水曜:Slayer of the Wicked
  ・木曜:Uktabi Wildcats
  ・金曜:Creepy Doll

余談2:月曜日 《Dream Coat》

 自身の色を好きな色に変えられるエンチャント・クリーチャー。読んだ直後、一瞬だけ「へえ、意外と使えるかも」と思った自分が信じられない。

 現在のオラクルでは「あなたが選んだ色1色か色の組み合わせになる」と書かれているけど、実際に印刷されたテキストは「Caster may change target creature’s color to any other color」となっている。当時は単色にしか変えられなかったんだろうな。

余談3:火曜日 《宿命/Kismet》

 ネタの根幹に関わるところで誤訳してた。すいません。指摘に感謝。

 以下、余談。

 昔、青白パーミッションを使ってた頃、序盤の時間稼ぎのためだけに(他のコンボパーツを一切入れず)《停滞/Stasis》を1枚だけ紛れ込ませていたことがあった。まあ、たまには役に立った、とだけ言っておく。

 さて、あるとき、対戦相手が何らかのコンボデッキだったらしく《嵐の大釜/Storm Cauldron》を出してきた。ちょうどそのとき手札に上記の《停滞/Statsis》があったので、返しのターンに場に出した。

 観戦してた人が「あとは《宿命/Kismet》を待つだけですね」と言うのに対して「いえ、このデッキには《宿命/Kismet》が入ってないんです」と返した。対戦の結果は覚えていないけど、その会話だけは妙に記憶に残ってる。

 なお、その後しばらくして《停滞/Stasis》は解雇された。

余談4:水曜日 《忌まわしきものの処刑者/Slayer of the Wicked》

 カードイラストはなんとなく覚えていたけど、てっきりイラスト上の登場人物は1人だと思ってた。確かに言われてみれば後ろにもう1人いる。前面の青年のインパクトが強すぎて気づかなかった。

 カードの効果は「あなたはそれを破壊してもよい」なので、吸血鬼や狼男を見つけたからといって問答無用に滅するわけではないらしい。いい人だ。だけどその優しさがあだとなって返ってきそうで不安でもある。「馬鹿め、誰が改心などするか!」とか言って背後から襲ってくる奴がいそうだ。

 ……ああ、そのためにお父さんがいるのか。「死ねえーっ!」(ザクッ)「ううっ」「と、父さん!」みたいな展開があって「俺の甘さが父さんを死なせた」と思いつめてしばらくは May ではなく Must で破壊するようになるけど、何かのきっかけで幼い頃に亡くなった母親が実は吸血鬼だったとかを知って「人と魔の間にも愛は生まれるのか……だから父さんは見境なしに滅したりしなかったのか」と気づき、最後は父親の遺志を継いで「あなたはそれを破壊してもよい」に戻る。

 そんなストーリー(何が?)。

余談5:木曜日 《ウークタビー・ワイルドキャット/Uktabi Wildcats》

 今週のテーマについての予想をコメントでもらった日。種明かしのない週については答えあわせができないのが考え物だ。まあ、それはさておきカードの話。

 ウークタビーというとどうしてもオランウータンの影がちらつくけど、他にも色んな生き物が生息しているんだっけか。オランウータン以外には……ワイルドキャットとかイフリートとかドレイクとかいるのか。

 とんでもなく危険な場所だな。行くのはやめとこう。

 そうそう。カードが出た当時、仲間内では主に英語版が使われていて日本語版を見る機会がなく、ずっとみんなで「Uktabi」を「ウークタービ」って発音してた。そのせいでいまだに「ウークタビー」という言い方には違和感を覚えてしまう。

余談6:金曜日 《不気味な人形/Creepy Doll》

 リンクだらけの回。さすがにリンク先全てを和訳する気にはなれなかったので、部分的に抜粋して翻訳。Mark Rosewaterの記事はどこかに和訳があったような気がしたけど見つからなかった。

 翻訳的な話をすると「~の秘密 その1、その2、その3」は原文で「~ Fact one, Fact two, Fact three」となっている。「~の本当の話 その1」とか「~の事実 その1」とかのほうが単語の訳としては近いけど、ここは雰囲気重視で。

 あと「サンディエゴで開催されたComic Conというコンベンションで参加者に贈呈された」の原文は「given away at the 2011 San Diego Comic Con」となっている。つまり原文では誰に贈呈されたかが明記されていない(もちろんリンク先のコンベンションレポートにはきちんと出てる)。

 「Given Away」には「手放した」というニュアンスが含まれているからそれだけで「主催者側から客へ」というのが伝わるんだけど、さて日本語に置き換えるとなると「誰が」を明示しないとどうしても収まりが悪いような気がして「参加者に」を追加。

 いらなかったかな。でも「贈呈された」だとアーティストからウィザーズにという方向の矢印も想像させてしまうような……考えすぎかなあ。なお、この「参加者」という単語に落ち着くまで「ゲスト」とか「客」とか「来訪者」とか色々悩んだりもしてる。

余談7:領域を移動する/Zone Change

 Tom LaPilleの最後の記事。デベロップメントの話はZac Hillに任せたというわけで、コラムの内容は主に「私とマジックについて」になってる。

 この記事の中で「私はマスターズエディションIIIとマスターズエディションIVの仕事を誇りに思っている」とある。Tom LaPilleはこれらのセットについてのコラムを2つ書いている。それらは個人的に今まで訳してきたTom LaPilleの記事の中でも特に好きな記事だった。

  タイムマシンの作り方/How to Make a Time Machine
  http://regiant.diarynote.jp/201101160649345352/

  時間旅行/Time Traveling
  http://regiant.diarynote.jp/201101100437461128/

 今回のコラムの中でスティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの話が出てきた。せっかくなので視聴してみた。

 マック製品を所有したこともないし、触れた回数も微々たるものなので、ジョブスについて何も語る資格を持たない身ではあるけれど、それでも彼が亡くなっていることを知った上でこのスピーチを聞くと何かしら胸に迫るものがあった。難しい単語をほとんど用いずにこれだけのことを語れるってのはすごいな。

 それからこの記事で印象に残ったのは《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》と《風生みの魔道士/Windwright Mage》が出て来た箇所。

 確かにこれらのカードの能力は、強いか弱いかとはまったく違った次元で「なんでそうなるの?」と問い詰めたくなるような効果だった。
Cloudchaser Kestrel / 雲を追うケストレル (1)(白)(白)
クリーチャー - 鳥(Bird)
飛行
雲を追うケストレルが戦場に出たとき、エンチャント1つを対象とし、それを破壊する。
(白):パーマネント1つを対象とする。それはターン終了時まで白になる。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cloudchaser+Kestrel/

Windwright Mage / 風生みの魔道士 (白)(青)(黒)
アーティファクト クリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
絆魂(このクリーチャーがダメージを与える場合、さらにあなたは同じ点数のライフを得る。)
風生みの魔道士は、あなたの墓地にアーティファクト・カードがあるかぎり飛行を持つ。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Windwright+Mage/

 ケストレルの方は「Cloudchaserだからエンチャントを割れるのはまあいいとして、それと色を変える能力はどう関連してるの?」とか「なんで色変えられるん?」とか。

 魔道士の方は「風生みの魔法を使うから空を飛べるんだろうけど、なんでアーティファクトが壊れると風が生まれるの? あと風を生んだり、アーティファクトが壊れてると強くなれる魔法とライフ回復の能力ってどう関連してるの?」とか。

 こういった点を踏まえながらZac Hillの記事を読むとフレイバーの大切さが改めて分かる。

 ここから訳の話。
原文:
 I already feel that in my new role my level of standards is causing us to challenge the way we have done things in the past, and that tells me that I am doing the right work.

拙訳:
 すでに新たに与えられた役割に求められていることは分かっているつもりだ。私のスタンダードによって過去に成功させてきた挑戦と同じことをまた再び行うのだ。それはつまり私が正しい道へ向かっているということでもある。

 一番悩んだのは冒頭の「I already feel that in my new role my level of standards is …」の「my new role my level of standards」。これ、どこで切れて、どこがどこを修飾してるんだろう。

 結局は「I already feel that in my new role, my level of standards is …」というコンマがあるものと考えて訳してみた。全力は尽くした。今はこれが精一杯(万国旗を取り出す)。

 最後に。

 翻訳のほうにも書いたけど、このコラムの最後には「変身ボタン」がついてる。これを押すことでZac Hillの記事に「変身」するようになってる。

 初めて読み終えたときは「今日は以外と短い記事だったな。これは訳すのが楽そうだ……ん、なんだ、このボタン? ……うわ!?」という感じ。

余談8:交代、反転、そして翻訳/Rotations, Reflections, and Translations

 タイトルを訳すとき、原文と同じようになんとか韻を踏ませられないものかと試行錯誤してみた。ダメだった。「反転、反射、そして ……」「代役、……、そして翻訳」とか、まあ色々考えてはみたけど、3つそろえるのはちょっと。

 記事については、まずコラムを最後まで通して読んでみてから、一人称は「私」じゃないな、ということになった。カジュアルでくだけた物言いだし、コラムの出だしでいきなり遠吠えをあげてるし。
原文:
 The idea was that you had this nice, intelligent, blue-feeling utility creature that kept about his research, only to go craaaaaaaaaaazy every once in awhile and crash into the red zone.

拙訳:
 アイデアは要するに、礼儀正しくて賢くて「青」っぽい能力をもったシステムクリーチャーが自分の研究に没頭しているのに、ときどき何かの拍子で気が狂ったように顔を真っ「赤」にして戦闘に突入してしまう、って寸法だ。

 昔のオフィシャルトーナメントの決勝で用いられていたプレイマットは、中央が赤くなっていて、そこへクリーチャーを差し向けることでアタックを意味していたらしい。

 それがこの原文にある「Red Zone」で、今では俗語として「Red Zoneへ向かう」という言葉が「アタックへ向かわせる」という意味になっている。さらにここでは「赤のクリーチャーになる」というのともかけている。

 でも日本語で「レッドゾーン」って言っても通じるか分からないし、それと「赤」がかかっているというのもあまり直観的でないなあ、ということで意訳完了。
原文:
 It’s a classic trope-the vampire who can turn into a bat, and back again.

拙訳:
 よく知られた伝説だよな。吸血鬼はコウモリに変身できるし、逆もまたしかりだ。

 ポイントは「Trope」。イニストラード関係の記事はこの単語がよく出てくる。辞書を引くと「言葉のあや/比喩/修辞句」みたいな単語が並んでる。

 言ってみれば「~と言えば~をイメージするよね」というようなことで、それを日本語の1単語に直せ、という問題。「比喩」「例え」「シンボル」「アイコン」「象徴」「連想」などなど、色々思いついたけど、結局、1対1で常に同じ単語に訳すことは諦めた。

 それぞれの文章ごとに「その文章全体が言いたいこと」を読みとって、どこが「Trope」に当たるか分からなくてもいいや、という風に訳してみることにした。

 上の例だと「Trope」に「伝説」という意味はおそらくないけど、文章自体はまあなんとか言いたいことを伝えられているんじゃないかと。

 前にも1回、Zac Hillの文章を訳してみたことがあるけど、彼の文章はTom LaPilleのそれに比べると砕けた物言いが多くて読むのも訳すのも難しい。

余談8:余談の余談

 Diary Noteを始めたのがちょうど1年前の今日、2010年12月04日だった。色んな人の翻訳に上から目線でコメントするばかりなことにちょっと罪悪感のようなものを感じたことから始めたこのブログも、なんだかんだで丸1年間。

 レイアウトに試行錯誤したり、訳に疑問のあった箇所をまとめていたはずの週のまとめが単なるマジックよもやま話になってたり、Card of the Dayが更新されず空いてしまう土曜日の部分に長文翻訳をつっこむようになったり、訳がボロボロなのを指摘されてへこんだり、と色々あった。

 何にせよ単調な日々の中で日課があるというのはとても助けになってる。

 多種多様でかつ質の高い記事をコンスタントに提供してくれる公式サイトへの感謝を決して忘れないようにしつつ、これからも無理のない範囲で続けていこうと思ってる……ので、訳に関する率直な意見やらツッコミやらを今後もお願いします。

コメント

nophoto
F
2011年12月5日10:26

> Mark Rosewaterの記事はどこかに和訳があったような気がしたけど見つからなかった。
mtg-jpで2011.09.28に「恐るべき物語 その1」として掲載されています。

nophoto
あいしゃ
2011年12月5日10:52

いつもお疲れさまです。
「Trope」の単語は私は「ファンタジーの有名なモチーフ、象徴」という意味にとりまして、その時その時に合わせて訳を変えています。

Tom LaPille記事がズササササーーーっと動いて「変身」したのは私も驚きました。

re-giant
2011年12月5日13:20

>Fさん
おおう、やっぱり…… (´・ω・`)
どこかで見た気がしてたんですよね。情報、ありがとうございました。

>あいしゃさん
対応する日本語が1対1でポンとそこにあるわけではないと考えると「Trope」というのは本当に「英単語」だなあ、と思いました。

変身ボタン、驚きましたよね。

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