《ガイアの空の民/Gaea’s Skyfolk》(アポカリプス)
このカードに関してよく聞かれる質問の1つに「このカードのどこに緑のメカニズムが含まれているの?」がある。答えは「マナレシオの良さ」だ。
通常、青という色は「2マナで2/2」クリーチャーがいてはいけない色だ(その通り、君のことだよ、《アトランティスの王/Lord of Atlantis》)。緑こそがその色だ。
しかし緑が空を飛ぼうと思ったら多大なコストを支払う必要がある。何しろ緑はもっとも空を飛ぶのが苦手な色だ(ドラゴンがあれほど赤に馴染まなかったらその座を赤に奪われていたかもしれないけどね)。
このカードは2つの色が組み合わさることで初めて可能となったんだ。どちらが欠けても無理だった。金枠のカードというのはそもそもがそういうものじゃなかったかい?
次によく聞かれる質問は「エルフもマーフォークも飛べないのにどうしてこいつは飛んでるの?」だ。それは……えーと……ごめん、そろそろ紙面が尽きる。いや、そうじゃなくて、そう、それはデザイン面の質問じゃないということだ。
次だ、次。
《猟場番/Gamekeeper》(ウルザズディスティニー)
ウルザズ・サーガブロック内におけるクリーチャーのカードパワーの差ときたらこの2枚を並べるだけでも分かるってなもんだ。
一目瞭然だね。
《グリッサ・サンシーカー/Glissa Sunseeker》(ミラディン)
このカードのデザインにまつわる裏話についてはすでに「Loose Ends」(註)という記事で述べている。そこで私が述べたことは以下の通りだ。
~ ~ ~ ~ ~ ここから引用 ~ ~ ~ ~ ~ ~
これがその物語だ。ミラディンの開発時のこと(すでにデザインファイルは手渡した後のことだ)、私はこのミラディンの物語の主人公であるグリッサのカードをデザインするよう依頼された。
このキャラクターの大きな特徴は2つ。1つはアーティファクトを破壊するのがとても上手いということ。もう1つは彼女はマナと深く結びついているということ。
これら2つの要素をどうやって組み合わせるか、が私の挑戦だった。もっとも分かりやすい方法は、マナコストを起動コストとするアーティファクト破壊の能力を彼女に持たせることだ。
つまらん。
次に私が考えたのは、アーティファクトを破壊しつつマナを生み出す能力だった。しかしそれはすでに《解体/Deconstruct》と《灰塵化/Turn to Dust》という形でカード化されている。
マナをどう使ってアーティファクトを破壊すればいいんだ?
そこまで考えたとき、私に天啓が閃いた。マナを違った使い方してみてはどうだろう? マナプールに溜まっているマナが点数を決めるというのは? そこまで思い付いたらあとは一気にメカニズムが決まった。
~ ~ ~ ~ ~ ここまで引用 ~ ~ ~ ~ ~ ~
《心の管理人/Heart Warden》(ウルザズ・デスティニー)
このカードはウルザズ・デスティニーの「場からサイクリングするカード」の1つだ。これについては能力語のコラムでつい最近語ったばかりだ(コラムの名前は「Ability Word To Your Mother」(註)だ)。
このカードのデザインを思い付いたのは、ゲームの最中に用を終えてしまったカードについて私が考えていたときのことだ。ゲームの中盤から終盤にかかったとき、別のカード1枚と交換したくなるカードは?
明らかにマナクリーチャーはその1つだろう。序盤はよく働いてくれるが、十分なマナが手に入ってしまったら用済み、というわけだ。
《眼腐りの狩人/Hunter of Eyeblights》(ローウィン)
デザイナーとして冥利に尽きる瞬間というのは、新たなカードが生まれるほどにその価値が増していく可能性を秘めたカードを生み出せたときだ。
このカードは単体では単に「対象のクリーチャーをちょっとしたリスクを負いつつ破壊できるカード」に過ぎない。この狩人が動き出す前に対処されてしまえば、君は単に対戦相手のクリーチャーを強化しただけで終わってしまう。
しかし+1/+1カウンターをテーマとしたモーニングタイドという環境(特に+1/+1カウンターを置く増援(Reinforcements)というメカニズムのある環境)においては《眼腐りの狩人/Hunter of Eyeblights》の力はいや増す。
《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》(アルファ)
エルフ週間について初めて聞いたときは、過去から現在に至る全てのエルフのベスト20について記事を書こうと考えていた。最初はその内容で記事を書き始めてみたが、すぐにエルフはその題材にふさわしくないことに気づいた。強いエルフたちはあまりに能力が似通っているのだ。
さて、ここで《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を紹介したのは、その記事で1位を飾る予定だったのがこれだからだ。Richard Garfield はまさにマジックの開幕直後からこのエルフを登場させ、それ以来、私たちは確かにいくつかの素晴らしいエルフを生み出してきたが、私の個人的な感想としては、結局このオリジナルをしのぐ1枚は未だ生み出されていないように思う。
《薬の走り手/Medicine Runner》(シャドウムーア)
最初、このカードが取り除くのは-1/-1カウンターだった。しかしローウィンブロックやそれよりも過去のセットとも相互作用を持つようにしたかったためにカウンターの種類を問わないことにした。それによってより良いカードになったと思う。
《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》(時のらせん)
このカードがデザインされたわけは、私がそれまでに一般化していた慣習とはちょっと違ったことをしたかったからだ。他のカードがプレイされたり場に出たりすることで強くなったり君にカードを引かせてくれたりするカードは過去にたくさんデザインされてきた(どうでもいいことだが、これは英語で書くと「other things are played or come into play」となる。同じ文章に出てくる複数の「play」が違う意味になることが私はどうしても好きになれない)
しかし、今まさにプレイされたカード、もしくは場に出たカードを強化するカードはあまりない。それに加えて、私の中のジョニー的部分(註)が場に出たばかりのクリーチャーを強化するという効果でどんな悪さができるかに興味を持った、ということもある。
《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》(ビジョンズ)
当時、《停滞/Stasis》がちょっとした問題になっていたので私は《停滞/Stasis》と相性のよいカードを作ることにした。このカードは土地を手札に戻すことでアンタップできるというだけでなく、さらに《停滞/Stasis》によってロックされていたクリーチャーをアンタップすることまで出来る。
あらためて振り返ってみると、私が作ったものは度が過ぎていたような気もする。そもそもの問題が単に「栓抜きがない」ということに過ぎなかったにも関わらず、生み出されたのはあまりに高性能な万能ナイフだった。
いずれにせよ、このカードは「作ったことを誇りに思うカード トップ10」(註)の1枚であることは確かだ。
《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar Emissary》(ウルザズ・デスティニー)
Michael Ryan と私が最初にウェザーライト・サーガ(註)の構想にとりかかったとき、私たちは出来る限り多くのマジックを代表するクリーチャーたちをストーリーに絡めようとしていた。
そのうちの1枚が《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》だ。緑のキャラクターの代表はすでにミリーがいた。私たちがサーガの「過去」について考え始めたのはそのときだ。ラノワールのエルフがどのような重要な役割を物語で果たしたのか?
避けられない運命として、背景物語の中でいずれかのキャラクターが死ぬ必要があった。ストーリーの中で、ジェラードはウェザーライト号と彼自身の運命に背を向ける瞬間を迎えることになっていた。なぜか。それは彼が非常に大きな「何か」を失い、それが彼を芯から揺さぶったためだ。ではその「何か」とは何なのだろう。
ここで多くの脚本の先生が私に教えてくれたことを紹介しよう。キャラクターを大きく転換したいときに君がすべきことは、そのキャラクターにとって価値ある何かを奪うことだ。さらに、その価値ある何かが失われてしまうのは、そのキャラクターのとった行動による結果でなくてはいけない。
多くの議論が交わされて結果、Michaelと私の辿り着いたストーリーでは、ジェラードは最初のころは仲間を増やすことに熱中していた、ということになった。私たちの考えでは、ジェラードは最初のころは自身の運命を受け入れており、彼の友人たちをそれに連れていくことに躊躇しなかった。友人たちは乗り気ではなかったが、ジェラードの人望に惹きつけられついていくこととなった。
そして彼らの1人が死に、ジェラードは友人たちを引きこんだことに責任を感じることとなる。また、彼の運命こそが、彼が気にかける人々全てを死の運命へと引き込むという元のテーマにつながる。友人の死は彼の頭を離れることがない。
その友人がラノワールのエルフだったらどうだろう?
そしてロフェロスが生まれた。
ウルザズ・デスティニーをデザインするとき、私はロフェロスを強力なカードにする必要性を感じていた。なぜなら私はジェラードが彼を気にかけたほどに、プレイヤーたちにもロフェロスと親密になって欲しかったからだ。
ジェラードはロフェロスと長く深い付き合いがあったが、プレイヤーたちはそれほど長い時間をロフェロスと過ごすわけではない。つまり同じくらい好きになってもらうにはプレイヤーを惹きつける素晴らしいカードデザインが必要だった。
アイデアの出発点はロフェロスを「グレートでハイパーなラノワールのエルフ」にすることだった。つまり大量のマナを生み出させたいんだな、と自分で気づいた瞬間、フレイバーにあふれた方法でそれを達成するにはどうすればよいかが簡単に分かった。
《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》の住まうべき場所は森以外にあり得ない。
《安寧砦の精鋭/Safehold Elite》(シャドウムーア)
このカードは最初「(1)(緑/白) 2/2」のバニラクリーチャーだった。モンティパイソンの言葉を借りれば「マシになった」ね(註)。
《傷負いのツタ育て/Scarred Vinebreeder》(ローウィン)
デザイナーの性分として、私はいつも普通とは異なるリソースを探し求めている。エルフが緑と黒に属することになると知ったとき、私は1枚か2枚くらいは死んだエルフを喰らう黒いエルフがいてもよいのではないか、と思ったのだ。
《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》(ミラディン)
心理学には、大人になってから興味を持つものはその大半が幼少期の体験に起因するという説があるらしい。大人になってから大事にするものは小さい頃に君を楽しませてくれたものであることが多いということだ。
これはマジックのデザインにも当てはまるのではないかと私は考えている。私がウィザーズの社員となる前は、私はジョニーなプレイヤーだった。私は一風変わったデッキで友人たちを楽しませていた。私のデッキと対戦したプレイヤーたちは、そのデッキから何が飛び出してくるのか予想できなかった。
っそいてあらためて自分のデザインを眺めてみると、実に大きな影響を「若い頃のマジック」から受けていることに気づく。私は《Gauntlet of Might》が大好きだった。そして《ミラーリの目覚め/Mirari’s Wake》を生み出した。私は《Transmute Artifact》が大好きだった。そして《修繕/Tinker》を生み出した。私は《混沌の篭手/Gauntlets of Chaos》と《対置/Juxtapose》が大好きだった。そして《寄付/Donate》を生み出した(なんかパターンがあるような?)。
この《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》を見ていると、私が実に長い時間をともに過ごしたアンティキティのあるカードが思い起こされる。そのカードとは《アルゴスのピクシー/Argothian Pixies》だ。
《萎れ葉の騎兵/Wilt-Leaf Cavaliers》(シャドウムーア)
なぜ緑が警戒を得るにいたったのか、その理由をよく聞かれる。簡単に言えば、そうしたかったからだ。そのとおり、緑は今では2番目に警戒するのが得意な色になった。
難しく言えば? ここ(註)を参照してくれ。
鍛えるふ
今日の長くてとりとめのない記事もここまでだ。来週は年に1回のデザインそれ自体に関する記事を書こうと思っている。それまで自分とエルフを大切にしてくれ。
Mark Rosewater
Gaea’s Skyfolk / ガイアの空の民 (緑)(青)
クリーチャー - エルフ(Elf) マーフォーク(Merfolk)
飛行
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gaea%27s+Skyfolk/
このカードに関してよく聞かれる質問の1つに「このカードのどこに緑のメカニズムが含まれているの?」がある。答えは「マナレシオの良さ」だ。
通常、青という色は「2マナで2/2」クリーチャーがいてはいけない色だ(その通り、君のことだよ、《アトランティスの王/Lord of Atlantis》)。緑こそがその色だ。
しかし緑が空を飛ぼうと思ったら多大なコストを支払う必要がある。何しろ緑はもっとも空を飛ぶのが苦手な色だ(ドラゴンがあれほど赤に馴染まなかったらその座を赤に奪われていたかもしれないけどね)。
このカードは2つの色が組み合わさることで初めて可能となったんだ。どちらが欠けても無理だった。金枠のカードというのはそもそもがそういうものじゃなかったかい?
次によく聞かれる質問は「エルフもマーフォークも飛べないのにどうしてこいつは飛んでるの?」だ。それは……えーと……ごめん、そろそろ紙面が尽きる。いや、そうじゃなくて、そう、それはデザイン面の質問じゃないということだ。
次だ、次。
《猟場番/Gamekeeper》(ウルザズディスティニー)
Gamekeeper / 猟場番 (3)(緑)
クリーチャー - エルフ(Elf)
猟場番が死亡したとき、あなたはそれを追放してもよい。そうした場合、あなたのライブラリーを、クリーチャー・カードが公開されるまで上から1枚ずつ公開する。そのクリーチャー・カードを戦場に出し、これにより公開された他のすべてのカードをすべてあなたの墓地に置く。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gamekeeper/
ウルザズ・サーガブロック内におけるクリーチャーのカードパワーの差ときたらこの2枚を並べるだけでも分かるってなもんだ。
原文では《猟場番/Gamekeeper》のカードと《アカデミーの学長/Academy Rector》が並べて表示されている。ちなみに後者のカードデータは以下の通り。Academy Rector / アカデミーの学長 (3)(白)
クリーチャー - 人間(Human) クレリック(Cleric)
アカデミーの学長が死亡したとき、あなたはアカデミーの学長を追放してもよい。そうした場合、あなたのライブラリーからエンチャント・カードを1枚探し、そのカードを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Academy+Rector/
一目瞭然だね。
《グリッサ・サンシーカー/Glissa Sunseeker》(ミラディン)
Glissa Sunseeker / グリッサ・サンシーカー (2)(緑)(緑)
伝説のクリーチャー - エルフ(Elf)
先制攻撃
(T):アーティファクト1つを対象とする。その点数で見たマナ・コストが、あなたのマナ・プールにあるマナの総量に等しい場合、それを破壊する。
3/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Glissa+Sunseeker/
このカードのデザインにまつわる裏話についてはすでに「Loose Ends」(註)という記事で述べている。そこで私が述べたことは以下の通りだ。
(註) 「Loose Ends」
原文では以下のURLへリンクが張られている。Mark Rosewater が過去の様々なコラムで「またいつか語るよ」と切り上げてきたネタをまとめて説明している回。
http://archive.wizards.com/Magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/daily/mr115
~ ~ ~ ~ ~ ここから引用 ~ ~ ~ ~ ~ ~
これがその物語だ。ミラディンの開発時のこと(すでにデザインファイルは手渡した後のことだ)、私はこのミラディンの物語の主人公であるグリッサのカードをデザインするよう依頼された。
このキャラクターの大きな特徴は2つ。1つはアーティファクトを破壊するのがとても上手いということ。もう1つは彼女はマナと深く結びついているということ。
これら2つの要素をどうやって組み合わせるか、が私の挑戦だった。もっとも分かりやすい方法は、マナコストを起動コストとするアーティファクト破壊の能力を彼女に持たせることだ。
つまらん。
次に私が考えたのは、アーティファクトを破壊しつつマナを生み出す能力だった。しかしそれはすでに《解体/Deconstruct》と《灰塵化/Turn to Dust》という形でカード化されている。
Deconstruct / 解体 (2)(緑)
ソーサリー
アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。あなたのマナ・プールに(緑)(緑)(緑)を加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Deconstruct/
Turn to Dust / 灰塵化 (緑)
インスタント
装備品(Equipment)1つを対象とし、それを破壊する。あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Turn+to+Dust/
マナをどう使ってアーティファクトを破壊すればいいんだ?
そこまで考えたとき、私に天啓が閃いた。マナを違った使い方してみてはどうだろう? マナプールに溜まっているマナが点数を決めるというのは? そこまで思い付いたらあとは一気にメカニズムが決まった。
~ ~ ~ ~ ~ ここまで引用 ~ ~ ~ ~ ~ ~
《心の管理人/Heart Warden》(ウルザズ・デスティニー)
Heart Warden / 心の管理人 (1)(緑)
クリーチャー - エルフ(Elf) ドルイド(Druid)
(T):あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
(2),心の管理人を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Heart+Warden/
このカードはウルザズ・デスティニーの「場からサイクリングするカード」の1つだ。これについては能力語のコラムでつい最近語ったばかりだ(コラムの名前は「Ability Word To Your Mother」(註)だ)。
このカードのデザインを思い付いたのは、ゲームの最中に用を終えてしまったカードについて私が考えていたときのことだ。ゲームの中盤から終盤にかかったとき、別のカード1枚と交換したくなるカードは?
明らかにマナクリーチャーはその1つだろう。序盤はよく働いてくれるが、十分なマナが手に入ってしまったら用済み、というわけだ。
(註) 「Ability Word To Your Mother」
原文では以下のURLへリンクが張られている。能力語(Ability Word)に関するコラム。
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr342
《眼腐りの狩人/Hunter of Eyeblights》(ローウィン)
Hunter of Eyeblights / 眼腐りの狩人 (3)(黒)(黒)
クリーチャー - エルフ(Elf) 暗殺者(Assassin)
眼腐りの狩人が戦場に出たとき、あなたがコントロールしていないクリーチャー1体を対象とし、その上に+1/+1カウンターを1個置く。
(2)(黒),(T):その上にカウンターが置かれているクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Hunter+of+Eyeblights/
デザイナーとして冥利に尽きる瞬間というのは、新たなカードが生まれるほどにその価値が増していく可能性を秘めたカードを生み出せたときだ。
このカードは単体では単に「対象のクリーチャーをちょっとしたリスクを負いつつ破壊できるカード」に過ぎない。この狩人が動き出す前に対処されてしまえば、君は単に対戦相手のクリーチャーを強化しただけで終わってしまう。
しかし+1/+1カウンターをテーマとしたモーニングタイドという環境(特に+1/+1カウンターを置く増援(Reinforcements)というメカニズムのある環境)においては《眼腐りの狩人/Hunter of Eyeblights》の力はいや増す。
《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》(アルファ)
Llanowar Elves / ラノワールのエルフ (緑)
クリーチャー - エルフ(Elf) ドルイド(Druid)
(T):あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Llanowar+Elves/
エルフ週間について初めて聞いたときは、過去から現在に至る全てのエルフのベスト20について記事を書こうと考えていた。最初はその内容で記事を書き始めてみたが、すぐにエルフはその題材にふさわしくないことに気づいた。強いエルフたちはあまりに能力が似通っているのだ。
さて、ここで《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》を紹介したのは、その記事で1位を飾る予定だったのがこれだからだ。Richard Garfield はまさにマジックの開幕直後からこのエルフを登場させ、それ以来、私たちは確かにいくつかの素晴らしいエルフを生み出してきたが、私の個人的な感想としては、結局このオリジナルをしのぐ1枚は未だ生み出されていないように思う。
《薬の走り手/Medicine Runner》(シャドウムーア)
Medicine Runner / 薬の走り手 (1)(緑/白)
クリーチャー - エルフ(Elf) クレリック(Cleric)
薬の走り手が戦場に出たとき、パーマネント1つを対象とする。あなたはそれからカウンターを1個取り除いてもよい。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Medicine+Runner/
最初、このカードが取り除くのは-1/-1カウンターだった。しかしローウィンブロックやそれよりも過去のセットとも相互作用を持つようにしたかったためにカウンターの種類を問わないことにした。それによってより良いカードになったと思う。
《原初の腕力魔道士/Primal Forcemage》(時のらせん)
Primal Forcemage / 原初の腕力魔道士 (2)(緑)
クリーチャー - エルフ(Elf) シャーマン(Shaman)
他のクリーチャーがあなたのコントロール下で戦場に出るたび、そのクリーチャーはターン終了時まで+3/+3の修整を受ける。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Primal+Forcemage/
このカードがデザインされたわけは、私がそれまでに一般化していた慣習とはちょっと違ったことをしたかったからだ。他のカードがプレイされたり場に出たりすることで強くなったり君にカードを引かせてくれたりするカードは過去にたくさんデザインされてきた(どうでもいいことだが、これは英語で書くと「other things are played or come into play」となる。同じ文章に出てくる複数の「play」が違う意味になることが私はどうしても好きになれない)
しかし、今まさにプレイされたカード、もしくは場に出たカードを強化するカードはあまりない。それに加えて、私の中のジョニー的部分(註)が場に出たばかりのクリーチャーを強化するという効果でどんな悪さができるかに興味を持った、ということもある。
(註) ジョニー的部分
マジックのプレイヤーの傾向を分類する方法の1つに「ティミー、ジョニー、スパイク」がある。簡単に説明すると、それぞれ「派手なカードが好き、デカいカードが好き」「独創的なデッキやコンボ好き」「勝利至上主義」。
《クウィリーオン・レインジャー/Quirion Ranger》(ビジョンズ)
Quirion Ranger / クウィリーオン・レインジャー (緑)
クリーチャー - エルフ(Elf)
あなたがコントロールする森(Forest)を1つ、オーナーの手札に戻す:クリーチャー1体を対象とし、それをアンタップする。この能力は、各ターンに1回のみ起動できる。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Quirion+Ranger/
当時、《停滞/Stasis》がちょっとした問題になっていたので私は《停滞/Stasis》と相性のよいカードを作ることにした。このカードは土地を手札に戻すことでアンタップできるというだけでなく、さらに《停滞/Stasis》によってロックされていたクリーチャーをアンタップすることまで出来る。
あらためて振り返ってみると、私が作ったものは度が過ぎていたような気もする。そもそもの問題が単に「栓抜きがない」ということに過ぎなかったにも関わらず、生み出されたのはあまりに高性能な万能ナイフだった。
いずれにせよ、このカードは「作ったことを誇りに思うカード トップ10」(註)の1枚であることは確かだ。
(註) 「作ったことを誇りに思うカード トップ10」
原文では以下のURLへリンクが張られている。「トップ10週間」に書かれた記事らしい。
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr147
《ラノワールの使者ロフェロス/Rofellos, Llanowar Emissary》(ウルザズ・デスティニー)
Rofellos, Llanowar Emissary / ラノワールの使者ロフェロス (緑)(緑)
伝説のクリーチャー - エルフ(Elf) ドルイド(Druid)
(T):あなたがコントロールする森(Forest)1つにつき、あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Rofellos%2C+Llanowar+Emissary/
Michael Ryan と私が最初にウェザーライト・サーガ(註)の構想にとりかかったとき、私たちは出来る限り多くのマジックを代表するクリーチャーたちをストーリーに絡めようとしていた。
(註) ウェザーライト・サーガ
原文では以下のURLへリンクが張られている。サーガそのものではなく、どのようにしてサーガが生まれたか、について書かれた記事。当然、Michael Ryanも登場する。
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr308
そのうちの1枚が《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》だ。緑のキャラクターの代表はすでにミリーがいた。私たちがサーガの「過去」について考え始めたのはそのときだ。ラノワールのエルフがどのような重要な役割を物語で果たしたのか?
避けられない運命として、背景物語の中でいずれかのキャラクターが死ぬ必要があった。ストーリーの中で、ジェラードはウェザーライト号と彼自身の運命に背を向ける瞬間を迎えることになっていた。なぜか。それは彼が非常に大きな「何か」を失い、それが彼を芯から揺さぶったためだ。ではその「何か」とは何なのだろう。
ここで多くの脚本の先生が私に教えてくれたことを紹介しよう。キャラクターを大きく転換したいときに君がすべきことは、そのキャラクターにとって価値ある何かを奪うことだ。さらに、その価値ある何かが失われてしまうのは、そのキャラクターのとった行動による結果でなくてはいけない。
多くの議論が交わされて結果、Michaelと私の辿り着いたストーリーでは、ジェラードは最初のころは仲間を増やすことに熱中していた、ということになった。私たちの考えでは、ジェラードは最初のころは自身の運命を受け入れており、彼の友人たちをそれに連れていくことに躊躇しなかった。友人たちは乗り気ではなかったが、ジェラードの人望に惹きつけられついていくこととなった。
そして彼らの1人が死に、ジェラードは友人たちを引きこんだことに責任を感じることとなる。また、彼の運命こそが、彼が気にかける人々全てを死の運命へと引き込むという元のテーマにつながる。友人の死は彼の頭を離れることがない。
その友人がラノワールのエルフだったらどうだろう?
そしてロフェロスが生まれた。
ウルザズ・デスティニーをデザインするとき、私はロフェロスを強力なカードにする必要性を感じていた。なぜなら私はジェラードが彼を気にかけたほどに、プレイヤーたちにもロフェロスと親密になって欲しかったからだ。
ジェラードはロフェロスと長く深い付き合いがあったが、プレイヤーたちはそれほど長い時間をロフェロスと過ごすわけではない。つまり同じくらい好きになってもらうにはプレイヤーを惹きつける素晴らしいカードデザインが必要だった。
アイデアの出発点はロフェロスを「グレートでハイパーなラノワールのエルフ」にすることだった。つまり大量のマナを生み出させたいんだな、と自分で気づいた瞬間、フレイバーにあふれた方法でそれを達成するにはどうすればよいかが簡単に分かった。
《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》の住まうべき場所は森以外にあり得ない。
《安寧砦の精鋭/Safehold Elite》(シャドウムーア)
Safehold Elite / 安寧砦の精鋭 (1)(緑/白)
クリーチャー - エルフ(Elf) スカウト(Scout)
頑強(このクリーチャーが死亡するたび、その上に-1/-1カウンターが置かれていなかった場合、それを-1/-1カウンターが1個置かれた状態でオーナーのコントロール下で戦場に戻す。)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Safehold+Elite/
このカードは最初「(1)(緑/白) 2/2」のバニラクリーチャーだった。モンティパイソンの言葉を借りれば「マシになった」ね(註)。
(註) モンティパイソンの言葉を借りれば「良くなった」
原文では「To paraphrase Monty Python: It got better」。「モンティパイソンとホーリーグレイル」の中で「あの魔女め、私をイモリに変えやがった! ……むしろマシになったかも(Well, she turned me into a newt! ... I got better)」という一節があるらしい。この作品は見たことあるはずなんだけど、このシーンは思いだせない。悔しい。
《傷負いのツタ育て/Scarred Vinebreeder》(ローウィン)
Scarred Vinebreeder / 傷負いのツタ育て (1)(黒)
クリーチャー - エルフ(Elf) シャーマン(Shaman)
(2)(黒),あなたの墓地にあるエルフ(Elf)・カード1枚を追放する:傷負いのツタ育てはターン終了時まで+3/+3の修整を受ける。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Scarred+Vinebreeder/
デザイナーの性分として、私はいつも普通とは異なるリソースを探し求めている。エルフが緑と黒に属することになると知ったとき、私は1枚か2枚くらいは死んだエルフを喰らう黒いエルフがいてもよいのではないか、と思ったのだ。
《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》(ミラディン)
Tel-Jilad Chosen / テル=ジラードに選ばれし者 (1)(緑)
クリーチャー - エルフ(Elf) 戦士(Warrior)
プロテクション(アーティファクト)
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Tel-Jilad+Chosen/
心理学には、大人になってから興味を持つものはその大半が幼少期の体験に起因するという説があるらしい。大人になってから大事にするものは小さい頃に君を楽しませてくれたものであることが多いということだ。
これはマジックのデザインにも当てはまるのではないかと私は考えている。私がウィザーズの社員となる前は、私はジョニーなプレイヤーだった。私は一風変わったデッキで友人たちを楽しませていた。私のデッキと対戦したプレイヤーたちは、そのデッキから何が飛び出してくるのか予想できなかった。
っそいてあらためて自分のデザインを眺めてみると、実に大きな影響を「若い頃のマジック」から受けていることに気づく。私は《Gauntlet of Might》が大好きだった。そして《ミラーリの目覚め/Mirari’s Wake》を生み出した。私は《Transmute Artifact》が大好きだった。そして《修繕/Tinker》を生み出した。私は《混沌の篭手/Gauntlets of Chaos》と《対置/Juxtapose》が大好きだった。そして《寄付/Donate》を生み出した(なんかパターンがあるような?)。
この《テル=ジラードに選ばれし者/Tel-Jilad Chosen》を見ていると、私が実に長い時間をともに過ごしたアンティキティのあるカードが思い起こされる。そのカードとは《アルゴスのピクシー/Argothian Pixies》だ。
《萎れ葉の騎兵/Wilt-Leaf Cavaliers》(シャドウムーア)
Wilt-Leaf Cavaliers / 萎れ葉の騎兵 (緑/白)(緑/白)(緑/白)
クリーチャー - エルフ(Elf) 騎士(Knight)
警戒
3/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Wilt-Leaf+Cavaliers/
なぜ緑が警戒を得るにいたったのか、その理由をよく聞かれる。簡単に言えば、そうしたかったからだ。そのとおり、緑は今では2番目に警戒するのが得意な色になった。
難しく言えば? ここ(註)を参照してくれ。
(註) ここ
原文では以下のURLへリンクが張られている。キーワード能力について書かれた記事。
http://archive.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr284
鍛えるふ
今日の長くてとりとめのない記事もここまでだ。来週は年に1回のデザインそれ自体に関する記事を書こうと思っている。それまで自分とエルフを大切にしてくれ。
Mark Rosewater
コメント