【余談】 赤霊破(あかれいは・せきれいは)論争の決着について
2018年3月2日 翻訳 すずくまさんのブログで「あかれいは と せきれいは のどっちの読みが正しいか」みたいな話題が出てて面白かったので パクって 乗ってみる。
すずくまのMTGブログ:あかれいはせきれいは戦争に終止符が
http://suzukuma1954.diarynote.jp/201802270037088502/
なんでも最新の再録で「せきれいは」というルビが振られたことにより「赤霊破の読みは、あかれいは? それとも、せきれいは?」の論争に決着がついた、という話らしい。
前々から「せきれいは」と読んでいたので特に感銘は受けなかったけど、確かに日本語カード名の漢字ってときどき直観的でない読みをとるから、解釈が分かれてしまうこと自体は理解できる。
ちなみに2017年12月時点の Wisdom Guild (MTG総合情報サイト) をチェックすると《青霊破》と《赤霊破》には、それぞれ「あおれいは」と「あかれいは」のルビが振られている。そのうち更新されそう。
▼ 宝物(ほうもつ、たからもの)
テンプレートがしっかり決まっているらしく「ほうもつ」で統一されている。
・《宝物庫襲撃/Storm the Vault》 (ほうもつこしゅうげき)
・《宝物の地図/Treasure Map》 (ほうもつのちず)
・《宝物の魔道士/Treasure Mage》 (ほうもつのまどうし)
・《宝物の入り江/Treasure Cove》 (ほうもつのいりえ)
・《宝物探し/Treasure Hunt》 (ほうもつさがし)
美しい。この流れなら、初見時は若干戸惑った《宝物探し》の読みも理解できる。
▼ 現(うつつ、あらわし)
第4版で日本語訳された《現し身/Personal Incarnation》。
初見時からなんのためらいもなく「うつしみ」と呼んでたけど、よく考えてみたら「あらわしみ」と読めなくもないか(ないない)。あと「ダメージをうつしかえる」から「うつしみ」である、と考えれば不思議はないな、と思いかけてから「待って、《現し身》であって《移し身》じゃないよ」と気づいた。
▼ 三叉(みつまた、さんさ)
最古のマーフォーク、《真珠三叉矛の人魚》の読みは「しんじゅみつまたほこのにんぎょ」。確かに「しんじゅみつまたほこ」しか選択肢はないとはいえ、なんかこう……語呂が悪いような気もする(※ 感じ方には個人差があります)。
なんでだろ。「真珠(しんじゅ)」が音読みで「三叉矛(みつまたほこ)」が訓読みだからそう感じるのかな。これがハースストーンだったら迷わず「パールトライデント」って訳されてそう。
▼ 西風(にしかぜ、せいふう、ならい)
おそらく「にしかぜ」だろうとは思ってた《西風の隼/Zephyr Falcon》の読みは実際に「にしかぜのはやぶさ」だった。でも「せいふう」もありかな。
日本語は風の呼び名の種類が豊富である、というのはことあるごとに話題に上がるけど、東西南北の有名どころだけでも、東風(とうふう、ひがしかぜ、こち)、西風(せいふう、にしかぜ、ならい)、南風(みなみかぜ、なんぷう、はえ)、北風(ほくふう、きたかぜ、あなじ)と3つずつある。
南風は、Wikipedia見に行ったらその見出しの直後だけで「南風(みなみかぜ・なんぷう・みなみ・はえ・まぜ・まじ・ぱいかじ)」が紹介されてた。一部地方の呼び名とか含めるともっともっとあるんだろうな。
▼ 弟子(でし、ていし)
一応「ていし」という読みもあるらしいけど、まあ、MTGでは関係ないか。
▼ 魚(うお、ぎょ、さかな)
一部に熱狂的なファンがいるとかいないとかの噂の魚、《島魚ジャスコニアス/Island Fish Jasconius》について、読みは「しまざかな」か「とうぎょ」のどっちなんだろう、と調べてみたら、まさかの「しまうお」らしい。ホントかよ。これがありなら「せきれいは・あかれいは」論争が起きるのも理解できる。
▼ 船(ふね、ぶね、ふな、せん)
とりあえず「ふね、ぶね、ふな、せん」は全てカードの読みとして存在する模様。
・《厄介な船沈め/Vexing Scuttler》 (やっかいなふねしずめ)
・《宝船の巡航/Treasure Cruise》 (たからぶねのじゅんこう)
・《船方ゴブリン/Swab Goblin》 (ふなかたごぶりん)
・《船慣れ/Sea Legs》 (ふななれ)
・《難破船あさり/Shipwreck Looter》 (なんぱせんあさり)
この中で読みに迷いそうなのは「船慣れ」くらいかな。あとは順当かと。
▼ 疫(えき、やく)
疫病神(やくびょうがみ)という言葉があるので「えきびょう、やくびょう」の両方があるかな、と思って調べてみたら片方しかなかった。
・《疫病ネズミ/Plague Rats》 (えきびょうねずみ)
・《害獣の疫病/Plague of Vermin》 (がいじゅうのえきびょう)
・《疫病沸かし/Plague Boiler》 (えきびょうわかし)
なお《集団疾病/Illness in the Ranks》や《疾病の神殿/Temple of Malady》は「しっぺい」なので注意(?)
▼ 稲妻(いなづま、いなずま)
読みの話とはちょっとズレるかもしれないけど、「いなづま」か「いなずま」かという読みの選択肢がある中で、マジックは「いなずま」をとっている。
・《稲妻/Lightning Bolt》 (いなずま)
なお日本語教育では「いなずま」が正しいらしい。
よくある反論(?)は、漢字が「妻」なんだから「づま」が正しいはず、という言い分で、これはこれで納得しそうになるんだけど、不思議と「地震」は「ぢしん」が正しいはず、とは思えない。「生地、布地」も「きじ、ぬのじ」。でも「鼻血」は「はなぢ」。不思議だ(マジック関係ない)。
▼ 山(やま、さん、ざん)
基本土地の名称の「山」やゲーム用語の「山札」は全て「やま」という自明の読みはさておき、それ以外の「さん、ざん」の話。
・《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》 (しヴさんのどらごん)
日本語版が出たときに「しヴやま、しヴさん」論争が起きたらしい。個人的には、原語の「シヴァン」という音が頭にあったせいで「しぶやま」という可能性は考えもしなかった。でも、確かにそう読めなくはない。ところで「う゛」を一文字で表そうとすると環境依存文字が必要になるのね。知らなかった。
地名としての山は他にも色々登場するけど「~やま」は存在しないもよう。
・《霜剣山の背教者/Sokenzan Renegade》 (そうけんざんのはいきょうしゃ)
・《パーディック山の鉱夫》 (ぱーでぃっくざんのこうふ)
そういえば「シヴ山」は「しヴざん」じゃないのね。意外と「山」を「さん」と読むカードは少ない気がする。熟語なら以下のようにサクサク見つかるけども。
・《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》 (じゅもくしげるさんろく)
・《山脈の闘獣/Spur Grappler》 (さんみゃくのとうじゅう)
・《山頂をうろつくもの/Summit Prowler》 (さんちょうをうろつくもの)
▼ 疾風(はやて、しっぷう、???)
・《疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish》 (しっぷうのでるヴぃっしゅ)
野球のダルビッシュが有名になり始めた頃、このカードを思い出したマジック古参プレイヤーたちがそこそこいたそうな。それはさておき「疾風(しっぷう、はやて)」の読みのどっちがカッコいいかな。個人的には「しっぷうのでるヴぃっしゅ」のが好き。他の「しっぷう」読みには《翼の疾風/Flurry of Wings》がある。
なお「はやて」の読みも存在する。
・《疾風のマングース/Blurred Mongoose》 (はやてのまんぐーす)
そして「はやて と しっぷう のどっちがテンプレートなんだ?」という疑問を吹き飛ばしてくれるのが次のカードサイクル。
・《疾風衣の騎兵/Gustcloak Cavalier》 (かぜごろものきへい)
・《疾風衣の侵略者/Gustcloak Harrier》 (かぜごろものしんりゃくしゃ)
・《疾風衣の走り手/Gustcloak Runner》 (かぜごろものはしりて)
初見時は「しっぷうい」だとばかり思ってた。まあ、これはもう漢字の読みの問題ではなくてマジック世界の専門用語だから読めなくて当たり前か。ただ「かぜごろも、かざごろも」のどっちだろう、という迷いは生じるかもしれない。
▼ 鳥(ちょう、とり、どり)
シンプルに「とり」の読みを取るのは単体の名詞として使われる場合くらいかな。例えば《鳥の乙女》や《宝石の鳥》のような例。迷う可能性があるのは「~どり、~ちょう」のパターンか。
・《極楽鳥/Birds of Paradise》 (ごくらくちょう)
・《ロック鳥の卵/Roc Egg》 (ろっくちょうのたまご)
・《渡り鳥の経路/Migratory Route》 (わたりどりのけいろ)
・《かき鳴らし鳥/Thrummingbird》 (かきならしどり)
・《沿岸の角爪鳥/Coastal Hornclaw》 (えんがんのつのづめどり)
一般的な漢字かつ単語なだけあって、読みが複数あっても実に自然な住み分けがなされている。あまり迷う人いないか。
最初のも「ごくらくどり」や「ろっくどり」と言われると違和感あるし、対して「わたりどり」は既存の日本語。ギリギリどちらもあり得そうと言えるのは「かき鳴らし鳥」ぐらいで、それも「~どり」であることに異を唱える人は少ないと思う。
ただ、最後の「角爪鳥」だけは例外か。初見で「つのつめどり」と読める人はあまりいなさそう。いなくはないだろうけど、全体でどれくらいいるんだろう。アンケートとってみたら面白そう(それも選択式ではなく記述式で)。
回答にありそうなのは「つのつめちょう」「つのつめどり」「つのつめとり」「かくそうどり」「かくそうとり」「かくそうちょう」「かっそうちょう」あたりかな。母数が大きければ、深読みし過ぎた「つのつめのとり」も1人くらいいそう。
▼ 槌(つい、つち、づち)
単体の名詞で用いられているもの(ナザーンの槌、槌のコス、破滅の槌など)は「つち」で確定なので除いてみる。それ以外も「槌~」の順序で構成されてる熟語もほぼ「つち~」の読みで確定している。
・《槌手/Hammerhand》 (つちて)
・《槌拳の巨人/Hammerfist Giant》 (つちこぶしのきょじん)
・《縄張り持ちの槌頭》 (なわばりもちのつちあたま)
それ以外の「槌」たちを挙げてみる。まずは限定構築で大暴れしてた有名どころ。
・《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》 (ろくそどんのせんつい)
そこそこ使われた装備品で、レアリティが変化しつつ再録されたりもしてた。個人的には「いくさづち」という読みもありな気がする。最後に、これ以外で「づち」の読みをとるカードをいくつか紹介してみる。
・《ピストン式大槌/Piston Sledge》 (ぴすとんしきおおづち)
・《伍堂の大槌、天鎖/Tenza, Godo’s Maul》 (ごどうのおおづちてんざ)
・《破城槌/Battering Ram》 (はじょうづち)
同じ「大槌」でも英語が「Sledge/Maul」があるみたい。いずれも読みは「おおづち」。それはさておき、最後の「破城槌」は、おそらく日本語的に「はじょうつい、はじょうづち」のいずれもありな中で、マジックは「はじょうづち」を選択している。
ちなみに、Wikipediaでは「破城槌(はじょうつい)」、ピクシブ百科事典も「破城槌 (はじょうつい)」、Weblio辞書の和英辞書も「読み方:はじょうつい」と表記されてるので、ネットを漁る限りではマジックの「~づち」が少数派に見える。
さらに付け加えておくと、Weblio辞書の英和辞書にある「Battering Ram」の説明では「【名詞】1. (昔の)破城槌(つち)、2. (戸・壁などを)打ち壊す道具」と記されている。
▼ 人(じん、にん、ひと、びと)
読み方は多けれど、あまり迷うパターンは無いかな。
まずは「じん」。
・《鉄の根の樹人族/Ironroot Treefolk》 (てつのねのじゅじんぞく)
・《穴居人/Cave People》 (けっきょじん)
最初の「樹人族」は、予備知識なしでも「じゅじんぞく」と読んでたけど「島魚(しまうお)」がありなら「きびとぞく」もいけそうな気がしてくる。「けっきょじん」は既存の日本語だから迷いようもないか。
次は「ひと」。
・《人さらい/Rag Man》 (ひとさらい)
・《人質取り/Hostage Taker》 (ひとじちとり)
・《人喰い植物/Carnivorous Plant》 (ひとくいしょくぶつ)
・《宿命の旅人/Doomed Traveler》 (しゅくめいのたびびと)
ここらへんも既存の日本語熟語なので迷いようなし。ただ最後の「旅人」は、一応「旅人(りょじん)」という読み方もあるらしいということは一言触れておく。
次は「びと」。
・《魂癒し人/Soulmender》 (たましいいやしびと)
・《レオニンの裁き人/Leonin Arbiter》 (れおにんのさばきびと)
・《王位狙いの雇われ人/Crown-Hunter Hireling》 (おういねらいのやとわれびと)
「びと」以外が絶対無理か、と言われるとちょっと迷う。例えば「魂のいやしにん」とか言えそうな気もする。でも日本語話者ならほぼ「びと」読みしかしないだろうな、とも思う。「~じん」とは読む気がしない。なんか「名詞 + じん」だと「アメリカ人、イギリス人」みたいに特定地域の……あれ、でも「文化人」とか「鉄人」みたいな「~じん」もあるか……感覚的すぎて説明しづらい。
あと「びと」の中でもちょっと特殊な次のカード。
・《ジェスの盗人/Jhessian Thief》 (じぇすのぬすびと)
挙げてきた例の中ではこの「盗人」が一番分かれそうかな。個人的にはこの熟語は「ぬすびと」より「ぬすっと」のがしっくりくる。日本語としては「とうじん」という読みもあり得るらしい。さすがにこれは古語の部類かな?
最後に「にん」。
大量にあるけど、ほぼ全て熟語。《処刑人の一振り/Executioner’s Swing》、《宮廷通りの住人/Court Street Denizen》、これら以外にも「三人衆」「番人」「職人」「密告人」などなど。
あえていえば職業が多い気がする。探せばマジック世界オリジナル職業の「~にん」もありそうだけど、それらも既存の日本語にある単語からの延長線上の解釈でしかなさそうなので省略。
▼ 剣(けん、つるぎ)
日本語訳の黎明期からカード名に含まれていたせいか、読みにブレがある。初めて「剣」を含む日本語カード名が登場したのは基本セットの第4版(1996年!)からで、そのセット内には以下の2枚が含まれていた(当時はルビなし)
・《剣の壁/Wall of Swords》 (けんのかべ)
・《剣を鍬に/Swords to Plowshares》 (つるぎをすきに)
特に後者の《剣を鍬に》について、日本語名の読みに諸説あるという話を聞いたときには、てっきり鍬が「すき」か「くわ」かどっちなのか、という話……なのかと思いきや、剣の読みが「けん」なのか「つるぎ」なのかという話と知って面白かった。
確かどっかの再録時点でルビが振られて決着がついたはずだけど具体的な時期は調べてない。めんどい。英語版から入った身としては、このカードは永遠に「ソープロ」だし。
以降は「けん」の読みが主流で「つるぎ」については《剣の熾天使/Seraph of the Sword》くらいしか見つからない。
・《剣の熾天使/Seraph of the Sword》 (つるぎのしてんし)
・《選ばれしものの剣/Sword of the Chosen》 (えらばれしもののけん)
・《魔道士殺しの剣/Mage Slayer》 (まどうしごろしのけん)
・《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》 (きょうえんときがのけん)
・《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》 (にくたいとせいしんのけん)
・《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》 (せんそうとへいわのけん)
ちょっと良く分からないのは以下の2枚。
・《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》 (ひとこおりの???)
・《光と影の剣/Sword of Light and Shadow》 (ひかりとかげの???)
カードにルビが振られている「饗宴と飢餓」や「戦争と平和」などについてはので「けん」確定なんだけど、ミラディン時代のこのカードたちはルビがない。再録された Modern Masters は英語版のみ。
たぶん「けん」だろう、と勝手に思ってるんだけど、Wisdom Guild では「つるぎ」の読みが与えられてる。何か根拠があるのかな。不思議だ。
どっとはらい。
すずくまのMTGブログ:あかれいはせきれいは戦争に終止符が
http://suzukuma1954.diarynote.jp/201802270037088502/
なんでも最新の再録で「せきれいは」というルビが振られたことにより「赤霊破の読みは、あかれいは? それとも、せきれいは?」の論争に決着がついた、という話らしい。
前々から「せきれいは」と読んでいたので特に感銘は受けなかったけど、確かに日本語カード名の漢字ってときどき直観的でない読みをとるから、解釈が分かれてしまうこと自体は理解できる。
ちなみに2017年12月時点の Wisdom Guild (MTG総合情報サイト) をチェックすると《青霊破》と《赤霊破》には、それぞれ「あおれいは」と「あかれいは」のルビが振られている。そのうち更新されそう。
▼ 宝物(ほうもつ、たからもの)
テンプレートがしっかり決まっているらしく「ほうもつ」で統一されている。
・《宝物庫襲撃/Storm the Vault》 (ほうもつこしゅうげき)
・《宝物の地図/Treasure Map》 (ほうもつのちず)
・《宝物の魔道士/Treasure Mage》 (ほうもつのまどうし)
・《宝物の入り江/Treasure Cove》 (ほうもつのいりえ)
・《宝物探し/Treasure Hunt》 (ほうもつさがし)
美しい。この流れなら、初見時は若干戸惑った《宝物探し》の読みも理解できる。
▼ 現(うつつ、あらわし)
第4版で日本語訳された《現し身/Personal Incarnation》。
初見時からなんのためらいもなく「うつしみ」と呼んでたけど、よく考えてみたら「あらわしみ」と読めなくもないか(ないない)。あと「ダメージをうつしかえる」から「うつしみ」である、と考えれば不思議はないな、と思いかけてから「待って、《現し身》であって《移し身》じゃないよ」と気づいた。
▼ 三叉(みつまた、さんさ)
最古のマーフォーク、《真珠三叉矛の人魚》の読みは「しんじゅみつまたほこのにんぎょ」。確かに「しんじゅみつまたほこ」しか選択肢はないとはいえ、なんかこう……語呂が悪いような気もする(※ 感じ方には個人差があります)。
なんでだろ。「真珠(しんじゅ)」が音読みで「三叉矛(みつまたほこ)」が訓読みだからそう感じるのかな。これがハースストーンだったら迷わず「パールトライデント」って訳されてそう。
▼ 西風(にしかぜ、せいふう、ならい)
おそらく「にしかぜ」だろうとは思ってた《西風の隼/Zephyr Falcon》の読みは実際に「にしかぜのはやぶさ」だった。でも「せいふう」もありかな。
日本語は風の呼び名の種類が豊富である、というのはことあるごとに話題に上がるけど、東西南北の有名どころだけでも、東風(とうふう、ひがしかぜ、こち)、西風(せいふう、にしかぜ、ならい)、南風(みなみかぜ、なんぷう、はえ)、北風(ほくふう、きたかぜ、あなじ)と3つずつある。
南風は、Wikipedia見に行ったらその見出しの直後だけで「南風(みなみかぜ・なんぷう・みなみ・はえ・まぜ・まじ・ぱいかじ)」が紹介されてた。一部地方の呼び名とか含めるともっともっとあるんだろうな。
▼ 弟子(でし、ていし)
一応「ていし」という読みもあるらしいけど、まあ、MTGでは関係ないか。
▼ 魚(うお、ぎょ、さかな)
一部に熱狂的なファンがいるとかいないとかの噂の魚、《島魚ジャスコニアス/Island Fish Jasconius》について、読みは「しまざかな」か「とうぎょ」のどっちなんだろう、と調べてみたら、まさかの「しまうお」らしい。ホントかよ。これがありなら「せきれいは・あかれいは」論争が起きるのも理解できる。
▼ 船(ふね、ぶね、ふな、せん)
とりあえず「ふね、ぶね、ふな、せん」は全てカードの読みとして存在する模様。
・《厄介な船沈め/Vexing Scuttler》 (やっかいなふねしずめ)
・《宝船の巡航/Treasure Cruise》 (たからぶねのじゅんこう)
・《船方ゴブリン/Swab Goblin》 (ふなかたごぶりん)
・《船慣れ/Sea Legs》 (ふななれ)
・《難破船あさり/Shipwreck Looter》 (なんぱせんあさり)
この中で読みに迷いそうなのは「船慣れ」くらいかな。あとは順当かと。
▼ 疫(えき、やく)
疫病神(やくびょうがみ)という言葉があるので「えきびょう、やくびょう」の両方があるかな、と思って調べてみたら片方しかなかった。
・《疫病ネズミ/Plague Rats》 (えきびょうねずみ)
・《害獣の疫病/Plague of Vermin》 (がいじゅうのえきびょう)
・《疫病沸かし/Plague Boiler》 (えきびょうわかし)
なお《集団疾病/Illness in the Ranks》や《疾病の神殿/Temple of Malady》は「しっぺい」なので注意(?)
▼ 稲妻(いなづま、いなずま)
読みの話とはちょっとズレるかもしれないけど、「いなづま」か「いなずま」かという読みの選択肢がある中で、マジックは「いなずま」をとっている。
・《稲妻/Lightning Bolt》 (いなずま)
なお日本語教育では「いなずま」が正しいらしい。
よくある反論(?)は、漢字が「妻」なんだから「づま」が正しいはず、という言い分で、これはこれで納得しそうになるんだけど、不思議と「地震」は「ぢしん」が正しいはず、とは思えない。「生地、布地」も「きじ、ぬのじ」。でも「鼻血」は「はなぢ」。不思議だ(マジック関係ない)。
▼ 山(やま、さん、ざん)
基本土地の名称の「山」やゲーム用語の「山札」は全て「やま」という自明の読みはさておき、それ以外の「さん、ざん」の話。
・《シヴ山のドラゴン/Shivan Dragon》 (しヴさんのどらごん)
日本語版が出たときに「しヴやま、しヴさん」論争が起きたらしい。個人的には、原語の「シヴァン」という音が頭にあったせいで「しぶやま」という可能性は考えもしなかった。でも、確かにそう読めなくはない。ところで「う゛」を一文字で表そうとすると環境依存文字が必要になるのね。知らなかった。
地名としての山は他にも色々登場するけど「~やま」は存在しないもよう。
・《霜剣山の背教者/Sokenzan Renegade》 (そうけんざんのはいきょうしゃ)
・《パーディック山の鉱夫》 (ぱーでぃっくざんのこうふ)
そういえば「シヴ山」は「しヴざん」じゃないのね。意外と「山」を「さん」と読むカードは少ない気がする。熟語なら以下のようにサクサク見つかるけども。
・《樹木茂る山麓/Wooded Foothills》 (じゅもくしげるさんろく)
・《山脈の闘獣/Spur Grappler》 (さんみゃくのとうじゅう)
・《山頂をうろつくもの/Summit Prowler》 (さんちょうをうろつくもの)
▼ 疾風(はやて、しっぷう、???)
・《疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish》 (しっぷうのでるヴぃっしゅ)
野球のダルビッシュが有名になり始めた頃、このカードを思い出したマジック古参プレイヤーたちがそこそこいたそうな。それはさておき「疾風(しっぷう、はやて)」の読みのどっちがカッコいいかな。個人的には「しっぷうのでるヴぃっしゅ」のが好き。他の「しっぷう」読みには《翼の疾風/Flurry of Wings》がある。
なお「はやて」の読みも存在する。
・《疾風のマングース/Blurred Mongoose》 (はやてのまんぐーす)
そして「はやて と しっぷう のどっちがテンプレートなんだ?」という疑問を吹き飛ばしてくれるのが次のカードサイクル。
・《疾風衣の騎兵/Gustcloak Cavalier》 (かぜごろものきへい)
・《疾風衣の侵略者/Gustcloak Harrier》 (かぜごろものしんりゃくしゃ)
・《疾風衣の走り手/Gustcloak Runner》 (かぜごろものはしりて)
初見時は「しっぷうい」だとばかり思ってた。まあ、これはもう漢字の読みの問題ではなくてマジック世界の専門用語だから読めなくて当たり前か。ただ「かぜごろも、かざごろも」のどっちだろう、という迷いは生じるかもしれない。
▼ 鳥(ちょう、とり、どり)
シンプルに「とり」の読みを取るのは単体の名詞として使われる場合くらいかな。例えば《鳥の乙女》や《宝石の鳥》のような例。迷う可能性があるのは「~どり、~ちょう」のパターンか。
・《極楽鳥/Birds of Paradise》 (ごくらくちょう)
・《ロック鳥の卵/Roc Egg》 (ろっくちょうのたまご)
・《渡り鳥の経路/Migratory Route》 (わたりどりのけいろ)
・《かき鳴らし鳥/Thrummingbird》 (かきならしどり)
・《沿岸の角爪鳥/Coastal Hornclaw》 (えんがんのつのづめどり)
一般的な漢字かつ単語なだけあって、読みが複数あっても実に自然な住み分けがなされている。あまり迷う人いないか。
最初のも「ごくらくどり」や「ろっくどり」と言われると違和感あるし、対して「わたりどり」は既存の日本語。ギリギリどちらもあり得そうと言えるのは「かき鳴らし鳥」ぐらいで、それも「~どり」であることに異を唱える人は少ないと思う。
ただ、最後の「角爪鳥」だけは例外か。初見で「つのつめどり」と読める人はあまりいなさそう。いなくはないだろうけど、全体でどれくらいいるんだろう。アンケートとってみたら面白そう(それも選択式ではなく記述式で)。
回答にありそうなのは「つのつめちょう」「つのつめどり」「つのつめとり」「かくそうどり」「かくそうとり」「かくそうちょう」「かっそうちょう」あたりかな。母数が大きければ、深読みし過ぎた「つのつめのとり」も1人くらいいそう。
▼ 槌(つい、つち、づち)
単体の名詞で用いられているもの(ナザーンの槌、槌のコス、破滅の槌など)は「つち」で確定なので除いてみる。それ以外も「槌~」の順序で構成されてる熟語もほぼ「つち~」の読みで確定している。
・《槌手/Hammerhand》 (つちて)
・《槌拳の巨人/Hammerfist Giant》 (つちこぶしのきょじん)
・《縄張り持ちの槌頭》 (なわばりもちのつちあたま)
それ以外の「槌」たちを挙げてみる。まずは限定構築で大暴れしてた有名どころ。
・《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》 (ろくそどんのせんつい)
そこそこ使われた装備品で、レアリティが変化しつつ再録されたりもしてた。個人的には「いくさづち」という読みもありな気がする。最後に、これ以外で「づち」の読みをとるカードをいくつか紹介してみる。
・《ピストン式大槌/Piston Sledge》 (ぴすとんしきおおづち)
・《伍堂の大槌、天鎖/Tenza, Godo’s Maul》 (ごどうのおおづちてんざ)
・《破城槌/Battering Ram》 (はじょうづち)
同じ「大槌」でも英語が「Sledge/Maul」があるみたい。いずれも読みは「おおづち」。それはさておき、最後の「破城槌」は、おそらく日本語的に「はじょうつい、はじょうづち」のいずれもありな中で、マジックは「はじょうづち」を選択している。
ちなみに、Wikipediaでは「破城槌(はじょうつい)」、ピクシブ百科事典も「破城槌 (はじょうつい)」、Weblio辞書の和英辞書も「読み方:はじょうつい」と表記されてるので、ネットを漁る限りではマジックの「~づち」が少数派に見える。
さらに付け加えておくと、Weblio辞書の英和辞書にある「Battering Ram」の説明では「【名詞】1. (昔の)破城槌(つち)、2. (戸・壁などを)打ち壊す道具」と記されている。
▼ 人(じん、にん、ひと、びと)
読み方は多けれど、あまり迷うパターンは無いかな。
まずは「じん」。
・《鉄の根の樹人族/Ironroot Treefolk》 (てつのねのじゅじんぞく)
・《穴居人/Cave People》 (けっきょじん)
最初の「樹人族」は、予備知識なしでも「じゅじんぞく」と読んでたけど「島魚(しまうお)」がありなら「きびとぞく」もいけそうな気がしてくる。「けっきょじん」は既存の日本語だから迷いようもないか。
次は「ひと」。
・《人さらい/Rag Man》 (ひとさらい)
・《人質取り/Hostage Taker》 (ひとじちとり)
・《人喰い植物/Carnivorous Plant》 (ひとくいしょくぶつ)
・《宿命の旅人/Doomed Traveler》 (しゅくめいのたびびと)
ここらへんも既存の日本語熟語なので迷いようなし。ただ最後の「旅人」は、一応「旅人(りょじん)」という読み方もあるらしいということは一言触れておく。
次は「びと」。
・《魂癒し人/Soulmender》 (たましいいやしびと)
・《レオニンの裁き人/Leonin Arbiter》 (れおにんのさばきびと)
・《王位狙いの雇われ人/Crown-Hunter Hireling》 (おういねらいのやとわれびと)
「びと」以外が絶対無理か、と言われるとちょっと迷う。例えば「魂のいやしにん」とか言えそうな気もする。でも日本語話者ならほぼ「びと」読みしかしないだろうな、とも思う。「~じん」とは読む気がしない。なんか「名詞 + じん」だと「アメリカ人、イギリス人」みたいに特定地域の……あれ、でも「文化人」とか「鉄人」みたいな「~じん」もあるか……感覚的すぎて説明しづらい。
あと「びと」の中でもちょっと特殊な次のカード。
・《ジェスの盗人/Jhessian Thief》 (じぇすのぬすびと)
挙げてきた例の中ではこの「盗人」が一番分かれそうかな。個人的にはこの熟語は「ぬすびと」より「ぬすっと」のがしっくりくる。日本語としては「とうじん」という読みもあり得るらしい。さすがにこれは古語の部類かな?
最後に「にん」。
大量にあるけど、ほぼ全て熟語。《処刑人の一振り/Executioner’s Swing》、《宮廷通りの住人/Court Street Denizen》、これら以外にも「三人衆」「番人」「職人」「密告人」などなど。
あえていえば職業が多い気がする。探せばマジック世界オリジナル職業の「~にん」もありそうだけど、それらも既存の日本語にある単語からの延長線上の解釈でしかなさそうなので省略。
▼ 剣(けん、つるぎ)
日本語訳の黎明期からカード名に含まれていたせいか、読みにブレがある。初めて「剣」を含む日本語カード名が登場したのは基本セットの第4版(1996年!)からで、そのセット内には以下の2枚が含まれていた(当時はルビなし)
・《剣の壁/Wall of Swords》 (けんのかべ)
・《剣を鍬に/Swords to Plowshares》 (つるぎをすきに)
特に後者の《剣を鍬に》について、日本語名の読みに諸説あるという話を聞いたときには、てっきり鍬が「すき」か「くわ」かどっちなのか、という話……なのかと思いきや、剣の読みが「けん」なのか「つるぎ」なのかという話と知って面白かった。
確かどっかの再録時点でルビが振られて決着がついたはずだけど具体的な時期は調べてない。めんどい。英語版から入った身としては、このカードは永遠に「ソープロ」だし。
以降は「けん」の読みが主流で「つるぎ」については《剣の熾天使/Seraph of the Sword》くらいしか見つからない。
・《剣の熾天使/Seraph of the Sword》 (つるぎのしてんし)
・《選ばれしものの剣/Sword of the Chosen》 (えらばれしもののけん)
・《魔道士殺しの剣/Mage Slayer》 (まどうしごろしのけん)
・《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine》 (きょうえんときがのけん)
・《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》 (にくたいとせいしんのけん)
・《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》 (せんそうとへいわのけん)
ちょっと良く分からないのは以下の2枚。
・《火と氷の剣/Sword of Fire and Ice》 (ひとこおりの???)
・《光と影の剣/Sword of Light and Shadow》 (ひかりとかげの???)
カードにルビが振られている「饗宴と飢餓」や「戦争と平和」などについてはので「けん」確定なんだけど、ミラディン時代のこのカードたちはルビがない。再録された Modern Masters は英語版のみ。
たぶん「けん」だろう、と勝手に思ってるんだけど、Wisdom Guild では「つるぎ」の読みが与えられてる。何か根拠があるのかな。不思議だ。
どっとはらい。
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