前編
http://regiant.diarynote.jp/201305061531295027/
バルソー誕生秘話
デザインをする中で好きな作業の1つに、既存のイメージに合わせてデザインするというのがある(制約と創造性。ふむふむ)。これが当てはまるのは特に伝説のクリーチャーをデザインするときだ。
しばしば背景ストーリーにはレギュラーとなるキャラがいて、クリエイティブ・チームからそのキャラをカード化して欲しいという依頼がくるわけだ。
バルソーはその2つのバージョン両方ともについて、依頼がきた。
バルソーが特別だったのは、彼がブロックの背景ストーリー半ばで一度死に、ゾンビと化して蘇ってくるということが分かっていたことだ。同じブロック内で同じ伝説のクリーチャーを2バージョン作るというのはそうそうあることじゃない。
アーテイ、クロウヴァクス、カマールなどは違うバージョンをまったく違う時期にデザインされたものだ。しかしバルソーは隣り合う2つのセットで登場することになっており、違うバージョンを一気にデザインするという貴重な機会をついに得られたわけだ。
どういうことかというと、私たちは2枚のカードを使ってキャラクターの対照性を表現する機会が得られたということだ。さらに、クリエイティブな面でリンクさせる以上は、同時にメカニズム的な意味でもリンクさせないと美意識が許さない。
私たちはまずは「生きている」ときのバルソーから考えてみることにした。
たしかこんな会話だった気がする(クリエイティブチーム側の面子が誰だったかはっきりと覚えてはいないけど、確かブランドンだったと思う)
私:バルソーについて教えてくれよ。
ブランドン(以下、ブ):彼はバーバリアンのリーダーなんだ。
私:あれ? バルソーってドワーフじゃなかったっけ?
ブ:そうだよ。
私:ドワーフのバーバリアンたちを率いてるってこと?
ブ:いや、バーバリアンたちは人間だよ。
私:ドワーフは?
ブ:なんのドワーフだよ?
私:いや、バルソーはドワーフだろ? じゃあ少しはドワーフの知り合いがいるはずだ。
ブ:彼はドワーフの仲間から追放されたんだよ。
私:なんだって? ドワーフが仲間外れにされてるんだって? そりゃキツイな。
ブ:だろうね。
私:まあいいや、彼はバーバリアンのリーダーなんだね。……他には?
ブ:えーと、そうそう、彼はカマールの師匠的な存在なんだ。
私:……他には?
ブ:それくらいかな。
私:バーバリアンのリーダーであり、かつ師匠であるドワーフをデザインするわけか。
ブ:基本的にはね。
(沈黙)
私:うん、助かったよ。
バーバリアンのリーダーということで私は「他のバーバリアン(Barbarian)・クリーチャーは+1/+1の修整を受ける」に辿り着いた。師匠うんぬんは、バーバリアンのパワーをパンプさせる能力を思い付かせてくれた。
次に私は黒バージョンにとりかかることにした。
死んだあとのバージョンは少し「悪い」感じになっている。さらにアンデッドということもあって、こいつは「黒」になった。
カードに関連性を持たせるため、私は並行性のあるデザインを試みたかった。つまり、ゾンビ版バルソー(当時はそう呼ばれていた)も特定のクリーチャータイプに+1/+1の修整を与えつつ、かつそのクリーチャータイプにだけ何らかの効果のある能力を持たせたかったのだ。
前半部分について、ミニオンを思い付くのにそう時間はかからなかった。ストーリーとも合致するし、過去にロードが存在しなかった種族でもある(生きている方のバルソーが強化するバーバリアンも、過去にロードが存在しなかった種族だ)。
起動型能力については色々と試してみたがどうしてもしっくりこなかった。そこで私はブランドンの元へ戻り、背景ストーリーについてさらに聞き込みをしてみた。そうして得られたアイデアが「バルソーが自身の軍勢をまるごと復活させる」というものだ。
元々は単に黒のクリーチャーだけを復活させるというものだったが、2枚のカードを見比べているうちに、バーバリアンとミニオンの両方を釣りあげられるようにしてはどうだろう、
というアイデアが閃いた。
《汚らわしき者バルソー/Balthor the Defiled》のテキストに「赤のクリーチャー」が加わっているのはこういうわけだ。そんなこんなで伝説のドワーフは生まれ、そして死に、さらに2度目の生を受けたというわけだ。
ドワーフの狂戦士、「ドワーフの(Dwarven)」について語る
ちょっと手を止めてこのゲームに出てくるドワーフのカード名を見てくれ。その3分の2が「ドワーフの」で始まるんだ……って、3分の2だと!? カード名で俺たちがドワーフだって念を押すのがそんなに大事か? 俺たちゃ、みんな、3フィートであごひげ生えた連中だってんだよ。そんなんイラストがあれば十分分かるだろうが。
で、本当の理由を知りたいか? 人間様は俺たちに固有の名前をつけたくないんだよ。俺たちが個別に独立独歩した存在だと思って欲しくねえんだ。だからこれからも《ドワーフの剣職人/Dwarven Swordmaker》とか《ドワーフのチビすけ/Dwarven Pissed Off Little Guy》みたいな面白いカード名が出てくるんだろうよ。
楽しみにしてな。
注意深くあれ
ここで語るのは、私がどうやって試合に勝ったかという話だ。
話を始める前にあらかじめ言っておくと、この話はきっと論争を呼ぶだろうね。上手いプレイングだったと思う人もいるだろうし、私をクズだと思う人もいるだろう。だからこそ掲示板があるんだ。今週のスレで自由に議論して欲しい。私のプレイングが優れたものだったのか、それとも単に初心者を馬鹿にしたものだったのか。
それはさておき、ここからが本題だ。
そのときの私はミラージュのシールド戦に参加していた。対戦相手のライフを残り6点まで減らしていたが、地上はこう着状態におちいっていた。さて、私の手札には《卑屈な幽霊/Skulking Ghost》がいた(知らない人のために付け加えておこう。これは2/1の飛行クリーチャーで、何かの対象にされたとき生け贄に捧げなくてはならない)。この幽霊の攻撃が3回ヒットすれば私の勝ちだ。
問題は対戦相手側に立ちつくしているドワーフだった。
それは《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》だった。ミラージュにおける《ドワーフの戦士団/Dwarven Warriors》の同型再販であり、クリーチャーを対象にとるタップ能力を持っている。
つまり私の《卑屈な幽霊/Skulking Ghost》を殺すことができるクリーチャーだ(なおタップ能力は「パワーが2以下のクリーチャー1体を対象とする。それはこのターン、ブロックされない」だ)。
私は幽霊を手札に残しておいた。しかし試合を続けるにつれ、彼のプレイングを見る限りとおそらく彼は《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》の使い道に気づかないのではないかと思えてきた。
そこで私は《卑屈な幽霊/Skulking Ghost》を戦場に出すことにした。私の予想通り、続く3ターンの攻撃は邪魔されることなく相手にヒットし、相手は自分の目の前に解決策があることに気づくことは最後までなかった。
試合終了後、いい試合だったねと声をかけてから、彼のミスについて指摘した。
さて、一番の論点は何かというと、ボード上の展開の予想を対戦相手のプレイスキルの高低で判断したのは、スポーツマンシップの乗っ取った行為だったのか、それとも単に私が人間のクズだったのか?
ぜひとも論じてみて欲しい。
我がドワーフ的人生(その3)
ドワーフは怒りをコントロールする能力に乏しいことで有名だ。なぜだろうね。
私の私見だが、おそらくそれは彼らの身長に関係があるのだと思う(心理学ではこれを「ナポレオン・コンプレックス」と呼んでいる)。どうしてそれが分かるのかって? 私自身もそうだったからだ。
Randy Newnanが差別的なネタの歌を書いたのは1977年の12月のことだった。大した罪の意識もなく、彼はいかにチビであることが損なことかについて風刺的な歌詞をつづったのだ。
歌の題名は「Short People(チビな奴ら)」というもので、その歌詞は「小さな手、小さな目、だけどデッカいホラを吹く(They got little hands; little eyes. They walk around telling great big lies)」さらに「チビに生きる資格ナシ(short people got no reason to live)」というようなものだった。
1977年の当時、私は10歳だった。皮肉というものがまだ理解できる年齢ではなかった(メモ:子供にとって一番理解しがたいジョーク、それは皮肉だ)。
私にとってRandy Newnanは悪だった。
背の低い子供をどん底におとしめるにはどうしたらいいと思う?簡単なことさ。チビが最悪だ、という歌を全員で歌って聞かせればいいんだ。大人も一緒さ(傷ましい話だと思ってもらえるかな?)
皆はさぞかし楽しかっただろうね。私? Randy Newmanを憎悪したよ。当時、他の誰よりも彼を憎んだね。彼は単なる意地悪な上級生か何かじゃなかった。彼は人気歌手だったんだ。
もし私が短気なドワーフだったら、そして私の手に高品質の剣が握られていたら、間違いなく彼を亡きものにしただろうね(チビに生きる資格なしだって? 違うね! それはお前だよ!)
関係者全員にとって幸いだったのは、私が短気なドワーフではなかったということだ。
件名:お忙しいところ、失礼します
親愛なるマーク・ローズウォーター様
私の名前はジョクルールと申します。私はドワーフ組合の組合長を勤めさせていただいております。同胞がゲーム内にて適切かつ正確な描写で描かれるよう提言するのは私の役目と思われます。
私たちの懸念するところはつまるところ以下の3点に集約されます。ご参照ください。
1.偏見について
ドワーフのステレオタイプについておふざけが過ぎるように思われます。お気づきと思いますが、怒りっぽくてチビで、高品質の武器を振り回したり火を放ったりして、物を破壊したり爆破したりするというあれです。
2.カードの強さについて
人気のあるカードになるためにはどうすればよいか? 構築で使われるレベルの強いカードに登場すべし、ということを私と同胞たちはよく理解しております。私自身は、すべてのドワーフカードがすべからくそのレベルにあるべきだとまでは考えておりません。しかしトーナメントシーンに出番がないというのは、ファンタジー世界の古参種族として正しい扱いを受けていないということである、と感じます。
3.頻度について
繰り返しますが、ドワーフはファンタジーの鍵となる種族です。よってエキスパンションごとに少なくとも3枚もしくはそれ以上のドワーフカードが収録されるのがあるべき姿ではないかと考えています。
他の組合は絶え間ない督促であなた様を煩わせているものと思われます。しかし私はそのような真似はしたくありません(このことからも「ドワーフは理性のない直情的な存在である」というステレオタイプが実存に基づくものでないことがお分かりになると思います)。
私たちの抱える問題については理解していただけたものと信じています。そして上記の3点について、ファンタジーの主要種族に対する当然の振る舞いとして、漏れなく対応していただけるであろうことも、信じております。
心からの感謝とともに、
ジョクルールより
ドワーフに聞いてみよう
問い:ドワーフの複数形は?
《Dwarven Armorer》
「一塊のドワーフ」
《ドワーフ自警団/Dwarven Vigilantes》
「知らねえよ。一山のドワーフ? そもそも知りたい奴なんていねえだろ」
《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「ドワーフの群れ」
《Dwarven Sea Clan》
「汚らしいドワーフたち」
《パーディック山の刀工/Pardic Swordsmith》
「怒れるドワーフたち」
《ドワーフ徴募兵/Dwarven Recruiter》
「ドワーフの群れ」
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「ドワーフのケツだらけ」
《Dwarven Weaponsmith》
「少な目のドワーフ」
《ムチ打ち人/Whipkeeper》
「いっぱいのドワーフ」
《ドワーフ巡視部隊/Dwarven Patrol》
「群なすドワーフ」
《沸血のドワーフ/Bloodfire Dwarf》
「雪崩のようなドワーフ」
一寸法師にも五分の魂
今現在、32体のドワーフが確認されている(もちろんマジック世界のドワーフの話だ。現実世界には32体以上いる)。さてその中で優れたデザインのドワーフといえば? その質問を待っていたよ。そろそろ「マジックザギャザリング ドワーフ・ベスト10」を決めるべきときだろうからね。
第10位《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Demolition+Team/ベスト10にこれが滑り込んだ理由は、もっともフレイバー的にもっとも優れたドワーフだからだ。壁が立ちふさがってるって? 誰を呼ぶべきかは明白じゃないか。
第09位《地雷の敷設者/Mine Layer》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mine+Layer/このカードがベスト10に入った理由もまた優れたフレイバーによるもので、さらにメカニズムによる表現も素晴らしい。プレイに際して、対戦相手に興味深い選択を強いるという点でも面白い。相手は土地をあと1回しか使えない状態になってしまうのだから。
第08位《爆弾兵団/Bomb Squad》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Bomb+Squad/元々はゴブリンのためにデザインされたカードだが、これこそまさにドワーフの冗談的な要素の極地だ。私はこのカードの「導火線に火をつけて、あとは爆発までただ待つだけ」というフレイバーが大好きだ。またこのカードは私がよいデザインに求めるものを持っていて、それはプレイヤーにアクションを要求するという点だ。クリーチャーAとBとCは4ターン後に爆発するらしい。さあ、どうする?
第07位《Dwarven Weaponsmith》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Weaponsmith/ベストテンに取り上げたカードを見直してると、メカニズムそれ自体から素晴らしいフレイバーが伝わってくるカードがいかに多いかに気づかされるね。どんなアーティファクトからでも鎧を作り出してプレイヤーに提供してくれる、というのはとても面白いと思う。《Dwarven Weaponsmith》が《Dwarven Armorer》よりも上位にきた理由は、アーティファクトを材料に鎧を作る、ということのほうが、手札を材料に鎧を作るよりも、より豊かなフレイバーにあふれているからだ。
第06位《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Thaumaturgist/R&Dの誰でも知っていることだが、私はこの「パワーとタフネスをひっくり返すカード」が大好きだ。この面白い効果の元祖は黒だった(レジェンドの《Transmutation》がそれだ)が、それを赤に導入してくれたのがこのチビ助だ(そういえば今現在ではどこに属している能力なんだろうね。自身のパワーとタフネスを交換する、という能力なら青にあるようだけど)。
第05位《ムチ打ち人/Whipkeeper》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Whipkeeper/私がこのカードを好きな理由は、そのメカニズムが他にプレイしているカードに大きく依存するためだ。もし君が他にダメージソースを多く抱えているなら、このカードの評価は上がる。しかしそうでないならイマイチなカードとなってしまう。他のカードに大きく依存するため、デッキを作る段階でプレイヤーに選択を強いる。そういうカードが私は大好きなのだ。
第04位《ドワーフ巡視部隊/Dwarven Patrol》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Patrol/この《ドワーフ巡視部隊/Dwarven Patrol》が第4位に入った理由は、そのデメリットのデザインが素晴らしいと感じられたからだ。カード自体が使えないというほどひどくはないが、いざ使おうとすると、思っていたほど簡単じゃないことに気づく。
第03位《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Miner/デザインを経験すればするほど、シンプルでエレガントなカードに惹かれるようになる。ルールテキストを4つの単語(Destroy target nonbasic land)に収めるのは簡単な仕事ではない。しかもそれが実にドワーフらしいフレイバーもあわせ持つとなればなおさらだ。
第02位《ドワーフ自警団/Dwarven Vigilantes》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Vigilantes/このカードは実にその名の表すところに忠実な能力を持っている。R&Dが俗に「Vigilante Ability」と呼んでいるもので、相手プレイヤーにダメージを与えるかわりに他のクリーチャーに移し替える能力のことだ。またこのカードは実際のプレイにおいても興味深い働きをみせてくれる。
第01位《ドワーフ戦士団/Dwarven Warriors》&《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》
カードデータ:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Warriors/成功したデザインとは、一見弱く見えるが実際に使ってみると実は強い、というカードだ。それよりも作るのが難しいのは、一見強そうに見えるが実際に使ってみると実は弱い、というカードだ。それよりもさらに作るのが難しいのは、一見強そうに見えて、実は弱くて、それでもなおプレイヤーたちに愛されるカードだ。
そういった意味で、この《ドワーフ戦士団/Dwarven Warriors》が成し遂げた偉業は、どれほど賛辞してもし過ぎるということはない。マジックを遊び始めた頃、このカードはとても強く見えたはずだ(この記事を読んでくれている初心者の君へ。気をつけたまえ。君が思っているほどにこのカードは強くないぞ。嘘じゃない)。
マジックに慣れるに従って、このカードの弱さに君は気づくだろう。しかしそれでもなお、君はこのカードを使いたくなる衝動に駆られることがあるはずだ。素晴らしいデザインとはそういうものだ。
分担された役割は小さくなる
長年に渡り、多くの作品でドワーフこそが小さきものとしてエンターテイメント作品のノベルティであり続けてきたが、唯一にして無二の存在であった、というわけでもない。以下にあげるのはポップカルチャー作品に登場するドワーフ以外の(そしてドワーフと同じ悩みを持つ)存在のリストだ。
・ウンパルンパ
・マンチキン
・イウォーク
・Mini-Me
・トゥルーズ=ロートレック
・ゲリー・コールマン
・Santa Elves
・ホビット
・レプラコーン
・ダニー・デヴィート
・Webster
・ウィロー
・Tattoo (Fantasy Islandから。これは外せない)
ハイホー、ハイホー!
マジックに登場するドワーフカードだけを使って「七人の小人」を召還しなくてはいけなくなったら、どうすればいいと思う? 考えたこともないだろうね(ないよね?)。32個ものネタを書かないといけないとなれば、やるしかない。
その1:ハッピー(幸せもの)
《Dwarven Weaponsmith》(http://magiccards.info/rv/en/144.html)
選んだ理由は、こいつ以外にイラストで笑顔を浮かべているドワーフがいなかったからだ。
その2:グランピー(怒りん坊)
《Dwarven Berserker》(http://magiccards.info/wl/en/97.html)
こいつ以上に腹を立てているドワーフはいない。
その3:ドーピー(お間抜け)
《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》(http://magiccards.info/al/en/143.html)
アルファ版のイラストを見てくれ。こいつより間抜けなドワーフはいないだろう。
その4:ドク(博士)
《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》(http://magiccards.info/wl/en/98.html)
異論はないだろう。こいつ以外にドク(博士)と呼ぶべきドワーフは思いつきすらしないだろうね。どこからどうみても科学の使徒だ。
その5:スリーピー(ねぼすけ)
《Dwarven Trader》(http://magiccards.info/hl/en/91.html)
こいつは難しかった。このカードを選んだ理由は、イラストに描かれている女性(彼女以外に描かれていないからには彼女がドワーフなんだろう)が全ドワーフのイラストの中でもっとも眠たげに見えたからだ。さらに言えば、これは1/1のバニラだ。寝る以外にすることもないだろう。
その6:スニージー(くしゃみ屋)
《火花魔道士/Spark Mage》(http://magiccards.info/od/en/222.html)
百聞は一見にしかずだ。イラストを見てくれ。お大事に!
その7:バッシュフル(恥ずかしがり屋)
《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》(http://magiccards.info/mr/en/170.html)
ほら、隠れてるだろ? ……これが精一杯だ。
なぜドワーフはゴブリンを憎むようになったのか
このコラムはなぜマジックにドワーフが少ないのかについて説明するいい機会だと思う。
それはゴブリンのせいだ。
いや、本当の話だ(より詳細な説明を聞きたいなら、私が昔に書いた"Here’s Looking at You Squid"というコラムを読んで欲しい。この記事は、一見、セファリッドについて述べているように見えるかもしれないが(まあ、そもそもセファリッド週間のために書いたものなんだが)実際はドワーフについて語っているコラムだ)。
マジックの赤という色において、小型のヒューマノイドのためだけに割けるスペースはそう大きくはない。そしてそのスペースの大半はゴブリンによって占められている。オデッセイブロックで試しにゴブリンをドワーフに交換してみたが、上手くいかなかった。プレイヤーの多くはゴブリンのほうがもっと好きなようだった。
私たちの仕事は究極的にはプレイヤーたちの望む物を提供することにある(ある一定ラインまではね。ときにプレイヤーたちは逆のものを求めることがあるから)。そのため私たちはゴブリンを対照的に強くすることにした(常にではないが、より多くの場合において)。
だからといって君たちがもう二度とドワーフに出会えないと言っているわけではない(というか、大丈夫、また会えるよ)。ただ会えたときはその出会いを大事にして欲しい。なぜならゴブリンほど頻繁に登場したりはしないだろうからね。
我がドワーフ的人生(その4)
背の高さについてもっとも差別的な扱いを受ける場所がどこだか知ってるかい? 私が小さい頃、自分の背の低さを嫌というほど思い知らされた場所がどこだったか?
遊園地だ。
そう、純粋に背丈だけを基準にした入門ゲートがあるのは遊園地だけなんだ。これが特に問題だったのは、私が小さな子供であり、ジェットコースターが大好きだったことだ(子供用の小さな奴を経験したことによってね)。
さらに問題だったのは私の身長が4フィート未満であり、かつジェットコースターの入り口には4フィートの高さをしたウサギちゃんのイラストが必ず描かれていたということだ(なお、さらにイカしたジェットコースターの条件は5フィート以上だったが、これが苦難として立ちふさがるのはまだ先の話だ)。
ところで君たちは別段ピエロを怖がったりはしないだろうね? あれだよ、板に描かれた奴で手を横に突き出しながら「この怖い怖いジェットコースターに乗るには、これだけの身長が必要だよ!」って吹き出しが付いてる奴だ。
私かい? 怖かったよ(いや、そもそもピエロ自体が怖いものだ。認めたまえ)。
このピエロは私の用心棒だった。このピエロこそが私を夢のジェットコースターとのあいだに立ちふさがる存在だった。私はピエロが大嫌いだったよ。Randy Newmanほどじゃないが、それでも大嫌いだったことにかわりはない。
さて、4フィートにわずか1インチ足りないだけの少年に出来る事はなんだったろう?
答えはウェスタン風衣装だ。
そう、私がジェットコースターに乗るためのカギはカウボーイブーツ以外になかった。1インチ以上の厚さのカカトを持つブーツこそが私に必要なものだったのだ。
面白いことにジェットコースターの係員は、どうして私みたいな子供がわざわざ遊園地にカウボーイブーツをはいて来ているのかについて尋ねたりはしなかった。
さて、ギムリやバッシュフルも同じような悩みを抱えたことがあるんだろうか?
どうだろうね。
ドワーフに聞いてみよう
問い:特殊地形についてどう思います?
《ドワーフの爆風掘り/Dwarven Blastminer》
「耐えられんね」
《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》
「壁が建ってるかどうかによるな」
《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
「嫌いだ」
《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「申し訳ないな、とは思う」
《Dwarven Sea Clan》
「知らん。そもそも土地から遠いところに住んでるんでな」
《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「俺の邪魔をしないなら許す」
《穿つドワーフ/Dwarven Driller》
「特殊だろうが基本だろうが関係ねえ、大嫌いだ」
《捕らわれのドワーフ/Enslaved Dwarf》
「ぶっちゃけどっちでもいい」
《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「土地だと? やっかいごとしか持ってきやがらねぇ」
《地雷の敷設者/Mine Layer》
「爆破するそのときだって、流してやる涙は1滴たりともないね。これでいいか?」
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「ははあ、なるほど。
ドワーフに質問しようってんだから特殊地形の話を持ち出すのは当然だな。
俺たちの神経を逆撫でしたくてしょうがないんだろう、うん?
ほーら、ちっこい奴らが腹を立てたぞ、ってな。
……失せやがれ、この野郎!!」
時間の問題
マジックの歴史に名を連ねたことのあるドワーフの名前を以下に列挙してみた。
・Dwarven Artillery
・Dwarven Artisan
・Dwarven Assassin
・Dwarven Berserker
・Dwarven Blacksmith
・Dwarven Brawler
・Dwarven Cadet
・Dwarven Captain
・Dwarven Commando
・Dwarven Cutthroat
・Dwarven Digger
・Dwarven Enforcer
・Dwarven Explorer
・Dwarven Farmer
・Dwarven Hero
・Dwarven Marauder
・Dwarven Mechanic
・Dwarven Mercenary
・Dwarven Pickpocket
・Dwarven Piker
・Dwarven Psychopath
・Dwarven Scout
・Dwarven Sharpshooter
・Dwarven Spy
・Dwarven Tactician
・Dwarven Thief
・Dwarven Tinkerer
・Dwarven Trailblazer
・Dwarven Tunnler
・Dwarven Vandal
・Dwarven Warlord
・Dwarven Wizard
ドワーフの狂戦士、伝説のドワーフについて語る
マジックに300体以上の伝説のクリーチャーがいるって知ってたかい? 300体だぞ!
伝説のゴブリンは? 6体だ。伝説のエルフは? 4体だ。伝説のヘビ人間は? 7体だ・・・・・・7体だと! 伝説のゴーレムは? 2体だ。伝説のセファリッドは? ああ、あの人の形をしたイカの化け物のことだよ。2体だ。
さて伝説のドワーフが何体か知ってるかい?
1体だ。しかもドワーフの爪弾き者だ。そのとおり、奴らが伝説のドワーフに祭り上げた唯一のドワーフは同胞に何一つ与えてくれやしなかったのさ。
それだけならまだしも、すぐ次のエキスパンションで殺しちまいやがった。どっちにしてもそれほど重要な立ち位置をもらってたわけでもないがな。
おっと、俺の前で「伝説のドワーフなら2体いるじゃないか」なんて抜かそうもんならぶっ飛ばすぞ。生きてるバルソーと死んでるバルソーで2体なんて認めねえからな。
あんなの合わせて1体だ、1体。
あまり知られていない事実
私の参加するプロツアーでは「クエスチョンマークのマジックゲームショー」という催し物が開かれることになっている。これは参加者が「賞金と賞品(から賞金を除いたもの)」が得られる、マジックのトリビアに関するクイズショーだ。例えば以下のような感じだね。
0.あいさつ(今日のテーマは、私たちの小さき友人であるドワーフについて)
1.マナコストに最も多くマナシンボルを含むドワーフは?
答え:
赤マナ3点を必要とする《血たぎるドワーフ/Dwarven Bloodboiler》
2.母音で名前が始まる唯一のドワーフは?
答え:
トーメントの《捕らわれのドワーフ/Enslaved Dwarf》
3.もっとも短いルールテキストを持つドワーフは?
答え:
一切のルールテキストを持たない、ホームランドの《Dwarven Trader》
4.《爆弾兵団/Bomb Squad》の用いるカウンターの名前は?
答え:
導火線カウンター
5.現在の32体のうち、テキストボックスに「土地」の単語を含むドワーフは何体?
答え:
たったの5体。
《ドワーフの爆風掘り/Dwarven Blastminer》
《穿つドワーフ/Dwarven Driller》
《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
《地雷の敷設者/Mine Layer》
《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
6.ウィザードのクリーチャータイプを持つ、唯一のドワーフの名前は?
答え:
《火花魔道士/Spark Mage》
7.1つの単語を除いてまったく同じルールテキストをもつ2体のドワーフの名前は?
答え:
《捕らわれのドワーフ/Enslaved Dwarf》と《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
8.初登場のエキスパンションでテキストボックスに注釈文のあった唯一のドワーフは?
答え:
オンスロートの《ドワーフの爆風掘り/Dwarven Blastminer》
9.初出から再版までもっとも長くかかったドワーフは?
答え:
《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》
初登場はアルファ版(とベータ版とアンリミテッド)。次に再版されたのは基本セットの第8版。
10.ドワーフのルールテキストに登場したことのあるクリーチャータイプをすべて述べよ。
答え:
バーバリアン:《頑強なるバルソー/Balthor the Stout》
ミニオン:《汚らわしき者バルソー/Balthor the Defiled》
オーク:《ドワーフ兵士/Dwarven Soldier》
採点表:
8~10点:
もし私が顔を出しているプロツアーに参加する機会があったら、ぜひQuestion Markに出場すること。君なら賞品を手に入れことができるはずだ。
5~7点:
Question Markに出場すべし。賞品を獲得するチャンスはほとんどないが、練習にはなる。
2~4点:
マジックのトリビアで身を立てていくのはあきらめた方がいい。
はっきり言わせてもらうが、ゴミだ。
1点:
君は2~4点の人をゴミと思うかもしれないが、それよりひどいゴミだね。
0点:
君は一言の罵詈雑言にすら値しない。吐き気がするね(まあ一言くらいはね)
-1点:
どうやったんだ? マイナス点はないはずだ。専門機関に診てもらったほうがいい。
ありえない点数をとっただけじゃなくて、算数からやり直したほうがいいという意味でね。
皮肉と偶然
このコラムは最初は軽い気持ちで始めたものだったが、なんという化け物に育ってしまったものやら。このコラムにかけた時間は過去のどのコラムにかけた時間よりも長いこと間違いなしだ(いくつかはほとんど同じくらいの時間を使ったかもしれないけどね)。
小さなドワーフたちのコラムがこれほどまでに大きくなるなんて誰が想像できただろう。君たちがこの記事を楽しんでくれたことを願うよ。ぜひとも感想を聞かせて欲しい。
このコラムが気に入った? 気に入らなかった? どこが良かった? 悪かった? 私が疑いようもないほどに狂ってるって信じてもらえたかな? ぜひ教えてくれ。
さて皮肉の次は、偶然についてだ。
このコラムを終わらせるに当たって、32という数字は単なる思いつきにすぎないわけではないことを語っておこう(私が何を言っているのか分からなくても大丈夫。おそらく掲示板で誰かがネタばらしをしてくれるだろう。ちなみにあらかじめ言っておくと数え間違いではないよ。The Simpsonがそれ自体パロディなようにね)
恐ろしいことにマジックにいるドワーフの数もちょうど32体だ。なんてこった。
何にせよ、このイカレたコラムもそろそろ終わりを告げるときがきた。来週はもっとシンプルな記事になる予定だ。楽しみにしていてくれ。あなたの人生にも32のイカしたネタが転がってますように。
マーク・ローズウォーター
【翻訳】ドワーフに関する32の小コラム/Thirty-Two Short Columns About Dwarves【Daily MTG】
Mark Rosewater
2005年11月21日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/daily/mr203
適材適所
J・R・R トールキンやゲリー・ガイギャックスやウォルト・ディズニーといった巨匠たちは、マジックが世に誕生するずっと前に、「ドワーフとはなんぞや」という命題に対する基本原則を制定してくださった。
背が低い? その通り。
穴を掘るのが好き? その通り(かも)。
鎧を作るのが上手い? その通り。
さて気になるのは(少なくともマジックのコラムで取り扱う上で気になるのは)、マジックザギャザリングが新たに生み出した「ドワーフとはなんぞや」が何かということだ。皆の興味を引けそうなネタでいうと以下のような感じか。
・ドワーフは(そして類人猿(Ape)も)基本地形ではない土地が大嫌い
・ドワーフは何かを爆破するのが大好き
・ドワーフは怒りっぽい
・ドワーフの髪型はモヒカン刈り(血気盛んなヤツは)
・ドワーフは「ケツ」と言うのが大好き
・ドワーフは不思議なことにバーバリアンとミニオンに対して支配力をもっている
・ドワーフは子馬をもっている
・ドワーフは子供のおもちゃから鎧を作ることができる
・ドワーフはどうやら野菜のカブが大好きらしい
・ドワーフの社会では戦士(Warrior)と放浪者(Nomad)は同じ働きをするらしい
・ドワーフは栄光の猛火の粋を極めたらしい(それが何であるにせよ)
・ドワーフには自警団と爆弾部隊と打撃部隊と秘術師と海の一族がいる
・ドワーフの男は自分の女に言い寄る奴がいないか気にする必要がない(婉曲的表現)
・ドワーフはフラーグのゴブリンのケツを蹴り上げる(そして「ケツ」と言うのが大好き)
それでパカはどうしたのか?
以下に挙げているのは、私が《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》のフレイバーテキストについて以前コラムで語った内容だ。なお、コラムが書かれたのは遥か昔、2002年03月18日のこと。あいだに入っている赤文字は今回私が新たに書き足したコメントだ。参照用にカードデータも置いておこうか。
~~~~~~~~~~~~~~~ ここから引用 ~~~~~~~~~~~~~~~
私はときについついふざけてしまうという一面がある(驚かせてしまっただろうね。すまない)。アングルードではこの面を遺憾なく発揮する機会をもらったが、競技用マジックでは私のこの悪癖を披露することはほとんど出来ずにいる。
……と当時は書いていたが、これは真っ赤な嘘だ。《ラースの猿人/Apes of Rath》、《スクイーのオモチャ/Squee’s Toy》、《このぐらい大きいバナナが欲しい!》、《ズシーン! ズシーン!》、リス関連のカード……よく考えてみたらいつも披露しっぱなしじゃないか。
ヨーロッパの古い言い伝えとトールキンの生み出した神話において、ドワーフは鉱夫として生み出されている。ドワーフは地面を掘り返すのが好きなのだ。
そのとき私の頭に閃いたのは、リス(Gophers)も同様に地面を掘り返すということだ。ふむ、ドワーフがリスみたいに扱われてたら面白いんじゃなかろうか?
ちなみリスはそれ自体が面白さだ。リアルなリスの話をしているわけじゃない。リスにまつわるネタが面白いんだ。
一度、うちの芝生がリスに荒らされたことがあった。腹立たしかったよ。しかしリスという存在はやっぱりコメディ世界の金メダリストだ。(もし証拠を見せろというなら映画「Caddyshack」をおススメする)
ドワーフを面白おかしくするためには(いや、ドワーフはもともと面白いんだが、さらに面白くするためには)、彼らをコメディな世界へ連れて行くべきでその乗り物こそがリスというわけだ。
書き手というものは時が経つにつれて自身が過去に書いたものを不思議とより魅力的に感じられてくるものだ。理由はわからない。しかしこのフレイバーテキストは個人的に大傑作だと思っている。
あまりにも傑作だと思ったのでセットへ収録されるよう全身全霊を賭けた。知ってるかもしれないが、コメディにはどれくらい面白いかを表すグラフみたいなものがあるんだ。こんな感じだ。
ほんの少しだと面白い。それより少し多いとつまらない。度が過ぎるとまた面白い。
これは真実だ。私が過去に書いた「Mons Made Me Do It」というコラムを読んでもらえればよく分かると思う。え? なんでここでゴブリンの話なんだ、って? おいおい、今週はドワーフ週間だ。なんでゴブリンの話をしないわけがあるんだい?(赤くて小さい奴らは面白いってことさ)
私の計画は実にシンプルなものだった。フレイバーテキストのメンバーが第3段階に届くまでひたすらこのジョークを押し通すこと。そんなわけで私は機会があるごとにこのジョークを繰り返したわけさ。メンバーたちが私に殺意を覚えはじめた数週間ののち、ついにジョークはまた面白さを増す段階に届いた。
この手法はカードのデザインでも有効だ。
この引用にいくつか付け加えておきたい。まずなんで私が登場人物にPakaという名前をつけたのかというと、響きがこのフレイバーテキストにふさわしく田舎者っぽかったからだ。
さらに虫殺しの薬の名前になぜ「Pestridder」というネーミングを用いた理由は、それが私が思いつける限りのファンタジーっぽい害虫駆除剤の名前だったからだ。そして「カブ(Rutabaga)」を選んだ理由はそれが野菜の中でも特に面白みを感じるものだったからだ。
そうそう。このフレイバーテキストの中で一番面白い単語がどれなのかを書き忘れた。それは「また(Again)」だ。このカードが「面白いフレイバーテキスト」に終わらず「名作」と成り得た(と私は信じている)理由はこれだ。この文章が美しくまとまっているのは「普通でない」からではなく、むしろ「いつもいつも起きている」からなのだ。(訳註:実際のフレイバーテキストには「again」という単語が見つからない。なんかの勘違いかな?)
ちょっと関係ない話をさせてくれ。私がまだ小さいころ、友達と「面白くない、面白い、とても面白い(Not Funny, Funny, Very Funny)」という遊びをしていた。遊び方は、まず1人がお題を決める(たとえば「野菜」のように)。別の1人がそのお題に当てはまるものを3つあげる。
1つ目には、面白くないものをあげなくてはいけない。2つ目は面白いもの、ただし面白すぎないものをあげないといけない。そして3つはとても面白いものをあげないといけない。もしお題が「野菜」だったら、以下のような感じだ。
お題「野菜!」
1つ目:
Corn/とうもろこし(面白くない)
2つ目:
Eggplant/ナス(面白い)
3つ目:
Rutabaga/カブ(とても面白い)
試しにもう1回やってみようか。
お題「動物!」
1つ目:
Bird/鳥(面白くない)
2つ目:
Cow/ウシ(面白い)
3つ目:
Platypus/カモノハシ(とても面白い)
みんなもぜひ遊んでみてくれ。
この箇所は省いてもよかったかもしれない。フレイバーテキストにはあまり関係ないくだりだからだ。しかし今あらためて読み返してみて、残しておくに値すると思われた。
~~~~~~~~~~~~~~~ ここまで引用 ~~~~~~~~~~~~~~~
放火魔週間を楽しみにしていてくれ。そのときは《補償金/Reparations》のフレイバーテキストについて話そうと思う。(訳註:上記の引用元であるフレイバーテキスト週間のコラムで第1位のカードが《補償金/Reparations》だった)
ドワーフの狂戦士、ドワーフのイメージについて語る
マジックで幸せそうなドワーフってやつを見たことがないことに気づいてたか? 悲しそうなやつでもいい。そもそも感情ってやつを表に出してるやつをだ。そう怒り以外のだ。
そりゃどんな人間だってドワーフってやつがムカツくチビだってことは知ってるもんだ。俺たちゃ小さすぎて怒りがあふれんばかりだ。
おおっと、気をつけろよ! 俺たちを馬鹿にしないほうがいい。煽られりゃ、すぐにでも殴り込みに行くぞ。殴るんでなけれりゃ、爆破しに行くかもしれん。それともお前らを燃やせる何かを持ち出すかもしれん。
もちろん穴を掘ったり鎧を作ったりで忙しいときゃ別だ。ああ、もちろんお前らから見ればそれをしているときすら怒ってるように見えるんだろうがな。神がそうあれとドワーフに望んだ姿でしか人の目に映らないように神の御手が働いてるんだろうさ。
俺たちがまったくお前らのイメージどおりの、かんしゃくもちでコミカルなキャラクターでなくなったら世界が崩壊する、ってな寸法だ。それがまた俺をいらだたせるんだ。まあ、でもお前らはそんな俺たちが大好きなんだろう。
ちょっとしたゲーム
マジックには32体のドワーフがおり、そのうち21体の名前は「ドワーフの(Dwarven)」で始まる。ここでどの「Dwarven」が「どのセットに登場したか」を覚えているかどうか試すクイズを出してみようと思う。以下の「Dwarven ~」がそれぞれ最初に登場した基本セット/エキスパンション名と組み合わせてみて欲しい。
<Dwarven ~>
<セット名>
1) Armorer
a) アライアンス/Alliances
2) Berserker
b) アルファ/Alpha
3) Blastminer
c) アポカリプス/Apocalypse
4) Driller
d) フォールンエンパイア/Fallen Empires
5) Demolition Team
e) ホームランド/Homelands
6) Patrol
f) ジャッジメント/Judgment
7) Sea Clan
g) オデッセイ/Odyssey
8) Strike Force
h) オンスロート/Onslaught
9) Vigilantes
i) ビジョンズ/Visions
10) Weaponsmith
j) ウェザーライト/Weatherlight
答えは以下の通りだ(反転で表示)。
<カード名>
<セット名>
1) 《Dwarven Armorer》
d) フォールンエンパイア/Fallen Empires
2) 《Dwarven Berserker》
j) ウェザーライト/Weatherlight
3) 《Dwarven Blastminer》
h) オンスロート/Onslaught
4) 《Dwarven Driller》
f) ジャッジメント/Judgment
5) 《Dwarven Demolition Team》
b) アルファ/Alpha
6) 《Dwarven Patrol》
c) アポカリプス/Apocalypse
7) 《Dwarven Sea Clan》
e) ホームランド/Homelands
8) 《Dwarven Strike Force》
g) オデッセイ/Odyssey
9) 《Dwarven Vigilantes》
i) ビジョンズ/Visions
10)《Dwarven Weaponsmith》
a) アライアンス/Alliances
構築環境におけるドワーフの輝かしい戦歴について
確かプロツアーのフィーチャーマッチで《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》を見かけたことがあるような、なかったような……分かった分かった、ちゃんと言うよ。
1998年、Scott Johnsが世界チャンピオンになるチャンスを失ったのは、Ben Rubinとの準々決勝の最終ゲームで《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》と《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》が彼を打ちのめした瞬間だった。
本当の話さ。
我がドワーフ的人生(その1)
私の「Making Magic」のコラムに共通するテーマの1つとして、コラムの要点を強調したいときに私のプライベートを用いる、ということがある。そして、今日、私たちはドワーフについて話している。
さて「ドワーフであるということはどういうことか」を理解する助けとなるような私の過去の経験について、君たちと共有したら面白いんじゃないかと考えたわけだ。
私は背の高い人間ではない。いや、実のところ、私は開発部でもっとも背の低いメンバーだ(状況は悪化する一方だ。何しろ新たに雇われるメンバーの平均身長は高くなるばかりだ)。
私は背の低い家系に生まれた。私の両親も背は低いし、私の子供たちも背が低い。しかも私が結婚相手として選んだ人も背が低い女性だった。
しかし思春期を迎えるまでは、私は単に背が低いというわけではなかった……私は「とても」背が低かったのだ。私はクラスで最も背が低い子だった。そう、もっとも背が低い男の子ではなくね。
なんてこった。
私たちのクラスには君たちが見たこともないほど小さい女の子が1人いた。彼女はピーターパンの劇でティンカーベルを演じた。縮尺があまり変わらなかったからだ。彼女は私より背が高かった。
私はあまりにも背が低かったので、周囲の人々は私を実際よりも2歳か3歳か若いものだと思っていた。私が小さい子供がやるようなことをしていると、周囲の人々は私のことを天才だと思って拍手してくれた。
ありがたいことに子供というものは(特に男の子は)優しい心を持っていて、身体的特徴などを理由にして仲間外れにするようなことはしなかった。
……そういえば聞いた話だが皮肉というものは活字だと伝わりづらいらしいね。
さっきのは皮肉だよ!
幼少期の頃、冬の休み時間に私が遊んでいたゲームは「大きい子から逃げろゲーム」というものだった(ここでいう「大きい」というのは「年上の」という意味じゃない。物理的に「私より大きい」という意味だ)。
念のために言っておくと自分から進んで参加したわけじゃない。気が付いたらそういう遊びになってしまっていたというべきかもしれない。どういうことかというと、でかい子供たちはすぐ私をつかまえて雪の中に転がそうとするので逃げ回っていたのだ。
(ちょっとした余談。現在の私は夢であった仕事につくことが出来た上に素晴らしい家族にも恵まれている。対して雪の中で私を追い回していたやつらはおそらく離婚の慰謝料を支払うためだけに退屈でつまらない仕事をこなしているに違いない。因果は巡る。覚えておくように)
さて、これから何が分かるか? 私がこのことから学んだのは、なぜドワーフがあんなにもぶっきらぼうな態度をとっているのかだ。
彼らは「大きい子から逃げろゲーム」なんか遊ぶつもりはないんだ。むしろ「俺に触りたければそうするがいい、その額にツルハシをぶち込んでやるぜゲーム」を開催するだろう。
私は確かにドワーフのようなぶっきらぼうな態度はもっていない(ツルハシもだ)。しかしそれでも小さいことによって被るあれやこれやについては理解できる気がする。
ドワーフに聞いてみよう
問い:戦闘で何体までのゴブリンなら一度に相手にできますか?
《バルソー》
「生死は? ……ああ、俺のな」
《沸血のドワーフ/Bloodfire Dwarf》
「6体。小さいやつなら7体まで」
《ドワーフ巡視部隊/Dwarven Patrol》
「10体から12体」
《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
「5体」
《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「7体」
《火花魔道士/Spark Mage》
「6体」
《爆弾兵団/Bomb Squad》
「15体」
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「30から40くらいか」
《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「1匹かな……運が良ければ」
《ドワーフ自警団/Dwarven Vigilantes》
「9体」
《ムチ打ち人/Whipkeeper》
「14体」
《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「8体だ。相手がモグじゃなければな。モグ相手じゃ3体がいいとこだ」
ジョーの考えてることはよく分からん
私はときどきゲームそれ自体の話ではなく、ゲームをプレイする人に焦点を当てた話をすることがある。R&Dに関するときでもよくそういう話をさせてもらっている。運の良いことに、ドワーフ関連でもネタがあった。
さて、開発部にいる特権の1つとして、他のメンバーが作ったゲームのプレイテストに参加できる点が挙げられる。これはそういった話の1つだ。
これはずっと前の話で、当時はまだリチャード(リチャード・ガーフィールドのこと)がオフィスにいた頃だ(今でも彼はときどき顔を出してはいるけれど、これは彼がウィザーズでフルタイムで働いていたときの話だ)。
リチャードは家族向けのパーティゲームをデザインしようとしていた。ドイツのゲームに着想を得て、とある手ごろなゲームを彼は作り上げた。彼はそれを「Hive Mind」(集団意識)と呼んでいた。
(もしかしたらいつか「What Were You Thinking」(何考えてるの?)という名前で発売されるかもしれない。発売元はウィザーズ社以外かもしれないけど、もしEbayやおもちゃ屋さんで見かけたらぜひ手に取ってみて欲しい)
ゲームの流れはこんな感じだ。まず君は質問をされる。それに対して「他のプレイヤーと一致するような回答」を書く。つまりポイントはもっとも多数派となれるよう、プレイヤーたちの考えを予想して「もっとも一般的な答え」を思いつくことだ。
ほとんどの開発部のメンバーはこの「Hive Mind」がなかなか上手かったが、ただ1人、例外がいた。彼の名前はジョー・グレイスといった。
マジックの仕事にはあまり携わっていなかったが、アングルードの《Timmy, Power Gamer》のイラストのモデルになった人物だ(当時の開発部で「もっともティミーな」プレイヤーが彼だったからだ)。
理由は不明だが、とにかくジョーは「Hive Mind」が下手だった。
いや、下手だった、は不正確だね。
彼は「ド下手」だった。
何らかの理由で、彼の遺伝子には「他人と同じ考えをする」という能力が欠けていた。それにも関わらず、ジョーはこのゲームに繰り返し参加した。ずっと下手なままではないと証明するためだ。
しかし遊べば遊ぶほど、皆は彼はこのゲームに向いていないのだと確信せざるを得なかった。そしてジョーと「Hive Mind」を遊ぶのが最後になったゲームでのことだ。
そのときのお題は「有名な3人のドワーフの名前をあげろ」だった(今日のコラムに関係ある話題だ、って言ったろ?)。皆が答えを書き上げた。
ジョーは笑みを浮かべていた。彼は確信していたたのだ。ついに運命の女神は微笑んだのだ。これこそが俺の「お題」だ。今回に限って孤立することなどない。ついに有象無象の1人になれるのだ。ジョーは興奮のあまり、答えを最初に公開させてくれと申し出た。
念のため。今回のお題は「有名な3人のドワーフの名前をあげろ」であり、他のプレイヤーと答えを一致させることがゲームの目的だ。
ジョーは答えを書いた紙を取り出した。さらに自信のほどを見せつけるためか指まで鳴らした。「よし」と彼は始めた。「まずギムリ!」(余談ながら追記しておくと、他の皆の答えは「白雪姫と七人のドワーフ」に登場するドワーフたち、「ドーピー、グランピー、ドク」だった)
ドワーフの狂戦士、土地破壊とドワーフについて語る
お前ら、なんで俺らドワーフがやっきになって土地をぶっ壊して回ってるか、知ってるか? ありゃ、好きでやってんじゃねえんだ! そうするように言われてるからやってんだ!
……あ? なんでそうするように言われるかって!? あいつら、俺らにトーナメント会場に顔を出して欲しくないのさ!
みんな知ってることだろ、開発部の奴らは土地破壊カードをこれでもかとクソカードに変えてやがる。そりゃそうさ、誰だって土地を片っ端からぶっ壊されたくはないわな。
さて、じゃあクソカードを背負わせるのにふさわしいのは誰だ? ちっこい奴らだ!
それだけならまだしも、あいつら、たまに上質な土地破壊カードを作りはするが、それだけはなぜか絶対にドワーフにしねえんだ!
俺たちだって、必要とありゃなだれの1つにくらい乗ってみせるぜ! だけど違うんだな、奴らは俺たちにダメなやつらのままでいて欲しいのさ。
俺たちの居場所を見つけてくれようとしている? 10円レアのボックスの中にだろうよ!
ドワーフに聞いてみよう
問い:自分より背の高い相手とデートしたことありますか?
《ドワーフ徴募兵/Dwarven Recruiter》
「あるよ」
《地雷の敷設者/Mine Layer》
「ある」
《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「ある」
《Dwarven Trader》
「そもそも選択肢がないんだが」
《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「ある」
《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
「あるよ」
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「自分より背の高い相手とデートはしない」
《Dwarven Armorer》
「ある」
《Dwarven Sea Clan》
「あいよ」
《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「もちろん」
《パーディック山の刀工/Pardic Swordsmith》
「ある」
《Dwarven Lieutenant》
「ある」
《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》
「ある」
「ある」
「ある」
ドワーフの嫌う言い回し
"come up short" (足りない)
"short comings" (短所)
"short sighted" (短絡的)
"short tempered" (短気)
"for short" (短縮系で)
"in short" (手短に)
"short for" (短縮系で)
"short of" (不足している)
"short end of the stick" (貧乏くじを引く)
"short films" (短編映画)
"short people" (小さい人)
"little people" (一般人)
"vertically challenged" (縦方向にハンデを負っている = ちび)
"ground lickers" (地をなめる人 = ちび)
"low men on the totem pole" (トーテムポールの下段担当 = ちび)
"small pickings" (重箱の隅をつつく)
"small time" (取るに足らない)
"small talk" (世間話)
"small good that’ll do" (それで足りるだろ)
"Smallville" (作品名。邦題:ヤング・スーパーマン)
"feel small" (肩身が狭い)
"a little" (少々)
"little by little" (少しずつ)
"pick it up a little"
"little importance" (重要性が低い)
"tiny dancer" (作品名)
"tom thumb" (作品名。邦訳:親指トム)
"wee _____ " (小さな ~)
"little fella" (坊や、お嬢ちゃん)
"knee high to a grasshopper" (バッタの膝くらいの高さ)
"below knee level" (ひざ下レベル)
"dwarf short" (小人症)
"How’s the weather down there?" (下界の天気はどうだい?)
"Would you mind shining my shoes?" (ちょうどいいや、靴磨いてくれよ)
"Oops, I almost stepped on you." (あぶねえ、踏んづけるところだった)
我がドワーフ的人生(その2)
さっきはその場にいるもっとも小さきものであることによって遭遇しうる物理的な危険性について述べた。次は精神的なものについて語ろうと思う。
もしかしたら君たちは、あまりにも背が低いと逆にそれをあげつらう人もいないかもしれない、と考えるかもしれない(それによって何かが多少ましになるというわけでもないが、非常に背が高い友人たちによると、彼らもまた私とは正反対の方向において同じような境遇だったそうだ)。
身長が私にとって大きな問題となったのは、それが周囲の皆にとっても大きな関心事だったからだ。私は同じ子供たちによってからかわれることに対する心の準備は出来ていた。しかし同様に大人たちからもからかわれることは予想していなかったのだ。
分かるだろう? 私は大人たちは味方だと思っていたんだ。
しかし私は負け犬だった(余談だが、私がUnderdogの大ファンなのはそれが理由だと思う)
権威は弱者を守ってくれるんじゃなかったのか?
大人は大人びた振る舞いをしてくれるんじゃないのか?
そう考えるのが普通だろう。ところが大人たちも他の人間と同じように私の身長をからかいの種にした。なぜだかは分からないが、身長についてからかうことはひどいことだと思われていないふしがある。
いや、だって考えてもみてくれ。背丈についてからかう人たちだって、太った子供を同じようにからかったりはしないだろう?(もしかしたらするのかもしれないけどね。もしそうだとしたらそれはとても悲しいことだ。大人たちは大人なんだからちゃんと大人びた対応をしてくれるはずだ、と子供が思ってはいけないということになる)
しかし大人たちによるもっともひどい嫌がらせはここぞというときまで、そう、とある特別な夜まで大事にとっておかれた。
それは私の初めての学内ダンスパーティだった。確かあれは私が小学校6年生のときだったと思う(そのとおり。私を成長させてくれるはずの思春期という時期は、逆に出来る限りその仕事を終えるのを先延ばしにしようと粘り続けたのだ)。
小学生のダンスパーティというものを覚えていない(もしくは意図的に忘れた)みんなのために書いておこう。それはとてもダンスと呼べるような代物じゃなかった(まあ、私も今や老いぼれの身だ。もしかしたら今ではすっかり違うものになっているのかもしれないが、何にせよ、当時はそういうものだったと思ってくれ)。
当時の子供たちはデートなんてしたことない子が大半で、大人としてはもっと積極的になれと後押ししたくてしょうがなかったらしい。
大人たちはダンスパーティをたった一組のカップル、その2人っきりでスタートさせたんだ。ふむ。さて誰がふさわしいだろうか?
いやいや、もっとも面白い取り合わせのカップル以外ありえないだろう? そう、たとえばもっとも背が低い男子ともっとも背が高い女子のカップルさ。
それ以外ないだろう? せっかくのダンスパーティだ。
すでに普段から十分に居心地の悪い思いをしている2人をさらにどん底に突き落とさなくてどうする? ……ちなみに私は逃げなかったよ。踊るように言われたし、なんというか先生に反抗するようなタイプでもなかったしね。
私より頭2つ分は高い女子とダンスを踊りながら、私はひどく腹を立てていたことを覚えている。毎日、嫌な思いをしてきているだけでもたくさんだというのに、公立の小学校みずから率先して辱めを与えてくるとは!
こんなことは間違ってる。これと同じくらいの辱めなんてありえるのか!? 一番にきびが多い男子と一番胸が小さい女子とか!?
さてこれがドワーフの話とどう関係してくるのか。この出来事から私はなぜドワーフが単一の種として存続しているのかが分かったからだ。彼らは社交的ではないからだ。
その理由は?
自明のことだ。もし社交的だったらサイクロプスの女子とでもダンスさせられてることだろう。
ドワーフの狂戦士、あごひげについて語る
なんでドワーフが誰も彼もあごひげを伸ばさせられてるのか、不思議に思ったことはねえか? 俺たちの顔を見たくねえからだよ。
人間どもは狡猾さ。
どうやって俺たち小せえ奴らを見張ってるか知ってるかい? テレビだろうが映画だろうが、とにかく出てくるドワーフは全部あごひげつきさ。ああ、ただ1人をのぞいてな。
こうすりゃ、うちらの1人があごひげをそって歩き回ろうなんて考えようもんなら、何十人もの芸人どもにこう呼ばれるのさ。「おう、ドーピー!」ってな!
ドワーフと小人症の違いについて
君も気になってることだと思う。医学的な話をすると、ドワーフは小柄な体型をしており(4フィート10インチ以上であることはまれだ)、これは生物学的もしくは遺伝的な理由によるものだ。また特徴として全体的に小柄であり、腕と足と胴体がさらに相対的に短めでもある。小人症は医学用語で体型が小さい人の呼称だ。彼らは相対的に腕と足と胴体が短めでこれはホルモンの異常が原因だ。
生まれそうで生まれなかったドワーフたち
ミラージュには《Dwarven Scouts/ドワーフの斥候》という呪文があった。これは赤の呪文で3体の1/2ドワーフ・トークンを生み出す効果だった。しかしこれは実際に世に出ることはなかった。何が起きたかって? これを見てくれ。
まあ、聞いて欲しい。私たちは「3体のドワーフが敵の陣地に潜入しているイラスト」を依頼したところ、この絵が出てきたんだ。これを見るや否や、私は当時のアート・ディレクターであったスー=アンの元へ向かった。
私:やあ、スー・アン。《ドワーフの斥候》のイラストを見たかい?
スー:ええ、見たわよ。気に入った?
私:実はそうでもないんだ。ちょっと問題があってね。
スー:なに?
私:一緒に確認したほうがいいと思ってね、イラストを持ってきたんだ。ほら、これだよ。
スー:Geofの色使いは素晴らしいと思うわ。
私:違うんだ。イラストの質は問題じゃないんだ。
スー:はいはい、じゃあ何が問題なの?
私:このカードの名前は《ドワーフの斥候》だ。
スー:それで?
私:もう1回カード名を言うよ。《ドワーフの斥候》だ。「ドワーフの」ね。
スー:やっと分かったわ。あなたはこれが斥候には見えないって言いたいのね。
私:違うよ! 私が言いたいのはこれがドワーフには見えないって話だ!
スー:見えるわ?
私:絶対に見えないね。
スー:ドワーフに見えないってことはないわ。
イラストレーターの裁量に多少の幅は持たせてあげないとダメよ。
私:これは今回限りのオリジナルなクリーチャーじゃないんだ。
ドワーフにはドワーフなりの見た目というものがあるんだ。
スー:ちょっと心が狭いんじゃないかしら。
自分の見たいものだけを見ようとしてる気がするわ。
私:ドワーフには決まった見た目ってものがあるんだよ。特徴的な体型もしてるし、
あごひげも生やしてる。イラストのクリーチャーたちはひげが生えてないじゃないか。
スー:ドワーフだからってあごひげが生えてなきゃいけないってことはないわよ。
私:いけないんだよ、マジックの世界だけじゃなくて、
ここ何十年というポップ・カルチャーの歴史においてもね。
スー:ミラージュのドワーフはこうなのかもしれないわ。
私:これがドワーフに見えないということだけじゃなくて、
これが別な何かに見えるということも分かってもらえるよね?
スー:何かって?
私:よく見てくれ。
スー:で?
私:チビで、緑で、尖った耳をしてる。
スー:ごめんなさい、何を言いたいのかよく分からないわ。
私:君はファンタジー世界に関わる仕事をしてるんだよね?
スー:まだ分からないわ。
私:ゴブリンだよ! こいつらはゴブリンだ!!
スー:私にはドワーフに見えるけど。
私:君にはそう見えるのかもしれないし、イラストレーターにもそう見えるのかもしれない。
けど、世界の残りのみんなにはそうは見えないんだ。なんでか分かるかい?
スー:なんで?
私:こいつらがドワーフじゃないからさ! こいつらはゴブリンなんだよ!!
スー:あなたにとってはね。
私:そのとおり、私にはね。そしてファンタジー好きなら誰でもね!
たとえばマジックのプレイヤーたちとかね!!
スー:そう言われても今更イラストを変更することはできないわよ。
私:え、いや、だけど私たちはドワーフのイラストを発注したんだよ?
スー:Geof Darrowの解釈ではこれがドワーフなの。
私:……分かった。分かったよ。どうやら相談する先を間違えたらしい。
これはイラストの問題じゃないんだな。デベロップメント・チームのところに行くよ。
そして《ゴブリン斥候隊/Goblin Scouts》が生まれたというわけさ。
ドワーフに聞いてみよう
問い:白雪姫に出てくるドワーフたちってリアル?
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「あんなベッピンさんが7人のチビどもと1つ屋根の下に住んで何もないなんてあり得ねえ」
《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》
「たったの7人ぽっちで鉱山で働いてて、どことも知れない場所にある小さな小屋に詰め込まれて暮らすのがリアルかどうかだって?」
《血たぎるドワーフ/Dwarven Bloodboiler》
「あんな馬鹿っぽい歌をうたうドワーフはいない」
《Enslaved Dwarf》
「スリーピー(ねぼすけ)とかスニージー(くしゃみ屋)とかドク(博士)みたいにアホな名前したドワーフはいないよ。たぶんね」
《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「俺はそこそこリアルだと思ったけどな」
《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
「ドーピー(ぼんやり)だけは無い。30秒以上黙ってられるドワーフなんてあり得ねえ」
《Dwarven Trader》
「グランピー(怒りん坊)は俺のおやじに似てる気がする」
《Dwarven Lieutenant》
「口笛を吹くドワーフなんていないから。ああ、あと一列になって歩くドワーフも」
《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「エンディングは泣けたね」
Mark Rosewater
2005年11月21日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/daily/mr203
適材適所
J・R・R トールキンやゲリー・ガイギャックスやウォルト・ディズニーといった巨匠たちは、マジックが世に誕生するずっと前に、「ドワーフとはなんぞや」という命題に対する基本原則を制定してくださった。
背が低い? その通り。
穴を掘るのが好き? その通り(かも)。
鎧を作るのが上手い? その通り。
さて気になるのは(少なくともマジックのコラムで取り扱う上で気になるのは)、マジックザギャザリングが新たに生み出した「ドワーフとはなんぞや」が何かということだ。皆の興味を引けそうなネタでいうと以下のような感じか。
・ドワーフは(そして類人猿(Ape)も)基本地形ではない土地が大嫌い
・ドワーフは何かを爆破するのが大好き
・ドワーフは怒りっぽい
・ドワーフの髪型はモヒカン刈り(血気盛んなヤツは)
・ドワーフは「ケツ」と言うのが大好き
・ドワーフは不思議なことにバーバリアンとミニオンに対して支配力をもっている
・ドワーフは子馬をもっている
・ドワーフは子供のおもちゃから鎧を作ることができる
・ドワーフはどうやら野菜のカブが大好きらしい
・ドワーフの社会では戦士(Warrior)と放浪者(Nomad)は同じ働きをするらしい
・ドワーフは栄光の猛火の粋を極めたらしい(それが何であるにせよ)
・ドワーフには自警団と爆弾部隊と打撃部隊と秘術師と海の一族がいる
・ドワーフの男は自分の女に言い寄る奴がいないか気にする必要がない(婉曲的表現)
・ドワーフはフラーグのゴブリンのケツを蹴り上げる(そして「ケツ」と言うのが大好き)
それでパカはどうしたのか?
以下に挙げているのは、私が《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》のフレイバーテキストについて以前コラムで語った内容だ。なお、コラムが書かれたのは遥か昔、2002年03月18日のこと。あいだに入っている赤文字は今回私が新たに書き足したコメントだ。参照用にカードデータも置いておこうか。
Dwarven Miner / ドワーフ鉱夫 (1)(赤)
クリーチャー - ドワーフ(Dwarf)
(2)(赤),(T):基本でない土地1つを対象とし、それを破壊する。
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Dwarven+Miner/
フレイバーテキスト(原文):
"Fetch the pestridder, Paka ─ we’ve got dwarves in the rutabagas!"
─ Jamul, Femeref farmer
フレイバーテキスト(日本語訳):
パカ、虫殺しの薬を持ってきてくれ ─── カブがドワーフにやられとる!
─── フェメレフの農夫、ジャムール
~~~~~~~~~~~~~~~ ここから引用 ~~~~~~~~~~~~~~~
私はときについついふざけてしまうという一面がある(驚かせてしまっただろうね。すまない)。アングルードではこの面を遺憾なく発揮する機会をもらったが、競技用マジックでは私のこの悪癖を披露することはほとんど出来ずにいる。
……と当時は書いていたが、これは真っ赤な嘘だ。《ラースの猿人/Apes of Rath》、《スクイーのオモチャ/Squee’s Toy》、《このぐらい大きいバナナが欲しい!》、《ズシーン! ズシーン!》、リス関連のカード……よく考えてみたらいつも披露しっぱなしじゃないか。
ヨーロッパの古い言い伝えとトールキンの生み出した神話において、ドワーフは鉱夫として生み出されている。ドワーフは地面を掘り返すのが好きなのだ。
そのとき私の頭に閃いたのは、リス(Gophers)も同様に地面を掘り返すということだ。ふむ、ドワーフがリスみたいに扱われてたら面白いんじゃなかろうか?
ちなみリスはそれ自体が面白さだ。リアルなリスの話をしているわけじゃない。リスにまつわるネタが面白いんだ。
一度、うちの芝生がリスに荒らされたことがあった。腹立たしかったよ。しかしリスという存在はやっぱりコメディ世界の金メダリストだ。(もし証拠を見せろというなら映画「Caddyshack」をおススメする)
ドワーフを面白おかしくするためには(いや、ドワーフはもともと面白いんだが、さらに面白くするためには)、彼らをコメディな世界へ連れて行くべきでその乗り物こそがリスというわけだ。
書き手というものは時が経つにつれて自身が過去に書いたものを不思議とより魅力的に感じられてくるものだ。理由はわからない。しかしこのフレイバーテキストは個人的に大傑作だと思っている。
あまりにも傑作だと思ったのでセットへ収録されるよう全身全霊を賭けた。知ってるかもしれないが、コメディにはどれくらい面白いかを表すグラフみたいなものがあるんだ。こんな感じだ。
ほんの少しだと面白い。それより少し多いとつまらない。度が過ぎるとまた面白い。
これは真実だ。私が過去に書いた「Mons Made Me Do It」というコラムを読んでもらえればよく分かると思う。え? なんでここでゴブリンの話なんだ、って? おいおい、今週はドワーフ週間だ。なんでゴブリンの話をしないわけがあるんだい?(赤くて小さい奴らは面白いってことさ)
私の計画は実にシンプルなものだった。フレイバーテキストのメンバーが第3段階に届くまでひたすらこのジョークを押し通すこと。そんなわけで私は機会があるごとにこのジョークを繰り返したわけさ。メンバーたちが私に殺意を覚えはじめた数週間ののち、ついにジョークはまた面白さを増す段階に届いた。
この手法はカードのデザインでも有効だ。
この引用にいくつか付け加えておきたい。まずなんで私が登場人物にPakaという名前をつけたのかというと、響きがこのフレイバーテキストにふさわしく田舎者っぽかったからだ。
さらに虫殺しの薬の名前になぜ「Pestridder」というネーミングを用いた理由は、それが私が思いつける限りのファンタジーっぽい害虫駆除剤の名前だったからだ。そして「カブ(Rutabaga)」を選んだ理由はそれが野菜の中でも特に面白みを感じるものだったからだ。
そうそう。このフレイバーテキストの中で一番面白い単語がどれなのかを書き忘れた。それは「また(Again)」だ。このカードが「面白いフレイバーテキスト」に終わらず「名作」と成り得た(と私は信じている)理由はこれだ。この文章が美しくまとまっているのは「普通でない」からではなく、むしろ「いつもいつも起きている」からなのだ。(訳註:実際のフレイバーテキストには「again」という単語が見つからない。なんかの勘違いかな?)
ちょっと関係ない話をさせてくれ。私がまだ小さいころ、友達と「面白くない、面白い、とても面白い(Not Funny, Funny, Very Funny)」という遊びをしていた。遊び方は、まず1人がお題を決める(たとえば「野菜」のように)。別の1人がそのお題に当てはまるものを3つあげる。
1つ目には、面白くないものをあげなくてはいけない。2つ目は面白いもの、ただし面白すぎないものをあげないといけない。そして3つはとても面白いものをあげないといけない。もしお題が「野菜」だったら、以下のような感じだ。
お題「野菜!」
1つ目:
Corn/とうもろこし(面白くない)
2つ目:
Eggplant/ナス(面白い)
3つ目:
Rutabaga/カブ(とても面白い)
試しにもう1回やってみようか。
お題「動物!」
1つ目:
Bird/鳥(面白くない)
2つ目:
Cow/ウシ(面白い)
3つ目:
Platypus/カモノハシ(とても面白い)
みんなもぜひ遊んでみてくれ。
この箇所は省いてもよかったかもしれない。フレイバーテキストにはあまり関係ないくだりだからだ。しかし今あらためて読み返してみて、残しておくに値すると思われた。
~~~~~~~~~~~~~~~ ここまで引用 ~~~~~~~~~~~~~~~
放火魔週間を楽しみにしていてくれ。そのときは《補償金/Reparations》のフレイバーテキストについて話そうと思う。(訳註:上記の引用元であるフレイバーテキスト週間のコラムで第1位のカードが《補償金/Reparations》だった)
ドワーフの狂戦士、ドワーフのイメージについて語る
マジックで幸せそうなドワーフってやつを見たことがないことに気づいてたか? 悲しそうなやつでもいい。そもそも感情ってやつを表に出してるやつをだ。そう怒り以外のだ。
そりゃどんな人間だってドワーフってやつがムカツくチビだってことは知ってるもんだ。俺たちゃ小さすぎて怒りがあふれんばかりだ。
おおっと、気をつけろよ! 俺たちを馬鹿にしないほうがいい。煽られりゃ、すぐにでも殴り込みに行くぞ。殴るんでなけれりゃ、爆破しに行くかもしれん。それともお前らを燃やせる何かを持ち出すかもしれん。
もちろん穴を掘ったり鎧を作ったりで忙しいときゃ別だ。ああ、もちろんお前らから見ればそれをしているときすら怒ってるように見えるんだろうがな。神がそうあれとドワーフに望んだ姿でしか人の目に映らないように神の御手が働いてるんだろうさ。
俺たちがまったくお前らのイメージどおりの、かんしゃくもちでコミカルなキャラクターでなくなったら世界が崩壊する、ってな寸法だ。それがまた俺をいらだたせるんだ。まあ、でもお前らはそんな俺たちが大好きなんだろう。
ちょっとしたゲーム
マジックには32体のドワーフがおり、そのうち21体の名前は「ドワーフの(Dwarven)」で始まる。ここでどの「Dwarven」が「どのセットに登場したか」を覚えているかどうか試すクイズを出してみようと思う。以下の「Dwarven ~」がそれぞれ最初に登場した基本セット/エキスパンション名と組み合わせてみて欲しい。
<Dwarven ~>
<セット名>
1) Armorer
a) アライアンス/Alliances
2) Berserker
b) アルファ/Alpha
3) Blastminer
c) アポカリプス/Apocalypse
4) Driller
d) フォールンエンパイア/Fallen Empires
5) Demolition Team
e) ホームランド/Homelands
6) Patrol
f) ジャッジメント/Judgment
7) Sea Clan
g) オデッセイ/Odyssey
8) Strike Force
h) オンスロート/Onslaught
9) Vigilantes
i) ビジョンズ/Visions
10) Weaponsmith
j) ウェザーライト/Weatherlight
答えは以下の通りだ(反転で表示)。
<カード名>
<セット名>
1) 《Dwarven Armorer》
d) フォールンエンパイア/Fallen Empires
2) 《Dwarven Berserker》
j) ウェザーライト/Weatherlight
3) 《Dwarven Blastminer》
h) オンスロート/Onslaught
4) 《Dwarven Driller》
f) ジャッジメント/Judgment
5) 《Dwarven Demolition Team》
b) アルファ/Alpha
6) 《Dwarven Patrol》
c) アポカリプス/Apocalypse
7) 《Dwarven Sea Clan》
e) ホームランド/Homelands
8) 《Dwarven Strike Force》
g) オデッセイ/Odyssey
9) 《Dwarven Vigilantes》
i) ビジョンズ/Visions
10)《Dwarven Weaponsmith》
a) アライアンス/Alliances
構築環境におけるドワーフの輝かしい戦歴について
確かプロツアーのフィーチャーマッチで《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》を見かけたことがあるような、なかったような……分かった分かった、ちゃんと言うよ。
1998年、Scott Johnsが世界チャンピオンになるチャンスを失ったのは、Ben Rubinとの準々決勝の最終ゲームで《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》と《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》が彼を打ちのめした瞬間だった。
本当の話さ。
我がドワーフ的人生(その1)
私の「Making Magic」のコラムに共通するテーマの1つとして、コラムの要点を強調したいときに私のプライベートを用いる、ということがある。そして、今日、私たちはドワーフについて話している。
さて「ドワーフであるということはどういうことか」を理解する助けとなるような私の過去の経験について、君たちと共有したら面白いんじゃないかと考えたわけだ。
私は背の高い人間ではない。いや、実のところ、私は開発部でもっとも背の低いメンバーだ(状況は悪化する一方だ。何しろ新たに雇われるメンバーの平均身長は高くなるばかりだ)。
私は背の低い家系に生まれた。私の両親も背は低いし、私の子供たちも背が低い。しかも私が結婚相手として選んだ人も背が低い女性だった。
しかし思春期を迎えるまでは、私は単に背が低いというわけではなかった……私は「とても」背が低かったのだ。私はクラスで最も背が低い子だった。そう、もっとも背が低い男の子ではなくね。
なんてこった。
私たちのクラスには君たちが見たこともないほど小さい女の子が1人いた。彼女はピーターパンの劇でティンカーベルを演じた。縮尺があまり変わらなかったからだ。彼女は私より背が高かった。
私はあまりにも背が低かったので、周囲の人々は私を実際よりも2歳か3歳か若いものだと思っていた。私が小さい子供がやるようなことをしていると、周囲の人々は私のことを天才だと思って拍手してくれた。
ありがたいことに子供というものは(特に男の子は)優しい心を持っていて、身体的特徴などを理由にして仲間外れにするようなことはしなかった。
……そういえば聞いた話だが皮肉というものは活字だと伝わりづらいらしいね。
さっきのは皮肉だよ!
幼少期の頃、冬の休み時間に私が遊んでいたゲームは「大きい子から逃げろゲーム」というものだった(ここでいう「大きい」というのは「年上の」という意味じゃない。物理的に「私より大きい」という意味だ)。
念のために言っておくと自分から進んで参加したわけじゃない。気が付いたらそういう遊びになってしまっていたというべきかもしれない。どういうことかというと、でかい子供たちはすぐ私をつかまえて雪の中に転がそうとするので逃げ回っていたのだ。
(ちょっとした余談。現在の私は夢であった仕事につくことが出来た上に素晴らしい家族にも恵まれている。対して雪の中で私を追い回していたやつらはおそらく離婚の慰謝料を支払うためだけに退屈でつまらない仕事をこなしているに違いない。因果は巡る。覚えておくように)
さて、これから何が分かるか? 私がこのことから学んだのは、なぜドワーフがあんなにもぶっきらぼうな態度をとっているのかだ。
彼らは「大きい子から逃げろゲーム」なんか遊ぶつもりはないんだ。むしろ「俺に触りたければそうするがいい、その額にツルハシをぶち込んでやるぜゲーム」を開催するだろう。
私は確かにドワーフのようなぶっきらぼうな態度はもっていない(ツルハシもだ)。しかしそれでも小さいことによって被るあれやこれやについては理解できる気がする。
ドワーフに聞いてみよう
問い:戦闘で何体までのゴブリンなら一度に相手にできますか?
《バルソー》
「生死は? ……ああ、俺のな」
《沸血のドワーフ/Bloodfire Dwarf》
「6体。小さいやつなら7体まで」
《ドワーフ巡視部隊/Dwarven Patrol》
「10体から12体」
《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
「5体」
《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「7体」
《火花魔道士/Spark Mage》
「6体」
《爆弾兵団/Bomb Squad》
「15体」
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「30から40くらいか」
《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「1匹かな……運が良ければ」
《ドワーフ自警団/Dwarven Vigilantes》
「9体」
《ムチ打ち人/Whipkeeper》
「14体」
《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「8体だ。相手がモグじゃなければな。モグ相手じゃ3体がいいとこだ」
ジョーの考えてることはよく分からん
私はときどきゲームそれ自体の話ではなく、ゲームをプレイする人に焦点を当てた話をすることがある。R&Dに関するときでもよくそういう話をさせてもらっている。運の良いことに、ドワーフ関連でもネタがあった。
さて、開発部にいる特権の1つとして、他のメンバーが作ったゲームのプレイテストに参加できる点が挙げられる。これはそういった話の1つだ。
これはずっと前の話で、当時はまだリチャード(リチャード・ガーフィールドのこと)がオフィスにいた頃だ(今でも彼はときどき顔を出してはいるけれど、これは彼がウィザーズでフルタイムで働いていたときの話だ)。
リチャードは家族向けのパーティゲームをデザインしようとしていた。ドイツのゲームに着想を得て、とある手ごろなゲームを彼は作り上げた。彼はそれを「Hive Mind」(集団意識)と呼んでいた。
(もしかしたらいつか「What Were You Thinking」(何考えてるの?)という名前で発売されるかもしれない。発売元はウィザーズ社以外かもしれないけど、もしEbayやおもちゃ屋さんで見かけたらぜひ手に取ってみて欲しい)
ゲームの流れはこんな感じだ。まず君は質問をされる。それに対して「他のプレイヤーと一致するような回答」を書く。つまりポイントはもっとも多数派となれるよう、プレイヤーたちの考えを予想して「もっとも一般的な答え」を思いつくことだ。
ほとんどの開発部のメンバーはこの「Hive Mind」がなかなか上手かったが、ただ1人、例外がいた。彼の名前はジョー・グレイスといった。
マジックの仕事にはあまり携わっていなかったが、アングルードの《Timmy, Power Gamer》のイラストのモデルになった人物だ(当時の開発部で「もっともティミーな」プレイヤーが彼だったからだ)。
理由は不明だが、とにかくジョーは「Hive Mind」が下手だった。
いや、下手だった、は不正確だね。
彼は「ド下手」だった。
何らかの理由で、彼の遺伝子には「他人と同じ考えをする」という能力が欠けていた。それにも関わらず、ジョーはこのゲームに繰り返し参加した。ずっと下手なままではないと証明するためだ。
しかし遊べば遊ぶほど、皆は彼はこのゲームに向いていないのだと確信せざるを得なかった。そしてジョーと「Hive Mind」を遊ぶのが最後になったゲームでのことだ。
そのときのお題は「有名な3人のドワーフの名前をあげろ」だった(今日のコラムに関係ある話題だ、って言ったろ?)。皆が答えを書き上げた。
ジョーは笑みを浮かべていた。彼は確信していたたのだ。ついに運命の女神は微笑んだのだ。これこそが俺の「お題」だ。今回に限って孤立することなどない。ついに有象無象の1人になれるのだ。ジョーは興奮のあまり、答えを最初に公開させてくれと申し出た。
念のため。今回のお題は「有名な3人のドワーフの名前をあげろ」であり、他のプレイヤーと答えを一致させることがゲームの目的だ。
ジョーは答えを書いた紙を取り出した。さらに自信のほどを見せつけるためか指まで鳴らした。「よし」と彼は始めた。「まずギムリ!」(余談ながら追記しておくと、他の皆の答えは「白雪姫と七人のドワーフ」に登場するドワーフたち、「ドーピー、グランピー、ドク」だった)
ドワーフの狂戦士、土地破壊とドワーフについて語る
お前ら、なんで俺らドワーフがやっきになって土地をぶっ壊して回ってるか、知ってるか? ありゃ、好きでやってんじゃねえんだ! そうするように言われてるからやってんだ!
……あ? なんでそうするように言われるかって!? あいつら、俺らにトーナメント会場に顔を出して欲しくないのさ!
みんな知ってることだろ、開発部の奴らは土地破壊カードをこれでもかとクソカードに変えてやがる。そりゃそうさ、誰だって土地を片っ端からぶっ壊されたくはないわな。
さて、じゃあクソカードを背負わせるのにふさわしいのは誰だ? ちっこい奴らだ!
それだけならまだしも、あいつら、たまに上質な土地破壊カードを作りはするが、それだけはなぜか絶対にドワーフにしねえんだ!
俺たちだって、必要とありゃなだれの1つにくらい乗ってみせるぜ! だけど違うんだな、奴らは俺たちにダメなやつらのままでいて欲しいのさ。
俺たちの居場所を見つけてくれようとしている? 10円レアのボックスの中にだろうよ!
ドワーフに聞いてみよう
問い:自分より背の高い相手とデートしたことありますか?
《ドワーフ徴募兵/Dwarven Recruiter》
「あるよ」
《地雷の敷設者/Mine Layer》
「ある」
《ドワーフの兵卒/Dwarven Grunt》
「ある」
《Dwarven Trader》
「そもそも選択肢がないんだが」
《焼き焦がすドワーフ/Dwarven Scorcher》
「ある」
《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
「あるよ」
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「自分より背の高い相手とデートはしない」
《Dwarven Armorer》
「ある」
《Dwarven Sea Clan》
「あいよ」
《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「もちろん」
《パーディック山の刀工/Pardic Swordsmith》
「ある」
《Dwarven Lieutenant》
「ある」
《ドワーフ爆破作業班/Dwarven Demolition Team》
「ある」
「ある」
「ある」
ドワーフの嫌う言い回し
"come up short" (足りない)
"short comings" (短所)
"short sighted" (短絡的)
"short tempered" (短気)
"for short" (短縮系で)
"in short" (手短に)
"short for" (短縮系で)
"short of" (不足している)
"short end of the stick" (貧乏くじを引く)
"short films" (短編映画)
"short people" (小さい人)
"little people" (一般人)
"vertically challenged" (縦方向にハンデを負っている = ちび)
"ground lickers" (地をなめる人 = ちび)
"low men on the totem pole" (トーテムポールの下段担当 = ちび)
"small pickings" (重箱の隅をつつく)
"small time" (取るに足らない)
"small talk" (世間話)
"small good that’ll do" (それで足りるだろ)
"Smallville" (作品名。邦題:ヤング・スーパーマン)
"feel small" (肩身が狭い)
"a little" (少々)
"little by little" (少しずつ)
"pick it up a little"
"little importance" (重要性が低い)
"tiny dancer" (作品名)
"tom thumb" (作品名。邦訳:親指トム)
"wee _____ " (小さな ~)
"little fella" (坊や、お嬢ちゃん)
"knee high to a grasshopper" (バッタの膝くらいの高さ)
"below knee level" (ひざ下レベル)
"dwarf short" (小人症)
"How’s the weather down there?" (下界の天気はどうだい?)
"Would you mind shining my shoes?" (ちょうどいいや、靴磨いてくれよ)
"Oops, I almost stepped on you." (あぶねえ、踏んづけるところだった)
我がドワーフ的人生(その2)
さっきはその場にいるもっとも小さきものであることによって遭遇しうる物理的な危険性について述べた。次は精神的なものについて語ろうと思う。
もしかしたら君たちは、あまりにも背が低いと逆にそれをあげつらう人もいないかもしれない、と考えるかもしれない(それによって何かが多少ましになるというわけでもないが、非常に背が高い友人たちによると、彼らもまた私とは正反対の方向において同じような境遇だったそうだ)。
身長が私にとって大きな問題となったのは、それが周囲の皆にとっても大きな関心事だったからだ。私は同じ子供たちによってからかわれることに対する心の準備は出来ていた。しかし同様に大人たちからもからかわれることは予想していなかったのだ。
分かるだろう? 私は大人たちは味方だと思っていたんだ。
しかし私は負け犬だった(余談だが、私がUnderdogの大ファンなのはそれが理由だと思う)
権威は弱者を守ってくれるんじゃなかったのか?
大人は大人びた振る舞いをしてくれるんじゃないのか?
そう考えるのが普通だろう。ところが大人たちも他の人間と同じように私の身長をからかいの種にした。なぜだかは分からないが、身長についてからかうことはひどいことだと思われていないふしがある。
いや、だって考えてもみてくれ。背丈についてからかう人たちだって、太った子供を同じようにからかったりはしないだろう?(もしかしたらするのかもしれないけどね。もしそうだとしたらそれはとても悲しいことだ。大人たちは大人なんだからちゃんと大人びた対応をしてくれるはずだ、と子供が思ってはいけないということになる)
しかし大人たちによるもっともひどい嫌がらせはここぞというときまで、そう、とある特別な夜まで大事にとっておかれた。
それは私の初めての学内ダンスパーティだった。確かあれは私が小学校6年生のときだったと思う(そのとおり。私を成長させてくれるはずの思春期という時期は、逆に出来る限りその仕事を終えるのを先延ばしにしようと粘り続けたのだ)。
小学生のダンスパーティというものを覚えていない(もしくは意図的に忘れた)みんなのために書いておこう。それはとてもダンスと呼べるような代物じゃなかった(まあ、私も今や老いぼれの身だ。もしかしたら今ではすっかり違うものになっているのかもしれないが、何にせよ、当時はそういうものだったと思ってくれ)。
当時の子供たちはデートなんてしたことない子が大半で、大人としてはもっと積極的になれと後押ししたくてしょうがなかったらしい。
大人たちはダンスパーティをたった一組のカップル、その2人っきりでスタートさせたんだ。ふむ。さて誰がふさわしいだろうか?
いやいや、もっとも面白い取り合わせのカップル以外ありえないだろう? そう、たとえばもっとも背が低い男子ともっとも背が高い女子のカップルさ。
それ以外ないだろう? せっかくのダンスパーティだ。
すでに普段から十分に居心地の悪い思いをしている2人をさらにどん底に突き落とさなくてどうする? ……ちなみに私は逃げなかったよ。踊るように言われたし、なんというか先生に反抗するようなタイプでもなかったしね。
私より頭2つ分は高い女子とダンスを踊りながら、私はひどく腹を立てていたことを覚えている。毎日、嫌な思いをしてきているだけでもたくさんだというのに、公立の小学校みずから率先して辱めを与えてくるとは!
こんなことは間違ってる。これと同じくらいの辱めなんてありえるのか!? 一番にきびが多い男子と一番胸が小さい女子とか!?
さてこれがドワーフの話とどう関係してくるのか。この出来事から私はなぜドワーフが単一の種として存続しているのかが分かったからだ。彼らは社交的ではないからだ。
その理由は?
自明のことだ。もし社交的だったらサイクロプスの女子とでもダンスさせられてることだろう。
ドワーフの狂戦士、あごひげについて語る
なんでドワーフが誰も彼もあごひげを伸ばさせられてるのか、不思議に思ったことはねえか? 俺たちの顔を見たくねえからだよ。
人間どもは狡猾さ。
どうやって俺たち小せえ奴らを見張ってるか知ってるかい? テレビだろうが映画だろうが、とにかく出てくるドワーフは全部あごひげつきさ。ああ、ただ1人をのぞいてな。
こうすりゃ、うちらの1人があごひげをそって歩き回ろうなんて考えようもんなら、何十人もの芸人どもにこう呼ばれるのさ。「おう、ドーピー!」ってな!
訳註:
ドーピーはディズニーアニメの白雪姫に出てくる七人のドワーフの中で、唯一あごひげを生やしていないキャラクター。なおドーピー(Dopey)という名前は「お間抜け」もしくは「ぼんやり」というような意味をもつ。
ドワーフと小人症の違いについて
君も気になってることだと思う。医学的な話をすると、ドワーフは小柄な体型をしており(4フィート10インチ以上であることはまれだ)、これは生物学的もしくは遺伝的な理由によるものだ。また特徴として全体的に小柄であり、腕と足と胴体がさらに相対的に短めでもある。小人症は医学用語で体型が小さい人の呼称だ。彼らは相対的に腕と足と胴体が短めでこれはホルモンの異常が原因だ。
生まれそうで生まれなかったドワーフたち
ミラージュには《Dwarven Scouts/ドワーフの斥候》という呪文があった。これは赤の呪文で3体の1/2ドワーフ・トークンを生み出す効果だった。しかしこれは実際に世に出ることはなかった。何が起きたかって? これを見てくれ。
訳註:原文では以下のイラストが表示されている。
http://www.wizards.com/magic/images/mtgcom/fcpics/making/mr203_scouts.jpg
まあ、聞いて欲しい。私たちは「3体のドワーフが敵の陣地に潜入しているイラスト」を依頼したところ、この絵が出てきたんだ。これを見るや否や、私は当時のアート・ディレクターであったスー=アンの元へ向かった。
私:やあ、スー・アン。《ドワーフの斥候》のイラストを見たかい?
スー:ええ、見たわよ。気に入った?
私:実はそうでもないんだ。ちょっと問題があってね。
スー:なに?
私:一緒に確認したほうがいいと思ってね、イラストを持ってきたんだ。ほら、これだよ。
スー:Geofの色使いは素晴らしいと思うわ。
私:違うんだ。イラストの質は問題じゃないんだ。
スー:はいはい、じゃあ何が問題なの?
私:このカードの名前は《ドワーフの斥候》だ。
スー:それで?
私:もう1回カード名を言うよ。《ドワーフの斥候》だ。「ドワーフの」ね。
スー:やっと分かったわ。あなたはこれが斥候には見えないって言いたいのね。
私:違うよ! 私が言いたいのはこれがドワーフには見えないって話だ!
スー:見えるわ?
私:絶対に見えないね。
スー:ドワーフに見えないってことはないわ。
イラストレーターの裁量に多少の幅は持たせてあげないとダメよ。
私:これは今回限りのオリジナルなクリーチャーじゃないんだ。
ドワーフにはドワーフなりの見た目というものがあるんだ。
スー:ちょっと心が狭いんじゃないかしら。
自分の見たいものだけを見ようとしてる気がするわ。
私:ドワーフには決まった見た目ってものがあるんだよ。特徴的な体型もしてるし、
あごひげも生やしてる。イラストのクリーチャーたちはひげが生えてないじゃないか。
スー:ドワーフだからってあごひげが生えてなきゃいけないってことはないわよ。
私:いけないんだよ、マジックの世界だけじゃなくて、
ここ何十年というポップ・カルチャーの歴史においてもね。
スー:ミラージュのドワーフはこうなのかもしれないわ。
私:これがドワーフに見えないということだけじゃなくて、
これが別な何かに見えるということも分かってもらえるよね?
スー:何かって?
私:よく見てくれ。
スー:で?
私:チビで、緑で、尖った耳をしてる。
スー:ごめんなさい、何を言いたいのかよく分からないわ。
私:君はファンタジー世界に関わる仕事をしてるんだよね?
スー:まだ分からないわ。
私:ゴブリンだよ! こいつらはゴブリンだ!!
スー:私にはドワーフに見えるけど。
私:君にはそう見えるのかもしれないし、イラストレーターにもそう見えるのかもしれない。
けど、世界の残りのみんなにはそうは見えないんだ。なんでか分かるかい?
スー:なんで?
私:こいつらがドワーフじゃないからさ! こいつらはゴブリンなんだよ!!
スー:あなたにとってはね。
私:そのとおり、私にはね。そしてファンタジー好きなら誰でもね!
たとえばマジックのプレイヤーたちとかね!!
スー:そう言われても今更イラストを変更することはできないわよ。
私:え、いや、だけど私たちはドワーフのイラストを発注したんだよ?
スー:Geof Darrowの解釈ではこれがドワーフなの。
私:……分かった。分かったよ。どうやら相談する先を間違えたらしい。
これはイラストの問題じゃないんだな。デベロップメント・チームのところに行くよ。
そして《ゴブリン斥候隊/Goblin Scouts》が生まれたというわけさ。
ドワーフに聞いてみよう
問い:白雪姫に出てくるドワーフたちってリアル?
《ドワーフの狂戦士/Dwarven Berserker》
「あんなベッピンさんが7人のチビどもと1つ屋根の下に住んで何もないなんてあり得ねえ」
《ドワーフの放浪者/Dwarven Nomad》
「たったの7人ぽっちで鉱山で働いてて、どことも知れない場所にある小さな小屋に詰め込まれて暮らすのがリアルかどうかだって?」
《血たぎるドワーフ/Dwarven Bloodboiler》
「あんな馬鹿っぽい歌をうたうドワーフはいない」
《Enslaved Dwarf》
「スリーピー(ねぼすけ)とかスニージー(くしゃみ屋)とかドク(博士)みたいにアホな名前したドワーフはいないよ。たぶんね」
《パーディック山の鉱夫/Pardic Miner》
「俺はそこそこリアルだと思ったけどな」
《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
「ドーピー(ぼんやり)だけは無い。30秒以上黙ってられるドワーフなんてあり得ねえ」
《Dwarven Trader》
「グランピー(怒りん坊)は俺のおやじに似てる気がする」
《Dwarven Lieutenant》
「口笛を吹くドワーフなんていないから。ああ、あと一列になって歩くドワーフも」
《開放されたドワーフ/Liberated Dwarf》
「エンディングは泣けたね」
後編へ続く
http://regiant.diarynote.jp/201305061530428933/