【翻訳】僕のシャッフルはデッキを十分に無作為化できてるんだろうか?/Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?【SCG】
【翻訳】僕のシャッフルはデッキを十分に無作為化できてるんだろうか?/Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?【SCG】
 初めに。

 文中に出てくる数学の公式はテキストで表現するのが難しく原文でも画像になっている。2つの公式はそれぞれ右図のとおり(ダイアリーノートは文中に画像を挿入できないのでとりあえずここに置いた)。

 あとこの記事では変数の1つに L の小文字が使われている。そのため、記事をそのまま訳すと「l枚」となる箇所がある。このままだと「1枚」と見間違える危険があるので、文中では L と大文字の表記にした。


【翻訳】僕のシャッフルはデッキを十分に無作為化できてるんだろうか?/Am I Shuffling Enough - Or Correctly, For That Matter?【SCG】

Michael A. Rutter
2002年11月08日
元記事:http://www.starcitygames.com/magic/misc/4004_Stats_101_Am_I_Shuffling_Enough_Or_Correctly_For_That_Matter.html

 僕の妻であるナタリーは来る大会のために新しいデッキを作ったばかりで、ちょっとプレイテストをしたいとのことだった。そこで僕は大急ぎで青緑マッドネスデッキを作った。土地は24枚だ。

 まず36枚の土地でないカードを引っ張り出して、次にデッキに使う24枚の土地を探してきた。そのとき、自分がどれほどきちんとシャッフルできているのか、実験してみることにした。

 24枚の土地だけ上下を逆にしてみた。どこに土地があるか一目で分かるようにするためだ。それからあらためて、僕がいつもやっているようにシャッフルしてみることにした。

 シャッフルを始めるに当たって、まず全ての土地をデッキの上にまとめて乗せたってのは教えておくべきかと思われる。次に1枚ずつ分配する感じで4つの山を作った(一般的にパイル・シャッフル/Pile Shuffle(註)と呼ばれる形だ)。

 それから最初の2つの山を手にとってリフル・シャッフル/Riffle Shuffle(註)を1回、オーバーハンド・シャッフル/Overhand Shuffle(註)を2回、さらにもう1回のリフル・シャッフル/Riffle Shuffleをやった。もう片方の2つの山にも同じ手順でシャッフルをした。

 それらの2つの束を手にとって、何回かリフル・シャッフル/Riffle Shuffleをして、さらにオーバーハンド・シャッフル/Overhand Shuffleを数回、最後にもう何度かのリフル・シャッフル/Riffle Shuffleをした。

 そして上下を変えないように気をつけつつ、カードを広げてみた。
(註) パイル・シャッフル/Pile Shuffle
 複数人数に手札を配るときのように、山札の上から1枚ずつを複数の山に均等に分けていくシャッフルの仕方。隣り合ったカードが必ずバラバラになる特徴がある。

(註) リフル・シャッフル/Riffle Shuffle
 山札を大まかに2つに分けて両手に持ち、互い違いに差し込まれるような形にするシャッフル。弓なりにそらしたそれぞれの山札にあてがった両手の親指を少しずつずらしてシャッフルし、上手くいくと非常に綺麗な見た目と音になる。

(註) オーバーハンド・シャッフル/Overhand Shuffle
 山札の上からカードの束の一部を抜き取り、下に差し込むシャッフル。日本で一般的に用いられるヒンズー・シャッフルとは微妙に異なる。シャッフルし終えたときに、動かしていた手に山札が残るのがヒンズー・シャッフル。動かしていなかった方の手に山札が残るのがオーバーハンド・シャッフル。

 それを見てナタリーが最初に言ったことは「土地の固まってるところが多すぎるわね」だった。

 1列になった山札の中に見える土地の偏りを見て僕はその言葉に同意した。土地が3枚連続する箇所がいくつか、少なくはない土地が2枚連続する箇所、そしていくつかの長い土地なしの部分。僕はさらにシャッフルを何度か繰り返してからプレイテストを始めた。気づいた端から土地の上下をそろえつつだ。

 そこでふと気づいた。

 統計は僕の得意分野だ。適度にランダム化されたデッキにどれほど土地の偏りが生じる得るのかを調べてみてもいいかもしれない。そう思った。そんなわけで調べてみた。


 さて僕の分析結果を述べたいと思う。それと、この分析結果をどう用いれば君がシャッフル技術とデッキの無作為化にどれほど長けているのかを測ることが出来るのかも伝えたいと思う。

 初手の7枚に適切な枚数の土地が来る可能性について言及した記事は今までにも多く書かれてきた。それらの記事の確率分布で用いられている計算式は超幾何分布と呼ばれるものだ。

 これは、古典的な問いである「3つの黒いビー玉と5つの白いビー玉が入っている壺がある。一度取り出したビー玉は戻さないとして、2つの白いビー玉を引く可能性は?」に答えるための計算式だ。

 計算式の裏にある公式に興味がない人は次の段落まで進んでいい。もう少し付き合ってもいいという人のために書いておくと超幾何分布の公式は以下のとおりだ。(註)
(註) 記事冒頭の (図1) を参照のこと

 P(x)というのは、L枚の土地が入った c枚 のデッキから x枚 の土地を引く可能性を表している。引いたカードの枚数は n だ(普通の初手であれば、n=7 となる)。カードを引いたあとにそれをデッキに戻したりはしないので、この場合、上記の公式には以下の注釈を付け加える必要がある。(註)
(註) 記事冒頭の (図2) を参照のこと

 もしデッキ内に複数の種類の土地を入れている場合、それぞれごとに x を求めればいい。この公式を用いれば、初手の n枚 の中に x枚 の土地を引く可能性を調べることができる。

 今回の分析で僕たちが知りたいのは2枚カードを引いたときに両方ともが土地である可能性だ。n=2、L=24、そしてc=60を代入し、x が2に等しいときの確率を計算すると、15.59%となる。

 つまり答えとしては、上記の条件に当てはまるデッキの上から2枚のカードを引くと(それが十分に無作為化されていた場合)15.59%の確率でそれらは2枚とも土地である、ということだ。

 なるほど。

 しかし本当の問題は「十分にシャッフルされたデッキを目の前に1列に広げたとき、2枚連続で土地になっている箇所がどれほどあるか?」だ。隣り合った2枚のカードの組み合わせは n-1個なので、デッキを60枚と仮定するとデッキには59対のそれらが存在していることになる。

 2枚連続の土地が生じる可能性(0.1559)にこの生じ得るペアの個数(59)をかけあわせると、十分に無作為化された60枚デッキに生じる2枚連続で土地の箇所は 9.2個 となる(土地が24枚と仮定した場合)。(註)
(註) 2枚連続で土地の箇所は 9.2個 となる
 念のために補足しておくと、土地が3枚連続で並んでいた場合の「2枚連続で土地の箇所」は「2個」となる。「1個」じゃない。

 この分析では、3枚連続で土地が固まっている箇所は2枚連続が2つ続いている箇所であり、4枚連続で土地が固まっている箇所は2枚連続が3つ続いている箇所であり、以下省略だ。

 例を挙げてみよう。まずデッキを元の状態に戻す。つまり24枚の土地を上に置いた状態だ。それから最初に述べた方法でシャッフルをする。これは僕にとって実際の大会開始直前のデッキの状態を模したものとなる。

 さてデッキを用意したあと、僕は土地の計算が正しかったかどうか念のために確認してみた。以下が60枚のカードの順番を表したものだ(Lは土地/land、Nは土地以外/Non-land)。

 LNNNNLNLNLNNLNNLLNNLNNLNNNLLLLNNNLLNLLLNLNNNNNNNLNNLNLNNLLNN

 今回のシャッフルでは2枚土地が隣り合っている箇所が8個あった。これは僕が予想していた9.2になかなか近い数字だ。

 さらに僕は山札の上から(大体13ターンが経過したゲームの直後を仮定して)20枚のカードを手に取り、土地を別の束にしてから(ゲーム直後は大体土地だけ別になっているため)あらためて僕が普段やっているシャッフルをしてみた。

 これによって生じた2枚土地が隣り合っている箇所は9個あった。十分に無作為化されたデッキに生じるであろうと僕が予想した数字だ。

 この分析によって何が分かるのか?

 まず何より最初に言っておくべきこととして、持ち時間の3分をフルに使って狂ったようにシャッフルしたとしても土地は固まるということだ。

 念には念を入れて、僕はコンピュータに上記のデッキを100,000回シャッフルさせてみた。その結果、2枚連続で土地が重なる箇所の平均値は9.18個だった。計算から予想されたとおりだ。

 また僕の例では3枚連続で土地が固まっていた箇所は3個、4枚連続は1箇所あった。そして前述したものと似たような計算をおこなった結果、平均的に生じ得る土地が3枚連続する箇所は3個、4枚連続する箇所は1箇所だった。

 この結果を知っていると「シャッフルが足りなかったから/運が悪かったから、3枚連続で土地を引いちゃって、それで試合に負けちゃったよ」という言い訳はさらに言い訳がましいものに聞こえてくる。

 ゲーム中、どこかで君は3枚連続で土地を引くことになる。なぜならもし君が十分にデッキを無作為化できていたとすれば、最低でも1箇所は土地が3枚固まっている場所があるからだ。2箇所以上あるかもしれない。

 もちろんこの確率はデッキに含まれる土地の枚数によって変化する。含まれる土地の枚数ごとの計算結果を構築の60枚デッキとリミテッドの40枚デッキそれぞれごとに表にしておいた。この記事の最後のほうに載せてある。

 もし君が平均的なプレイヤーよりも土地の偏りがひどいと思うならば、ここまで述べてきた内容から君のシャッフルが十分だったのかどうかを確認することができる。

 まず24枚の土地だけ表向きにした60枚のデッキを用意する。次に、意識せずに君が普段やっているとおりのシャッフルを行う。最後にデッキを1列に並べて土地が隣り合っている箇所の個数を上で行った例のように数えてみる。

 土地を大きく偏らせてからシャッフルするのがいいだろう。なぜなら24枚の束になってしまった土地を綺麗にほぐせるようになれば、君のシャッフルの技術が満足のいくレベルに達したことが分かるからだ。

 この手順を4回か5回ほど繰り返し、それぞれのシャッフル後の土地の隣り合っている箇所の平均値を求めればいい。

 もし君の平均値が11より高いなら、シャッフルの手順を変えることを考えたほうがいい。

 100,000回のシミュレーションから得られた情報に基づいたもう1つの計算結果として、土地が隣り合っている箇所の数の幅がある。僕のシミュレーションを元に計算したところ、土地が隣り合う箇所の数が6個から12個の場合が全体の95%を占めていた(後述の表を参照のこと)。

 もし君が平均して12より高い数値を得るようなら、本気でシャッフル手段の改善を考えたほうがいい。

 しかし反対側に偏っている場合は?

 マナ織り込み/Mana Weavingと呼ばれる手法がある。これは全ての土地を抜き出してから、土地以外だけのデッキの隙間に2枚から3枚ごとに土地を挿入する方法だ。公式試合では反則をとられる(そしてカジュアルでは嫌な顔をされる)。

 これまでの計算結果から以下が導き出される。

 偏らないようにデッキにあとから土地を足すことは「無作為化よりも安定した」状態となり、プレイヤーに大きなアドバンテージを与える。

 しかしマナ織り込み/Mana Weavingを行ったデッキであっても適切にシャッフルされて無作為化された場合(これには7回のリフル・シャッフルを行えばいいわけだが、それはまた別の記事(註)で解説しよう)、土地が隣り合っている箇所の数は平均して9個となる。
(註) 別の記事
 この「7回のリフル・シャッフル」に関する記事は以下のリンク先参照のこと
 http://regiant.diarynote.jp/201202051837001308/

 もし君が対戦相手のシャッフル後のデッキの中を見る機会があったとき(もしかしたら君はジャッジなのかもしれないし、《摘出/Extract》を唱えたのかもしれない)、そこに土地が隣り合っている箇所が5個以下である可能性は(適切にシャッフルが行われており、かつ60枚中24枚が土地のデッキであれば)わずかに2.5%しかない。

 デッキ内に含まれる土地の枚数から予想される平均数と比べて明らかに少ない個数しか土地の隣接している箇所がない場合、そのデッキは不正に操作されたものだ。そしてそれを行ったプレイヤーはしかるべき罰を受ける必要がある。

 マジックザギャザリングは無作為化を前提とした多くの要素の上に成り立っている。君は自身のデッキに含まれるカードのマナレシオとその効果を注意深く分析すれば、勝利のオッズを高めることが出来る。

 もし君がこの記事から得た情報を用いて自分のデッキを適切に無作為化することが出来ているかをチェックすれば、土地の偏りを統計的に平均と思われるレベルにまで落とすことが出来るだろう。そして土地の枚数が偏った場合、それはシャッフルが悪かったせいでなく確率的なものであると判断することが出来るようになる。


  <表> 予想される土地の偏り枚数

  (1) 60枚デッキの場合

   総数 -   2枚 -- 3枚 -- 4枚    95%の範囲
     18 -   05.1 -- 1.4 -- 0.4     (3 ~ 08)
     19 -   05.7 -- 1.6 -- 0.5     (3 ~ 08)
     20 -   06.3 -- 1.9 -- 0.6     (4 ~ 09)
     21 -   07.0 -- 2.3 -- 0.7     (4 ~ 10)
     22 -   07.7 -- 2.6 -- 0.9     (5 ~ 11)
     23 -   08.4 -- 3.0 -- 1.0     (5 ~ 11)
     24 -   09.2 -- 3.4 -- 1.2     (6 ~ 12)
     25 -   10.0 -- 3.9 -- 1.5     (7 ~ 13)
     26 -   10.8 -- 4.4 -- 1.8     (8 ~ 14)

  (2) 40枚デッキの場合
   
   総枚 -    2枚 -- 3枚 -- 4枚    95%の範囲
     16 -    6.0 -- 2.2 -- 0.7     (4 ~ 08)
     17 -    6.8 -- 2.6 -- 1.0     (4 ~ 09)
     18 -    7.7 -- 3.1 -- 1.2     (5 ~ 10)
     19 -    8.6 -- 3.7 -- 1.6     (6 ~ 11)


 なお上記の「95%の範囲」というのは、適切にシャッフルされたデッキの土地の隣接した箇所の個数が95%を占めている幅だ。

 例えば、リミテッドの40枚デッキで土地が17枚だったとした場合、適切に無作為化されていれば土地が隣り合っている箇所の個数は4個から9個のあいだに収まる場合が全体の95%を占める、ということだ。

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