【翻訳】テンペストの中で輝いて/In a Teapot【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年12月16日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/teapot-2002-12-16

 テンペスト週間へようこそ! 今週は私の最も好きなセットの1つであるテンペストについて語らせてもらおう。テンペストは常に私の心の中で特別な位置を占めているセットなんだ。何しろ私が初めてデザインしたセットだからね。

 アライアンスやミラージュ、ウェザーライトでカードをデザインしたことはあった。しかし正式なデザイナーとしてセットの開発に参加したという意味ではテンペストが最初だ。さらに言えば、テンペストは初めて私がデザインチームを運営したんだ。

カードの中にあり/It’s in the Cards

 実は今週の私のコラムは2つある。1つは過去にデュエリストという雑誌に載っていたコラムの再掲だ。まさにテンペストが世に出たときに書いた、テンペストのデザインとデベロップメントに関する記事だ。そっちは今週の後半にはアップされるはずだよ。

 もう1つは、そう、君が今読んでるこのコラムだ。ここではテンペストの様々なカードがどのようにデザインされたかを個別に見ていこうと思う。それを通じて、君たちにもテンペストというセットがどうデザインされたのかをよく知ってもらえるだろう。

 ちょっと付け加えておくと、テンペストのデザインについては様々なコラムでこれまでにも触れてきた。なので今回のコラムでは極力過去に一度も語っていない新ネタを書きたいと思っている(とはいえ多少かぶってしまうこともあると思うが多目に見てくれ)

Altar of Dementia / 狂気の祭壇 (2)
アーティファクト
クリーチャーを1体、生け贄に捧げる:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分のライブラリーの一番上のカードを、生け贄に捧げられたクリーチャーのパワーに等しい枚数だけ自分の墓地に置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Altar+of+Dementia/

 このカードは《石臼/Millstone》の新たな形を模索していたときに思いついた。

 当時、石臼デッキといえばノンクリーチャーデッキが当たり前だった。そこで私は、クリーチャーが入っているデッキでないと使えない山札破壊のカードがあっても面白いんじゃないかな、と思ったわけさ。

Ancient Runes / 古代ルーン文字 (2)(赤)
エンチャント
各プレイヤーのアップキープの開始時に、古代ルーン文字はそのプレイヤーに自分がコントロールするアーティファクトの数に等しい点数のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ancient+Runes/

 過去に人気だったカードを元にして新たなカードを作ることがある。これはその好例だね。私は《因果応報/Karma》が大好きだった。そしてふと思ったんだ。「沼じゃなくて別の何かに対して有効なのも作れるんじゃないか?」とね。

 別の何かとして最初に思いついたのはアーティファクトだった。さて、じゃあアーティファクトを持ってるプレイヤーに対して強い色といえば?

 アーティファクトを破壊できる色といえば赤、緑、そして白の3つだ。緑がダメージを与えるというのはちょっと変だし、白はすでに《因果応報/Karma》がある。そんなわけで残ったのは赤だった。まさにぴったり狙いにハマる色が残ったわけさ。

Auratog / オーラトグ (1)(白)
クリーチャー - エイトグ(Atog)
エンチャントを1つ生け贄に捧げる:オーラトグはターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Auratog/

 実はこのカードはテンペストではなくミラージュの開発時に生まれていたカードだ。

 当時、ミラージュには森を生け贄に捧げることでパンプできる1/2の緑のクリーチャーがいた。デベロップメントの会議の際に、これはまさに緑のエイトグだね、と私見を述べた。

 そのとき、カード名をつける担当者がそのアイデアに飛びついたわけさ。結果、クリーチャータイプはエイトグとなり、カード名は《森エイトグ/Foratog》と名付けられた。

 そのときだよ。R&Dがエイトグのサイクルを作ろうと決めたのはね。

 私たちはまず色ごとに対応するエイトグをデザインし、さらにそれらをその後に発売されるセットにそれぞれ収録することにしたんだ。

 ビジョンズには青いエイトグこと《時エイトグ/Chronatog》、ウェザーライトには黒いエイトグこと《ネクロエイトグ/Necratog》、そしてテンペスト用に残されたのが白いエイトグだったというわけさ。

Carrionette / 操り骸骨人形 (1)(黒)
クリーチャー - スケルトン(Skeleton)
(2)(黒)(黒):クリーチャー1体を対象とする。操り骸骨人形とそれを、それのコントローラーが(2)を支払わないかぎり、それらを追放する。この能力は、操り骸骨人形があなたの墓地にある場合にのみ起動できる。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Carrionette/

 このカードのデザインはR&Dがいわゆる「トップダウン」と呼ぶタイプのデザインだった。トップダウンとはどういうことかというと、まずフレイバーが先にあり、それにフィットする能力をあとから考えるタイプのデザインだ。

 このカードの場合、フレイバーとして「墓地で息をひそめて獲物を待ち構えつつ隙を見て襲い掛かって来るクリーチャー」がまずあり、そのアイデアを実現する能力があとからデザインされた、というわけだ。

Commander Greven il-Vec / 司令官グレヴェン・イル=ヴェク (3)(黒)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) 戦士(Warrior)
畏怖(このクリーチャーは、黒でもアーティファクトでもないクリーチャーによってはブロックされない。)
司令官グレヴェン・イル=ヴェクが戦場に出たとき、クリーチャーを1体生け贄に捧げる。
7/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Commander+Greven+il-Vec/

 これも「トップダウン」タイプのデザインだね。司令官グレヴェンのために私たちは伝説のクリーチャーを作る必要があった。

 私の中で、司令官グレヴェンとは恐怖を体現し、かつ大ダメージを与えられるクリーチャーでなくてはならなかった。それを実用可能なコストで実現するには、何らかのデメリットを持たせないといけなかった。

 物語の中でグレヴェンはことあるごとに誰かを殺していたので、クリーチャーを生け贄に捧げるというコストは非常にフレイバーに沿っているように思われた。

Coffin Queen / 棺の女王 (2)(黒)
クリーチャー - ゾンビ(Zombie) ウィザード(Wizard)
あなたは、あなたのアンタップ・ステップに棺の女王をアンタップしないことを選んでもよい。
(2)(黒),(T):墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それをあなたのコントロール下で戦場に出す。棺の女王がアンタップ状態になるかあなたが棺の女王のコントロールを失ったとき、そのクリーチャーを追放する。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Coffin+Queen/

 このカードは《Old Man of the Sea》(訳注:自身のパワー以下のパワーを持つクリーチャー1体のコントロールを奪える 2/3 のクリーチャー)があってこそ生まれたカードだ。

 私はずっと《Old Man of the Sea》が大好きだった。この大好きなカードのどんなバリエーション違いが生み出せるかな、と考えていたとき、他人の墓地からクリーチャーを奪ってくるってのはどうだろう、と思いついた。

 最終的には対戦相手だけでなくどの墓地のクリーチャーも奪えることにした。なぜなら多くのプレイヤーは基本的に自身の墓地のクリーチャーを蘇らせることを好むからだ。

Diabolic Edict / 悪魔の布告 (1)(黒)
インスタント
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、クリーチャーを1体生け贄に捧げる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Diabolic+Edict/

 《Old Man of the Sea》以外で好きなカードをあげろと言われたら《疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish》(訳注:プロテクション黒を持ち攻撃するたびに成長する緑のクリーチャー)だね。このカードが使えた当時は、こいつだけで黒単色デッキを徹底的に叩きのめすことができた。何しろ黒はこいつをどうすることもできなかったからね。

 テンペストのデザインの最中に、黒にも《疾風のデルヴィッシュ/Whirling Dervish》に対抗する手段を持たせたい、という意見があがった。その結果がこのカードさ。

 皮肉なことにこのカードが生まれて以降、マジックの環境は「黒がもうこれ以上プロテクションに本気で悩まされない時代」を迎えることとなった。

Dracoplasm / ドラゴンプラズマ (青)(赤)
クリーチャー - 多相の戦士(Shapeshifter)
飛行
ドラゴンプラズマが戦場に出るに際し、好きな数のクリーチャーを生け贄に捧げる。ドラゴンプラズマのパワーはそれらクリーチャーのパワーの合計になり、タフネスはそれらのタフネスの合計になる。
(赤):ドラゴンプラズマはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。
0/0
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dracoplasm/

 このカードは元々ソーサリーとして作られる予定だった。そのときのカード名は《融合/Meld》で、効果は2体のクリーチャーを融合させることができるというものだった。具体的には、2体のクリーチャーを生け贄に捧げてトークンを生み出すという効果だ。

 そのトークンのパワーとタフネスは生け贄に捧げた2体のそれの合計で、さらにそれぞれのクリーチャーが持っていた能力も得ることができた。しかしこの呪文はそのままだとルール的な問題点が山積みとなったため、戦場に出たとき同時に捧げられた生け贄の分だけ強化されるというクリーチャーに変更された。

Earthcraft / 大地の知識 (1)(緑)
エンチャント
あなたがコントロールするアンタップ状態のクリーチャーを1体タップする:基本土地1つを対象とし、それをアンタップする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Earthcraft/

 私が最初に考えたバージョンは、「全てのクリーチャーに『タップ:対象の土地をアンタップする』という能力を付与する」というものだった。

 その後、デベロップメントへと移った際に、Text Splicing(クリーチャーのテキスト欄に能力を継ぎ足す形)という能力から、単にエンチャントの起動コストとしてクリーチャーのタップを要求する形に変更になった。そしてこの変更による影響は非常に大きかった。

 なぜならこれによって戦場に出たばかりのクリーチャーでも土地をアンタップできるようになったからだ。このカードを使ったコンボの大半はトークンクリーチャーを生み出すパーマネントとセットだった……と言えば分かってもらえるだろうね。そして数年後、このカードは多人数戦での使用を禁止されることになる。

Escaped Shapeshifter / 逃亡した多相の戦士 (3)(青)(青)
クリーチャー - 多相の戦士(Shapeshifter)
対戦相手1人が《逃亡した多相の戦士/Escaped Shapeshifter》という名前でない、飛行を持つクリーチャーを1体でもコントロールしているかぎり、逃亡した多相の戦士は飛行を持つ。先制攻撃、トランプル、いずれかの色に対するプロテクションも同様である。
3/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Escaped+Shapeshifter/

 私のSF愛が生み出したカードがこれだ。SFによく見られるネタの1つに、傍にいる生き物の能力をコピーするエイリアンというネタがある。これを再現したくてデザインしたのがこのクリーチャーだった。

 ちなみに私の最初の案は、戦場にいる全クリーチャーの全ての能力をコピーするというものだったが、これまたルール的な問題に阻まれて能力の縮小を余儀なくされたというわけさ。

Extinction / 絶滅 (4)(黒)
ソーサリー
あなたが選んだ1種類のクリーチャー・タイプを持つすべてのクリーチャーを破壊する。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Extinction/

 このカードのそもそもの始まりは「全てのInsect(虫)、Spider(蜘蛛)、Faeries(妖精)を破壊する《殺虫剤/Insecticide》というカードを作ってみようか?」という冗談が元だった。

 その後、今の形へと変更され、それに合わせてカード名も一旦は《虐殺/Genocide》に変更された。私たちはこの新たなカード名そのもので世に出すつもりだった。効果がまさにそのものだったからね。1つの種をこの世から消し去るわけだ。

 しかし同時に、単語が持つあまりにもネガティブな響きの強さに懸念を覚えもした。そして不必要に人々の神経を逆なでしたくなかったので今の形に名前を変えることにしたわけさ。

Field of Souls / 魂のフィールド (2)(白)(白)
エンチャント
トークンでないクリーチャーが戦場からあなたの墓地に置かれるたび、飛行を持つ白の1/1のスピリット(Spirit)・クリーチャー・トークンを1体生成する。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Field+of+Souls/

 このカードに関する面白い話といえば、最初のバージョンでは「トークンではない」という文言がなかったことだ。そのままだと君のクリーチャー全てがあっという間に不死身の1/1の飛行クリーチャーと化す、と気づくのにはたった1回のテストプレイで十分だったよ。あれはまさにぶっ壊れカードだったね。

Fugitive Druid / 脱走ドルイド (3)(緑)
クリーチャー - 人間(Human) ドルイド(Druid)
脱走ドルイドがオーラ(Aura)呪文の対象になるたび、あなたはカードを1枚引く。
3/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Fugitive+Druid/

このカードに関しても面白い話がある。ただ実のところカードそれ自体とはあまり関係ない話だけどね。このカードのプレイテスト中の仮の名前は《エンチャント・ラッド/Enchanto Lad》だったんだ。能力そのままだね。
(註) エンチャント・ラッド
 「Lad」は「Boy」とか「Kid」みたいな単語で、あえて訳すなら「エンチャント少年」とか「エンチャント坊や」みたいなカード名ということ。

 デザインをしている最中は可能な限りそれっぽい名前を付けることにしているが、いい名前を思いつかなかったときはそのカードの効果をほぼそのまま名前にしてしまうことがある。このカードみたいにね。まあ、その結果、ちょっとカード名がバカっぽい名前になることもある。

 さて、このカード名の何が面白かったかというと、このカード以降、テストプレイ中のカード名にある種のパターンというか……テーマみたいなものが自然と生まれてしまったんだ。

 普通は君たちに知られることはない話だね。何しろデザイン中のテストプレイ用のカードの名前の話だ。さてこのときのテーマとは?

 過去のコラムで何度も触れたことがあるように、私は昔からコミックブックの熱心な読者だった。そんな私が小さい頃に好きだったコミックに「Legion of Super Heroes」というのがあった。

 知らない人のために簡単に説明しておくと、これは30世紀ごろを舞台にしたコミックで、ティーネイジャーのスーパーヒーローたちが力を合わせて悪の軍団を戦う話だ。

 結構な人数のいるこのヒーローたちのチームは、大半のメンバーが特殊なスーパーパワーを1つ持っている。そしてヒーローたちの名前の付け方のパターンは「能力 + 少年少女に類する単語」だ。

 例えばチームの創設者である3人の名前はそれぞれ「コズミック・ボーイ」「サターン・ガール」「ライトニング・ラッド」だった。

 それを思い出した私は《脱走ドルイド/Fugitive Druid》のテストプレイ用の名前に詰まったときにこのヒーローチームの命名法を借りて《エンチャント・ラッド/Enchanto Lad》にしたわけさ。

 この命名法を使うことを覚えてからというもの、プレイテスト用のカードに貼り付けられた仮の名前はあっという間に「~キッド」だの「~ボーイ」だのであふれかえった。

 この話から君がどのような教訓を得られるかは定かではないが、もしかしたら「デザイナーはどんな些末な事にも楽しみ方を見つける」ってのは分かってもらえたかもしれないね。

Ghost Town / ゴースト・タウン
土地
(T):(◇)を加える。
(0):ゴースト・タウンをオーナーの手札に戻す。この能力は、あなたのターンでない場合にのみ起動できる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ghost+Town/

 ああ、このカードか。これは違った形で世に出てたかもしれないカードだ。元々、このカードには「この能力は、あなたのターンでない場合にのみ起動できる」の一文がなかった。

 しかしデベロップメントチームはこのカードが《ハルマゲドン/Armageddon》と同時に使われること(平地と3枚のこれを並べて《ハルマゲドン/Armageddon》を唱えるとなぜか《ハルマゲドン/Armageddon》を唱えたのに平地以外の土地3枚が手札にある)を心配して、この一文を追加したんだ。

 私だったらこの変更は加えなかっただろうね。そして、もし私の案が通っていたら、開発部でもっともカードバランスを上手くとれる男として知られることはなかっただろうね。

(余談)
 原文では記事のこの位置に《グレイブディガー/Gravedigger》のカード画像(ポータル版とテンペスト版)が表示されており、その下に「《グレイブディガー/Gravedigger》の初出はポータルだがデザインされたのはテンペストだ」というキャプションがある。

Gravedigger / グレイブディガー (3)(黒)
クリーチャー - ゾンビ(Zombie)
グレイブディガーが戦場に出たとき、あなたの墓地からクリーチャー・カード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gravedigger/

 このカードの誕生はなかなか面白い経緯を辿った。

 テンペストの開発が始まった頃、私たちは「引かれたときに能力を誘発させるカード」というアイデアを試していた。

 案の定というか、これは実際の運用面で色々と問題を引き起こすことが分かり(対戦相手がそのカードをいつ引いたかどうやったら分かるんだろう、とかね。

 ちなみに私たちはカードの裏面のデザインを変えることでそれを解決しようと思っていた)、能力を誘発させる別の手段を模索することとなった。

 そして、最後には、戦場に出たときに誘発するという能力なら分かりやすいのでは、という結論に達した。しかし、この間、私たちはビジョンズの開発中のカードファイルを一度も確認していなかった。

 そのため、ビジョンズの開発チームが1年かそこら前にすでに辿り着いていた結論へようやくこのとき追いついたというわけさ。並行して進んだデザインであっても辿り着くべき場所にはどちらも辿り着く、という好例だね。

 《グレイブディガー/Gravedigger》に関するもう1つの小ネタとしては、テンペスト用にデザインされたこのカードを Bill Rose がポータル用に拝借していったことだ。

 ポータルはテンペストより数ヶ月早く発売されたため、結果として《グレイブディガー/Gravedigger》は「初出がポータルのカード」ということになってしまったわけさ。

Grindstone / 丸砥石 (1)
アーティファクト
(3),(T):プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分のライブラリーの一番上から2枚のカードを自分の墓地に置く。それらのカードが共通の色を持っている場合、この過程を繰り返す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Grindstone/

 テンペストでデザインしたカードの中でもこれはお気に入りの1枚だ。

 私は以前からランダムな効果について考えていた。既存のカードのランダムな効果はどれもこれもあまりに極端すぎた。コインの表が出たら大吉、裏が出たら大凶という感じだ。

 そうではなくて私が作りたかったのは、条件を満たせばどんどん効果が上乗せされていくような、1か0ではないカードだった。そしてそれとは別に当時考えていたのは、単色デッキに対して強いカードを作れないか、ということだった。

 というわけさ(土地を効果から外せば強すぎてバランスを崩すようなこともないな、ということも含めてね)

Hand to Hand / 白兵戦 (2)(赤)
エンチャント
戦闘中は、プレイヤーはインスタント呪文を唱えられず、マナ能力でない起動型能力は起動できない。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Hand+to+Hand/

 デザインしたときには想像もしなかった使われ方をするカードがある、というの例に使うのがこの《白兵戦/Hand to Hand》だ。

 このカードを作ったのは「私のクリーチャーたちは戦闘中だ、邪魔をするな」という意図だったわけだが、実際にはこのカードは防御円対策として使われることとなった(このカードが戦場に出ていると、防御円は戦闘中のダメージに対して起動できなくなってしまうんだ)。
(註) 防御円
 《赤の防御円/Circle of Protection: Red》に代表されるダメージ軽減用のエンチャントのこと。当時はダメージを受ける瞬間に軽減効果を使わないといけなかったので対策に使えた。今では無理。

 この予想外の使われ方は嬉しかったね。創造性バンザイってなもんだ。私の作ったカードでプレイヤーたちが新しい可能性を生み出してくれると私は喜びに顔を輝かせるわけさ。

Harrow / 砕土 (2)(緑)
インスタント
この呪文を唱えるための追加コストとして、土地を1つ生け贄に捧げる。
あなたのライブラリーから、基本土地カードを最大2枚まで探し、それらを戦場に出す。その後あなたのライブラリーを切り直す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Harrow/

 このカード(ちなみにデザインしている最中の仮の名は《輪作/Crop Rotation》だった。後に実際にそういう名前のカードが生まれるがそれはまた別の話だ)は、狙ったわけではないのに強いカードが生まれた例だ。

 テンペストで《不屈の自然/Rampant Growth》の亜種が必要となり、私がこのカードをデザインした。特に、強いカードを生み出そうという考えはなかった。面白いカードができたな、くらいの考えだった。

 カードを作るに当たって、これら2つの考え方は実は非常に興味深いことだ。カードをデザインする側は、いかに面白いカードを作れるかを考える。それに対して、デベロップメント側はゲームのバランスを考える。

 私の好きな言葉に「デザインはゲームを面白くし、デベロップメントがゲームを公平にする(the designers make the game fun and the developers make it fair)」というものがある。

 まあ、もって回った言い方をしたが、要するに多くの場合で私はカードを作るときに特にカードパワーは意識しない、ということだ。強すぎたり、弱すぎたりしたらデベロップメントがなんとかしてくれるからね。

Helm of Possession / 占有の兜 (4)
アーティファクト
あなたは、あなたのアンタップ・ステップに占有の兜をアンタップしないことを選んでもよい。
(2),(T),クリーチャーを1体、生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とする。あなたが占有の兜をコントロールし、なおかつ占有の兜がタップ状態であり続けるかぎり、あなたはそのクリーチャーのコントロールを得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Helm+of+Possession/

 このカードに関して本気で語ろうと思うと、とんでもなく長い話になる……が、残念ながら「Bacon/ベーコン」が発売されるまで話せないネタだ(ちなみに「Bacon/ベーコン」というのは2003年の秋に発売される大型エキスパンションのコードネームだ)。
(註) ベーコン
 2003年の秋に発売されたミラディンのこと。ここで言及しているのはおそらく《精神隷属器/Mindslaver》のことで、2015年のテンペストに関する記事(https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/twenty-things-you-might-not-have-known-about-tempest-2015-04-27)でもう少し詳しく触れられている。

 ただその話に登場するであろう単語を並べてみることくらいならできる。「Gleemax(グリーマックス)」「Concession(譲歩)」「Puzzle」「Marquee(看板役者)」「Unglued 2(アングル―ド2)」などだね。

 さて、それ以外で語れることがあるとすれば、そうだな、いまだかつて Henry Stern がデザインしたカードは2枚しかなく、これがその1枚だ、ってことかな(ちなみにもう1枚は《掘削機/Excavator》で、これまたテンペストのカードだ)。

Interdict / 阻止 (1)(青)
インスタント
アーティファクト1つかクリーチャー1体かエンチャント1つか土地1つからの起動型能力1つを対象とし、それを打ち消す。このターン、そのパーマネントの起動型能力は起動できない。(マナ能力は対象にできない。)
カードを1枚引く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Interdict/

 このカードについて語ることがあるとすれば、これは《Rust》(訳注:レジェンドに収録されていた緑の呪文で、アーティファクトのみ対象可能な《阻止/Interdict》)を見て思いついた、ということくらいだ。このサイトで滅多に言及されることのないカードだね。

Jinxed Idol / 凶運の彫像 (2)
アーティファクト
あなたのアップキープの開始時に、凶運の彫像はあなたに2点のダメージを与える。
クリーチャーを1体、生け贄に捧げる:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは凶運の彫像のコントロールを得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Jinxed+Idol/

 テンペストのカードの中で、個人的に自慢に思っているカードの1枚がこれだ。

 開発中は「アツアツのポテト」と呼ばれていたこのカードはソリティア防止のために作られた。このカードが戦場に出た瞬間から、君と対戦相手は通常の対戦とは別のゲームを並行して戦うことになるんだ。

 それは「どっちがより多く生け贄を捧げ続けられるかゲーム」だ。またこのカードは、私が「対戦相手に何かを押し付けるという効果」を好んでいることを表に出し始めた初期のカードでもある。

後編はこちら
https://regiant.diarynote.jp/201812040103497322/

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