ウークタビー・ワイルドキャット/Uktabi Wildcats - 第7版 レアUktabi Wildcats / ウークタビー・ワイルドキャット (4)(緑)
クリーチャー - 猫(Cat)
ウークタビー・ワイルドキャットのパワーとタフネスは、それぞれあなたがコントロールする森(Forest)の数に等しい。
(緑),森を1つ生け贄に捧げる:ウークタビー・ワイルドキャットを再生する。
*/*
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Uktabi+Wildcats/
参照する数に1を加えたタフネスを持つ《ルアゴイフ/Lhurgoyf》のようなカードとは違い、《ウークタビー・ワイルドキャット/Uktabi Wildcats》も《夢魔/Nightmare》もタフネスは参照する何かの数をそのまま用いている。
そのため《ウークタビー・ワイルドキャット/Uktabi Wildcats》のコントローラーがこれを再生しようとして《森/Forest》を生け贄に捧げた際についうっかりタフネスが0になってしまうことがあり得るのだ!
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/02
2011年12月2日 Card of the Day不気味な人形/Creepy Doll - イニストラード レアCreepy Doll / 不気味な人形 (5)
アーティファクト クリーチャー - 構築物(Construct)
不気味な人形は破壊されない。
不気味な人形がいずれかのクリーチャーに戦闘ダメージを与えるたび、コイン投げをする。あなたがそのコイン投げに勝った場合、そのクリーチャーを破壊する。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Creepy+Doll/
《不気味な人形/Creepy Doll》の秘密
その1:カードイラストの原画は2011年にサンディエゴで開催されたComic Conというコンベンションで参加者に贈呈された(註1)。
その2:カードイラストの背景にいる人形は《赤子捕らえ/Kindercatch》のカードイラスト(註2)にも登場している。
その3:Mark Rosewater曰く(註3)、これはJonathan Coultonの歌が元ネタとのこと。
(註1) コンベンションで参加者に贈呈された
原文では以下のURLへリンクが張られている。内容はサンディエゴのコンコースで開催されたComic Conのレポート。原画の件は記事の一番最後にある。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/twtw/153
(註2) 《赤子捕らえ/Kindercatch》のイラスト
原文では以下のURLへリンクが張られている。内容は《赤子捕らえ/Kindercatch》のカードイラストの解説。イラストだけでも何が言いたいか分かる短い記事なのでオススメ。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/arcana/822
(註3) Mark Rosewater曰く
原文では以下のURLへリンクが張られている。内容はMark Rosewaterがイニストラードの各カードについて解説しているコラム。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/mm/161
日本語公式に「恐るべき物語 その1」として訳が上がってる。
http://mtg-jp.com/reading/translated/002192/
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
【翻訳】交代、反転、そして翻訳/Rotations, Reflections, and Translations【Daily MTG】
Zac Hill
2011年12月02日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/171
アオオォォオオォォォン!(遠吠え)
……エヘン。
俺の悪い癖だ。
満月を見るとどうしてもね。こう、どっかに意識が飛んでしまうんだ。衝動をコントロールできないというかなんというか……そういうの苦手なんだ。
よーし、まずは深呼吸して……
おっす! 俺はZacだ。
TomがD&D側の仕事に移るに当たって、彼のコラムを引き継ぐことになったのが俺だ。
今日はデベロップメントがどのようにしてホラーというジャンルそのもの(つまりはイニストラードそのもの)である「変身」を「両面カード」によって表現しようとしたかについて語ろうと思う。
狼男たちはすでに彼らだけのテーマ週間をもらってることだし(まったく幸運な奴らだ!)、今日は狼男でない両面カードの中でも特に俺が気に入っている「変身する」カードたちを取り上げてみよう。狼男たちはすでに日の目をみているわけだから……いや、月の目を……えーと……まあいいや。
いやあ、実に上品な紳士だね。
こいつが開発中のファイルに入っていたときの名前は「ジキル博士とハイド氏」だった。そしてそのテーマから外れたことは最後まで一度も無い。
アイデアは要するに、礼儀正しくて賢くて「青」っぽい能力をもったシステムクリーチャーが自分の研究に没頭しているのに、ときどき何かの拍子で気が狂ったように顔を真っ「赤」にして戦闘に突入してしまう、って寸法だ。
俺は色んなプレイヤーからカードテキストの一部について質問を受けることがある。その1つに、なんで《人殺しの粗暴者/Homicidal Brute》はターン終了時に自身をタップするの?、というのがある。
デザインの初期から、クリーチャーカードを捨てるのをトリガーに変身するという点を俺たちは結構気に入っていた。彼は研究の最中、何かをきっかけに自身の動物的本能が刺激されてしまい、コントロールが効かなくなってしまうんだ。
最初の頃は、粗暴な側には単に「可能ならば攻撃に参加する」と書かれていた。
しかしそれによって何が起きたかというと、テストプレイでプレイヤーたちは「ルーター能力」を第二メインフェイズで使ってカードを「粗暴者」に変身させつつ、そのままエンドステップを迎えることで「識者」に戻し、対戦相手のターンに「ルーター能力」をさらにもう1回起動したんだ!
もちろん、このカードの目指すところはそんな使われ方じゃなかったので、俺たちは「粗暴者」に自身をタップさせることでこの問題を解決したんだ。
俺からすると、このカードは両面カードがデザイン面に関していかに新たな可能性を切り開いてくれたかを説明する最高の例だ。
吸血鬼はコウモリに変身できるし、逆もまたしかりだ。よく知られた伝説だよな。イラストもコンセプトも分かりやすいし、ゲームプレイ時の動きも素晴らしいし、「このカードが何を表したいのか」が超簡単に伝わってくる。
しかし両面カード以前のこの「変身」の表現は実にぎこちなかった。メカニズムは非常に複雑で、大抵の場合はカードが何を表したいのかを直観的に伝えることに(反対意見もあるだろうけど俺の意見としては)失敗していた。
例えば《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》だ。
勘違いしないで欲しいのは、別にこれをデザインしたチームの努力を否定したいわけじゃないってこと。何が起こっているのかは分からないでもない。《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》が危険に陥ったとき、それはコウモリに変身して難を逃れるんだ。
だけどそれをカードテキストからそれを理解するには、かなり想像の翼を大きく広げないといけない。
《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》は自身を守るために能力を用いるのに、君はこいつをまずどっかに追放しないといけない。……どゆこと? 次にこいつが生み出したコウモリトークンがどこからともなく彼を戦場に呼び戻すためには変身後であるコウモリを生け贄に捧げないといけない。
最後に実際のゲーム上の話をすると、君は戦場に小さなビーズか布切れかコインか紙切れか、とにかく何かを出す必要があり、さらにそれには5行にも及ぶ目に見えないカードテキストがついてくる。ああ、それと目に見えないパワーとタフネスもだ。
これは到底エレガントなデザインとは呼べないよ。
このチビ助は最近のレガシー環境で暴れまわっており、先週開催された世界選手権にもその名を刻んでいる。
こいつの気前の良いスペックを見てくれ。全てが計画通りに進めば《月鷺/Moon Heron》から丸々3マナそぎ落としたクリーチャーとなり、2ターン目からアタックできる。
《渦まく知識/Brainstorm》や《思案/Ponder》といったカードでライブラリのトップを操作すれば、通常よりもずっと高い確率でこいつを反転させることができる。さて、どうしてこんなカードが検閲を抜けて印刷されたんだろう?
俺たちはこいつがリミテッドではあまりにも反転しなさすぎることに気づいた。デッキに入れること自体が損に感じられるほどにだ。結局のところ、誰だって40枚しかないデッキに《脱走魔術師/Fugitive Wizard》同然のクリーチャーを入れたいとは思わない。
ときたまこいつは序盤に出て来てゲームを決めてくれるが、ごく稀にしか起きないその展開が楽しいものかどうかはまた別問題だ。こういったランダムな効果でゲームが決まってしまうような環境を好きなプレイヤーはいない。
ゲームの終盤に引く《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》のがっかり感は満点で、俺たちはまるでこのままこいつを印刷してもリミテッド環境にとっては壁のしみみたいなもんなんじゃないかと思った。
ところがどっこい、スタンダード環境では《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》に変身させるのは普通のリミテッド環境に比べるとずっと簡単だし、対戦相手からしてみても序盤に出て来た3/2飛行クリーチャーというテンポアドバンテージから巻き返すのはそれほど難しいことじゃない。
大抵のデッキは序盤に出てくるクリーチャーに対してなんらかの対抗策を講じているものだ。そう考えると他のクリーチャーと比べて多少高いサイズアドバンテージを持っているということは「なかなか強いカード」であって「ゲームをぶっ壊すカード」には成り得ない。
レガシーやモダンのようなさらに古いカードも使えるフォーマットとなると、クリーチャー除去呪文は相対的に弱くなる。なぜならこれらの環境でメタの一線を張っている多様なデッキたちはクリーチャーに乏しく、クリーチャー除去呪文は腐ることが多いからだ。
そういった環境なので、逆にこの《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》のようなカードで勝つことがより容易くなる。このカードを守るためのカードが色々用意されていることや《渦まく知識/Brainstorm》やその類似品が早期の変身を手助けしてくれることも考えるとなおさらだ。
とはいえ、幸いなことにこれらの環境は、いくら強いとはいえ結局は単に殴ることしか出来ないようなクリーチャーごときに破壊されるようなやわな環境じゃないので安心だ。
多くのプレイヤーたちがこのカードとエルドラージ覚醒のメカニズムであるLvアップカードとの類似性について指摘する。確かに比べたくなる気持ちはよく分かる。結局のところ、どっちの場合も特定量のマナを特定回数支払うことでクリーチャーのサイズを大きくする。
じゃあなんでこいつは両面カードになったんだろう?
俺からすると、ポイントは「謎」ってことだ。卵を見たら何が入ってるか気になるだろ?さらに何か実験してるって言われたらその結果も気になるだろ?
俺の考えを述べさせてもらえるなら、Lvアップシステムの欠点は、つぎ込んだ労力の結果を視覚的に得られないことにある。ゲームのルールはメカニズムを通じて確かにそれを抽象化してくれている。だけどそれはイコールじゃない。
俺の《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch》が6/6になったよ、とか、《虚身の勇者/Null Champion》が7/3になったよ、って言われたら、まあ、そうだよ。だけど俺の目の前にいるカードは小さかったときとまったく同じ外見をしてるんだ。
まるで盤面にある駒をいじくってるような感じだ。彼らが何を表現しているのかを、そう見えるからではなくて、そうだと言われたから信じないといけない状態だ。直観的な分かりやすさに乏しい。
とはいえ、ゲームってものは本質的そういうものなんだろう、とも思っている。……だからこそ表現できる機会を逃しちゃいけないんだともね。
石を引っくり返してみる
Tomが言ってたように、これは彼の最後のLatest Developmentのコラムだ。しかし来年のどこかで少なくとも1回は次のセットである闇の隆盛について語ってくれるはずだ。彼がデベロップメントのリーダーを務めたセットだからね。
新参者としては埋めなければいけない穴の大きさにおののいているところだ。直前の前任者であるTomだけじゃなくて、その前の担当者たち、デベロップメントのヘッドであるDevin Low、R&DのディレクターであるRandy BuehlerとAaron Forsythe。
そこで最初の数週間は色々違ったことをやってみて君らの反応をうかがおうと思っている。
どう思ってるかを知るのに一番いい方法は、そりゃもちろん俺に伝えてくれることだ!
もちろんフォーラムに書かれた君たちのコメントは読んでるし、記事の末尾にあるリンクから感想を送ってもらってもいいし、ツイッターでもいい。俺のツイッターアカウントは@zdchだ。
皆に好かれるような記事にしたいと思ってるよ。
Zac Hill
2011年12月02日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/171
アオオォォオオォォォン!(遠吠え)
……エヘン。
俺の悪い癖だ。
満月を見るとどうしてもね。こう、どっかに意識が飛んでしまうんだ。衝動をコントロールできないというかなんというか……そういうの苦手なんだ。
よーし、まずは深呼吸して……
おっす! 俺はZacだ。
TomがD&D側の仕事に移るに当たって、彼のコラムを引き継ぐことになったのが俺だ。
今日はデベロップメントがどのようにしてホラーというジャンルそのもの(つまりはイニストラードそのもの)である「変身」を「両面カード」によって表現しようとしたかについて語ろうと思う。
狼男たちはすでに彼らだけのテーマ週間をもらってることだし(まったく幸運な奴らだ!)、今日は狼男でない両面カードの中でも特に俺が気に入っている「変身する」カードたちを取り上げてみよう。狼男たちはすでに日の目をみているわけだから……いや、月の目を……えーと……まあいいや。
Civilized Scholar / 礼儀正しい識者 (2)(青)
クリーチャー - 人間(Human) アドバイザー(Advisor)
(T):カードを1枚引き、その後カードを1枚捨てる。これによりクリーチャー・カードを捨てた場合、礼儀正しい識者をアンタップし、その後それを変身させる。
0/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Civilized+Scholar/
Homicidal Brute / 人殺しの粗暴者
〔赤〕 クリーチャー - 人間(Human) ミュータント(Mutant)
あなたの終了ステップの開始時に、このターン、人殺しの粗暴者が攻撃していなかった場合、人殺しの粗暴者をタップし、それを変身させる。
5/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Homicidal+Brute/
いやあ、実に上品な紳士だね。
こいつが開発中のファイルに入っていたときの名前は「ジキル博士とハイド氏」だった。そしてそのテーマから外れたことは最後まで一度も無い。
アイデアは要するに、礼儀正しくて賢くて「青」っぽい能力をもったシステムクリーチャーが自分の研究に没頭しているのに、ときどき何かの拍子で気が狂ったように顔を真っ「赤」にして戦闘に突入してしまう、って寸法だ。
俺は色んなプレイヤーからカードテキストの一部について質問を受けることがある。その1つに、なんで《人殺しの粗暴者/Homicidal Brute》はターン終了時に自身をタップするの?、というのがある。
デザインの初期から、クリーチャーカードを捨てるのをトリガーに変身するという点を俺たちは結構気に入っていた。彼は研究の最中、何かをきっかけに自身の動物的本能が刺激されてしまい、コントロールが効かなくなってしまうんだ。
最初の頃は、粗暴な側には単に「可能ならば攻撃に参加する」と書かれていた。
しかしそれによって何が起きたかというと、テストプレイでプレイヤーたちは「ルーター能力」を第二メインフェイズで使ってカードを「粗暴者」に変身させつつ、そのままエンドステップを迎えることで「識者」に戻し、対戦相手のターンに「ルーター能力」をさらにもう1回起動したんだ!
もちろん、このカードの目指すところはそんな使われ方じゃなかったので、俺たちは「粗暴者」に自身をタップさせることでこの問題を解決したんだ。
Screeching Bat / 金切り声のコウモリ (2)(黒)
クリーチャー - コウモリ(Bat)
飛行
あなたのアップキープの開始時に、あなたは(2)(黒)(黒)を支払ってもよい。そうした場合、金切り声のコウモリを変身させる。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Screeching+Bat/
Stalking Vampire / 忍び寄る吸血鬼
〔黒〕 クリーチャー - 吸血鬼(Vampire)
あなたのアップキープの開始時に、あなたは(2)(黒)(黒)を支払ってもよい。そうした場合、忍び寄る吸血鬼を変身させる。
5/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Stalking+Vampire/
俺からすると、このカードは両面カードがデザイン面に関していかに新たな可能性を切り開いてくれたかを説明する最高の例だ。
吸血鬼はコウモリに変身できるし、逆もまたしかりだ。よく知られた伝説だよな。イラストもコンセプトも分かりやすいし、ゲームプレイ時の動きも素晴らしいし、「このカードが何を表したいのか」が超簡単に伝わってくる。
しかし両面カード以前のこの「変身」の表現は実にぎこちなかった。メカニズムは非常に複雑で、大抵の場合はカードが何を表したいのかを直観的に伝えることに(反対意見もあるだろうけど俺の意見としては)失敗していた。
例えば《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》だ。
Sengir Nosferatu / センギアの吸血魔 (3)(黒)(黒)
クリーチャー - 吸血鬼(Vampire)
飛行
(1)(黒),センギアの吸血魔を追放する:飛行を持つ黒の1/2のコウモリ(Bat)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。それは「(1)(黒),このクリーチャーを生け贄に捧げる:追放されている《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》という名前のカード1枚をオーナーのコントロール下で戦場に戻す。」を持つ。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sengir+Nosferatu/
勘違いしないで欲しいのは、別にこれをデザインしたチームの努力を否定したいわけじゃないってこと。何が起こっているのかは分からないでもない。《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》が危険に陥ったとき、それはコウモリに変身して難を逃れるんだ。
だけどそれをカードテキストからそれを理解するには、かなり想像の翼を大きく広げないといけない。
《センギアの吸血魔/Sengir Nosferatu》は自身を守るために能力を用いるのに、君はこいつをまずどっかに追放しないといけない。……どゆこと? 次にこいつが生み出したコウモリトークンがどこからともなく彼を戦場に呼び戻すためには変身後であるコウモリを生け贄に捧げないといけない。
最後に実際のゲーム上の話をすると、君は戦場に小さなビーズか布切れかコインか紙切れか、とにかく何かを出す必要があり、さらにそれには5行にも及ぶ目に見えないカードテキストがついてくる。ああ、それと目に見えないパワーとタフネスもだ。
これは到底エレガントなデザインとは呼べないよ。
Delver of Secrets / 秘密を掘り下げる者 (青)
クリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
あなたのアップキープの開始時に、あなたのライブラリーの一番上のカードを見る。あなたはそのカードを公開してもよい。これによりインスタント・カードかソーサリー・カードが公開された場合、秘密を掘り下げる者を変身させる。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Delver+of+Secrets/
Insectile Aberration / 昆虫の逸脱者
〔青〕 クリーチャー - 人間(Human) 昆虫(Insect)
飛行
3/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Insectile+Aberration/
このチビ助は最近のレガシー環境で暴れまわっており、先週開催された世界選手権にもその名を刻んでいる。
こいつの気前の良いスペックを見てくれ。全てが計画通りに進めば《月鷺/Moon Heron》から丸々3マナそぎ落としたクリーチャーとなり、2ターン目からアタックできる。
《渦まく知識/Brainstorm》や《思案/Ponder》といったカードでライブラリのトップを操作すれば、通常よりもずっと高い確率でこいつを反転させることができる。さて、どうしてこんなカードが検閲を抜けて印刷されたんだろう?
俺たちはこいつがリミテッドではあまりにも反転しなさすぎることに気づいた。デッキに入れること自体が損に感じられるほどにだ。結局のところ、誰だって40枚しかないデッキに《脱走魔術師/Fugitive Wizard》同然のクリーチャーを入れたいとは思わない。
ときたまこいつは序盤に出て来てゲームを決めてくれるが、ごく稀にしか起きないその展開が楽しいものかどうかはまた別問題だ。こういったランダムな効果でゲームが決まってしまうような環境を好きなプレイヤーはいない。
ゲームの終盤に引く《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》のがっかり感は満点で、俺たちはまるでこのままこいつを印刷してもリミテッド環境にとっては壁のしみみたいなもんなんじゃないかと思った。
ところがどっこい、スタンダード環境では《秘密を掘り下げる者/Delver of Secrets》を《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》に変身させるのは普通のリミテッド環境に比べるとずっと簡単だし、対戦相手からしてみても序盤に出て来た3/2飛行クリーチャーというテンポアドバンテージから巻き返すのはそれほど難しいことじゃない。
大抵のデッキは序盤に出てくるクリーチャーに対してなんらかの対抗策を講じているものだ。そう考えると他のクリーチャーと比べて多少高いサイズアドバンテージを持っているということは「なかなか強いカード」であって「ゲームをぶっ壊すカード」には成り得ない。
レガシーやモダンのようなさらに古いカードも使えるフォーマットとなると、クリーチャー除去呪文は相対的に弱くなる。なぜならこれらの環境でメタの一線を張っている多様なデッキたちはクリーチャーに乏しく、クリーチャー除去呪文は腐ることが多いからだ。
そういった環境なので、逆にこの《昆虫の逸脱者/Insectile Aberration》のようなカードで勝つことがより容易くなる。このカードを守るためのカードが色々用意されていることや《渦まく知識/Brainstorm》やその類似品が早期の変身を手助けしてくれることも考えるとなおさらだ。
とはいえ、幸いなことにこれらの環境は、いくら強いとはいえ結局は単に殴ることしか出来ないようなクリーチャーごときに破壊されるようなやわな環境じゃないので安心だ。
Ludevic’s Test Subject / ルーデヴィックの実験材料 (1)(青)
クリーチャー - トカゲ(Lizard)
防衛
(1)(青):ルーデヴィックの実験材料の上に孵化(hatchling)カウンターを1個置く。その後、それの上に孵化カウンターが5個以上置かれている場合、それらをすべて取り除き、それを変身させる。
0/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ludevic%27s+Test+Subject/
Ludevic’s Abomination / ルーデヴィックの嫌悪者
〔青〕 クリーチャー - トカゲ(Lizard) ホラー(Horror)
トランプル
13/13
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ludevic%27s+Abomination/
多くのプレイヤーたちがこのカードとエルドラージ覚醒のメカニズムであるLvアップカードとの類似性について指摘する。確かに比べたくなる気持ちはよく分かる。結局のところ、どっちの場合も特定量のマナを特定回数支払うことでクリーチャーのサイズを大きくする。
じゃあなんでこいつは両面カードになったんだろう?
俺からすると、ポイントは「謎」ってことだ。卵を見たら何が入ってるか気になるだろ?さらに何か実験してるって言われたらその結果も気になるだろ?
俺の考えを述べさせてもらえるなら、Lvアップシステムの欠点は、つぎ込んだ労力の結果を視覚的に得られないことにある。ゲームのルールはメカニズムを通じて確かにそれを抽象化してくれている。だけどそれはイコールじゃない。
俺の《ハリマーの波見張り/Halimar Wavewatch》が6/6になったよ、とか、《虚身の勇者/Null Champion》が7/3になったよ、って言われたら、まあ、そうだよ。だけど俺の目の前にいるカードは小さかったときとまったく同じ外見をしてるんだ。
まるで盤面にある駒をいじくってるような感じだ。彼らが何を表現しているのかを、そう見えるからではなくて、そうだと言われたから信じないといけない状態だ。直観的な分かりやすさに乏しい。
とはいえ、ゲームってものは本質的そういうものなんだろう、とも思っている。……だからこそ表現できる機会を逃しちゃいけないんだともね。
石を引っくり返してみる
Tomが言ってたように、これは彼の最後のLatest Developmentのコラムだ。しかし来年のどこかで少なくとも1回は次のセットである闇の隆盛について語ってくれるはずだ。彼がデベロップメントのリーダーを務めたセットだからね。
新参者としては埋めなければいけない穴の大きさにおののいているところだ。直前の前任者であるTomだけじゃなくて、その前の担当者たち、デベロップメントのヘッドであるDevin Low、R&DのディレクターであるRandy BuehlerとAaron Forsythe。
そこで最初の数週間は色々違ったことをやってみて君らの反応をうかがおうと思っている。
どう思ってるかを知るのに一番いい方法は、そりゃもちろん俺に伝えてくれることだ!
もちろんフォーラムに書かれた君たちのコメントは読んでるし、記事の末尾にあるリンクから感想を送ってもらってもいいし、ツイッターでもいい。俺のツイッターアカウントは@zdchだ。
皆に好かれるような記事にしたいと思ってるよ。
【翻訳】領域を移動する/Zone Change【Daily MTG】
2011年12月3日 翻訳【翻訳】領域を移動する/Zone Change【Daily MTG】
Tom LaPille
2011年12月02日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/171
私がウィザーズ社で働き始めたのは2008年の6月からだ。今はもう2011年の12月だ。
2週間前、私はこの場を借りてマジックのR&DからダンジョンズアンドドラゴンズのR&Dへ移ることを伝えさせてもらった。それは嘘ではない。今日のこれが私にとって最後のLatest Developmentsの記事となる。
私がマジックの仕事を通じて学んだことが1つあるとすれば、物事は既存のスタンダード(註)に対してさらに高いレベルのスタンダードを持ち込むことで変わってしまうものだということだ。これに関して私が好んで用いる例は、スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ(註)だ。
そこで彼は初期のマッキントッシュ・コンピュータこそが初めて美しいタイポグラフィーを用いたコンピュータだと言った。彼のこの言葉が真実であるかどうかは私には分からない。しかし私はマッキントッシュ以前のコンピュータを用いたことはある。それらは非常に雑なタイポグラフィーを用いていた。
そして私が父の高校で使ったマッキントッシュは私にとって初めて美しいフォントを表示してくれるコンピュータであり、それ以降見かけたコンピュータたちは大体において美しいフォントを持つようになっていた。この変化がどれほどスティーブ・ジョブスの功績だと君たちが思うかは分からない。しかしコンピュータの表示する文字は最初のマッキントッシュ以前と以後でまったく異なるものとなったのだ。
私はマジックを仕事にするようになって3年半経つ。そのあいだ、多くの重要な事があった。それらは新たなスタンダードが持ち込まれてくれたことによるものだ。
Duels of the Planeswalkersは、マジックの入門的な製品がデジタルにも必要だと考えた誰かが生み出したものだ。これによって多くの新たなマジックプレイヤーたちが生まれ、また多くのマジックを離れていたプレイヤーたちが戻ってきてくれた。
基本セット2010は、全てが再録で面白くないフレイバーしか持たないそれまでのコアセットに飽き飽きしたAaron Forsytheが生み出したものだ。リリースとともに大成功となり、良いフレイバーと素晴らしい新たなカードたちとともにコアセットの新たな幕開けとなった。
Erik Lauerは、私が働き始めたときにはまだどこにも存在していなかった開発ツール一式を構築してくれた。これは開発の非常に大きな助けとなってくれた。
私たちは以前よりもずっと個々のカードの複雑性に気を遣うようになった。私たちは開発側がカードの重心と定めたポイントに実際のプレイヤーたちが興味をもってくれるよう時間を費やしている。これによってそれぞれのセットのもっとも重要な要素に対して的確なスポットライトが当たるようになった。
これらの変化の多くは私の同僚たちが生み出したものだが、そのいくつかは私から生まれたものでもある。
私はマスターズエディションIIIとマスターズエディションIVの仕事を誇りに思っている。これらによって、単体でドラフトを行うことを想定したセットを開発するノウハウが大きくステップアップした、と私は信じている。
また私は個々のカードが明確に自身を表現できていないことがひどく我慢ならない性質だ。私の聞いたところによると、Mark Rosewaterは何人かにTom LaPilleこそがコアデベロッパーの中でもっともフレイバーに気を遣っている人間だ、と語ったらしい。
個人的には《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》や《風生みの魔道士/Windwright Mage》のようなカードが生み出される率は以前に比べて減少しているのではないか、そしてその一部は私のおかげなのではないか、と考えている。
今のマジックのスタンダードは以前よりも高い位置にある。イニストラードは非常に良い例だ。
私たちはコアセットではないセットでここまでメカニズムとフレイバーが見事に融和したセットを生み出したのは初めてのことだ。そこかしこに古典的ホラーの表現が散りばめられており、それらの表現を忠実に反映したカードテキストが記載されている。各友好色ごとに配置された部族はそれぞれ原点となる作品たちに登場している際にとるであろう振る舞いをカード上でもとるよう工夫が施されている。
私たちのスタンダード向上に対する挑戦はデベロップメントの側でも同様に行われていた。
イニストラードによるドラフトは複雑でバランスがとれていて、そして素晴らしいものだ。スタンダード環境はグランプリ、各種トーナメント、そして世界選手権という2カ月を経てもなお変化を続けている。
もちろんゲームが変化を続けてきたように、人もまた変化している。
私が初めて3年半前にウィザーズ社の敷居をまたいだとき、私は大学での4年間を終えたばかりだった。その4年間のうち、3分の1の週末はマジックのトーナメントのための長い旅行のため費やされていた。
しかしその後の3年半について言えば、私のゲームに費やす時間はカードゲームから主にロールプレイングゲームへと移行していた。そして今年、私がロールプレイングゲームのコンベンションのために旅した回数はかつて私がマジックをプレイするために旅していた回数と同じくらいになっていることに気づいた。新たな発見は常に楽しいことではある。しかし今や私はマジックのスタンダードを向上させるのにふさわしい人間ではなくなっている。
幸いなことに、ウィザーズ社はマジックとは別に広く知られるロールプレイングゲームも開発している。ダンジョンズアンドドラゴンズの仕事へと移ることは驚くほど簡単なことだった。
すでに新たに与えられた役割に求められていることは分かっているつもりだ。私のスタンダードによって過去に成功させてきた挑戦と同じことをまた再び行うのだ。それはつまり私が正しい道へ向かっているということでもある。
マジックは私の人生をあらゆる意味において変えてくれた。大きい変化も小さい変化もどっちもだ。
そしてそれらは全て良い方向への変化だった。
ハイスクール以前のマジックが私に教えてくれたことは、ある特定の事柄について他の人たちよりもずっとそれに長けている人たちというのが実際にいるということ、そしてそれが実世界において大きな違いとなることだ。
ハイスクールでのマジックは、私に狭い世界から飛び出してより広く友達を作る方法を教えてくれた。
大学時代でのマジックは私に旅することを教えてくれた。バンクーバー、ホノルル、バルセロナと旅することで私は広い見識を見につけることができた。さらにはその旅行の中で、私は故郷の国と大陸を離れても大丈夫だという自信を持つことができた。
プロフェッショナルとして生きる日々の中でのマジックは私に、上下関係のある会社という組織の中で、良いものを生み出しつつも仕事は仕事としてきちんと片づけることを教えてくれた。
君が私と同じ時期に同じことを学ぶとは思っていない。しかしそれでもなお私は君がマジックを経験する中で、同じように何か得るものがあればと願わないではいられない。
今回のこの記事が私からの最後の便りということにはならないだろう。私は次のセットである闇の隆盛のデベロップメント・リーダーであり、リリースが近づけば1回か2回は顔を出すことになるはずだ。
だけどそれまでは、あとをZacに任せることにするよ。
Tom LaPille
2011年12月02日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/171
私がウィザーズ社で働き始めたのは2008年の6月からだ。今はもう2011年の12月だ。
2週間前、私はこの場を借りてマジックのR&DからダンジョンズアンドドラゴンズのR&Dへ移ることを伝えさせてもらった。それは嘘ではない。今日のこれが私にとって最後のLatest Developmentsの記事となる。
私がマジックの仕事を通じて学んだことが1つあるとすれば、物事は既存のスタンダード(註)に対してさらに高いレベルのスタンダードを持ち込むことで変わってしまうものだということだ。これに関して私が好んで用いる例は、スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ(註)だ。
(註) スタンダード
ここで言うスタンダードはフォーマットのそれではなく、基準や基本レベルの話。スポーツなどで「環境全体のレベルが底上げされる」というときに使う「レベル」のような感じ。
(註) スティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ
原文では以下のURLへリンクが張られている。スピーチが全文掲載されており、かつ動画も張られている。スピーチの中でスティーブ・ジョブスは3つの話をしており、その1つ目の中にタイポグラフィーの話が出てくる。
http://news.stanford.edu/news/2005/june15/jobs-061505.html
スピーチの日本語訳が入った動画は以下を参照のこと。
http://www.youtube.com/watch?v=FNFX2RwOn54 (前編)
http://www.youtube.com/watch?v=jQkJsyDUFhU (後編)
そこで彼は初期のマッキントッシュ・コンピュータこそが初めて美しいタイポグラフィーを用いたコンピュータだと言った。彼のこの言葉が真実であるかどうかは私には分からない。しかし私はマッキントッシュ以前のコンピュータを用いたことはある。それらは非常に雑なタイポグラフィーを用いていた。
そして私が父の高校で使ったマッキントッシュは私にとって初めて美しいフォントを表示してくれるコンピュータであり、それ以降見かけたコンピュータたちは大体において美しいフォントを持つようになっていた。この変化がどれほどスティーブ・ジョブスの功績だと君たちが思うかは分からない。しかしコンピュータの表示する文字は最初のマッキントッシュ以前と以後でまったく異なるものとなったのだ。
私はマジックを仕事にするようになって3年半経つ。そのあいだ、多くの重要な事があった。それらは新たなスタンダードが持ち込まれてくれたことによるものだ。
Duels of the Planeswalkersは、マジックの入門的な製品がデジタルにも必要だと考えた誰かが生み出したものだ。これによって多くの新たなマジックプレイヤーたちが生まれ、また多くのマジックを離れていたプレイヤーたちが戻ってきてくれた。
基本セット2010は、全てが再録で面白くないフレイバーしか持たないそれまでのコアセットに飽き飽きしたAaron Forsytheが生み出したものだ。リリースとともに大成功となり、良いフレイバーと素晴らしい新たなカードたちとともにコアセットの新たな幕開けとなった。
Erik Lauerは、私が働き始めたときにはまだどこにも存在していなかった開発ツール一式を構築してくれた。これは開発の非常に大きな助けとなってくれた。
私たちは以前よりもずっと個々のカードの複雑性に気を遣うようになった。私たちは開発側がカードの重心と定めたポイントに実際のプレイヤーたちが興味をもってくれるよう時間を費やしている。これによってそれぞれのセットのもっとも重要な要素に対して的確なスポットライトが当たるようになった。
これらの変化の多くは私の同僚たちが生み出したものだが、そのいくつかは私から生まれたものでもある。
私はマスターズエディションIIIとマスターズエディションIVの仕事を誇りに思っている。これらによって、単体でドラフトを行うことを想定したセットを開発するノウハウが大きくステップアップした、と私は信じている。
また私は個々のカードが明確に自身を表現できていないことがひどく我慢ならない性質だ。私の聞いたところによると、Mark Rosewaterは何人かにTom LaPilleこそがコアデベロッパーの中でもっともフレイバーに気を遣っている人間だ、と語ったらしい。
個人的には《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》や《風生みの魔道士/Windwright Mage》のようなカードが生み出される率は以前に比べて減少しているのではないか、そしてその一部は私のおかげなのではないか、と考えている。
今のマジックのスタンダードは以前よりも高い位置にある。イニストラードは非常に良い例だ。
私たちはコアセットではないセットでここまでメカニズムとフレイバーが見事に融和したセットを生み出したのは初めてのことだ。そこかしこに古典的ホラーの表現が散りばめられており、それらの表現を忠実に反映したカードテキストが記載されている。各友好色ごとに配置された部族はそれぞれ原点となる作品たちに登場している際にとるであろう振る舞いをカード上でもとるよう工夫が施されている。
私たちのスタンダード向上に対する挑戦はデベロップメントの側でも同様に行われていた。
イニストラードによるドラフトは複雑でバランスがとれていて、そして素晴らしいものだ。スタンダード環境はグランプリ、各種トーナメント、そして世界選手権という2カ月を経てもなお変化を続けている。
もちろんゲームが変化を続けてきたように、人もまた変化している。
私が初めて3年半前にウィザーズ社の敷居をまたいだとき、私は大学での4年間を終えたばかりだった。その4年間のうち、3分の1の週末はマジックのトーナメントのための長い旅行のため費やされていた。
しかしその後の3年半について言えば、私のゲームに費やす時間はカードゲームから主にロールプレイングゲームへと移行していた。そして今年、私がロールプレイングゲームのコンベンションのために旅した回数はかつて私がマジックをプレイするために旅していた回数と同じくらいになっていることに気づいた。新たな発見は常に楽しいことではある。しかし今や私はマジックのスタンダードを向上させるのにふさわしい人間ではなくなっている。
幸いなことに、ウィザーズ社はマジックとは別に広く知られるロールプレイングゲームも開発している。ダンジョンズアンドドラゴンズの仕事へと移ることは驚くほど簡単なことだった。
すでに新たに与えられた役割に求められていることは分かっているつもりだ。私のスタンダードによって過去に成功させてきた挑戦と同じことをまた再び行うのだ。それはつまり私が正しい道へ向かっているということでもある。
マジックは私の人生をあらゆる意味において変えてくれた。大きい変化も小さい変化もどっちもだ。
そしてそれらは全て良い方向への変化だった。
ハイスクール以前のマジックが私に教えてくれたことは、ある特定の事柄について他の人たちよりもずっとそれに長けている人たちというのが実際にいるということ、そしてそれが実世界において大きな違いとなることだ。
ハイスクールでのマジックは、私に狭い世界から飛び出してより広く友達を作る方法を教えてくれた。
大学時代でのマジックは私に旅することを教えてくれた。バンクーバー、ホノルル、バルセロナと旅することで私は広い見識を見につけることができた。さらにはその旅行の中で、私は故郷の国と大陸を離れても大丈夫だという自信を持つことができた。
プロフェッショナルとして生きる日々の中でのマジックは私に、上下関係のある会社という組織の中で、良いものを生み出しつつも仕事は仕事としてきちんと片づけることを教えてくれた。
君が私と同じ時期に同じことを学ぶとは思っていない。しかしそれでもなお私は君がマジックを経験する中で、同じように何か得るものがあればと願わないではいられない。
今回のこの記事が私からの最後の便りということにはならないだろう。私は次のセットである闇の隆盛のデベロップメント・リーダーであり、リリースが近づけば1回か2回は顔を出すことになるはずだ。
だけどそれまでは、あとをZacに任せることにするよ。
原文の記事の最後には変身ボタンが用意されている。出来れば元のサイトにある原文の変身ボタンを一度押してみてから、次のリンク先を読んで欲しい。きっとびっくりするよ。
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/171
変身先:http://regiant.diarynote.jp/201112031619268384/
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
コメントで「ブロードウェーミュージカルのタイトル関連?」という予想があったけど、確認のしようがなくて困る。ミュージカルはほとんど知らない。
シェイクスピアはまだ主要なタイトルくらいなら聞き覚えがあるので自己判断が効くけど、知らない分野のことを単語レベルで調べてもこじつけにしかならない気がする。
一応、今週のカードの英語名だけ並べておくので気が向いた方は考察してみるよろし。
・月曜:Dream Coat
・火曜:Kismet
・水曜:Slayer of the Wicked
・木曜:Uktabi Wildcats
・金曜:Creepy Doll
余談2:月曜日 《Dream Coat》
自身の色を好きな色に変えられるエンチャント・クリーチャー。読んだ直後、一瞬だけ「へえ、意外と使えるかも」と思った自分が信じられない。
現在のオラクルでは「あなたが選んだ色1色か色の組み合わせになる」と書かれているけど、実際に印刷されたテキストは「Caster may change target creature’s color to any other color」となっている。当時は単色にしか変えられなかったんだろうな。
余談3:火曜日 《宿命/Kismet》
ネタの根幹に関わるところで誤訳してた。すいません。指摘に感謝。
以下、余談。
昔、青白パーミッションを使ってた頃、序盤の時間稼ぎのためだけに(他のコンボパーツを一切入れず)《停滞/Stasis》を1枚だけ紛れ込ませていたことがあった。まあ、たまには役に立った、とだけ言っておく。
さて、あるとき、対戦相手が何らかのコンボデッキだったらしく《嵐の大釜/Storm Cauldron》を出してきた。ちょうどそのとき手札に上記の《停滞/Statsis》があったので、返しのターンに場に出した。
観戦してた人が「あとは《宿命/Kismet》を待つだけですね」と言うのに対して「いえ、このデッキには《宿命/Kismet》が入ってないんです」と返した。対戦の結果は覚えていないけど、その会話だけは妙に記憶に残ってる。
なお、その後しばらくして《停滞/Stasis》は解雇された。
余談4:水曜日 《忌まわしきものの処刑者/Slayer of the Wicked》
カードイラストはなんとなく覚えていたけど、てっきりイラスト上の登場人物は1人だと思ってた。確かに言われてみれば後ろにもう1人いる。前面の青年のインパクトが強すぎて気づかなかった。
カードの効果は「あなたはそれを破壊してもよい」なので、吸血鬼や狼男を見つけたからといって問答無用に滅するわけではないらしい。いい人だ。だけどその優しさがあだとなって返ってきそうで不安でもある。「馬鹿め、誰が改心などするか!」とか言って背後から襲ってくる奴がいそうだ。
……ああ、そのためにお父さんがいるのか。「死ねえーっ!」(ザクッ)「ううっ」「と、父さん!」みたいな展開があって「俺の甘さが父さんを死なせた」と思いつめてしばらくは May ではなく Must で破壊するようになるけど、何かのきっかけで幼い頃に亡くなった母親が実は吸血鬼だったとかを知って「人と魔の間にも愛は生まれるのか……だから父さんは見境なしに滅したりしなかったのか」と気づき、最後は父親の遺志を継いで「あなたはそれを破壊してもよい」に戻る。
そんなストーリー(何が?)。
余談5:木曜日 《ウークタビー・ワイルドキャット/Uktabi Wildcats》
今週のテーマについての予想をコメントでもらった日。種明かしのない週については答えあわせができないのが考え物だ。まあ、それはさておきカードの話。
ウークタビーというとどうしてもオランウータンの影がちらつくけど、他にも色んな生き物が生息しているんだっけか。オランウータン以外には……ワイルドキャットとかイフリートとかドレイクとかいるのか。
とんでもなく危険な場所だな。行くのはやめとこう。
そうそう。カードが出た当時、仲間内では主に英語版が使われていて日本語版を見る機会がなく、ずっとみんなで「Uktabi」を「ウークタービ」って発音してた。そのせいでいまだに「ウークタビー」という言い方には違和感を覚えてしまう。
余談6:金曜日 《不気味な人形/Creepy Doll》
リンクだらけの回。さすがにリンク先全てを和訳する気にはなれなかったので、部分的に抜粋して翻訳。Mark Rosewaterの記事はどこかに和訳があったような気がしたけど見つからなかった。
翻訳的な話をすると「~の秘密 その1、その2、その3」は原文で「~ Fact one, Fact two, Fact three」となっている。「~の本当の話 その1」とか「~の事実 その1」とかのほうが単語の訳としては近いけど、ここは雰囲気重視で。
あと「サンディエゴで開催されたComic Conというコンベンションで参加者に贈呈された」の原文は「given away at the 2011 San Diego Comic Con」となっている。つまり原文では誰に贈呈されたかが明記されていない(もちろんリンク先のコンベンションレポートにはきちんと出てる)。
「Given Away」には「手放した」というニュアンスが含まれているからそれだけで「主催者側から客へ」というのが伝わるんだけど、さて日本語に置き換えるとなると「誰が」を明示しないとどうしても収まりが悪いような気がして「参加者に」を追加。
いらなかったかな。でも「贈呈された」だとアーティストからウィザーズにという方向の矢印も想像させてしまうような……考えすぎかなあ。なお、この「参加者」という単語に落ち着くまで「ゲスト」とか「客」とか「来訪者」とか色々悩んだりもしてる。
余談7:領域を移動する/Zone Change
Tom LaPilleの最後の記事。デベロップメントの話はZac Hillに任せたというわけで、コラムの内容は主に「私とマジックについて」になってる。
この記事の中で「私はマスターズエディションIIIとマスターズエディションIVの仕事を誇りに思っている」とある。Tom LaPilleはこれらのセットについてのコラムを2つ書いている。それらは個人的に今まで訳してきたTom LaPilleの記事の中でも特に好きな記事だった。
タイムマシンの作り方/How to Make a Time Machine
http://regiant.diarynote.jp/201101160649345352/
時間旅行/Time Traveling
http://regiant.diarynote.jp/201101100437461128/
今回のコラムの中でスティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの話が出てきた。せっかくなので視聴してみた。
マック製品を所有したこともないし、触れた回数も微々たるものなので、ジョブスについて何も語る資格を持たない身ではあるけれど、それでも彼が亡くなっていることを知った上でこのスピーチを聞くと何かしら胸に迫るものがあった。難しい単語をほとんど用いずにこれだけのことを語れるってのはすごいな。
それからこの記事で印象に残ったのは《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》と《風生みの魔道士/Windwright Mage》が出て来た箇所。
確かにこれらのカードの能力は、強いか弱いかとはまったく違った次元で「なんでそうなるの?」と問い詰めたくなるような効果だった。
ケストレルの方は「Cloudchaserだからエンチャントを割れるのはまあいいとして、それと色を変える能力はどう関連してるの?」とか「なんで色変えられるん?」とか。
魔道士の方は「風生みの魔法を使うから空を飛べるんだろうけど、なんでアーティファクトが壊れると風が生まれるの? あと風を生んだり、アーティファクトが壊れてると強くなれる魔法とライフ回復の能力ってどう関連してるの?」とか。
こういった点を踏まえながらZac Hillの記事を読むとフレイバーの大切さが改めて分かる。
ここから訳の話。
一番悩んだのは冒頭の「I already feel that in my new role my level of standards is …」の「my new role my level of standards」。これ、どこで切れて、どこがどこを修飾してるんだろう。
結局は「I already feel that in my new role, my level of standards is …」というコンマがあるものと考えて訳してみた。全力は尽くした。今はこれが精一杯(万国旗を取り出す)。
最後に。
翻訳のほうにも書いたけど、このコラムの最後には「変身ボタン」がついてる。これを押すことでZac Hillの記事に「変身」するようになってる。
初めて読み終えたときは「今日は以外と短い記事だったな。これは訳すのが楽そうだ……ん、なんだ、このボタン? ……うわ!?」という感じ。
余談8:交代、反転、そして翻訳/Rotations, Reflections, and Translations
タイトルを訳すとき、原文と同じようになんとか韻を踏ませられないものかと試行錯誤してみた。ダメだった。「反転、反射、そして ……」「代役、……、そして翻訳」とか、まあ色々考えてはみたけど、3つそろえるのはちょっと。
記事については、まずコラムを最後まで通して読んでみてから、一人称は「私」じゃないな、ということになった。カジュアルでくだけた物言いだし、コラムの出だしでいきなり遠吠えをあげてるし。
昔のオフィシャルトーナメントの決勝で用いられていたプレイマットは、中央が赤くなっていて、そこへクリーチャーを差し向けることでアタックを意味していたらしい。
それがこの原文にある「Red Zone」で、今では俗語として「Red Zoneへ向かう」という言葉が「アタックへ向かわせる」という意味になっている。さらにここでは「赤のクリーチャーになる」というのともかけている。
でも日本語で「レッドゾーン」って言っても通じるか分からないし、それと「赤」がかかっているというのもあまり直観的でないなあ、ということで意訳完了。
ポイントは「Trope」。イニストラード関係の記事はこの単語がよく出てくる。辞書を引くと「言葉のあや/比喩/修辞句」みたいな単語が並んでる。
言ってみれば「~と言えば~をイメージするよね」というようなことで、それを日本語の1単語に直せ、という問題。「比喩」「例え」「シンボル」「アイコン」「象徴」「連想」などなど、色々思いついたけど、結局、1対1で常に同じ単語に訳すことは諦めた。
それぞれの文章ごとに「その文章全体が言いたいこと」を読みとって、どこが「Trope」に当たるか分からなくてもいいや、という風に訳してみることにした。
上の例だと「Trope」に「伝説」という意味はおそらくないけど、文章自体はまあなんとか言いたいことを伝えられているんじゃないかと。
前にも1回、Zac Hillの文章を訳してみたことがあるけど、彼の文章はTom LaPilleのそれに比べると砕けた物言いが多くて読むのも訳すのも難しい。
余談8:余談の余談
Diary Noteを始めたのがちょうど1年前の今日、2010年12月04日だった。色んな人の翻訳に上から目線でコメントするばかりなことにちょっと罪悪感のようなものを感じたことから始めたこのブログも、なんだかんだで丸1年間。
レイアウトに試行錯誤したり、訳に疑問のあった箇所をまとめていたはずの週のまとめが単なるマジックよもやま話になってたり、Card of the Dayが更新されず空いてしまう土曜日の部分に長文翻訳をつっこむようになったり、訳がボロボロなのを指摘されてへこんだり、と色々あった。
何にせよ単調な日々の中で日課があるというのはとても助けになってる。
多種多様でかつ質の高い記事をコンスタントに提供してくれる公式サイトへの感謝を決して忘れないようにしつつ、これからも無理のない範囲で続けていこうと思ってる……ので、訳に関する率直な意見やらツッコミやらを今後もお願いします。
コメントで「ブロードウェーミュージカルのタイトル関連?」という予想があったけど、確認のしようがなくて困る。ミュージカルはほとんど知らない。
シェイクスピアはまだ主要なタイトルくらいなら聞き覚えがあるので自己判断が効くけど、知らない分野のことを単語レベルで調べてもこじつけにしかならない気がする。
一応、今週のカードの英語名だけ並べておくので気が向いた方は考察してみるよろし。
・月曜:Dream Coat
・火曜:Kismet
・水曜:Slayer of the Wicked
・木曜:Uktabi Wildcats
・金曜:Creepy Doll
余談2:月曜日 《Dream Coat》
自身の色を好きな色に変えられるエンチャント・クリーチャー。読んだ直後、一瞬だけ「へえ、意外と使えるかも」と思った自分が信じられない。
現在のオラクルでは「あなたが選んだ色1色か色の組み合わせになる」と書かれているけど、実際に印刷されたテキストは「Caster may change target creature’s color to any other color」となっている。当時は単色にしか変えられなかったんだろうな。
余談3:火曜日 《宿命/Kismet》
ネタの根幹に関わるところで誤訳してた。すいません。指摘に感謝。
以下、余談。
昔、青白パーミッションを使ってた頃、序盤の時間稼ぎのためだけに(他のコンボパーツを一切入れず)《停滞/Stasis》を1枚だけ紛れ込ませていたことがあった。まあ、たまには役に立った、とだけ言っておく。
さて、あるとき、対戦相手が何らかのコンボデッキだったらしく《嵐の大釜/Storm Cauldron》を出してきた。ちょうどそのとき手札に上記の《停滞/Statsis》があったので、返しのターンに場に出した。
観戦してた人が「あとは《宿命/Kismet》を待つだけですね」と言うのに対して「いえ、このデッキには《宿命/Kismet》が入ってないんです」と返した。対戦の結果は覚えていないけど、その会話だけは妙に記憶に残ってる。
なお、その後しばらくして《停滞/Stasis》は解雇された。
余談4:水曜日 《忌まわしきものの処刑者/Slayer of the Wicked》
カードイラストはなんとなく覚えていたけど、てっきりイラスト上の登場人物は1人だと思ってた。確かに言われてみれば後ろにもう1人いる。前面の青年のインパクトが強すぎて気づかなかった。
カードの効果は「あなたはそれを破壊してもよい」なので、吸血鬼や狼男を見つけたからといって問答無用に滅するわけではないらしい。いい人だ。だけどその優しさがあだとなって返ってきそうで不安でもある。「馬鹿め、誰が改心などするか!」とか言って背後から襲ってくる奴がいそうだ。
……ああ、そのためにお父さんがいるのか。「死ねえーっ!」(ザクッ)「ううっ」「と、父さん!」みたいな展開があって「俺の甘さが父さんを死なせた」と思いつめてしばらくは May ではなく Must で破壊するようになるけど、何かのきっかけで幼い頃に亡くなった母親が実は吸血鬼だったとかを知って「人と魔の間にも愛は生まれるのか……だから父さんは見境なしに滅したりしなかったのか」と気づき、最後は父親の遺志を継いで「あなたはそれを破壊してもよい」に戻る。
そんなストーリー(何が?)。
余談5:木曜日 《ウークタビー・ワイルドキャット/Uktabi Wildcats》
今週のテーマについての予想をコメントでもらった日。種明かしのない週については答えあわせができないのが考え物だ。まあ、それはさておきカードの話。
ウークタビーというとどうしてもオランウータンの影がちらつくけど、他にも色んな生き物が生息しているんだっけか。オランウータン以外には……ワイルドキャットとかイフリートとかドレイクとかいるのか。
とんでもなく危険な場所だな。行くのはやめとこう。
そうそう。カードが出た当時、仲間内では主に英語版が使われていて日本語版を見る機会がなく、ずっとみんなで「Uktabi」を「ウークタービ」って発音してた。そのせいでいまだに「ウークタビー」という言い方には違和感を覚えてしまう。
余談6:金曜日 《不気味な人形/Creepy Doll》
リンクだらけの回。さすがにリンク先全てを和訳する気にはなれなかったので、部分的に抜粋して翻訳。Mark Rosewaterの記事はどこかに和訳があったような気がしたけど見つからなかった。
翻訳的な話をすると「~の秘密 その1、その2、その3」は原文で「~ Fact one, Fact two, Fact three」となっている。「~の本当の話 その1」とか「~の事実 その1」とかのほうが単語の訳としては近いけど、ここは雰囲気重視で。
あと「サンディエゴで開催されたComic Conというコンベンションで参加者に贈呈された」の原文は「given away at the 2011 San Diego Comic Con」となっている。つまり原文では誰に贈呈されたかが明記されていない(もちろんリンク先のコンベンションレポートにはきちんと出てる)。
「Given Away」には「手放した」というニュアンスが含まれているからそれだけで「主催者側から客へ」というのが伝わるんだけど、さて日本語に置き換えるとなると「誰が」を明示しないとどうしても収まりが悪いような気がして「参加者に」を追加。
いらなかったかな。でも「贈呈された」だとアーティストからウィザーズにという方向の矢印も想像させてしまうような……考えすぎかなあ。なお、この「参加者」という単語に落ち着くまで「ゲスト」とか「客」とか「来訪者」とか色々悩んだりもしてる。
余談7:領域を移動する/Zone Change
Tom LaPilleの最後の記事。デベロップメントの話はZac Hillに任せたというわけで、コラムの内容は主に「私とマジックについて」になってる。
この記事の中で「私はマスターズエディションIIIとマスターズエディションIVの仕事を誇りに思っている」とある。Tom LaPilleはこれらのセットについてのコラムを2つ書いている。それらは個人的に今まで訳してきたTom LaPilleの記事の中でも特に好きな記事だった。
タイムマシンの作り方/How to Make a Time Machine
http://regiant.diarynote.jp/201101160649345352/
時間旅行/Time Traveling
http://regiant.diarynote.jp/201101100437461128/
今回のコラムの中でスティーブ・ジョブスがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチの話が出てきた。せっかくなので視聴してみた。
マック製品を所有したこともないし、触れた回数も微々たるものなので、ジョブスについて何も語る資格を持たない身ではあるけれど、それでも彼が亡くなっていることを知った上でこのスピーチを聞くと何かしら胸に迫るものがあった。難しい単語をほとんど用いずにこれだけのことを語れるってのはすごいな。
それからこの記事で印象に残ったのは《雲を追うケストレル/Cloudchaser Kestrel》と《風生みの魔道士/Windwright Mage》が出て来た箇所。
確かにこれらのカードの能力は、強いか弱いかとはまったく違った次元で「なんでそうなるの?」と問い詰めたくなるような効果だった。
Cloudchaser Kestrel / 雲を追うケストレル (1)(白)(白)
クリーチャー - 鳥(Bird)
飛行
雲を追うケストレルが戦場に出たとき、エンチャント1つを対象とし、それを破壊する。
(白):パーマネント1つを対象とする。それはターン終了時まで白になる。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cloudchaser+Kestrel/
Windwright Mage / 風生みの魔道士 (白)(青)(黒)
アーティファクト クリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
絆魂(このクリーチャーがダメージを与える場合、さらにあなたは同じ点数のライフを得る。)
風生みの魔道士は、あなたの墓地にアーティファクト・カードがあるかぎり飛行を持つ。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Windwright+Mage/
ケストレルの方は「Cloudchaserだからエンチャントを割れるのはまあいいとして、それと色を変える能力はどう関連してるの?」とか「なんで色変えられるん?」とか。
魔道士の方は「風生みの魔法を使うから空を飛べるんだろうけど、なんでアーティファクトが壊れると風が生まれるの? あと風を生んだり、アーティファクトが壊れてると強くなれる魔法とライフ回復の能力ってどう関連してるの?」とか。
こういった点を踏まえながらZac Hillの記事を読むとフレイバーの大切さが改めて分かる。
ここから訳の話。
原文:
I already feel that in my new role my level of standards is causing us to challenge the way we have done things in the past, and that tells me that I am doing the right work.
拙訳:
すでに新たに与えられた役割に求められていることは分かっているつもりだ。私のスタンダードによって過去に成功させてきた挑戦と同じことをまた再び行うのだ。それはつまり私が正しい道へ向かっているということでもある。
一番悩んだのは冒頭の「I already feel that in my new role my level of standards is …」の「my new role my level of standards」。これ、どこで切れて、どこがどこを修飾してるんだろう。
結局は「I already feel that in my new role, my level of standards is …」というコンマがあるものと考えて訳してみた。全力は尽くした。今はこれが精一杯(万国旗を取り出す)。
最後に。
翻訳のほうにも書いたけど、このコラムの最後には「変身ボタン」がついてる。これを押すことでZac Hillの記事に「変身」するようになってる。
初めて読み終えたときは「今日は以外と短い記事だったな。これは訳すのが楽そうだ……ん、なんだ、このボタン? ……うわ!?」という感じ。
余談8:交代、反転、そして翻訳/Rotations, Reflections, and Translations
タイトルを訳すとき、原文と同じようになんとか韻を踏ませられないものかと試行錯誤してみた。ダメだった。「反転、反射、そして ……」「代役、……、そして翻訳」とか、まあ色々考えてはみたけど、3つそろえるのはちょっと。
記事については、まずコラムを最後まで通して読んでみてから、一人称は「私」じゃないな、ということになった。カジュアルでくだけた物言いだし、コラムの出だしでいきなり遠吠えをあげてるし。
原文:
The idea was that you had this nice, intelligent, blue-feeling utility creature that kept about his research, only to go craaaaaaaaaaazy every once in awhile and crash into the red zone.
拙訳:
アイデアは要するに、礼儀正しくて賢くて「青」っぽい能力をもったシステムクリーチャーが自分の研究に没頭しているのに、ときどき何かの拍子で気が狂ったように顔を真っ「赤」にして戦闘に突入してしまう、って寸法だ。
昔のオフィシャルトーナメントの決勝で用いられていたプレイマットは、中央が赤くなっていて、そこへクリーチャーを差し向けることでアタックを意味していたらしい。
それがこの原文にある「Red Zone」で、今では俗語として「Red Zoneへ向かう」という言葉が「アタックへ向かわせる」という意味になっている。さらにここでは「赤のクリーチャーになる」というのともかけている。
でも日本語で「レッドゾーン」って言っても通じるか分からないし、それと「赤」がかかっているというのもあまり直観的でないなあ、ということで意訳完了。
原文:
It’s a classic trope-the vampire who can turn into a bat, and back again.
拙訳:
よく知られた伝説だよな。吸血鬼はコウモリに変身できるし、逆もまたしかりだ。
ポイントは「Trope」。イニストラード関係の記事はこの単語がよく出てくる。辞書を引くと「言葉のあや/比喩/修辞句」みたいな単語が並んでる。
言ってみれば「~と言えば~をイメージするよね」というようなことで、それを日本語の1単語に直せ、という問題。「比喩」「例え」「シンボル」「アイコン」「象徴」「連想」などなど、色々思いついたけど、結局、1対1で常に同じ単語に訳すことは諦めた。
それぞれの文章ごとに「その文章全体が言いたいこと」を読みとって、どこが「Trope」に当たるか分からなくてもいいや、という風に訳してみることにした。
上の例だと「Trope」に「伝説」という意味はおそらくないけど、文章自体はまあなんとか言いたいことを伝えられているんじゃないかと。
前にも1回、Zac Hillの文章を訳してみたことがあるけど、彼の文章はTom LaPilleのそれに比べると砕けた物言いが多くて読むのも訳すのも難しい。
余談8:余談の余談
Diary Noteを始めたのがちょうど1年前の今日、2010年12月04日だった。色んな人の翻訳に上から目線でコメントするばかりなことにちょっと罪悪感のようなものを感じたことから始めたこのブログも、なんだかんだで丸1年間。
レイアウトに試行錯誤したり、訳に疑問のあった箇所をまとめていたはずの週のまとめが単なるマジックよもやま話になってたり、Card of the Dayが更新されず空いてしまう土曜日の部分に長文翻訳をつっこむようになったり、訳がボロボロなのを指摘されてへこんだり、と色々あった。
何にせよ単調な日々の中で日課があるというのはとても助けになってる。
多種多様でかつ質の高い記事をコンスタントに提供してくれる公式サイトへの感謝を決して忘れないようにしつつ、これからも無理のない範囲で続けていこうと思ってる……ので、訳に関する率直な意見やらツッコミやらを今後もお願いします。
Card of the Day - 2011/12/05
2011年12月5日 Card of the Day灰色熊/Grizzly Bears - 第7版 コモンGrizzly Bears / 灰色熊 (1)(緑)
クリーチャー - 熊(Bear)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Grizzly+Bears/
Jeff A. MengesとUna Frickerがそれぞれカードイラストを描いたあと、《灰色熊/Grizzly Bears》のカードイラストはD. J. Cleland-Huraによって描かれ、コアセットにいるあいだは最後までこのイラストだった(註1)。
コアセットいたのは第10版までで、その理由は基本セット2010から《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》がその座を取って代わったためだ。
(註1) 《灰色熊/Grizzly Bears》のカードイラスト
変遷は以下の通り。アルファ版から第4版までがJeff A. Mengesのイラスト、第5版から第6版までがUna Frickerのイラスト、第7版から第10版までがD. J. Cleland-Huraのイラスト。実際のイラストは以下のリンク先を参照のこと。
Jeff A. Menges版のカードイラスト
http://magiccards.info/al/en/108.html
Una Fricker版のカードイラスト
http://magiccards.info/5e/en/163.html
D. J. Cleland-Hura版のカードイラスト
http://magiccards.info/7e/en/251.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/06
2011年12月6日 Card of the Day真心のハープ奏者/Devout Harpist - ウルザズ・サーガ コモンDevout Harpist / 真心のハープ奏者 (白)
クリーチャー - 人間(Human)
(T):クリーチャーにつけられているオーラ(Aura)1つを対象とし、それを破壊する。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Devout+Harpist/
TavaritzによってGathererにつけられた以下のコメント(註1)へ付け加えることは何もない。
「このカードはDで名前の始まるマジックのカードの中でちょうど200番目に当たる。ただしそれはウルザズ・サーガのカードをABC順に数えた場合だ。もしコレクター番号順に並べるなら200番目は《防御の光網/Defense Grid》となる」
(註1) Tavaritzによってつけられたコメント
原文では、公式サイトのカード検索ページであるGathererの《真心のハープ奏者/Devout Harpist》のカードデータへリンクが張られている。
《真心のハープ奏者/Devout Harpist》のカードデータ
http://gatherer.wizards.com/pages/card/discussion.aspx?multiverseid=12813
ウィザーズのサイト用のアカウントを持っていればコメントを書きこめる。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/07
2011年12月7日 Card of the DayMesa Chicken - アングルード コモンMesa Chicken (白)(白)
クリーチャー - ニワトリ(Chicken)
立ち上がり、羽ばたき、鶏のように鳴く:Mesa Chickenはターン終了時まで飛行を得る。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mesa+Chicken/
《Mesa Chicken》のカードイラストは「写実的で、かつ威厳のあるニワトリを描いて欲しい」という指示をイラストレーターKev Walkerが解釈した結果だ。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
突撃ゼッペリド/Assault Zeppelid - ディセンション コモンAssault Zeppelid / 突撃ゼッペリド (2)(緑)(青)
クリーチャー - ビースト(Beast)
飛行、トランプル
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Assault+Zeppelid/
自然そのままのゼッペリドは青に属するクリーチャーだ。しかしシミックの魔道士たちはより戦闘へ特化させるべく緑の魔法の力をゼッペリドへ移植した。純粋な青のバージョンのゼッペリドは《ストラトゼッペリド/Stratozeppelid》(註1)に見ることができる。
(註1) 《ストラトゼッペリド/Stratozeppelid》
こんな感じのクリーチャー。
http://magiccards.info/gp/jp/36.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/09
2011年12月9日 Card of the Dayグーマ/Guma - ウルザズ・サーガ アンコモンGuma / グーマ (2)(赤)
クリーチャー - 猫(Cat)
プロテクション(青)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Guma/
《グーマ/Guma》が水辺での狩りを好むことはそのカードイラストとフレイバーテキスト(註1)から見てとれる。それを考えるとプロテクション(青)を持っていることにも納得がいくだろう。何しろこのクリーチャーは鋭い歯をもつサメすら恐れる必要がないのだから。
(註1) フレイバーテキスト
原文:
When the giant returned for the night, he found a dead merfolk on his pillow. Although he praised the little guma, he inwardly wondered where she had hid the head.
引用元:http://magiccards.info/us/en/197.html
日本語:
巨人が夜ねぐらに戻ってみると、枕の上にマーフォークの死体が置いてあった。彼はかわいいグーマを誉めてやったが、内心こいつ頭をどこに隠したのだろうといぶかった。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Guma/
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
今週のCard of the Day (2011年12月 第2週) とか
2011年12月11日 週のまとめ コメント (2)余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
一貫したテーマはあったのかな。ないような気がする。全てカードイラストに言及していると言えなくもないけど、断言するにはいまいち論拠が薄い。
余談2:月曜日 《灰色熊/Grizzly Bears》
マジック世界において史上もっとも多くの《稲妻/Lightning Bolt》と《ショック/Shock》を撃ち込まれながらも、その都度《巨大化/Giant Growth》で命を救われてきたクリーチャー。
ちなみに最初期のマジックにおいては「ダメージは連鎖の最後に計算する」というルールがあったため、《巨大化/Giant Growth》に対応して《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込んでも死ななかったらしい。
……という話を大昔のRPGマガジンで読んだ記憶があるんだけど本当なんだろうか。
余談3:火曜日 《真心のハープ奏者/Devout Harpist》
最初にこの日の記事を読んだときは「なぜにウルザズ・サーガのカード順だけをあれこれ変えて何番目か判定しているんだろう」と不思議に思ってしまった。
考えてみれば当たり前の話で、これより前のセット内のDで名前が始まるカードたちの順番がどうだろうと、その総枚数は一定に決まってるわけで。
余談4:水曜日 《Mesa Chicken》
こいつが起動されるのを1回だけ見た記憶がある。
余談5:木曜日 《突撃ゼッペリド/Assault Zeppelid》
ここはシミック研究所の休憩室。冷蔵庫と流し台のあいだに毛布の敷かれたダンボール箱が置かれており、その中にゼッペリドの子供が1匹ぷるぷるしてる。昼休みのベルが鳴り、シミックの研究員たちが弁当箱を片手に三々五々と集まってきた。
研究員A「おーし、昼休みだ、昼休み」
研究員B「エサやろうよ。持ってきた? 緑のもの」
研究員A「ほうれん草もってきた」
研究員B「いいね、こう、パワーがつきそうだよね。トランプルとか」
ゼッペリド(ぷるぷる)
研究員A「ほうれん草だぞー、食えー」
ゼッペリド(ぷるぷる)
研究員B「あー、食べてる食べてる」
研究員A「なんとなしに緑っぽくなってきた気がするな」
ゼッペリド(ぷるぷる)
主任「こらー! いつまで遊んどる! 仕事に戻らんか!!」
研究員A「はっ、すいません!」
研究員B「ただいま、戻ります!」
(ドタドタ……)
主任「まったく、あいつら、研究対象をなんだと……」
ゼッペリド(ぷるぷる)
主任「……」
ゼッペリド(ぷるぷる)
主任「キャベツ食うかな」
次の日のこと。
研究員B「今日はセロリ持ってきたよー」
研究員A「お、おい、ちょっとこれ見ろよ」
研究員B「……なに、これ! 誰、こんなにキャベツ置いてったの!?」
研究員A「腹いっぱいで何も食わねーんだよ……」
ゼッペリド(ぷるぷる)
助手A「そういえば今朝、主任が駐車場でキャベツ抱えてましたよ」
研究員A,B「「あのキャベツ野郎!」」
ゼッペリド(ぷるぷる)
シミックギルドも意外と楽しそうだな。ラブニカ世界に飛ばされたらシミックに入ろう。
余談6:金曜日 《グーマ/Guma》
前に出張者の方に聞いたところによると、なんでも北海道の空港では「Puma」のロゴに似せて熊のイラストが描かれている「Kuma」Tシャツが売っているらしい。大丈夫なんだろうか。
一貫したテーマはあったのかな。ないような気がする。全てカードイラストに言及していると言えなくもないけど、断言するにはいまいち論拠が薄い。
余談2:月曜日 《灰色熊/Grizzly Bears》
マジック世界において史上もっとも多くの《稲妻/Lightning Bolt》と《ショック/Shock》を撃ち込まれながらも、その都度《巨大化/Giant Growth》で命を救われてきたクリーチャー。
ちなみに最初期のマジックにおいては「ダメージは連鎖の最後に計算する」というルールがあったため、《巨大化/Giant Growth》に対応して《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込んでも死ななかったらしい。
……という話を大昔のRPGマガジンで読んだ記憶があるんだけど本当なんだろうか。
余談3:火曜日 《真心のハープ奏者/Devout Harpist》
最初にこの日の記事を読んだときは「なぜにウルザズ・サーガのカード順だけをあれこれ変えて何番目か判定しているんだろう」と不思議に思ってしまった。
考えてみれば当たり前の話で、これより前のセット内のDで名前が始まるカードたちの順番がどうだろうと、その総枚数は一定に決まってるわけで。
余談4:水曜日 《Mesa Chicken》
こいつが起動されるのを1回だけ見た記憶がある。
余談5:木曜日 《突撃ゼッペリド/Assault Zeppelid》
自然そのままのゼッペリドは青に属するクリーチャーだ。しかしシミックの魔道士たちはより戦闘へ特化させるべく緑の魔法の力をゼッペリドへ移植した。
(2011年12月08日 Card of the Dayより引用)
ここはシミック研究所の休憩室。冷蔵庫と流し台のあいだに毛布の敷かれたダンボール箱が置かれており、その中にゼッペリドの子供が1匹ぷるぷるしてる。昼休みのベルが鳴り、シミックの研究員たちが弁当箱を片手に三々五々と集まってきた。
研究員A「おーし、昼休みだ、昼休み」
研究員B「エサやろうよ。持ってきた? 緑のもの」
研究員A「ほうれん草もってきた」
研究員B「いいね、こう、パワーがつきそうだよね。トランプルとか」
ゼッペリド(ぷるぷる)
研究員A「ほうれん草だぞー、食えー」
ゼッペリド(ぷるぷる)
研究員B「あー、食べてる食べてる」
研究員A「なんとなしに緑っぽくなってきた気がするな」
ゼッペリド(ぷるぷる)
主任「こらー! いつまで遊んどる! 仕事に戻らんか!!」
研究員A「はっ、すいません!」
研究員B「ただいま、戻ります!」
(ドタドタ……)
主任「まったく、あいつら、研究対象をなんだと……」
ゼッペリド(ぷるぷる)
主任「……」
ゼッペリド(ぷるぷる)
主任「キャベツ食うかな」
次の日のこと。
研究員B「今日はセロリ持ってきたよー」
研究員A「お、おい、ちょっとこれ見ろよ」
研究員B「……なに、これ! 誰、こんなにキャベツ置いてったの!?」
研究員A「腹いっぱいで何も食わねーんだよ……」
ゼッペリド(ぷるぷる)
助手A「そういえば今朝、主任が駐車場でキャベツ抱えてましたよ」
研究員A,B「「あのキャベツ野郎!」」
ゼッペリド(ぷるぷる)
シミックギルドも意外と楽しそうだな。ラブニカ世界に飛ばされたらシミックに入ろう。
余談6:金曜日 《グーマ/Guma》
前に出張者の方に聞いたところによると、なんでも北海道の空港では「Puma」のロゴに似せて熊のイラストが描かれている「Kuma」Tシャツが売っているらしい。大丈夫なんだろうか。
Card of the Day - 2011/12/12
2011年12月12日 Card of the Day黄金の羽根ズーベリー/Zuberi, Golden Feather - ミラージュ レアZuberi, Golden Feather / 黄金の羽根ズーベリー (4)(白)
伝説のクリーチャー - グリフィン(Griffin)
飛行
他のグリフィン(Griffin)・クリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
3/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Zuberi%2C+Golden+Feather/
ミラージュには実際ところズーベリー以外のグリフィンが4匹いる。この4体には、2体でささやかなコンボを構成してくれるグリフィンたち、自身を生け贄に捧げる《ウンヤロ・グリフィン/Unyaro Griffin》(註1)とそれを回収できる《メテンダ・グリフィン/Mtenda Griffin》(註2)が含まれる。
(註1) 《ウンヤロ・グリフィン/Unyaro Griffin》
Unyaro Griffin / ウンヤロ・グリフィン (3)(白)
クリーチャー - グリフィン(Griffin)
飛行
ウンヤロ・グリフィンを生け贄に捧げる:赤のインスタント呪文1つか赤のソーサリー呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Unyaro+Griffin/
(註2) 《メテンダ・グリフィン/Mtenda Griffin》
Mtenda Griffin / メテンダ・グリフィン (3)(白)
クリーチャー - グリフィン(Griffin)
飛行
(白),(T):メテンダ・グリフィンをオーナーの手札に戻すとともに、あなたの墓地にあるグリフィン(Griffin)・カード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。この能力は、あなたのアップキープの間にのみ起動できる。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mtenda+Griffin/
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/13
2011年12月13日 Card of the Day銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem - ウルザズ・サーガ レアKarn, Silver Golem / 銀のゴーレム、カーン (5)
伝説のアーティファクト クリーチャー - ゴーレム(Golem)
銀のゴーレム、カーンがブロックするかブロックされた状態になるたび、それはターン終了時まで-4/+4の修整を受ける。
(1):クリーチャーでないアーティファクト1つを対象とする。それはターン終了時まで、パワーとタフネスがそれぞれ自身の点数で見たマナ・コストに等しいアーティファクト・クリーチャーになる。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Zuberi%2C+Golden+Feather/
プレインズウォーカーの《解放された者、カーン/Karn Liberated》として登場するまで、カーンはごく普通のクリーチャーだった。なお初出がクリーチャーであったプレインズウォーカーは他にヴェンセールとニコル・ボーラスがいる(註1)。
(註1) ヴェンセールとニコル・ボーラス
原文ではそれぞれクリーチャーであった頃のカードデータへのリンクが張られている。なおクリーチャー版のカードテキストそれぞれ以下の通り。
Venser, Shaper Savant / 造物の学者、ヴェンセール (2)(青)(青)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
瞬速(あなたはこの呪文を、あなたがインスタントを唱えられるときならいつでも唱えてよい。)
造物の学者、ヴェンセールが戦場に出たとき、呪文1つかパーマネント1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Venser%2C+Shaper+Savant/
Nicol Bolas / ニコル・ボーラス (2)(青)(青)(黒)(黒)(赤)(赤)
伝説のクリーチャー - エルダー(Elder) ドラゴン(Dragon)
飛行
あなたのアップキープの開始時に、あなたが(青)(黒)(赤)を支払わない限り、ニコル・ボーラスを生け贄に捧げる。
ニコル・ボーラスが対戦相手にダメージを与えるたび、そのプレイヤーは自分の手札を捨てる。
7/7
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Nicol+Bolas/
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
【翻訳】ブライアン・キブラーが語るプレインズウォーカーポイントシステムの問題点について/The Problem With Planeswalker Points【SCG】
2011年12月13日 翻訳 コメント (16)【翻訳】ブライアン・キブラーが語るプレインズウォーカーポイントシステムの問題点について/The Problem With Planeswalker Points【SCG】
Brian Kibler
2011年12月12日
元記事:http://www.starcitygames.com/magic/legacy/23253_The_Problem_With_Planeswalker_Points.html
プレインズウォーカーポイントシステムが大々的に始まったが、導入からつまずいた感がある。
プレイヤーに自身が上へ上へと進む達成感をコンスタントに感じてもらうツールとしては素晴らしいと思う。さらにこのシステムはDCIレーティング・ランキング・システムと違ってプレイしたくないという気持ちを生じさせることなく、プレイヤーに大会結果から自身のスキルレベルを測るバロメーターとして機能してくれる。
高いレベルの大会での成績に対する報酬や招待などを提供する手法となる一方、利己的な利用が可能という不備や大会結果について質ではなく量が重要視されるということに対する不満の声も聞かれる。
またこれに関連して、このシステムが持つ問題点としては不確定性と燃え尽き症候群があげられる。このシステムによって競い合うによって、プレイヤーは半ば強制的にプレイし続けることを求められる。そうしたくはないときも含めてだ。
なぜなら参加し続けないことによってそれまで積み上げてきたことによって得られるはずだった報酬が得られなくなってしまう可能性があるからだ。
問題点について
最初の競技シーズンの結果がもう間もなく帳簿に書き留められようとしている。これによってPWPシステムがプレイヤーたちの動向にどのような影響を与えるかを確認できる機会が得られたわけだ。
トップに並ぶプレイヤーたちの結果を見るに、どうやらプレイヤーたちは報酬を求めて(もしくは少なくともポイントの獲得そのものを狙って)大会への参加回数を大幅に増やしたらしい。
高ランクのポイント獲得者たちの多くは、その獲得ポイントの結構な率を低いランクの大会へ何度も何度も足を運ぶことによって得ている。100位以内のプレイヤーたちの大半はこのシステムの不備をつくことによってその座に辿りついているのだ。
現在のシステムの中でこれを可能としてしまっているもっとも大きな穴の1つは、プロツアーとグランプリのサイドイベントが増加傾向にあることだ。
この変更を推し進めている動機については理解しているつもりだ。PWPを得るためだけに賞品の見込みのないGP/PTに残り続けなければならないという事態を回避するためだろう。
しかしこのことによる影響はその範囲に収まらない。プレイヤーたちは高い倍率を誇るこれらサイドイベントそれ自体を目的にグランプリやプロツアーへ参加し、実際には本戦に出場しているプレイヤーたちを上回る勢いでポイントを稼いでいるのだ。
グランプリサンディエゴで私は64位以内に入り328ポイントを得た。その間、Gerry Thompsonはバイの最中にサイドイベントへ参加し、2日目進出を逃したあとPTQをドロップ前に1ラウンドだけプレイし、日曜日だけで7つのサイドイベントに参加した。これによって彼は私よりも多くのポイントを獲得している。
世界選手権で私はまた64位以内に入り、最終的には368ポイントを得ている。その間、私のルームメイトであるJeffはサイドイベントのみで私よりも多くのポイントを稼いでいる。さらに何人かのプレイヤーは週末を通してJun’ya Iyanagaよりも多くのポイントを稼いでいる……Jun’ya Iyanagaは「世界選手権の優勝者」だ。
このことは明らかに現在の構造に不備があることを示唆している。
また同様に、フライデーナイトマジックの倍率の高さはこれらの大会の重要性を上回り過ぎている。PWPのトップのポイント内訳を見てもらえば分かることだが、そのポイントの結構なパーセンテージはFNMから得ており、また大半のプレイヤーは1週間に複数回のFNMイベントに参加してポイントを稼いでいる。
PWPシステムはこういったプレイヤーたちに報いるべき制度ではない。FNMを楽しみたいだけのプレイヤーたちを罰するべきではもちろんない(旧レーティングシステムはFNMで負けることでそうなってしまっていた可能性がある)。しかし参加しなければポイント争いに置いていかれるという強迫観念から参加するようになることもまたおかしい。
私はサンクスギビングの休暇中、ラスベガスへ出かけた。そのときデッキも持っていった。FNMに間に合う時間に到着したときのためで、ポイント欲しさに参加するかもしれなかったからだ。
結局、私はFNMの時間までには到着できず、普通に友人と遊びに出かけた。最初からそれが旅の目的だったからだ。だがそもそもこれについて悩むこと自体がおかしな話であり、PWPシステムがプレイヤーに強いるべき選択であってはならない。
私は、PWPシステムはもし正しく運用されれば、コンスタントに良い成績を出しているにも関わらず本戦への招待を受けられないプレイヤーに対して報いることが出来る素晴らしいシステムだと思っている。しかし現在の運用による招待方法はいくつもの点において不備があると言える。
プロツアーとグランプリの優勝者へ権利を与えなくなったのは大きな問題点だ。これによって、多くのイベントに参加する時間のない(もしくは、はっきり言ってしまえば多くのイベントへ参加する気のない)プレイヤーからプロツアーへ参加する機会を奪ってしまうことになる。
今までは、グランプリでトップをとるかプロツアー予選を突破すればプロツアーに参戦できるという期待をプレイヤーに抱かせることができた。そしてその結果に続けていくつかのイベントで手堅い結果を出すことができれば「トレインに乗る」ことができた。新たなシステムではそれは不可能だ。
今年の世界選手権でDavid Caplanはトップ4に残り、次のプロツアーへの参加権利を得ることが出来た……が、それは単にプロツアーポイントシステムが廃止される前に16点のプロツアーポイントを獲得したからだ。準々決勝で敗退していたら、彼は権利を得ることができなかった。
Andrew Cuneoはマジックオンライン世界選手権での好成績を理由に世界選手権への権利を得て10位に入ることに成功したが、ホノルルへの権利は得られなかった。
私が数年前にマジックに復帰したとき、私はプロツアーホノルルの予選を勝ち抜き、本戦でトップ8に残った。これが新しいポイントシステムの下で行われていたら、続くプロツアーオースティンへの参加権利を得ることはできなかっただろうし、またそこで優勝することも出来なかっただろう。
プロツアーやグランプリの優勝によって権利を勝ち取れるというのはきわめて重要なことだ。PWPシステムを用いて自分たちの都合の良い環境を築こうとしている数多くのプレイヤーは間違いなく存在する。
彼らはPWPシステムの恩恵にあずかれないプレイヤーたち、つまり権利獲得のために膨大な数のイベントに参加することの出来ないプレイヤーたちを締め出そうとしている。
マジック以外の全てを諦めるつもりのある人間にしかプロツアーに参加する権利はない、というのがウィザーズの発したいメッセージだとは私には到底思えない。
どちらかといえば、Paul RietzlやJosh Utter-Leytonのようなフルタイムの仕事につきつつも高いスキルを持つプレイヤーたちにこそチャンスが与えられるべきだと思う。
重要な点として挙げたいのは、PWPシステムが締め出すことになってしまうのは競技マジックに時間を割けない人たちだけではないという点だ。このシステムは、コンスタントにレベルの高い競技イベントが開かれない地域に対しても逆風となる。言ってしまえば、アメリカと西ヨーロッパの一部と日本以外の全てだ。
グランプリ優勝者に対して権利を与えないこと、そして同様に国別選手権から世界選手権へと通じる道の消滅は、市場の小さな地域からプロツアーへ通じる道が失われることを意味している。
ああ、もちろんPTQを勝ち抜けばいいということは変わらない。しかしそれでも彼らが参加することの出来るプロツアーはただ1つだけだ。もしトップ8に入ったとしても次のイベントへの参加権利は保障されない!
この新たなシステムが施行されていたら、何人のプロツアープロたちがその姿を消していたことだろう? Paulo Vitor Damo de Rosa? Martin Juza? Jeremy Neeman? 新たなシステムの下では、これらのプレイヤーがプロツアーにその輝きを残すことはなかっただろう。
プロツアー予選を勝ち抜いてから、さらにプロツアー予選を勝ち抜いてから、さらにさらにプロツアー予選を勝ち抜いていれば、もしかしたら? だけど実際はそれを達成するずっと前に気力尽きて諦めてしまうことだろう。
毎週複数のFNMに参加しつつサイドイベント目当てにグランプリやプロツアーを飛びまわれるだけの時間とお金を持っている「PWPシステムに君臨できる」プレイヤーにとっても、現在のPWPシステムの招待制度は必ずしも好ましいものではないはずだ。
潜在的な招待権利は不確定なものでしかなく、彼らはポイントを稼ぎ続けなければ誰かに追い抜かれてしまうかもしれないという強迫観念に追われ続ける。シーズンが終わるごとにポイントがリセットされるという点はシステムにダッチ・オークションの様相を呈させている。勝てなかったプレイヤーにしても、それまでシステムにつぎ込んだ全てを失い、しかも何も得るものはない。
今現在、70位にいるChris Mascioliを例にとってみよう。
Chris MascioliはPWPシステムが発表された時点からポイントをコツコツと稼ぎ続けている。とはいえ彼はポイントのためだけにグランプリやプロツアーのサイドイベントに参加しようとするほどには入れ込んでいない。
彼の現在のシーズンポイントは1936点であり、そのうちの615点はFNMから得たものだ。これは彼の総ポイント数のほぼ3分の1に当たる量だ! 彼は相当な数のプロツアー予選に参戦しているが、自身の力量のなさのためか、一度もトップ8にすら入れていない。
自身がその制度のおかげで報酬を得ることができる位置につけているにも関わらず、Chris MascioliはPWPシステムには構造的におかしなところがあると公言している。彼に言わせると、この制度がなければFNMとその次の日のプロツアー予選の両方に参加するために地下鉄の駅で夜を明かすような真似をすることはなかったとのことだ。
現在の位置から転がり落ちないためにイベントに参加し続けているのはこのChris Mascioliだけではないことは確かだ。
次の順位のプレイヤー(実質的な「目に見える競争相手」)に対してすでに数百点のポイント差をつけているAlex Bertonciniは、それでも世界選手権へ出向いていくつものサイドイベントに参加してきた。抜かれることの恐怖からだ。
同様に100位以内にいるZaiem Begは、38度を超える熱であったにも関わらずFNMへ参戦した。自身の健康よりもポイントを抜かれる恐怖が上回ったからだ。
PWPポイントが実際のイベントにおける「プレイ」に対してどのような影響をもたらしたのかについても言及しておくべきだろう。
世界選手権では複数のイベントに一時に参加を申し込んだプレイヤーが多くいた。それぞれのイベントのラウンドが交互に開始されることで全てに「参加できる」ことを期待してのことだ。もしそう上手くいかなかったら、単に彼らは降参するのに十分な時間だけ顔を出すことでとりあえずドロップをまぬがれていた。
複数のイベントに登録しつつ、全てのラウンドで投了し続けたプレイヤーを私は複数人知っている。彼らはいずれかのマッチでBYEと当たってポイントが稼げないかとを期待していた。
こういった行為によって傷つくことになるのは、こんな馬鹿げた行為に手を染めず正々堂々とPWPポイントを稼ごうとしているプレイヤーだけではない。マジックをプレイしたいと望んでイベントに参加しているにも関わらず、こんなプレイヤーとのマッチアップを組まれてしまったプレイヤーたちも同様に被害者だ。
またシステム開始時点から参戦できていたかどうかが非常に重要になってしまう点も無視できない。シーズン開始時の数週間にイベントに参加できなかったプレイヤーは大きな不利を背負うことになってしまう。
権利獲得を目標とするプレイヤーが、あるシーズンについて「全グランプリに参加できないなら一切のグランプリに参加しなくても同じことだ」と考えてしまうことは大いにありえることだ。
なぜなら相当数の招待スロットはすでに埋まってしまっているだろうし、また多くのグランプリに参加できているプレイヤーのポイントを上回ることはほぼ不可能だからだ。
さらに特筆すべき点としては、現在の競技シーズンは以降のものよりもずっと重要度が高くなってしまっている、という点だ。
なぜならトップをとることが出来たプレイヤーたちは単にプロツアーホノルルの権利を得られるだけではなく、来期の全てのグランプリのBYEを得るからだ。そしてなんらかの理由によりトップに残れなかったプレイヤーたちは来シーズンを全て1回戦から開始することになる。
これは高いレベルの競技マジックに興味を抱いているプレイヤーたちの参戦に対して大きな障害となる。スタート地点ですでに差をつけられ、追い抜くためには相手以上の成績が必要となる。大いにやる気を削いでしまうことになるだろう。
さてどうしたものか
最低限のスタートとして、プロツアーとグランプリに権利獲得のチャンスを一部でもいいから与えなおすべきだ。プロツアーの規模を小さくしたいのならば、以前よりもずっと少ない数でもかまわない。
私の希望としては、グランプリのトップ8およびプロツアーのトップ32に権利を与えることだ。もしそれでは招待人数が多すぎるということであれば、グランプリはトップ4まで、プロツアーはトップ16までにしてみてはどうだろう。
ただ、トップ8はちょうどいいラインだと思うし、次のプロツアーに続けて参戦するためにベスト16に残らなければいけないというのはハードルが高すぎるように思われる。
最近の発表にあったグランプリの優勝者のみ、招待されるというのはいくらなんでもしみったれている。ここ最近のグランプリ本戦に参加するプレイヤーの数を踏まえるとなおさらだ。
本戦に参加したいと考えるプレイヤーの多くはプロツアー予選を避けるようになっている。何百人と参加するトーナメントでたった1人しか権利を勝ち取れないという条件を好むプレイヤーはあまりいない。
これが参加者1000人を超えるようなイベントでかつ同じ条件となったときに参加してみようと考えるプレイヤーがどれほどいるだろうか?
解決方法としてはおそらく以前と同程度までハードルを下げることだろう。たとえばグランプリのトップ4とプロツアーのトップ16だ。かわりに他の手段で得られる権利の数を減らす必要がある。
PWPシステム自体の話をすれば、プレミアイベントのサイドイベントへのボーナス倍率は廃止されるべきだ。これらによって得られるメリットは悪用されるデメリットに比べると小さすぎるといわざるを得ない。
正当性を持たせたいならポイント倍率はイベントの主要な点に対してのみ課されるべき倍率だ。これらのボーナス倍率は簡単に悪用されることがすでに証明されている。
同様にFNMの倍率も問題だ。減らすか、もしくは完全に撤廃すべきだ。
FNMの価値が高いことは無視できないレベルに悪用されている。PWPの争いの中でFNMによるポイントが占める重要性(またラウンド数の多いFNMイベントへの参加可否の重み)はあまりに高すぎる。
これに関連して私が同様に懸念しているのは、FNM選手権だ。
現状では、たくさんのFNMイベントを開催しているショップへ行くことが出来るプレイヤーもしくは毎週複数のFNMイベントに参加できるプレイヤー以外にはまったく権利獲得の見込みがない。
単純にFNMを楽しんでいるプレイヤーや、地元のショップで良い成績を収めているプレイヤーであったとしてもまったく太刀打ちできるものではない。
私の友人から聞いた話だが、彼の兄弟はもう何年もFNMに参加し続けており、生涯獲得FNMポイントもトップ10に入るほどで、そんな彼は初めてFNM選手権について聞いたときそれはそれは喜んだそうだ。
しかしシーズンが始まって数週間後、他のトッププレイヤーたちがどれほどの点数を稼ぎだしているのかを知ったとき、自分にはまったく見込みがないことに気づいたらしい。
その結果、彼はFNM選手権の発表以前よりもFNMに参加する回数が「少なくなった」とのことだ。あまりに失望したためにね。
この問題点についてどうすれば解決できるのは分からないが、これをそのままにしてよいとは思えない。問題点としてとらえるべきだと思う。
PWPによる招待制度に立ち戻ると、解決法の1つとしては、1シーズンのあいだにあるプレイヤーが特定のイベントタイプから得ることができるポイント数に上限を設けるというのはどうだろうか。
たとえば、PWPシステムの招待可否を計算する際にはFNMかサイドイベントから得たうち500点までしか合計点に含めないことにする、というふうにだ。これによって複数の問題が一度に解決する。
これによって低いレベルのサイドイベントを無限に渡り歩く必要性をなくすことができるし、プレイヤーにこれ以上無理に参加し続けなくてもよいという心理的なゴールを設けることができるし、またそれらサイドイベントの倍率を下げることなく本戦に対する相対的な重要性を下げることができる。
この解決法をとるに当たって、潜在的な問題となるのは現在のイベントのクラス分けのされ方だ。SCGオープンのレベルのイベントは倍率が×3しかないから「低い」のだろうか?
プロツアー予選とグランプリのサイドイベントはどちらも×5だから同程度とみなされるべきなのだろうか?(個人的には同等にみなされるべきではないと信じているが、これはまた別の問題であり、別個に解決されるべきことだ)
正しい分け方としては、上限なく加算されるのはプロツアー予選、グランプリ、そしてプロツアー本戦から得られるポイントに限るべきだ。しかしこれだと非常に多くの競技イベントが外されることになってしまう。
もしかしたらもっともよい解決方法は上限を高めに見積もることなのかもしれない。そう、たとえば上限を1000点として、上記3つのイベント以外は全てこれに含まれることにする、のようにだ。
こういった形で上限を設けてもプレイヤーたちは多くのポイントを主要でないイベントから稼ぎ出すことが出来てしまう。
しかし少なくとも時間さえかければひたすらポイントが稼げるというような形は減らせるだろうし、複数のイベントに同時参加して時間がかち合ったら姿を現さないとか単に投了だけするというような事態も減らせるのではないかと思われる。
上限いっぱいまで稼ぐには相当なプレイ量が必要となるだろう。しかしそれでも1シーズンの間ずっとノンストップでプレイし続けなければいけないということにはならないだろうし、また単にプレイをし続けるだけで他のプレイヤーの追いつくチャンスをつぶすということも出来なくなる。
それにこうすることで、プレイする回数が多いだけでなく加えて主要な競技イベントで高い成績を収めたプレイヤーのほうが権利を獲得しやすくなるという側面がある。低いレベルのイベントで上限いっぱい稼いだプレイヤーとの差別化を図ることができるからだ。
またシステムはグランプリとプロツアーレベルのイベントで優勝したプレイヤーに何らかの形で報いる必要がある。単に参加するだけに対して、好成績を残した際に得られるメリットが相対的に見て低すぎる。
現状では、プロツアーのラウンド1を勝ち抜くこととトップ16に残ることがほぼ等価だ。またグランプリに2回参加して両方とも6-3に終わり2日目に参加できない場合のほうが1回だけ参加して12-3の成績でトップ8に残った場合よりも高い。
プロツアーでトップ8に残った場合の倍率はそれ以下の順位のときよりも高く設定すべきだし、グランプリも同様だ。
トップ8に残ったら50%のボーナスが乗るというのを考えたが、それでも低すぎる気がしている。プロツアーで優勝した際に得られるポイントが、グランプリに毎回参加してBYEを含めて1回か2回だけラウンド1を勝ち抜いたプレイヤーよりも低くなってしまうからだ。
私の考える適切な倍率は、トップ8で200%、トップ16で150%、トップ32で125%、トップ64で110%くらいだろうか。それより高くてもいいかもしれない。
仮に200%のボーナスがあったとしても、私のプロツアーオースティンでの優勝(ボーナス倍率なしで612ポイント)は1,224ポイントまでしか上がらない。これはグランプリに6回参加してその全てで6-3した場合(つまり一度も2日目に進めなかった場合)と同程度だ。
好成績の価値とグランプリやプロツアーで悪い成績を残した場合の対比は、来年度から変更されるプロプレイヤークラブの仕組みや新たな世界選手権への招待制度のことをを考えるとさらに重要となる。
来年度の世界選手権への招待はプロフェッショナルPWPに基づいて決定される。おそらくプロプレイヤークラブの代替案も同様となるだろう。
前述した順位に応じたボーナス倍率がなければ、各グランプリに欠かさず参加したプレイヤーと2つのイベントにしか参加していないがその両方で優勝したプレイヤーとのあいだの累計ポイントに差がほとんどなくなる。
これは非常に大きな問題のように思われる。
プロプレイヤークラブの新しい形が相対評価なのか絶対評価なのか(トップから一定順位までのプレイヤー数なのか、一定ポイント数以上のプレイヤー全員なのか)、そのいずれであったとしても、現在のシステムでは少ないイベントで好成績を残したプレイヤーよりもより多くの数のイベントに参加するプレイヤーの側に重みが置かれることになるだろう。
これが問題と感じているのは私1人ではない。少なくとも私は毎週末ごとにグランプリに参加するという事態は避けたいと思っている。旅費は決して安くはないし、国の端から端まで毎週移動するというのは実質的に他に何もできなくなってしまう。
しかし全てのグランプリに参加するということの価値が高く設定されてしまうと1つでも参加しなかったプレイヤーはそれだけで不利を背負うこととなり、以降のイベントでよい成績を残したとしてもその差を取り戻せる見込みはそれほど大きくはない。
これによってグランプリへの参加は「オールオアナッシング」となってしまう。全てのグランプリに参加したいとは思わないが、全てに参加しないでも同じと考えるのも同様に気持ちのいいものではない。
単に参加するだけということに比べると良い成績を残すというのは非常に重要なことだ。しかし現状のプロフェッショナルPWPがこのままだとすると、それは重要ではなくなる。
私はウィザーズ・オブ・ザ・コーストがプロツアーを夢の舞台と位置づけていることを知っている。彼らがトッププレイヤーがその成功に応じた報酬を得るべきと考えていることも知っている。彼らが競技マジックを単に「参加し続けることだけに意義がある」ものにしたくないことも知っている。
しかし私はまたこれらの立ち位置とここ最近発表された変更たちと相容れないことも知っている。
彼らがゲームが長く愛されるために全体的に見てもっとも利益になるよう行動してくれるであろうことを私は信じており、ここのあげた思いのいくつかが彼らを目的へと導く助けとなってくれるよう祈っている。
Brian Kibler
2011年12月12日
元記事:http://www.starcitygames.com/magic/legacy/23253_The_Problem_With_Planeswalker_Points.html
プレインズウォーカーポイントシステムが大々的に始まったが、導入からつまずいた感がある。
プレイヤーに自身が上へ上へと進む達成感をコンスタントに感じてもらうツールとしては素晴らしいと思う。さらにこのシステムはDCIレーティング・ランキング・システムと違ってプレイしたくないという気持ちを生じさせることなく、プレイヤーに大会結果から自身のスキルレベルを測るバロメーターとして機能してくれる。
高いレベルの大会での成績に対する報酬や招待などを提供する手法となる一方、利己的な利用が可能という不備や大会結果について質ではなく量が重要視されるということに対する不満の声も聞かれる。
またこれに関連して、このシステムが持つ問題点としては不確定性と燃え尽き症候群があげられる。このシステムによって競い合うによって、プレイヤーは半ば強制的にプレイし続けることを求められる。そうしたくはないときも含めてだ。
なぜなら参加し続けないことによってそれまで積み上げてきたことによって得られるはずだった報酬が得られなくなってしまう可能性があるからだ。
問題点について
最初の競技シーズンの結果がもう間もなく帳簿に書き留められようとしている。これによってPWPシステムがプレイヤーたちの動向にどのような影響を与えるかを確認できる機会が得られたわけだ。
トップに並ぶプレイヤーたちの結果を見るに、どうやらプレイヤーたちは報酬を求めて(もしくは少なくともポイントの獲得そのものを狙って)大会への参加回数を大幅に増やしたらしい。
高ランクのポイント獲得者たちの多くは、その獲得ポイントの結構な率を低いランクの大会へ何度も何度も足を運ぶことによって得ている。100位以内のプレイヤーたちの大半はこのシステムの不備をつくことによってその座に辿りついているのだ。
現在のシステムの中でこれを可能としてしまっているもっとも大きな穴の1つは、プロツアーとグランプリのサイドイベントが増加傾向にあることだ。
この変更を推し進めている動機については理解しているつもりだ。PWPを得るためだけに賞品の見込みのないGP/PTに残り続けなければならないという事態を回避するためだろう。
しかしこのことによる影響はその範囲に収まらない。プレイヤーたちは高い倍率を誇るこれらサイドイベントそれ自体を目的にグランプリやプロツアーへ参加し、実際には本戦に出場しているプレイヤーたちを上回る勢いでポイントを稼いでいるのだ。
グランプリサンディエゴで私は64位以内に入り328ポイントを得た。その間、Gerry Thompsonはバイの最中にサイドイベントへ参加し、2日目進出を逃したあとPTQをドロップ前に1ラウンドだけプレイし、日曜日だけで7つのサイドイベントに参加した。これによって彼は私よりも多くのポイントを獲得している。
世界選手権で私はまた64位以内に入り、最終的には368ポイントを得ている。その間、私のルームメイトであるJeffはサイドイベントのみで私よりも多くのポイントを稼いでいる。さらに何人かのプレイヤーは週末を通してJun’ya Iyanagaよりも多くのポイントを稼いでいる……Jun’ya Iyanagaは「世界選手権の優勝者」だ。
このことは明らかに現在の構造に不備があることを示唆している。
また同様に、フライデーナイトマジックの倍率の高さはこれらの大会の重要性を上回り過ぎている。PWPのトップのポイント内訳を見てもらえば分かることだが、そのポイントの結構なパーセンテージはFNMから得ており、また大半のプレイヤーは1週間に複数回のFNMイベントに参加してポイントを稼いでいる。
PWPシステムはこういったプレイヤーたちに報いるべき制度ではない。FNMを楽しみたいだけのプレイヤーたちを罰するべきではもちろんない(旧レーティングシステムはFNMで負けることでそうなってしまっていた可能性がある)。しかし参加しなければポイント争いに置いていかれるという強迫観念から参加するようになることもまたおかしい。
私はサンクスギビングの休暇中、ラスベガスへ出かけた。そのときデッキも持っていった。FNMに間に合う時間に到着したときのためで、ポイント欲しさに参加するかもしれなかったからだ。
結局、私はFNMの時間までには到着できず、普通に友人と遊びに出かけた。最初からそれが旅の目的だったからだ。だがそもそもこれについて悩むこと自体がおかしな話であり、PWPシステムがプレイヤーに強いるべき選択であってはならない。
私は、PWPシステムはもし正しく運用されれば、コンスタントに良い成績を出しているにも関わらず本戦への招待を受けられないプレイヤーに対して報いることが出来る素晴らしいシステムだと思っている。しかし現在の運用による招待方法はいくつもの点において不備があると言える。
プロツアーとグランプリの優勝者へ権利を与えなくなったのは大きな問題点だ。これによって、多くのイベントに参加する時間のない(もしくは、はっきり言ってしまえば多くのイベントへ参加する気のない)プレイヤーからプロツアーへ参加する機会を奪ってしまうことになる。
今までは、グランプリでトップをとるかプロツアー予選を突破すればプロツアーに参戦できるという期待をプレイヤーに抱かせることができた。そしてその結果に続けていくつかのイベントで手堅い結果を出すことができれば「トレインに乗る」ことができた。新たなシステムではそれは不可能だ。
今年の世界選手権でDavid Caplanはトップ4に残り、次のプロツアーへの参加権利を得ることが出来た……が、それは単にプロツアーポイントシステムが廃止される前に16点のプロツアーポイントを獲得したからだ。準々決勝で敗退していたら、彼は権利を得ることができなかった。
Andrew Cuneoはマジックオンライン世界選手権での好成績を理由に世界選手権への権利を得て10位に入ることに成功したが、ホノルルへの権利は得られなかった。
私が数年前にマジックに復帰したとき、私はプロツアーホノルルの予選を勝ち抜き、本戦でトップ8に残った。これが新しいポイントシステムの下で行われていたら、続くプロツアーオースティンへの参加権利を得ることはできなかっただろうし、またそこで優勝することも出来なかっただろう。
プロツアーやグランプリの優勝によって権利を勝ち取れるというのはきわめて重要なことだ。PWPシステムを用いて自分たちの都合の良い環境を築こうとしている数多くのプレイヤーは間違いなく存在する。
彼らはPWPシステムの恩恵にあずかれないプレイヤーたち、つまり権利獲得のために膨大な数のイベントに参加することの出来ないプレイヤーたちを締め出そうとしている。
マジック以外の全てを諦めるつもりのある人間にしかプロツアーに参加する権利はない、というのがウィザーズの発したいメッセージだとは私には到底思えない。
どちらかといえば、Paul RietzlやJosh Utter-Leytonのようなフルタイムの仕事につきつつも高いスキルを持つプレイヤーたちにこそチャンスが与えられるべきだと思う。
重要な点として挙げたいのは、PWPシステムが締め出すことになってしまうのは競技マジックに時間を割けない人たちだけではないという点だ。このシステムは、コンスタントにレベルの高い競技イベントが開かれない地域に対しても逆風となる。言ってしまえば、アメリカと西ヨーロッパの一部と日本以外の全てだ。
グランプリ優勝者に対して権利を与えないこと、そして同様に国別選手権から世界選手権へと通じる道の消滅は、市場の小さな地域からプロツアーへ通じる道が失われることを意味している。
ああ、もちろんPTQを勝ち抜けばいいということは変わらない。しかしそれでも彼らが参加することの出来るプロツアーはただ1つだけだ。もしトップ8に入ったとしても次のイベントへの参加権利は保障されない!
この新たなシステムが施行されていたら、何人のプロツアープロたちがその姿を消していたことだろう? Paulo Vitor Damo de Rosa? Martin Juza? Jeremy Neeman? 新たなシステムの下では、これらのプレイヤーがプロツアーにその輝きを残すことはなかっただろう。
プロツアー予選を勝ち抜いてから、さらにプロツアー予選を勝ち抜いてから、さらにさらにプロツアー予選を勝ち抜いていれば、もしかしたら? だけど実際はそれを達成するずっと前に気力尽きて諦めてしまうことだろう。
毎週複数のFNMに参加しつつサイドイベント目当てにグランプリやプロツアーを飛びまわれるだけの時間とお金を持っている「PWPシステムに君臨できる」プレイヤーにとっても、現在のPWPシステムの招待制度は必ずしも好ましいものではないはずだ。
潜在的な招待権利は不確定なものでしかなく、彼らはポイントを稼ぎ続けなければ誰かに追い抜かれてしまうかもしれないという強迫観念に追われ続ける。シーズンが終わるごとにポイントがリセットされるという点はシステムにダッチ・オークションの様相を呈させている。勝てなかったプレイヤーにしても、それまでシステムにつぎ込んだ全てを失い、しかも何も得るものはない。
今現在、70位にいるChris Mascioliを例にとってみよう。
Chris MascioliはPWPシステムが発表された時点からポイントをコツコツと稼ぎ続けている。とはいえ彼はポイントのためだけにグランプリやプロツアーのサイドイベントに参加しようとするほどには入れ込んでいない。
彼の現在のシーズンポイントは1936点であり、そのうちの615点はFNMから得たものだ。これは彼の総ポイント数のほぼ3分の1に当たる量だ! 彼は相当な数のプロツアー予選に参戦しているが、自身の力量のなさのためか、一度もトップ8にすら入れていない。
自身がその制度のおかげで報酬を得ることができる位置につけているにも関わらず、Chris MascioliはPWPシステムには構造的におかしなところがあると公言している。彼に言わせると、この制度がなければFNMとその次の日のプロツアー予選の両方に参加するために地下鉄の駅で夜を明かすような真似をすることはなかったとのことだ。
現在の位置から転がり落ちないためにイベントに参加し続けているのはこのChris Mascioliだけではないことは確かだ。
次の順位のプレイヤー(実質的な「目に見える競争相手」)に対してすでに数百点のポイント差をつけているAlex Bertonciniは、それでも世界選手権へ出向いていくつものサイドイベントに参加してきた。抜かれることの恐怖からだ。
同様に100位以内にいるZaiem Begは、38度を超える熱であったにも関わらずFNMへ参戦した。自身の健康よりもポイントを抜かれる恐怖が上回ったからだ。
PWPポイントが実際のイベントにおける「プレイ」に対してどのような影響をもたらしたのかについても言及しておくべきだろう。
世界選手権では複数のイベントに一時に参加を申し込んだプレイヤーが多くいた。それぞれのイベントのラウンドが交互に開始されることで全てに「参加できる」ことを期待してのことだ。もしそう上手くいかなかったら、単に彼らは降参するのに十分な時間だけ顔を出すことでとりあえずドロップをまぬがれていた。
複数のイベントに登録しつつ、全てのラウンドで投了し続けたプレイヤーを私は複数人知っている。彼らはいずれかのマッチでBYEと当たってポイントが稼げないかとを期待していた。
こういった行為によって傷つくことになるのは、こんな馬鹿げた行為に手を染めず正々堂々とPWPポイントを稼ごうとしているプレイヤーだけではない。マジックをプレイしたいと望んでイベントに参加しているにも関わらず、こんなプレイヤーとのマッチアップを組まれてしまったプレイヤーたちも同様に被害者だ。
またシステム開始時点から参戦できていたかどうかが非常に重要になってしまう点も無視できない。シーズン開始時の数週間にイベントに参加できなかったプレイヤーは大きな不利を背負うことになってしまう。
権利獲得を目標とするプレイヤーが、あるシーズンについて「全グランプリに参加できないなら一切のグランプリに参加しなくても同じことだ」と考えてしまうことは大いにありえることだ。
なぜなら相当数の招待スロットはすでに埋まってしまっているだろうし、また多くのグランプリに参加できているプレイヤーのポイントを上回ることはほぼ不可能だからだ。
さらに特筆すべき点としては、現在の競技シーズンは以降のものよりもずっと重要度が高くなってしまっている、という点だ。
なぜならトップをとることが出来たプレイヤーたちは単にプロツアーホノルルの権利を得られるだけではなく、来期の全てのグランプリのBYEを得るからだ。そしてなんらかの理由によりトップに残れなかったプレイヤーたちは来シーズンを全て1回戦から開始することになる。
これは高いレベルの競技マジックに興味を抱いているプレイヤーたちの参戦に対して大きな障害となる。スタート地点ですでに差をつけられ、追い抜くためには相手以上の成績が必要となる。大いにやる気を削いでしまうことになるだろう。
さてどうしたものか
最低限のスタートとして、プロツアーとグランプリに権利獲得のチャンスを一部でもいいから与えなおすべきだ。プロツアーの規模を小さくしたいのならば、以前よりもずっと少ない数でもかまわない。
私の希望としては、グランプリのトップ8およびプロツアーのトップ32に権利を与えることだ。もしそれでは招待人数が多すぎるということであれば、グランプリはトップ4まで、プロツアーはトップ16までにしてみてはどうだろう。
ただ、トップ8はちょうどいいラインだと思うし、次のプロツアーに続けて参戦するためにベスト16に残らなければいけないというのはハードルが高すぎるように思われる。
最近の発表にあったグランプリの優勝者のみ、招待されるというのはいくらなんでもしみったれている。ここ最近のグランプリ本戦に参加するプレイヤーの数を踏まえるとなおさらだ。
本戦に参加したいと考えるプレイヤーの多くはプロツアー予選を避けるようになっている。何百人と参加するトーナメントでたった1人しか権利を勝ち取れないという条件を好むプレイヤーはあまりいない。
これが参加者1000人を超えるようなイベントでかつ同じ条件となったときに参加してみようと考えるプレイヤーがどれほどいるだろうか?
解決方法としてはおそらく以前と同程度までハードルを下げることだろう。たとえばグランプリのトップ4とプロツアーのトップ16だ。かわりに他の手段で得られる権利の数を減らす必要がある。
PWPシステム自体の話をすれば、プレミアイベントのサイドイベントへのボーナス倍率は廃止されるべきだ。これらによって得られるメリットは悪用されるデメリットに比べると小さすぎるといわざるを得ない。
正当性を持たせたいならポイント倍率はイベントの主要な点に対してのみ課されるべき倍率だ。これらのボーナス倍率は簡単に悪用されることがすでに証明されている。
同様にFNMの倍率も問題だ。減らすか、もしくは完全に撤廃すべきだ。
FNMの価値が高いことは無視できないレベルに悪用されている。PWPの争いの中でFNMによるポイントが占める重要性(またラウンド数の多いFNMイベントへの参加可否の重み)はあまりに高すぎる。
これに関連して私が同様に懸念しているのは、FNM選手権だ。
現状では、たくさんのFNMイベントを開催しているショップへ行くことが出来るプレイヤーもしくは毎週複数のFNMイベントに参加できるプレイヤー以外にはまったく権利獲得の見込みがない。
単純にFNMを楽しんでいるプレイヤーや、地元のショップで良い成績を収めているプレイヤーであったとしてもまったく太刀打ちできるものではない。
私の友人から聞いた話だが、彼の兄弟はもう何年もFNMに参加し続けており、生涯獲得FNMポイントもトップ10に入るほどで、そんな彼は初めてFNM選手権について聞いたときそれはそれは喜んだそうだ。
しかしシーズンが始まって数週間後、他のトッププレイヤーたちがどれほどの点数を稼ぎだしているのかを知ったとき、自分にはまったく見込みがないことに気づいたらしい。
その結果、彼はFNM選手権の発表以前よりもFNMに参加する回数が「少なくなった」とのことだ。あまりに失望したためにね。
この問題点についてどうすれば解決できるのは分からないが、これをそのままにしてよいとは思えない。問題点としてとらえるべきだと思う。
PWPによる招待制度に立ち戻ると、解決法の1つとしては、1シーズンのあいだにあるプレイヤーが特定のイベントタイプから得ることができるポイント数に上限を設けるというのはどうだろうか。
たとえば、PWPシステムの招待可否を計算する際にはFNMかサイドイベントから得たうち500点までしか合計点に含めないことにする、というふうにだ。これによって複数の問題が一度に解決する。
これによって低いレベルのサイドイベントを無限に渡り歩く必要性をなくすことができるし、プレイヤーにこれ以上無理に参加し続けなくてもよいという心理的なゴールを設けることができるし、またそれらサイドイベントの倍率を下げることなく本戦に対する相対的な重要性を下げることができる。
この解決法をとるに当たって、潜在的な問題となるのは現在のイベントのクラス分けのされ方だ。SCGオープンのレベルのイベントは倍率が×3しかないから「低い」のだろうか?
プロツアー予選とグランプリのサイドイベントはどちらも×5だから同程度とみなされるべきなのだろうか?(個人的には同等にみなされるべきではないと信じているが、これはまた別の問題であり、別個に解決されるべきことだ)
正しい分け方としては、上限なく加算されるのはプロツアー予選、グランプリ、そしてプロツアー本戦から得られるポイントに限るべきだ。しかしこれだと非常に多くの競技イベントが外されることになってしまう。
もしかしたらもっともよい解決方法は上限を高めに見積もることなのかもしれない。そう、たとえば上限を1000点として、上記3つのイベント以外は全てこれに含まれることにする、のようにだ。
こういった形で上限を設けてもプレイヤーたちは多くのポイントを主要でないイベントから稼ぎ出すことが出来てしまう。
しかし少なくとも時間さえかければひたすらポイントが稼げるというような形は減らせるだろうし、複数のイベントに同時参加して時間がかち合ったら姿を現さないとか単に投了だけするというような事態も減らせるのではないかと思われる。
上限いっぱいまで稼ぐには相当なプレイ量が必要となるだろう。しかしそれでも1シーズンの間ずっとノンストップでプレイし続けなければいけないということにはならないだろうし、また単にプレイをし続けるだけで他のプレイヤーの追いつくチャンスをつぶすということも出来なくなる。
それにこうすることで、プレイする回数が多いだけでなく加えて主要な競技イベントで高い成績を収めたプレイヤーのほうが権利を獲得しやすくなるという側面がある。低いレベルのイベントで上限いっぱい稼いだプレイヤーとの差別化を図ることができるからだ。
またシステムはグランプリとプロツアーレベルのイベントで優勝したプレイヤーに何らかの形で報いる必要がある。単に参加するだけに対して、好成績を残した際に得られるメリットが相対的に見て低すぎる。
現状では、プロツアーのラウンド1を勝ち抜くこととトップ16に残ることがほぼ等価だ。またグランプリに2回参加して両方とも6-3に終わり2日目に参加できない場合のほうが1回だけ参加して12-3の成績でトップ8に残った場合よりも高い。
プロツアーでトップ8に残った場合の倍率はそれ以下の順位のときよりも高く設定すべきだし、グランプリも同様だ。
トップ8に残ったら50%のボーナスが乗るというのを考えたが、それでも低すぎる気がしている。プロツアーで優勝した際に得られるポイントが、グランプリに毎回参加してBYEを含めて1回か2回だけラウンド1を勝ち抜いたプレイヤーよりも低くなってしまうからだ。
私の考える適切な倍率は、トップ8で200%、トップ16で150%、トップ32で125%、トップ64で110%くらいだろうか。それより高くてもいいかもしれない。
仮に200%のボーナスがあったとしても、私のプロツアーオースティンでの優勝(ボーナス倍率なしで612ポイント)は1,224ポイントまでしか上がらない。これはグランプリに6回参加してその全てで6-3した場合(つまり一度も2日目に進めなかった場合)と同程度だ。
好成績の価値とグランプリやプロツアーで悪い成績を残した場合の対比は、来年度から変更されるプロプレイヤークラブの仕組みや新たな世界選手権への招待制度のことをを考えるとさらに重要となる。
来年度の世界選手権への招待はプロフェッショナルPWPに基づいて決定される。おそらくプロプレイヤークラブの代替案も同様となるだろう。
前述した順位に応じたボーナス倍率がなければ、各グランプリに欠かさず参加したプレイヤーと2つのイベントにしか参加していないがその両方で優勝したプレイヤーとのあいだの累計ポイントに差がほとんどなくなる。
これは非常に大きな問題のように思われる。
プロプレイヤークラブの新しい形が相対評価なのか絶対評価なのか(トップから一定順位までのプレイヤー数なのか、一定ポイント数以上のプレイヤー全員なのか)、そのいずれであったとしても、現在のシステムでは少ないイベントで好成績を残したプレイヤーよりもより多くの数のイベントに参加するプレイヤーの側に重みが置かれることになるだろう。
これが問題と感じているのは私1人ではない。少なくとも私は毎週末ごとにグランプリに参加するという事態は避けたいと思っている。旅費は決して安くはないし、国の端から端まで毎週移動するというのは実質的に他に何もできなくなってしまう。
しかし全てのグランプリに参加するということの価値が高く設定されてしまうと1つでも参加しなかったプレイヤーはそれだけで不利を背負うこととなり、以降のイベントでよい成績を残したとしてもその差を取り戻せる見込みはそれほど大きくはない。
これによってグランプリへの参加は「オールオアナッシング」となってしまう。全てのグランプリに参加したいとは思わないが、全てに参加しないでも同じと考えるのも同様に気持ちのいいものではない。
単に参加するだけということに比べると良い成績を残すというのは非常に重要なことだ。しかし現状のプロフェッショナルPWPがこのままだとすると、それは重要ではなくなる。
私はウィザーズ・オブ・ザ・コーストがプロツアーを夢の舞台と位置づけていることを知っている。彼らがトッププレイヤーがその成功に応じた報酬を得るべきと考えていることも知っている。彼らが競技マジックを単に「参加し続けることだけに意義がある」ものにしたくないことも知っている。
しかし私はまたこれらの立ち位置とここ最近発表された変更たちと相容れないことも知っている。
彼らがゲームが長く愛されるために全体的に見てもっとも利益になるよう行動してくれるであろうことを私は信じており、ここのあげた思いのいくつかが彼らを目的へと導く助けとなってくれるよう祈っている。
Card of the Day - 2011/12/14
2011年12月14日 Card of the DayBronze Calendar - アングルード アンコモンBronze Calendar (4)
アーティファクト
あなたが普段と違う声でしゃべる限り、あなたがプレイする呪文は、それをプレイするためのコストが(1)少なくなる。
あなたが普通の声でしゃべったとき、Bronze Calendarを生け贄に捧げる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Bronze+Calendar/
実は《Bronze Calendar》に描かれているのは「Bronze Calendar(青銅のカレンダー)」ではなく「Bronze Colander(青銅の水切りボウル)」だ。これは過去に何度かあった、イラストレーターがカードイラストの指示を勘違いして違うものを描いてしまった、というエピソードをネタにしたものだ。過去の例としては、《Hyalopterous Lemure》(註1)やTome(学術書)を描くはずだったのにTomb(お墓)を描いてしまった《Alchor’s Tomb》などがある。
(註1) 《Hyalopterous Lemure》
Lemure(悪霊)が描かれるはずだったのに、Lemur(キツネザル)が描かれてしまったカード。でも間違えて描かれてしまったイラストがそれはそれで意外と人気だったりする。
カードイラスト:http://magiccards.info/ia/en/21.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/15
2011年12月15日 Card of the Day大胆な挑戦/Heroic Defiance - プレーンシフト コモンHeroic Defiance / 大胆な挑戦 (1)(白)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは、その色がすべてのパーマネントの中でもっとも多い色でないか、最も多い色の1つと共通の色を持たない限り、+3/+3の修整を受ける。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Heroic+Defiance/
このどちらかというとややこしくて分かりづらいメカニズムは2枚のインベイジョンのカードに用いられている(《バリンのやり戻し/Barrin’s Unmaking》と《Tsabo’s Assassin》)。そしてプレーンシフトで《大胆な挑戦/Heroic Defiance》として再登場した。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/16
2011年12月16日 Card of the Day コメント (2)鉄の衛兵目覚める/The Iron Guardian Stirs - アーチエネミー鉄の衛兵目覚める
Scheme 計略
あなたがこの計略を実行中にしたとき、無色の4/6のゴーレム・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
引用元:http://archive.mtg-jp.com/cardlist/individual/005171/
知っていると思うが、アタックされるような状況だと味方にゴーレムが1体もらえるというのはそこまでズルいというほどのものでもない。むしろアーチエネミーを遊んでいるプレイヤーは集団で攻撃されているわけで、そのほうがズルいと言える。
ここで言っている「アーチエネミーを遊んでるプレイヤー」というのは「アーチエネミー役を遊んでいるプレイヤー」(註1)のことであって「アーチエネミーを遊んでいるプレイヤーなら誰でも」という意味ではない、というのは分かってもらえると思う。
(註1) アーチエネミー役として遊んでるプレイヤー
アーチエネミーは、強大な敵としての魔王役とそれを倒そうとする複数のプレイヤーという図式で行われる対人数フォーマット。この「魔王役」のこともまた「アーチエネミー」と呼ぶ。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
今週のCard of the Day (2011年12月 第3週) とか
2011年12月18日 週のまとめ コメント (7)余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
今週は特にテーマらしいものが無かった気がする。月曜から順に「Gold」「Silver」「Bronze」と来て金曜日が「Iron」だけど、木曜日が《大胆な挑戦/Heroic Defiance》なので残念ながら「貴金属の名前」ではないらしい。
金メダル、銀メダル、銅メダルで「Hero」と来てることで何かの大会との関連性かな、とも思ったけど、そうなると今度は「Iron」が分からなくなってしまう。うーん、謎だ。
余談2:月曜日 《黄金の羽根ズーベリー/Zuberi, Golden Feather》
英語名を見るたびについ「ツェペリ」と読みたくなってしまう、グリフィンたちのロード。当時は「グリフィン=4マナ」という世界だったので部族デッキを組むのは苦行そのものだった。
それでも最低限のスペックとその名前にふさわしいイラストは持っていたので個人的には好きなカードだった(使わなかったけど)。今だったら同じスペックで4マナだよな、きっと。
余談3:火曜日 《銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem》
カードテキストがフレイバー的に何を表しているのか、最初見たときは分からなかったカード。「不殺(ころさず)」の誓いを持ってる、と知ったときは、なるほど、と思った。
この日のCard of the Dayのネタは「初出がクリーチャー・カードだけど、のちにプレインズウォーカー・カードとして再登場したキャラクター」。
言い換えると「一度もクリーチャーカードになったことのないプレインズウォーカー」もいるし「設定上はプレインズウォーカーだけどクリーチャーとしてしか出てないキャラクター」もいる。
前者は最近のプレインズウォーカーたち全員、後者の例としては《特務魔道士ヤヤ・バラード/Jaya Ballard, Task Mage》や《工匠の神童、ミシュラ/Mishra, Artificer Prodigy》。
余談4:水曜日 《Bronze Calendar》
イラストレーターへの指示が間違って伝わってしまった系のネタは今までにそこかしこで色々紹介されてる(どこまで本当かは知らない)。
ウルザの「鉱山(Mine)」を頼んだら「地雷(Mine)」のイラストが上がって来たとか、「Soul NetのアナグラムでOnuletsってクリーチャー作ろう! ……って、なんでイラストに1体しか描いてないんだ!? これじゃ単数形にしなきゃいけないじゃないか!」ってことで名前を「Onulet」にせざるをえなくなったとか。
でもやっぱりCard of the Dayでもネタにされている《Hyalopterous Lemure》が一番印象的かな。当時のカードの中でも随分イラストが目立ってた気がするし、イラストが気に入ったので遊び始めた頃の黒単に入れてたのを覚えてる。役に立ったかどうかは覚えてない。
余談5:木曜日 《大胆な挑戦/Heroic Defiance》
まったく記事にされてるとおりに「ややこしくて分かりづらい」効果だと思った……というか白状すると効果を完全に勘違いしてた。
MTG Wikiでカード情報を確認しに行ったら、その解説に「多色クリーチャーには向かない」と書いてあるのを見て「なんでだろう。多色ならそれだけボーナスを受けやすくなるんじゃないの? 一番多い色と共通なら強くなるんでしょ?」とか間の抜けたことを考えてた。逆だ、逆。
まあ、それでもカードテキストの分かりづらさ1位の座は《生き写し/Dead Ringers》で揺らぐことはないだろうけど。ちなみに《生き写し/Dead Ringers》のテキストは以下の通り。一読して理解できる人はすごいと思う。
和文はその大して長くない文章の中に「~でない/~ではない」が3つも入ってるせいで異様に分かりづらい。さらに実際のカードは誤訳で本来と逆の効果だったというオチまでついてる隙の無さ。
余談6:金曜日 《鉄の衛兵目覚める/The Iron Guardian Stirs》
翻訳は正解のない世界ではあるけれど、確かにちょっと元ネタのニュアンスが伝わりづらい訳だったかもしれない。かけ言葉なネタは本当に難しい。修行あるのみ。
なお計略カードがCard of the Dayに取り上げられたのはこれが初めてのはず。文中のみの登場で言えば、今年の1月に《ミラディンの核/Mirrodin’s Core》が取り上げられたとき、次元カードの《パノプティコン/Panopticon》が記事内に登場してた、というのはある。
余談7:プレインズウォーカーポイントシステムの問題点について
まさかこれほどまでに皆が興味を持っている話題だとは思わなかった。カイ・ブッディのインタビュー記事より来訪者多くてびっくりした。
記事の具体的な主義主張については、もっと直接的にこの制度に関わりあっている方々が色々書いてくださっているようなので、ここでは訳の話をする。
まずは出だし。
いきなりだけど、あらためて見るとこれは誤訳だ。正しくは「目指すところは崇高だが、導入部分でつまずいている」という内容のはず。
訳すときに「PWPシステムには不備がある」って断言していいのか悩んだ。あからさまに公式に批判的な響きが感じられてしまう語なので。
原文を先まで読んで「現在のシステムは完璧ではない。悪用できてしまう余地がある」という主張を筆者が持ってることを何度も確認した上で訳した。
この文章自体が大変だったけど、特に悩んだのは最初の文の「there exists players who are willing to game the PWP system」の「to game the PWP system」という箇所。
手の平の上で操るようなニュアンスだと思って「支配する」とか「操作する」とか色々考えたんだけど前後と上手く噛み合わなくて、試行錯誤を繰り返した。
最終的には、まあ、上記の通り。原文とそう遠く離れた意味にはなっていないと思うけど、それでも「思いのままに操る」という雰囲気が出せなかったのは心残り。
ダッチ・オークションの説明を加えようか悩んで、結局やめた。
この形式のオークションを正しく理解できたか自信がなかったし、正直なところ、この言葉が分からなくてもなんとなく前後の文脈から分かるような気がしたから。
なお調べた限りでは、ダッチ・オークションというのは「初めに最高額から始めて徐々に値を落とし、入札者があった瞬間に落札が確定する」という形式らしい。
ただこの形式だと「even if they don’t win, they still lose everything they’ve put into the system(勝てなかったプレイヤーにしても、それまでシステムにつぎ込んだ全てを失い)」ということもない気がする。
どちらかというとペニー・オークションじゃないかな、と思った。入札するだけでお金がかかる形式のオークションで、最終的な落札者以外もお金を消費せざるを得ないというもの。……それをDutch Auctionって呼んでるのかな。よく分からない。
まあ、とりあえず直訳してあるから誤訳はないよね(それでいいのか)。
分かりやすさ重視の括弧書きと原文にない補足情報つきの訳。極力この手段は用いないようにしているけど、原文そのままだとどうしても意味が伝わりそうにないと思ったときは。
今週は特にテーマらしいものが無かった気がする。月曜から順に「Gold」「Silver」「Bronze」と来て金曜日が「Iron」だけど、木曜日が《大胆な挑戦/Heroic Defiance》なので残念ながら「貴金属の名前」ではないらしい。
金メダル、銀メダル、銅メダルで「Hero」と来てることで何かの大会との関連性かな、とも思ったけど、そうなると今度は「Iron」が分からなくなってしまう。うーん、謎だ。
余談2:月曜日 《黄金の羽根ズーベリー/Zuberi, Golden Feather》
英語名を見るたびについ「ツェペリ」と読みたくなってしまう、グリフィンたちのロード。当時は「グリフィン=4マナ」という世界だったので部族デッキを組むのは苦行そのものだった。
それでも最低限のスペックとその名前にふさわしいイラストは持っていたので個人的には好きなカードだった(使わなかったけど)。今だったら同じスペックで4マナだよな、きっと。
余談3:火曜日 《銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem》
カードテキストがフレイバー的に何を表しているのか、最初見たときは分からなかったカード。「不殺(ころさず)」の誓いを持ってる、と知ったときは、なるほど、と思った。
この日のCard of the Dayのネタは「初出がクリーチャー・カードだけど、のちにプレインズウォーカー・カードとして再登場したキャラクター」。
言い換えると「一度もクリーチャーカードになったことのないプレインズウォーカー」もいるし「設定上はプレインズウォーカーだけどクリーチャーとしてしか出てないキャラクター」もいる。
前者は最近のプレインズウォーカーたち全員、後者の例としては《特務魔道士ヤヤ・バラード/Jaya Ballard, Task Mage》や《工匠の神童、ミシュラ/Mishra, Artificer Prodigy》。
余談4:水曜日 《Bronze Calendar》
イラストレーターへの指示が間違って伝わってしまった系のネタは今までにそこかしこで色々紹介されてる(どこまで本当かは知らない)。
ウルザの「鉱山(Mine)」を頼んだら「地雷(Mine)」のイラストが上がって来たとか、「Soul NetのアナグラムでOnuletsってクリーチャー作ろう! ……って、なんでイラストに1体しか描いてないんだ!? これじゃ単数形にしなきゃいけないじゃないか!」ってことで名前を「Onulet」にせざるをえなくなったとか。
でもやっぱりCard of the Dayでもネタにされている《Hyalopterous Lemure》が一番印象的かな。当時のカードの中でも随分イラストが目立ってた気がするし、イラストが気に入ったので遊び始めた頃の黒単に入れてたのを覚えてる。役に立ったかどうかは覚えてない。
余談5:木曜日 《大胆な挑戦/Heroic Defiance》
まったく記事にされてるとおりに「ややこしくて分かりづらい」効果だと思った……というか白状すると効果を完全に勘違いしてた。
MTG Wikiでカード情報を確認しに行ったら、その解説に「多色クリーチャーには向かない」と書いてあるのを見て「なんでだろう。多色ならそれだけボーナスを受けやすくなるんじゃないの? 一番多い色と共通なら強くなるんでしょ?」とか間の抜けたことを考えてた。逆だ、逆。
まあ、それでもカードテキストの分かりづらさ1位の座は《生き写し/Dead Ringers》で揺らぐことはないだろうけど。ちなみに《生き写し/Dead Ringers》のテキストは以下の通り。一読して理解できる人はすごいと思う。
英文:
Destroy two target nonblack creatures unless either one is a color the other isn’t. They can’t be regenerated.
和文:
黒でないクリーチャー2体を対象とする。それらを「その一方が他方のものでない色である」ではない場合、破壊する。それらは再生できない。
和文はその大して長くない文章の中に「~でない/~ではない」が3つも入ってるせいで異様に分かりづらい。さらに実際のカードは誤訳で本来と逆の効果だったというオチまでついてる隙の無さ。
余談6:金曜日 《鉄の衛兵目覚める/The Iron Guardian Stirs》
翻訳は正解のない世界ではあるけれど、確かにちょっと元ネタのニュアンスが伝わりづらい訳だったかもしれない。かけ言葉なネタは本当に難しい。修行あるのみ。
なお計略カードがCard of the Dayに取り上げられたのはこれが初めてのはず。文中のみの登場で言えば、今年の1月に《ミラディンの核/Mirrodin’s Core》が取り上げられたとき、次元カードの《パノプティコン/Panopticon》が記事内に登場してた、というのはある。
余談7:プレインズウォーカーポイントシステムの問題点について
まさかこれほどまでに皆が興味を持っている話題だとは思わなかった。カイ・ブッディのインタビュー記事より来訪者多くてびっくりした。
記事の具体的な主義主張については、もっと直接的にこの制度に関わりあっている方々が色々書いてくださっているようなので、ここでは訳の話をする。
まずは出だし。
原文:
The Planeswalker Points system has a noble goal, but a problematic implementation.
拙訳:
プレインズウォーカーポイントシステムが大々的に始まったが、導入からつまずいた感がある。
いきなりだけど、あらためて見るとこれは誤訳だ。正しくは「目指すところは崇高だが、導入部分でつまずいている」という内容のはず。
原文:
A huge number of the players in the Top 100 have secured their place there by essentially exploiting the system.
拙訳:
100位以内のプレイヤーたちの大半はこのシステムの不備をつくことによってその座に辿りついているのだ。
訳すときに「PWPシステムには不備がある」って断言していいのか悩んだ。あからさまに公式に批判的な響きが感じられてしまう語なので。
原文を先まで読んで「現在のシステムは完璧ではない。悪用できてしまう余地がある」という主張を筆者が持ってることを何度も確認した上で訳した。
原文:
There exists a sufficiently large number of players who are willing to game the PWP system that they can lock out anyone who is unable or unwilling to do so, making it impossible for those players who don’t commit massive amounts of time to qualify.
拙訳:
PWPシステムを用いて自分たちの都合の良い環境を築こうとしている数多くのプレイヤーは間違いなく存在する。彼らはPWPシステムの恩恵にあずかれないプレイヤーたち、つまり権利獲得のために膨大な数のイベントに参加することの出来ないプレイヤーたちを締め出そうとしている。
この文章自体が大変だったけど、特に悩んだのは最初の文の「there exists players who are willing to game the PWP system」の「to game the PWP system」という箇所。
手の平の上で操るようなニュアンスだと思って「支配する」とか「操作する」とか色々考えたんだけど前後と上手く噛み合わなくて、試行錯誤を繰り返した。
最終的には、まあ、上記の通り。原文とそう遠く離れた意味にはなっていないと思うけど、それでも「思いのままに操る」という雰囲気が出せなかったのは心残り。
原文:
The fact that the points reset from season to season gives the system the characteristics of a Dutch auction - even if they don’t win, they still lose everything they’ve put into the system up to that point for absolutely no reward.
拙訳:
シーズンが終わるごとにポイントがリセットされるという点はシステムにダッチ・オークションの様相を呈させている。勝てなかったプレイヤーにしても、それまでシステムにつぎ込んだ全てを失い、しかも何も得るものはない。
ダッチ・オークションの説明を加えようか悩んで、結局やめた。
この形式のオークションを正しく理解できたか自信がなかったし、正直なところ、この言葉が分からなくてもなんとなく前後の文脈から分かるような気がしたから。
なお調べた限りでは、ダッチ・オークションというのは「初めに最高額から始めて徐々に値を落とし、入札者があった瞬間に落札が確定する」という形式らしい。
ただこの形式だと「even if they don’t win, they still lose everything they’ve put into the system(勝てなかったプレイヤーにしても、それまでシステムにつぎ込んだ全てを失い)」ということもない気がする。
どちらかというとペニー・オークションじゃないかな、と思った。入札するだけでお金がかかる形式のオークションで、最終的な落札者以外もお金を消費せざるを得ないというもの。……それをDutch Auctionって呼んでるのかな。よく分からない。
まあ、とりあえず直訳してあるから誤訳はないよね(それでいいのか)。
原文:
I know that Alex Bertoncini, who was several hundred points ahead of his closest realistic competitor,
拙訳:
次の順位のプレイヤー(実質的な「目に見える競争相手」)に対してすでに数百点のポイント差をつけているAlex Bertonciniは、
分かりやすさ重視の括弧書きと原文にない補足情報つきの訳。極力この手段は用いないようにしているけど、原文そのままだとどうしても意味が伝わりそうにないと思ったときは。
Card of the Day - 2011/12/19
2011年12月19日 Card of the DayThe Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast Customer Service - アングルード アンコモンThe Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast Customer Service (X)(Y)(Z)(赤)(赤)
ソーサリー
Y体のクリーチャーとZ人のプレイヤーを対象とする。The Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast Customer ServiceはそれらにX点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/The+Ultimate+Nightmare+of+Wizards+of+the+Coast+Customer+Service/
《The Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast Customer Service》のフレイバーテキスト(註1)に記載されている電話番号は現在では変わってしまっている。
アメリカかカナダからであれば (800) 324-6496 が有効だ。これら以外の国(註2)からであれば (425) 204-8069 を用いるか、もしくは wizards.custhelp.com. から問い合わせることが出来る。
(註1) フレイバーテキスト
《The Ultimate Nightmare of Wizards of the Coast Customer Service》のフレイバーテキストは以下の通り。カード名にあるとおり、(当時の)カスタマーサポートサービスの受付時間と電話番号。
原文:
Mon.-Fri. 9: 00 A.M.-8: 00 P.M. Pacific (206) 624-0933
引用元:http://magiccards.info/ug/en/53.html
(註2) これら以外の国
なおアメリカ国外からアメリカへ電話をかける際には国番号「1」も必要。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/1211
Card of the Day - 2011/12/20
2011年12月20日 Card of the Day本日のCard of the Dayは更新なし。理由は不明。もう休暇シーズンに入ったのかもしれない。だけど通常コラムは20日も更新されているから違う理由からかもしれない。
……と、昨年度のCard of the Dayをチェックしてみたら、2010年の最後のネタが12月19日とまったく同じネタだった。なるほど、これが毎年恒例となる休暇前の締めのネタなのか。
2010年12月17日のCard of the Day
http://regiant.diarynote.jp/201012172254437343/
というわけで今年のCard of the Dayはこれで終了。来年も宜しくお願い致します。
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