【非MTG翻訳】バニラ嫌いの車を治すことになったエンジニアの話/Car Allergic to Vanilla Ice Cream
ソース:Stephen Mann
元記事:http://beza1e1.tuxen.de/lore/allergic_car.html
私たちエンジニアは知っている。簡単に見える問題が簡単に片付かないこともあり、また、どんなに馬鹿げて見えようが真実は常に真実であることも。
さて、アメリカの大企業、ゼネラルモーターズのポンティアック部門へ届いた苦情は以下の通りだ(訳注:ポンティアックは自動車のブランド。2010年以降は作られていない)。
「私がこの件でお問い合わせするのは2回目です。しかし実のところお返事を頂けないのは仕方のないことだとも思っております。何しろ書いている私自身が馬鹿馬鹿しいと思ってしまうような問題だからです。
しかしそれでもこれは事実なのです。
まず私たち家族が毎晩の夕食のあとにデザートとしてアイスクリームを食べるという習慣があることをご紹介させてください。
もちろんアイスクリームと一言に言いましても様々な種類があります。そこで毎晩の夕飯のあとに私たち家族はまず今晩はどの味を食べたいかの投票を行います。それからあらためて私が店まで車を走らせてアイスクリームを買ってくるわけです。
これらは事実です。さらに私がつい最近、ポンティアックを購入させていただいたことも事実です。そして問題が始まったのがこのポンティアックを買ってからだということもまた事実なのです。
どういうことかと言いますと、このポンティアックはバニラ味のアイスクリームを買って店から帰ろうとするときだけ決まってエンストを起こすのです。他の味のアイスクリームを買ったときは問題なく発進できます。
馬鹿馬鹿しく聞こえることは重々承知のうえで、私は真剣にこの問題で悩んでいるということをお伝えしたいと思います。
教えてください。なぜポンティアックはバニラアイスを買ったときだけエンストを起こし、他の味のアイスクリームならば問題なく走れるのですか?」
この問い合わせを受け取ったポンティアック部門のトップは、当然ながらその内容には懐疑的であった。しかしいずれにせよ現場へとエンジニアを送り出すことにした。
さてそのエンジニアがまず驚かされたのは、出迎えた相手が教養あふれる真面目で裕福な男性であったことだ。
エンジニアは訪問のタイミングを夕食の直後に設定していたので、さっそく2人は車に乗ってアイスクリームを買いに出かけた。その晩に購入する予定のアイスはバニラ味であった。
そして店外の車に戻ってきた2人はエンストに見舞われた。
エンジニアはそれから3日連続で男性の家を訪ねた。次の夜はチョコレート味を買いに行き、車は問題なく発進できた。その次の夜はストロベリー味を買いに行き、車は問題なく発進できた。さらにその次の夜はバニラ味を買いに行き、車はエンストを起こした。
エンジニアは合理的な男だった。そのため、その車がバニラアレルギーである、などという結論で問題を片付けるつもりはなく、彼は原因を突き止めるまで足しげく男性の家に通い続けた。
その間、彼はメモを取り続けた。全てのデータを記録した。アイスを買いに行く時刻、用いているガソリンの種類、往復にかかった時間、などなど。
エンジニアがあることに気づくのにそう時間はかからなかった。バニラ味を買うのにかかる時間だけ、他の味を買うときよりも短かったのだ。
なぜそのようなことが起きうるのか。
それはアイスを売っている店の商品の配置に理由があった。その店ではバニラ味がもっともよく売れる商品だったので、客が手早くカゴに入れられるように店の入り口近くにバニラ専用のコーナーが設けられていたのだ。
それに対して他の味は店の奥の方に置かれており、それぞれ個別のコーナーも用意されておらず、結果として購入してから店を出るまでにかかる時間がバニラ味のときよりも長くかかった。
さて次の問題は、なぜ停めている時間が短いときだけ車を発進できなくなるのか、ということだったが、しかし(バニラ味が問題ではなく)時間が問題だと分かったことでエンジニアはすぐに答えに辿り着けた。
原因は蒸気閉塞だった。俗にベーパーロック現象とも呼ばれるこの問題は過熱され過ぎた液体から生じる泡が原因で発生する。
そして実のところ、男性の車には毎回この現象が発生していた。しかし長く停車しておけたとき(そう、バニラ味以外のアイスクリームを購入したとき)だけ加熱が収まり、問題なく車を発進できていたのだ。
そう。バニラ味を購入したときだけエンジンの冷却が不十分となりベーパーロック現象が解消されずエンストが発生してしまっていた、というのがこの問題の正体であった。
教訓:馬鹿げた苦情が真実の場合もある
(原文註:
この話は元々以下のサイト、Snopesにて明らかになったものだ
https://www.snopes.com/fact-check/cone-of-silence/ )
ソース:Stephen Mann
元記事:http://beza1e1.tuxen.de/lore/allergic_car.html
私たちエンジニアは知っている。簡単に見える問題が簡単に片付かないこともあり、また、どんなに馬鹿げて見えようが真実は常に真実であることも。
さて、アメリカの大企業、ゼネラルモーターズのポンティアック部門へ届いた苦情は以下の通りだ(訳注:ポンティアックは自動車のブランド。2010年以降は作られていない)。
「私がこの件でお問い合わせするのは2回目です。しかし実のところお返事を頂けないのは仕方のないことだとも思っております。何しろ書いている私自身が馬鹿馬鹿しいと思ってしまうような問題だからです。
しかしそれでもこれは事実なのです。
まず私たち家族が毎晩の夕食のあとにデザートとしてアイスクリームを食べるという習慣があることをご紹介させてください。
もちろんアイスクリームと一言に言いましても様々な種類があります。そこで毎晩の夕飯のあとに私たち家族はまず今晩はどの味を食べたいかの投票を行います。それからあらためて私が店まで車を走らせてアイスクリームを買ってくるわけです。
これらは事実です。さらに私がつい最近、ポンティアックを購入させていただいたことも事実です。そして問題が始まったのがこのポンティアックを買ってからだということもまた事実なのです。
どういうことかと言いますと、このポンティアックはバニラ味のアイスクリームを買って店から帰ろうとするときだけ決まってエンストを起こすのです。他の味のアイスクリームを買ったときは問題なく発進できます。
馬鹿馬鹿しく聞こえることは重々承知のうえで、私は真剣にこの問題で悩んでいるということをお伝えしたいと思います。
教えてください。なぜポンティアックはバニラアイスを買ったときだけエンストを起こし、他の味のアイスクリームならば問題なく走れるのですか?」
この問い合わせを受け取ったポンティアック部門のトップは、当然ながらその内容には懐疑的であった。しかしいずれにせよ現場へとエンジニアを送り出すことにした。
さてそのエンジニアがまず驚かされたのは、出迎えた相手が教養あふれる真面目で裕福な男性であったことだ。
エンジニアは訪問のタイミングを夕食の直後に設定していたので、さっそく2人は車に乗ってアイスクリームを買いに出かけた。その晩に購入する予定のアイスはバニラ味であった。
そして店外の車に戻ってきた2人はエンストに見舞われた。
エンジニアはそれから3日連続で男性の家を訪ねた。次の夜はチョコレート味を買いに行き、車は問題なく発進できた。その次の夜はストロベリー味を買いに行き、車は問題なく発進できた。さらにその次の夜はバニラ味を買いに行き、車はエンストを起こした。
エンジニアは合理的な男だった。そのため、その車がバニラアレルギーである、などという結論で問題を片付けるつもりはなく、彼は原因を突き止めるまで足しげく男性の家に通い続けた。
その間、彼はメモを取り続けた。全てのデータを記録した。アイスを買いに行く時刻、用いているガソリンの種類、往復にかかった時間、などなど。
エンジニアがあることに気づくのにそう時間はかからなかった。バニラ味を買うのにかかる時間だけ、他の味を買うときよりも短かったのだ。
なぜそのようなことが起きうるのか。
それはアイスを売っている店の商品の配置に理由があった。その店ではバニラ味がもっともよく売れる商品だったので、客が手早くカゴに入れられるように店の入り口近くにバニラ専用のコーナーが設けられていたのだ。
それに対して他の味は店の奥の方に置かれており、それぞれ個別のコーナーも用意されておらず、結果として購入してから店を出るまでにかかる時間がバニラ味のときよりも長くかかった。
さて次の問題は、なぜ停めている時間が短いときだけ車を発進できなくなるのか、ということだったが、しかし(バニラ味が問題ではなく)時間が問題だと分かったことでエンジニアはすぐに答えに辿り着けた。
原因は蒸気閉塞だった。俗にベーパーロック現象とも呼ばれるこの問題は過熱され過ぎた液体から生じる泡が原因で発生する。
そして実のところ、男性の車には毎回この現象が発生していた。しかし長く停車しておけたとき(そう、バニラ味以外のアイスクリームを購入したとき)だけ加熱が収まり、問題なく車を発進できていたのだ。
そう。バニラ味を購入したときだけエンジンの冷却が不十分となりベーパーロック現象が解消されずエンストが発生してしまっていた、というのがこの問題の正体であった。
教訓:馬鹿げた苦情が真実の場合もある
(原文註:
この話は元々以下のサイト、Snopesにて明らかになったものだ
https://www.snopes.com/fact-check/cone-of-silence/ )
コメント
同じく面白いと思った話なので訳してみたので嬉しいです。
1点「?」となった“ガスの種類(type of gas)”ですが
恐らくガソリンのことでしょうね
> 恐らくガソリンのことでしょうね
おー、なるほど。なんの迷いもなく訳してしまいましたが、それですね。
気が向いたら修正しておきたいと思います。ありがとうございました。