【翻訳】フレイバーテキスト誕生秘話 ~ 村を焼いてしまったのを金で解決した話/The Write Stuff【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年03月18日
元記事:http://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/write-stuff-2002-03-18
フレイバーテキスト週間へようこそ。
え? そうだよ、今週はゲームの展開に直接影響することのない面からマジックをより深く理解してみようというわけだ。
なんでかって? そりゃもちろんマジックが単にクリーチャーで殴りあったりするだけのゲームじゃないからさ。マジックにはフレイバー(註)がある。
フレイバーがどこで発揮されているかというと、カード名、イラスト、そしてフレイバーテキストだ。前者2つは黙っていても日の目を見る代物だから、ここはあえて最後の1つ、フレイバーテキストに目を向けてみよう。
それにこれは今週末から公式サイトにデビューする予定の新機能「FlavOracle」(註)のお披露目の前準備でもある。
前にも書いたとおり、私の前職はライターだった。だからここでマジックのフレイバーテキストをいくつも書いてきたことは私の誇りにしている仕事の1つだ。
今週のコラムでは、特にお気に入りのフレイバーテキストのトップ10とそれらが書かれるに至った裏話を紹介したい。マジックのカードがどのように生み出されるのかをこれまで君たちに紹介してきたように、フレイバーテキストがどう生まれるのかをお見せしようじゃないか。
おっと、本題に入る前に1つだけ付け加えると、私がフレイバーテキストを担当しなくなってから随分経つ(他の仕事が面白すぎてね)。そのため以下に紹介するフレイバーテキストたちはミラージュブロックやテンペストブロックという少々古い時代のものが大半だ。
▼ 第10位:光明の守護者/Luminous Guardian (オデッセイ)
イメージ:https://scryfall.com/card/ody/31/luminous-guardian
フレイバーテキストで重要な点の1つは、いかに少ない文字数で大きなアイデアを表現できるかだ。さらにはそのテキストは簡潔であることに加えてリズムと流れも必要だ(要は響きだね)。
私が生み出してきたフレイバーテキストは多くあるが、そのうちどちらかといえば真面目な雰囲気を持つフレイバーテキストに限ればこれが特にお気に入りだ。
その理由は、まさに白のもつフレイバーをわずか6単語に収めることに成功しつつ、さらには頭韻を踏むことにも成功している点だ(キーとなる単語が同じ子音ではじまっているだろう?)
ここにフレイバーテキストの重要な点がもう1つ隠されている。それはそのカードの色の哲学がいかに豊かなものかをプレイヤーに伝えることだ。このカードのフレイバーテキストは白の重要な信念を表している。
そう、白は道徳的秩序を重んじており、この白の魔道士は崇高な使命を果たす責任があると信じている。黒とは違い、白にとって目的は手段を正当化せず、「勝利するか」よりも「どのように勝利するか」がさらに重要なのだ。
▼ 第9位:ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker (ウェザーライト)
イメージ:https://scryfall.com/card/wth/97/dwarven-berserker
前述した以外にもフレイバーテキストには多くの役割がある。その1つに、マジックというゲームの様々な側面からフレイバーを豊かなものにすることだ。
私のセファリッドに関するコラムを読んでくれた人なら知っているだろうが、私はドワーフの大ファンだ。しかしマジックのドワーフに関して私が常々懸念していることは、どうにも「ドワーフとはこういうもの」という共有されたイメージが存在しないことだ。
そこでウェザーライトでは、私が持っているドワーフのイメージをもっと前面に押し出してみようと試みた。
ドワーフとはなんぞや。それは赤だ。赤とは情熱だ。そこで私はこう考えた。ドワーフの世界では感情に流されることは珍しいことではないとしたら面白いんじゃないか、とね。
ドワーフたちは他の種族と同じように毎日働きに出る。しかし1つ違うのは、事あるごとにブチ切れるんだ。ドミナリアの他の種族はドワーフたちを腫れもの扱いしている。間違ってもドワーフたちをキレさせないようにね。
また同時に、ドワーフは常に劣等感によるコンプレックスを抱いているとしたらどうだろう、とも考えた。からかわれていると感じた瞬間、ドワーフたちはこれまたブチ切れるんだ。
そんな私のイメージを広めようという試みがこの《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》さ。残念ながらこのフレイバーはイマイチ定着せず、今もドワーフたちは自らのキャラを獲得するべく模索している。
▼ 第8位:平和な心/Pacifism (ミラージュ)
イメージ:https://scryfall.com/card/mir/32/pacifism
多くの場合、フレイバーテキストの担当者はカードイラストの完成を待たずしてテキストを書き上げることになる。しかしこのカードは数少ない例外で、この特徴的なイラストを参照しつつフレイバーテキストを書くことができた。
そう、イラストレーターの Rob Bliss は素晴らしい絵を描き上げてくれた。私としてはぜひそれに見合ったフレイバーテキストを書き上げねばと思ったわけだ。さて、どういう上記のフレイバーテキストはどういう経緯を辿って生まれたのか?
このイラストの最大のポイントはもちろん中央に立ち尽くしている怪物だ。フレイバーテキストはなんとしてもこのキャラについて語られている必要がある。
私はまずこのキャラを グラック/Grakk と名づけた。デカくて悪いやつであることがきちんと伝わるように、武骨で唸り声的な響きが欲しかったからだ。
次に考えたのは対比だ。このイラストの悪そうな風貌と対比となるような優しくて柔らかい雰囲気。それがこの魔法によって生まれたはずなのだ。
それらを合わせ考えて生まれたのが上記のフレイバーテキストだったわけだ……が、実はこのテキストは第2候補だった。私の第1候補は「しばらくしてグラックは彼らの母親を食べてしまったことに対して罪悪感がわいてきた」だった。
しかし残念ながらフレイバーテキスト班(どのテキストを採用するか決めるチーム)は、さすがにこれはちょっと、と思ったらしい。結果、今のフレイバーテキストが採用されたわけさ。
▼ 第7位:覚醒/Awakening (ストロングホールド)
イメージ:https://scryfall.com/card/sth/101/awakening
マジックのフレイバーテキストは、しばしば特定のキャラクターの口を借りたセリフの形で書かれることがある。例えばこのカードだ。これは、エルフの長であるエラダムリーが自身の配下を奮い立たせるために発した言葉だ。
ストロングホールドの背景ストーリーの中で、彼は部下であるエルフたちを勝ち目のない戦いへと送り出す必要に迫られたのだ。
このフレイバーテキストを書くに当たって、私は実在する政治家の名言を調べた。これだ、と思ったのは元大統領のジョン・F・ケネディの言葉だ。
私がケネディの演説で気に入った点は、彼が語っている問題をまさに聞き手自身にとっても解決せねばならない問題であると思わせるのがとても上手い点だ。
それと、このフレイバーテキストを書くに当たって初めから決めていたのは、その結びでエラダムリーが突撃を命ずることだ。
次に文章のリズムを整えるため、3拍子のスピーチを採用することにした(ライターの世界では3拍子のルールとして知られる手法だ)
さらにこのフレイバーテキストにはもう1つ、ちょっとしたネタが仕込んである。それが何かについては次の水曜日のコラムに書かれる予定だ。
▼ 第6位:ボトルのノーム/Bottle Gnomes (テンペスト)
イメージ:https://scryfall.com/card/tpr/217/bottle-gnomes
ウェザーライトの物語をフレイバーテキストで表現するに当たり、試みられたことがあった。主要なキャラクターの描写がきちんと統一されるように、ウェザーライトの各乗組員ごとに担当が割り振られたんだ。
私の担当はアーテイとカーンだった。アーテイは簡単だった。何しろ彼は隠そうとして隠しきれないほどのうぬぼれ屋という変人だったからね(水曜日に Ben Bleiweiss がもう少し詳しくアーテイについて教えてくれるだろう)
カーンはそれに比べると少し難しかった。
カーンは穏やかな巨人という役割を与えられていた。彼は大きな力を持ちつつも暴力を嫌っている。彼は戦士ではなく賢者だった。
そこで私はこのカーンのキャラを表現するために比喩やたとえ話を語らせてみてはどうだろうと考えた。たとえ話というか、要は訓話(教え諭すための短い話)だ。
カーンのフレイバーテキストの多くはこのアイデアに基づいて作られた。しかしフレイバーテキストで訓話を語らせるというのはなかなかの挑戦だった。何しろ2文か、長くても3文の中にその話を丸々収めないといけないからだ。
この《ボトルのノーム/Bottle Gnomes》のフレイバーテキストはカーンの訓話の中でも特にお気に入りの1つだ。とても心を打つ物語を非常に短い文章に込めることができたからね。
▼ 第5位:蠢く骸骨/Drudge Skeletons (第6版、第7版)
イメージ:https://scryfall.com/card/6ed/123/drudge-skeletons
さてちょっと真面目な文章が続いたので、そろそろユーモアあふれるフレイバーテキストを紹介しようか。
知ってる人もいるだろうが、私は元々コメディの脚本家として生計を立てていた。だからこれこそまさに私の得意分野だという自負がある。
この《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》のフレイバーテキストは、元々ウルザズ・サーガ版のために用意されたものだった。しかし残念ながらウルザズ・サーガ当時のフレイバーテキスト班はこれ以外の候補を採用してしまった。そこで第6版の際にあらためて提出してみたところ今度は採用されたという次第だ。
それはさておき、私はアンデッドとコメディはとてつもなく相性が良いと信じている。また私は黒のカードにブラックジョークを仕込むのが大好きだ。
このフレイバーテキストに関して1つ付け加えておくと、ネビニラルの名前を登場させたのは私のアイデアではない(念のため。嫌じゃないよ。むしろいいアイデアだと思ってる)。第6版に収録される際にその名を追加したのは Pete Venters だ。
対して私が著作権を主張できるのは「ネクロマンサーの手引き」のくだりだ。このタイトルはこのフレイバーテキストを考えているときに降ってわいたネタだ。新人のネクロマンサーはどうやって死体を蘇らせる術を学ぶんだろう?、とふと思ったんだ。
▼ 第4位 懺悔/Repentance (テンペスト)
イメージ:https://scryfall.com/card/tpr/25/repentance
前述のとおり、全てのウェザーライトの乗組員たちはそれぞれ決まった担当がつくことになったが、敵役たちについては特に担当が固定されることはなかった。
そんな敵役のフレイバーテキストに関して言えば、司令官グレヴェン・イル=ヴェクとヴァティ・イル=ダルのペアが登場する一連のシーンを3枚のカードを通して描写したものが、テンペストでの私の仕事の中でも珠玉の出来だと思っている。
シーンの全体像については明日のコラムを参照してもらうとして、それら3枚の中でも特に私の気に入ってるカードをここで紹介させてもらおう。
このカードのフレイバーテキストの一番の目的は、なんといってもグレヴェンというキャラを知らしめることだった。残酷さ、無愛想さ、そして無頓着さを同時に併せ持つという彼の独特な性格を表現したかったんだ。
もしテンペストというセットが映画化されたなら、このフレイバーテキストのセリフが名台詞として記憶されることになっただろうね。
▼ 第3位:Chicken a la King (アングルード)
イメージ:https://scryfall.com/card/ugl/17/chicken-%C3%A0-la-king
若い頃、私はよくコメディアンたちとコメディについて議論することがあった。コメディの原理としてよく挙げられるのは、コメディとはすなわち並置的である、ということで、より分かりやすく言えば、普通なら並べないもの2つを並べると面白くなる、ということだ。
この《Chicken a la King》のフレイバーテキストを考える前に、まずはカード名を決める必要があった。
私はアングルードにチキンのロードを入れたかった。何しろアングルードにおいてチキンは主要なテーマの1つだったからね。妻のローラ(当時はまだ婚約者だったが)の提案は「Chicken a la King はどうかしら(註)」だった。聞いた瞬間にこれしかないと思ったよ。
このカード名が決まったことで、フレイバーテキストではこいつが「King」であることに触れないわけにはいかない、と決めたんだ。
その「King」について考えていたとき、私はふとルイ16世のことが浮かんだ。そこからフランス革命が連想され、当然のようにギロチンという単語に行きついた。
そのとき閃いたんだ。
チキンが頭を落とされることわざがあるぞ(註)、とね。
そのことわざとギロチンにかけられる王とを思いついたあとは簡単だった。こうしてマジック史上でも有数のエレガントなフレイバーテキストが生まれたわけさ。
▼ 第2位:ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner (ミラージュ)
イメージ:https://scryfall.com/card/mir/169/dwarven-miner
私はときについついふざけてしまうという一面がある(驚かせてしまっただろうね。すまない)。アングルードではこの面を遺憾なく発揮する機会をもらったが、競技用マジックでは私のこの悪癖を披露することはほとんど出来ずにいる。
ヨーロッパの古い言い伝えとトールキンの生み出した神話において、ドワーフは鉱夫として生み出されている。ドワーフは地面を掘り返すのが好きなのだ。
そのとき私の頭に閃いたのは、リス(Gophers)も同様に地面を掘り返すということだ。ふむ、ドワーフがリスみたいに扱われてたら面白いんじゃなかろうか?
書き手というものは時が経つにつれて自身が過去に書いたものを不思議とより魅力的に感じられてくるものだ。理由はわからない。しかしこのフレイバーテキストは個人的に大傑作だと思っている。
あまりにも傑作だと思ったのでセットへ収録されるよう全身全霊を賭けた。知ってるかもしれないが、コメディにはどれくらい面白いかを表すグラフみたいなものがあるんだ。こんな感じだ。
ほんの少しだと面白い。それより少し多いとつまらない。度が過ぎるとまた面白い。
私の計画は実にシンプルなものだった。フレイバーテキストのメンバーが第3段階に届くまでひたすらこのジョークを押し通すこと。そんなわけで私は機会があるごとにこのジョークを繰り返したわけさ。メンバーたちが私に殺意を覚えはじめた数週間ののち、ついにジョークはまた面白さを増す段階に届いた。
この引用にいくつか付け加えておきたい。まずなんで私が登場人物にPakaという名前をつけたのかというと、響きがこのフレイバーテキストにふさわしく田舎者っぽかったからだ。
さらに虫殺しの薬の名前になぜ「Pestridder」というネーミングを用いた理由は、それが私が思いつける限りのファンタジーっぽい害虫駆除剤の名前だったからだ。そして「カブ(Rutabaga)」を選んだ理由はそれが野菜の中でも特に面白みを感じるものだったからだ。
ちょっと関係ない話をさせてくれ。私がまだ小さいころ、友達と「面白くない、面白い、とても面白い(Not Funny, Funny, Very Funny)」という遊びをしていた。遊び方は、まず1人がお題を決める(たとえば「野菜」のように)。別の1人がそのお題に当てはまるものを3つあげる。
1つ目には、面白くないものをあげなくてはいけない。2つ目は面白いもの、ただし面白すぎないものをあげないといけない。そして3つはとても面白いものをあげないといけない。もしお題が「野菜」だったら、以下のような感じだ。
お題「野菜!」
1つ目:
Corn/とうもろこし(面白くない)
2つ目:
Eggplant/ナス(面白い)
3つ目:
Rutabaga/カブ(とても面白い)
試しにもう1回やってみようか。
お題「動物!」
1つ目:
Bird/鳥(面白くない)
2つ目:
Cow/ウシ(面白い)
3つ目:
Platypus/カモノハシ(とても面白い)
みんなもぜひ遊んでみてくれ。
▼ 第1位:補償金/Reparations (ミラージュ)
イメージ:https://scryfall.com/card/mir/278/reparations
芸術家であれば誰もが思い出せる代表作があるものだ。私にとってはこれがそうだ。これこそ我がモナリザだ。
さてこの作品がどう生まれたのかを追っていこう。
あれは1996年の冬の早朝だった。私は一睡もせずにその朝を迎えていた。なぜ徹夜をする必要があったかというとマジックに関する本の締め切りが迫っていて、友人の Michael Ryan とそれにかかりっきりだったからだ(ちなみに本というのは雑誌デュエリストに連載されていた詰めマジック的なパズルをまとめたものだ)
Michael Ryan はその本の編集者で、最後の校正を念入りに行っているところだった。彼が全てのページを丹念にチェックし終えてくれたあと、あらためて「彼のチェックが正しかったかのチェック」を私が行う予定だった。
当然のように校正者としての彼の仕事の方が圧倒的に長くかかる予定だったので、私は暇を持て余していた。
さて、当時の私と彼はマジックの編集者であると同時に、ミラージュのフレイバーテキスト班でもあった。そしてミラージュのフレイバーテキストはまだ未完成だった。
そこで私は彼の仕事を待つ間に少し作業を進めておこうと考えた。しかし残念ながらそのときの私はあまりに寝不足で頭が回っていなかったんだ。
なので真面目にフレイバーテキストを考えるかわりに、作業中の Michael の受けを狙ったフレイバーテキストを考え始めた。
そのときフレイバーテキストが難航していたカードの1枚に《補償金/Reparations》があった。イラストはすでに受領済みだったので、何かヒントが得られないかとそれを眺めて見ることにした。
どんなイラストだったかは上のリンク先を見てくれ。正直、このイラストで何が起きているのか、皆目見当もつかなかったよ。
白人のプリーストと黒人の男女がいる。そのプリーストは目の前の2人に金貨の詰まった箱を差し出している。背後では何かが燃えている。つまり……どういうことだ?
このあまりに奇妙な場面を前に、私はとりあえず一番最初に浮かんだネタをそのまま書き出してみた。自分でも笑ってしまうなかなかのネタだったのでさっそく横にいた Michael にも披露してみた。Michael も腹が痛くなるほど笑ってくれた。
もちろんこれを提出するつもりはなかったので、書いた切れ端はどこかに放っておいた。いや、何しろ午前3時だったからね。大抵のネタで笑える時間だ。大体からしてこのネタをフレイバーテキスト班が受理するとは思えなかった。
しかし次の会議で、なぜか Michael が私が捨てたはずのそのネタを出してきた。会議に参加していた別のメンバーの Bill Rose も面白がってくれた。
ちなみに会議に参加していたメンバーは全員で4人だった。つまり私を含めて過半数がそれを面白いと思ったわけだ。フレイバーテキストはファイルに収められた。
とはいえ、さすがに実際のカードに載る前にはどこかで誰かが却下するだろうと思っていた……が、実際には誰も止めなかった。そんなわけで私の手がけたフレイバーテキストの中でも最も有名な一句が日の目を見たというわけさ。
さて今日のコラムはここまでだ。フレイバーテキストという短文の探検を堪能してもらえたなら幸いだ。来週はここに教授として登壇したいと思っている。時間割は「デザイン101」だ。
それまで君たちがマリガンせずに初手で望んだ土地を引けるよう祈ってるよ。
Mark Rosewater
Mark Rosewater
2002年03月18日
元記事:http://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/write-stuff-2002-03-18
フレイバーテキスト週間へようこそ。
え? そうだよ、今週はゲームの展開に直接影響することのない面からマジックをより深く理解してみようというわけだ。
なんでかって? そりゃもちろんマジックが単にクリーチャーで殴りあったりするだけのゲームじゃないからさ。マジックにはフレイバー(註)がある。
(註) フレイバー
ゲームのルールや進行には直接関係せず、世界観や雰囲気を伝える「香りづけ(Flavor)」のために存在する要素。気分を盛り上げたり、ゲームへの没入感を高めたり、そして間接的にルールや能力の理解をスムーズにしてくれたりもする。より広い意味では「飛行」という名称もフレイバー的な要素に当たる。
フレイバーがどこで発揮されているかというと、カード名、イラスト、そしてフレイバーテキストだ。前者2つは黙っていても日の目を見る代物だから、ここはあえて最後の1つ、フレイバーテキストに目を向けてみよう。
それにこれは今週末から公式サイトにデビューする予定の新機能「FlavOracle」(註)のお披露目の前準備でもある。
(註) FlavOracle
2002年03月22日の記事によると FlavOracle とはマジックのありとあらゆるカードのフレイバーテキストを、そう、フレイバーテキストが記載されていないカードのフレイバーテキストすらも(!)収録しているデータ集積所のことらしい。
ただし今現在はリンク切れで、本当に実在したことがあるのかも不明。
前にも書いたとおり、私の前職はライターだった。だからここでマジックのフレイバーテキストをいくつも書いてきたことは私の誇りにしている仕事の1つだ。
今週のコラムでは、特にお気に入りのフレイバーテキストのトップ10とそれらが書かれるに至った裏話を紹介したい。マジックのカードがどのように生み出されるのかをこれまで君たちに紹介してきたように、フレイバーテキストがどう生まれるのかをお見せしようじゃないか。
おっと、本題に入る前に1つだけ付け加えると、私がフレイバーテキストを担当しなくなってから随分経つ(他の仕事が面白すぎてね)。そのため以下に紹介するフレイバーテキストたちはミラージュブロックやテンペストブロックという少々古い時代のものが大半だ。
▼ 第10位:光明の守護者/Luminous Guardian (オデッセイ)
イメージ:https://scryfall.com/card/ody/31/luminous-guardian
原文:
“There is no victory without virtue.”
日本語訳:
徳のない勝利などあり得ない。
フレイバーテキストで重要な点の1つは、いかに少ない文字数で大きなアイデアを表現できるかだ。さらにはそのテキストは簡潔であることに加えてリズムと流れも必要だ(要は響きだね)。
私が生み出してきたフレイバーテキストは多くあるが、そのうちどちらかといえば真面目な雰囲気を持つフレイバーテキストに限ればこれが特にお気に入りだ。
その理由は、まさに白のもつフレイバーをわずか6単語に収めることに成功しつつ、さらには頭韻を踏むことにも成功している点だ(キーとなる単語が同じ子音ではじまっているだろう?)
ここにフレイバーテキストの重要な点がもう1つ隠されている。それはそのカードの色の哲学がいかに豊かなものかをプレイヤーに伝えることだ。このカードのフレイバーテキストは白の重要な信念を表している。
そう、白は道徳的秩序を重んじており、この白の魔道士は崇高な使命を果たす責任があると信じている。黒とは違い、白にとって目的は手段を正当化せず、「勝利するか」よりも「どのように勝利するか」がさらに重要なのだ。
▼ 第9位:ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker (ウェザーライト)
イメージ:https://scryfall.com/card/wth/97/dwarven-berserker
原文:
“I may be small, but I can kick your butt.”
日本語訳:
チビだと思っておれをなめると、痛い目を見るぞ。
前述した以外にもフレイバーテキストには多くの役割がある。その1つに、マジックというゲームの様々な側面からフレイバーを豊かなものにすることだ。
私のセファリッドに関するコラムを読んでくれた人なら知っているだろうが、私はドワーフの大ファンだ。しかしマジックのドワーフに関して私が常々懸念していることは、どうにも「ドワーフとはこういうもの」という共有されたイメージが存在しないことだ。
そこでウェザーライトでは、私が持っているドワーフのイメージをもっと前面に押し出してみようと試みた。
ドワーフとはなんぞや。それは赤だ。赤とは情熱だ。そこで私はこう考えた。ドワーフの世界では感情に流されることは珍しいことではないとしたら面白いんじゃないか、とね。
ドワーフたちは他の種族と同じように毎日働きに出る。しかし1つ違うのは、事あるごとにブチ切れるんだ。ドミナリアの他の種族はドワーフたちを腫れもの扱いしている。間違ってもドワーフたちをキレさせないようにね。
また同時に、ドワーフは常に劣等感によるコンプレックスを抱いているとしたらどうだろう、とも考えた。からかわれていると感じた瞬間、ドワーフたちはこれまたブチ切れるんだ。
そんな私のイメージを広めようという試みがこの《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》さ。残念ながらこのフレイバーはイマイチ定着せず、今もドワーフたちは自らのキャラを獲得するべく模索している。
▼ 第8位:平和な心/Pacifism (ミラージュ)
イメージ:https://scryfall.com/card/mir/32/pacifism
原文:
For the first time in his life, Grakk felt a little warm and fuzzy inside.
日本語訳:
グラックは生まれて初めて、ほんわかふわふわした気持ちになった。
多くの場合、フレイバーテキストの担当者はカードイラストの完成を待たずしてテキストを書き上げることになる。しかしこのカードは数少ない例外で、この特徴的なイラストを参照しつつフレイバーテキストを書くことができた。
そう、イラストレーターの Rob Bliss は素晴らしい絵を描き上げてくれた。私としてはぜひそれに見合ったフレイバーテキストを書き上げねばと思ったわけだ。さて、どういう上記のフレイバーテキストはどういう経緯を辿って生まれたのか?
このイラストの最大のポイントはもちろん中央に立ち尽くしている怪物だ。フレイバーテキストはなんとしてもこのキャラについて語られている必要がある。
私はまずこのキャラを グラック/Grakk と名づけた。デカくて悪いやつであることがきちんと伝わるように、武骨で唸り声的な響きが欲しかったからだ。
次に考えたのは対比だ。このイラストの悪そうな風貌と対比となるような優しくて柔らかい雰囲気。それがこの魔法によって生まれたはずなのだ。
それらを合わせ考えて生まれたのが上記のフレイバーテキストだったわけだ……が、実はこのテキストは第2候補だった。私の第1候補は「しばらくしてグラックは彼らの母親を食べてしまったことに対して罪悪感がわいてきた」だった。
しかし残念ながらフレイバーテキスト班(どのテキストを採用するか決めるチーム)は、さすがにこれはちょっと、と思ったらしい。結果、今のフレイバーテキストが採用されたわけさ。
▼ 第7位:覚醒/Awakening (ストロングホールド)
イメージ:https://scryfall.com/card/sth/101/awakening
原文:
"There are times when destiny calls forth a people and demands an action. Now is the time. We are the people. This is our action. Charge!”
-- Eladamri, Lord of Leaves
日本語訳:
人々を奮い立たせ、その人々に行動を要求するときというものがある。今がそのときだ。我々がその人々だ。これがその行動だ。行け!
――葉の王、エラダムリー
マジックのフレイバーテキストは、しばしば特定のキャラクターの口を借りたセリフの形で書かれることがある。例えばこのカードだ。これは、エルフの長であるエラダムリーが自身の配下を奮い立たせるために発した言葉だ。
ストロングホールドの背景ストーリーの中で、彼は部下であるエルフたちを勝ち目のない戦いへと送り出す必要に迫られたのだ。
このフレイバーテキストを書くに当たって、私は実在する政治家の名言を調べた。これだ、と思ったのは元大統領のジョン・F・ケネディの言葉だ。
私がケネディの演説で気に入った点は、彼が語っている問題をまさに聞き手自身にとっても解決せねばならない問題であると思わせるのがとても上手い点だ。
それと、このフレイバーテキストを書くに当たって初めから決めていたのは、その結びでエラダムリーが突撃を命ずることだ。
次に文章のリズムを整えるため、3拍子のスピーチを採用することにした(ライターの世界では3拍子のルールとして知られる手法だ)
さらにこのフレイバーテキストにはもう1つ、ちょっとしたネタが仕込んである。それが何かについては次の水曜日のコラムに書かれる予定だ。
▼ 第6位:ボトルのノーム/Bottle Gnomes (テンペスト)
イメージ:https://scryfall.com/card/tpr/217/bottle-gnomes
原文:
“I am reminded of the fable of the silver egg. Its owner cracks it open to see what jewels it holds, only to discover a simple yellow yolk.”
-- Karn, silver golem
日本語訳:
銀の卵の話を思い出すよ。卵の持ち主がどんな宝石が入っているかと殻を割ってみたら、普通の黄身が1つ入っていただけだったって話をね。
―銀のゴーレム、カーン
ウェザーライトの物語をフレイバーテキストで表現するに当たり、試みられたことがあった。主要なキャラクターの描写がきちんと統一されるように、ウェザーライトの各乗組員ごとに担当が割り振られたんだ。
私の担当はアーテイとカーンだった。アーテイは簡単だった。何しろ彼は隠そうとして隠しきれないほどのうぬぼれ屋という変人だったからね(水曜日に Ben Bleiweiss がもう少し詳しくアーテイについて教えてくれるだろう)
カーンはそれに比べると少し難しかった。
カーンは穏やかな巨人という役割を与えられていた。彼は大きな力を持ちつつも暴力を嫌っている。彼は戦士ではなく賢者だった。
そこで私はこのカーンのキャラを表現するために比喩やたとえ話を語らせてみてはどうだろうと考えた。たとえ話というか、要は訓話(教え諭すための短い話)だ。
カーンのフレイバーテキストの多くはこのアイデアに基づいて作られた。しかしフレイバーテキストで訓話を語らせるというのはなかなかの挑戦だった。何しろ2文か、長くても3文の中にその話を丸々収めないといけないからだ。
この《ボトルのノーム/Bottle Gnomes》のフレイバーテキストはカーンの訓話の中でも特にお気に入りの1つだ。とても心を打つ物語を非常に短い文章に込めることができたからね。
▼ 第5位:蠢く骸骨/Drudge Skeletons (第6版、第7版)
イメージ:https://scryfall.com/card/6ed/123/drudge-skeletons
原文:
“The dead make good soldiers. They can’t disobey orders, they never surrender, and they don’t stop fighting when a random body part falls off.”
--Nevinyrral, Necromancer’s Handbook
日本語訳:
死者は兵士に絶好である。 命令に逆らうこともなければ、降伏することもありえない。しかも、身体のどこかが取れたぐらいでは戦いをやめないのだから。
――ネビニラル「ネクロマンサーの手引き」
さてちょっと真面目な文章が続いたので、そろそろユーモアあふれるフレイバーテキストを紹介しようか。
知ってる人もいるだろうが、私は元々コメディの脚本家として生計を立てていた。だからこれこそまさに私の得意分野だという自負がある。
この《蠢く骸骨/Drudge Skeletons》のフレイバーテキストは、元々ウルザズ・サーガ版のために用意されたものだった。しかし残念ながらウルザズ・サーガ当時のフレイバーテキスト班はこれ以外の候補を採用してしまった。そこで第6版の際にあらためて提出してみたところ今度は採用されたという次第だ。
それはさておき、私はアンデッドとコメディはとてつもなく相性が良いと信じている。また私は黒のカードにブラックジョークを仕込むのが大好きだ。
このフレイバーテキストに関して1つ付け加えておくと、ネビニラルの名前を登場させたのは私のアイデアではない(念のため。嫌じゃないよ。むしろいいアイデアだと思ってる)。第6版に収録される際にその名を追加したのは Pete Venters だ。
対して私が著作権を主張できるのは「ネクロマンサーの手引き」のくだりだ。このタイトルはこのフレイバーテキストを考えているときに降ってわいたネタだ。新人のネクロマンサーはどうやって死体を蘇らせる術を学ぶんだろう?、とふと思ったんだ。
▼ 第4位 懺悔/Repentance (テンペスト)
イメージ:https://scryfall.com/card/tpr/25/repentance
原文:
“The cannon wasn’t aimed at you!” pleaded Vhati. “I’m not sure which is more pathetic,” replied Greven, “your judgment or your aim.”
日本語訳:
「大砲の照準はあなたに向けられていませんでした!」とヴァティは哀願した。 グレヴェンは答えた。「どっちが余計に頭に来るか、今迷っているんだ。お前の判断か、それともお前の照準か」
前述のとおり、全てのウェザーライトの乗組員たちはそれぞれ決まった担当がつくことになったが、敵役たちについては特に担当が固定されることはなかった。
そんな敵役のフレイバーテキストに関して言えば、司令官グレヴェン・イル=ヴェクとヴァティ・イル=ダルのペアが登場する一連のシーンを3枚のカードを通して描写したものが、テンペストでの私の仕事の中でも珠玉の出来だと思っている。
シーンの全体像については明日のコラムを参照してもらうとして、それら3枚の中でも特に私の気に入ってるカードをここで紹介させてもらおう。
このカードのフレイバーテキストの一番の目的は、なんといってもグレヴェンというキャラを知らしめることだった。残酷さ、無愛想さ、そして無頓着さを同時に併せ持つという彼の独特な性格を表現したかったんだ。
もしテンペストというセットが映画化されたなら、このフレイバーテキストのセリフが名台詞として記憶されることになっただろうね。
▼ 第3位:Chicken a la King (アングルード)
イメージ:https://scryfall.com/card/ugl/17/chicken-%C3%A0-la-king
原文:
During the Chicken Revolution, the king managed to keep his head while the others -- well, just ran around.
非公式訳:
チキン革命が起きたとき、他のニワトリがただトリ乱す中、チキンとしてたのは王だけであったそうな。
若い頃、私はよくコメディアンたちとコメディについて議論することがあった。コメディの原理としてよく挙げられるのは、コメディとはすなわち並置的である、ということで、より分かりやすく言えば、普通なら並べないもの2つを並べると面白くなる、ということだ。
この《Chicken a la King》のフレイバーテキストを考える前に、まずはカード名を決める必要があった。
私はアングルードにチキンのロードを入れたかった。何しろアングルードにおいてチキンは主要なテーマの1つだったからね。妻のローラ(当時はまだ婚約者だったが)の提案は「Chicken a la King はどうかしら(註)」だった。聞いた瞬間にこれしかないと思ったよ。
(註) Chicken a la King
「Chicken a la King」はチキンのクリーム煮を指す料理名。実際、Googleで「Chicken a la King」の画像検索をすると大量のチキンのクリーム煮の写真が出てくる。
このカード名が決まったことで、フレイバーテキストではこいつが「King」であることに触れないわけにはいかない、と決めたんだ。
その「King」について考えていたとき、私はふとルイ16世のことが浮かんだ。そこからフランス革命が連想され、当然のようにギロチンという単語に行きついた。
そのとき閃いたんだ。
チキンが頭を落とされることわざがあるぞ(註)、とね。
(註) ことわざ
英語には「run around like a chicken with its head cut off(頭を落とされたニワトリの身体が盲目的に走り回るように、右往左往すること)」ということわざがある。またそれとは別に「keep one’s head」で「冷静さを保つ」という意味を持つ。
そのことわざとギロチンにかけられる王とを思いついたあとは簡単だった。こうしてマジック史上でも有数のエレガントなフレイバーテキストが生まれたわけさ。
▼ 第2位:ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner (ミラージュ)
イメージ:https://scryfall.com/card/mir/169/dwarven-miner
原文:
“Fetch the pestridder, Paka -- we’ve got dwarves in the rutabagas!”
-- Jamul, Femeref farmer
日本語訳:
パカ、虫殺しの薬を持ってきてくれ ――― カブがドワーフにやられとる!
――― フェメレフの農夫、ジャムール
私はときについついふざけてしまうという一面がある(驚かせてしまっただろうね。すまない)。アングルードではこの面を遺憾なく発揮する機会をもらったが、競技用マジックでは私のこの悪癖を披露することはほとんど出来ずにいる。
ヨーロッパの古い言い伝えとトールキンの生み出した神話において、ドワーフは鉱夫として生み出されている。ドワーフは地面を掘り返すのが好きなのだ。
そのとき私の頭に閃いたのは、リス(Gophers)も同様に地面を掘り返すということだ。ふむ、ドワーフがリスみたいに扱われてたら面白いんじゃなかろうか?
書き手というものは時が経つにつれて自身が過去に書いたものを不思議とより魅力的に感じられてくるものだ。理由はわからない。しかしこのフレイバーテキストは個人的に大傑作だと思っている。
あまりにも傑作だと思ったのでセットへ収録されるよう全身全霊を賭けた。知ってるかもしれないが、コメディにはどれくらい面白いかを表すグラフみたいなものがあるんだ。こんな感じだ。
ほんの少しだと面白い。それより少し多いとつまらない。度が過ぎるとまた面白い。
私の計画は実にシンプルなものだった。フレイバーテキストのメンバーが第3段階に届くまでひたすらこのジョークを押し通すこと。そんなわけで私は機会があるごとにこのジョークを繰り返したわけさ。メンバーたちが私に殺意を覚えはじめた数週間ののち、ついにジョークはまた面白さを増す段階に届いた。
この引用にいくつか付け加えておきたい。まずなんで私が登場人物にPakaという名前をつけたのかというと、響きがこのフレイバーテキストにふさわしく田舎者っぽかったからだ。
さらに虫殺しの薬の名前になぜ「Pestridder」というネーミングを用いた理由は、それが私が思いつける限りのファンタジーっぽい害虫駆除剤の名前だったからだ。そして「カブ(Rutabaga)」を選んだ理由はそれが野菜の中でも特に面白みを感じるものだったからだ。
ちょっと関係ない話をさせてくれ。私がまだ小さいころ、友達と「面白くない、面白い、とても面白い(Not Funny, Funny, Very Funny)」という遊びをしていた。遊び方は、まず1人がお題を決める(たとえば「野菜」のように)。別の1人がそのお題に当てはまるものを3つあげる。
1つ目には、面白くないものをあげなくてはいけない。2つ目は面白いもの、ただし面白すぎないものをあげないといけない。そして3つはとても面白いものをあげないといけない。もしお題が「野菜」だったら、以下のような感じだ。
お題「野菜!」
1つ目:
Corn/とうもろこし(面白くない)
2つ目:
Eggplant/ナス(面白い)
3つ目:
Rutabaga/カブ(とても面白い)
試しにもう1回やってみようか。
お題「動物!」
1つ目:
Bird/鳥(面白くない)
2つ目:
Cow/ウシ(面白い)
3つ目:
Platypus/カモノハシ(とても面白い)
みんなもぜひ遊んでみてくれ。
▼ 第1位:補償金/Reparations (ミラージュ)
イメージ:https://scryfall.com/card/mir/278/reparations
原文:
"Sorry I burned down your village. Here’s some gold."
日本語訳:
失礼、村を焼いてしまった。この金で別の村でも……。
芸術家であれば誰もが思い出せる代表作があるものだ。私にとってはこれがそうだ。これこそ我がモナリザだ。
さてこの作品がどう生まれたのかを追っていこう。
あれは1996年の冬の早朝だった。私は一睡もせずにその朝を迎えていた。なぜ徹夜をする必要があったかというとマジックに関する本の締め切りが迫っていて、友人の Michael Ryan とそれにかかりっきりだったからだ(ちなみに本というのは雑誌デュエリストに連載されていた詰めマジック的なパズルをまとめたものだ)
Michael Ryan はその本の編集者で、最後の校正を念入りに行っているところだった。彼が全てのページを丹念にチェックし終えてくれたあと、あらためて「彼のチェックが正しかったかのチェック」を私が行う予定だった。
当然のように校正者としての彼の仕事の方が圧倒的に長くかかる予定だったので、私は暇を持て余していた。
さて、当時の私と彼はマジックの編集者であると同時に、ミラージュのフレイバーテキスト班でもあった。そしてミラージュのフレイバーテキストはまだ未完成だった。
そこで私は彼の仕事を待つ間に少し作業を進めておこうと考えた。しかし残念ながらそのときの私はあまりに寝不足で頭が回っていなかったんだ。
なので真面目にフレイバーテキストを考えるかわりに、作業中の Michael の受けを狙ったフレイバーテキストを考え始めた。
そのときフレイバーテキストが難航していたカードの1枚に《補償金/Reparations》があった。イラストはすでに受領済みだったので、何かヒントが得られないかとそれを眺めて見ることにした。
どんなイラストだったかは上のリンク先を見てくれ。正直、このイラストで何が起きているのか、皆目見当もつかなかったよ。
白人のプリーストと黒人の男女がいる。そのプリーストは目の前の2人に金貨の詰まった箱を差し出している。背後では何かが燃えている。つまり……どういうことだ?
このあまりに奇妙な場面を前に、私はとりあえず一番最初に浮かんだネタをそのまま書き出してみた。自分でも笑ってしまうなかなかのネタだったのでさっそく横にいた Michael にも披露してみた。Michael も腹が痛くなるほど笑ってくれた。
もちろんこれを提出するつもりはなかったので、書いた切れ端はどこかに放っておいた。いや、何しろ午前3時だったからね。大抵のネタで笑える時間だ。大体からしてこのネタをフレイバーテキスト班が受理するとは思えなかった。
しかし次の会議で、なぜか Michael が私が捨てたはずのそのネタを出してきた。会議に参加していた別のメンバーの Bill Rose も面白がってくれた。
ちなみに会議に参加していたメンバーは全員で4人だった。つまり私を含めて過半数がそれを面白いと思ったわけだ。フレイバーテキストはファイルに収められた。
とはいえ、さすがに実際のカードに載る前にはどこかで誰かが却下するだろうと思っていた……が、実際には誰も止めなかった。そんなわけで私の手がけたフレイバーテキストの中でも最も有名な一句が日の目を見たというわけさ。
さて今日のコラムはここまでだ。フレイバーテキストという短文の探検を堪能してもらえたなら幸いだ。来週はここに教授として登壇したいと思っている。時間割は「デザイン101」だ。
それまで君たちがマリガンせずに初手で望んだ土地を引けるよう祈ってるよ。
Mark Rosewater
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