【翻訳】イースターエッグをお届け/All in One Basket【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年04月01日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/all-one-basket-2002-04-01

 マジックエッグ週間にようこそ! 復活祭のイースターということで復活と再誕のシンボルである卵(Egg)を今週のテーマにしたいと思っている。ああ、大丈夫さ、一週間の献立に困らないだけの卵ネタがマジックにはあるからね。

 どんな卵ネタが披露されるか紹介しておこう。アンソニーは、多人数プレイにおける《三畳紀の卵/Triassic Egg》がいかにぶっ壊れかを解説してくれる予定だ。ベンは、《不明の卵/Dingus Egg》から今に至るまで、マジックにおける卵の歴史をたどる旅に連れていってくれる。

 続けてジェイが、アラビアンナイトの《ルフ鳥の卵/Rukh Egg》とアングル―ドの《Chicken Egg》を使ったデッキの可能性を紹介してくれることになっており、そしてランディが《ダークウォーターの卵/Darkwater Egg》の開発秘話で週を締めくくる予定だ。

 私の担当はおそらく一番面白いネタだろうね。ジャッジメントにおける卵関連のトリビアネタを紹介したいと思っているよ。……え? ジャッジメントと卵になんの関係があるんだ、って?

 よしよし、じゃあ、さっそく卵探しの旅に出かけようか。振り落とされないようちゃんとシートベルトを締めておいてくれ。さあ、出発だ!


 ことの始まりはおよそ1年前のことだ。私は開発部のリーダーであるビル・ローズと一緒に会社の一室にいた。これから開発に着手する予定のジャッジメントをどんなセットにするかについて話し合うためだ。

 直前のトーメントは「黒いセット」という売り(註)を持つことでプレイヤーたちの興味を引く予定だった。そこで私たちはジャッジメントにもそういった「引き」が必要だと考えていた。
(註) 黒いセット
 トーメントは通常のセットであれば各色平均的に収録されているところ、「黒 40枚/青 28枚/赤 28枚/白 21枚/緑 21枚/その他 5枚」と枚数が大きく黒に偏ったセットだった。

 さて会社の一室であるビル・ローズのオフィスでオデッセイのカードを眺めていた私は、その中に《アトガトグ/Atogatog》を発見した。そのとき閃いたんだ。アングル―ド2(註)の出番だ!、とね。
(註) アングル―ド
 アングル―ドは公式大会では使えないジョークセットで、通常のマジックカードと見分けがつくように枠が銀色になっている(そのためアングル―ドセットのカードはまとめて「銀枠」とも呼ばれている)。記事の書かれた当時は銀枠セットはまだ初代アングル―ドの1セットのみで、続編は噂されつつも実現していなかった。銀枠セットの第2弾であるアンヒンジドが世に出たのはこの記事から2年半後。

 この回想シーンの数年前にアングル―ドの続編は開発休止となっていた。そしてそのアングル―ドの続編(ここでは仮にアングル―ド2と呼ぼう)の開発には私も深く関わっていた。

 宙に浮いた状態となりつつもすでに多くが完成していたアングル―ド2のカードたちをどうするかについては、休止となって以降もときたま話題に上がっていた。

 いや、話題に上がっていただけでなく、そのうちの何枚かは実際に公式セットに居場所を見つけることに成功していた(例えば《火+氷/Fire+Ice》のような分割カード、そして、そう、前述の《アトカトグ/Atogatog》もその1つだ)。

 ビル・ローズと私は良くも悪くも似た者同士だったので、《アトカトグ/Atogatog》のカードを掲げながら「今がそのときかもしれないぞ!」と叫ぶだけで意図は伝わったらしく大笑いしていた。

 よく使われる言い回しの1つに「山をムハンマドのもとへ連れてこれないなら、ムハンマドを山のもとへ連れていく必要がある」という言葉がある。つまりはそういうことだ。アングル―ドのもとへ皆を連れていけないのなら、普通のセットにアングル―ドを(ほんの少しでも)連れてくればいいのさ。

 使われなかったアングル―ド2のカードをジャッジメントに混ぜ込んでやるんだ。ご存じの通りトーメントは「黒色なセット」になったが、おそらくジャッジメントは「異色なセット」になるだろうね。


 ところで覚えている人もいると思うが、アングル―ドの主要なテーマの1つに「ニワトリ(Chicken)」があった。それを受けて続編のアングル―ド2ではテーマの1つを「卵(Egg)」とする予定だった(つまり少なくともマジックにおいては「卵か先か、ニワトリが先か?」の論争に決着がついている、ということだ)。

 すでに卵サイクル(註)がオデッセイに収録されていることもジャッジメントに卵関連のカードを登場させるにあたって追い風となる。
(註) 卵サイクル
 オデッセイに収録されている5種類のアーティファクトで、無色2マナを友好色2色へとフィルターしつつカードと1枚引ける使い捨ての1マナアーティファクトを指す。イラストが綺麗。ちなみにこの卵サイクルをキーにした「サニーサイドアップ」(= 目玉焼きの英語名)という名前のデッキがある。

 というわけで今ここに発表させてもらおう。

 次のセットであるジャッジメントのテーマは「卵(Egg)」だ! 過去のマジックに登場した様々な「卵」なカードたちが水曜日にベンのコラムでも紹介されていたが、ジャッジメントでは君たちが見たこともないような奇妙な卵たちが登場することになるだろうね。

 完成版のカードを見せるにはまだ時期尚早だが、いくつかのプレイテスト中の「卵」を君たちに披露する許可をもらってきたぞ。おっと、念のため。ここで紹介する以下のカードたちはまだ開発途中のものだ。実際に印刷されるバージョンそのものではないのでテキストがテンプレートに沿っていないものもある。注意してくれ。

▼《Egg Lotus》 (0)
 Artifact
 Sacrifice CARDNAME: Add one mana to your mana pool at the start of each main phase for every turn during the entire match.
(睡蓮の卵 (0)
 アーティファクト
 睡蓮の卵を生け贄に捧げる:好きな色1色のマナ1点を毎ターンのメインフェイズの開始時に加える。この効果はこの試合中ずっと持続する)

▼《Dodo Egg》 (2)(R)(R)
 Creature - Bird Egg
 CARDNAME comes into play with three hatch counters on it.
 At the beginning of each turn, move a hatch counter to target permanent you control. If that permanent references a counter type in its rules text, the counter becomes that kind of counter.
 If CARDNAME has no hatch counters on it, it gets +4/+3 and gains flying.
 0/1
(ドードー鳥の卵 (2)(赤)(赤)
 クリーチャー - 鳥・卵
 ドードー鳥の卵はその上に孵化カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
 毎ターンの開始時に孵化カウンターをあなたがコントロールする別のパーマネントの上に移動させる。
 そのパーマネントのルール・テキストが何らかのタイプのカウンターを参照している場合、移動されたカウンターはそのカウンターの1つになる。
 もしドードー鳥の卵の上に孵化カウンターが1個も置かれていないとき、それは+4/+3の修整と飛行を得る。
 0/1)

▼《Jurassic Egg》 (4)
 Artifact
 As CARDNAME comes into play, choose a letter.
 Whenever a card is played that has the chosen letter in its name, put a breeding counter on CARDNAME.
 Remove X breeding counters from CARDNAME: Put an X/X green dinosaur token into play.
(ジュラ紀の卵 (4)
 アーティファクト
 ジュラ紀の卵が戦場に出るに際し、アルファベットを1つ選択する。
 選択されたアルファベットをカード名に含むカードがプレイされるたび、ジュラ紀の卵に飼育カウンターを1個置く。
 ジュラ紀の卵の上から飼育カウンターをX個取り除く:緑のX/Xの恐竜・クリーチャー・トークンを1体生成する。)

 はてさて今年の国別選手権や世界選手権はいつもよりも賑やかで楽しくて混乱したものになるかもしれないよ。いや、まあ、私が今言ったことが本当だったらの話だけどね。どういう意味かって?













































 エイプリルフールだよ! そう、今日は4月1日さ! ちょっとしたお楽しみがなけりゃ、やってられないだろう?

 さてさて。

 現実の公式サイトは土地破壊週間を迎えている。私の今週の(本当の)コラムを読みたい人は以下のリンク先(註)を参照してくれ。ゴチ。
(註) 以下のリンク先
 原文ではここで以下のURLへのリンクが張られている。土地破壊について書かれた「本当の」コラム。
 https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/all-one-basket-2002-04-01



【翻訳】石の雨を避けたミーティングルームで/Tweak in Review【DailyMTG】
Mark Rosewater
2002年04月01日
元記事:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/tweak-review-2002-04-01

 土地破壊週間にようこそ! 今週はマジックにおける最古参のデッキタイプの1つを取り上げてみよう。

 開発部は土地破壊に関して非常に興味深い視点を持っており、せっかくなので私はこの視点というものがどのようなものなのか、そしてそれが新たに作られる土地破壊カードのデザインにどのように影響しているのかについて書こうと考えていた。

 ところがランディ・ビューラーがまったく同じテーマで記事を書く予定だと知ったので、それは彼に譲ることにした。もし前述の内容に興味があるなら金曜日にアップされる予定のランディのコラムをぜひ読んでみてくれ。

 さて、代わりに今日の私のコラムではデザインという仕事の中で特に見過ごされがちな部分に語ろうと思っている。


土地を破壊する前に

 本題に入る前に、先週のアンケートの結果をお伝えしたい。
(註) 先週のアンケート
 この前の週のコラムはフレイバーテキストがテーマだった。その中で、フレイバーテキストにくだらないジョーク、特にダジャレが登場することは許容できるかどうかについて、コラムの最後にアンケートをとっていた。

 フレイバーテキストに今後も下らないダジャレがあってもよいのかどうかについてのアンケートの結果は以下の通りだ。今までのアンケートの中でも特に接戦だったよ。

    下らないダジャレはマジックに居場所があるか?

      は い 1,792票(58%)
      いいえ 1,277票(42%)
      合 計 3,069票

 さてこの結果から何が読み取れるのか? これは非常に複雑なテーマであり、クリエイティブチームも注目している問題でもある。チームの判断については今後のセットを待つことで結果も分かるだろう。

 さて、本題に戻ろうか。


世に棲む日日

 君たちの中に映画「バックドラフト」を見たことある人はいるかな? カート・ラッセルが燃え盛る炎に包まれた部屋から子供を抱えて飛び出してくるシーンがあっただろう。カートが部屋から広間に逃げ込めた直後に背後の部屋で大爆発が起きて火が噴き出してくるシーンだ。

 おそらく多くの人が消防士に抱いているイメージはこれだろう。燃え盛る建物の中を駆け回り、取り残された子供たちを助けてまわるヒーローだ。

 しかし現実において普通の消防士が燃え盛る建物に飛び込むのは年に数える程度のはずだ。いや、決して消防士の仕事を軽視しているわけではない。そもそも燃え盛る建物にただの一度でも飛び込めればそれは十二分に尊敬に値する。

 私がここで言いたかったのは、消防士が日常的にこなしている仕事はそんなヒロイックなものではなくもっと平凡な仕事だということだ。危機一髪な救出劇よりも、たとえば消防車の手入れなどをしているはずだ。

 そして同じ事がマジックのデザイナーにも言える。

 確かにデザイナーたちは突拍子もない能力を持った派手な新カードの開発にその時間の一部を費やしている。しかしそれは仕事のごく一部であり、多くの時間はもっと平凡な作業に費やされているんだ。

 そう、レアは確かに派手で面白い。しかしセットの生き死にを握っているのは何か。コモンだ。

 ……さて、この話がどう土地破壊の話につながるんだろうね?(私が「大丈夫だよ、ちゃんと今日のテーマのことも忘れてないよ!」と念押ししたコラムが過去にいくつあったか、数えてる人はいるだろうか)

 うん、まず土地破壊カードは私たちがどのセットにも必ず1枚は含めるようにしている基本的なカードだ。そのため、これは開発部が日々こなしている業務の1つを紹介するのに特に適したカードということになる。

 その業務とは微調整(Tweak)だ。


ひとひねりを加える

 微調整とは何か? それはわずかな違いを除いて、既存のカードとまったく同じカードを作る作業だ。例えば《石の雨/Stone Rain》というカードがある。これは赤のソーサリー呪文で土地を破壊する。
Stone Rain / 石の雨 (2)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。

 アルファ版で初登場したカードでリチャード・ガーフィールドのデザインによるものだ。この《石の雨/Stone Rain》の微調整版の例といえば以下が挙げられる。

 ・《倒壊/Raze》:マナコストが安いが自身の土地も破壊
 ・《不毛化/Lay Waste》:サイクリングが付いている
 ・《滅却/Devastate》:土地を破壊でき、また全てにダメージを与える
 ・《ドワーフの地すべり/Dwarven Landslide》:キッカーでさらに土地を破壊
 ・《地の裂け目/Earth Rift》:フラッシュバックが付いている

 微調整の目的とは何か。それは、古いカードのエッセンスを残しつつもカードに新鮮味が感じられる何かを持たせることだ。皮肉なことにこれは私のハリウッド時代のスキル(註)が生かされる分野でもある。
(註) ハリウッド時代のスキル
 著者のマーク・ローズウォーターには、ハリウッドでテレビの脚本家を勤めていた経歴がある(TVドラマ「ロザンヌ」のエピソードの1つなど)。

 ハリウッドは、古いものを(より良い形で)焼き直し続けている場所だ。

 これに関する面白い手法の1つとしては、ハリウッドで「Three-Beat」として知られている手法がある。既存のアイデア2つと混ぜ合わせて、新たなアイデアとして売りつけるんだ。

 例を挙げよう。

 映画「スパイキッズ」は、ジェームス・ボンドとグーニーズがハリウッドで出会ったことで生まれたものだ。ドラマ「ヤング・スパイダーマン」は、スーパーマンとドーソンズ・クリーク(訳注:アメリカのテレビドラマ)が出会って生まれた。映画「ビューティフル・マインド」は、グッド・ウィル・ハンティングと失われた私(訳注:原題は「Sybil」)が出会って生まれた。

 信じてもらえるか分からないが、マジックのデザインという仕事にはこれと似通ったところがある。コモンを作る時だ。

 コモンを作るためには、まず初めにマジックの基本的な役割(クリーチャー破壊、カードドロー、コンバットトリックなど)を埋めるカードを作る必要がある。しかし既存のカードそのものというわけにはいかない。

 そこで「微調整」が始まる。以下に挙げるのが代表的な手法だ。


その1:ブロックの新メカニズムをつける

 最初にデザイナーたちが目を向けるのはそのブロックで登場する新メカニズムだ。いずれにせよデザイナーはその新たなメカニズムをカードに取り入れる必要があるから、まさに相思相愛だ。

 オデッセイブロックを例にとろうか。このブロックで新たに登場したメカニズムはフラッシュバックとスレッショルドだ。

 まずは《地の裂け目/Earth Rift》を例として挙げるべきだろうね。石の雨がフラッシュバックと出会って生まれたわけだ。
Earth Rift / 地の裂け目 (3)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。
フラッシュバック(5)(赤)(赤)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)

 それではスレッショルドは? うん、オデッセイのデザイナーたちは同様にスレッショルドについても試行錯誤を繰り返したんだが、結局スレッショルド持ちの土地破壊カードは生まれていない。これだ、と思えるアイデアが最後まで出なかったんだ。


その2:追加の効果をつける

 ときには既存のカードをほぼそのままに、そこに少しの追加を加えるだけのことが最善の策となることもある。

 プロフェシーの《滅却/Devastate》が良い例だ。これは《石の雨/Stone Rain》が《微震/Tremor》と出会って生まれたカードだ。
Devastate / 滅却 (3)(赤)(赤)
ソーサリー
土地1つを対象とし、それを破壊する。滅却は、各クリーチャーと各プレイヤーにそれぞれ1点のダメージを与える。

Tremor / 微震 (赤)
ソーサリー
微震は、飛行を持たないすべてのクリーチャーにそれぞれ1点のダメージを与える。

 このタイプの微調整の難しい点は、元の効果と追加される効果になんらかのシナジーが必要という点だ。それはプレイする上でのゲーム的なシナジー、もしくはフレイバー的な面でのシナジーのいずれかとなる。もちろん両方を満たすのがより理想的だ。

 その点ではこの《滅却/Devastate》は両方を満たしている。土地破壊デッキにウィニーを一掃する効果は有用だし、土地が破壊される際に「地震」的な効果が生まれるのも実に自然なことだ。


その3:ペナルティ能力をつける

 上記の2つ以外でよく使われるテクニックに、コストを安くする代わりにペナルティ能力を付けるというものがある。

 このカテゴリの例としてはウルザズ・サーガの《倒壊/Raze》がふさわしいだろう。「相手に《石の雨/Stone Rain》」と「自分に《石の雨/Stone Rain》」が出会ったわけだ。
Raze / 倒壊 (赤)
ソーサリー
この呪文を唱えるための追加コストとして、土地を1つ生け贄に捧げる。
土地1つを対象とし、それを破壊する。

 《倒壊/Raze》は、《石の雨/Stone Rain》から2マナもそぎ落とされている代わりに自身の土地を1枚生け贄に捧げる必要がある。

 デッキをよりアグレッシブにするよう仕向けつつ、どうやってこのデメリットをかいくぐろうかとプレイヤーに頭を使わせる良いカードだ。


その4:制限をかける

 この微調整のパターンは直前のパターンの仲間とも言える。デザイナーは基本的な効果を1つ選んだあと、しかるのちにその効果や対象を元よりも制限するわけだ。もちろん効果が劣るかわりにマナコストは安くなる。

 そうだね、基本でない土地しか破壊できない《溶岩のあぶく/Lava Blister》がこのカテゴリのカードと言えるかもしれない。《石の雨/Stone Rain》が《破滅/Ruination》と出会ったわけだ(ただ《溶岩のあぶく/Lava Blister》には懲罰者(Punisher)効果もついているのでイマイチ良い例ではないかもしれない)。
Lava Blister / 溶岩のあぶく (1)(赤)
ソーサリー
基本でない土地1つを対象とし、それをそれのコントローラーが「溶岩のあぶくはそのプレイヤーに6点のダメージを与える」ことを選ばないかぎり、破壊する。

Ruination / 破滅 (3)(赤)
ソーサリー
すべての基本でない土地を破壊する。


その5:呪文の速度を変える

 前述されたもの以外でよく取られる選択肢としてはこれがある。インスタントをソーサリーにしたり、逆にソーサリーをインスタントにしたりする。

 この微調整の話をするのに《石の雨/Stone Rain》はあまりよくない例となる。なぜなら開発部は土地破壊効果はソーサリーにすると決めたからだ(これに関しては金曜日のランディの記事に詳しい)。

 例として挙げられそうなのはプレーンシフトの《リースの魔除け/Rith’s Charm》くらいだろうか。ただ正直、これを微調整版として挙げるのは自分でも厳しい気がしている。あえていえば《石の雨/Stone Rain》がインスタントの選択肢の1つに選ばれた、という感じかな。
Rith’s Charm / リースの魔除け (赤)(緑)(白)
インスタント
以下から1つを選ぶ。
・基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。
・緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを3体生成する。
・このターン、あなたが選んだ発生源1つが与えるすべてのダメージを軽減する。


その6:再録する

 最後がこれだ。もちろんこれもありだ。そのままさ。厳密には微調整とは呼べないかもしれない。ただこれがセットの穴を埋めるための最適解となることはよくある話だ。

 私がよく受ける質問の1つに「なんで再録するの?」というものがある。

 この問いに本気で答えようと思ったらそれだけで1つのコラムになるだけの分量を必要とするが、手短に言えば(余談だが、先日、とある説明を「手短に言えば」で済ませたとき、蜂の巣をつついたような反応が返ってきたね。ふと思い出したよ)再録は他のどんな手法よりも的確にその仕事をこなしてくれるからだ。

 《石の雨/Stone Rain》の場合、その「土地1つを対象とし、それを破壊する」というシンプルさを上回ることは非常に難しい。《石の雨/Stone Rain》が《石の雨/Stone Rain》に出会うわけだ。

 そんなとき、開発部は同じカードをそのまま世に出す。

 ときに私たちは再録し、ときに私たちは微調整を行う。《石の雨/Stone Rain》はこのカテゴリの例にまさにふさわしい(何しろ、つい最近まで《石の雨/Stone Rain》は最も多くの再録が行われたカードの1枚だったからね)

  アルファ:初登場
  アイスエイジ:再録
  ミラージュ:再録
  テンペスト:再録
  ウルザズ・サーガ:調整版
  メルカディアン・マスクス:再録
  インベイジョン:調整版
  オデッセイ:調整版
(註) 調整版
 それぞれの微調整版は、ウルザズ・サーガは《不毛化/Lay Waste》、インベイジョンは《疫病の胞子/Plague Spores》と《激情の耕作/Frenzied Tilling》、オデッセイは《地の裂け目/Earth Rift》

 いってみればこの微調整は文章において決まり文句や常套句を使うようなものだ。オリジナリティのある新たな何かで表現したいときもあれば、逆に使い古された決まり文句がぴったり当てはまるときもあるのだ。


こんなに楽しい仕事はない

 良いデザイナーになるための条件の1つはデザインの細かい仕事も楽しめることだ。コモンを作るのは決して汚れ仕事ではない。それは創造性と簡潔性を同時に達成する機会でもある。

 このコラム、「Making Magic」はマジックのデザイナーたちの仕事を垣間見られるコラムだ。今日の記事がデザイナーの仕事の中でも特に平凡な(しかし決して退屈でない)仕事について、君たちになんらかの気づきを与えることが出来たなら幸いだ。

 さて、来週はデザイナーの仕事の中で君たちもやったことのあるであろう何かについて話そうと思う。それまで、君たちが土地破壊デッキとの対戦時に十分な量の土地を引けるよう祈っているよ。

 マーク・ローズウォーター

コメント

とけいまわり
2020年7月27日12:01

100件達成おめでとうございます。今回も楽しく読ませていただきました。
Day-to-Dayを司馬遼太郎タイトルで訳すセンスに脱帽です。(司馬ファンではないですが)

re-giant
2020年7月29日15:43

実は翻訳カテゴリが100件なだけで、訳した記事の数は100未満なのです(長すぎて上下に分けたものなどあるので)。
Day to Dayについては「日常」か「日々」を含むタイトルや「土地破壊」にかけて「ひび(ひび割れ)」を入れるか、とか考えてて、最後はそうなりました。思ってたより内容に合った気がします。

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