先日アップした以下の記事の訳の苦労した点というか、楽しんだ点というか。

  開発中のセットに付けられるコードネームの歴史/Codename of the Game
  https://regiant.diarynote.jp/201907122033045570/

 言い訳がましくならないように気を付けつつ。

 まずタイトルについて書いてみる。タイトルの原文は「Codename of the Game」で、英語の慣用句の「Name of the Game」をネタにしている(意味は「最も重要な点」「一番肝心なこと」)。

 本当に上手い人だったら日本語の慣用句やことわざの一部を「コードネーム」という単語に置き換えつつ、元の意味が伝わるようなタイトルを思い付けるんだろうな、とか考えつつ、素直に内容を表すタイトルにしてしまった(白旗)

原文:
 Over last few weeks, I’ve covered mostly "big issues" in my column. This week, I thought it would be fun to examine a small issue
拙訳:
 実のところ、ここ数回に渡って非常に「重たい」内容の記事が続いてしまった。そこで今週は少し「軽い」内容を扱ってもいいかと思った次第だ。

 原文では「Big / Small」となっている対比語を「重たい/軽い」と訳してみた。そのまま「大きな話題、小さな話題」という手もあったかもしれないけど「深刻な、真剣な」という意味での「Big」っぽかったので。

原文:
 But eventually, you end up with a set named The Dark. This isn’t meant as a slight to that expansion.
拙訳:
 しかし結局はこの慣習のせいでザ・ダークという名前のセットが生まれてしまった。別にセットに問題があったわけじゃない。

 気になっているのは後半部分の「isn’t meant as a slight to」のくだり。正直、この文章単体で見ると、よく意味が分からなかった。個々の単語は知ってる言葉なんだけど……。

 ただ、前後の内容を見るに「end up with みたいな否定的な書き方をしてるけど that expansion に対する何か意図があって(= meant)言ったわけじゃないよ」という意味にしかとれなかったのでそう訳した次第。

原文:
 Coming this fall to a store near you . . . The Dark. (ooooh) What’s it about? Well, um, it’s in Dominaria and it’s very . . . dark (ooooh). Things are hard to see. Scary things. In the dark (ooooh).
拙訳:
 この秋に君たちの元に届くであろう新セット、その名はザ・ダーク!(うおー!)どんなセットかって? えーと、うん、舞台はドミナリアで、とても……ダークな感じだ。(おおー)色々と見えづらくてね。ホラーな感じもあって……ダークな感じで。(おお……)

 もしかしたら今回の記事で一番苦労した箇所かもしれない。見ての通り、原文だと間に挟まっているツッコミ(?)は全部同じにも関わらず、訳では(勝手に)徐々にトーンダウンしていってる。

 色々と思考が行ったり来たりした挙句に上記の訳にしたんだけど、おそらく原文の「Ooooh」は著者自身が入れてる合いの手のようなものではないかと思う。

 英語でホラー話や何か恐い話をするとき(もしくはされたとき)に入れる効果音的な言葉があって、それが「Ooooh」。音としては「オォー」ではなく「ウゥー」。

 日本語で言うと……なかなか例を挙げづらいんだけど……あえていえば「ひゅ~どろどろ~」みたいな? 「Dark」というホラー的な単語をからかう意味で入れてるのかなあ。

 ただそれを日本語して、さらには各文の末尾に放り込んであっても自然な日本語として読めるようにする、という手段がどうしても思いつかず、最終的には原文の「形」だけ借りたうえで、プレイヤーたちの反応として訳している。

 うーん。いっそ、カッコ部分だけ全部見なかったことにするという手もあったかもしれない(ダメだよ)

原文:
 As I explained in a previous column, early codenames were named after Macintosh sound files. That way, when an R&D member clicked open the set folder, the computer (back then they were all Macs) would make a sound.
拙訳:
 以前、私のコラムで紹介したとおり、初期の開発中セットのコードネームはマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名からとられた。開発部のメンバーがコンピュータ(当時は全てマッキントッシュだった)を立ち上げ、開発ファイルの入ったフォルダを開くとその音が鳴るわけだ。

 ここの訳がどうこうというより、ここから長々と続くマッキントッシュ(マック)関係のくだり全体に関しては、アップル社の訴訟の話とか実際にあった話が絡むので色々と確認しながらの訳だった。

 やっぱり実話が元ネタとなると嘘を書くわけにもいかないので確認は必要だし、このコラムで紹介されてる逸話が実は間違ってたらそれも合わせて確認しておくべきと思われるし……。

 ただ、今回のマックの話のようにネットでも話題になったことがあり検索すれば情報が得られるからいいけど、ネットにも情報の無いような話となると限界が生じてくる(以前訳した、すでに亡くなられているマジックプレイヤーの逸話とか)

原文:
 This is the set at which time R&D decided that Macintosh sound file names had run their course.
拙訳:
 コードネームにマッキントッシュのシステム用サウンドファイル名を使おうというネタの継続を開発部が諦めたのはこのセットからだ。諦めた理由はごく単純で、サウンドファイル名のストックが尽きたからだ。

 この箇所については2点ある。1点目としては原文の最後にある「~ has run its course」という言い方。これは「~ が自然消滅する、~ が自然な結果となる」というような意味らしい。知らなかった。

 2点目としては、見ての通り、かなり日本語側だけが長くなっている。原文はそのまま訳すと「マッキントッシュの音声ファイルを自然と消滅させることを開発部が決断した」みたいな文章になってしまい、良く意味が分からない。

 意味が自然な日本語になるようにしよう、と言い換えたり、付け加えたり、を繰り返していたら上記の文章になった。読みやすい(分かりやすい)と思うんだけど……はてさて。

原文:
 When I asked Mike about the name, he told me that it was from Indian (India as opposed to American Indian) mythology.
拙訳:
 作成者のマイクにカード名称の由来について尋ねたところ、マイクは「インドの神話が元ネタだ」と教えてくれた。

 英語で「インドの」は「Indian」となるけど、このままだといわゆるネイティブアメリカンを指しての「Indian」なのか、インドを指しているのか、が分からなくなるため、原文では注記が入ってる。

 ……けど、これ、日本語だと不要なんだよね。無理をすれば「インディアンの神話が元ネタだよ」「インディアン? いわゆるネイティブアメリカンか」「いや、そっちじゃない、本当のインディアン(インド人)だよ」という会話で表現できなくもないけど、さすがに原文からかけ離れ過ぎる。

 話の流れに関わるようなネタでもないのでバッサリ切った。

原文:
 Here’s a trivia question that will someday make its way onto "Question Mark" (a daily trivia column I do on sideboard.com)
拙訳:
 私は別サイトでトリビアネタのコラム「Question Mark」を連載しているんだが(ちなみにsideboard.comだ)、そこでいつか使うかもしれないクイズのネタをここで披露しよう。

 見ての通り、カッコ内の補足などは原文とは違った語順で訳している。無理に原文通りに文末に持ってこようとすると補足したい箇所から遠くなって、逆に意味が分かりづらくなる(気がする)から。

 ただわざわざこの箇所を紹介しようと思ったのはそれを説明したいからではなくて、ここで言及されている sideboard.com という今は亡きサイトが無ければ、このブログも無かった、という話。

 正しく言うと……

 1. Sideboard Online というマジックの公式サイトがあった
 2. その和訳版である Sideboard Online Japan も作られた
 3. でも日本語版のサイトは更新が途切れがちだった
 4. 2chのSideboard Online Japanスレで不平不満があふれた
 5. しまいにはスレで「自分らで勝手に訳すか」という話が出た
 6. いつのまにかスレは英語マジック記事の翻訳スレになった
 7. 翻訳された文章をまとめるサイト「Braingeyser」が作られた

 ……という流れがあったことなど何も知らずにその「Braingeyser」という翻訳記事サイトに偶然流れついて記事を読みふけり、自分でも訳すようになり、さらにそこから Diarynote の存在を知り……という流れで今ここにいる次第。

 Card of the Day の翻訳を始めたのにはさらに Abomination.jp というサイトの存在も大きかったけど、ただでさえ逸れている話がさらに話が逸れてしまうので省略。

原文:
 Also, I think this name might have been yet another poke at Spellfire; we kept joking about how we needed to make a "cheesy" expansion.
拙訳:
 これもダンジョンズアンドドラゴンズTCG「Spellfire」が元ネタだったかもしれないし、そうでなければ単に当時「そろそろ『味の濃い』セットを作らないな」と冗談めかして言っていたことが原因かもしれない。

 「Spellfire」が元ネタだったかもしれないことと「そろそろ Cheesy なセットを作らないとな」ということは(訳したほうでは2つの別の話として扱っているけど)原文では1つのことのようにも見える。セミコロンだし。

 でも「Spellfire を元ネタにすること」がどのように「Cheesy であること」につながるのかイマイチ分からなかったので、諦めて上記のように訳した。何しろ「Spellfire」がどんなカードゲームなのか全然知らないので。

 あらためて思うと「Cheesy」には「チーズっぽい(味がきつい、臭いが強い)」という意味以外に「派手な、くだらない」という意味もあることを考えると、これは銀枠セットの開発を匂わせてたのかもしれない。

 最初の銀枠セット(公式大会で使えない銀枠のジョークカードのセット)であるアングル―ドとストロングホールドは両方とも1998年の発売だし。

原文:
 This was the first codename not created by R&D. The Magic Brand team was talking about some future set and made up a name because it didn’t have one yet.
 R&D has since cracked down on this and is now the current keeper of the codenames.
拙訳:
 開発部以外がコードネームを決めた最初のセットがこれだ。マジックのブランドチームが未来のセットについて話す必要が生じて際に、そのセットに仮の名前として Armadillo と付けた。
 しかし開発部としては、コードネームを決めるのはうちらの分野だという意地があったから、この勝手な行動を厳しく取り締まり、以降そういうことはなくなった

 長々と引用したけど、原文の意味がなかなか取れなくて困ったのは「R&D has since cracked down on this and is now the current keeper of the codenames.」の箇所。

 「開発部はそれを厳しく取り締まった」「今ではコードネームの管理者となった」と読めるけど、それだとなんか変な気がする。当時から管理者だったのなら取り締まる理由は分かるけど、当時管理者じゃなかったなら厳しく取り締まる立場じゃないわけで……うーん。前後してしまう。

 考え過ぎてる気もする。

原文:
 Why elements? I have no idea. But, hey, who says science never sees use later in life?
拙訳:
 しかしなぜ元素名にしたのか……見当もつかない。いずれにせよ「化学なんて人生で使い道ないだろ」って言う人は考えを改めないといけないね。

 疑問符を使わなかったり、カッコを使ったり、色々と原文どおりになっていないけど、元の文章のニュアンス(ノリ)はそこそこ上手く訳せたんでないかと思った(自画自賛)

コメント

M中
2019年7月15日1:27

>タイトル
 コードネームってカタカナ語を何かしらブッコむのは難しそうですね。name[neim],game[geim]の音の響きを重視して記事内容と合わせた題訳にするなら「暗号、探訪」とかでしょうか。

>isn’t meant as a slight to
 ここのslightは名詞なので「軽蔑」の意味ですね。セットにケチつけた訳じゃないよ、ぐらいの文意では。
 

re-giant
2019年7月15日9:00

コメントありがとうございます。

>コードネームってカタカナ語を何かしらブッコむのは難しそうですね

ですよね……ところで関係ないですけど「暗号」とか「探訪」とかってキーワード能力っぽいですね(暗号は実在したような)

>ここのslightは名詞なので「軽蔑」の意味

調べたら Slight って、形容詞・名詞・動詞があるんですね……まだまだ先は長いな……

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