【翻訳】ビーストはいても、のけものはいない/Beast of Show【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年11月18日
元記事:http://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/beast-show-2002-11-18

 ビースト(Beast)週間へようこそ!

 ビーストは、オンスロートでもっとも多数を占めることになるであろうクリーチャータイプだ。さて、このビーストについて語る機会を使って私が語りたいのはアレだ。そう、もう何年も何年も議論のタネになってきたアレについて語りたいと思っている。

 アレとは?

 クリーチャータイプの統合(註)だ。
(註) クリーチャータイプの統合
 似たようなクリーチャータイプを同じものに統一する作業。
 この記事が書かれたのは2002年なので、2007年におこなわれたマジック史上もっとも大きな統合作業である「大規模クリーチャータイプ更新(Grand Creature Type Update)」はまだ行われていない。

内なる獣(の中の獣)

 まず初めに、開発部(R&D)がどうクリーチャータイプというものに対して取り組んできたか、その簡単な歴史を紹介させてくれ。

 始まりはリチャード・ガーフィールド博士の生み出したアルファ版だ(マジック界の「光あれ」だね)。当時、クリーチャータイプとはフレイバー付けのためのものであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 誤解を恐れずに言ってしまえばフレイバーテキストの一部だった。クリーチャーの能力などから想定されるクリーチャータイプが(フレイバーを増すために)つけられたわけだ。

 とはいえ、クリーチャータイプがメカニズム(ゲーム的な効果や機能)に一切影響を及ぼさなかったのかというと、そういうわけでもない。

 たとえばリチャード博士はアルファ版で《ゴブリンの王/Goblin King》と《アトランティスの王/Lord of Atlantis》というカードを作っている。
Goblin King / ゴブリンの王 (1)(赤)(赤)
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
他のゴブリン(Goblin)・クリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに山渡りを持つ。(それらは、防御プレイヤーが山(Mountain)をコントロールしているかぎりブロックされない。)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Goblin+King/

Lord of Atlantis / アトランティスの王 (青)(青)
クリーチャー - マーフォーク(Merfolk)
他のマーフォーク(Merfolk)・クリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに島渡りを持つ。(それらは、防御プレイヤーが島(Island)をコントロールしているかぎりブロックされない。)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lord+of+Atlantis/

 まあ、あるにはあったが、これらのカードの効果は正直なところかなり限定的だった。なにしろアルファ版に収録されていたゴブリンは2種類だけだし、マーフォークに至ってはたったの1種類だった(註)。
(註) アルファ版のゴブリンとマーフォーク
 2体のゴブリンとは《モンスのゴブリン略奪隊/Mons’s Goblin Raiders》と《ゴブリン気球部隊/Goblin Balloon Brigade》。ちなみに両方とも「赤1マナの1/1」で、片方はバニラ(能力なし)で、もう片方は「(赤):飛行を得る」を持っている。1体しかいないマーフォークは《真珠三叉矛の人魚/Merfolk of the Pearl Trident》で、これは「青1マナの1/1」のバニラ。

 とはいえ、当時はまだ「4枚制限ルール(デッキに同じカードは4枚まで)」が出来る前だったし、デッキの総枚数も「40枚以上ならOK」だった、ということは付け加えておくべきだろうね。

 つまり「《島/Island》× 15枚、《真珠三叉矛の人魚/Merfolk of the Pearl Trident》× 15枚、《アトランティスの王/Lord of Atlantis》× 10枚」というデッキも可能だったし、これはこれでそれほど悪いデッキでもなかった。

 さて、ここで時計の針をさらに数年進めてみよう。

 この頃になると、開発部は少しずつクリーチャータイプの持つメカニズム的な価値について気づき始めており、デザイナーたちは徐々にその活用法を生み出し始めていた。

 そしてエクソダス(註)だ。
(註) エクソダス
 1998年に発売されたテンペスト・ブロックの2番目のエキスパンション。エキスパンションシンボルの色でレアリティが分かるようになったのが特に印象的だった。

 私は種族デッキを後押しするために、このエクソダスであるカードをデザインした。

 そのカードとは《旗印/Coat of Arms》(註)だ。私としては、一部の奇特なプレイヤーだけが大喜びするような面白レアとしてデザインしたつもりだった。そういうレアが作られるのはよくあることだ。

 しかしなかなか興味深い現象が発生したんだ……このカードは大人気だったんだよ。一部の奇特なプレイヤーにとどまらず、もっともっと幅広い層にね。
(註) 《旗印/Coat of Arms》
 5マナのアーティファクトで、同じクリーチャータイプを持ったクリーチャーごとに+1/+1されるようになる。ゴブリンが敵味方合わせて5体いれば、全てのゴブリンは+4/+4される(自身は数えないため)。足し算が大変だけど、派手で強くて楽しいカード。

 あまりにも人気だったんで第7版に再録した。ついでに書いておくと、シングルカード市場において、第7版のカードの中で《極楽鳥/Birds of Paradise》に次ぐ高い売上を誇ったのがこのカードだったりする。

 ここまでくれば開発部はようやく気付かされるわけだ。「ふーむ、どうやらクリーチャータイプに焦点を当てたブロックを作ってもいいみたいだぞ」とね。

減らせば減らすほど増えるものなーんだ?

 さて、ここまでの話がどうクリーチャータイプの統合につながってしまうのか?

 クリーチャータイプが「フレイバー」から「メカニズム」へと方向転換し始めたのに合わせて、開発部もその扱い方を再考する必要に迫られたんだ。

 フレイバーとして扱ってきた時代には、クリーチャータイプの数はただただ大きく外へと広がっていった。

 この傾向は初期のマジックのカードにおいて特に顕著に表れている。一度しか使われなかったクリーチャータイプ(例えばアブー・ジャーファル (Leper) やマリード(Marid)のようなタイプ)は昔のセットに特に多い。

 さて対してクリーチャータイプをメカニズムとして扱おうとするとどうなるのか? まったく逆の方向に進む必要があるんだ。つまりメカニズム的に上手く働いて欲しいなら、クリーチャータイプは減らす必要がある。

 なぜだろう?

 さて、それを説明するためにここで鳥 (Bird) の話をさせてくれ(え? いや、蜂はお呼びじゃないよ)。

 遠い昔、鳥たちはおのおの独自のクリーチャータイプを持っていた。《オーサイの禿鷹/Osai Vultures》は 禿鷹(Vulture) だった。《西風の隼/Zephyr Falcon》は ファルコン(Falcon) だった。《Whippoorwill》は ヨタカ(Whippoorwill) だった(イラストでは中空に鳥が飛んでるにも関わらず飛行を持っていないことで有名なあのクリーチャーだ。古き良き時代だね)。

 さらに言えば《Silver Erne》は ウミワシ(Erne) だった……そのとおり、ワシ(Eagle) ですらなく、わざわざ ウミワシ(Erne) だった。ちなみに「Erne」とは英語の古語で「翼の長いウミワシ」を指す言葉だ(註)。
(註) Whippoorwill と Erne
 ヨタカとウミワシは仮訳。日本語版が存在しないので実際は日本語のクリーチャータイプ名は存在しない。

 さてホームランドが発売されることとなったある日、デザイナーのあいだで「鳥のロードを作ろうぜ」という話があがった。そこで1つの問題が生じたんだ。
(註) ロード
 前述の《ゴブリンの王/Goblin King》と《アトランティスの王/Lord of Atlantis》を代表とする「特定のクリーチャータイプすべてに能力を(多くの場合、+1/+1 も)付与するクリーチャー」の総称。初期のマジックではこの手の能力を持つクリーチャーの多くがカード名に「Lord」を含んでいたため、そう呼ばれるようになった。

 そう、全ての鳥はそれぞれ独自のクリーチャータイプを持っていたんだ。さらに言えば、ホームランドにはまた新たな鳥が誕生していた。アルバトロス(Albatross)だ。

 じゃあしょうがない、どうしようか、とデザイナーたちが試行錯誤した末に生まれかけたのは《Soraya the Falconer, Vulturer, Whipporwiller, Erner, and Albatrosser》だったが、残念ながら、その名前はカード枠に収まりきらなかった。

 いやそもそも「全てのファルコン、禿鷹、ヨタカ、ウミワシ、そしてアルバトロスは +1/+1 の修整を受ける」というカードテキストはみっともないにも程がある。それに開発部がいつまた新たな鳥を生み出すか分かったもんじゃない。

 そんなわけでデザイナーたちがホームランドで作ったのはファルコンのロードだった。そしてこれは残念ながら大して強くはなかった。

 何しろ当時存在したファルコンはたったの2枚(《西風の隼/Zephyr Falcon》と《メサ・ファルコン/Mesa Falcon》のみ)だったし、アルファ版の時代と違ってこの頃はすでに「4枚制限ルール」もあった。

 この件もあって、開発部はポリシーの見直しを図ることにしたんだ。

 ほぼ同じテーマにぶら下がるカードをそれぞれ1つのグループにまとめるにはどうしたらいいだろうか(今回の例で言えば鳥というテーマに複数のクリーチャータイプがぶら下がってるわけだ)。

 どうしたらいいも何も、一番簡単な方法はクリーチャータイプをまとめちゃうことだろうね。ファルコンやら禿鷹やらヨタカやらウミワシやらアルバトロスやら(そして今後生まれるであろう鳥たちやら)のかわりに、単に全部合わせて 鳥(Bird) でいいじゃないか、という話だ。

 こうすれば鳥全体へ効果を及ぼすカードが簡単に作れるようになる。

とり違えてしまうこともある(鳥だけに)

 何かを大きく変えようとするとき、そこから何が得られるかだけでなくそれによって何を失うかについてもきちんと把握しておくべきだ。

 今回の場合、変更によって「得られるもの」は「メカニズム的な一貫性」だ。今後、デザイナーたちはクリーチャータイプを生かしたカードを作れるようになるわけだ。より多くのカードと相互作用を生み出せるようになることで、カードの価値が高まる。

 前述の《Soraya the Falconer》が良い例だろう。

 彼女が初めて登場したとき、当然ファルコンデッキを組もうと意気込んだプレイヤーたちがいたわけだが、実際には非常に限られた選択肢しかなかった。2枚しかファルコンがいないんだ。それらを合計8枚デッキに突っ込む以外に選択肢がないわけだ。

 しかし今や「全ての鳥(Bird)」を強化できるようになったことで、プレイヤーはあふれんばかりの選択肢を手に入れたというわけさ【原註1】

 さて、ここまでがメリットだ。それでは、デメリットは?

 1つ目のデメリットとしては、フレイバーが失われるという点があげられる。これについてはアラビアンナイトの《Abu Ja’far》が良い例だろうね。
Abu Ja’far / アブー・ジャーファル (白)
クリーチャー - 人間(Human)
アブー・ジャーファルが死亡したとき、それをブロックしたかそれによってブロックされた状態になったすべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。
0/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Abu+Ja%27far/

 彼の能力は「彼を破壊したクリーチャーを破壊する」というものだ。彼を殴りつけたクリーチャーは死んでしまう。再生もできない。

 さて、どうしてそんなことが起きるのか? なぜなら彼は病気に感染しているからだ。さて、なぜ彼が Leper(感染者)だと分かるか? それは彼のクリーチャータイプが Leper(感染者)だからだ。

 彼のカードにはフレイバーテキストがない(スペースが足りなかったからだ)。だから彼が感染者であるというフレイバーを表すにはカード名かクリーチャータイプ欄しか選択肢がないわけだ。

 もちろん彼の名前を《感染しているアブ・ジャファー/Abu Ja’far, Leper》とか《感染者のジャファー/Leper Ja’far》とか《年老いた感染者/Aged Leper》とする手もあっただろう。

 しかしこういった情報をカード名に押し込めることが必須となってしまうと、今度はクリエイティブチームがクールなカード名を付けようとしたときに障害となる可能性がある。

 次に、2つ目のデメリットだ。

 それは必要以上にまとめすぎてしまう危険性についてだ。そう、私たちの「クリーチャータイプを統合しよう!」という熱意はときに行き過ぎてしまうことがある。

 これの代表的な例としては《洞窟のハーピー/Cavern Harpy》があげられる。
Cavern Harpy / 洞窟のハーピー (青)(黒)
クリーチャー - ハーピー(Harpy) ビースト(Beast)
飛行
洞窟のハーピーが戦場に出たとき、あなたがコントロールする青か黒のクリーチャーを1体、オーナーの手札に戻す。
1点のライフを支払う:洞窟のハーピーをオーナーの手札に戻す。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cavern+Harpy/

 これを例として選んだ理由は、クリーチャータイプをビースト(Beast)にまとめるという小さな変更によって大きな影響が出た良い例(悪い例?)だからだ。今ではこのカードはエクステンデッドのアルーレンデッキになくてはならない存在となっている……が、ここで問題としているのはコンボのネタになってしまったことではない。

 変更の経緯は次の通りだ。

 正直、ハーピー(Harpy) の数はそう多くない。たったの3枚だ(《金切り声のハーピー/Screeching Harpy》、《換羽するハーピー/Molting Harpy》、《洞窟のハーピー/Cavern Harpy》の3枚だけだ)。

 そこで私たちはハーピーをより大きいグループに含めることにした。

 ビースト(Beast)だ。

 さて、ハーピーをビーストに含めてしまったわけだが、これの問題点はどうにもイメージ的にしっくり来ないということだ。ビーストという言葉から何を連想する? 大きくて、毛むくじゃらな動物といったところだろう。

 例えば、馬鹿でかいビヒモスだろうね。我が物顔で大地を闊歩し、獲物を狩る巨大な動物であるビヒモスはビーストにふさわしい。少なくとも、苛立たしい金切り声を張り上げる半人半鳥じゃないはずだ。

 大きなグループにとりまとめようとするとどうしてもイマイチ雰囲気的にふさわしくない組み合わせが生じうる。これが2つ目の問題というわけだ。

 最後となる3つ目の問題は、こと開発部にとってはもっとも大きな問題と言える。

 過去との断絶だ。

 この問題を説明するのにもっともふさわしい例は《長弓兵/Longbow Archer》だろう。第6版が発売される際に、このカードのクリーチャータイプを「射手(Archer)」から「兵士(Soldier)」に変更した。当然、クリーチャータイプの統合活動の一環としてだ。

 さて、2000年のプロツアーシカゴでのことだ。片方のプロプレイヤーがビジョンズ版の《長弓兵/Longbow Archer》2体を場に出していた。それに対して対戦相手のプレイヤーが唱えたのは《サーボの命令/Tsabo’s Decree》だった。
Tsabo’s Decree / サーボの命令 (5)(黒)
インスタント
クリーチャー・タイプを1つ選ぶ。プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の手札を公開し、選ばれたタイプのすべてのクリーチャー・カードを捨てる。その後そのプレイヤーがコントロールする選ばれたタイプのすべてのクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Tsabo%27s+Decree/

 クリーチャータイプを指定する前に彼は目の前に置かれていた《長弓兵/Longbow Archer》を手に取って文面を確認した。しかるのちに彼は「射手(Archer)を選択するよ」と宣言した。

 それを聞いた対戦相手は《長弓兵/Longbow Archer》を墓地に送らず、かわりに「《長弓兵/Longbow Archer》のクリーチャータイプはもう射手(Archer)じゃないよ。兵士(Soldier)に変更されたんだ。だから君のその呪文はこいつらを破壊できない」と返した【原註2】

 この話の教訓は何か? 変化によって問題が生じることもある、ということだ。来年、マジックは10周年を迎える。今後、適用されるであろう変更は過去10年に渡って刷られてきた過去のカードたちに影響を与えることだろう。
(余談)
 原文ではここに新旧それぞれの《長弓兵/Longbow Archer》のカード画像が並べられており、キャプションとして「同じカード名、同じイラスト、しかし異なるクリーチャータイプだが、ルールによれば彼らは両方とも兵士(Soldier)だ」と付け加えられている。

 開発部は上記で紹介した様々な問題点に関する議論にかなりの時間を費やしている。クリーチャータイプの統合は一朝一夕に行われているわけではなく、多くの時間を費やした上での決断だ。

 なぜ最終的には「統合する」が支持されることとなったのか? それはプレイヤーたちがクリーチャータイプと相互作用を起こすメカニズムを楽しんでくれているからだ。オンスロートが人気だということがそれを証明してくれている。

 さらに重要な点として、このメカニズムを推し進めたことでゲームのフレイバーがさらに深いものになったということがあげられる。

 ゴブリンデッキやエルフデッキが活躍できる環境のほうが楽しいだろう? 私たちは小さなフレイバーを諦めるかわりに、より大きなフレイバーを得ることを選んだんだ。

 そんなわけで個々には多少の範囲の差はあれど、開発部の総意として「クリーチャータイプは統合すべし」で統一されている……ただ、1つだけ、開発部のあいだでも大きく意見が分かれている問題を除けば。

 それは、クリーチャータイプが統合されていない古いカードを再版するとなったときにどうするか、という問題だ。鳥(Bird)じゃないファルコンは? 猫(Cat)じゃない虎は? クレリック(Cleric)じゃないプリーストは?

 開発部は過去をほじくり返すのが大好きだ。過去のカードをその古い名前のままに再版するのは楽しいことだ。

 しかし残念なことに、古いカードを再版すると元のバージョンと再版したバージョンに差異が生まれてしまうことがある。

 もちろん違うとはいってもそれが無害な場合もある。新しいバージョンが単に最新のテンプレートに従っているというだけで、動き自体は過去のカードと変わらない場合だ。

 ただそれ以外に、実際にゲーム上の動きが変わってしまうという差異もあり、クリーチャータイプに関する問題もその1つというわけだ(特に種族をテーマにしたオンスロートの時代にあってはね)

 さて、なぜ私がわざわざこの問題をここで挙げたかというと、開発部はこの問題に関してほぼ真っ二つに分かれているからだ。そしてこういうとき私たちはどうするか、と言えばプレイヤーたちの意見を聞いてみたくなるんだ。

 そんなわけで君たちの意見を聞くべく、今日はアンケートをとりたい。

 念のため。

 私たちは君たちに何かを決めて欲しいわけじゃない。このアンケートのポイントは、君たちが「どう感じているか」を知りたい、という話だ。私たちが何かを決断しようとするとき、一般プレイヤーたちの意見は大事な指標の1つだ。

 おっと、私がどっちを支持しているかはあえて書かないよ。きとアンケートに影響を与えてしまうからね。

 さてアンケートだ。

質問:
 古いカードを再版する際に、元のクリーチャータイプはそのままとすべきか? それとも(今作ったならそっちを与えたであろう)最新のクリーチャータイプとすべきか?


 具体的な例を出したほうがいいだろうね、というわけで《Clergy of the Holy Nimbus》(註)にお出まし願おう。もしこれを再版するとした場合、クリーチャータイプはプリースト(Priest)のままとすべきか? それともクレリック(Cleric)に変更すべきか?
(註) 《Clergy of the Holy Nimbus》
 Clergyとは英語で「聖職者たち、牧師たち、僧侶たち」を指す言葉なので、確かにクリーチャータイプ欄をいちいち見ない人ならクレリック扱いする可能性が高い。ちなみに、そもそも「Clergy」の語源自体がフランス語で聖職者を意味する「Clerc」らしい。

 想定されるそれぞれの主張も書いておこう。参考にしてくれ。

【クレリック派(変更する派)】

 クレリックにすれば現在のマジックの色んなカードとシナジーが生まれるじゃないか。クレリックであることには意味があるけど、プリーストであることに付加価値はない。

 それに変えないとカジュアルプレイヤーには分かりづらいと思うね。だってクレリックっぽいのにクレリックの効果を得られないんだから。《仕組まれた疫病/Engineered Plague》が《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》は殺せるのに《Clergy of the Holy Nimbus》は殺せないなんて理屈に合わないよ。

 そもそも開発部がクリーチャータイプを統合しようと考えたのは、そのほうがゲームが面白くなると信じたからで、そうだとすれば再版するカードのクリーチャータイプを「直す」のは当然のことじゃないかな。


【プリースト派(変更しない派)】

 マジックはもうすでに十分に複雑だよ。これ以上複雑にする必要はない。書いてあるとおりの挙動をしないカードはいらない。

 再版じゃない元のカードを使うプレイヤーは「カードの書かれていないテキスト」を知らないといけなくなる。この問題があるから、開発部はどうしても必要な場合を除いて古いカードのテキストを変更するようなエラッタは出さないんだ。

 それにカードを再版するメリットの1つは「古いカードを持ってるプレイヤーがまたそれを使えるようになること」のはずだ。もし新旧でカードの内容が異なってたらゲームのプレイ中に問題を引き起こすだろうね(まさに前述の《長弓兵/Longbow Archer》問題だ)

 クレリックデッキに入れられるクレリックが1体増えるなんてメリットは、このデメリットにはとても引き合わないよ。


 ……という感じだろうね。さて、みんなの考えを聞かせてくれ(註)。
(註) みんなの考え
 実際の記事は「古いクリーチャータイプはそのまま」「クリーチャータイプは更新すべき」「どうでもいい」の3種類の回答から選択するアンケートが用意されており、次週のコラム冒頭でアンケート結果が紹介されていた。
 ついでなので結果について書かれている箇所の訳をこの翻訳のあとに付記しておいた。気になる人はぜひ。

 今日のコラムはここまでだ。来週はそこの君がどうマジックというゲームに(そうだよ、君だよ。周りを見回しても無駄だぞ)影響を与えられるか、について紹介したい。

 それまで君の鳥たちが美しい群となりますように。

マーク・ローズウォーター

【原註1】
 というわけで現在のソラヤは全ての「鳥(Bird)」を強化できるようになった。良かった良かった。さて、次の問題としては何が鳥で何が鳥じゃないのか、だ。

 まず全てのファルコン(Falcon)は鳥になった。よし。鳩(Pigeon)であった《Carrier Pigeons》も鳥になった。エイスサー(Aesthir)であった《Wild Aesthir》も鳥になったが、しかしアーティファクトクリーチャーの《Aesthir Glider》はいまだに鳥ではない。

 ウミワシ(Erne)も、アルバトロス(Albatross)も、ヨタカ(Whippoorwill)もそのドマイナーなタイプを残しており、いまだに鳥ではない。《オーサイの禿鷹/Osai Vultures》も鳥ではない。しかし《貪欲な禿鷹/Wake of Vultures》は鳥になった。《待ち受ける禿鷹/Circling Vultures》は今も昔も鳥のままだ。《Roc of Kher Ridges》も鳥ではなくロックのままだが、《ロック鳥の雛/Roc Hatchling》は鳥だ。

 これはひどい……ん? ちょっと待てよ。ビースト週間だよな? (アーロン・フォーサイス)

【原註2】
 と、まあそんなことがあったわけだ。テーブルジャッジはこれに対して《長弓兵/Longbow Archer》をコントロールしていた側のプレイヤーの言い分を支持した。だがこの裁定は間違っている。

 その後、ヘッドジャッジと大会マネージャーであらためて議論となった。結論としては、《サーボの命令/Tsabo’s Decree》を唱えた側のプレイヤーのアピールに対してきちんとジャッジが「正しいクリーチャータイプを指定したもの」として対応すべきだった。

 さらに、それに対して《長弓兵/Longbow Archer》側のプレイヤーはスポーツマンシップに反する行為(ルールを悪用して対戦相手を騙そうとした行為)で警告を与えられていただろう、という結論になった。

 というわけなので、エラッタの分かりづらさを利用してゲームを有利に運ぼうとしないように。

 いずれにせよ、クリーチャータイプの変更によってどんな問題が起きうるかということを示すのにうってつけの事例だということは変わらない。(アーロン・フォーサイス)

(追記) 次週のコラムの冒頭

 さて、今週の記事を始める前に、先週のアンケート結果(クリーチャータイプを変更するかしないか)を確認しようじゃないか。以下が、応募総数 8,562票からなる君たちの回答結果だ。

  ― 69.5% クリーチャータイプを更新する(5,947票)
  ― 22.9% 古いクリーチャータイプをそのままとする(1,959票)
  ― 07.7% どっちでもいい(656票)

 なるほど、どうやらクリーチャータイプを更新したほうがよいと思うプレイヤーが多数派のようだね(知りたい人もいるかもしれないから書いておくと、実は私も同意見だ)。

 ただ、先週も書いたようにこれは非常に複雑な問題だ。私たちが判断するに当たって、君たちがどう感じているかは非常に重要な要素ではある……が、それだけで決めるわけではない。あくまで問題を解決するに当たっての多くの要素の1つだということを忘れないで欲しい。

 いずれにせよ、皆からの回答は非常にありがたい。感謝するよ。

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