前編はこちら
https://regiant.diarynote.jp/201812040105436564/

Krakilin / クラキリン (X)(緑)(緑)
クリーチャー - ビースト(Beast)
クラキリンは、その上に+1/+1カウンターがX個置かれた状態で戦場に出る。
(1)(緑):クラキリンを再生する。
0/0
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Krakilin/

 このカードは元々《モンスター玉/Creatureball》という名前になる予定で、マナコストは「(X)(緑)」でパワーとタフネスが「X/X」になるクリーチャーだった。

 しかしデベロップメント側でそのままでは強すぎると判断されてしまった。結果、マナコストは「(X)(緑)(緑)」に、かつ再生能力を持つクリーチャーへ変更された。

 面白いことに、その後に発売されたオデッセイというセットに、元のバージョンの《モンスター玉/Creatureball》そのものである《キヅタの精霊/Ivy Elemental》が作られたことだ。

 君らも知ってのとおり、こういうカードパワーに関する逸話については多くの場合で私が間違っていることのほうが多いが、ときたまこんな風に、実は私が正しかった、ということもある。それをコラムで取り上げて「ほら、言ったとおりだろ」と言えるチャンスが(ごくまれに)あるわけだ。

Legerdemain / 手品 (2)(青)(青)
ソーサリー
アーティファクト1つかクリーチャー1体を対象とする。それと共通のタイプを持つ別のパーマネント1つを対象とする。それらのコントロールを交換する。(この効果は永続する。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Legerdemain/

 その通り、昔の私は《対置/Juxtapose》を使い倒していた(訳注:《対置/Juxtapose》はレジェンドのソーサリーで対戦相手と「お互い手持ちで最もコストの高いクリーチャーを交換する。その後アーティファクトも同様にする」という呪文)

Lotus Petal / 水蓮の花びら (0)
アーティファクト
(T),水蓮の花びらを生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lotus+Petal/

 このカードをデザインしたときは、まさかこれが悪さをするなんて思ってもみなかったね。ああ、そうそう、フレイバーテキスト(註)は狙って書かれたものだ。
(註) フレイバーテキスト
 マジックで最も高額な1枚とされる《Black Lotus》の調整版であるこの《水蓮の花びら/Lotus Petal》のフレイバーテキスト(「考えてもみてよ」とハナは花びらをなでながらしみじみと言った。「こんなに美しい花が、みにくい物欲を起こさせるなんてね」)は、その調整元のカードを意識している。

 ちなみにこのフレイバーテキストを書いたのはクリエイティブチームのリーダーの1人、 Brady Dommermuth だ。

Ruby Medallion / ルビーの大メダル (2)
アーティファクト
あなたが唱える赤の呪文は、それを唱えるためのコストが(1)少なくなる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ruby+Medallion/

 このメダリオンサイクルを生み出したもの、それは私の《Stone Calendar》への愛だ。ウィザーズに入るまでに作った数々のデッキの中には、もちろん多くの Stone Calendar デッキもあった。

 そしてテンペストのデザインをする際に、効果が限定的な代わりにもっとマナコストの安い Stone Calendar のサイクルを作りたい、と考えたのさ。

Mirri’s Guile / ミリーの悪知恵 (緑)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたはあなたのライブラリーのカードを上から3枚見てもよい。その後それらを望む順番で戻す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mirri%27s+Guile/

 問題のあったカードをあらためて作り直す、ということはデザインの世界ではよくあることだ。そしてこの《ミリーの悪知恵/Mirri’s Guile》はその例の1つで、《森の知恵/Sylvan Library》を作り直したものだ。

 元のカードの問題点は、ライフを支払ってカードを引くという効果が緑のフレイバーに合っていなかった点だ。加えて、R&Dから見て《森の知恵/Sylvan Library》のパワーレベルは若干とはいえ超えてはいけないラインを越えていた。

 こうしてこのカードがポスト《森の知恵/Sylvan Library》として作られたわけだが……残念ながらそうは上手くはいかなかった。

Mongrel Pack / 雑種犬の群 (3)(緑)
クリーチャー - 猟犬(Hound)
雑種犬の群が戦闘中に死亡したとき、緑の1/1の猟犬(Hound)クリーチャー・トークンを4体生成する。
4/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mongrel+Pack/

 オンスロートに収録されていた「Symbiotic/共生」カードたちを覚えているかい? これがその子孫だよ。

 開発中の仮の名前は《破片獣/Splinter Beast》だったこのカードのデザインはトップダウンだった。どういうことかというと、私はクリーチャーがダメージを受けてバラバラになったあと、そのバラバラの欠片がそのまま襲ってくる、というアイデアが使いたかったんだ。

 よくあるファンタジーネタだね。そしてマジックではまだこのネタが使われた形跡がなかったんだ(もっとも Richard Garfield がそれに多少近いことを《Rock Hydra》で実現してはいたけれど)

Precognition / 前知 (4)(青)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、対戦相手1人を対象とする。あなたはそのプレイヤーのライブラリーの一番上のカードを見てもよい。そうした場合、あなたはそのカードをそのプレイヤーのライブラリーの一番下に置いてもよい。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Precognition/

 このカードは《淘汰/Preferred Selection》(訳注:緑のエンチャントで毎ターン自分の山札の上2枚を見て片方をライブラリの下に送れる)の真逆の効果を狙ってデザインしたものだ。

 自分が山札の2枚のどちらを引くか選ぶ代わりに、君は対戦相手の山札2枚のうちどちらを引かせるかを選べるのだ。

 ああ、そうそう、元々は「対戦相手のライブラリーの上の2枚を見て、片方をライブラリーの下に送る」という効果だった。しかしどうにもテキストを洗練された形にできなかったんだ。

 かわりに「1枚のカードを見てどうするか選ぶ」という形ならスッキリしたので今の形になったわけさ。まあそれによって対戦相手を完全に事故らせる難易度を上げるという効果もあったけどね。

Propaganda / プロパガンダ (2)(青)
エンチャント
クリーチャーは、それらのコントローラーが自分がコントロールする、あなたを攻撃するクリーチャー1体につき(2)を支払わないかぎり、あなたを攻撃できない。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Propaganda/

 デザインされてない余地を掘り返すことであらたなデザインを生み出す、という手法の好例がこのカードだ。

 当時、「税」を強制するのは青の独壇場だった。ああ、ここで言っている「税」というのは、対戦相手に何らかの形でマナの支払いを強制する効果のことだ。そうしないと相手はとりたい行動がとらせてもらえない。

 (ちなみに「税」について付け加えておくと、今ではこの効果はカラーパイの役割上では白に属している。そのほうが筋が通っているからだ。何しろ白こそ「ルールは私が決める」の色だからね)

 さて当時の私は、違った形で「税」を相手に支払わせる手段はないかと模索していた。私は1つ1つターンのステップを吟味していった。その中にまだ「税」を取り立てていない場所はないかと思ってね。

 そして気づいたのさ。攻撃するという行為に「税」をかけたカードがほぼないことにね(唯一の例外があのイマイチな強さのクリーチャーエンチャントである《洗脳/Brainwash》だ。ちなみにこの《洗脳/Brainwash》も白のカードだ。なかなか興味深いだろう?)。

 そんなわけで生まれたのが《プロパガンダ/Propaganda》というわけさ。

Ranger en-Vec / ヴェクのレインジャー (1)(緑)(白)
クリーチャー - 人間(Human) 兵士(Soldier) 射手(Archer)
先制攻撃
(緑):ヴェクのレインジャーを再生する。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ranger+en-Vec/

 このカードが元々持つ予定だった能力はバンドと再生だった。しかしテンペストが生まれる前にバンドはこの世から抹殺され、私たちは新たな能力を探す必要が生じ、結果、今の形になった。

 残念だよ。テンペスト以前の、まだバンドが生きてた時代にとっとと世に出しておくべきだった。個人的に「再生持ちのバンド持ち」という組み合わせは強いはずだと確信してたからね。

Repentance / 悔恨 (2)(白)
ソーサリー
クリーチャー1体を対象とする。それはそれ自身に、自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Repentance/

 このカードは、まず効果を先にデザインしたあと、あらためて「さて、どの色にするかな」と悩んだカードだ。

 このカードの特徴はタフネスがパワー以下の場合にしか意味を成さないという点にあった。これが何を意味するかというと、例えばこのカードは色で言えば白のクリーチャーに対してほとんど効果がないということだ。加えて、カード名とフレイバーが私に色を決めさせた。

 しかし、今にして思えば色を間違えたかもしれない。もし今日現在の私が色を選んでいたら、黒を選択していただろうね。問答無用にクリーチャーを殺すというのは白のフレイバーではないと私は感じているからだ。

 白のクリーチャー破壊はもっと防御的であるべきなんだ(R&Dはこの特徴を「私や子供たちに手を出さないで(don’t mess with me and my boys)」と冗談めかして呼んでいる)。

 しかしこのカードのフレイバーは、まるで対象となった相手が自分で自分を傷つけるのを見て楽しんでいるようだ。うん。どうみても真っ黒だね。

Root Maze / 根の迷路 (緑)
エンチャント
アーティファクトと土地はタップ状態で戦場に出る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Root+Maze/

 これは、素晴らしいカードになるはずだったカードが残念な結果に終わった例だ。

 元々、このカードの効果はもっとシンプルで美しかった。「全てのパーマネントは召喚酔いを得る」だ。

 しかしデベロップメントの段階で気づかされたのは、これは実質的にアーティファクトと土地にしか意味を成さないということだった。

 エンチャントはタップを必要としないので、召喚酔いは関係ない。クリーチャーは元々召喚酔いに影響される。つまりアーティファクトと土地がタップ状態で戦場に出てくれば、効果としてはほぼ同じだ。

 こっちのほうが分かりやすかろう、というわけで、今の形に変えられてしまったわけだ。しかし今にして思えばこの判断は間違っていたと思う。

 確かに元々のテキストのほうが分かりづらい点もあったかもしれない。でもやっぱり元の方がずっとシンプルで面白かった。

 分かりやすさは重要だ。しかしそれによって元の大事なフレイバーを失ってしまうのであれば、引き返す勇気もまた大事なのではないか、と私は思う。

Rootwater Matriarch / ルートウォーターの女族長 (2)(青)(青)
クリーチャー - マーフォーク(Merfolk)
(T):クリーチャー1体を対象とする。そのクリーチャーがエンチャントされ続けているかぎり、そのコントロールを得る。
2/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Rootwater+Matriarch/

 このカードを作った理由は、もっとプレイヤーたちにエンチャントクリーチャー(現:オーラ)を使ってほしかったからだ。

 このカードがあれば、プレイヤーたちがもっとエンチャントクリーチャー(現:オーラ)をデッキに入れたくなるのではないか? そして入れたエンチャントクリーチャー(現:オーラ)を対戦相手のクリーチャーに付けてから《ルートウォーターの女族長/Rootwater Matriarch》で奪うのを楽しんでくれるのではないか?、と考えたからだ。

Sadistic Glee / サディスト的喜び (黒)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
クリーチャー1体が死亡するたび、エンチャントされているクリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sadistic+Glee/

 このカードは私が昔好きだった《Khabal Ghoul》(訳注:そのターンに墓地に落ちたクリーチャーの数だけターン終了時に+1/+1カウンターが乗るクリーチャー)に敬意を表して作ったものだ。懐かしいね。《Khabal Ghoul》はパワーとタフネスを3桁まで育てることができた数少ないクリーチャーだ。あれで攻撃するのは本当に楽しかった。

Sarcomancy / 肉占い (黒)
エンチャント
肉占いが戦場に出たとき、黒の2/2のゾンビ(Zombie)・クリーチャー・トークンを1体生成する。
あなたのアップキープの開始時に、ゾンビが1体も戦場に存在しない場合、肉占いはあなたに1点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sarcomancy/

 このカードは元々「ターン開始時にこのクリーチャーが墓地にいた場合、あなたに1点のダメージを与える」という能力を持った 2/2 のクリーチャーだった。

 しかしデザインを進める中で、トークンを生み出すエンチャントにしたほうがいいのでは、ということになった。なぜならエンチャントなら常に場に残るので、ダメージを誘発させるのを忘れる心配がないからだ。

 そうそう、エンチャントに変えたことによって、ダメージを回避する手段は元のトークンに限らずなんでもいいからゾンビが戦場にいればいいということになった。

 これによって他のゾンビと一緒のプレイが推奨されることとなったのだ。その通り、私たちは古くテンペストの時代にはもう「部族デッキ」という思想を持っていたということだね。

Scragnoth / スクラーグノス (4)(緑)
クリーチャー - ビースト(Beast)
この呪文は打ち消されない。
プロテクション(青)
3/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Scragnoth/

 私がこのカードを思いついたのは実はウィザーズに入る前だ。

 ずっと私の頭を悩ませていたのは、なぜ打ち消し呪文だけ天敵がいないのか、ということだった。どんな呪文だって打ち消し呪文は効果を発する前に打ち消してしまう。

 じゃあどうすればいいのか?

 答えは明白だ。「打ち消されない呪文」を作ってしまえばいい。このアイデアが浮かんでからというもの、打ち消されずに戦場に出てしまうと青が最も困るものとはなんだろう、と考え続けていた。

 青は戦場に出てしまったパーマネントが苦手だ。パーマネントに対して青に出来ることと言えば《ブーメラン/Boomerang》的な呪文で手札に戻すことくらいだ。

 つまり、プロテクション青を持っており、かつ試合を終わらせる能力を持ったパーマネントこそ、青が最も嫌がるものだ。

 青の天敵は緑であり、緑とはクリーチャーの色であり、クリーチャーはそれ自体にクロックを内包している(クロックとは、ダメージを時計のように継続的に刻み続け、いつかは試合を終わらせられることだ)。

 全てが美しく噛み合った結果、生まれたのが《スクラーグノス/Scragnoth》というわけさ。

(余談)
 原文では記事のこの位置に《Thunder Spirit》と《空のスピリット/Sky Spirit》のカード画像が表示されており、その下に「《空のスピリット/Sky Spirit》はレジェンドの《Thunder Spirit》を作り直そうという試みの元に生まれた」と書いてある

Sky Spirit / 空のスピリット (1)(白)(青)
クリーチャー - スピリット(Spirit)
飛行、先制攻撃
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sky+Spirit/

 私はずっと《Thunder Spirit》は素晴らしいカードだと思っていた。しかし残念ながら私がウィザーズに入社したとき、すでにそのカードは再版禁止リスト(訳注:主にコレクター的な理由から同型再版の作成が禁じられているカードのリスト)入りしていた。

 その後、テンペストのデザインをしているとき、突然ひらめいた。わずかでも違ってさえいれば再版ではない。例えば、そう、マナコストの白マナ1つを青マナに変えるとか?

 それ以外は変更なしだ。クリーチャータイプすら《Thunder Spirit》にならってスピリットのままだったからね。

Telethopter / リモコン飛行機械 (4)
アーティファクト クリーチャー - 飛行機械(Thopter)
あなたがコントロールするアンタップ状態のクリーチャーを1体タップする:リモコン飛行機械はターン終了時まで飛行を得る。
3/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Telethopter/

 このカードの最も誇れる点といえば、それはこれが数あるマジックのカードの中でもただ1枚だけ、私の父がデザインしたカードだという点だ。

 テンペストのデザインをしている最中、私は父に会う機会があった。そのとき私はカードのアイデアが何かないか、と尋ねてみたんだ。

 父は、ラジコンみたいなクリーチャーはどうだろう、という案をくれた。その案を元に、2人でこのカードを考えたのさ。フレイバー的には、他のクリーチャーがこの《リモコン飛行機械/Telethopter》を操縦して飛ばせている、という感じだ。

Tooth and Claw / 歯とかぎ爪 (3)(赤)
エンチャント
クリーチャーを2体生け贄に捧げる:《肉食動物/Carnivore》という名前の、赤の3/1のビースト(Beast)・クリーチャー・トークンを1体生成する。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Tooth+and+Claw/

 正直、何を考えてこれを作ったのかよく覚えていない。たぶん《ゴブリンの巣穴/Goblin Warrens》(訳注:ゴブリンを2体生け贄に捧げると3体の 1/1 ゴブリントークンを生み出すエンチャント)が好きだったから、まあ、そこらへんがなんか関係してるんじゃないかな……うん、何にせよ、カードデザインには当たりもあれば外れもある、ということを示す良い例だ。

Trumpeting Armodon / いななくアーモドン (3)(緑)
クリーチャー - 象(Elephant)
(1)(緑):クリーチャー1体を対象とする。このターン、それは可能ならばいななくアーモドンをブロックする。
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Trumpeting+Armodon/

 新たなクリーチャーの能力を生み出すときに使えるテクニックの1つ、それはそのクリーチャーが属している色の代表的な呪文を参考にすることだ。分かりやすいところでは、緑のクリーチャーに《寄せ餌/Lure》を付ける、という感じだ。

 とはいえ、こう例に出すだけあって、そもそも《寄せ餌/Lure》はすでにアライアンスの《エルフの吟遊詩人/Elvish Bard》で使用済みだった。そこで私は《寄せ餌/Lure》的な能力を別のひねった形で表現できないか、と考えてみたんだ。

 そうだな……じゃあ誰にブロックされるかを自分で選べるクリーチャーというのはどうだろう?

 というわけで生まれた能力だったが、これはなかなか面白い能力だな、ということになり、ついにはストロングホールド(テンペストの次のセット)でこの能力ほぼそのままである《誘発/Provoke》という呪文が生まれることとなった。

Watchdog / 番犬 (3)
アーティファクト クリーチャー - 猟犬(Hound)
各戦闘で、番犬は可能ならブロックする。
番犬がアンタップ状態であるかぎり、あなたを攻撃しているすべてのクリーチャーは-1/-0の修整を受ける。
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Watchdog/

 派手なカードに注目が集まるのは簡単な一方で、こういう《番犬/Watchdog》のような地味ながらも巧妙なデザインはなかなか気づかれにくい。

 このカードには2つのシンプルでかつシナジーしている能力が与えられている。さらにそれら能力はこのカードのフレイバーと素敵にマッチしている。

 カードをデザインする側としては、今後もこういう派手さのない巧妙なデザインのカードを各セットに何枚か忍び込ませたいところだ。大きく両手を振り回しながら「こっちを見て!」と叫んでいるようなカードばかりではない、ということさ。

Wasteland / 不毛の大地
土地
(T):(◇)を加える。
(T),不毛の大地を生け贄に捧げる:基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Wasteland/

 このカードが生まれるまでの思考の流れはこんな感じだ。
「うーん、《露天鉱床/Strip Mine》は良いカードなんだけど、ちょっとカードパワー的に良すぎるんだよなあ。《露天鉱床/Strip Mine》の良さを持ちつつも、対戦相手をあまりにも簡単に土地事故に陥らせない方法はないかな? ん、そうだ、破壊できるのを基本でない地形だけにしたらどうだろう? それならこっちを困らせて来る土地を破壊しつつも、序盤のマナ展開を阻害せずに済むのでは? そうだ、それがいい」
 そう思ってたんだけどね。

Winds of Rath / ラースの風 (3)(白)(白)
ソーサリー
すべてのエンチャントされていないクリーチャーを破壊する。それらは再生できない。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Winds+of+Rath/

 このカードに関してデベロップメントで激論が交わされた。

 それは、破壊するのを「すべてのエンチャントされているクリーチャー」にするか、「すべてのエンチャントされていないクリーチャー」にするかだ(ちなみにデザインから上がってきた元のバージョンは「すべてのエンチャントされていないクリーチャー」だった)。

 最終的に、私は元のままの形を死守することに成功した。私がとことん強調したのは「私たちは、プレイヤーが自分のクリーチャーにエンチャントクリーチャー(現:オーラ)を付けることを後押ししたいんじゃないのか?」という点だった。


全てのカードは収録に値する/All That’s Fit to Print

 今日のデザインに関する話はこれで終わりだ。来週は、なんで一部のプレイヤーが嫌がるような真似をあえて私たちがするのか、ということについて書こうと思っている(ちょっとした論争を巻き起こしてもいい頃合いかなと思ってね)。ぜひ読みに来てくれ。

 それまでに、君が《スクラーグノス/Scragnoth》で青デッキを打ちのめす喜びを楽しんでくれますように。

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