余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 引き続き、イニストラードを覆う影 の新カードが紹介されていた。それも実際のゲームでの使い道や強さについて言及したネタだった気がする。やっぱり新発売したばかりなんだし実際に使ってみて欲しいんだろうな(憶測)

余談2:月曜日 《聖トラフトの祈祷/Invocation of Saint Traft》

 訳の話。
原文:
 You can attach the epic power of the legendary Geist to any creature now! Better yet, there are some creatures around that can skulk their way past blockers, staying safe while throwing Angels at your foe’s face.

拙訳:
 あの伝説的な幽霊の最高にクールな能力を好きなクリーチャーにつけられるぞ! さらにさらに、最新セットにはブロックをかいくぐる能力をもったクリーチャーたちがいるんだ。つまり安全な場所から敵の顔面に天使を投げつけ続けられるというわけさ。

 「the epic power of the legendary Geist」はそのまま訳すなら「伝説的な幽霊の叙事詩的な力」となるところをノリと勢いで「伝説的な幽霊の最高にクールな能力」とした。

 そのまま残りも同じように「Better yet(さらに良いことに)」を「さらにさらに」としたり、「there are some creatures around that can ~ (~ する能力を持つクリーチャーがその辺りにいる)」を「最新セットには~する能力をもったクリーチャーたちがいるんだ」としたり。

 この週はそんな「口語にした際の自然な日本語の勢い」を優先してみた。つまり訳としてはイマイチ正しくなく、かつ訳していて非常に楽しかった、ということ。

余談3:火曜日 《溺墓の寺院/Drownyard Temple》

 カード名の「溺墓」の読みは「できぼ」。単純に考えると「Drown + Yard」が「溺れる + 墓」をなっており、「Yard = 墓」と訳されていることになる。ただ実際には「Yard」だけで「墓地」という意味はないはずなので「Graveyard」と「イニストラードの持つ怪奇めいた空気」を合わせて生み出された造語なんだろうなあ、と思ってる。嫌いじゃない。

 訳の話。
原文:
 You can discard or sacrifice the Temple to pay a cost, or use it to fuel delirium-and then get it back for just three mana.

拙訳:
 コストの支払いや昂揚の達成のために手札から捨てたり生け贄に捧げたりしても、あらためてたった3マナ支払うだけで取り戻せるのだ。

 原文の前半は「{A or B} to {C or D}」と構成になっている。そのまま日本語にして分かるかなあ(読みづらくないかなあ)という不安はあったけど、どうにもこうにもそのまま訳すより他にないな、という結論に達したのでそうした。

 ……まあ、分かるか。

 たまに読み手の読解力を過小評価し過ぎてるのではないかと思うことがある。

余談4:水曜日 《忘れられていた家宝/Neglected Heirloom》

 日本語で「ネグレクト」というと一番広まっている意味としては「児童虐待(育児放棄)」と思われる。そのせいでこういうカード名を見ると「なんで武器なのに育児放棄の単語が出てくるんだ?」みたいな疑問を持つ人もいるかもしれない(もちろん考えすぎかもしれないけど)。

 んで、実際にはカード名の「Neglected」は「放置する、忘れ去られる、すっぽかす」などの意味がある英単語。個人的にこれを「ドメスティックバイオレンス現象」と呼んでいる。

 「ドメスティック」という単語が日本に「ドメスティックバイオレンス」という熟語を通じて広まったせいで「ドメスティック」側にはなんら暴力的な意味合いはないのに「ドメスティック = 暴力」というイメージが根付いてしまった。

 ついでに書いておくと「Domestic」は、家やシェルターを意味する Dome(ドーム)から派生して生まれた言葉で「家庭内の、国内の、土着の」という意味をもつ英単語で、ビジネスだと「Domestic trade」などで「国内取引」を意味したりする。

 他にも「ドメスティックバイオレンス現象」の例としては……そうだなあ……「プラスチック」というと日本では「そこそこ固くて軽い素材」が真っ先に浮かぶかもしれないけど、英語では「柔軟性、可塑性」を意味する英単語であり、分かりやすいところではビニール袋のことを「Plastic bag」と呼んでる、とか。

 これはちょっと違うかな。まあいいや。そもそも「ドメスティックバイオレンス現象」自体が定義があってないようなものだし。

余談5:木曜日 《往時の主教/Bygone Bishop》

 本当に大した話じゃないし、そもそも訳の話なのかどうか怪しいけど……
原文:
 So many creatures, from Matter Reshaper to Jace, Vryn’s Prodigy, will trigger the Bishop to rain Clues on you.

拙訳:
 《作り変えるもの/Matter Reshaper》から《ヴリンの神童、ジェイス/Jace, Vryn’s Prodigy》まで、実に多くのクリーチャーが主教の能力を誘発し、君に手掛かりをもたらせてくれる。

 原文の「from Matter Reshaper to Jace, Vryn’s Prodigy」は、実に単純な「A to B(AからBまで)」という構文なのだけど、英語のカード名がきちんと頭に入っていないせいで「A to B, C」という構文に見間違えた(ジェイスのカード名にあるコンマを文章の一部と考えてしまった)。

 気づいたらなんてことなかったけど、最初に読んだときは「どうやって訳せばいいんだ?」と混乱してしまった。

余談6:金曜日 《ウルヴェンワルドのハイドラ/Ulvenwald Hydra》

 訳の話。
原文:
 A massive, toothy monster with reach is obviously great

拙訳:
 この空にも到達する巨大な空間を占めた牙だらけのモンスターは疑いようもなく素晴らしい強さを持っている。

 「Massive」で「Toothy」で「with reach」なモンスターを日本語にする作業が前半。「Massive」を「巨大な」という意味に訳したのは若干意訳が過ぎるかもしれないけど、そのかわり「with reach」を「到達という能力を持つ」ではなくてもっと外見描写的に訳すことができたのはちょっと嬉しい。

 ただそこからはボロボロで「obviously great」が「疑いようもない素晴らしい強さ」、さらに後半の「might just be the best thing about it」が「この能力こそが一番の強みなのかもしれない」などの訳は、正直なところ自然な日本語になりきれていない気がしてる。

余談7:ハースストーン

<余談 その1>
 相手の残りライフは6点で、こっちには10マナと未行動の《アジュア・ドレイク/Azure Drake》がいる。手札は《イセリアルの召術師/Ethereal Conjurer》が1枚あり、これで火力を引けば勝ちだな、と5マナを支払って召喚。

  (1) 《フレイムランス/Flame Lance》
  (2) 《ブリザード/Blizzard》
  (3) 《カバル教団の魔導書/Cabalist’s Tome》

 前者2枚は確かに火力だけどそうじゃないんだ。しょうがないこのターンの勝ちは無くなるけど、次のターンのために魔導書を唱えておくか、と選んで唱えたら、相手が爆発(投了)した。ちなみに引いた3枚は……

  (1) 《フレイムキャノン/Flamecannon》
  (2) 《魔力の炸裂/Arcane Blast》
  (3) 《呪文相殺/Counterspell》

 というわけで「6枚もメイジ呪文を引けば1枚は本体火力だろう」という考えは甘いことが分かった。肝に銘じておこう。

<余談 その2>
 《インプ・ギャングのボス/Imp Gang Boss》に対して《ブリザード/Blizzard》を撃つとダメージによって生じたインプもフリーズする、ということに気付かなかった。確かにカードテキストをちゃんと読めば分かることなんだけど、直感的ではなかったので……意外と大事なことだな。覚えておこう。

<余談 その3>
 コントロールウォーリアを相手に戦っていたときのこと。

 こっちの場に《クロマガス/Chromaggus》と《大魔術師アントニダス/Archmage Antonidas》がいて、相手の場には行動済みで体力が2点しかない《シルヴァナス・ウィンドランナー/Sylvanas Windrunner》。

 そこで対戦相手が自分のシルヴァナスに向かって《シールドスラム/Shield Slam》を唱えた。

 ……いや、待て。あんたのアーマー値は0だぞ。

 爆発された。

余談8:翻訳の反省

 久しぶりに長文(というほど長くはないけど、まあ、Card of the Day よりは長いということで)を訳した。公式記事ではない個人の記事ということもあって若干訳しづらかったので、色々反省もかねて書いてみる。

  ジョン・フィンケルがプロプレイヤークラブ制度変更について思うところを語る
  http://regiant.diarynote.jp/201604270157067623/
原文:
 He didn’t know I was going to draw with him anyways, but just wanted to see his deck post sideboard with Infinite Obliteration first.

拙訳:
 まあ実は私としては彼のサイドボーディングテクを確認させてもらったあと引き分けで終わらせるつもりだったんだけど、彼はそんなこと知らなかったからね。

 これは原文がどうというより、単に知識不足のせいで難しかった。原文では特定のカードを挙げてサイドボードうんぬんという話をしているが、具体的にどういった情報を欲しているのか読み解けなかった。

 相手がサイドに《無限の抹消/Infinite Obliteration》を入れているかどうかを知りたかったのか、サイド戦で《無限の抹消/Infinite Obliteration》をサイドから追加するかどうかを確認したかったのか、フィンケル側の《無限の抹消/Infinite Obliteration》の扱いの話なのか……

 迷った理由には原文にある「post」と末尾にある「first」が何を指すか解読できなかったことが大きい。「post sideboard with ~」でどういう意味なのかが理解できれば話は違うんだけど。

原文:
 First, there’s the timing of the changes to next years’ Platinum benefits 3/4 of the way through the season.

拙訳:
 まず初めに、今シーズンが3分の4も過ぎているこのタイミングで次シーズンのプラチナレベル褒賞の変更を発表したということ。

 コメント欄でもレベラーさんに突っ込まれているように、単なる誤訳なんだけど「3/4」を「3分の4」と訳してる……さすがにそろそろ直すか。ああ、そうそう。最初に訳したときは、こんな些細なミスじゃなくて、もっと盛大な誤訳をしていた。

 原文:
  First, there’s the timing of the changes
  to next years’ Platinum benefits 3/4 of the way through the season.

 誤訳:
  まず初めに、次のシーズンのプラチナレベル褒賞がシーズンを通して
  3分の4も違ってくる変更の連絡がこのタイミングだということ。

 弁解のしようもないただの誤訳なので説明することもないな。

原文:
 Promises were made to players and they must be kept.

拙訳:
 プレイヤーたちと交わした約束は守られるべきだ。

 大した話じゃなくて、直訳すれば「プレイヤーたちと約束が交わされたのだ。その約束は守られるべきだ」となるところをもう少しシンプルな日本語に直してみた、というだけの話。

原文:
 In terms of long term strategy, cannibalizing platinum benefits in the interests of having a flashier top prize for one tournament is ill advised and damaging to the game.

拙訳:
 長期的な戦略として見ると、1つの大会の賞金を増額するためにプラチナレベル褒賞を削るのはマジックというゲームの魅力を減ずる無分別な行為だ。

 よく読んでもらうと、色々と原文の言葉を削ってかわりに日本語側で勝手に単語を補っていることが分かる。前者の具体的な例としては、原文の「flashier」や「advised」などの単語がない(かわりに「damaging to the game」を「マジックというゲームの魅力を減ずる」と訳している)。

 ここで削った「flashier」や「ill advised」などの好悪の感情を表現する単語は訳す際に非常に気を遣う。攻撃的に訳そうと思えば「正しく訳したうえで」いくらでも文章を攻撃的にできる。前に訳した失格処分に関する文章でも迷わされた部分。

原文:
 Taking all their benefits and putting it into one top heavy payout at the end of the year makes things problematic for the magic “pro.”

拙訳:
 そのプレイヤーたちの特権を取り上げ、かわりに年の最後の大会で一発逆転気味に取り返せというのは「マジックのプロ」という存在を脅かすのに十分な問題だ。

 原文の「one top heavy payout」をどうしようか迷っているうちに、もうどうにでもなれと「一発逆転気味に」と訳してみたら意外とハマった気がする。結果オーライの典型。

原文:
 The last match of a Pro Tour doubles your win, and the difference between 9th in the swiss and making the top 8 is enormous.

拙訳:
 プロツアーは最後の試合の勝敗だけで賞金がほぼ倍違う。スイスドローを勝ち抜いての9位は、それより上の順位とかけ離れた結果をもたらす。

 この記事全体の論調としては間違ったことを言っていないと思ってるけど、これ、本当に訳として正しいのかなあ……とちょっと不安だった。今あらためて確認してみると、まあ多分合ってるんじゃないかな、というぐらいの自信。

原文:
 Not a single person I know wants all of that on the line in a single end of the year tournament, and I know the people who are most likely to win that tournament.

拙訳:
 その振れ幅をシーズン最後の大会での一発勝負にすべてゆだねることになる、という今回の変更を喜んでるプレイヤーは少なくとも私の知っている範囲内の(その大会で優勝するであろう)プレイヤーたちの中にすら1人もいない。

 文章の前後をどう入れ替えるかで悩んで、最後はカッコで間に放り込むことにした。どれが正解、というより、どう文章を並べたら読みやすいか、なので、やろうと思えばいつまででも悩んでられるタイプの翻訳。最後は「えいやっ」と決めるしかない。

原文:
 I really don’t understand this - they know Magic players are bright and can do basic math.

拙訳:
 私がどうしても理解できないのがここだ。ウィザーズはマジックプレイヤーが大抵数学に強いことを知っているはずだ。少なくとも算数ができることくらいはね。

 面白さを優先してちょっと文章をいじった。これがフィンケルの言葉としてとらえられてしまうことは分かっているけど、ニュアンスとして大きく外れてはいないはずなのでそれほど罪悪感はない。

原文:
 In a group where many people simulate the probabilities of hitting land drops with 24 vs 25 lands?

拙訳:
 60枚に占める土地の枚数が24枚か25枚かで変わる確率に一喜一憂するような連中だってことを忘れてしまったんだろうか。

 「hitting land drops」はおそらく「土地を引く確率」が適切と思われる。ただ、そこを含めて原文に忠実に訳してもイマイチ分かりづらい & 原文の面白みが伝わりづらい、と思ったのでここは意図的に意訳した。

原文:
 There are 34 platinum pros this year who will receive 11k less from PTs, that’s $374,000 in total. ~

拙訳:
 さて今現在、マジックには34人のプラチナレベルプレイヤーがいる。来年も同数だとして、来年度が変更によって減額される金額を算出してみよう。まず各プレイヤーごとに11,000ドルをプロツアーに参加することで得られたはずだった。総額は374,000ドルだ。~

 ここから「ウィザーズはいくらコストをカットできたのか」の計算が始まる。ただ訳すだけじゃなくて、どういった計算で算出された数字なのか、さらに計算が正しいかどうか、というトリプルチェックが大変だった。正直、一部はまだどういった計算で出したのか理解しきれてない。

原文:
 Sometimes it feels like they have a low opinion of us when they write these things.

拙訳:
 たまにウィザーズは私たちを本当に取るに足らない存在だと思ってるんじゃないかと感じることがある。こういう文章を見たときとかね。

 前述した「好悪を表現する単語」をどう訳すか、という問題。

 「a low opinion of us」を「取るに足らない存在と思ってる」と訳しているけど、これを「塵芥(ちりあくた)みたいな存在と思ってる」と訳したらどうなるか……さらには「ゴミみたいな存在と思ってる」と訳したら?

原文:
 This sort of short termism has plagued Magic throughout the years, most notably in starving MTGO of resources.

拙訳:
 こういった長期的視点に欠けた考えが長いことマジックを支配してきた。

 というわけでこの記事の翻訳の中での最大の問題点で、翻訳の反省文を書くことにした理由は正直なところこの部分のためだけだったりする。つーか、まあ、ぶっちゃけると「in starving MTGO of resources」の意味が分からない。それ以上でもそれ以下でもない。

 いや、もちろんさすがに「MTGO」が「マジックオンライン」の略であることくらいは分かる。ただ「マジックオンラインのリソースに飢えている」がどういう意味なのかが分からない。

 「マジックオンラインにもっと客を呼びたい(マジックオンラインのユーザが不足している)」という意味かな、とも思ったけど、前後の文章とつながらない。

 悩みに悩んだ挙句、誤った認識を与えるよりかはまだマシ、とごっそり削った。

コメント

yuya
2016年5月4日13:24

正直Hearthstoneはカードテキストをよく読んでもルールが分かんないことが多いです。(インプギャングボスに対するブリザードとなぎ払いの挙動の違いとか)
MTGみたいにCRなんてないので、分かんなかったらやってみろってことでしょう。

re-giant
2016年5月4日22:18

> MTGみたいにCRなんてないので、分かんなかったらやってみろってことでしょう

よく考えてみたらカードに「素晴らしい発明を召喚する」とか「全てのプレイヤーにロックの力を与える」とか書いちゃうゲームですし、まずはやってみるしかない、が正解な気がしてきました。

高潮の
2016年5月5日2:56

post は「後」なので deck post sideboard で単に「サイドボード後のデッキ」、first はたぶんカンマ以降の文全体にかかって「まず」。ルビンのデッキは緑白トークンなので《無限の抹消》は入りようがなく、フィンケルが《無限の抹消》を打つときの対象を指定する参考としてサイド後のデッキを見ておきたかった、ということでしょう。

starving MTGO of resources は難しいですね。MO に注ぎ込まれているリソースが足りない、とかそんなようなことなのではないかと推測するのですが、それは推測であって訳ではないので……。

re-giant
2016年5月5日16:28

ああ、なるほど「pre-」に対する方の「post」なんですね。なんか、同じ記事の別の個所に「there’s the veracity of the claims in the post」というふうに「投稿、アップロード、届ける、投入する」を意味する「post」があったせいで勘違いしました。

MTGOのほうはもうホント分からんですね。「長期的視野に欠けた戦略がマジックを蝕んできた。その目立った影響の1つとしてMTGOのリソース不足が挙げられる」と、しれっと訳してしまう(そして解釈は読者に任せる)という手もあったかもしれません。

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