余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 「繰り返し」がテーマだったもよう。もしくは、すでに1ジャンルとしての地位を確立している「ループもの」かな。英語では「Re-Run」とある。直訳すると「再放送」だけど、さすがにこの日本語訳はちょっと違うだろ、と言われてしまいそう。

 話がそれるけど「ループもの」の名作って人に薦めづらい。「これ面白いよ」「なんで?」「……言えない」となる。叙述トリック系に通じるものがある。

 「単に、これ面白いから読め、でいいじゃん」

 そうだね。

余談2:月曜日 《Time Walk》

 記事の中で登場している《永劫での歩み/Walk the Aeonsの Aeons は複数形で、単数形は Aeon であり、これは Eon とも書く。意味はカード名にあるとおり「永劫」、ただ天文学で使われる際には「10億年」。

 10億というのは日本語だとそれほどキリがよく見えないかもしれないけど、海外ではちょうど One Billion (1,000,000,000) なのである。

 なんでこんな話をいきなり始めたかというと、つい最近、カール・セーガンの「百億の星と千億の生命」という本を読んでたのでタイムリーだなと思ったから。

 この本の原題が「Billions & Billions」(タイトルの邦訳が素晴らしいと思う)。このタイトルは、カール・セーガンの口癖として有名な言葉らしい……そしてカール・セーガンは実際にはこんな言葉を口にしてないらしい(とこの著書に書いてある)。

余談3:火曜日 《巻き直し/Rewind》

 このあたりから打ち消し呪文の弱体化が始まったイメージ。《雲散霧消/Dissipate》が懐かしかった、というのはさておき訳の話。
原文:
 there were cases of people playing Frantic Search and not even bothering to draw and discard, just so they could untap lands

拙訳:
 一部のプレイヤーに至ってはただ土地をアンタップできるからという理由で《大あわての捜索/Frantic Search》をプレイするため、カードを引くことや捨てることさえも興味がないといった有様だった

 あらためて読むと、意訳が甚だしいわりに日本語としても微妙。

 原文で難しかったのが「not even bothering to draw and discard」。「興味がない」という日本語を使って訳したかったのだけど、どうしても上手くいかなかった。

 あと、ぱっと読むと、ドローとディスカードをしない、という風にもとれるんだけど、カードの効果を無視するわけにはいかないだろうから、それはないだろ、と。

 大意はズレてないはずとはいえ、他にもっと良い訳し方がありそう。

余談4:水曜日 《永遠の統制/Eternal Dominion》

 訳の話。
原文:
 The teaser advertising campaign for Saviors of Kamigawa showed

拙訳:
 神河救済の販促キャンペーン時の広告には

 直訳ではない「なんとなく訳」。こんな感じかなあ、というふわふわした翻訳になってる。どんな「Teaser」だったか確認できればもう少し色々できるんだけど。

 もう1つ訳の話。
原文:
 "If you could only cast one spell for the rest of your life, what would it be?"

拙訳:
 「残りの人生、1つの呪文しか唱えられないとしたら、どの呪文にする?」

 もしかしたら公式訳があるのかもしれない、はさておき、1つの呪文かあ。

 《Teleport》は間違いなく太るからいらないし、《対抗呪文/Counterspell》はそもそも呪文を唱えてくる相手がいてのことだし……《治癒の軟膏/Healing Salve》かな。人生を狂わせない程度の便利呪文で。

余談5:木曜日 《永劫の輪廻/Enduring Renewal》

 生まれて初めて購入したマジック商品はアイスエイジのスターターパックだったけど、当時からコンボの話になると必ずといっていいほど挙がったこのカードを実際に見たのはかなり後になってからだった。マジックを遊び始めてから数年は基本地形にすら事欠く状況だった。

 いつもの昔話はさておき訳の話。
原文:
 R&D playtested it with Soul Warden and Wild Cantor to see if it was too risky

拙訳:
 開発部はこれが悪さをしないかどうか確認するために《魂の管理人/Soul Warden》と《野生の朗詠者/Wild Cantor》と一緒にテストしてみた

 ポイントは「if it was too risky」の意訳。原文に近づけるなら「危険性の有無をチェックする」みたいにするべきかもしれない。

余談6:金曜日 《生まれ変わった勇士/Reborn Hero》

 Card of the Day の最初の記事がネタにされている。それは2002年02月08日で、ほぼ13年前だ。個人的な驚きはその年月ではなく、13年前だというのにすでに取り上げられるカードが「トーメントのカード」だということ。

 トーメントはオデッセイブロックの2つ目のセットで、オデッセイ以前にはすでに、アイスエイジ、ミラージュ、テンペスト、ウルザ、マスクス、インベイジョン、と並んでいる。

 マジックの歴史の長さをあらためて思い知った。

余談7:ドワーフの城塞

 以下が公式の販促ページ。ヴォーパルスと同じデザイナーさんの作品。

  I Was Game:『ドワーフの城塞』
  http://c3ba95dc5fb36b51a14310b783.doorkeeper.jp/events/16376

 というわけで、ゲームマーケットで買って来たこの1人用ゲーム「ドワーフの城塞」が面白かったので、紹介がてら短編を書き出してみたら思いのほか長くなってしまった、というか、本当に長過ぎた。最終話に至っては文字数制限に引っ掛かった。

  以下が第1話目。ゴブリンからオークまで撃破。

  《ドワーフの城塞攻防記》 第1話:リョーマとジェシカ
  http://regiant.diarynote.jp/201412041447355994/

  以下が第2話目。ドラゴンパピーを撃破。

  《ドワーフの城塞攻防記》 第2話:竜鱗甲と勝利の確率
  http://regiant.diarynote.jp/201412050218092594/

  以下が第3話目。トロールとジンを撃破。

  《ドワーフの城塞攻防記》 第3話:分岐する未来
  http://regiant.diarynote.jp/201412070750474204/

  以下が最終話。ドラゴンからベヒモス、そしてエピローグ。

  《ドワーフの城塞攻防記》 最終話:ドワーフと人間の城塞
  http://regiant.diarynote.jp/201501021842482002/


 以下に裏話と解説。

第1話:リョーマとジェシカ

 元々は「システム面から語るための現代人と、フレイバー面から語るためのドワーフのコンビ」という発想から始まった。

 最初に書き上げたのは午前2時くらいで「やっと終わった。明日も朝早いのにまずい。とっとと寝よう」と寝床に入ったあと、書いた内容を思い出しながら眠りにつこうとした瞬間「間違ってた!」と気づいて跳ね起きた。

 初稿の展開は以下の通り。あとでまた解説するが、初戦の勝率が「36分の1」である、という前提(勘違い)の元に話が進んでいる。
「本当にゴブリンだよ……」

 呟くと震える足を手の平で叩いた。怖がっている場合でないことはよく分かっていた。リョーマは、竜撃砲と呼ばれるこの砲台を操作すべく城塞の最上階という安全な位置に立っていたが、唯一の仲間であるドワーフはたった1人で正門から白兵戦を挑む手はずになっているのだ。リョーマはもう一度、震える足を力いっぱい叩いて呟いた。

「大丈夫、負ける確率は36分の1だ」

 しかし、さっきまで米粒ほどに小さかったはずのその数字が、今ではスイカのように大きくなり、重く重くリョーマの胸にのしかかってきた。リョーマは重苦しさを振り払おうと、ただ1人の仲間のドワーフであるジェシカのことを考えた。そして彼女と出会った瞬間を思い出していた。

(中略)

「この砦に残ってるのはアタシ1人。もうすぐここにゴブリンどもがやってくるってのに残ってる樽は3つきりだし、竜撃砲も調整が終わってなくて通常弾しか撃てやしない」

 リョーマはポストカードを思い出す。ざっと目を通した裏面の情報を必死に脳裏に思い浮かべた。そしてなおも自嘲気味に続けられている相手の言葉をさえぎった。

「まったくサ、こんな状態で勝ち目なんて……」
「……36分の1だ」
「そうそう、それよりひどいかも」
「違うよ。ビール樽は3つあるって言ったよね。負ける確率は36分の1だ」

 確信満ちたリョーマの言葉に少女が目を丸くする。

「え?」
「そうだ、君は匠の技が使えるはずだろ。ビール樽を2つ空にすればゴブリンごとき5匹までなら楽勝のはずだ」
「そ、そうだけど、なんで知ってるのサ?」
「なんでもいい、もうすぐ来るんだろ、準備をしよう。僕が竜撃砲を受け持つよ。相手の出方次第だけど君が白兵戦だ。ことによったら匠の技の出番かもしれない。どちらにしても……負ける確率は36分の1だ」
「さっきも言ってたけど、なんてか、随分と具体的な数字だネ? まあいいさ、正直諦めてたけど、なんかアンタを見てたらいけそうな気がしてきたヨ」

 大きな口でニカッと笑う。

「アタシの名前はジェシカ」
「僕はリョーマ」

 勘違いというか、単に「樽爆弾」を見落としていた。「樽爆弾」を使わない場合、負ける可能性があるのは2つのサイコロの出目が【1】【1】だったときのみとなるので「36分の1」と言っている。

 個人的にはこっちのほうが話の展開が面白い気がするけど、さすがにゲーム紹介をしようというのに間違ったルールで紹介するわけにはいかない、と慌てて書き直した。

 作者の方のツイートを見るに、タイトルが改題前の《ドワーフの城塞に栄光あれ》になってるので、どうやらこの修正前の話をお読みになられてしまったらしい。申し訳ないやら恥ずかしいやら。

 あと第1話に関して触れる点としては、各種ネーミングか。リョーマとジェシカという名前には特に由来などはない。あえて言えば、イメージが引きずられないように「知り合いにいない名前」にしたくらいか。

 また、先に言ってしまうと、カルガン、リンデル、グリッドの名前にも元ネタはない。濁点を最低1つは入れようと思ったくらいか。

 主人公の高校の名前、常伏高校は少年ジャンプで連載していた「保健室の死神」から来ている(漫画では中学校)。この漫画の主人公である明日葉くんがBG部(ボードゲーム部)所属なので、高校名を「常伏高校」にして先輩の名前を「明日葉」にしようかな、というのが元々の案だった。結局、学校名だけ残った。

 ボードゲーム部の2人、高田と桂木も元ネタなし。あえていえば、高田はリアルに知り合いがいない名字なので、創作時にはよくお世話になる名前ではある。

 ついでに固有名詞の話。次の話で登場する「竜鱗甲(ドラゴンスケイル)」は、ちょっと連呼しすぎたと反省している。オリジナル単語の出番は「定期的に、でも少なく」にしないと鼻につく。

 あと、ルビは「ドラコスケイル」にして、第1話冒頭の「竜骨山脈(りゅうこつさんみゃく)」を「ドラコスパイン」にすれば統一感があったかもしれない、とか思った。


《第2話:竜鱗甲と勝利の確率》

 ドラゴンパピー戦で振り直すときの試行錯誤が楽しかったので、それを伝えたいと思って書いた話。あとは「なんで敵の強さちょうどだともらえる経験値が増えるのか」をなんとかフレイバー的に表現したかった。

 リョーマがゲーム内容を忘れたのは「全部覚えてるとこれから先も敵の表現をすべて数字でしないといけなくなるなあ」とフレイバーが弱まることを心配したため。ただ途中で気が変わって、結局思い出すこととなった(そして、なぜ忘れたり思い出したりしたのか、という理由付けを考えているうちに「もう1つのエピローグ」を思い付いた)。

 あと第2話では、味方の内部には対立構造を設定すること、という某小説家の教えに従って、リンデルのキャラクターが作られた(そもそもジェシカとカルガンは甘すぎだと思う)。

 最初に書いたときはリンデルとの対立がもっと深刻になる予定だった。
 砦の地下には食料貯蔵庫と宝物庫があったが、無駄に広い宝物庫は長らく収めるものもなく空のままだった。外から鍵のかかる部屋はそこだけだったので、仮の牢屋として使われることになった。

「安心しろ。飯は持って来てやる」
「それと、あとで寝床になるものもな」

 抵抗することなく部屋に入ったリョーマに2人が声をかけるが、力なく壁を見るだけだった。そんなリョーマの様子に一瞬だけためらってからリンデルが声をかけた。

「1つ言っておくぞ。俺は貴様をスパイだと断定したわけじゃないし、したいわけでもない。その可能性があることを最初から捨ててかかるのがおかしいとそう言っているだけなんだ。それが間違ってると思うならそれでいいさ」

 扉が閉じられた。暗闇の中、リョーマは壁にもたれて腰を下ろした。

 このシーンに先だって、砦内部の構造も考えたけど、上記の宝物庫を含め、ほとんど使わなかった。以下は、物語に使われなかった砦の各種設定の一部。

 <地下の食料貯蔵庫>
 その真上に1階の台所が位置しており、台所の床に開いた穴から板を下ろすことで階段を使わずに食料の上げ下げが出来る。

 <最上階>
 通常メンバーは2階の寝室を相部屋で使うことになっており、最上階である3階には隊長用の個室がある。またその個室からは(砦の背が接している)岩山のトンネルへと通じる隠し通路があり、最上階に追い詰められても本国へ抜けることが可能となっている(追撃を防ぐための爆破用の火薬もある)。

 <玄関ホール>
 玄関から入ったところは調度品の少ない広間になっている。天井までは2階分の高さがあり、2階のバルコニーにぐるりと囲まれた形となっている(敵を誘いこんだ際に守りやすくするため)。

 ジェシカとリンデルの対立のために「ジェシカの親は配備された砦を見捨てて逃げ出したという汚名を負っており、それが理由でジェシカは1人になろうと砦を後にしなかった。むしろ死地を求めているとさえいえる」という設定も考えたけど、ばっさりカット。

 砦の設定やキャラの背景など、ゲーム外のネタを書けば書くほど「ドワーフの城塞」というゲームの輪郭がどんどんぼやけていってしまうことのに気づいたため(今でも多すぎだろうとツッコまれそうだけど、元はさらに多かったということで)。


《第3話:分岐する未来》

 サブタイトルが気に入っている回。上手く内容とマッチしてる気がする。没案としては「策士、策に溺れる」「負けなければいい」「トロールとジン」などがある。

 タイトルなどのネーミングセンスが平均以下であるということは自覚しているので、たまに「これ上手くいったのでは」と思える瞬間があると嬉しくなる。

 話の内容としては「砦の発展(経験値の割り振り)を世界観に沿う形で表現する」というフレイバー的な目標と「戦闘時のサイコロの配置と振り直しというこのゲームの面白さを伝える」というシステム的な目標があった。

 特に「振り直し」が行われるとき、実際には何が起きているのかを考えるのが楽しかった。最終的には、一度引いてから再度攻めるという臨機応変な戦い方を表してるのかな、ということで。

 システム面では、振り直しの場合分けとそれぞれごとの確率を計算するのが(面倒ではあったけど)楽しかった。正解がないこと、そして失敗が自分のせいであると感じられるゲームは良いゲーム。


《最終話:ドワーフと人間の城塞》

 分量的には2話に分けてもいいくらいだったけど、どこで切ろうか迷ったことと、一気に終わらせたかったこともあって、無理やり詰め込んだ。

 その結果、案の定、Diarynote の文字数制限に引っかかり、冒頭の公式と過去話の紹介文すらギリギリまで削って、ようやく1つの記事に収めた。

 まずは対峙することになるモンスターたちの描写と説明を序盤で一気に終わらせてある。これは、各ステージの戦闘結果(システム的な解説)のあいだを詰め、ゲーム的な描写を凝縮しようと思ったため(が、結局ステージ間の描写が長くて、あまり上手くいってない)。

 次に、砦の発展(経験値の割り振り)の計画をまとめておいた。実際にドラゴン戦が始まる前におこなわれた、1人脳内作戦会議を書き起こしてある。なお、作戦を立てようとすればするほど、絶妙なバランスの上に成り立ってるゲームだなあ、と思わされた。

 そうそう。最終話の途中に参戦することとなった5人目のキャラはちょっとだけ悩んでから、結局ああなった。ビホルダーやゴールドドラゴン、ベヒモスと戦うというのはこの世界的にとんでもないことなのでは、と思ったので、新規参入の立場としての5人目に助けられた気がする。

 エピローグについては最後に回すとして、その前に最終話の小ネタや元ネタについて思いだせる限り、書いてみる。

「聞いたことがなくて当然だ。ビホルダーはただの妖魔の名前じゃない。その名前が指すのは世界にたった1体しか存在しない、ある個体の名だ。真のビホルダーは常に単一で、まがいものの存在は決して許されない。決してだ」

 昔のファイナルファンタジーやサガなどにはビホルダーが普通に登場していたが、ある時期を境に出なくなった。これはダンジョンズアンドドラゴンズの版権が理由と言われている……というのをフレイバー的に解釈してみた(というかネタにしてみた)。

  日本語版Wikipedia:ビホルダーの項目
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%BC

 あとリンデルの説明にあった「長大な叙事詩に関わるような歴戦の勇士であっても、その頭を地面にこすりつけ許しを乞う」は、上記のWikiediaにも紹介がある「土下座ェ門」の話が元ネタ。

 通常の生物の瞳が前についているのは未来へ向かうためと言われている。過去を背後とし、前に向かい生きていく使命があるからだと。

 とある歌詞が元ネタ。本当は「人の瞳が 背中についてないのは 前に向かい生きていく 使命があるから」というもので、妙な説得力というか、なんというか……すごい印象的な歌詞だったので。
 ゴールドドラゴン、またの名を神竜。炎と地に生きるドワーフにとって「ドラゴン」とは常に特別な存在であり、そのドラゴン族の頂点に立つゴールドドラゴンは神にも等しい存在だった。

 大海に浮かぶ主要な島々(この砦も、それらのうちで比較的大きな島の1つの辺境に位置している)には、それぞれの島ごと、1つの時代に唯1体のゴールドドラゴンが生まれると言われている。

 神にも等しい、とか、1つの時代に1匹、とかが「ダイの大冒険」に出てくるドラゴンの騎士っぽいな、と書いたあとにふと思った。まあ、よくある設定といえばそこまでで、別にそれが元ネタというわけでもない。

 そしてベヒモスは初雪とともに訪れた。

「あんなところに山あったっけ」
「心当たりないのう」
「こんな近くにあったらさすがのアタシでも気づくさネ」
「だよね」

 岩山の中腹に位置するドワーフの城塞。その見張り台からも視線の高さにその頂きがくるほどの真黒く小高い丘が、その色と対照的な無垢の初雪に覆われていた。黒豚の丸焼を岩塩で焼いたよう、と評したのはジェシカだった。

 ベヒモスが「デカい豚みたいで食べると美味しい」というヴォーパルス(ボードゲーム)の設定をどこまでネタにするか悩んで、結局は上記で軽く触れるだけにしといた。

 困ったのは、ベヒモスの巨大さを表現すればするほど「ドワーフたちとどうやって戦うんだ?」という難題に突き当たってしまうこと。最後は、仕方ないので「巨大な部分とは戦わなくてよし」という方向に話を持って行った。

 ベヒモス戦のフレイバー的な描写がないのは、長文買いてて気力が尽きかけていたということももちろんあるんだけど、それより、ラストは(濃い描写を避けて)あっさりと戦闘後に場面を移したかったから、ということが大きい。

 最後にリョーマは部屋を去る前にジェシカに右手を差し出した。静かな笑みを浮かべているリョーマに何かを感じかけたジェシカだったが、何も言わずにその手を力いっぱい握った。痛みに顔をしかめるリョーマにジェシカが声を出して笑う。その痛みと微笑みはリョーマにとって何よりも(例えるなら口づけをするよりも)特別で忘れえないものだった。

 最後の「例えるなら口づけよりも」は、初代リプレイシリーズのキャラを主人公にしたソードワールド短編集の収録されていた短編のラストが元ネタ。

 戦士の素質がないのに戦士になってしまった男とコンビを組んだユズがダンジョンに潜るという話は、その内容も面白かったし、特にラストがとても印象的だったのでお借りした。
 あれからリンデルはこの地で鍛えた腕を振るうべく新たな戦場を求め旅立った。カルガンは本国に戻り武術指南として若手を鍛えているらしい。

 ベヒモス戦のあと、そのまま5人で妖魔の本陣へと向かう、という「俺たちの戦いはこれからだ!」的な終わり方も考えていたけど、この物語は「ドワーフの城塞」であり、その本質は「タワーディフェンス」的な防衛ものであるはずだから、という考えて砦に残すことにした。

 ここは世界の北、夏は短く冬は長く厳しい。海には無数に浮かぶ島々。その中でも特に大きな島々にはそれぞれ黄金の竜が住まうという。

 それらの中の1つ、多くの種族が縄張りを争っている特に巨大な島の西部では、ドワーフと妖魔が南北に伸びる山脈を挟んで争いを続けている。

 島全体と全ての種族を巻き込む100年の戦乱が始まるのはそれから数年ののちのことだったが、その中でリョーマとジェシカが担った役割については、また別の物語となる。

 無理にヴォーパルスと絡める必要はなかったかもしれない、と思いつつも、徹頭徹尾にかけて趣味の塊であるこの物語をヴォーパルスと絡めない理由こそ逆に思いつかなかった。

 ヴォーパルス世界だとリョーマはなんなんだろう。《民兵》か《冒険者》あたりかな。これから経験を積んで強くなっていく予定だし、やっぱり《民兵》か。


《最終話:そして、もう1つのエピローグ》

 このラストで新たに生じるかもしれない「なぜ?」とか「どうして?」という疑問に答えていない気もするけど、書きたいことは全部書けたと満足しているエンディング。

 唯一、不安があるとすれば「テーブルトークRPG」の「キャラクターシート」を知らない人には伝わらないのではないか(そしてそういう人はボードゲーム好きの中にも一定数いるのではないか)ということくらいか。

 もっともそれを言ったらこの物語自体が「ドワーフの城塞」というそれほどメジャーとは言えないゲームを元ネタにしているわけで、考えてもしょうがない。

 何にせよ、リョーマとジェシカの物語を書き上げることが出来て満足してる。

 万が一(というか億が一)、元のゲームを遊んだことがないけどこの物語を読んでくれた、という方がいらっしゃったら、ぜひ「ドワーフの城塞」を遊んでみて、このリョーマとジェシカの物語がどうゲームとシンクロしているのか、確かめて欲しいところ。

 最後に。

 この素晴らしいゲームを生み出してくれたゲームデザイナーに感謝。

(ドワーフの城塞攻防記:本当の、本当に終わり)

コメント

高潮の
2015年1月6日1:55

光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』を踏まえた邦題かも知れないですね>セーガンの本。萩尾望都のコミカライズが素晴らしかったのが印象に残っています。

re-giant
2015年1月6日13:43

>光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』を踏まえた邦題

確かにそれっぽいですね。面白そうな話なのでいつか読んでみたいです(幸い、冊数も少ないようですし)。もし踏まえたものだとしたら「Billions & Billions」という題を訳そうというときにそれを思いついた方はさすがだと思います。

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