余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 異界月の新カード紹介、特にイラストをネタにした記事だった。月曜日と火曜日は「以前/以後」を表現している過去と現在の2枚のカードたちがネタだったけど、水曜日以降は単体で完結してる。詳細は個別に。

余談2:月曜日 《過去との取り組み/Grapple with the Past》

 各所ですでに解説されているネタではあるけど、一応紹介しておくと、イニストラードのカードと同じ構図のイラストで、かつ時系列的にエルドラージ後のものになっている。

  イニストラード:《願い事/Make a Wish》
  http://magiccards.info/isd/en/192.html

  異界月:《過去との取り組み/Grapple with the Past》
  http://media.wizards.com/2016/ouhtebrpjwxcnw5_EMN/en_pS4NZMSg9x.png

 付記しておくとフレイバーテキストにも関連性が見られる。
《願い事/Make a Wish》のフレイバーテキスト
 ガヴォニーでは願い事は弱さの記しと取られるが、井戸はたいてい銀貨があふれんばかりになっている。

《過去との取り組み/Grapple with the Past》のフレイバーテキスト
 エムラクールは願いを叶えたりしない。ただ、人々の望みがエムラクールの意志に沿ったものになるのだ。

 ついでに訳の話。分かりやすいように原文と対応する訳部分が対になるよう改行をそろえてみた。
原文:
 Okay, it’s great for delirium
 and getting back your dead best friend.
 But more importantly: that art.
 Maybe the tentacle monster was once a small child.
 Maybe Emrakul helped her find her teddy bear when nobody else could.

拙訳:
 ふむふむ、これは昂揚を達成するのにすごい便利そうだね。
 さらに死んだ一番大切な仲間も取り返してくれるのか。
 だけどもっと気にしないといけないことがあるね。カードのイラストだ。
 もしかしたらこの触手の化け物は元々小さな子供だったのかもしれないし、
 もしかしたら彼女が大切なぬいぐるみを見つけられなくて困ってるときに唯一身近にいた頼れる誰かがエムラクールだったのかもしれない。

 見てのとおり、英語で1文にいる箇所を日本語では2文に分けたり、逆に英語で2文になっている箇所を1つにまとめたりしている。前者のパターンはよくあるけど、後者は珍しいかも。

 それ以外では最後の部分かな。原文の持つ、エムラクールが関わっているのになぜか醸し出される「いい話っぽいしんみり感」をどうするか。難しい。

余談3:火曜日 《気紛れな霊/Mercurial Geists》

 「2人組で」「呪文を唱えるたびにパワーが上がる」「飛行クリーチャー」という共通点を持つ2枚のカードが、同じクリーチャーの以前と以後の姿なのではないか?、という記事。

  ギルドパクト:《小柄な竜装者/Wee Dragonauts》
  http://magiccards.info/ddj/jp/6.html

  異界月:《気紛れな霊/Mercurial Geists》
  http://media.wizards.com/2016/ouhtebrpjwxcnw5_EMN/en_nizc3Iu5Pf.png

 ただ本当に以前と以後だとすると、死んだのちもエルドラージの影響のもとに霊となって命の奪い合いを続けているということになってしまう。それはそれで悲しい。

 ところで《気紛れな霊/Mercurial Geists》のフレイバーテキストは以下なんだけど……
原文:
 "Procedural misstep: provocation of geists for the purpose of yielding more energy can compromise containment units. Next action: clean up mess."
 ― Laboratory notes

日本語訳:
 「手段の問題:エネルギー増加目的で霊を挑発することによって、封じ込め機構が破損する可能性がある。今後の予定:この状況を何とかする」
 ― 実験メモ

 この日本語訳だと「今後の予定」で何とかしようとしている「状況」が、「封じ込め機構を破損しないようにすること」のように読めてしまう気がする。

 個人的には、英語のほうのネタは「実験結果:霊のエネルギー増加による容器の破損」という学術的な問題に対して「まず解決すべき問題:ぐちゃぐちゃになった部屋の片付け」という日常的な出来事がオチにきていると思った。こういうネタ好き。

 それはさておき自分のほうの訳の問題。
原文:
 We may never know, but at the very least, they are kindred Spirits (ha!), fueled by spells and ready to smash varying amounts of face.

拙訳:
 ホントのところは分からないけど、少なくとも真っ赤な他人とは思えない霊たちだし(青も交ざってるし)、呪文を唱えるたびに充填されるし、どんな敵をもなぎ倒す勢いを感じるあたりもそれっぽいよね。

 途中に「ここは笑うところだぜ」と言わんばかりに挟まれた (ha!) をどうするか。(笑) という手もあるかもしれないし、ここは笑うところだという注釈を挟んでしまうという手もあるかも。

 さらに問題は、そもそもどういうネタなのか、ということ。「they are kindred Spirits」は、直訳すると「彼らは親戚関係にある幽霊たちだ」になるけどそれだと笑いどころも何もない。

 おそらく「親族」を意味する「Kindred」と「Kind of red(赤っぽい)」をかけてるんじゃないかなあ……と思って、それが伝わるような訳にしてみた。なってるといいな。

余談4:水曜日 《詮索/Prying Questions》

 イラストでは軟体化した顔の下半分がナメクジのような質感でググッと伸びている。真っ先に思い出したのは漫画「寄生獣」。あの漫画は本当に面白かった。変に引き延ばした感もなくすっきりまとまってて、主人公とミギーの関係性とその終わり方などなど。

 それはさておき、フレイバーテキストによると、どうやらこの伸びた触手みたいな口は相手の記憶を吸い取ってしまうらしい。
原文:
 What remained of the Lunarch Inquisition found new ways to extract confessions.

日本語訳:
 月皇審問団の残党は、自白を引き出す新しい方法を見つけた。

 ただ1つ気になったのは、このフレイバーとカードの効果がかみ合っていないような気がすること。カードの効果は簡単に言うと「対戦相手は自分の手札からカード1枚を自分のライブラリーの一番上に置く」というもの。

 つまり相手の手札情報を得ることができていない(相手の自白を引き出していない)気がするんだけど……なんか惜しい。

余談5:木曜日 《異世界の発露/Otherworldly Outburst》

 対象の生物の攻撃性を高めて争わせ、その宿主の体が破壊されたらその傷口からこっちの世界にエルドラージが顕現してしまう。

 ただ逆に宿主を傷つけずに取り押さえて、1日くらい耐えきれば事なきを得られるらしい。希望があるのはいいことだ。特にこの絶望に満ちたイニストラードでは。

 しかしイラストの状況は地獄絵図だな……夕食の場がこんなになったら最悪だ

 それはさておき役の話。
原文:
 ”An outburst at the dinner table” has taken on a new meaning these days.

拙訳:
 「夕食の場でたまったものをぶちまける」はどうやら最近では違った意味をもつようだね。

 カッコで括られている元の英語の意味が分からなくて困った。「最近では違った意味をもっている」ということは、元々知られている意味があるはずなんだけど、この「outburst at dinner」という言い回しが検索してもなかなか見つからず。

 なんとか見つけたのは「Jay’s outburst at the dinner table worked really really well.」という文章で、これはどうやらアメリカの人気ドラマ「Modern Family」の第2シーズン 21話目の解説の一部らしい。

 じゃあこの回で Jay というキャラが夕食の場で何をしたのかを確認すれば、どういう意味の言葉なのか分かるはずだ、ということでチェックしてみた(手段は内緒)。

 ……(チェック中)……ああ、なるほど。本当に言葉そのままの意味でいいのか。つまり「夕食の場で感情を発露させる」のね。日本のテレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」でもそういうシーン多かったな。世界的によくあることなのかもしれない。

 「Outburst」の訳には、カード名の訳である「発露」をそのまま使う手もあったけど、発露ってあまり使わない言葉だから直観的でないし、感情を爆発させるということやイラストとの兼ね合いも考えて「ぶちまける」としてみた。個人的には気に入ってる。

余談6:金曜日 《無私の霊魂/Selfless Spirit》

 イラストでは全身に矢を受けた幽霊が大きく手を広げ、さらなる攻撃を受け止めようとしている。記事では「幽霊にどうやって矢が刺さってるんだろうとか無粋なこと考えるなよ」とのこと。

 この問題って意外とめんどくさくて、幽霊という(フィクションの)存在に対しては、なんとなくみんな「こういうものだ」という暗黙の了解的なぼんやりとした共通理解がある。

 例えば「幽霊は実体がない。ただし写真には写る」とか「物理的攻撃はすり抜けてしまう。ただし物体を動かすことはできる」とか。

 そこからさらに一歩進めようとすると、途端に色々と不都合が生じる。

 幽霊は実体がない……ということは光も透過するはずだけど目に映る姿はある。この姿は何でできているのか。炎のゆらめきみたいなプラズマ状の何かなのか、それとも物理的に目に映っているわけでじゃなくて、意識とか心とか、人間の魂的な部分で感知してるのか(その場合、写真に写る理由が分からなくなる)。

 そもそも幽霊の側も(人型の場合は)目のついている方向しか見えていないように振る舞うことが多いけど(いきなり振り向いたりするシーンとかあるし)、そもそも五感で外界を感じているのか、超常能力的な何かで感じているのか……

 ……というふうに、なんやかんや突き詰めていくと最終的には「こまけえこと気にすんな」という記事のとおりの結論に行き着く。どっとはらい。

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