非動詞化な名詞もの/Nouns Unverbed : Magic Arcana
2010年12月23日
Monty Ashley
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/arcana/609
私たちは2週間の休暇を頂きます。次の更新は2011年01月03日の月曜日です(註1)。それまで今年のArcanasの中で特に私たちの評判の良かった記事をお楽しみ下さい。なお元記事は2010年05月05日に掲載されたものです。


マジックの世界に常にアンテナを張っている敏感な君たちであれば、おそらく《未知な領域/Realms Uncharted》と《けちな贈り物/Gifts Ungiven》の見た目の相似性にはすぐ気付いたことだろう。

もしかしたら2007年のHolidayプロモカードである《Gifts Given》も浮かんだかもしれない(註2)。まあ、こんな曖昧な物言いを続けるよりも、単純にこれら3つのカードの大きなイラストをお見せしたほうが、お楽しみも大きくなるってものだろうね!(註3)

(註1)
 元記事の序文。そんなわけで公式サイトは来年の3日から再開らしい。
 この部分が訳したかった(伝えたかった)だけであとはおまけ。

(註2)
 イラストの右下に「良い休暇を!」と書いてあるので、休暇前の挨拶も兼ねているのかもしれない。

(註3)
 このあと、ここで挙げられている3つのカードのイラストが特大サイズで紹介されている。
刻印より出づるもの/Out of Imprint : Daily MTG
2010年12月03日
Tom LaPille
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/119

 「ミラディンの傷跡」時点でマジック世界に刻印を持つカードは18枚しか存在しない。枚数としては少ない。しかし刻印カードは本当に作るのが難しいことだ。なんでそう言い切れるのかというと、私は刻印カードを含む2つのセットに開発チームとして参加したことがあるからだ(ちなみにその2つとは「Mirrodin Besieged」と「Action (仮名)」だ)。

 もっとも君も(作るのが難しいという事実には)薄々感づいていたかもしれない。なにせ「ミラディンの傷跡」にはたった5つしか刻印カードがないんだから!

 なんでそんなに難しいのかって?

 1つ目の理由はテキストの長さだ。各刻印カードは最低でも2つのルールテキストを必要とする。カードがどのように追放されるのかで1つ、そしてそのカードをどのように参照するのかでもう1つ。それで2つの文を使ってしまう上に、それぞれ大体2行から3行はテキストボックスを必要とする。その他のことを書き記す余白は大して残らないという寸法だ。そのようなわけで、それら2つ以外のテキストを含む刻印カードはたった2つしか存在しない(ちなみに、それらは装備品であり追加されているテキストというのは装備品に関するルールテキストだ)。上記の理由から、実際のカードテキストに収めるために刻印カードのアイデアは比較的シンプルにまとめなければいけない。

 次の難題は、追放するカードをどう参照するかだ。ミラディンでは、刻印カードは刻印されたカードの特性を何らかの形で参照しなければならない、ということを確立したが、意味の通る形でそれを実現できるデザインのパターンはそう多くない。
さらに、2つの必須項目の間にはわずか7行ほどのスペースしか残されていないという事実がさらに可能性をせばめてくる。

 「ミラディンの傷跡」ブロックはミラディンの続編に当たるが、まったく同じものでいいということにはならない。「刻印」が「ミラディンの傷跡」の一部として採用されたのは、あくまでその前身に対してプレイヤーが持っている印象的だった点や好んでいた点を引き継ぐためであり、新セットの注目をかっさらうためではない。そう考えると「ミラディンの傷跡」に収録されている刻印カードが5枚というのはちょうどいい枚数だと思う。

 記事をこれら5枚のカードのみから搾り出すよう無理やり書くよりも、はるか過去にさかのぼって特に私の興味をそそる刻印カードそれぞれについて語ってみることにする。

 さあ始めようか!

Chrome Mox / 金属モックス (0)
アーティファクト
刻印 ― 金属モックスが戦場に出たとき、あなたの手札にあるアーティファクトでも土地でもないカードを1枚、追放してもよい。
(T):その追放されたカードと共通する好きな色のマナ1点をあなたのマナ・プールに加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Chrome+Mox/

 開発側の立場から言わせてもらうと《金属モックス/Chrome Mox》はこれ以上ないほどの大成功だ。これは「Mox」であり、それだけでミラディンが発売されたときにはあれやこれやと話題になるには十分な理由だ。《金属モックス/Chrome Mox》がスタンダードで使えた時代、その発売時の興奮に応えるだけの強さを構築環境で十分に発揮した。

 同時にそれはどんなデッキにも4枚積みされるほどの強さではなかったし、本当にそれらのデッキに必要だったとは思えないがプレイヤーたちはなんとかして《金属モックス/Chrome Mox》を彼らのデッキにねじこめないかと悪戦苦闘した。
これほど賞賛に値するカードは探してもそうはないだろう。

 このカードは明らかに《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》のオマージュだ。《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》はときに誤解されがちなカードだ。《金属モックス/Chrome Mox》と《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》は両方ともカード1枚という高い追加コストが必要だ。《金属モックス/Chrome Mox》の場合、それは刻印するカードということになる。誰だって、自分のカードのコストのデメリットを最小限に出来るような「ズル」をしたくてしょうがないはずだが、これらの2枚のMoxはデッキ構築の段階ですでにコストを要求する。

 《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》は土地カードを捨てなくてはいけない。それが何を意味するかというと、《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》を入れたからといって土地枚数を切り詰めることはできないということだ。キューブドラフト(註1)で《モックス・ダイアモンド/Mox Diamond》を使ったとき、私はこのカードが(土地はなく)呪文のスロットを占めてしまうことを学んだ。しかしこのことを直感的に理解する人は少ないだろうし、同時にあまり嬉しい事実でもない。私は《金属モックス/Chrome Mox》のほうが好きだ。これは明確に土地の代わりとしてデッキに入れられるべきカードだ。なぜならコストとして支払うのは「土地でないカード」でなくてはならず、マナ算出用の土地枚数をいじくる必要がないからだ。個人的にはこっちのほうが好きだ。

 《金属モックス/Chrome Mox》についてつらつらと考えている最中、私にとって特に印象的な点に気づいた。私が様々なトーナメントデッキの中を使った中で、《金属モックス/Chrome Mox》を1枚しか入れなかったデッキもあったし、2枚や3枚のときもあったし、4積みしたこともあった。結果、それらの枚数で正解だったと思っている。

 4枚フルで投入したデッキは例えばスピードが最優先の赤単、《知識の渇望/Thirst for Knowledge》の入った青メインのエクステンデッドのデッキ、速攻でコンボを決めに行くデッキなどだ。2枚か3枚を投入したデッキは、多少カードアドバンテージを失っても大丈夫で、かつ中盤からのマナブーストを必要とするようなデッキだ。1枚差ししたこともある。LSV謹製のドランデッキに、だ。このデッキはあとほんの少しのマナ調整を必要としていたが2枚では多すぎた。

 私はそのような使われ方をされるこのMoxをカッコいいと思う。いつもいつもただ0枚か4枚かでしか使われないカードよりも。

(註1) キューブドラフト
適当に持ち寄った数百枚のカードの山から15枚ずつランダムにカードを配って行うドラフトの一種(非公式)。詳細はMTG Wikiやキューブドラフト専門サイトを参照のこと。
MTG Wiki:"http://mtgwiki.com/wiki/キューブドラフト"

Clone Shell / クローンの殻 (5)
アーティファクト クリーチャー - 多相の戦士(Shapeshifter)
刻印 ― クローンの殻が戦場に出たとき、あなたのライブラリーのカードを一番上から4枚見て、それらの1枚を裏向きにして追放し、その後残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。
クローンの殻が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、その追放されたカードを表向きにする。それがクリーチャー・カードである場合、それをあなたのコントロール下で戦場に出す。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Clone+Shell/

 このカードを刻印カードとする必要があるのかどうかについて、内部でちょっとした議論があった。刻印されたカードが何であろうと関係ないのに刻印というキーワードを使って処理しなくてはいけない理由は何なのか?、というのが反対派の意見だった。

 それに対する回答は、クリーチャーが戦場に出る直前に《クローンの殻/Clone Shell》はそれが何なのか(クリーチャーなのかどうか)をチェックするだろう、である。大した理由ではないが、それで十分だった。

Duplicant / 映し身人形 (6)
アーティファクト クリーチャー - 多相の戦士(Shapeshifter)
刻印 ― 映し身人形が戦場に出たとき、トークンでないクリーチャー1体を対象とする。あなたはそれを追放してもよい。
その追放されているカードが単一のクリーチャー・カードである限り、映し身人形はそのクリーチャー・カードのパワー、タフネス、クリーチャー・タイプを持つ。それは多相の戦士(Shapeshifter)でもある。
2/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Duplicant/

 このカードは実に美しい。

 整然としてシンプルで、さらに何種類かの構築デッキに入るだけの強さも持っていた。それらのデッキでは、私たちは大喜びで《歯と爪/Tooth and Nail》や《ゴブリンの溶接工/Goblin Welder》でコストを踏み倒しながらこのカードを戦場に出していた。

 それはさておき、なぜこのカード自身のパワーとタフネスが2/4なのか、私はずっと不思議だった。この記事のために色々調査している最中、私は自分が今やウィザーズのカードに関するデータベースを好きに見られることに気づき、さっそく今回の疑問に対する回答を探ってみた。残念なことに誰もこの謎についての記述を残していないようだった。

 時の流れの中で失われてしまう事柄がある。そしてきっとこれもその1つなのだろう。

Isochron Scepter / 等時の王笏 (2)
アーティファクト
刻印 ― 等時の王笏が戦場に出たとき、あなたはあなたの手札にある点数で見たマナ・コストが2以下のインスタント・カードを1枚、追放してもよい。
(2),(T):あなたは、その追放されたカードをコピーしてもよい。そうした場合、あなたはそのコピーを、そのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Isochron+Scepter/

 《等時の王笏/Isochron Scepter》を世に出したことについて後悔すべきなのかどうか、私にはよく分からない。このカードについて考えるのは楽しい時間だ。しかし戦場に出ているときは大抵楽しくない時間だ。

 ケン・ネーグルはカジュアルで《等時の王笏/Isochron Scepter》をメインにした赤青デッキを持っていたが、人々はその彼のデッキと対戦することを嫌がった。なぜなら全ての呪文はカウンターされ、全てのクリーチャーは全て焼かれ、さらにはその後に引くいかなる呪文にもクリーチャーにも運命を好転させる力も希望もないのだ。

 私は一度セプターチャント(註2)でエクステンデッドのPTQに出場したことがあるが、対戦してくれたプレイヤーの中に対戦を楽しんでくれた人がいたかどうか自信はない。《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir》と《オアリムの詠唱/Orim’s Chant》を刻印した《等時の王笏/Isochron Scepter》が組み合わさると強固なロック状態になるが、ゲームの勝利条件を満たしてはいない。よくあるのは、私も相手もフラストレーションが溜まるような状態に陥ることだ。対戦相手はロックにかかって何もできないのに、対する私はその相手にとどめを刺すための手段が用意できずにもがいている、そんな状態だ。

 非常に強い権限を持った開発チームであれば、印刷されたらどんなことになるかを予想した時点で、このカードを生きて世に出させはしなかっただろう。果たしてそれが正解であったかどうかは分からないが、仮に当時誰かがそうしたとしても私は不思議には思わない。その一方、このカードは刷られてから8年経った今なお人々を惹きつけ、From the Vault(註3)に収録されるだけの魅力を持っている。明らかにこのカードに魅せられる人々がいるという証拠だ。

 私としては、このカードがマジックの歴史の一部であることは喜ばしいが、それと同時に、これが《沈黙/Silence》と一緒にスタンダードに存在しなかったことはそれはそれでありがたい、といったところだ。

(註2) セプターチャント
 《等時の王笏/Isochron Scepter》に各種2マナ以下の優良インスタントを刻印することで相手の動きを封じるデッキ。名前の由来はキーカードである《等時の王笏/Isochron Scepter》と《オアリムの詠唱/Orim’s Chant》から来ている。

(註3) From the Vault
 年に1回発売される15枚のカードで構成される限定セット。基本的に過去に人気のあった豪華なカードがテーマにそって収録される。《等時の王笏/Isochron Scepter》は新規イラストで第3弾の From the Vault:Relics に収録されている。

Mimic Vat / ミミックの大桶 (3)
アーティファクト
刻印 ― トークンでないクリーチャーが1体戦場からいずれかの墓地に置かれるたび、あなたはそのカードを追放してもよい。そうした場合、ミミックの大桶により追放された他の各カードをオーナーの墓地に戻す。
(3),(T):その追放されているカードのコピーであるトークンを1体戦場に出す。それは速攻を得る。次の終了ステップの開始時にそれを追放する。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mimic+Vat/

 《ミミックの大桶/Mimic Vat》は私にとって《等時の王笏/Isochron Scepter》とについて考えることと同じくらい楽しいことだ。《等時の王笏/Isochron Scepter》と違う点は、このカードは実際にプレイするのも素晴らしく楽しいという点だ。

 クリーチャーたちが互いにアタックしたりブロックしたりしている間は腐ることがないし、それ以外にも自身の価値を高めてくれそうな興味深い可能性をまだまだ秘めている。呼び出したクリーチャーをただ攻撃させるだけでも十分役に立つが、何度も何度も繰り返し呼び出したくなるような美味しい「戦場に出たとき」クリーチャーはいくらでもいる。

 マジックオンラインにおいて私が知っている《ミミックの大桶/Mimic Vat》のもっとも人気のある使い方は同盟者デッキだ。桶がコピーを作ることで、戦場にいるあらゆる同盟者の力が誘発されるのだ。同盟者デッキに入っている《ミミックの大桶/Mimic Vat》によって多少は嫌な気分に陥ったこともあるが、そう長い時間ではない。もしきちんと回ったなら数ターンで私はあの世行きだ。

 繰り返しゲームの状況を変え続けることが出来るカードの使われ方としてはほど良いところに腰を落ち着けたものだと思う。

Panoptic Mirror / 一望の鏡 (5)
アーティファクト
刻印 ― (X),(T):あなたの手札から、点数で見たマナ・コストがX点であるインスタント・カード1枚かソーサリー・カード1枚を追放してもよい。
あなたのアップキープの開始時に、あなたは一望の鏡に追放されているそのインスタント・カードかソーサリー・カードの1枚をコピーしてもよい。そうした場合、あなたはそのコピーを、そのマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Panoptic+Mirror/

 開発チームの立場からデザインを批評するとすれば、このカードは非常によく出来ている。《等時の王笏/Isochron Scepter》と比べればほぼ無限大に満足のいく代物だ。

 どんな馬鹿げたことでも実行できてしまう並外れた強さを持っているが、ちゃんとそれに見合うだけの事前準備を必要としており、ゲームの最序盤から使い始めることは出来ない。そのため対戦相手はそれが使われ始める前に対応するだけの時間があり、それだけでなく《一望の鏡/Panoptic Mirror》はインスタントスピードで使えないので打ち消し呪文を繰り返し使われる心配もない。

 私は、このカードがもっと強ければ良かった、と思っている。もしこれが今なお刻印カードの中で特に私たちの印象に残っていれば、それは環境がそれだけ楽しいものだったことに他ならないからだ。

Strata Scythe / 地層の鎌 (3)
アーティファクト - 装備品(Equipment)
刻印 ― 地層の鎌が戦場に出たとき、あなたのライブラリーから土地カードを1枚探し、それを追放し、その後あなたのライブラリーを切り直す。
装備しているクリーチャーは、その追放されているカードと同じ名前を持つ戦場に出ている土地1つにつき+1/+1の修整を受ける。
装備(3)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Strata+Scythe/

 《地層の鎌/Strata Scythe》に刻印されたカードが対戦相手のカードまで数えるべきかどうかで随分とたくさんの議論が戦わされた。そうすることに決めたのはいいことだったと思っている。しかしその後、これは多数の人々にとって直感的に分かりやすくないということを知った。

 社員によるプレリリースと社員への感謝週間に行われたシールドデッキイベントの両方で、私は対戦相手が《地層の鎌/Strata Scythe》の効果に私の土地枚数も足してよいことに気づかなかったことでいくつものゲームの勝ちを拾ってしまった。対戦相手はただ《地層の鎌/Strata Scythe》を飛行クリーチャーに装備させれば勝てたのにそうしなかったのだ。

 もしかしたらこのカードについては間違いを認めないといけないのかもしれない。特に何とかマナコストを減らせないかと悩んでいたことを考えると。

Summoner’s Egg / 召喚者の卵 (4)
アーティファクト クリーチャー - 構築物(Construct)
刻印 ― 召喚者の卵が戦場に出たとき、あなたはあなたの手札にあるカード1枚を裏向きで追放してもよい。
召喚者の卵が戦場から墓地に置かれたとき、その追放されている裏向きのカードを表向きにする。それがクリーチャー・カードである場合、それをあなたのコントロール下で戦場に出す。
0/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Summoner%27s+Egg/

 この記事の最初のほうに出てきた《クローンの殻/Clone Shell》に関する議論を覚えているだろうか? 当然似たようなカードである《召喚者の卵/Summoner’s Egg》に関してもまったく同じ議論が戦わされたのだ。

 R&Dは間違いを繰り返すことは大嫌いだが、同じ議論を繰り返すことは好きみたいだね!

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