余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 双子だったりコピーだったりするので、DoubleもしくはTwinの要素を持つクリーチャーがテーマかな。各カードのそれらしき点については以下の通り。

  月曜日:《ダンダーン》
                  要素:名前
  火曜日:《山崎兄弟》
                  要素:双子の兄弟
  水曜日:《クローン》
                  要素:コピー能力
  木曜日:《ぼろ布食いの偏執狂》
                  要素:イラストの2人組
  金曜日:《スタング》
                  要素:双子トークン

 《倍増の季節/Doubling Season》がないのはクリーチャーに限っているからかもしれない。ちなみに《倍増の季節/Doubling Season》が収録されている「ラヴニカ:ギルドの都」の発売は2005年。

余談2:月曜日 《ダンダーン/Dandan》

 水中から女性が現れてポーズを決めるテレビCMを思い出した人は年がバレる。そもそもこのカードを知っている時点で古参プレイヤーの可能性が高いけど。

 訳の話。
原文:
 "The dandan was a fantastic fish that, if memory serves--and it certainly doesn’t; it rules--was as big as a man but could be killed by a clap of your hands. Hence, Dandan is a 4/1 creature."

拙訳:
 「私の記憶が確かならば(もっともそんなことは滅多にないが)《ダンダーン/Dandan》の背景設定というのは、大の大人ほども大きいにも関わらず非常に憶病な性格をしており、手を叩く音にすらショック死するという実にヘンテコな魚である、という感じだった気がする。だからこそ 4/1 というサイズなんだ」

 色々と難しかった。

 まずは冒頭の「Fantastic Fish」という表現。素直に訳すなら「素晴らしい魚、見事な魚」という褒め言葉になるところだけど「手を叩く音ですら死ぬ」という特徴を指して「素晴らしい」とはちょっと言いづらい。

 おそらく「Fantastic」と言いたいのは「他に類を見ない特徴的かつ印象的な習性が面白い」ということなのであって、魚自体が素晴らしいわけではない(のだと思う)。どうしようかなあ、というわけで「実にヘンテコな魚」としてみた。

 次の難題は「if memory serves--and it certainly doesn’t; it rules」という英語の言葉遊び。ジョークを訳すのは長い道のりだ。ましてや掛け言葉ならなおさらだ。

 英語の言い回しとして「if memory serves」は「(私の)記憶が確かならば」という意味になる。直訳するなら「もし記憶が言うことを聞いてくれるなら、仕えてくれるなら、従ってくれるなら」という感じ。

 それに対して「it rules(それが(私を)支配する)」と言っている。「記憶を従えている」のではなく「記憶に従わされている」のだ、ということ。確かにそうかもしれない。いや、分かるんだけど訳すのは難しい。

 最後の難所はラストで説明されているダンダーンの習性に関する部分。「big as a man but could be killed by a clap of your hands」とある。実はここには「なぜ手を叩く音にすら死ぬか」は明記されていない。

 わずかな空気(水)の振動にすら耐えられないほどに体が弱いのか、わずかな音にも怯えて死んでしまうほどに臆病なのか、手を叩くというそれほど激しくない行為にすら驚いて死んでしまうのか。

 主観で「臆病だからかな」と思ったので勝手に「非常に憶病な性格をしており」を追加して訳した。おそらく、何も考えずに「大の大人ほども大きいにも関わらず、手を叩くだけで殺すことができる」と訳すのが正解。

余談3:火曜日 《山崎兄弟/Brothers Yamazaki》

 2人だと死なないけど、そっくりさんが3人いると死んでしまう、というあたりはドッペルゲンガー的なものを感じる。兄弟2人ともが「うわあ、俺とそっくりだ!」と思い込んでしまうんだろうな。3体目が《クローン/Clone》だとさらにそれっぽい気がする。
原文:
 Read the legend behind the legend(s) right here

拙訳:
 この伝説のクリーチャー(たち)の物語はここで読める

 素直に「この伝説のクリーチャー(たち)の伝説」と訳すべきだった気がする。明らかに原文もそういうネタなんだし。

余談4:水曜日 《クローン/Clone》

 マジックの黎明期には、各地のプレイヤーのあいだで本当に「それぞれの直感したがってなんとなく」プレイしてたんだろうなあ。

 トークン・クリーチャーをコピーすることはできるのか、カウンターが上に乗ってるクリーチャーをコピーしたらカウンターはどうするんだ、タップしてるクリーチャーをコピーしたらタップしてるのか、《巨大化/Giant Growth》がかかってくるクリーチャーは……エトセトラエトセトラ。

 初めて違うプレイグループと遊ぶときに「じゃあ、そいつコピーするよ。そいつは召喚酔いが解けてるから《クローン/Clone》でアタック」「いや、アタックはいいけど、こいつタップしてるからそいつもタップするだろ」「タップはコピーされないだろ」みたいな会話があったんじゃないかなあ、とか勝手に想像してみる。

 そういえばレベルアップ状態はどうなるんだろう、と一瞬だけ不思議に思ったけど、そうか、カウンターはコピーされないんだから関係ないのね。レベル20のクリーチャーをコピーしてもレベル0からスタート。強くてニューゲームは不可。
原文:
 But they really wanted to put it in.

拙訳:
 しかしそれでも彼らは諦めきれなかった。

 大まかな意味は合ってるだろうけど英語でそう書かれているわけではない、という典型的(?)な意訳。「彼らはそれでもそのカードを収録したかった」は、正しいんだろうけど、なんかイマイチだなあ、と。

 ついでに《クローン/Clone》と直接関係はないけど、翻訳に関連した話。

 繰り返し再録された《クローン/Clone》と違って、似た能力を持つにも関わらず、ほとんど知られていないアルファのレア、《Vesuvan Doppelganger》というクリーチャーがいる。そのルールテキストを順に並べてみる。

 まずは印刷当時のカードテキスト。
 Upon summoning, Doppelganger acquires all
 normal characteristics (except color) of any one
 creature in play on either side; any enchantments
 on the original are not copied. During
 controllers’s upkeep, Doppelganger may take on
 the characteristics of a different creature in play
 instead. Doppelganger may continue to copy a
 creature evenafter that creature leaves play, but if
 it switches it won’t be able to switch back.

 最初に読んだときは最後の文章(but if it switches it won’t be able to switch back)の意味が分からなかった。要するに「コピーした対象が死んでもドッペルゲンガー側はそのままでいいよ。ただ以降のアップキープに異なるクリーチャーをコピーしたら、そのすでに死んでしまったクリーチャーにあらためて戻ることはできない」ということらしい。

 以下は現在のオラクル(最新ルールテキスト)。
原文:
 You may have Vesuvan Doppelganger enter the battlefield as a copy of any creature on the battlefield except it doesn’t copy that creature’s color and it gains "At the beginning of your upkeep, you may have this creature become a copy of target creature except it doesn’t copy that creature’s color. If you do, this creature gains this ability."

日本語訳:
 あなたは「Vesuvan Doppelgangerは、そのクリーチャーの色をコピーせず、『あなたのアップキープの開始時に、クリーチャー1体を対象とする。あなたは”Vesuvan Doppelgangerはそのクリーチャーの色をコピーしないことを除いて、このクリーチャーはそのクリーチャーのコピーとなる。そうした場合、このクリーチャーはこの能力を得る”ことを選んでもよい。』を得ることを除いて、それが戦場に出ているクリーチャー1体のコピーとして場に出る」ことを選んでもよい。

 この日本語のほうの文章を一読して意味が分かる人がどれだけいるのか。いわゆる「マジック語としては正しいが、日本語しては難解きわまりない」というテキスト。ちなみに似た例としては《生き写し/Dead Ringers》のルールテキストがある。

 上記の《Vesuvan Doppelganger》の日本語オラクルを分解すると以下のような感じとなる。プログラミング初心者の書いた多重構造のIF文みたいになってしまった。
あなたは
  「Vesuvan Doppelgangerは、そのクリーチャーの色をコピーせず、
    『あなたのアップキープの開始時に、クリーチャー1体を対象とする。
     あなたは

        ”Vesuvan Doppelgangerは
         そのクリーチャーの色をコピーしないことを除いて、
         このクリーチャーはそのクリーチャーのコピーとなる。
         そうした場合、このクリーチャーはこの能力を得る
        ”

     ことを選んでもよい。
     』

   を得ることを除いて、
   それが戦場に出ているクリーチャー1体のコピーとして場に出る
   」
ことを選んでもよい。

 色をつけたせいで逆に分かりづらくなったかもしれない。

 まあいいか(いいのか?)

余談5:木曜日 《ぼろ布食いの偏執狂/Tattermunge Maniac》

 当時はまだ 1マナ 2/1 にデメリット能力を持たせてたんだな、と懐かしい気持ちをおさえつつ役の話。
原文:
 They’re working together to fight something that’s just offscreen.

拙訳:
 彼らは共に力を合わせて画面外の敵と戦っているのだ。

 ここはやっぱり「画面外」だろうなあ、と思った。いや、それ以上でも、それ以下でもない話なんだけど。

余談6:金曜日 《スタング/Stangg》

 強い弱いは別にして、こういうフレイバー優先のクリーチャーはとても好き。見た目が瓜二つである双子の伝説の戦士が現れる。彼らは運命を共にする。分かりやすい。

 ちなみにこの《スタング/Stangg》が生み出すトークンが元々持っていた「スタングの双子/Stangg Twin」という(レア極まりない)クリーチャータイプが失われたのは、2007年に行われた、かの「大規模クリーチャータイプ更新」のとき。

 これは種族をテーマにしたローウィンが発売される直前におこなわれた種族の大整理であり、多くの種族が絶滅したことで(マジック好きの中でもごく一部のヴォーソスたちのあいだで)有名な出来事である。

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