【翻訳】グランプリ・コスタリカの決勝戦カバレージ 中村修平 vs デビッド・シャーフマン/Finals – Shuhei Nakamura vs. David Sharfman【Daily MTG】
Marc Calderaro
2012年09月16日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/gpcr12/welcome#f
 トップ8のデッキリストは以下から確認できる。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/eventcoverage/gpcr12/welcome#t8decks

 「勝つにしてもあまり速攻で終わらせないでくれよ」とDavid Sharfmanは冗談っぽくそう微笑んだが、おそらくこれは本心だろう。何しろShuhei Nakamuraのデッキは猪突猛進といった勢いでトップ8の何もかもを蹂躙してきたのだから。

 観衆の中からBen Starkが「もうすぐ飯食いに出ちゃうぜ。5分以内に終わらせろよ」と声をかけてきたが、それがDavid Sharfmanの気分を後押ししてくれたかどうかは定かではない。

 それはさておき、開始早々、David Sharfmanに運が向いて来たようだった。Shuhei Nakamuraが2回のマリガンで手札を5枚に減らしてきたのに対し、David Sharfmanとしては笑みをこらえきれない様子だった。「このことはカバレージに書かないでくれよ」と僕に言ってきたが、当然無視だ。

1ゲーム目

 Shuhei Nakamuraの最初のプレイは《狩漁者/Watercourser》だった。David Sharfmanはすでに序盤から《時間人形/Chronomaton》と《港の無法者/Harbor Bandit》を戦場に並べており、後者を使ってShuhei Nakamuraのライフを17点へと減らした。これがこのゲームの最初のダメージとなった。David SharfmanはShuhei Nakamuraのマリガンを利用し、アドバンテージを広げていった。

 Shuhei Nakamuraはカード枚数で劣る場からでも、デッキの強さを遺憾なく見せつけた。4ターン目に《ターランドの発動/Talrand’s Invocation》を叩きつけつつ、手札にはまだ《エイヴンの従者/Aven Squire》と《武勇の誇示/Show of Valor》と《移し変え/Redirect》の3枚を残している。David Sharfmanはアンタップ前に彼の《時間人形/Chronomaton》を2/2に育てた。

 David Sharfmanは誰もアタックへは向かわせず、また何もタップすることなくそのままShuhei Nakamuraの脅威に対応できるよう5マナをアンタップしたままターンを返した。

 Shuhei Nakamuraは2体のドレイクと《狩漁者/Watercourser》をアタックに向かわせた。David Sharfmanは《フェアリーの侵略者/Faerie Invaders》をプレイしたが、Shuhei Nakamuraには《武勇の誇示/Show of Valor》という切り札があった。3/3の飛行が落ちたことで制空権はShuhei Nakamuraのものとなった。

 攻撃が2回繰り返され、ライフ差は17対14から17対8となった。David Sharfmanは押される一方だった。まだ勝ち目はぎりぎりあったが、アタッカーたちを食い止められないこの状況で防戦一方のまま勝つことは難しい。僕の心の声が聞こえたのか、David Sharfmanは《時間人形/Chronomaton》と《港の無法者/Harbor Bandit》をアタックに向かわせた。Shuhei Nakamuraのライフはこれで12となった。David Sharfmanは《風のドレイク/Wind Drake》を守備に残してターンを返した。

 Shuhei Nakamuraは1体のドレイクをアタックに向かわせた(これは《エイヴンの従者/Aven Squire》によって3/3になる)。David Sharfmanは少し考えてから《公開処刑/Public Execution》を唱えた。「こっちね」と指した対象は攻撃に参加していないほうのドレイクだ。これによってトークンは姿を消し、Shuhei Nakamuraは相手にダメージを与えられずにターンを終えた。
訳註:
 アタックしているドレイクは3/3になっているから《公開処刑/Public Execution》の効果があっても1点はダメージが入ると思われる。原文にある pointed the card at the non-attacking Drake の non-attacking が間違いで、実際は攻撃に参加しているドレイクを対象にしたのかもしれない。
 David Sharfmanがブロッカー用に《風のドレイク/Wind Drake》を残してたことをすっかり忘れてた。1/3になったドレイク・トークンをブロックしたのだとすると何の不思議もない。すいません、Marc Calderaro。

 この試合を見ていた多くの観客は「なんでShuhei Nakamuraは《公開処刑/Public Execution》に対して《移し変え/Redirect》を唱えなかったんだろう?」と不思議に思った。Shuhei Nakamura本人以外にとっては不思議に見えたが、実のところ《公開処刑/Public Execution》のカードテキストには「いずれかの対戦相手がコントロールするクリーチャー1体を対象」と書かれているのだ。

 そのため《移し変え/Redirect》を唱えたところで事態を大きく好転させることはできない。Shuhei Nakamuraは、同じ部屋にいた多くのプレイヤーがとまどってしまうようなそんな事態をためらうそぶりなく適切に判断してみせた。見事だ。

 Shuhei Nakamuraはダメージを与えられずにターンを終えたが、David Sharfmanは違った。彼は《狩漁者/Watercourser》を残すと自身のドレイクと《港の無法者/Harbor Bandit》でアタックし、ライフ差は7対8となった。

 Shuhei Nakamuraの手札には《空召喚士ターランド/Talrand, Sky Summoner》と《隊長の号令/Captain’s Call》があったが、両方を同じターンに唱えるにはマナが足りない。彼は机を指先で叩きつつダメージ計算を始めた。

 彼は3体の兵士トークンを呼びだすと3/3のドレイクでアタックしDavid Sharfmanのライフを5点まで減らした。David Sharfmanは《予言/Divination》で2枚の知識を脳内に補充した。彼にはまだ4マナが余っている。そのうちの2マナを使って彼は《港の無法者/Harbor Bandit》をアンブロッカブルにして攻撃し、Shuhei Nakamuraのライフを4点まで減らした。これでライフ差は4-5だ。彼の手札にはふさわしい獲物を求めて《否認/Negate》が息をひそめている。

 ドレイクがアタックし、ライフ差は4-2となった。Shuhei Nakamuraは《空召喚士ターランド/Talrand, Sky Summoner》を召喚。彼の元には《狩漁者/Watercourser》、《エイヴンの従者/Aven Squire》、3体のトークンと1体のレジェンドがブロッカーとして残された。しかしDavid Sharfmanの元にはそれら全てを乗り越えられる《港の無法者/Harbor Bandit》がおり、彼は2マナをタップしてそれをアンブロッカブルにして攻撃に向かわせた。これでShuhei Nakamuraのライフは残り1だ。

 David Sharfmanは勝ちにいくことにした。《否認/Negate》のマナを残すことなく残った5マナを使いきって《本質の吸収/Essence Drain》を唱えたのだ。大抵の相手であればこれで勝つには十分だ。しかしShuhei Nakamuraの手札にはとんでもない切り札が残されていた。覚えているかな? そう《移し変え/Redirect》だ。

 Shuhei Nakamuraのデッキは、彼がマリガンで手札を5枚に減らしつつも彼に必要なカードを必要なだけもたらすだけのパワーを持っていたが、勝つためにはそれらを適切に用いることが条件だった。

 仮に《移し変え/Redirect》が《否認/Negate》されていたとしてもそのインスタントは《空召喚士ターランド/Talrand, Sky Summoner》によって新たな2/2ドレイクを生み出していたので、Shuhei Nakamuraの勝ちは変わらなかった。しかしそれでも……《移し変え/Redirect》とはね。まったく大したもんだ。

Shuhei Nakamura 1 – 0 David Sharfman

2ゲーム目

 土地が2枚しかない初手を見て少し考えたあと、結局David Sharfmanはそれをキープすることにした。フロリダから来たこのプレイヤーが勝つにはかなりよい引きに恵まれないといけないだろう。何しろShuhei Nakamuraは《エイヴンの従者/Aven Squire》から《隊長の号令/Captain’s Call》へとつないでみせたのだから。

 1ターン後、さらにそこには2体のドレイク・トークンが参戦していた。《ターランドの発動/Talrand’s Invocation》のおかげだ。Shuhei Nakamuraの元には5ターン目にして合計パワーが8となるクリーチャー群がいた。その頃、David Sharfmanは3枚目の土地を求めているところだった。

 David Sharfmanは3枚目と4枚目の土地の確保には苦慮したが、彼はそれらを必要なターンに引けたと言えるだろう。まず彼は《巻物泥棒/Scroll Thief》と《風のドレイク/Wind Drake》を呼びだした。それでなんとかボードの情勢を彼の方向へ傾けようとしていたが、彼を待ち受けるShuhei Nakamuraの手札は不気味だったし、ようやく場が整った段階で彼のライフは残された時間の少なさを示していた。

 日本人プレイヤーはDavid Sharfmanのドレイクをバウンスし、攻撃によって彼のライフを9点まで落とした。Shuhei Nakamuraがグランプリの栄光をつかむにはもう相手の態勢を崩し続けさえすれば良かった。

 僕の後ろでBen Starkがため息をついた。彼は心から彼の同郷の友人を応援していたが、そんな彼でさえ状況が絶望的であることは認めざるを得なかった。David Sharfmanは最後のあがきに《巻物泥棒/Scroll Thief》へ《吸血鬼の印/Mark of the Vampire》をつけた。必要なだけの時間がこの絆魂で稼げるようと願って。

 しかし、場にあるだけの脅威で、飛行クリーチャー(《エイヴンの従者/Aven Squire》と2体のドレイク)は彼のライフを7点から2点へと減らし、Shuhei Nakamuraは手札に《本質の散乱/Essence Scatter》を2枚保持したままターンを返した。

 David Sharfmanは何とかしようとあがいたが、悲しいことに彼のあがきはクリーチャーによるものだった。4枚の土地がタップされ、2枚の打ち消し呪文が墓地へと落ち、Shuhei Nakamuraは世界の頂点に舞い戻った。

Shuhei Nakamura 2 – 0 David Sharfman

 Shuhei Nakamuraはマジックプレイヤー選手権のトップ4をタイブレイカ―で逃した直後だったが、4つ目のグランプリ優勝という栄光を見事勝ちとることが出来た。

 おめでとう、Shuhei!

コメント

平成の森田(けんちゃん)
2012年9月22日11:55

始めまして、通り過ぎの者ですが失礼いたします。

訳註:
 アタックしているドレイクは3/3になっているから《公開処刑/Public Execution》の効果があっても1点はダメージが入ると思われる。原文にある pointed the card at the non-attacking Drake の non-attacking が間違いで、実際は攻撃に参加しているドレイクを対象にしたのかもしれない。

上記の部分は、1/3になったドレイクがブロッカーに残していた2/2のドレイクにブロックされたのでダメージが入らなかったんじゃないかなと思います。

読みたかったカヴァレージだったので大変助かりました。

re-giant
2012年9月22日12:50

ドレイクのこと、すっかり忘れてました。ありがとうございました。

ゼノ
ゼノ
2012年9月22日22:37

翻訳お疲れ様です。同じく読みたかった記事だったので助かりましたー。

re-giant
2012年9月23日8:01

訳した理由も自分が読みたかった記事だからです。気になりますよね、やっぱり。

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