余談1:先週のCard of the Dayとか
先週のまとめを遅れて更新したのでリンクを張っておく。
http://regiant.diarynote.jp/201411230348311129/
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
金曜日は明らかにハロウィンを意識しているのが分かる。月曜日から木曜日がよく分からない。特にハロウィンと関係あるようにも思えない。
ただなんかテーマ性がありそうにも見えて、月曜日から順に「天使」「不実」「堕天使」「生き埋め」と並んでいる。何かありそう。分からないけど。
余談2:月曜日 《戦誉の天使/Battlegrace Angel》
単体で攻撃することを前提とすれば「5マナ 5/5 飛行 絆魂」となる。うん。いや、強いは強いんだけどさ、その昔「5マナ 5/5 飛行 絆魂 + 先制攻撃 + プロテクション2種」という化け物がいらっしゃったことをどうしても思い出してしまう。
《大天使/Archangel》 「呼ばれた気がした」
呼んでません。
余談3:火曜日 《不実/Treachery》
こいつが出た当時は土地をアンタップさせないためにフィズらせようと(立ち消えさせようと)あれこれ苦労したものだけど、そもそも「5マナ払ってオーラを張る」という状況はパーミッション側が苦労するべき場面であって、なんでビートダウン側が骨を折らなくちゃいけないんだ。あらためて考えると本当にこのカードはおかしい。
というのを言い表している箇所の訳の話。
最後の「This turned out to be too good」で困った。詳しく言うと「Turn out to be」の部分をどうするか。
候補1:これによってこのカードは強くなりすぎた
候補2:この効果は良すぎる
候補3:これはさすがに強すぎた ← 採用
余談4:水曜日 《堕天使/Fallen Angel》
強いかどうかは難しいところだけど、絵のインパクトという意味では上位ランク入り間違いなしかな。まあ、いいや。訳の話。
最後を上手く「日本語」に出来た(適切な「日本語」を選べた)と思う。マジックの世界に軍配はないだろうけど、背景ストーリーの訳でもないし、いいかな、と。
余談5:木曜日 《生き埋め/Buried Alive》
初めてベリードアライブデッキと出会ったときに驚いたのは、デッキの回し方もさることながら「アイスエイジはそこそこ買ってたのに、そのクリーチャー(= Ashen Ghoul)初めて見る」ということ。ネットの無い当時、新たなカードと構築デュエル中に出会うことは日常茶飯事だったんじゃよ……(遠い目)。
こっちはパーミッションデッキだったけど、ラスも打消しも意味がないし、4枚のソープロだけじゃ足りないし、まさに天敵だった。あと「でも出たターンには殴れませんよね?」「ちゃんと速攻もってます」みたいな会話をした気がする。
余談6:金曜日 《All Hallow’s Eve》
2009年のハロウィンにもまた同じカードがネタにされており、その内容も今回とほぼ同じだった。違う点といえばその上に乗せるカウンターの名前について触れていることくらい。
余談7:老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み
久しぶりに長文を訳した気がする。きっかけは某ブログでこの記事へのリンクが貼られていて「誰か訳してくれないかなー」とあったので、出番かな、とリンクをクリックした次第。
全くの初見の記事を読みながら訳していったので、途中で「これ以上もう読まないほうがいいんじゃないのか。これ、実はバッドエンドなんじゃないのか。ここらでやめたほうが精神衛生上いいんじゃないのか」と何度かギブアップしそうになった。
最後まで読んでよかった。明るい学者さんが好き。しかし《フェルドンの杖/Feldon’s Cane》くらいしか名前の出てこないキャラにまでこんなストーリーが用意されてるとは……マジックすごいな。
ちなみにカード化されたフェルドンについては以下のリンク先の記事で紹介されている。いや、実はカード化されたフェルドンをたった今初めて見たんだけど……手に持ってるのは……の頭だよね?
StarCityGames.com:Feldon Of The Third Path
http://www.starcitygames.com/article/29776_Feldon-Of-The-Third-Path.html
背景ストーリー知らずに見たら、なんてことのない絵。
さて、訳の話。
選択肢が多くて迷った。「死因の一部は」「理由の1つには」「死んだ原因の一部は」「死を迎えることとなった一因は」などなど、色々見ているうちに何がなんだか分からなくなるパターン。
直接の原因じゃないことが分かればいいや、が結論(いいのか?)。
いや、訳に困った箇所じゃないんだ。何度も涙腺を刺激されたこの物語で、最初に泣きそうになったのがこのくだり。ゆっくりと、だけど確実に訪れる未来が見えてしまって…… (´・ω・`)
あえて訳の話をすると「could not get out of bed」はそのまま訳すと「ベッドから出られなくなった」なんだけど、まあ「起き上がれなくなった」のほうが衰弱している様子を表す日本語としては、より適切かな、と。
庭園の手入れについて語られている箇所。御覧の通り、後半は原文に沿っていない。「ロランは病のために、庭園を蔦や冷たい雨へと明け渡さざるを得なかった」のほうが原文に近い。どちらが読みやすいか、で決めた。
さらに言うと、前半の括弧でくくった部分も迷いがある。「その後、長いこと続くこととなった病、そうその人生の最期まで続いた病」という「意味」の文章を、どう「日本語に訳す」か。
英語のコンマでくくられた部分はやっぱり難しい。まあ、そういう文法的な部分はさておいても「生涯の果てまで」は、あらためて見ると、ちょっと……もう少しなんとか出来たような気もする。
あからさまな意訳。ここはとことん行ってよし、と勝手に判断した。
後半の文章が難しかった。「His magics has failed him and had failed his love」って、どういうことだ。日本語に訳すのが目的である以上は「彼の魔法は彼に対して失敗し、彼の愛を失敗させた」と訳すわけにはいかない。
色々と考えた挙句「きっとこういう意味だ」と踏み切った。後悔はない。
てっきり「archimandrite」はマジック世界の用語かと思ったら、現実にある言葉(修道院長)だった。びっくりだ。
ちなみに、たった今、あらためて原文を読んでちょっと不安になった。まさかとは思うけど「Hurkyl, the archimandrite」で一語じゃないよな……(MTG Wikiチェック中)……え!? ドラフナとハーキルって夫婦なの!?(そっちか)
今回の翻訳に際して、古き良き(?)ファンタジー翻訳に沿う形で、固有名詞以外のカタカナを出来る限り避けてみた。ギアではなく歯車、ワイヤーではなく金属の紐。
個人的な趣味嗜好ではあるけど、そのほうが「魔法の物語」な気がして。
ついでにこの箇所の訳について書いておくと、訳そうとしたとき「あれ? Brassって日本語でなんだっけ? えーと《City of Brass》の日本語版の名前が……思いだせない」と悔しい思いをした(どうでもいい)。
ロランの蔵書を書庫に広げるシーン。最初に読んだとき「Artifice」を「Artifact(アーティファクト)」の変化形かと勘違いして「ロランはウルザとともに学んだことがあったためアーティファクトについて何か知っている可能性があった」みたいな意味に解釈してしまった。
その後、もう一度「Artifice」の単語が出てきたときに間違いに気づいた。「Artifice」で「陰謀、策略、企み」という意味だった。あぶないあぶない。
実はいまだに原文の意味が分かっていない。アシュノッドと相見えた際に片腕を失った(動かせなくなった)ということまでは分かる。
その直後にある「彼は忙しく動き回って、腕を取り外し、別の腕と取り換えた」というのはいつの話だ。実際のロランの腕か? それとも機械人形のことか? 実在のロランのようにわざと機械人形の片腕も不自由にしたのか?
よく読むと分かるけど、日本語はすごい曖昧な文章になってる。良くない。
読みながらのリアルタイム翻訳だったので、最初に訳したときはこの「I understand」がこの物語のキーとなる言葉だと気づかなかった。まあ、それでなくても、この短いフレーズが非常に深い意味を持っていることは分かった。
ドラフナが何に対して「understand」と言ったのか。
「I understand what you want, and has packed it for you」なのか「I understand why you wished this powerstone」なのか「I understand your feeling」なのか……いかようにでも受け取れるこの短い言葉を日本語訳するのか。困った。
一瞬だけ「分かりました(I understand)」と併記しておこうかとすら思ったほど。さすがにやめたけど。
意訳の範囲を超えているかもしれないけど、ここで「筋肉」という言葉はなんか雰囲気を壊す気がしたんだ。それに歯車だから関節部分としてもいいと思ったんだ(駄目かもしれない)。
末尾が原文(if they held some secred)と意味が異なっている。意図的に変えた。理由は上手く説明できない。そのまま訳すこともできたけど、こっちのほうが本来の意味なんじゃないかと思ったから。
何度読んでも原文がよく分からなかった。「runnel」が「小さな川」であり「ravine」が「山峡」なのはいいとして、それらの動詞形が使われている。「Soil(大地)」が「小川してたり、山峡してたり」する?
あらためて読みなおすに、延々と降り続く雨のせいで大地に川や谷が刻み込まれた、という意味かな。そうだとすると今の訳は間違っているな。
長々と引用したけど、単に「laboriously」が分からなかった、というだけの話。「Labor」という言葉の仲間なのね。理解した。
2014/11/28 追記
これ、訳が間違ってた。最後の「which he had ~」は(森を往復したことではなく)「his small domain」にかかってるんだ。「he had so」の「so」は「~のように、そのように~」の意味じゃない。「非常に、とても」の「so」だ。
誤:森を往復した。隠者が侵略者に対抗するべく精力的に行ってきたように
正:森を往復した。隠者が侵略者に対して全力をかけて守ってきたその森を
隠者の口調をどうしようかな、という話。森を護る隠者とはいえ、すでに狂いかけてまともではない、という境遇の彼にふさわしい口調は、少なくとも真面目な「ですます調」ではないだろう、と。
この後も色んなキャラが登場するけど、それぞれ口調をどうしようかは思案のしどころだった。日本語は口調一つで随分と印象も変わってしまうものだから。
知らない単語のオンパレード。やっぱりファンタジーの情景を描こうとすると、経理や営業の仕事ではなかなかお目にかかれない英単語が大量に登場することになるのな。具体的には「leprous」「pungent」「algae」など(なお、単に知識量が足りてないだけ、ということは分かっているのでツッコミ無用)。
あえてちょっと気取った日本語にしてみた。場面が場面だし、いいかな、と。
ここのセリフの訳はなかなか手こずった。「彼女は本物じゃない!」「彼女は現実じゃない!」などの素直な訳から「彼女はどこだ!」などの意訳も含めて、色々タイプしては消してた。
最後には「怒りに駆られたているから極力短く、でも出来る限り原文に即した形で」ということで、今の形にしてみた。迷った。
意図的に原文の単語を無視した箇所の1つ。具体的には「hunk of metal」を「金属の塊」ではなく「鉄くずの塊」としたところ。「金くず」という選択肢もあったかな、と今更気づいた。
全体的に難しかった。要はホラー小説を書かないといけない箇所だったので、ここの前後も含めて、不気味で救いのない雰囲気をかもしだす文章を模索する必要があった。大変だった。
あと「thumped」「shuffled」「sloshing」「thud」などなど、この沼地に訪れてからは知らない単語がまたぞろ一気に現れて大変だった。
このフェルドンのセリフの意図するところを読み解くのが難しかった。何しろ直前で学者が小難しいことを言い出したせいで、フェルドンと同じくらい混乱していたので。
ちなみにこれに対する学者の回答は「Yes, in those cases it is a real fire and a real wurm, but the magic alters it.(確かにその場合は実際の炎や実際のワームが操られてることになる。だけど結局は魔法の力で変容させられたものだ)」。
フェルドンの言う場合は「本当の炎と本当のワームが出現している」らしい。だからそう意味にとれるようにあえて「実際の火」などと訳してみた。学者さんの言うことは難しい。
ここは原文を読んでて笑ってしまった。いちいち同じ動作しなくても。
どこか抜けたところのある学者からかけられた最後の言葉に、いきなりスッと頭が冷えるような感覚があった。そんな感覚を味わってもらえるような日本語訳にしたかった。
成功したかどうかは読んでもらった方にしか分からないことだけど、成功していたら、とても嬉しい。
何が起きてるのやらよく分からない、魔法の描写。雰囲気さえ伝わればいいか、と考えて訳した。ここについては訳し間違えててもバレないんじゃないかなあ、と思ったことは秘密だ。
同じ言葉が何度も出てくるけど、訳し変えている。英語は(日本語と違って)曖昧さがなくてハッキリとしている、と言う人がいるが、同意できないのは、こういう訳をしているとき。
だってロランのこの「Why am I here?」をどう受け取るかは読んだ人次第なんじゃないかと……それでも訳すのだけれど。
物語を通じて何度も登場する「I understand」の1つ。このあと、フェルドンも消えゆくロランを前に「I understand」と呟く。
さて、最後は、この物語を最後まで読んで良かったと思わせてくれた、そんな会話を書き記して終わろうかと思う。
先週のまとめを遅れて更新したのでリンクを張っておく。
http://regiant.diarynote.jp/201411230348311129/
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
金曜日は明らかにハロウィンを意識しているのが分かる。月曜日から木曜日がよく分からない。特にハロウィンと関係あるようにも思えない。
ただなんかテーマ性がありそうにも見えて、月曜日から順に「天使」「不実」「堕天使」「生き埋め」と並んでいる。何かありそう。分からないけど。
余談2:月曜日 《戦誉の天使/Battlegrace Angel》
単体で攻撃することを前提とすれば「5マナ 5/5 飛行 絆魂」となる。うん。いや、強いは強いんだけどさ、その昔「5マナ 5/5 飛行 絆魂 + 先制攻撃 + プロテクション2種」という化け物がいらっしゃったことをどうしても思い出してしまう。
《大天使/Archangel》 「呼ばれた気がした」
呼んでません。
余談3:火曜日 《不実/Treachery》
こいつが出た当時は土地をアンタップさせないためにフィズらせようと(立ち消えさせようと)あれこれ苦労したものだけど、そもそも「5マナ払ってオーラを張る」という状況はパーミッション側が苦労するべき場面であって、なんでビートダウン側が骨を折らなくちゃいけないんだ。あらためて考えると本当にこのカードはおかしい。
というのを言い表している箇所の訳の話。
原文:
Or better than free, if you have lands that tap for more than one mana. This turned out to be too good.
拙訳:
いや、もしプレイヤーが2マナ以上生み出せる土地を持っているなら、タダ以上の効果だ。これはさすがに強すぎた。
最後の「This turned out to be too good」で困った。詳しく言うと「Turn out to be」の部分をどうするか。
候補1:これによってこのカードは強くなりすぎた
候補2:この効果は良すぎる
候補3:これはさすがに強すぎた ← 採用
余談4:水曜日 《堕天使/Fallen Angel》
強いかどうかは難しいところだけど、絵のインパクトという意味では上位ランク入り間違いなしかな。まあ、いいや。訳の話。
原文:
It had a shot at being in Tenth Edition, but the Selecting Tenth Edition vote went for Nantuko Husk instead.
拙訳:
このカードは第10版で再度収録されるチャンスを得たが、「第10版を選ぼう」の投票結果は《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk》に軍配が上がった。
最後を上手く「日本語」に出来た(適切な「日本語」を選べた)と思う。マジックの世界に軍配はないだろうけど、背景ストーリーの訳でもないし、いいかな、と。
余談5:木曜日 《生き埋め/Buried Alive》
初めてベリードアライブデッキと出会ったときに驚いたのは、デッキの回し方もさることながら「アイスエイジはそこそこ買ってたのに、そのクリーチャー(= Ashen Ghoul)初めて見る」ということ。ネットの無い当時、新たなカードと構築デュエル中に出会うことは日常茶飯事だったんじゃよ……(遠い目)。
こっちはパーミッションデッキだったけど、ラスも打消しも意味がないし、4枚のソープロだけじゃ足りないし、まさに天敵だった。あと「でも出たターンには殴れませんよね?」「ちゃんと速攻もってます」みたいな会話をした気がする。
余談6:金曜日 《All Hallow’s Eve》
2009年のハロウィンにもまた同じカードがネタにされており、その内容も今回とほぼ同じだった。違う点といえばその上に乗せるカウンターの名前について触れていることくらい。
余談7:老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み
久しぶりに長文を訳した気がする。きっかけは某ブログでこの記事へのリンクが貼られていて「誰か訳してくれないかなー」とあったので、出番かな、とリンクをクリックした次第。
全くの初見の記事を読みながら訳していったので、途中で「これ以上もう読まないほうがいいんじゃないのか。これ、実はバッドエンドなんじゃないのか。ここらでやめたほうが精神衛生上いいんじゃないのか」と何度かギブアップしそうになった。
最後まで読んでよかった。明るい学者さんが好き。しかし《フェルドンの杖/Feldon’s Cane》くらいしか名前の出てこないキャラにまでこんなストーリーが用意されてるとは……マジックすごいな。
ちなみにカード化されたフェルドンについては以下のリンク先の記事で紹介されている。いや、実はカード化されたフェルドンをたった今初めて見たんだけど……手に持ってるのは……の頭だよね?
StarCityGames.com:Feldon Of The Third Path
http://www.starcitygames.com/article/29776_Feldon-Of-The-Third-Path.html
背景ストーリー知らずに見たら、なんてことのない絵。
さて、訳の話。
原文:
Loran died in part because of that devastation.
拙訳:
ロランの死因の一部は大破壊のせいと言える。
選択肢が多くて迷った。「死因の一部は」「理由の1つには」「死んだ原因の一部は」「死を迎えることとなった一因は」などなど、色々見ているうちに何がなんだか分からなくなるパターン。
直接の原因じゃないことが分かればいいや、が結論(いいのか?)。
原文:
When she could not get out of bed, Feldon sat beside her and read to her, told her stories of his own youth, and listened to hers.
拙訳:
彼女がベッドから起き上がれなくなったとき、フェルドンは彼女の傍らに座り、本を読み上げたり、自身の若いころの話をしたり、彼女の話に耳を傾けたりした。
いや、訳に困った箇所じゃないんだ。何度も涙腺を刺激されたこの物語で、最初に泣きそうになったのがこのくだり。ゆっくりと、だけど確実に訪れる未来が見えてしまって…… (´・ω・`)
あえて訳の話をすると「could not get out of bed」はそのまま訳すと「ベッドから出られなくなった」なんだけど、まあ「起き上がれなくなった」のほうが衰弱している様子を表す日本語としては、より適切かな、と。
原文:
but when she took ill that last, final time, she had to surrender the garden to the weeds and the cold rains.
拙訳:
その後長く(その生涯の果てまで)続いた病の前に、ついに諦めざるをえなかった。そして庭園ははびこる蔦と冷たい雨へと明け渡された。
庭園の手入れについて語られている箇所。御覧の通り、後半は原文に沿っていない。「ロランは病のために、庭園を蔦や冷たい雨へと明け渡さざるを得なかった」のほうが原文に近い。どちらが読みやすいか、で決めた。
さらに言うと、前半の括弧でくくった部分も迷いがある。「その後、長いこと続くこととなった病、そうその人生の最期まで続いた病」という「意味」の文章を、どう「日本語に訳す」か。
英語のコンマでくくられた部分はやっぱり難しい。まあ、そういう文法的な部分はさておいても「生涯の果てまで」は、あらためて見ると、ちょっと……もう少しなんとか出来たような気もする。
原文:
Feldon’s tears were lost in the rain.
拙訳:
フェルドンの涙は雨の中に溶けて行った。
あからさまな意訳。ここはとことん行ってよし、と勝手に判断した。
原文:
He could not keep the life within her. His magics had failed him and had failed his love.
拙訳:
彼女の中に命を留めることも出来なかった。彼の魔法は為すべきことを為せなかった。彼の魔法は、彼の愛を救えなかった。
後半の文章が難しかった。「His magics has failed him and had failed his love」って、どういうことだ。日本語に訳すのが目的である以上は「彼の魔法は彼に対して失敗し、彼の愛を失敗させた」と訳すわけにはいかない。
色々と考えた挙句「きっとこういう意味だ」と踏み切った。後悔はない。
原文:
He pulled the energies from those lands, as he learned to do in Terisia City with Drafna, Hurkyl, the archimandrite, and the other mages of the Ivory Towers.
拙訳:
彼はこの土地から力を引き出すことが出来た。彼はその業をテレシアの町にある象牙の塔で、ドラフナやハーキル、また修道院の長や他の魔法使いたちとともに学んだ。
てっきり「archimandrite」はマジック世界の用語かと思ったら、現実にある言葉(修道院長)だった。びっくりだ。
ちなみに、たった今、あらためて原文を読んでちょっと不安になった。まさかとは思うけど「Hurkyl, the archimandrite」で一語じゃないよな……(MTG Wikiチェック中)……え!? ドラフナとハーキルって夫婦なの!?(そっちか)
原文:
The wire arrived, and the gears (iron, not brass), sheets of copper, and some of bronze.
拙訳:
金属の紐、真鍮ではなく鉄の歯車、銅の板(一部は青銅)が届けられた。
今回の翻訳に際して、古き良き(?)ファンタジー翻訳に沿う形で、固有名詞以外のカタカナを出来る限り避けてみた。ギアではなく歯車、ワイヤーではなく金属の紐。
個人的な趣味嗜好ではあるけど、そのほうが「魔法の物語」な気がして。
ついでにこの箇所の訳について書いておくと、訳そうとしたとき「あれ? Brassって日本語でなんだっけ? えーと《City of Brass》の日本語版の名前が……思いだせない」と悔しい思いをした(どうでもいい)。
原文:
She had studied with Urza himself and knew something of artifice.
拙訳:
彼女はウルザ自身とともに学んだことがあり、今回の彼の企てに必要な知識について知っている可能性があった。
ロランの蔵書を書庫に広げるシーン。最初に読んだとき「Artifice」を「Artifact(アーティファクト)」の変化形かと勘違いして「ロランはウルザとともに学んだことがあったためアーティファクトについて何か知っている可能性があった」みたいな意味に解釈してしまった。
その後、もう一度「Artifice」の単語が出てきたときに間違いに気づいた。「Artifice」で「陰謀、策略、企み」という意味だった。あぶないあぶない。
原文:
Later she lost the use of one of them, crippled by Ashnod. He went back and forth, removing and replacing the arm. Finally he restored the statue to its complete state.
拙訳:
のちに彼女はアシュノッドによってその片方を失った。彼は同じようにその腕をつけかえた。そしてついに彼は人型を完全にすることに成功した。
実はいまだに原文の意味が分かっていない。アシュノッドと相見えた際に片腕を失った(動かせなくなった)ということまでは分かる。
その直後にある「彼は忙しく動き回って、腕を取り外し、別の腕と取り換えた」というのはいつの話だ。実際のロランの腕か? それとも機械人形のことか? 実在のロランのようにわざと機械人形の片腕も不自由にしたのか?
よく読むと分かるけど、日本語はすごい曖昧な文章になってる。良くない。
原文:
The package contained a note as well, signed by Drafna, master of the School of Lat-Nam. It said simply, "I understand."
拙訳:
小包には短いメモが付随していた。そこに記されたサインはラト=ナムの学院長であるドラフナのものだった。メモにはただ一言「分かりました」とあった。
読みながらのリアルタイム翻訳だったので、最初に訳したときはこの「I understand」がこの物語のキーとなる言葉だと気づかなかった。まあ、それでなくても、この短いフレーズが非常に深い意味を持っていることは分かった。
ドラフナが何に対して「understand」と言ったのか。
「I understand what you want, and has packed it for you」なのか「I understand why you wished this powerstone」なのか「I understand your feeling」なのか……いかようにでも受け取れるこの短い言葉を日本語訳するのか。困った。
一瞬だけ「分かりました(I understand)」と併記しておこうかとすら思ったほど。さすがにやめたけど。
原文:
The Loran he had built was a creature of copper skin and geared muscles.
拙訳:
彼が生み出したロランは銅の肌と歯車の関節を持った化け物にすぎなかった。
意訳の範囲を超えているかもしれないけど、ここで「筋肉」という言葉はなんか雰囲気を壊す気がしたんだ。それに歯車だから関節部分としてもいいと思ったんだ(駄目かもしれない)。
原文:
In the week that followed Feldon returned to the fireside, staring into the flickering flames as if they held some secret.
拙訳:
その1週間のあいだにフェルドンは再び暖炉の傍へと戻っていた。揺れる炎をただ見つめていた。まるでその中に彼の知らない秘密を隠しているのではないかと疑うかのように。
末尾が原文(if they held some secred)と意味が異なっている。意図的に変えた。理由は上手く説明できない。そのまま訳すこともできたけど、こっちのほうが本来の意味なんじゃないかと思ったから。
原文:
Now it was a barren landscape, its soil runneled and ravined by eternal rain.
拙訳:
現在のこの地は荒野が広がるばかりで、絶え間ない雨が生み出す小さな川がそこかしこの山峡を縫うように流れていた。
何度読んでも原文がよく分からなかった。「runnel」が「小さな川」であり「ravine」が「山峡」なのはいいとして、それらの動詞形が使われている。「Soil(大地)」が「小川してたり、山峡してたり」する?
あらためて読みなおすに、延々と降り続く雨のせいで大地に川や谷が刻み込まれた、という意味かな。そうだとすると今の訳は間違っているな。
原文:
Instead, he taught Feldon of the woods, and they crossed and re-crossed his small domain, which he had so laboriously held against all invaders.
拙訳:
そのかわり、彼はフェルドンに森の力を伝授した。彼らはともに隠者の領域であるその小さな森を端から端まで何度も往復した。隠者が侵略者に対抗するべく精力的に行ってきたように。
長々と引用したけど、単に「laboriously」が分からなかった、というだけの話。「Labor」という言葉の仲間なのね。理解した。
2014/11/28 追記
これ、訳が間違ってた。最後の「which he had ~」は(森を往復したことではなく)「his small domain」にかかってるんだ。「he had so」の「so」は「~のように、そのように~」の意味じゃない。「非常に、とても」の「so」だ。
誤:森を往復した。隠者が侵略者に対抗するべく精力的に行ってきたように
正:森を往復した。隠者が侵略者に対して全力をかけて守ってきたその森を
原文:
"Is this one who is dear still alive?" he asked.
拙訳:
「そのお相手はまだ生きてるのかい?」と彼は尋ねた。
隠者の口調をどうしようかな、という話。森を護る隠者とはいえ、すでに狂いかけてまともではない、という境遇の彼にふさわしい口調は、少なくとも真面目な「ですます調」ではないだろう、と。
この後も色んなキャラが登場するけど、それぞれ口調をどうしようかは思案のしどころだった。日本語は口調一つで随分と印象も変わってしまうものだから。
原文:
Where once there were expanses of white beach now only leprous gray moss flourished, and the lake itself was little more than wide expanses of stagnant, oily water broken by pungent algae blooms in greasy shades of green and red.
拙訳:
白い砂浜が広がっていたであろう場所には今やまだらに灰色の苔がはびこっているだけだ。澱んだ湖水は粘り気を見せており、その湖面には鼻にツンとくる刺激臭を放つ藻類が緑や赤にてらてらと光っている。
知らない単語のオンパレード。やっぱりファンタジーの情景を描こうとすると、経理や営業の仕事ではなかなかお目にかかれない英単語が大量に登場することになるのな。具体的には「leprous」「pungent」「algae」など(なお、単に知識量が足りてないだけ、ということは分かっているのでツッコミ無用)。
原文:
The provender seemed insufficient for such opulent surroundings, but Feldon said nothing and accepted the sorceress’s hospitality.
拙訳:
その食べ物は彼女の豪勢な身なりにはふさわしくないようにも感じられたが、フェルドンは何も言わずにただ魔女の馳走を拝領した。
あえてちょっと気取った日本語にしてみた。場面が場面だし、いいかな、と。
原文:
"She isn’t real," cried Feldon, spitting out the words.
拙訳:
「現実じゃない!」
フェルドンは言葉を吐き出すかのように叫びを上げた。
ここのセリフの訳はなかなか手こずった。「彼女は本物じゃない!」「彼女は現実じゃない!」などの素直な訳から「彼女はどこだ!」などの意訳も含めて、色々タイプしては消してた。
最後には「怒りに駆られたているから極力短く、でも出来る限り原文に即した形で」ということで、今の形にしてみた。迷った。
原文:
"Ah," said the master, "and your love is such a pale, insubstantial thing that you cannot part with a hunk of metal for it."
拙訳:
「おやおや」と男は言った。「お前の愛はそんなものか? なんと薄っぺらく儚いものだろう。そんな鉄くずの塊ひとつ手放せないとは」
意図的に原文の単語を無視した箇所の1つ。具体的には「hunk of metal」を「金属の塊」ではなく「鉄くずの塊」としたところ。「金くず」という選択肢もあったかな、と今更気づいた。
原文:
Something heavy and wet thumped against the door, sounding like a bag of wet earth. Slowly Feldon pulled himself to his feet (he no longer had his cane) and shuffled to the door. The door gave another sloshing thud and then another, as Feldon reached it and grasped the knob.
拙訳:
何か重たく濡れたものが扉にぶつかる音がした。まるで濡れた袋を叩きつけたような音だった。フェルドンはゆっくりと苦労して立ちあがった(彼は頼りとなる杖を失っていた)。そして扉に急いだ。扉をもがくように叩く音が再び響いた。そしてまた。フェルドンは手を伸ばしドアノブをつかんだ。
全体的に難しかった。要はホラー小説を書かないといけない箇所だったので、ここの前後も含めて、不気味で救いのない雰囲気をかもしだす文章を模索する必要があった。大変だった。
あと「thumped」「shuffled」「sloshing」「thud」などなど、この沼地に訪れてからは知らない単語がまたぞろ一気に現れて大変だった。
原文:
"But what about when I use fire," asked Feldon, "or when the hermit calls a great wurm?"
拙訳:
「しかし実際の火を操ることもあるし、隠者が呼びだした巨大なワームは?」
このフェルドンのセリフの意図するところを読み解くのが難しかった。何しろ直前で学者が小難しいことを言い出したせいで、フェルドンと同じくらい混乱していたので。
ちなみにこれに対する学者の回答は「Yes, in those cases it is a real fire and a real wurm, but the magic alters it.(確かにその場合は実際の炎や実際のワームが操られてることになる。だけど結局は魔法の力で変容させられたものだ)」。
フェルドンの言う場合は「本当の炎と本当のワームが出現している」らしい。だからそう意味にとれるようにあえて「実際の火」などと訳してみた。学者さんの言うことは難しい。
原文:
Both scholars nodded. Feldon found the duplication unnerving and dismissed the part of the spell that held the magical scholar in place.
拙訳:
2人の学者が同時に頷いた。フェルドンは複製した学者が煩わしくなったので魔法の力を打ち切った。
ここは原文を読んでて笑ってしまった。いちいち同じ動作しなくても。
原文:
"You can summon your lost love back," said the scholar, "if that’s what you truly want."
拙訳:
「失った恋人を召喚すればいい。もし君が本当にそれを望むならね」
どこか抜けたところのある学者からかけられた最後の言葉に、いきなりスッと頭が冷えるような感覚があった。そんな感覚を味わってもらえるような日本語訳にしたかった。
成功したかどうかは読んでもらった方にしか分からないことだけど、成功していたら、とても嬉しい。
原文:
The joy of life with her and the sadness of her departure felt like a great bubble rising within him. He fed his memories of the land into that bubble, memories of the mountains, the forests and shore, the swamps and the temple, and he filled it with power and life.
拙訳:
彼女と共に過ごした楽しい日々、彼女を失ったときの悲しい日々がまるで巨大な泡のように彼の内側から浮かんできた。フェルドンはそれぞれの土地で得て来た記憶をその泡に込めた。山々で過ごした記憶、森で、岸辺で、沼で、神殿で過ごした記憶を魔法と生命の力で泡に込めた。
何が起きてるのやらよく分からない、魔法の描写。雰囲気さえ伝わればいいか、と考えて訳した。ここについては訳し間違えててもバレないんじゃないかなあ、と思ったことは秘密だ。
原文:
"Why am I here?"
拙訳:
「私はここで何をしているのかしら」
拙訳:
「私はなんでここにいるのかしら」
同じ言葉が何度も出てくるけど、訳し変えている。英語は(日本語と違って)曖昧さがなくてハッキリとしている、と言う人がいるが、同意できないのは、こういう訳をしているとき。
だってロランのこの「Why am I here?」をどう受け取るかは読んだ人次第なんじゃないかと……それでも訳すのだけれど。
原文:
The spell-Loran paused, then smiled slightly.
"I understand," she said at last.
拙訳:
ロランはじっと動かなかった。そしてかすかに微笑み、最後にこう言った。
「分かったわ」
物語を通じて何度も登場する「I understand」の1つ。このあと、フェルドンも消えゆくロランを前に「I understand」と呟く。
さて、最後は、この物語を最後まで読んで良かったと思わせてくれた、そんな会話を書き記して終わろうかと思う。
原文:
"That is what you truly wanted?" asked the scholar.
"That is what I truly wanted," said Feldon.
拙訳:
「それは君が本当に望んだことだったのかい?」
「それが私が本当に望んだことだったんだ」
コメント
たぶん、ですが、フェルドンは機械人形の腕を外してみたりまたつけてみたり----もしかすると何度か----したんじゃないでしょうか(back and forth の意味正確に知りませんが「行ったり来たり」的なニュアンスがありそう)。最後にロランを見た時の姿にするか、それとも初めて会った時の姿にするか。そして、最終的にはつけることにした、ということなのだと思います。自分でもそうする、ような気がします。
へこたれないですよね、この人。それと面白い記事に出会わせてくれてありがとうございました。またマジックが好きになりました。
>高潮のさん
>たぶん、ですが、フェルドンは機械人形の腕を外してみたり
>またつけてみたり----もしかすると何度か----したんじゃないでしょうか
( ゚ Д゚ ) ……?
( つд⊂) ゴシゴシ
(;゚ Д゚ ) ……!?
という感じです。実際はもっと感動してます。なるほど。心底納得しました。そうか、この場合の「back and forth」してるのは「機械人形の腕」なわけだ。「replacing」は「AとBを交換する」じゃなくて「Aを付けたり外したり」しているんだ。
【原文】
Later she lost the use of one of them, crippled by Ashnod. He went back and forth, removing and replacing the arm. Finally he restored the statue to its complete state.
【拙訳(意訳)】
のちに彼女は片腕を失った。アシュノッドに負わされた傷が原因だった。彼は機械人形の片腕をつけたままにすべきか外すべきか迷い続けた。最終的に彼は人型を全き姿に留めることにした。
>追記
上のまとめに書き忘れたのでここに追記してみる。元記事をメモ帳にコピーしようとしたときに気付いたこととして、原文のサイトだとなぜか「fl」が合字になってた(flで1文字になってた)。不思議。
これだけの分量を翻訳するのはさぞかしご苦労があったと思います、お疲れ様でした。
ものすごくいい話を読めて、知ることが出来て本当に良かったです!
ありがとうございました!
リンクをさせていただきます、よろしくお願いします。
重ね重ねになりますが、本当に多大な量の翻訳本当にお疲れ様てした。
やっぱり反応があると訳した甲斐があります。