刻まれた大怪物/Etched Monstrosity - 新たなるファイレクシア レアEtched Monstrosity / 刻まれた大怪物 (5)
アーティファクト クリーチャー - ゴーレム(Golem)
刻まれた大怪物は、その上に-1/-1カウンターが5個置かれた状態で戦場に出る。
(白)(青)(黒)(赤)(緑),刻まれた大怪物から-1/-1カウンターを5個取り除く:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを3枚引く。
10/10
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Etched+Monstrosity/
《刻まれた勇者/Etched Champion》のイラストと名前はダークスティールの《刻まれた巫女/Etched Oracle》から受け継いだものだが、《刻まれた巫女/Etched Oracle》の烈日のメカニズムについては《刻まれた大怪物/Etched Monstrosity》に受け継がれている。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
戦争報告/War Report - 新たなるファイレクシア コモンWar Report / 戦争報告 (3)(白)
インスタント
あなたは、戦場に出ているクリーチャーの総数に、戦場に出ているアーティファクトの総数を足した値に等しい点数のライフを得る。
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/War+Report/
ウェザーライトサーガの当時、何か重要な出来事が起きた際にはそれは必ずどこかしらで言及されていた(例えば、タカラがヴォルラスの化けた姿だとスタークが気づいた瞬間(註1)が《血の復讐/Vendetta》のフレイバーテキスト(註2)に現れているように)。
しかし現在もストーリーの要所がカード上に現れることはある。
例えば《戦争報告/War Report》のフレイバーテキスト(註3)では、ミラディン=ファイレクシア戦争の終結そのものが言及されているのだ!
(註1) タカラがヴォルラスの化けた姿だとスタークが気づいた瞬間
今日の記事にあるようにフレイバーテキストはその瞬間について言及しているが、それと同時に《血の復讐/Vendetta》のカードイラストもまたその場面を描写している。
参照:http://magiccards.info/mm/en/170.html
(註2) 《血の復讐/Vendetta》のフレイバーテキスト
原文:
Starke knew the voice was Takara’s, but the venom was Volrath’s.
引用元:http://magiccards.info/mm/en/170.html
日本語版:
スタークには、その声はタカラのものだが、彼女が発する毒気はヴォルラスのものであることがわかった。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/MMQ170/
(註3) 《戦争報告/War Report》のフレイバーテキスト
原文:
Underling Ethu’s 263rd report read simply "Yes, my lord. Overwhelmingly, my lord." This marked the end of the Mirran-Phyrexian War.
引用元:http://magiccards.info/nph/en/26.html
日本語版:
下僕のエトゥの二百六十三通目の報告には「確かです、陛下。圧倒的です、陛下」とだけ書かれていた。 これがミラディン=ファイレクシア戦争の終結を告げた。
引用元:http://magiccards.info/nph/jp/26.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
荒廃の工作員/Blighted Agent - 新たなるファイレクシア コモンBlighted Agent / 荒廃の工作員 (1)(青)
クリーチャー - 人間(Human) ならず者(Rogue)
感染(このクリーチャーは、クリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
荒廃の工作員はブロックされない。
1/1
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Blighted+Agent/
ミラディンを巡る争いがファイレクシアの勝利に終わった今、ファイレクシア人の派閥はその矛先を互いに向け始めた。
フレイバーテキスト(註1)から判断するに《荒廃の工作員/Blighted Agent》の「ブロックされない」という能力は主にウラブラスクが立ち入りを禁じている焼却炉の地下層をスパイするために用いられているらしい。
(註1) フレイバーテキスト
原文:
"Urabrask may suspect our surveillance, but he cannot stop it."
-Avaricta, Gitaxian sective
引用元:http://magiccards.info/nph/en/29.html
日本語版:
「ウラブラスクは我々の監視を怪しむかもしれないが、止められはすまい。」
――ギタクシア派の学官、アヴァリクタ
引用元:http://magiccards.info/nph/jp/29.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
【翻訳】Tom LaPilleのプロツアー名古屋旅行記/Magical Mystery Tour【Daily MTG】
Tom LaPille
2011年6月24日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/148
ただいま。
この3週間、私がいなかったことに気づいてくれてたかな。私は日本にいたんだ。名目上はプロツアーのためなんだけど、ウィザーズがくれたチケットを使って1週間半ほど早めに行ってみた。
私は日本の中世時代の大ファンだ。そこで私は5つの城を巡り歩き、京都では今年度の能フェスティバルを2晩とも観賞し、小柄な日本人女性に千年前の公家の服を着せてもらったりしていた。
とはいえ、旅の目的はやっぱりマジックの為だ。今日はそれについて話そうと思う。
マジックはどこにでもある
プロツアーの10日前、私は「晴れる屋」を訪ねた。東京は新宿にあるゲームストアだ。日本のゲームストアの中でも「晴れる屋」はもっとも変わっている。
トレーディングカードは日本で大流行しており、少なく見積もっても50種類のトレーディングカードゲームが今なお現役で、大半のゲームストアは様々なカードゲームを広く扱っている。
「晴れる屋」はマジックしか扱っていないんだ。
日本ではオフィススペースの賃貸料金が非常に高額だ。そのため大半のゲームストアは販売スペースとレジに加えて8人用くらいのプレイスペースが精一杯だ。
「晴れる屋」はプレイスペースが58人ものプレイヤーが座れるだけのスペースがある。ここはゲームストアじゃない。マジックストアなんだ。また、店にはなかなか感動的なコレクションも並んでいた。
さて、私が店に訪れたとき、そこでは8人のプレイヤーがレガシーのイベントを行っているところだった。8つのデッキでデュアルランドが披露されているのをみて、古いカードの入手が困難である、というような問題とは無縁のように見えた。
私は統率者戦に混ぜてもらった。心優しい青年が彼の《アーカム・ダグソン/Arcum Dagsson》デッキを貸してくれた。それには多くの素晴らしいフォイルが入っていた。
そのデッキには多くの見慣れないカードが入っており、慣れていないせいで私はいくつかの無限コンボを見逃してしまったらしい。彼は日本語で私にそれを説明しようとしてくれたが、私にはいまいち伝わらなかった。
さらに幸運なことに、月曜日はドラフトの日だったらしい。人数に欠けがあったので入れてもらうことにした。通常は公認大会らしいのだが、私が入ると非公認になってしまうことを念のために伝えた。彼らは、それでもよいと快諾してくれたので、私は腰をおろし日本語のパックをむきはじめた。
以下が私のドラフトデッキだ
私のマジックのキャリアにおいて、今現在の私は、大抵のゲームストアでは強い方から数えた方が早いドラフトプレイヤーのはずだ。
そのため、すぐに0-2してしまったことは私に衝撃を与えた。さらにもう1人の0-2のプレイヤーが私と当たるかわりにドロップを選択したことにもね。
ゲームストアという空間で参加したことのあるドラフトの中では、今回のゲームが最強の面子だったかもしれない。もし君が日本にいてマジックを強くなりたいと思っているなら、ここでプレイし始めるのもいいかもしれないよ。
またドラフトそれ自体が興味深い経験となった。特筆すべき点は、私が英語でも日本語でも意思疎通できない状況だったことだ。
君たちが気づいているかどうかは知らないが、マジックとは言語だ。
遅い順目で《毒の屍賊/Toxic Nim》を隣に回すことは、どんな言葉よりも明確に相手へ「私は黒をやってないよ。あと君に感染デッキをやって欲しいと思っている」と伝える行為となる。そして今回も的確に伝わった。
ミラディンの傷跡のパックを開いたとき、そこには《決断の手綱/Volition Reins》と《大霊堂の王、ゲス/Geth, Lord of the Vault》があった。
私はすでに青を決めていたので《決断の手綱/Volition Reins》をピックし、《大霊堂の王、ゲス/Geth, Lord of the Vault》を隣に回した。隣のプレイヤーはそれを見てピックする前に驚いた顔を私に向けた。
ドラフトが終わったあと、私は《決断の手綱/Volition Reins》を見せつつ「分かるだろ?」という表情を向け、肩をすくめた。言葉が通じない相手とこんなにも密度の高いコミュニケーションがとれた、と感じられたのは多分これが初めてだ。
ゲーム外でもこの調子だったし、ゲームそれ自体もほとんど大した障害なく進行した。
「晴れる屋」の訪問は日本滞在のあいだでも最も「いるべき場所にいる」と感じられた瞬間だった。それを体感できたこと、そして私の仕事が人々に何かを提供出来ていると知ったこと。これら両方ともに心から感謝している。
しかし、その一方で、言語による壁は確かに存在する。
特にマジックのカードを用いるような複雑なゲームではそれが顕著だ。
私は、すでにミラディンの傷跡とミラディン包囲戦のカードはイラストで大体判別可能だし、加えて、新たなるファイレクシアのコモンとアンコモンも押さえてある。しかし、ここにきて私は自分が新たなるファイレクシアのレアを十分に把握していないことを知った。
最初の試合の対戦相手が《ぎらつく油/Glistening Oil》をプレイした。それが何をするのか、なんとなくは理解していたが、私が詳細を理解していなかったせいで何度もカードについて確認する羽目になってしまった。
親切な店員が私の為にオラクルの文面を印刷してくれたが、そのせいでゲームは3分ほど中断してしまった。
2回戦目ではさらにひどいことになった。それは対戦相手が《呪文滑り/Spellskite》をプレイしたときだ。
私は込み入った戦闘を仕掛けた。戦闘後の私の計画では《責め苦の総督/Tormentor Exarch》を使って相手の《呪文滑り/Spellskite》以外のクリーチャーを除去することになっていた。
私がそれを実行に移したとき、彼は私をちらっと見ると、メモに書かれた自身のライフを2点減らし、《呪文滑り/Spellskite》を指さした。
私は今回もオラクルの文面を見せてもらうようお願いし、そこで確かに《呪文滑り/Spellskite》は呪文だけでなく能力も移しかえられることを発見したのだ。
その時点ではさすがにターンを巻き戻すには遅すぎた。
あのカードの効果を正しく把握していれば勝てたかというと自信はない。しかしこのミスによって負けが確定したのは確かだ。
これはあまり楽しい出来事ではなかったが、同じミスは世界のどこかでも起こっているだろうと思う。そう考えると、こんな目にあったのも無駄ではない。
私の理解では、日本のリミテッドでは日本語製品が使われているようだ。しかし「晴れる屋」や他で見かけるプレイヤーたちの多くはその構築デッキに英語のカードを使っている。
私はすでに多くのマジックのカードをイラストだけで判断できるようになってしまっている身だ。そのため、日本のプレイヤーが初めて参加したフレイデーナイトマジックで結構な率で英語のカードに出くわしてしまうのがどれほど大変なのかは分からない。しかしあまり嬉しいことではないだろう、と思う。
私に何が出来るのかは分からないけれど、これについてはちょっと考えるようになった。
マジックのカードは永遠の輝き
「晴れる屋」を訪れてから10日後、プロツアー名古屋が開幕した。
私はその時間の大半を、通りすがる人をつかまえてはスペルスリンガーの対戦をすることに費やした。
私たちの手元には、親切にもDave Guskinが作ってくれたたくさんのスタンダードとブロック構築のデッキがあり、加えてKen Nagleが作ってくれたエクステンデッドのデッキとAaron Forsytheのくれたレガシーのデッキがあった。
さらに私たちは今までに作られたほぼ全種類のデュエルデッキを持ってきていたので、デッキがなくても私たちと対戦してもらうことができた。
もっとも大半のプレイヤーは自身のデッキを見せつけることを選んだけどね。
週末を通して遊んでいる最中、私の脳裏によみがえったのは、統率者のデベロップメント・リーダーであるMark Globusと数年前に交わした会話だった。
当時、私はArchenemyの開発を終えたところで、Mark Globusに対し、複数人でプレイする製品の開発についてやR&Dの外から来た人と一緒に開発を行うことについて、自身の経験から学んだアドバイスを伝えていた。
何はともあれ、私たちは統率者のデッキへ機能的に新しいカードを加えようという決断を下したところで、Mark Globusは私にそれらのカードを作るときに気をつけるべき点はなんだろうか、と尋ねた。
私は「このカードはプレイヤーが統率者をもっと面白く、そして長く遊ばせることができるだろうか?」という問いを持ちだしてみた。この問いに対して「Yes」となる変更であれば、それは良い変更じゃないかな、と私は言った。Markはこの言葉を深く胸に刻み込んでくれたようだった。
《統率の塔/Command Tower》は統率者を末長く面白くしてくれるだろうか?
私は「Yes」だと思っている。
《擬態の原形質/The Mimeoplasm》は統率者を末長く面白くしてくれるだろうか?
これもまた「Yes」だろうね。
では、《家路/Homeward Path》は統率者を末長く面白くしてくれるだろうか?
誰に聞いたかで異なるかもしれないけど、最終的にはそうなるのではと思っている。
より一般的な問いに変えるのであれば、もちろん、それは「そのカードはマジックを末長く面白くしてくれるだろうか?」となる。
この問いが強く思い起こされたのは、とある試合をしているときだった。
それはレガシー試合で、対戦相手はミラージュ限定構築からそのまま持ってきたようなコンボデッキを用いる日本人の男性だった。デッキは《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》を組み合わせたものだった。
《平衡/Equipoise》はカードをフェイズアウトさせる。フェイズインしてくるのはアンタップステップだが、そこで《時の砂/Sands of Time》があると何も帰ってこれなくなる。
結果として、対戦相手が土地なしクリーチャーなしの状態でこれら両方のカードをコントロールしていると、毎ターン、君のクリーチャーと土地は消えてしまい、二度と帰って来なくなるのだ。
こいつは面白い!
ミラージュブロック構築時代のこのコンボデッキが自身の土地を破壊するのに使っていたカードは、今回のこの人物が使っていたものよりずっと原始的なカードだった。
ちなみに彼が今回使っていたのは《裏切り者の都/City of Traitors》、《宝石鉱山/Gemstone Mine》、そして《知られざる楽園/Undiscovered Paradise》などだ。
対戦相手が《虚空の力線/Leyline of the Void》と《Helm of Obedience》を用意して私を殺してくれるまでのあいだ、私は20ターンほど、土地を伸ばすこともクリーチャーを増やすこともできずにターンを返した。
こんな面白おかしいことはそうそうあることじゃない。そこで私はカメラマンのCraig Gibsonに頼んで写真を撮ってもらい、この写真は彼の「Day One Photo Essay」に使われることとなった。
さて《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》はマジックを末長く面白くしてくれるだろうか? 私の意見としては「No」だ。
彼と遊んだゲームは面白かったが、もう1回同じことをしても楽しいとは思えないだろう。優しいことに、彼がまた再度訪れた際には、スタンダード環境のデッキでプレイを申し込んでくれた。
他にも奇妙極まりないレガシーのデッキとプレイする機会があった。
実のところ、なかなか楽しかったよ。
私が好きだったのは《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》と《もみ消し/Stifle》の入った赤青のデッキで、これにはさらに《直観/Intuition》、《ゴブリンの溶接工/Goblin Welder》、さらには刺戟的な新たなるファイレクシアから《倦怠の宝珠/Torpor Orb》も加えられていた。
私は、そのゲームの勝ちはほぼ確定したと思っていた。彼が《直観/Intuition》を使って、2枚の《倦怠の宝珠/Torpor Orb》と4枚目の《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》を弾いてくるまではね。
私の緑白デッキでは複数の《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》に対応することは出来なかった。ゲーム終了だ。
私の個人的な意見として、《もみ消し/Stifle》はそのフェッチランドの相互作用のせいでマジックプレイヤーに嫌われているのではないかと思っているが、ここで使われた他のカードたちについてはそんなことはないと信じている。もちろん《倦怠の宝珠/Torpor Orb》を含めてだ。こいつはちょっとしたヘンテコ野郎だからね。
《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》が深い時の底から蘇り、私にちょっとした不幸を届けてくれたことは不思議な体験だった。
私は、《倦怠の宝珠/Torpor Orb》(もしくは他の私が手掛けたカード)がいつか同じような体験を未来のデベロッパーにもたらすのかもしれない、ということに初めて気づいたのだ。
私は「このカードはこのセットのドラフトをもっと面白くしてくれるだろうか?」という問いには慣れている。また、私は「このカードはスタンダード環境をもっと面白くしてくれるだろうか?」という問いを普段から行っているし、この問いに対する答えが「Yes」だったことから何枚かのカードをMagic 2012へ加えた。
しかし私は「マジックをもっと面白くしてくれるだろうか?」という全体的な疑問を自分に投げかけたことは滅多にない。そしてこれからはもっと頻繁に自分にそれを問うことになるだろう、と言える。
名目上、リサーチは私の仕事の一部だ。私たちは時々はターゲットを絞ったリサーチを行う。対象を決めたテストやアンケートなどだ。
しかしリサーチすべき情報はそこからだけではなく、例えばプロツアーのスペルスリンガーからも、ふらりと立ち寄るフライデーナイトマジックのイベントからも、もしくは単にプレイヤーとツイッター上で交わす会話からもたくさんの情報を得ることが出来る。日本への旅の中で私はマジックについてたくさんのことを学んだ。
さて、来週からはいつもどおりのデベロップメントのコラムに戻ることにするよ。
ただ、コラムを終える前に、月曜日のアナウンスについて一言述べておきたい。私は今回の件に関する背景についてのAaron Forsytheの説明に満足している。
もしもっと知りたいと思うのなら、再度、Aaronの記事を読むことをお勧めするよ。あの記事は複数回読むに値するだけの濃い内容が書かれているからね。
Tom LaPille
2011年6月24日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/148
ただいま。
この3週間、私がいなかったことに気づいてくれてたかな。私は日本にいたんだ。名目上はプロツアーのためなんだけど、ウィザーズがくれたチケットを使って1週間半ほど早めに行ってみた。
私は日本の中世時代の大ファンだ。そこで私は5つの城を巡り歩き、京都では今年度の能フェスティバルを2晩とも観賞し、小柄な日本人女性に千年前の公家の服を着せてもらったりしていた。
とはいえ、旅の目的はやっぱりマジックの為だ。今日はそれについて話そうと思う。
マジックはどこにでもある
プロツアーの10日前、私は「晴れる屋」を訪ねた。東京は新宿にあるゲームストアだ。日本のゲームストアの中でも「晴れる屋」はもっとも変わっている。
トレーディングカードは日本で大流行しており、少なく見積もっても50種類のトレーディングカードゲームが今なお現役で、大半のゲームストアは様々なカードゲームを広く扱っている。
「晴れる屋」はマジックしか扱っていないんだ。
日本ではオフィススペースの賃貸料金が非常に高額だ。そのため大半のゲームストアは販売スペースとレジに加えて8人用くらいのプレイスペースが精一杯だ。
「晴れる屋」はプレイスペースが58人ものプレイヤーが座れるだけのスペースがある。ここはゲームストアじゃない。マジックストアなんだ。また、店にはなかなか感動的なコレクションも並んでいた。
さて、私が店に訪れたとき、そこでは8人のプレイヤーがレガシーのイベントを行っているところだった。8つのデッキでデュアルランドが披露されているのをみて、古いカードの入手が困難である、というような問題とは無縁のように見えた。
私は統率者戦に混ぜてもらった。心優しい青年が彼の《アーカム・ダグソン/Arcum Dagsson》デッキを貸してくれた。それには多くの素晴らしいフォイルが入っていた。
そのデッキには多くの見慣れないカードが入っており、慣れていないせいで私はいくつかの無限コンボを見逃してしまったらしい。彼は日本語で私にそれを説明しようとしてくれたが、私にはいまいち伝わらなかった。
さらに幸運なことに、月曜日はドラフトの日だったらしい。人数に欠けがあったので入れてもらうことにした。通常は公認大会らしいのだが、私が入ると非公認になってしまうことを念のために伝えた。彼らは、それでもよいと快諾してくれたので、私は腰をおろし日本語のパックをむきはじめた。
以下が私のドラフトデッキだ
トムの「晴れる屋」ドラフトデッキ/Tom’s Hareruya Draft Deck
フォーマット:新たなるファイレクシア、ミラディン包囲戦、ミラディンの傷跡
メインデッキ(40枚)
土地(17枚)
9 Island
8 Mountain
クリーチャー(12枚)
1 Blisterstick Shaman
1 Flameborn Hellion
2 Gust-Skimmer
1 Peace Strider
1 Riddlesmith
1 Serum Raker
1 Spined Thopter
1 Spire Monitor
1 Tormentor Exarch
1 Trespassing Souleater
1 Vulshok Replica
その他の呪文(11枚)
1 Burn the Impure
1 Mutagenic Growth
1 Panic Spellbomb
1 Psychic Barrier
1 Quicksilver Geyser
1 Shatter
1 Steel Sabotage
1 Strandwalker
1 Tumble Magnet
1 Volition Reins
1 Volt Charge
私のマジックのキャリアにおいて、今現在の私は、大抵のゲームストアでは強い方から数えた方が早いドラフトプレイヤーのはずだ。
そのため、すぐに0-2してしまったことは私に衝撃を与えた。さらにもう1人の0-2のプレイヤーが私と当たるかわりにドロップを選択したことにもね。
ゲームストアという空間で参加したことのあるドラフトの中では、今回のゲームが最強の面子だったかもしれない。もし君が日本にいてマジックを強くなりたいと思っているなら、ここでプレイし始めるのもいいかもしれないよ。
またドラフトそれ自体が興味深い経験となった。特筆すべき点は、私が英語でも日本語でも意思疎通できない状況だったことだ。
君たちが気づいているかどうかは知らないが、マジックとは言語だ。
遅い順目で《毒の屍賊/Toxic Nim》を隣に回すことは、どんな言葉よりも明確に相手へ「私は黒をやってないよ。あと君に感染デッキをやって欲しいと思っている」と伝える行為となる。そして今回も的確に伝わった。
ミラディンの傷跡のパックを開いたとき、そこには《決断の手綱/Volition Reins》と《大霊堂の王、ゲス/Geth, Lord of the Vault》があった。
私はすでに青を決めていたので《決断の手綱/Volition Reins》をピックし、《大霊堂の王、ゲス/Geth, Lord of the Vault》を隣に回した。隣のプレイヤーはそれを見てピックする前に驚いた顔を私に向けた。
ドラフトが終わったあと、私は《決断の手綱/Volition Reins》を見せつつ「分かるだろ?」という表情を向け、肩をすくめた。言葉が通じない相手とこんなにも密度の高いコミュニケーションがとれた、と感じられたのは多分これが初めてだ。
ゲーム外でもこの調子だったし、ゲームそれ自体もほとんど大した障害なく進行した。
「晴れる屋」の訪問は日本滞在のあいだでも最も「いるべき場所にいる」と感じられた瞬間だった。それを体感できたこと、そして私の仕事が人々に何かを提供出来ていると知ったこと。これら両方ともに心から感謝している。
しかし、その一方で、言語による壁は確かに存在する。
特にマジックのカードを用いるような複雑なゲームではそれが顕著だ。
私は、すでにミラディンの傷跡とミラディン包囲戦のカードはイラストで大体判別可能だし、加えて、新たなるファイレクシアのコモンとアンコモンも押さえてある。しかし、ここにきて私は自分が新たなるファイレクシアのレアを十分に把握していないことを知った。
最初の試合の対戦相手が《ぎらつく油/Glistening Oil》をプレイした。それが何をするのか、なんとなくは理解していたが、私が詳細を理解していなかったせいで何度もカードについて確認する羽目になってしまった。
親切な店員が私の為にオラクルの文面を印刷してくれたが、そのせいでゲームは3分ほど中断してしまった。
2回戦目ではさらにひどいことになった。それは対戦相手が《呪文滑り/Spellskite》をプレイしたときだ。
私は込み入った戦闘を仕掛けた。戦闘後の私の計画では《責め苦の総督/Tormentor Exarch》を使って相手の《呪文滑り/Spellskite》以外のクリーチャーを除去することになっていた。
私がそれを実行に移したとき、彼は私をちらっと見ると、メモに書かれた自身のライフを2点減らし、《呪文滑り/Spellskite》を指さした。
私は今回もオラクルの文面を見せてもらうようお願いし、そこで確かに《呪文滑り/Spellskite》は呪文だけでなく能力も移しかえられることを発見したのだ。
その時点ではさすがにターンを巻き戻すには遅すぎた。
あのカードの効果を正しく把握していれば勝てたかというと自信はない。しかしこのミスによって負けが確定したのは確かだ。
これはあまり楽しい出来事ではなかったが、同じミスは世界のどこかでも起こっているだろうと思う。そう考えると、こんな目にあったのも無駄ではない。
私の理解では、日本のリミテッドでは日本語製品が使われているようだ。しかし「晴れる屋」や他で見かけるプレイヤーたちの多くはその構築デッキに英語のカードを使っている。
私はすでに多くのマジックのカードをイラストだけで判断できるようになってしまっている身だ。そのため、日本のプレイヤーが初めて参加したフレイデーナイトマジックで結構な率で英語のカードに出くわしてしまうのがどれほど大変なのかは分からない。しかしあまり嬉しいことではないだろう、と思う。
私に何が出来るのかは分からないけれど、これについてはちょっと考えるようになった。
マジックのカードは永遠の輝き
「晴れる屋」を訪れてから10日後、プロツアー名古屋が開幕した。
私はその時間の大半を、通りすがる人をつかまえてはスペルスリンガーの対戦をすることに費やした。
私たちの手元には、親切にもDave Guskinが作ってくれたたくさんのスタンダードとブロック構築のデッキがあり、加えてKen Nagleが作ってくれたエクステンデッドのデッキとAaron Forsytheのくれたレガシーのデッキがあった。
さらに私たちは今までに作られたほぼ全種類のデュエルデッキを持ってきていたので、デッキがなくても私たちと対戦してもらうことができた。
もっとも大半のプレイヤーは自身のデッキを見せつけることを選んだけどね。
週末を通して遊んでいる最中、私の脳裏によみがえったのは、統率者のデベロップメント・リーダーであるMark Globusと数年前に交わした会話だった。
当時、私はArchenemyの開発を終えたところで、Mark Globusに対し、複数人でプレイする製品の開発についてやR&Dの外から来た人と一緒に開発を行うことについて、自身の経験から学んだアドバイスを伝えていた。
何はともあれ、私たちは統率者のデッキへ機能的に新しいカードを加えようという決断を下したところで、Mark Globusは私にそれらのカードを作るときに気をつけるべき点はなんだろうか、と尋ねた。
私は「このカードはプレイヤーが統率者をもっと面白く、そして長く遊ばせることができるだろうか?」という問いを持ちだしてみた。この問いに対して「Yes」となる変更であれば、それは良い変更じゃないかな、と私は言った。Markはこの言葉を深く胸に刻み込んでくれたようだった。
《統率の塔/Command Tower》は統率者を末長く面白くしてくれるだろうか?
私は「Yes」だと思っている。
《擬態の原形質/The Mimeoplasm》は統率者を末長く面白くしてくれるだろうか?
これもまた「Yes」だろうね。
では、《家路/Homeward Path》は統率者を末長く面白くしてくれるだろうか?
誰に聞いたかで異なるかもしれないけど、最終的にはそうなるのではと思っている。
Command Tower / 統率の塔
土地
(T):あなたのマナ・プールに、あなたの統率者の固有色のいずれか1色の色のマナ1点を加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Command+Tower/
The Mimeoplasm / 擬態の原形質 (2)(緑)(青)(黒)
伝説のクリーチャー - ウーズ(Ooze)
擬態の原形質が戦場に出るに際し、あなたは墓地にあるクリーチャー・カードを2枚追放してもよい。そうした場合、それはそれらのカードのうちの1枚のコピーとして、もう1枚のカードのパワーに等しい数の追加の+1/+1カウンターが置かれた状態で戦場に出る。
0/0
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/The+Mimeoplasm/ ※ 文面を一部修正
Homeward Path / 家路
土地
(T):あなたのマナ・プールに(1)を加える。
(T):各プレイヤーは、自分がオーナーであるすべてのクリーチャーのコントロールを得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Homeward+Path/
より一般的な問いに変えるのであれば、もちろん、それは「そのカードはマジックを末長く面白くしてくれるだろうか?」となる。
この問いが強く思い起こされたのは、とある試合をしているときだった。
それはレガシー試合で、対戦相手はミラージュ限定構築からそのまま持ってきたようなコンボデッキを用いる日本人の男性だった。デッキは《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》を組み合わせたものだった。
《平衡/Equipoise》はカードをフェイズアウトさせる。フェイズインしてくるのはアンタップステップだが、そこで《時の砂/Sands of Time》があると何も帰ってこれなくなる。
結果として、対戦相手が土地なしクリーチャーなしの状態でこれら両方のカードをコントロールしていると、毎ターン、君のクリーチャーと土地は消えてしまい、二度と帰って来なくなるのだ。
こいつは面白い!
Equipoise / 平衡 (2)(白)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーがコントロールする土地が、あなたがコントロールする数を上回る1つにつき、そのプレイヤーがコントロールする土地を選ぶ。その後、選ばれたパーマネントはフェイズ・アウトする。この過程を、アーティファクトとクリーチャーについて繰り返す。(それらがフェイズ・アウトしている間、それはそれが存在しないかのように扱う。それらはそのプレイヤーの次のアンタップ・ステップの間でそのプレイヤーがアンタップする前にフェイズ・インする。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Equipoise/
Sands of Time / 時の砂 (4)
アーティファクト
各プレイヤーは自分のアンタップ・ステップを飛ばす。
各プレイヤーのアップキープの開始時に、そのプレイヤーは同時に、自分がコントロールするすべてのタップ状態のアーティファクト、クリーチャー、土地をアンタップし、自分がコントロールするすべてのアンタップ状態のアーティファクト、クリーチャー、土地をタップする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sands+of+Time/
ミラージュブロック構築時代のこのコンボデッキが自身の土地を破壊するのに使っていたカードは、今回のこの人物が使っていたものよりずっと原始的なカードだった。
ちなみに彼が今回使っていたのは《裏切り者の都/City of Traitors》、《宝石鉱山/Gemstone Mine》、そして《知られざる楽園/Undiscovered Paradise》などだ。
対戦相手が《虚空の力線/Leyline of the Void》と《Helm of Obedience》を用意して私を殺してくれるまでのあいだ、私は20ターンほど、土地を伸ばすこともクリーチャーを増やすこともできずにターンを返した。
こんな面白おかしいことはそうそうあることじゃない。そこで私はカメラマンのCraig Gibsonに頼んで写真を撮ってもらい、この写真は彼の「Day One Photo Essay」に使われることとなった。
さて《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》はマジックを末長く面白くしてくれるだろうか? 私の意見としては「No」だ。
彼と遊んだゲームは面白かったが、もう1回同じことをしても楽しいとは思えないだろう。優しいことに、彼がまた再度訪れた際には、スタンダード環境のデッキでプレイを申し込んでくれた。
他にも奇妙極まりないレガシーのデッキとプレイする機会があった。
実のところ、なかなか楽しかったよ。
私が好きだったのは《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》と《もみ消し/Stifle》の入った赤青のデッキで、これにはさらに《直観/Intuition》、《ゴブリンの溶接工/Goblin Welder》、さらには刺戟的な新たなるファイレクシアから《倦怠の宝珠/Torpor Orb》も加えられていた。
Torpor Orb / 倦怠の宝珠 (2)
アーティファクト
戦場に出るクリーチャーは能力を誘発させない。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Torpor+Orb/
私は、そのゲームの勝ちはほぼ確定したと思っていた。彼が《直観/Intuition》を使って、2枚の《倦怠の宝珠/Torpor Orb》と4枚目の《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》を弾いてくるまではね。
私の緑白デッキでは複数の《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》に対応することは出来なかった。ゲーム終了だ。
私の個人的な意見として、《もみ消し/Stifle》はそのフェッチランドの相互作用のせいでマジックプレイヤーに嫌われているのではないかと思っているが、ここで使われた他のカードたちについてはそんなことはないと信じている。もちろん《倦怠の宝珠/Torpor Orb》を含めてだ。こいつはちょっとしたヘンテコ野郎だからね。
《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》が深い時の底から蘇り、私にちょっとした不幸を届けてくれたことは不思議な体験だった。
私は、《倦怠の宝珠/Torpor Orb》(もしくは他の私が手掛けたカード)がいつか同じような体験を未来のデベロッパーにもたらすのかもしれない、ということに初めて気づいたのだ。
私は「このカードはこのセットのドラフトをもっと面白くしてくれるだろうか?」という問いには慣れている。また、私は「このカードはスタンダード環境をもっと面白くしてくれるだろうか?」という問いを普段から行っているし、この問いに対する答えが「Yes」だったことから何枚かのカードをMagic 2012へ加えた。
しかし私は「マジックをもっと面白くしてくれるだろうか?」という全体的な疑問を自分に投げかけたことは滅多にない。そしてこれからはもっと頻繁に自分にそれを問うことになるだろう、と言える。
名目上、リサーチは私の仕事の一部だ。私たちは時々はターゲットを絞ったリサーチを行う。対象を決めたテストやアンケートなどだ。
しかしリサーチすべき情報はそこからだけではなく、例えばプロツアーのスペルスリンガーからも、ふらりと立ち寄るフライデーナイトマジックのイベントからも、もしくは単にプレイヤーとツイッター上で交わす会話からもたくさんの情報を得ることが出来る。日本への旅の中で私はマジックについてたくさんのことを学んだ。
さて、来週からはいつもどおりのデベロップメントのコラムに戻ることにするよ。
ただ、コラムを終える前に、月曜日のアナウンスについて一言述べておきたい。私は今回の件に関する背景についてのAaron Forsytheの説明に満足している。
もしもっと知りたいと思うのなら、再度、Aaronの記事を読むことをお勧めするよ。あの記事は複数回読むに値するだけの濃い内容が書かれているからね。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
テーマと言うほどのものはなさそう。あえて言うなら新たなるファイレクシア特集。
余談2:火曜日 《倒れし者の記憶/Remeber the Fallen》
Card of the Dayでは珍しいツイッターでの呟きから拾われたネタ。珍しいと言うか、初めてかもしれない。まあ、それはさておき、内容がすごい。よく思いついたな、と。
原文:Hey, remember The Fallen?
ってか、これをどうやって和訳しろってんだ。英語の掛け言葉があまりに見事すぎて手が出せない。なんかジョークを解説するような無粋さを感じるけど、一応説明しておくと「The Fallen(というカードを)覚えていますか?」という文章にそのまま「Remeber the Fallen」というカード名が入っている、という話。
そういえば前に「別のカードの名前が丸々含まれているカード名」というネタがあったな。この《倒れし者の記憶/Remeber the Fallen》もその仲間に入るのか。
余談3:水曜日 《刻まれた大怪物/Etched Monstrosity》
ダークスティールの《刻まれた巫女/Etched Oracle》の「名前とイラスト」は《刻まれた勇者/Etched Champion》に受け継がれ、能力は《刻まれた大怪物/Etched Monstrosity》に受け継がれた、という話。
巫女から生まれたのが勇者と大怪物、というのはなんとも物語性を感じさせてくれる。「刻まれた/Etched」シリーズって他に何がいたかな。
余談4:木曜日 《戦争報告/War Report》
背景ストーリーはあまり深く追わない身としては、カードにストーリーの各場面が断片的に示されてもそれほど興味はわかないというのが正直なところ。
なんだろう。予習が必要なのがめんどいというか……敵と味方のグループに分かれている、くらいの情報ならいいんだけど、誰が誰を騙そうとしていて逆に裏切られて、みたいな複雑なことをブツ切りにしてカードごとに示されても困る。
今回のCard of the Dayで例に挙げられている《血の復讐/Vendetta》で言えば「タカラがヴォルラスの化けた姿だとスタークが気づいた瞬間」ってことは、つまり「タカラ、ヴォルラス、スターク」という3人の人間関係を知っていないと理解できない場面なわけで、その上で「なんでヴォルラスという人物がタカラに化けていて、かつそれにスタークが気づいてはいけないのか」まで知らないといけない。大変すぎる。
ストーリーよりもシンプルに世界観を感じさせてくれるカードが好き。《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》のフレイバーテキストもそうだし、今回の《戦争報告/War Report》もそう。ファイレクシアとミラディンが争っておりファイレクシアが優勢、というざっくりな理解だけでことが足りる。
余談5:金曜日 《荒廃の工作員/Blighted Agent》
「ブロックされない」の能力を持ったスパイが、ファイレクシアの派閥争いに加わっており、それについてフレイバーテキストで言及されている。
「怪しむかもしれないが、止められはすまい」って、なんかスポーツ漫画っぽいな。「お前のシュートの秘密はもう分かったぜ!」「分かったからと言って止められなければ意味はあるまい!」みたいな。
余談6:公式ガイドブック
何年かぶりに公式ガイドブックを買ってみた。真木孝一郎さんのアレ。《呪文滑り/Spellskite》の構築評価が星2つなのを見ると、やっぱり実際に環境に投入される前に評価するってのは難しいんだな、と思う。
個人的に公式ガイドブックの読みどころは、明らかに評価に困るカードの解説(いや、イラストつきのカード一覧を紙媒体で見られるというのも購入理由の1つだけど)。
バニラ・クリーチャーもそうだし、それより大変っぽいのがシンプルに弱そうなカード。今回で言うと《防御姿勢/Defensive Stance》とか《無情な侵略/Ruthless Invasion》とか。
気になる人は買うが吉。
以下、真木孝一郎さんに関する余談。
一度だけ実際にプレイしているのを見たことがある。記憶が曖昧だけど、確か10年以上前のJGC(Japan Game Convension)で開催されていたドラフトかシールドか何かの決勝戦。
シャドー・クリーチャーがいたからテンペストブロックなはず。そして真木さんは相手のそのシャドー・クリーチャーにぼこぼこに殴られていてライフが危険領域に突入していた。
半分本気、半分冗談で帰り支度を始める真木さんに観客が笑う。そして真木さんが荷物を片づけようとカードボックスをひょいと持ち上げると、なんとそこにいたのは……戦闘ダメージを与えることも与えられることもできなくなる《ガス化/Gaseous Form》をつけられたシャドー・クリーチャー。
そう。
ゲーム序盤で、せっかく出したシャドー・クリーチャーに《ガス化/Gaseous Form》を即座に貼りつけられてしまった真木さんが、戦力外通告と言わんばかりにテーブルに端っこに寄せ、さらに上にボックスを置いて封印したのだ。
真木さん「誰だよ、隠したの!」
その他全員「あんただよ!」
皆が爆笑する中、真木さんが叫び、当然のように一同総ツッコミ。
古い話なので細部は間違ってるかもしれないけど、おおよその内容は合ってるはず。結局、どっちが勝ったんだっけ。覚えてないな。まあ、とにもかくにも、この事件(?)以来、真木さんのファンです。
ご本人のサイト、Cheap Magicもよく見てた。Gary Wiseの引退時の言葉も、Cheap Magicのサイトで知った。あれはちょっと泣けた。
テーマと言うほどのものはなさそう。あえて言うなら新たなるファイレクシア特集。
余談2:火曜日 《倒れし者の記憶/Remeber the Fallen》
Card of the Dayでは珍しいツイッターでの呟きから拾われたネタ。珍しいと言うか、初めてかもしれない。まあ、それはさておき、内容がすごい。よく思いついたな、と。
原文:Hey, remember The Fallen?
ってか、これをどうやって和訳しろってんだ。英語の掛け言葉があまりに見事すぎて手が出せない。なんかジョークを解説するような無粋さを感じるけど、一応説明しておくと「The Fallen(というカードを)覚えていますか?」という文章にそのまま「Remeber the Fallen」というカード名が入っている、という話。
そういえば前に「別のカードの名前が丸々含まれているカード名」というネタがあったな。この《倒れし者の記憶/Remeber the Fallen》もその仲間に入るのか。
余談3:水曜日 《刻まれた大怪物/Etched Monstrosity》
ダークスティールの《刻まれた巫女/Etched Oracle》の「名前とイラスト」は《刻まれた勇者/Etched Champion》に受け継がれ、能力は《刻まれた大怪物/Etched Monstrosity》に受け継がれた、という話。
巫女から生まれたのが勇者と大怪物、というのはなんとも物語性を感じさせてくれる。「刻まれた/Etched」シリーズって他に何がいたかな。
余談4:木曜日 《戦争報告/War Report》
背景ストーリーはあまり深く追わない身としては、カードにストーリーの各場面が断片的に示されてもそれほど興味はわかないというのが正直なところ。
なんだろう。予習が必要なのがめんどいというか……敵と味方のグループに分かれている、くらいの情報ならいいんだけど、誰が誰を騙そうとしていて逆に裏切られて、みたいな複雑なことをブツ切りにしてカードごとに示されても困る。
今回のCard of the Dayで例に挙げられている《血の復讐/Vendetta》で言えば「タカラがヴォルラスの化けた姿だとスタークが気づいた瞬間」ってことは、つまり「タカラ、ヴォルラス、スターク」という3人の人間関係を知っていないと理解できない場面なわけで、その上で「なんでヴォルラスという人物がタカラに化けていて、かつそれにスタークが気づいてはいけないのか」まで知らないといけない。大変すぎる。
ストーリーよりもシンプルに世界観を感じさせてくれるカードが好き。《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》のフレイバーテキストもそうだし、今回の《戦争報告/War Report》もそう。ファイレクシアとミラディンが争っておりファイレクシアが優勢、というざっくりな理解だけでことが足りる。
余談5:金曜日 《荒廃の工作員/Blighted Agent》
「ブロックされない」の能力を持ったスパイが、ファイレクシアの派閥争いに加わっており、それについてフレイバーテキストで言及されている。
「怪しむかもしれないが、止められはすまい」って、なんかスポーツ漫画っぽいな。「お前のシュートの秘密はもう分かったぜ!」「分かったからと言って止められなければ意味はあるまい!」みたいな。
余談6:公式ガイドブック
何年かぶりに公式ガイドブックを買ってみた。真木孝一郎さんのアレ。《呪文滑り/Spellskite》の構築評価が星2つなのを見ると、やっぱり実際に環境に投入される前に評価するってのは難しいんだな、と思う。
個人的に公式ガイドブックの読みどころは、明らかに評価に困るカードの解説(いや、イラストつきのカード一覧を紙媒体で見られるというのも購入理由の1つだけど)。
バニラ・クリーチャーもそうだし、それより大変っぽいのがシンプルに弱そうなカード。今回で言うと《防御姿勢/Defensive Stance》とか《無情な侵略/Ruthless Invasion》とか。
気になる人は買うが吉。
以下、真木孝一郎さんに関する余談。
一度だけ実際にプレイしているのを見たことがある。記憶が曖昧だけど、確か10年以上前のJGC(Japan Game Convension)で開催されていたドラフトかシールドか何かの決勝戦。
シャドー・クリーチャーがいたからテンペストブロックなはず。そして真木さんは相手のそのシャドー・クリーチャーにぼこぼこに殴られていてライフが危険領域に突入していた。
半分本気、半分冗談で帰り支度を始める真木さんに観客が笑う。そして真木さんが荷物を片づけようとカードボックスをひょいと持ち上げると、なんとそこにいたのは……戦闘ダメージを与えることも与えられることもできなくなる《ガス化/Gaseous Form》をつけられたシャドー・クリーチャー。
そう。
ゲーム序盤で、せっかく出したシャドー・クリーチャーに《ガス化/Gaseous Form》を即座に貼りつけられてしまった真木さんが、戦力外通告と言わんばかりにテーブルに端っこに寄せ、さらに上にボックスを置いて封印したのだ。
真木さん「誰だよ、隠したの!」
その他全員「あんただよ!」
皆が爆笑する中、真木さんが叫び、当然のように一同総ツッコミ。
古い話なので細部は間違ってるかもしれないけど、おおよその内容は合ってるはず。結局、どっちが勝ったんだっけ。覚えてないな。まあ、とにもかくにも、この事件(?)以来、真木さんのファンです。
ご本人のサイト、Cheap Magicもよく見てた。Gary Wiseの引退時の言葉も、Cheap Magicのサイトで知った。あれはちょっと泣けた。
司令官イーシャ/Commander Eesha - ジャッジメント レアCommander Eesha / 司令官イーシャ (2)(白)(白)
伝説のクリーチャー - 鳥(Bird) 兵士(Soldier)
飛行、プロテクション(クリーチャー)
2/4
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Commander+Eesha/
ジャッジメントの小説によれば、《ティーロ大隊長/Major Teroh》の死後に騎士団(Order)のリーダーを引き継いだのがイーシャである。
なお、ティーロはその座を《隊長補佐カーター/Lieutenant Kirtar》から引き継いでおり、さらにカーターの前にその座についていたのは《遊牧の民の長ピアナ/Pianna, Nomad Captain》である。よってこのピアナが、最後の「エイヴンでない騎士団のリーダー」と考えられる(註1)。
(註1) エイヴンでない
ついでなので騎士団(Order)の系譜をクリーチャータイプと一緒に書き出してみる。ちなみにこのうちピアナとイーシャが女性。
ピアナ(人間・ノーマッド)
↓
カーター(鳥・兵士)
↓
ティーロ(鳥・兵士)
↓
イーシャ(鳥・兵士)
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
魏の大将 曹仁/Cao Ren, Wei Commander - ポータル三国志 レアCao Ren, Wei Commander / 魏の大将 曹仁 (2)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) 兵士(Soldier) 戦士(Warrior)
馬術(このクリーチャーは、馬術を持たないクリーチャーによってはブロックされない。)
魏の大将 曹仁が戦場に出たとき、あなたは3点のライフを失う。
3/3
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cao+Ren%2C+Wei+Commander/
馬術とはポータル三国志でのみ用いられている能力である(オンラインの場合は、ポータル三国志のカードが収録されているマスターズエディションのセットも含む)。
実質的には飛行とまったく同じ働きをするものだが、何しろ三国志の物語には翼を持ち空を飛ぶキャラクターがあまりにも少なかったため、新たなフレイバーを用いることとなった。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
司令官グレヴェン・イル=ヴェク/Commander Greven il-Vec - テンペスト レアCommander Greven il-Vec / 司令官グレヴェン・イル=ヴェク (3)(黒)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) 戦士(Warrior)
畏怖(このクリーチャーは、黒でもアーティファクトでもないクリーチャーによってはブロックされない。)
司令官グレヴェン・イル=ヴェクが戦場に出たとき、クリーチャーを1体生け贄に捧げる。
7/5
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Commander+Greven+il-Vec/
グレヴェンはウェザーライト・サーガの憎まれ役の顔とも言える存在だ。彼は《旗艦プレデター/Predator, Flagship》の船長であるだけでなく、文字通りの意味で《憎悪/Hatred》の顔(註1)でもあるのだ!
(註1) 《憎悪/Hatred》の顔
《憎悪/Hatred》のカードイラストはグレヴェンの顔のドアップ。
参照:http://magiccards.info/ex/en/64.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
呉の大都督 周瑜/Zhou Yu, Chief Commander - ポータル三国志 レアZhou Yu, Chief Commander / 呉の大都督 周瑜 (5)(青)(青)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) 兵士(Soldier)
呉の大都督 周瑜は防御プレイヤーが島(Island)をコントロールしていない限り、攻撃できない。
8/8
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Zhou+Yu%2C+Chief+Commander/
周瑜の《島/Island》に対してしか攻撃できないという制限は、おそらく赤壁の戦い(註1)を元にしたものと思われる。この戦いで彼は水軍を指揮し、《魏公 曹操/Cao Cao, Lord of Wei》の率いる水軍を撃破している。
(註1) 赤壁の戦い
原文では「Battle of Red Cliffs」と表記されており、《赤壁の無敵船団/Red Cliffs Armada》(註2)のカードデータへリンクが張ってある。
(註2) 《赤壁の無敵船団/Red Cliffs Armada》
このクリーチャーも「防御プレイヤーが島(Island)をコントロールしていない限り、攻撃できない」の能力を持っている。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
Card of the Day - 2011/06/10
2011年6月10日 Card of the Day徴用/Commandeer - コールドスナップ レアCommandeer / 徴用 (5)(青)(青)
インスタント
あなたは、徴用のマナ・コストを支払うのではなく、あなたの手札にある青のカードを2枚、追放することを選んでもよい。
クリーチャーではない呪文1つを対象とし、そのコントロールを得る。あなたはそれの新たな対象を選んでもよい。(その呪文がアーティファクトかエンチャントかプレインズウォーカーである場合、それはあなたのコントロール下で戦場に出る。)
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Commandeer/
伝説のクリーチャーの代わりに《大鹿の一団/Gang of Elk》や《微光角の鹿/Glimmerpoint Stag》や《大貂皮鹿/Great Sable Stag》しか統率者に指定できないフォーマットがあれば、そのフォーマット名は《Commandeer》がふさわしいだろうね。(註1)
(註1) 解説
一般にはEDH(Elder Dragon Highlander)として知られる、伝説のクリーチャーを統率者に指定するフォーマットの正式名は「統率者戦/Commander」だ。
じゃあ《大鹿の一団/Gang of Elk》や《微光角の鹿/Glimmerpoint Stag》や《大貂皮鹿/Great Sable Stag》からしか統率者に指定できないフォーマットは「Commander」じゃなくて「Commandeer」のほうがふさわしいはず、という話。
なんでかって? だってここで挙げたクリーチャーは全て「鹿/Deer」だから。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
【翻訳】より良いエンチャントのために(その2)/Enchantment For Better Things, Part Two【Daily MTG】(後編)
終わりなき囁き/Endless Whispers - フィフスドーン
もし君がいつかウィザーズに仕事を得ることが出来たら、出社初日にぜひともやってみて欲しいことがある。まず、Multiverseへアクセスすること。これは私たちがマジックのために用いているデータベースだ。次に、どれかエキスパンションを選び、Dev Commentと呼ばれる製作者たちのコメントを読み始めるんだ(ちなみに「Dev Comment」の「Dev」はデベロッパーの略だが、実際にはデザインチームとデベロップメントチームの両方がここを使っている)。
マジックの制作プロセスに関するより豊かな洞察を君はここから得ることが出来るだろう(私とAaron Forsytheが機会のあるごとに君たちにここを覗き見させているのはそういうわけだ)。
なぜ私はここでMultiverseの話を持ち出したのか? なぜならこの記事を書くに当たってリサーチを行った際(そのとおり、驚くかもしれないが、私だってたまにはそういうことをしているのだ)、私はMultiverseの《終わりなき囁き/Endless Whispers》に関する箇所に目を通してみた。
その結果、なかなか面白い事実が判明した。このカードに関して話そうと思っていたこと、全てを押しのけてしまうほどに興味深い内容だった。さて、それについて話す前に説明しておくべきことがある。まずは、《終わりなき囁き/Endless Whispers》の最初期のバージョンを紹介しよう。
Death Chime(註9)
4
Artifact
Whenever a creature goes to a graveyard from play, any opponent of
that creature’s controller may pay 1 to put that creature from
the graveyard into play under their control.
そのとおり。またしても「生まれたときにはアーティファクト」なカードだ。もっとも、このカードに関しては、生まれがミラディンブロックだったから、という言い訳が出来る。Multiverseでこのカードに関してつけられていたコメントは以下の通りだ。R&Dのメンバーをイニシャルから判断するのが苦手な人のために、どれが誰だか解説をつけておこう。
さあ、参加者について分かってもらえたところで、当時にダイブしてみよう。
個人的にこの変遷の興味深い点は、特定のカードには複数の問題点が常につきまとうという現象を見事に再現していることだ。あるグループはカードの色について議論し、別のグループはその機能性を憂慮し、さらに別のグループはそれが多人数戦でどう働くかを気にしている。
このカードから得た教訓は次の通りだ。多くの視点から眺めるべし。全てのメンバーはそれぞれ固有の視点からそのカードを評価し、その結果、1人では決して得られない洞察を加えてくれる。カードのデザインとはグループワークだ。グループをそこから遠ざけてはいけないんだ。
春の鼓動/Heartbeat of Spring - 神河物語
これは緑の《ほとばしる魔力/Mana Flare》だ。
これをデザインするのがそんなに大変だったのか、って? 大変じゃなかったよ。実のところ、これのために「デザインする」という工程があったのかどうかすら定かではない。おそらく、リチャードはアルファ版に対して非常に深い敬意を抱いている、ということくらいしか分からない。
そのとおり。ここで話したいのはどのようにして生まれたかではなく、それが実際にセットに収録されるまでの道のりについてだ。私たちは第5版のデベロップメントの最中まで遡る必要がある。
デザインチームは以下の3人だった。
ああ、そのとおり。基本セットに《ネクロポーテンス/Necropotence》を持ちこんだのはこの3人だ。何にせよ、第5版を構築している最中、デザインの必要ありと思われるカードの一覧を私たちは作った。このリストはいくつにもカテゴリ分けされていた。
あるカテゴリは、良いカードではあるもののカードパワーが高すぎるか低すぎるため適正なマナコストでリメイクする必要があるカードたちが集められていた。あるカテゴリは、よりシンプルな効果であるべきなのに一度もそのようなリメイクがされなかったカードたちが集められていた。あるカテゴリは、単に今まで一度も作られたことのないカードたちが集められていた。
そして最後に、単に違う色で作られるべきだったカードたちを集めたカテゴリがあった。そのリストの中頃に「green Mana Flare」という3つの単語が並んでいたわけだ。
このリストが作成されたのが1996年。神河物語が発売されたのが2004年。8年後だ。
何があったのだろうか?
単純に私たちがこのリストの存在を忘れてしまい、カビ臭い引き出しから何年も後になって発掘したのだろうか? 違う(なぜならそんなことは実際には決して起こり得ないと聞いているからだ)(註10)。
事実はまったくの逆だ。私は持てる力の限りを尽くして、このカードが実際に印刷されるよう頑張ったのだ。私がデザイン・リーダーを務めたありとあらゆるセットにこのカードをねじ込み、私がカードを作る機会のあったありとあらゆるセットでこのカードを提出した(つまりアライアンス以降の全てのセットでそれを行ったということだ)。
何がこのカードが世に出るのを邪魔したのか? 何か、だ。毎回、「何か」がやって来てデベロップメント・チームはこのカードをふるい落とすか変更する必要に迫られた。いくつか例を挙げてみようか。
テンペスト:
デベロップメント・チームは《大地の知識/Earthcraft》(註11)が似たような効果を持っていると感じた。両方とも土地に通常以上のマナを出させてくれる。彼らは《大地の知識/Earthcraft》のほうが「green Mana Flare」より面白いと感じた。
ウルザズサーガ:
デベロップメント・チームは、もう少し常識にとらわれない感じにしたい、と感じたためこのカードを《花盛りの春/Vernal Bloom》(註12)にしてしまった。
インベイジョン:
デベロップメント・チームは《過ぎたる実り/Overabundance》(註13)が気に入っており、これと「green Mana Flare」は同じセットには存在できないと判断した。
ミラディン:
デベロップメント・チームは《超次元レンズ/Extraplanar Lens》(註14)が気に入っており、これと「green Mana Flare」は合わないと感じた。そして《超次元レンズ/Extraplanar Lens》は 刻印/Imprint というブロックの目玉キーワードを持っており、抜くことは出来なかった。
それ以外のときもこのカードは似たような何かに押しのけられてきたわけだ。こういう扱いを受けたカードは今までに何枚も見て来た。では一体全体どうやってこのカードを神河物語に私がねじこんだのだろうか?
私はやってない。Brian Schneiderがねじ込んだ。
なんでかって?
なぜなら彼はそれはどのセットにだって入るべきカードであり、これが収録されないのであればデベロップメント・チームなんて必要ないと思っていたからだ。それを知ったとき、私の第一声は「ああ、じゃあ、やっと収録されるのか」。
私がこのカードから得た教訓はシンプルなものだ。
ネバーギブアップ、さ。
デザインとはその大半がひらめきだ。しかしそこには必ず努力も含まれている。セットにカードを加えたいと考えている未来のデザイナーたちへ伝えたいアドバイスは「必要なものは2つ。デザインの質と忍耐だ」。これら2つがあるのなら、どんなカードであってもいつかは目的地へ辿りつける。
この話を終えるに当たってちょっとした余談を付け加えておきたい。《春の鼓動/Heartbeat of Spring》は第10版に収録されかけたが、R&Dは当時の環境はこのカードと距離を置くべきだと考えたため、脱落してしまった。
これが何を意味するのか?
これが意味するところは、これがいつか帰って来る、ということだ。いつ帰って来るか、だって? そんなこと知らないよ。私に分かっていることは、これから基本セットの選定を行うたびに私はこのカードを候補に挙げる、ってことさ。これがスタメン入りするまでね。10年と少しの年月の中で私が学んだことがあるとすれば、それは忍耐さ。
倍増の季節/Doubling Season - ラヴニカ
今まで私のコラムの中で幾度となく言及してきたことの1つに、いかにMark Gottliebと私が「ヒーロー」と「悪党」の役割をそれぞれ演じてきたか、ということがある(そのとおりだよ。私が「ヒーロー」だ。なんで誰も信じてくれないんだ!)。
何にせよ、良い「ヒーローと悪党」の対立関係とは特定のトピックに関してその2人が異なる主義主張を持ち、それを理由とした継続的な衝突を通して作品の根底に流れるテーマをかすかに匂わせることにある。Mark Gottliebと私にもそのようなトピックがある。「Doubling(2倍)」だ。
あれは、遠い昔のことだ。当時、私が持ち歩いていたデッキは緑青のウィニーデッキだった。マジックにはヴィンテージしか存在しなかった頃だ。構築フォーマットが1つしか存在しなかったんだ。所持するカードであればなんでも使えた(え? 分かった、分かった。確かに何枚かの制限カードと、数枚の禁止カードもあった)。
私のデッキは、0/1や1/1のおチビさんたちを2ターン目か3ターン目に +20/+0 してあげることが全てだった。例えば、1ターン目に《極楽鳥/Birds of Paradise》を出したとする。対戦相手は、なんとお粗末な1ターン目だろう、と嘲笑し、当然その0/1の飛行クリーチャーを放っておいてくれる。
2ターン目は、《森/Forest》+《Mox Sapphire》+《Black Lotus》+《不安定性突然変異/Unstable Mutation》+《巨大化/Giant Growth》+《Berserk》+《Regrowth》+《Berserk》で、パワー24の攻撃だ(引きが良すぎる? 確かにそうかもしれないが、正直自分でも驚くほどの回数の2ターンキルに今まで成功してきたよ)。(註15)
これが「Doubling(2倍)」と何の関係があるのかって? おいおい、話を聞いてなかったのか! 私の2ターン目には《Berserk》が2回出て来ただろう?
6点のダメージを24点に変える方法なーんだ? 坊や、それは「Doubling(2倍)」よ。
リバイスドが出た際、この《Berserk》は基本セットから脱落した。雑誌のThe DuelistでR&Dが《Berserk》の落ちた理由について「Doublingという効果が強力過ぎるため」と回答していた(念のため。これは私がR&Dに入るずっと前の話だ)。
これを見たとき、私は固く誓った。私はこれからウィザーズ社に入社するべく粉骨砕身の努力をしてみせる。そして出世競争を勝ち上がり、このゲームに再び「Doubling(2倍)」を復活させる権限を持つだけの地位についてみせる。私はそれほどまでにこの「Doubling(2倍)」に惚れこんでいた。そうとも。マジックに「Doubling(2倍)」が復活するまで私が立ち止まることはない。
カード案を提出する権利を得た私は「Doubling(2倍)」を持つカードを復活させた。もちろん、最初そこには抵抗勢力が存在したが、私は一歩も引くつもりはなかった。その頃の私は、ついにセットのリーダーという地位を手に入れていたからだ。私こそがデザインを左右する番人だった。「Doubling(2倍)」カードたちは前線へと送られていった。(私がリード・デザイナーを務めたセットかどうかを判断したければ、そこに「Doubling(2倍)」なカードがあるかをチェックすればいい。ちなみにフィフスドーンには3枚あるよ!)
しかしそんな私が失念していたことが1つあった。
ルール・マネジャーの存在だ。
ルールは、ある種の値を「Doubling(2倍)」することを嫌った。例えば、クリーチャーのパワーだ。なぜそうなのかをここに書くことはできる。しかしそれをここに書いてしまうと、Mark Gottliebが口が酸っぱくなるほど「それは出来ない」と私に言い聞かせていることが「本当に出来ないのだ」ということを私が理解しているのがバレてしまう。
そんなことはごめんこうむる。私の「Doubling(2倍)」探求の旅はまだ終わっていないからだ(なので、どうしても知りたければ、質問コーナーにMark Gottlieb宛てのお便りを送ってくれ。私はそれに目を通さないことを約束するよ)。
そんなこんなで《倍増の季節/Doubling Season》だ。
ラヴニカの緑が持つ主要なテーマは「Growth/成長」だ。緑白のギルドであるセレニアにとって、緑とは1/1トークンを作り出すことだった。黒緑のギルドであるゴルガリにとって、緑とは単体のクリーチャーを+1/+1カウンターで成長させることだった。
なるほど、と私は考えた。
緑はトークンとカウンターを作るとな?
さて、どうやったら緑のこのテーマを活かせるだろうか。このとき、聖なる一条の光が空を覆う暗雲を貫いて私を照らし、賛美の歌が天高く空気を満たした。2つのものを「Doubling(2倍)」するカードを作ればいい。「Doubling(2倍)」を2倍にするんだ!
その幸せな気持ちは私を不安にした。
あまりに幸せだったからだ。
私が作り出したそれはあまりに美しかった。そういったものが破滅の運命を辿るに決まっていることは、アメコミを読みこんでいる私には自明のことだった。「救おうとした私の力は届かず、最大の敵によって大橋から投げ落とされた彼女の首は無残にも砕かれる」運命にあるのだ(註16)。間違いない。Mark Gottliebはその巧妙に隠されたアジトで巨大なモニターに映る私を哄笑しているのだ。
我々2人が、次に遭遇したときの会話はこんな感じだった。
私がこのカードから得た教訓、それは感情の赴くままに行動せよ、だ。もしそれが君のデザインセンスを刺激するなら、他のメンバーのそれも刺激するはずだ。偉大なるカードは、天高く光る星に手を伸ばすところから生まれる。そして《倍増の季節/Doubling Season》に対して何らかの反応が得られたということは、彼らの何かを刺激したということだ。
光糸の場/Lumithread Field - 未来予知
よくプレイヤーたちから、どこからアイデアを得ているんですか?、と聞かれる。私の回答は、そこら中から、だ。そもそも《光糸の場/Lumithread Field》は、私が自身に以下の制約を加えたところから始まる。「変異持ちのエンチャントを作れ」とね。
それについて少し考えを巡らしたところで気づいたのは、私が作らねばならないエンチャントとは、非変異した際にちょっとした驚きを生み出すものでなければならない、ということだ(はいはい、非変異じゃなくて「表向きにする」ね。出るとこ出てもいいよ)。
何らかのシンプルで静的な効果。キーワードは「シンプルな」だったので、私はこれをコモンにしたかった。なぜコモンか? なぜならクリーチャーでないパーマネントタイプで変異持ち
のサイクルを自分で作るとと決めていたからだ。
土地はアンコモンのサイクルが決定しており、変異持ちのアーティファクトはコモンにはふさわしくない気がした。アーティファクトは基本的にコモンには向かないのだ。よってコモンに入れられるのはエンチャントのみだ。
そして、紙とペンであれこれ考える時間は終わり、実際にカードを作る段階になった。
最初期のバージョンは以下の通りだ。
Swarm of Hell(註17)
2B
Enchantment
All creatures get -1/-0.
Morph B
今日の記事で紹介しているエンチャントたちは、その初期バージョンからすでに最終版のわずかな兆しを見せている。このカードも同様なのだが、少々分かりづらいかもしれない。一体全体、最終版にいたるまでに何があったのだろうか。そのためには全く違う場所に格納されているこのカードを見せる必要がある。
Helpful Wards(註18)
Enchantment
2W,(T): Target creature gets protection from the color of your choice
until the end of the turn.
このカードの効果は繰り返し使うには少々強すぎた。そこで私はタップ能力を持つエンチャントをあらためて作り直した。(このデザインは非常に未来的であると同時に私たちがかつて成し得たことのないものであると私は感じている。そして二度と成さないであろうとも)
最終的にはこんなカードになった。
そのとおり。白いカードを作ろうとしたデザインは最終的に黒いカードに終わったのだ。この黒いカードを私は気に入っていたが、1つ問題があった。黒のカードを作りすぎて白いカードが少なすぎたのだ。この問題を解決するべく、変異持ちのエンチャントは白に加える必要が生じた。
私は《地獄の大群/Swarm of Hell》をまったく逆のものにする作業に入った。「すべてのクリーチャーは-1/-0の修整を受ける」の逆とは何か? それは「すべてのクリーチャーは+0/+1の修整を受ける」だろう。さらに、のちほど私は「あなたがコントロールする」を加えた。その方がなんか《城壁/Castle》っぽく、より白にふさわしいように感じられたからだ。
このカードから得た教訓は、異なる地点に立つことで得られる利益の重要性だ。カードをある色から別の色へ移すことは、その色の観点からは見つけることのできなかった効用を発見してくれる役立ってくれることがしばしばある。
デザインの回答に悩んだ際には、ちょっと時間をとって今いる地点とは違う別の角度からそれを眺めてみることをおススメする。私の好きな本「A Whack on the Side of the Head」から1つ引用させて欲しい。"The creative explorer looks for history in a hardware store and fashion in an airport."(拙訳:クリエイティブな人は、歴史について探求するべくコンピュータショップを訪れ、ファッションについて探求するべく空港を訪れる。)。
エンチャントの未来
エンチャントのデザインの世界を巡る旅もこれで終わりだ。この「その2」が「その1」と同じくらい楽しんでもらえたなら幸いだ。(そうそう、先週から続々届いている「学校生活の中でマジックがこんな風に役に立った」話には楽しませてもらっているよ。これからもどんどん送ってくれ)
来週はデザインという箱の中を(それともパックの中?)を覗きに行こうと思っている。
それまで、平日が過ぎるのを楽しみに待っていてくれ。
終わりなき囁き/Endless Whispers - フィフスドーン
Endless Whispers / 終わりなき囁き (2)(黒)(黒)
エンチャント
各クリーチャーは「このクリーチャーが戦場から墓地に置かれたとき、対戦相手を1人対象とする。次の終了ステップの開始時に、そのプレイヤーはこのクリーチャー・カードを、その墓地から自分のコントロール下で戦場に戻す。」を持つ。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Endless+Whispers/
もし君がいつかウィザーズに仕事を得ることが出来たら、出社初日にぜひともやってみて欲しいことがある。まず、Multiverseへアクセスすること。これは私たちがマジックのために用いているデータベースだ。次に、どれかエキスパンションを選び、Dev Commentと呼ばれる製作者たちのコメントを読み始めるんだ(ちなみに「Dev Comment」の「Dev」はデベロッパーの略だが、実際にはデザインチームとデベロップメントチームの両方がここを使っている)。
マジックの制作プロセスに関するより豊かな洞察を君はここから得ることが出来るだろう(私とAaron Forsytheが機会のあるごとに君たちにここを覗き見させているのはそういうわけだ)。
なぜ私はここでMultiverseの話を持ち出したのか? なぜならこの記事を書くに当たってリサーチを行った際(そのとおり、驚くかもしれないが、私だってたまにはそういうことをしているのだ)、私はMultiverseの《終わりなき囁き/Endless Whispers》に関する箇所に目を通してみた。
その結果、なかなか面白い事実が判明した。このカードに関して話そうと思っていたこと、全てを押しのけてしまうほどに興味深い内容だった。さて、それについて話す前に説明しておくべきことがある。まずは、《終わりなき囁き/Endless Whispers》の最初期のバージョンを紹介しよう。
Death Chime(註9)
4
Artifact
Whenever a creature goes to a graveyard from play, any opponent of
that creature’s controller may pay 1 to put that creature from
the graveyard into play under their control.
(註9) 以下、非公式訳
死のチャイム/Death Chime (4)
アーティファクト
クリーチャーが戦場から墓地に置かれたとき、そのクリーチャーの
コントローラーのどの対戦相手も(1)を払うことでそのクリーチャーを
墓地から自分のコントロール下で戦場に戻してよい。
そのとおり。またしても「生まれたときにはアーティファクト」なカードだ。もっとも、このカードに関しては、生まれがミラディンブロックだったから、という言い訳が出来る。Multiverseでこのカードに関してつけられていたコメントは以下の通りだ。R&Dのメンバーをイニシャルから判断するのが苦手な人のために、どれが誰だか解説をつけておこう。
AF:アーロン・フォーサイス/Aaron Forsythe
今やR&Dのディレクターだが、フィフスドーンの頃はR&Dのメンバーですらなかった。当時の彼はまだ Magicthegathering.com を運営しており、その彼をフィフスドーンのデザインチームに入れたのは私とRandy Buehlerだった。その理由は、チームに引き込むことで実際にR&Dがどのように機能しているのかを肌で感じてもらい、それによって彼が公式サイトの「Behind the Scenes」の記事をより良いものに出来るのでは、と考えたためだ。少なくともその経験を元にした素晴らしい記事を書いてくれるはずだった(まさかかわりに素晴らしい職歴を加えることになるとは誰も予想できなかったよ)。もし君がAron Forsytheを知らないというのなら、公式サイトで金曜日に掲載される「Latest Development」のコラムをチェックしたまえ。
MR:私だ。
BS:ブライアン・シュナイダー/Brian Schneider
彼はのちにデベロッパーのトップになる。確か当時はただのシニア・デベロッパーの1人だったはずだ。
RB:ランディ・ビューラー/Randy Buehler
今ではデジタルゲーム部門の副責任者だ。あの頃は(今ではAaron Forsytheが担当している)R&Dのディレクターだった。フィフスドーンではデザインチームに加わっていた。
BT:ブライアン・ティンスマン/Brian Tinsman
デザイナーだ。フィフスドーンの当時、彼はデザインチームでもデベロップメントチームでもなかった。しかしR&Dのメンバーであれば誰でも好きにカードに関するコメントを残すことができたんだ。ちなみに彼はミラディンのデザインチームの一員でもある。
PB:ポール・バークレイ/Paul Barclay
確か当時の彼はルール・マネージャーだったはずだ。
TB:タイラー・ビールマン/Tyler Bielman
彼はミラディンのデザインチームのメンバーだった。
さあ、参加者について分かってもらえたところで、当時にダイブしてみよう。
AF 03月07日:
このカードは《Accursed Centaur》と問題を起こすかもしれない
MR 03月28日:
アーティファクトから黒のエンチャントに変更したらどうか
すでにレアのアーティファクトは多くあるが、黒のレアが足りない
BS 04月04日:
1回読んだだけじゃ何をするのか理解できない
面白そうではあるけど、ちょっと複雑すぎる
RB 04月11日:
個人的にはアーティファクトのほうがいいと思う
黒だと他のリアニメイトな効果の中に埋もれてしまいそうだ
MR 04月11日:
良いレアのアーティファクトが多すぎ、かつ黒のレアが足りないので移動
MR 04月14日:
環境に影響を与えるようなアーティファクトを増やしたいので、戻した
MR 04月15日:
多人数戦でもっとクリーチャー戦が盛んになって欲しい
AF 04月17日:
念のため。このカードにそんな効果はない
MR 04月21日:
念のため。テンプレートチームにそうなるよう伝えてくれ
BS 04月28日:
これは黒であるべきか?
AF 04月28日:
このルールテキストが成立することにびっくりだ
BF 05月02日:
イカレてるね
BS 05月05日:
その文言では解決にならない。
多人数戦に配慮し過ぎてその他のプレイヤーをがっかりさせるのは避けたい
現在ある以下の文言はカットすべきだ
「そのプレイヤーの各対戦相手は(1)を支払ってもよい。
もしちょうど1人のプレイヤーがそうした場合、
そのクリーチャーをそのプレイヤーのコントロール下で場に出す。
もし2人以上のプレイヤーがそうした場合、この処理を繰り返す」
MR 05月06日:
このカードの効果にはコストが必要
さもなければキメラなどのカードがインスタント速度で行ったり来たりして
無限ドローにつながるおそれがある
PB 05月07日:
イライラは減ったし、伝説のクリーチャーの問題もなくなったけど
相変わらず読みづらい
BS 05月07日:
このカードが秘めてる政略的な要素は好きなんだが……
本当に私たちが望むとおりの動きをしてくれるんだろうか
TB 06月03日:
複雑すぎるし、出来ればアーティファクトにしたい
黒のエンチャントでも問題はないが、このブロックに関しては
こういう効果もアーティファクトに割り振るべきでは?
AF 06月04日:
面白いね、何かが変わるたびに同じカードで同じ議論が再燃だ
BS 06月04日:
問題なく機能するテンプレートがいまだに得られてない
世に出るべきでないカードとして終わる可能性がある
もっとシンプルなカードがふさわしいのかもしれない
MR 06月05日:
これはアーティファクトだ
これはエンチャントだ
アーティファクトだ
エンチャントだ
頭がぐるぐるしてきた
個人的にこの変遷の興味深い点は、特定のカードには複数の問題点が常につきまとうという現象を見事に再現していることだ。あるグループはカードの色について議論し、別のグループはその機能性を憂慮し、さらに別のグループはそれが多人数戦でどう働くかを気にしている。
このカードから得た教訓は次の通りだ。多くの視点から眺めるべし。全てのメンバーはそれぞれ固有の視点からそのカードを評価し、その結果、1人では決して得られない洞察を加えてくれる。カードのデザインとはグループワークだ。グループをそこから遠ざけてはいけないんだ。
春の鼓動/Heartbeat of Spring - 神河物語
Heartbeat of Spring / 春の鼓動 (2)(緑)
エンチャント
プレイヤーがマナを引き出す目的で土地をタップするたび、そのプレイヤーは自分のマナ・プールにその土地が生み出した好きなタイプのマナ1点を加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Heartbeat+of+Spring/
これは緑の《ほとばしる魔力/Mana Flare》だ。
これをデザインするのがそんなに大変だったのか、って? 大変じゃなかったよ。実のところ、これのために「デザインする」という工程があったのかどうかすら定かではない。おそらく、リチャードはアルファ版に対して非常に深い敬意を抱いている、ということくらいしか分からない。
そのとおり。ここで話したいのはどのようにして生まれたかではなく、それが実際にセットに収録されるまでの道のりについてだ。私たちは第5版のデベロップメントの最中まで遡る必要がある。
デザインチームは以下の3人だった。
Skaff Elias:
プロツアーの発案者でありその他もろもろの発案者でありR&Dの生ける伝説だ。
冗談だと思うなら、検索エンジンに彼の名前を放り込んでみてくれ。
検索結果に出てくるであろう私の記事を1つでもいいから読んでくれれば分かる。
Robert Gutschera:
R&Dに10年以上在籍している一握りのベテランたちの1人、それがロバートだ。
マジックにも軽く手を出しているが、同時に他の多くのゲームにも関わっている
Mark Rosewater:
私だ。
ああ、そのとおり。基本セットに《ネクロポーテンス/Necropotence》を持ちこんだのはこの3人だ。何にせよ、第5版を構築している最中、デザインの必要ありと思われるカードの一覧を私たちは作った。このリストはいくつにもカテゴリ分けされていた。
あるカテゴリは、良いカードではあるもののカードパワーが高すぎるか低すぎるため適正なマナコストでリメイクする必要があるカードたちが集められていた。あるカテゴリは、よりシンプルな効果であるべきなのに一度もそのようなリメイクがされなかったカードたちが集められていた。あるカテゴリは、単に今まで一度も作られたことのないカードたちが集められていた。
そして最後に、単に違う色で作られるべきだったカードたちを集めたカテゴリがあった。そのリストの中頃に「green Mana Flare」という3つの単語が並んでいたわけだ。
このリストが作成されたのが1996年。神河物語が発売されたのが2004年。8年後だ。
何があったのだろうか?
単純に私たちがこのリストの存在を忘れてしまい、カビ臭い引き出しから何年も後になって発掘したのだろうか? 違う(なぜならそんなことは実際には決して起こり得ないと聞いているからだ)(註10)。
(註10) カビ臭い引き出しから何年も後になって発掘した
アイスエイジ・ブロックの2つ目のエキスパンションであるコールドスナップは、コアセットであるアイスエイジ(1995年)と1つ目のエキスパンションであるアライアンス(1996年)に遅れること10年、2006年に発売された。
なぜこんなに間が開いたのかについては当初「オフィスの引っ越しの最中に古い段ボール開けたら、誰も存在すら知らなかったアイスエイジのエキスパンションセットが見つかったよ!」というとんでもない説明がなされていたが、これは冗談だった。信じた人もいたんじゃないかな。いたと言ってくれ。1人じゃさびしい。
事実はまったくの逆だ。私は持てる力の限りを尽くして、このカードが実際に印刷されるよう頑張ったのだ。私がデザイン・リーダーを務めたありとあらゆるセットにこのカードをねじ込み、私がカードを作る機会のあったありとあらゆるセットでこのカードを提出した(つまりアライアンス以降の全てのセットでそれを行ったということだ)。
何がこのカードが世に出るのを邪魔したのか? 何か、だ。毎回、「何か」がやって来てデベロップメント・チームはこのカードをふるい落とすか変更する必要に迫られた。いくつか例を挙げてみようか。
テンペスト:
デベロップメント・チームは《大地の知識/Earthcraft》(註11)が似たような効果を持っていると感じた。両方とも土地に通常以上のマナを出させてくれる。彼らは《大地の知識/Earthcraft》のほうが「green Mana Flare」より面白いと感じた。
ウルザズサーガ:
デベロップメント・チームは、もう少し常識にとらわれない感じにしたい、と感じたためこのカードを《花盛りの春/Vernal Bloom》(註12)にしてしまった。
インベイジョン:
デベロップメント・チームは《過ぎたる実り/Overabundance》(註13)が気に入っており、これと「green Mana Flare」は同じセットには存在できないと判断した。
ミラディン:
デベロップメント・チームは《超次元レンズ/Extraplanar Lens》(註14)が気に入っており、これと「green Mana Flare」は合わないと感じた。そして《超次元レンズ/Extraplanar Lens》は 刻印/Imprint というブロックの目玉キーワードを持っており、抜くことは出来なかった。
(註11) Earthcraft / 大地の知識 (1)(緑)
エンチャント
あなたがコントロールするアンタップ状態のクリーチャーを1体タップする:基本土地1つを対象とし、それをアンタップする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Earthcraft/
(註12) Vernal Bloom / 花盛りの春 (3)(緑)
エンチャント
森(Forest)がマナを引き出す目的でタップされるたび、それのコントローラーは自分のマナ・プールに(緑)を加える(そのマナは、その土地が生み出すマナに追加で加えられる)。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Vernal+Bloom/
(註13) Overabundance / 過ぎたる実り (1)(赤)(緑)
エンチャント
プレイヤーがマナを引き出す目的で土地をタップするたび、そのプレイヤーは自分のマナ・プールにその土地が生み出すことのできる好きなタイプのマナ1点を加え、過ぎたる実りはそのプレイヤーに1点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Overabundance/
(註14) Extraplanar Lens / 超次元レンズ (3)
アーティファクト
刻印 ― 超次元レンズが戦場に出たとき、あなたがコントロールする土地1つを対象とする。あなたはそれを追放してもよい。
その追放されているカードと同じ名前の土地がマナを引き出す目的でタップされるたび、それのコントローラーのマナ・プールに、その土地から引き出された好きなタイプのマナ1点を加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Extraplanar+Lens/
それ以外のときもこのカードは似たような何かに押しのけられてきたわけだ。こういう扱いを受けたカードは今までに何枚も見て来た。では一体全体どうやってこのカードを神河物語に私がねじこんだのだろうか?
私はやってない。Brian Schneiderがねじ込んだ。
なんでかって?
なぜなら彼はそれはどのセットにだって入るべきカードであり、これが収録されないのであればデベロップメント・チームなんて必要ないと思っていたからだ。それを知ったとき、私の第一声は「ああ、じゃあ、やっと収録されるのか」。
私がこのカードから得た教訓はシンプルなものだ。
ネバーギブアップ、さ。
デザインとはその大半がひらめきだ。しかしそこには必ず努力も含まれている。セットにカードを加えたいと考えている未来のデザイナーたちへ伝えたいアドバイスは「必要なものは2つ。デザインの質と忍耐だ」。これら2つがあるのなら、どんなカードであってもいつかは目的地へ辿りつける。
この話を終えるに当たってちょっとした余談を付け加えておきたい。《春の鼓動/Heartbeat of Spring》は第10版に収録されかけたが、R&Dは当時の環境はこのカードと距離を置くべきだと考えたため、脱落してしまった。
これが何を意味するのか?
これが意味するところは、これがいつか帰って来る、ということだ。いつ帰って来るか、だって? そんなこと知らないよ。私に分かっていることは、これから基本セットの選定を行うたびに私はこのカードを候補に挙げる、ってことさ。これがスタメン入りするまでね。10年と少しの年月の中で私が学んだことがあるとすれば、それは忍耐さ。
倍増の季節/Doubling Season - ラヴニカ
Doubling Season / 倍増の季節 (4)(緑)
エンチャント
いずれかの効果があなたのコントロール下で1個以上のトークンを出す場合、代わりにそれはその2倍の数を戦場に出す。
いずれかの効果があなたがコントロールするパーマネントの上に1個以上のカウンターを置く場合、代わりにそれはその2倍の数をそのパーマネントの上に置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Doubling+Season/
今まで私のコラムの中で幾度となく言及してきたことの1つに、いかにMark Gottliebと私が「ヒーロー」と「悪党」の役割をそれぞれ演じてきたか、ということがある(そのとおりだよ。私が「ヒーロー」だ。なんで誰も信じてくれないんだ!)。
何にせよ、良い「ヒーローと悪党」の対立関係とは特定のトピックに関してその2人が異なる主義主張を持ち、それを理由とした継続的な衝突を通して作品の根底に流れるテーマをかすかに匂わせることにある。Mark Gottliebと私にもそのようなトピックがある。「Doubling(2倍)」だ。
あれは、遠い昔のことだ。当時、私が持ち歩いていたデッキは緑青のウィニーデッキだった。マジックにはヴィンテージしか存在しなかった頃だ。構築フォーマットが1つしか存在しなかったんだ。所持するカードであればなんでも使えた(え? 分かった、分かった。確かに何枚かの制限カードと、数枚の禁止カードもあった)。
私のデッキは、0/1や1/1のおチビさんたちを2ターン目か3ターン目に +20/+0 してあげることが全てだった。例えば、1ターン目に《極楽鳥/Birds of Paradise》を出したとする。対戦相手は、なんとお粗末な1ターン目だろう、と嘲笑し、当然その0/1の飛行クリーチャーを放っておいてくれる。
2ターン目は、《森/Forest》+《Mox Sapphire》+《Black Lotus》+《不安定性突然変異/Unstable Mutation》+《巨大化/Giant Growth》+《Berserk》+《Regrowth》+《Berserk》で、パワー24の攻撃だ(引きが良すぎる? 確かにそうかもしれないが、正直自分でも驚くほどの回数の2ターンキルに今まで成功してきたよ)。(註15)
(註15) ~で、パワー24の攻撃
以下のカードを組み合わせると、ひ弱な 0/1 も、24/7 のマッチョになる。ただし、次のターンのアップキープに死ぬ。理由を知りたい人は以下の簡略版ではなく《不安定性突然変異/Unstable Mutation》のテキスト全文を読むこと。
《Mox Sapphire》
:タップすると青1マナでる0マナのArtifact
《Black Lotus》
:生け贄に捧げると好きな色が3マナ出る0マナのArtifact
《Unstable Mutation》
:クリーチャーを+3/+3する青のAura。コストは(青)
《Giant Growth》
:クリーチャーを+3/+3する緑のInstant。コストは(緑)
《Berserk》
:クリーチャーのパワーを2倍にする緑のInstant。コストは(緑)
《Regrowth》
:墓地のカードを1枚手札に戻せる緑のSorcery。コストは(1)(緑)
これが「Doubling(2倍)」と何の関係があるのかって? おいおい、話を聞いてなかったのか! 私の2ターン目には《Berserk》が2回出て来ただろう?
6点のダメージを24点に変える方法なーんだ? 坊や、それは「Doubling(2倍)」よ。
リバイスドが出た際、この《Berserk》は基本セットから脱落した。雑誌のThe DuelistでR&Dが《Berserk》の落ちた理由について「Doublingという効果が強力過ぎるため」と回答していた(念のため。これは私がR&Dに入るずっと前の話だ)。
これを見たとき、私は固く誓った。私はこれからウィザーズ社に入社するべく粉骨砕身の努力をしてみせる。そして出世競争を勝ち上がり、このゲームに再び「Doubling(2倍)」を復活させる権限を持つだけの地位についてみせる。私はそれほどまでにこの「Doubling(2倍)」に惚れこんでいた。そうとも。マジックに「Doubling(2倍)」が復活するまで私が立ち止まることはない。
カード案を提出する権利を得た私は「Doubling(2倍)」を持つカードを復活させた。もちろん、最初そこには抵抗勢力が存在したが、私は一歩も引くつもりはなかった。その頃の私は、ついにセットのリーダーという地位を手に入れていたからだ。私こそがデザインを左右する番人だった。「Doubling(2倍)」カードたちは前線へと送られていった。(私がリード・デザイナーを務めたセットかどうかを判断したければ、そこに「Doubling(2倍)」なカードがあるかをチェックすればいい。ちなみにフィフスドーンには3枚あるよ!)
しかしそんな私が失念していたことが1つあった。
ルール・マネジャーの存在だ。
ルールは、ある種の値を「Doubling(2倍)」することを嫌った。例えば、クリーチャーのパワーだ。なぜそうなのかをここに書くことはできる。しかしそれをここに書いてしまうと、Mark Gottliebが口が酸っぱくなるほど「それは出来ない」と私に言い聞かせていることが「本当に出来ないのだ」ということを私が理解しているのがバレてしまう。
そんなことはごめんこうむる。私の「Doubling(2倍)」探求の旅はまだ終わっていないからだ(なので、どうしても知りたければ、質問コーナーにMark Gottlieb宛てのお便りを送ってくれ。私はそれに目を通さないことを約束するよ)。
そんなこんなで《倍増の季節/Doubling Season》だ。
ラヴニカの緑が持つ主要なテーマは「Growth/成長」だ。緑白のギルドであるセレニアにとって、緑とは1/1トークンを作り出すことだった。黒緑のギルドであるゴルガリにとって、緑とは単体のクリーチャーを+1/+1カウンターで成長させることだった。
なるほど、と私は考えた。
緑はトークンとカウンターを作るとな?
さて、どうやったら緑のこのテーマを活かせるだろうか。このとき、聖なる一条の光が空を覆う暗雲を貫いて私を照らし、賛美の歌が天高く空気を満たした。2つのものを「Doubling(2倍)」するカードを作ればいい。「Doubling(2倍)」を2倍にするんだ!
その幸せな気持ちは私を不安にした。
あまりに幸せだったからだ。
私が作り出したそれはあまりに美しかった。そういったものが破滅の運命を辿るに決まっていることは、アメコミを読みこんでいる私には自明のことだった。「救おうとした私の力は届かず、最大の敵によって大橋から投げ落とされた彼女の首は無残にも砕かれる」運命にあるのだ(註16)。間違いない。Mark Gottliebはその巧妙に隠されたアジトで巨大なモニターに映る私を哄笑しているのだ。
(註16) 運命
以下、原文。「Webbing」とあるので、スパイダーマンの1シーンが元ネタのはず。確か映画の1作目にそんな感じのシーンがあった気がする。漫画版は知らない。
"Tossed off a bridge by my greatest enemy and broke her neck
when I tried to save her with my webbing" doomed.
我々2人が、次に遭遇したときの会話はこんな感じだった。
Mark Rosewater(以下、MR):やあ、Gottlieb。
Mark Gottlieb(以下、GB):ああ、Rosewaterじゃないか!
MR:更新されたラブニカのファイルには目を通したかい?
GB:ああ。
MR:何か気になることはあった?
GB:そりゃ、まあ色々とね。何かあったの?
MR:……茶番はよそう。私がどのカードの話をしているのか分かってるはずだ。
MG:ふむ、君は「Doubling(2倍)」を2倍するカードを作れると思ってるわけだね。
MR:作ったんだよ。大丈夫かな?
MG:もちろんさ。何の問題もないよ。
MR:つまり、このまま印刷しても問題なしってことだね?
MG:そうだね。「Double」って単語は「Twice」に置き換えたけど、後はそのままさ。
MR:地獄に堕ちろ、Gottlieb!
私がこのカードから得た教訓、それは感情の赴くままに行動せよ、だ。もしそれが君のデザインセンスを刺激するなら、他のメンバーのそれも刺激するはずだ。偉大なるカードは、天高く光る星に手を伸ばすところから生まれる。そして《倍増の季節/Doubling Season》に対して何らかの反応が得られたということは、彼らの何かを刺激したということだ。
光糸の場/Lumithread Field - 未来予知
Lumithread Field / 光糸の場 (1)(白)
エンチャント
あなたがコントロールするクリーチャーは+0/+1の修整を受ける。
変異(1)(白)(あなたはこのカードを、(3)を支払うことで2/2クリーチャーとして裏向きに唱えてもよい。その変異コストを支払うことで、それをいつでも表向きにしてよい。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lumithread+Field/
よくプレイヤーたちから、どこからアイデアを得ているんですか?、と聞かれる。私の回答は、そこら中から、だ。そもそも《光糸の場/Lumithread Field》は、私が自身に以下の制約を加えたところから始まる。「変異持ちのエンチャントを作れ」とね。
それについて少し考えを巡らしたところで気づいたのは、私が作らねばならないエンチャントとは、非変異した際にちょっとした驚きを生み出すものでなければならない、ということだ(はいはい、非変異じゃなくて「表向きにする」ね。出るとこ出てもいいよ)。
何らかのシンプルで静的な効果。キーワードは「シンプルな」だったので、私はこれをコモンにしたかった。なぜコモンか? なぜならクリーチャーでないパーマネントタイプで変異持ち
のサイクルを自分で作るとと決めていたからだ。
土地はアンコモンのサイクルが決定しており、変異持ちのアーティファクトはコモンにはふさわしくない気がした。アーティファクトは基本的にコモンには向かないのだ。よってコモンに入れられるのはエンチャントのみだ。
そして、紙とペンであれこれ考える時間は終わり、実際にカードを作る段階になった。
最初期のバージョンは以下の通りだ。
Swarm of Hell(註17)
2B
Enchantment
All creatures get -1/-0.
Morph B
(註17) 以下、非公式訳。
地獄の大群/Swarm of Hell
エンチャント
すべてのクリーチャーは-1/-0の修整を受ける。
変異(黒)
今日の記事で紹介しているエンチャントたちは、その初期バージョンからすでに最終版のわずかな兆しを見せている。このカードも同様なのだが、少々分かりづらいかもしれない。一体全体、最終版にいたるまでに何があったのだろうか。そのためには全く違う場所に格納されているこのカードを見せる必要がある。
Helpful Wards(註18)
Enchantment
2W,(T): Target creature gets protection from the color of your choice
until the end of the turn.
(註18) 以下、非公式訳。
有益なる護法印/Helpful Wards
エンチャント
2W, (T):
クリーチャー1体を対象とする。あなたは色を1色選ぶ。それはターン終了時までプロテクション(その選ばれた色)を得る。
このカードの効果は繰り返し使うには少々強すぎた。そこで私はタップ能力を持つエンチャントをあらためて作り直した。(このデザインは非常に未来的であると同時に私たちがかつて成し得たことのないものであると私は感じている。そして二度と成さないであろうとも)
最終的にはこんなカードになった。
Witch’s Mist / 魔女の霧 (2)(黒)
エンチャント
(2)(黒),(T):このターンにダメージを与えられているクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Witch%27s+Mist/
そのとおり。白いカードを作ろうとしたデザインは最終的に黒いカードに終わったのだ。この黒いカードを私は気に入っていたが、1つ問題があった。黒のカードを作りすぎて白いカードが少なすぎたのだ。この問題を解決するべく、変異持ちのエンチャントは白に加える必要が生じた。
私は《地獄の大群/Swarm of Hell》をまったく逆のものにする作業に入った。「すべてのクリーチャーは-1/-0の修整を受ける」の逆とは何か? それは「すべてのクリーチャーは+0/+1の修整を受ける」だろう。さらに、のちほど私は「あなたがコントロールする」を加えた。その方がなんか《城壁/Castle》っぽく、より白にふさわしいように感じられたからだ。
このカードから得た教訓は、異なる地点に立つことで得られる利益の重要性だ。カードをある色から別の色へ移すことは、その色の観点からは見つけることのできなかった効用を発見してくれる役立ってくれることがしばしばある。
デザインの回答に悩んだ際には、ちょっと時間をとって今いる地点とは違う別の角度からそれを眺めてみることをおススメする。私の好きな本「A Whack on the Side of the Head」から1つ引用させて欲しい。"The creative explorer looks for history in a hardware store and fashion in an airport."(拙訳:クリエイティブな人は、歴史について探求するべくコンピュータショップを訪れ、ファッションについて探求するべく空港を訪れる。)。
エンチャントの未来
エンチャントのデザインの世界を巡る旅もこれで終わりだ。この「その2」が「その1」と同じくらい楽しんでもらえたなら幸いだ。(そうそう、先週から続々届いている「学校生活の中でマジックがこんな風に役に立った」話には楽しませてもらっているよ。これからもどんどん送ってくれ)
来週はデザインという箱の中を(それともパックの中?)を覗きに行こうと思っている。
それまで、平日が過ぎるのを楽しみに待っていてくれ。
【翻訳】より良いエンチャントのために(その2)/Enchantment For Better Things, Part Two【Daily MTG】(前編)
Mark Rosewater
2007年7月2日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr286
エンチャント週間その2へようこそ! ……おや? エンチャント週間の2週目に突入したのは私だけのようだ。たった1人のテーマ週間といったところか。考えてみたら、テーマ週間と言うよりテーマ日と言うべきかもしれない。
私が何の話をしているのかさっぱり分からない、という人は、先週のコラムに目を通して欲しい(またの名を「エンチャント週間その1」(註1)だ)。先週のコラムで私は、私がデザインしたエンチャントが1枚でも収録されている10個のブロックそれぞれから、1つずつエンチャントを選び、それについて話すということを始めた。先週は、最初の5個について話し終えた。今週は6個目から10個目について話そうと思う。
ああ、それと11個目についても。
いや、どうやら私は、数字よりも文字を扱うのが得意なようだ。そう、私はエンチャントを11個のブロックに対して作っていたらしい(まあ、まだ君たちの目に触れていないものを数えてもよいなら、11個よりも多いことになるが)。もしかしたら神河ブロックを無意識のうちに除外してしまっていたのだろうか?
いやいや、もしブロックを1つ除外してよいのであれば迷わずメルカディアンマスクスブロックを除外しただろうから、それはない。何にせよ、私は大したデザイン能力を持ってはいるが、その反面、どうやら2桁以上の数字を数えるのが苦手らしい。これが何を意味するかというと、今日のコラムでは1枚追加で話を聞けるということだ(11枚目のカードのためだけに3週目へ突入するのはいいアイデアとは思えないからね)。
さて言うべきは言った。ショーを始めよう。
総体の知識/Holistic Wisdom - オデッセイ
創作活動の現場において興味深い点の1つに、自身の作品の中でもっとも誇るべき作品がどれなのかに気づくのに、ある程度の時間がかかることがしばしばある、という点が挙げられる。良いデザインが出来たと作った直後に分かることもある。他方で、良さが芽吹くまでに時間がかかるデザインもある。私にとって《総体の知識/Holistic Wisdom》はそんなカードの1つだ。
セットのデザインをする際には、基本的に大量のカードについてブレインストーミングを行う時間をとることにしている。セットのテーマについてまず考え、あとは考えの赴くままに任せることにしている。思索を終えたあとにはいつも手元に「(セット名) のカードアイデア、(No. N)」という名のファイルが残される。(N番目)の数字は、最後にブレインストーミングを行った際に用いた番号に1を足したものだ。
以下のカード、《Exchanger》のアイデアは「Argonのカードアイデア、No.2」のファイル作成中に生まれたものだ(オデッセイはそのデザインの最中、「Argon」というコードネームを与えられていた。それに続くセットのコードネームは「Boron」と「Carbon」だった。様々なコードネームがどのように生まれるのかについて知りたければ、私のコラム「Codename of the Game」(註2)を読んでくれ)。
これがその《Exchanger》だ。
Exchanger(註3)
2
Artifact
3, T, Remove a card in your hand from the game: Return target card of
the same card type as the removed card from your graveyard to your hand.
その通り。《総体の知識/Holistic Wisdom》は最初アーティファクトだったのだ。
なんでかって? よく覚えていないが、おそらくこういうことだろう。これは多分私の好きな2枚の古いカードを2枚かけあわせた結果なのだと思う。1つがレジェンドの《回想/Recall》、もう1つがダークの《オームの頭蓋骨/Skull of Orm》だ。
私は《回想/Recall》が墓地のカードを手札と交換してくれるのを楽しんでいたし、カードを繰り返し使えるように《オームの頭蓋骨/Skull of Orm》を中心にしたデッキを作ることも楽しかった。推測するにオデッセイのテーマである墓地利用に焦点を合わせたとき、心がふらりと昔のお気に入りであった2枚の墓地利用カードへと飛んでしまったのだろう。
カードタイプを共有するカードしか交換できないというのは、《回想/Recall》の「交換する」というメカニズムを残しつつもそれを少し制限することで繰り返し利用可能という危険性を弱めようする私なりの案だったのだろう。またその制限は今まであまり使ったことの無い方法だったので、試しに使ってみるのも面白いんじゃないだろうか、と私たちは考えた。
そう決まったところで次の疑問がわいてくるのではないだろうか。どうしてこのカードは「緑」になったんだ?、という疑問だ。うーん。アーティファクトをデザインしている最中、たまに後頭部を軽くつついてくる何かがあるんだ。その何かが話しかけてきたと仮定しよう。こんな会話になりはずだ。
実際に必要になった。以下のカードが私たちによって亡き者にされたためだ。
Twilight’s Regrowth(註4)
2GG
Sorcery
Salvage 5GG #(If this card is in your graveyard, you may play it as though
it were in your hand. If you do, its mana cost is 5GG, and remove it from
the game as part of the spell’s effect.)#
Return target card in your graveyard to your hand.
Remove from the game all other cards in your graveyard of the same card type.
ちなみに上記の Salvage というのは、デザインフェイズにおけるプレイテスト期間の flashback の仮名称だ。このカードはちょっとした混乱の元で、デザイン・チームはこれのスロットを埋める代替案を探していた。
なるほど。「レア」で「緑」で「再利用の呪文」の代わりが欲しいとな?
出番だぞ、《Exchanger》!
そのようなわけで、《総体の知識/Holistic Wisdom》は緑に居場所を見つけたというわけさ。マナコストと起動コストに少し手を加えたほかは、オデッセイのデベロップメントチームもこのカードをそのままにしておいてくれた。
このカードから得たデザイン上の教訓、それはデザインが向かおうとしている方向へ行かせてあげることが大事だということだ。私が最初このカードをアーティファクトとしてデザインしたからといって、それがあるべき姿だとは限らない。
良いデザインとは、カードが息づき成長するのを見守り、自らのあるべき姿へ辿り着けるようにしてあげることだ(皮肉にもこれは実際の子供たちに対する姿勢に対しても同じことが言える)。脚本の授業で教師が教えてくれたことの1つに以下の言葉がある。「君のアーティストとしての仕事は、興味深いキャラクターを作ること、そして彼らが言いたいことを彼らの側から言わせることだ」
稲妻の裂け目/Lightning Rift - オンスロート
物事が順調に進んでいれば、デザインチームはそのセットで新たに用いられる全てのメカニズムを記したファイルをデベロップメントチームへ手渡すことになる。しかし多くのセットではそうはいかなかった。私はデベロップメント側でいくつものカードが殺されてきたことをしばしば書いてきた。メカニズムについても同じことだ。
デベロップメント側でメカニズムが亡き者にされてしまう理由は様々だ。パワーレベル、おかしなシナジー、ルール問題、テンプレート問題、単純にそのメカニズムがつまらないから、などなどだ。いずれにせよ、当時私たちはオンスロートの開発にどっぷりと浸かっており、かつ私たちは何らかのメカニズムを探していた。幸いなことにすでに私たちの手には変異のメカニズムがあったので、各セットに1つは必要となる革新的なメカニズムについては問題はなかった。
私たちに本当に必要だったのは、汎用性の高い基本的なメカニズムだった。プレイしやすく、リミテッドを円滑に回し、現在あるいかなるカードとも上手く合わせられるような柔軟性の高いものだ。「分かるだろ、サイクリング(註5)みたいなものが必要なんだ」と私は言った。
そう、私たちに必要なメカニズムはサイクリングのようなものだった。私たちは何週間ものあいだ、アイデアをぶつけ合ったり意見を出し合ったりした。ある日、私が口に出した言葉がその作業に終わりを告げた。
「サイクリングみたいなものってサイクリングじゃないか?」
それに対する回答は以下のとおりだ。
「サイクリングはサイクリング「みたいな」ものじゃない、それはサイクリングそのものだ! 同じものを単にもう一度使うなんて出来るわけがない」
なんでダメなの?、と重ねて尋ねる。
「キーワードメカニズムをただ再利用するなんてしちゃダメだろう」
なんで?、とまた尋ねる。
「各セットには革新的な何かが必要で、新たなメカニズムでそれがもたらされるからだ」
私は、サイクリングでその革新的な何かを作り出せばいいじゃないか、と返した。
「そうだね。やってみたら?」
だから私はやったのだ。
私は、それは出来ないと言われたからという理由だけでそれをやりたくなるタイプの人間の1人だ(もしかしたら私の中の特に「ジョニーな部分」がそうさせるのかもしれない)。どちらにせよ、当時のサイクリングの扱われ方は少々保守的に過ぎた。革新的な変化を受け入れる余地は十分にあるはずだ。まず手をつけるべき場所ははっきりしていた。サイクリング・コストだ。それは十分に練られていなかった(註6)。
次に私は「サイクリングしたとき~」という効果を持つカードを作ってみた。よーし、エンジンが温まってきたぞ。この試行錯誤の最中に私が作ったカードの1つが以下のカードだ。
Bolt of Lightning(註7)
1R
Sorcery
CARDNAME deals 3 damage to target creature or player.
Cycling R (You may pay R and discard this card from your hand to draw a card.
Play this ability as an instant.)
When CARDNAME cycles, CARDNAME deals 1 damage to target creature or player.
私はこのカードが気に入った。このカードは私に興味深い選択を迫る。(1)(赤)で3点のダメージか、(赤)で1点のダメージとキャントリップか。そこで私はさらに貪欲になった。ダメージとキャントリップを両方得る手段はないか? ただサイクリングするだけで利益を得ることはできないか? この考えは、逆に他のカードをサイクリングしたときに効果が誘発するカードを私に思いつかせた。以下の通りだ。
Standing Shocker(註8)
1RR
Enchantment
Whenever a card is cycled, you may have CARDNAME deal 1 damage to
target creature or player.
このカードと一緒に、「サイクリングしたとき」の効果を持つカードと(2)以外のサイクリング・コストを持つカードを携えて私はR&Dへ向かった。そしてこれらのサイクリングに関するカードをセットに入れるよう売込みをかけた。
《立ちつくすショッカー/Standing Shocker》は明らかに良いカードだったが、それでもなお手直しが入った。マナコストが減少し、ダメージが増やされた。それからこのカードをレアにしようという話があがったが、私や他のR&Dメンバーは、このカードはリミテッドを面白くしてくれるはずだからアンコモンがふさわしい、と主張した。
最後の変更として、その能力の起動コストにマナが追加された。その頃には、サイクリングがオンスロートブロックの大きな位置を占めることがデベロップメント・チームにも分かっていた。そのため、このカードが手におえなくなる可能性が常に見え隠れしており、起動にマナコストを必要とすることでカードの危険性を抑えたのだ(不思議なことに、誰も同じ調整が《霊体の地滑り/Astral Slide》にも必要だとは考えなかった)。
このカードから得た教訓は、すでに用いられたアイデアを再分析することの価値だ。多くのカードやメカニズムは、そのうちにデザインの可能性が脈々と流れている。しばしばデザイナーは新しくて異なるものに惹かれてしまう。私はこれを「下手なフライドチキンの食べ方」と呼んでいる。
たくさんのフライドチキンを食べてる人を見たことがあるだろう。彼らは各ピースから数口食べただけで次のピースに移ってしまう。次のチキンがたくさんあるせいで、もう少しの労力を使ってさらなる数口を得る努力を怠ってしまうんだ。
デザインにも同じことが言える。アイデアに見切りをつけることは簡単だ。本当の挑戦とは、最初の数口を食べたあとのフライドチキンにまだ肉が残されて見つけることだ。その部分を得るにはさらなる労力を要するかもしれない。しかしそこにはそれだけの旨みがあるのだ。
Mark Rosewater
2007年7月2日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr286
エンチャント週間その2へようこそ! ……おや? エンチャント週間の2週目に突入したのは私だけのようだ。たった1人のテーマ週間といったところか。考えてみたら、テーマ週間と言うよりテーマ日と言うべきかもしれない。
私が何の話をしているのかさっぱり分からない、という人は、先週のコラムに目を通して欲しい(またの名を「エンチャント週間その1」(註1)だ)。先週のコラムで私は、私がデザインしたエンチャントが1枚でも収録されている10個のブロックそれぞれから、1つずつエンチャントを選び、それについて話すということを始めた。先週は、最初の5個について話し終えた。今週は6個目から10個目について話そうと思う。
(註1) エンチャント週間その1
原文では以下のURLへリンクが張られている。内容は記事にあるとおり。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr285
以下、そのコラムの拙訳。
http://regiant.diarynote.jp/201106220720372950/
ああ、それと11個目についても。
いや、どうやら私は、数字よりも文字を扱うのが得意なようだ。そう、私はエンチャントを11個のブロックに対して作っていたらしい(まあ、まだ君たちの目に触れていないものを数えてもよいなら、11個よりも多いことになるが)。もしかしたら神河ブロックを無意識のうちに除外してしまっていたのだろうか?
いやいや、もしブロックを1つ除外してよいのであれば迷わずメルカディアンマスクスブロックを除外しただろうから、それはない。何にせよ、私は大したデザイン能力を持ってはいるが、その反面、どうやら2桁以上の数字を数えるのが苦手らしい。これが何を意味するかというと、今日のコラムでは1枚追加で話を聞けるということだ(11枚目のカードのためだけに3週目へ突入するのはいいアイデアとは思えないからね)。
さて言うべきは言った。ショーを始めよう。
総体の知識/Holistic Wisdom - オデッセイ
Holistic Wisdom / 総体の知識 (1)(緑)(緑)
エンチャント
(2),あなたの手札からカードを1枚、追放する:あなたの墓地にあるカード1枚を対象とする。それがこれにより追放されたカードと共通のカード・タイプを持つ場合、そのカードをあなたの手札に戻す。(アーティファクト、クリーチャー、エンチャント、インスタント、土地、プレインズウォーカー、ソーサリー、部族がカード・タイプである。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Holistic+Wisdom/
創作活動の現場において興味深い点の1つに、自身の作品の中でもっとも誇るべき作品がどれなのかに気づくのに、ある程度の時間がかかることがしばしばある、という点が挙げられる。良いデザインが出来たと作った直後に分かることもある。他方で、良さが芽吹くまでに時間がかかるデザインもある。私にとって《総体の知識/Holistic Wisdom》はそんなカードの1つだ。
セットのデザインをする際には、基本的に大量のカードについてブレインストーミングを行う時間をとることにしている。セットのテーマについてまず考え、あとは考えの赴くままに任せることにしている。思索を終えたあとにはいつも手元に「(セット名) のカードアイデア、(No. N)」という名のファイルが残される。(N番目)の数字は、最後にブレインストーミングを行った際に用いた番号に1を足したものだ。
以下のカード、《Exchanger》のアイデアは「Argonのカードアイデア、No.2」のファイル作成中に生まれたものだ(オデッセイはそのデザインの最中、「Argon」というコードネームを与えられていた。それに続くセットのコードネームは「Boron」と「Carbon」だった。様々なコードネームがどのように生まれるのかについて知りたければ、私のコラム「Codename of the Game」(註2)を読んでくれ)。
(註2) Codename of the Game
原文では以下のURLへリンクが張られている。内容は記事にあるとおり。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr33
これがその《Exchanger》だ。
Exchanger(註3)
2
Artifact
3, T, Remove a card in your hand from the game: Return target card of
the same card type as the removed card from your graveyard to your hand.
(註3) 以下、非公式訳
交換する者/Exchanger (2)
アーティファクト
3, (T), 手札からカードを1枚追放する:その追放されたカードと
同じカードタイプであるあなたの墓地のカード1枚を手札に戻す。
その通り。《総体の知識/Holistic Wisdom》は最初アーティファクトだったのだ。
なんでかって? よく覚えていないが、おそらくこういうことだろう。これは多分私の好きな2枚の古いカードを2枚かけあわせた結果なのだと思う。1つがレジェンドの《回想/Recall》、もう1つがダークの《オームの頭蓋骨/Skull of Orm》だ。
私は《回想/Recall》が墓地のカードを手札と交換してくれるのを楽しんでいたし、カードを繰り返し使えるように《オームの頭蓋骨/Skull of Orm》を中心にしたデッキを作ることも楽しかった。推測するにオデッセイのテーマである墓地利用に焦点を合わせたとき、心がふらりと昔のお気に入りであった2枚の墓地利用カードへと飛んでしまったのだろう。
カードタイプを共有するカードしか交換できないというのは、《回想/Recall》の「交換する」というメカニズムを残しつつもそれを少し制限することで繰り返し利用可能という危険性を弱めようする私なりの案だったのだろう。またその制限は今まであまり使ったことの無い方法だったので、試しに使ってみるのも面白いんじゃないだろうか、と私たちは考えた。
そう決まったところで次の疑問がわいてくるのではないだろうか。どうしてこのカードは「緑」になったんだ?、という疑問だ。うーん。アーティファクトをデザインしている最中、たまに後頭部を軽くつついてくる何かがあるんだ。その何かが話しかけてきたと仮定しよう。こんな会話になりはずだ。
何か:
マーク!
私:
やあ、何かじゃないか
何か:
話があるんだ。このカードについてなんだけど……
私:
当ててみせようか。何かがおかしい、ってんだろ?
何か:
もちろん何かがおかしいのさ。だから僕が来たんだよ!
私:
冗談だよ、分かってるさ……で、何がおかしいんだい?
何か:
《Exchange》だよ。これについて話があるんだ。
私:
これが気に入らないのかい?
何か:
ううん。大好き。
私:
微妙かな。
何か:
ううん。メカニズムはいいと思うよ。
私:
もうちょっと簡単にしたほうがいい?
何か:
メカニズムはいいと思う、って言ってるじゃん!
私:
だとすると……?
何か:
これ、アーティファクトじゃないと思うんだ。
私:
アーティファクトでもいいんじゃない? 前にもこういうのあったよ。
何か:
アーティファクトでもいいかもしれないけど、有色カードのほうがもっといい。
私:
そうか、どの色でも出来ることじゃないもんな。
何か:
どの色でもいいなんて僕は言ってないよ。
私:
おいおい、随分とつっかかってくるなあ。分かったよ。
要するにアーティファクトより単色カードにふさわしい、って話だね。
何か:
うん。
私:
じゃあ、何色がいいかな。
何か:
ねえ、僕は何者でもないんだ。アイデアを膨らませるのは僕の仕事じゃないよ。
ここまで話を聞けただけでも運が良かったと思わなきゃ。
本当なら自分で気づくべきことなんだよ。
私:
君が「それは緑だよ」って言うのを聞きたかっただけなんだ。
何か:
分かってるならなんで僕に聞くのさ?
私:
おいおい、私たちはそういう関係だろうに。
何か:
で、なんで緑なの?
私:
緑は再生の色だからさ。私は君の考えてることなら何でもお見通しだよ。
何か:
今あるカードのどれかと入れ替える?
私:
緑に欠員が出たらね。
何か:
出なかったら?
私:
単なる何かの割りには随分と頑張るね。大丈夫だよ、きっと必要になるさ。
いつだって追加のカードは必要になるんだから。
実際に必要になった。以下のカードが私たちによって亡き者にされたためだ。
Twilight’s Regrowth(註4)
2GG
Sorcery
Salvage 5GG #(If this card is in your graveyard, you may play it as though
it were in your hand. If you do, its mana cost is 5GG, and remove it from
the game as part of the spell’s effect.)#
Return target card in your graveyard to your hand.
Remove from the game all other cards in your graveyard of the same card type.
(註4) 以下、非公式訳
黄昏の再成長/Twilight’s Regrowht (2)(緑)(緑)
ソーサリー
回収 (5)(緑)(緑)(もしこのカードがあなたの墓地にあった場合、
あなたは手札にあるかのようにこれを唱えてよい。そうした場合、
これのマナコストは(5)(緑)(緑)であり、呪文の効果の一部として追放する)
あなたの墓地にあるカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。
あなたの墓地にあるそれとカードタイプを共有する全てのカードを追放する。
ちなみに上記の Salvage というのは、デザインフェイズにおけるプレイテスト期間の flashback の仮名称だ。このカードはちょっとした混乱の元で、デザイン・チームはこれのスロットを埋める代替案を探していた。
なるほど。「レア」で「緑」で「再利用の呪文」の代わりが欲しいとな?
出番だぞ、《Exchanger》!
そのようなわけで、《総体の知識/Holistic Wisdom》は緑に居場所を見つけたというわけさ。マナコストと起動コストに少し手を加えたほかは、オデッセイのデベロップメントチームもこのカードをそのままにしておいてくれた。
このカードから得たデザイン上の教訓、それはデザインが向かおうとしている方向へ行かせてあげることが大事だということだ。私が最初このカードをアーティファクトとしてデザインしたからといって、それがあるべき姿だとは限らない。
良いデザインとは、カードが息づき成長するのを見守り、自らのあるべき姿へ辿り着けるようにしてあげることだ(皮肉にもこれは実際の子供たちに対する姿勢に対しても同じことが言える)。脚本の授業で教師が教えてくれたことの1つに以下の言葉がある。「君のアーティストとしての仕事は、興味深いキャラクターを作ること、そして彼らが言いたいことを彼らの側から言わせることだ」
稲妻の裂け目/Lightning Rift - オンスロート
Lightning Rift / 稲妻の裂け目 (1)(赤)
エンチャント
プレイヤーがカードをサイクリングするたび、あなたは(1)を支払ってもよい。そうした場合、クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。稲妻の裂け目はそれに2点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lightning+Rift/
物事が順調に進んでいれば、デザインチームはそのセットで新たに用いられる全てのメカニズムを記したファイルをデベロップメントチームへ手渡すことになる。しかし多くのセットではそうはいかなかった。私はデベロップメント側でいくつものカードが殺されてきたことをしばしば書いてきた。メカニズムについても同じことだ。
デベロップメント側でメカニズムが亡き者にされてしまう理由は様々だ。パワーレベル、おかしなシナジー、ルール問題、テンプレート問題、単純にそのメカニズムがつまらないから、などなどだ。いずれにせよ、当時私たちはオンスロートの開発にどっぷりと浸かっており、かつ私たちは何らかのメカニズムを探していた。幸いなことにすでに私たちの手には変異のメカニズムがあったので、各セットに1つは必要となる革新的なメカニズムについては問題はなかった。
私たちに本当に必要だったのは、汎用性の高い基本的なメカニズムだった。プレイしやすく、リミテッドを円滑に回し、現在あるいかなるカードとも上手く合わせられるような柔軟性の高いものだ。「分かるだろ、サイクリング(註5)みたいなものが必要なんだ」と私は言った。
(註5) サイクリング
手札にあるときだけ使える起動型能力で、カードごとに設定されたコストを支払うことで「このカードを捨てる:カードを1枚捨てる」という効果を誘発する。カードによっては「サイクリングしたとき」に追加効果を誘発するものもある。
そう、私たちに必要なメカニズムはサイクリングのようなものだった。私たちは何週間ものあいだ、アイデアをぶつけ合ったり意見を出し合ったりした。ある日、私が口に出した言葉がその作業に終わりを告げた。
「サイクリングみたいなものってサイクリングじゃないか?」
それに対する回答は以下のとおりだ。
「サイクリングはサイクリング「みたいな」ものじゃない、それはサイクリングそのものだ! 同じものを単にもう一度使うなんて出来るわけがない」
なんでダメなの?、と重ねて尋ねる。
「キーワードメカニズムをただ再利用するなんてしちゃダメだろう」
なんで?、とまた尋ねる。
「各セットには革新的な何かが必要で、新たなメカニズムでそれがもたらされるからだ」
私は、サイクリングでその革新的な何かを作り出せばいいじゃないか、と返した。
「そうだね。やってみたら?」
だから私はやったのだ。
私は、それは出来ないと言われたからという理由だけでそれをやりたくなるタイプの人間の1人だ(もしかしたら私の中の特に「ジョニーな部分」がそうさせるのかもしれない)。どちらにせよ、当時のサイクリングの扱われ方は少々保守的に過ぎた。革新的な変化を受け入れる余地は十分にあるはずだ。まず手をつけるべき場所ははっきりしていた。サイクリング・コストだ。それは十分に練られていなかった(註6)。
(註6) 十分に練られていなかった
初登場時のウルザ・ブロックでは全てのサイクリングコストは一律に(2)であり、それ以外のサイクリングコストは一切存在しなかった。
次に私は「サイクリングしたとき~」という効果を持つカードを作ってみた。よーし、エンジンが温まってきたぞ。この試行錯誤の最中に私が作ったカードの1つが以下のカードだ。
Bolt of Lightning(註7)
1R
Sorcery
CARDNAME deals 3 damage to target creature or player.
Cycling R (You may pay R and discard this card from your hand to draw a card.
Play this ability as an instant.)
When CARDNAME cycles, CARDNAME deals 1 damage to target creature or player.
(註7) 以下、非公式訳
稲妻の稲妻 (1)(赤)
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。
~ はそれに3点のダメージを与える。
サイクリング (赤)(このカードを捨てる:カードを1枚引く。
この効果はインスタントタイミングでプレイできる。)
あなたが ~ をサイクリングしたとき、あなたはクリーチャー1体か
プレイヤー1人を対象とする。~ はそれに1点のダメージを与える。
私はこのカードが気に入った。このカードは私に興味深い選択を迫る。(1)(赤)で3点のダメージか、(赤)で1点のダメージとキャントリップか。そこで私はさらに貪欲になった。ダメージとキャントリップを両方得る手段はないか? ただサイクリングするだけで利益を得ることはできないか? この考えは、逆に他のカードをサイクリングしたときに効果が誘発するカードを私に思いつかせた。以下の通りだ。
Standing Shocker(註8)
1RR
Enchantment
Whenever a card is cycled, you may have CARDNAME deal 1 damage to
target creature or player.
(註8) 以下、非公式訳
立ちつくすショッカー
1赤赤
エンチャント
カードがサイクリングされたとき、あなたはクリーチャー1体かプレイヤー1人を
対象としてもよい。~ はそれに1点のダメージを与える。
このカードと一緒に、「サイクリングしたとき」の効果を持つカードと(2)以外のサイクリング・コストを持つカードを携えて私はR&Dへ向かった。そしてこれらのサイクリングに関するカードをセットに入れるよう売込みをかけた。
《立ちつくすショッカー/Standing Shocker》は明らかに良いカードだったが、それでもなお手直しが入った。マナコストが減少し、ダメージが増やされた。それからこのカードをレアにしようという話があがったが、私や他のR&Dメンバーは、このカードはリミテッドを面白くしてくれるはずだからアンコモンがふさわしい、と主張した。
最後の変更として、その能力の起動コストにマナが追加された。その頃には、サイクリングがオンスロートブロックの大きな位置を占めることがデベロップメント・チームにも分かっていた。そのため、このカードが手におえなくなる可能性が常に見え隠れしており、起動にマナコストを必要とすることでカードの危険性を抑えたのだ(不思議なことに、誰も同じ調整が《霊体の地滑り/Astral Slide》にも必要だとは考えなかった)。
このカードから得た教訓は、すでに用いられたアイデアを再分析することの価値だ。多くのカードやメカニズムは、そのうちにデザインの可能性が脈々と流れている。しばしばデザイナーは新しくて異なるものに惹かれてしまう。私はこれを「下手なフライドチキンの食べ方」と呼んでいる。
たくさんのフライドチキンを食べてる人を見たことがあるだろう。彼らは各ピースから数口食べただけで次のピースに移ってしまう。次のチキンがたくさんあるせいで、もう少しの労力を使ってさらなる数口を得る努力を怠ってしまうんだ。
デザインにも同じことが言える。アイデアに見切りをつけることは簡単だ。本当の挑戦とは、最初の数口を食べたあとのフライドチキンにまだ肉が残されて見つけることだ。その部分を得るにはさらなる労力を要するかもしれない。しかしそこにはそれだけの旨みがあるのだ。
後編へ続く
http://regiant.diarynote.jp/201107022102023807/
今日は資格試験を受けてきた。
というか、この日のために帰国したようなものなので、ほとんど遊び歩くことも出来ず、人の家に転がり込んでいるためネットも自由奔放に使えず、ブログの更新もすっかり滞ってしまった。
そんなわけでせっかくの2週間の夏期休暇もその大半を試験勉強やら準備やらで使ってしまい、今日の試験を受け終えてようやっと羽が伸ばせるかと思いきや、帰りのフライトはもう明日。なんてこったい。
マジックに触れる機会も皆無だった。一応、新宿に立ち寄った際にイエローサブマリンをのぞいてみたら、メリーラさんが280円だった。ヒロインの扱いじゃないな。1枚買っておけばよかった。もう少し値が上がったかも。
まあ、それはさておき、これでまたいつもの毎日に戻れるはずなので、帰国後は溜まってる仕事と一緒に、溜まってる訳も片づけていきたいところ。頑張る。
○追記1
最近どうにも明るいニュースが少ないな、と思ってたら、ペンティーノさんが復活されたようで、これはめでたい。コメントする機会を逸してしまったのでここで祝ってみる。
○追記2
広島ファンの友人と球場へ野球を観に行こう、と話していたにも関わらず、都合が合わずお流れになってしまった。残念。
ちょうど広島戦がある日程にその友人は東北へ出張を入れられてしまったり、他の日付だとこっちの予定が合わなかったりした。ただここ最近の広島を見ていると無理に観戦に行かなくて良かったかもしれない、と思ってしまうのもむべなるかな。
というか、この日のために帰国したようなものなので、ほとんど遊び歩くことも出来ず、人の家に転がり込んでいるためネットも自由奔放に使えず、ブログの更新もすっかり滞ってしまった。
そんなわけでせっかくの2週間の夏期休暇もその大半を試験勉強やら準備やらで使ってしまい、今日の試験を受け終えてようやっと羽が伸ばせるかと思いきや、帰りのフライトはもう明日。なんてこったい。
マジックに触れる機会も皆無だった。一応、新宿に立ち寄った際にイエローサブマリンをのぞいてみたら、メリーラさんが280円だった。ヒロインの扱いじゃないな。1枚買っておけばよかった。もう少し値が上がったかも。
まあ、それはさておき、これでまたいつもの毎日に戻れるはずなので、帰国後は溜まってる仕事と一緒に、溜まってる訳も片づけていきたいところ。頑張る。
○追記1
最近どうにも明るいニュースが少ないな、と思ってたら、ペンティーノさんが復活されたようで、これはめでたい。コメントする機会を逸してしまったのでここで祝ってみる。
○追記2
広島ファンの友人と球場へ野球を観に行こう、と話していたにも関わらず、都合が合わずお流れになってしまった。残念。
ちょうど広島戦がある日程にその友人は東北へ出張を入れられてしまったり、他の日付だとこっちの予定が合わなかったりした。ただここ最近の広島を見ていると無理に観戦に行かなくて良かったかもしれない、と思ってしまうのもむべなるかな。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
最初の数日は「伝説のクリーチャーがテーマなのかな」と思ったけど、某ブログを見たらもっと的確な読みがなされてた。金曜日の「オチ」で明らかにされた今週のテーマは、そのブログにあった読みどおり、「統率者戦/Commander」。
というわけで、今週取り上げられたカードは全て「commander」をカード名に含んでいる、というのがテーマ、というかネタ。1人だったら気づかなかったかもしれない。なんか悔しい。ちなみに上記で挙げた某ブログというのは以下のサイト。背景ストーリー好きな方にオススメ。
猿缶原理 わむ麺付き
http://sarkhanjump.seesaa.net/
余談2:月曜日 《司令官イーシャ/Commander Eesha》
《司令官イーシャ/Commander Eesha》は調べ直すたびに「ああ、そういえばこの方は女性だったんだな」と思い出す。……エイヴン世界では美人なのかな。知り合いにエイヴンいないから分からないけど。
オーダー/Orderのリーダーってなんでエイヴンが多いんだろう。不思議だ。オーダー/Orderの構成員の初出は、覚えている限りではFallen Empireだと思うんだけど、構成員は基本的に人間しかいなかった気がする。それともあの Order と今回の Order は別物なんだろうか。
さらに話は脇道に逸れるけど、Fallen Empireのオーダー/Orderと言えば、やっぱりなんと言っても《白き盾の騎士団/Order of the White Shield》。軽いコスト、いっぱいついた能力、カードイラストが4種類もある上にどれもカッコいい。対となる黒の《Order of the Ebon Hand》と合わせて大好きだった。
Fallen Empireは色々とツッコミどころのあるエキスパンションではあったけれど、イラスト違いがいっぱいあったのは個人的に高評価。好きなカードがコモンに多かったこともそれを後押ししてる。《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》とか《Hymn to Tourach》とか、4種類のイラスト全部をデッキに入れてた記憶がある。
余談3:火曜日 《魏の大将 曹仁/Cao Ren, Wei Commander》
この日の記事を読むと 馬術/Horsemanship はある意味苦肉の策だったのかもしれないけど、フレイバー的には上手くハマッたんではないかと思ってる。
歩兵がわらわらと群れていようと意にも介さずに騎馬が駆け抜けていく、というのが個人的にはイメージしやすいし、加えて、相手が飛んでいようといまいと地上を猛スピードで駆け抜けて振り切ってしまう、というのもカッコいい。
ポータル三国志のカードは詳しくないので実在するのかどうかは分からないけど、到達/Reach みたいに「馬術を持つかのようにブロックに参加できる」クリーチャーが槍兵や壁でいればフレイバー的には完璧だな。
余談4:水曜日 《司令官グレヴェン・イル=ヴェク/Commander Greven il-Vec》
名前長い。
余談5:木曜日 《呉の大都督 周瑜/Zhou Yu, Chief Commander》
三国志の山場の1つである「赤壁の戦い」に関する記事。三国志に詳しくないのがこういう記事のときに響いてくる。いつか読まなくちゃいけないリストには常にランクインしているんだけど。
今回、記事を訳すに当たって軽く確認してみて初めて知ったんだけど、「赤壁の戦い」って水辺の戦闘だったのね。その名前から、赤茶けた断崖絶壁を前にした平地と山地の境界線で起きた戦闘なのかとずっと勘違いしてた。
ところで 周瑜/Zhou Yu についても簡単に調べてみた。どうやら有能な武将さんだったらしい。別に「水軍しか指揮できない」とか「陸に上がると無能」だったわけでもないらしい。なんかかわいそうだな、この能力。まあ、サイズがとんでもないというアドバンテージと相殺か。
余談6:金曜日 《徴用/Commandeer》
「-der」と「-deer」の違いを「鹿/Deer」に引っ掛けたダジャレの回。
それはさておき、英語で「-eer」で終わる単語って珍しいような気がして、ちょっと探してみた。4文字の単語(BeerとかPeerとか)はさておき、思っていたよりもはあったけど、やっぱりそれほどの数はないみたい。
新たに発見した中で個人的に印象的だったのは「Basketeer」。意味は「バスケットボール選手」。あと、そういえば「The Rocketeer/ロケッティア」って映画があったな、と少し懐かしい気持ちになった。
最初の数日は「伝説のクリーチャーがテーマなのかな」と思ったけど、某ブログを見たらもっと的確な読みがなされてた。金曜日の「オチ」で明らかにされた今週のテーマは、そのブログにあった読みどおり、「統率者戦/Commander」。
というわけで、今週取り上げられたカードは全て「commander」をカード名に含んでいる、というのがテーマ、というかネタ。1人だったら気づかなかったかもしれない。なんか悔しい。ちなみに上記で挙げた某ブログというのは以下のサイト。背景ストーリー好きな方にオススメ。
猿缶原理 わむ麺付き
http://sarkhanjump.seesaa.net/
余談2:月曜日 《司令官イーシャ/Commander Eesha》
《司令官イーシャ/Commander Eesha》は調べ直すたびに「ああ、そういえばこの方は女性だったんだな」と思い出す。……エイヴン世界では美人なのかな。知り合いにエイヴンいないから分からないけど。
オーダー/Orderのリーダーってなんでエイヴンが多いんだろう。不思議だ。オーダー/Orderの構成員の初出は、覚えている限りではFallen Empireだと思うんだけど、構成員は基本的に人間しかいなかった気がする。それともあの Order と今回の Order は別物なんだろうか。
さらに話は脇道に逸れるけど、Fallen Empireのオーダー/Orderと言えば、やっぱりなんと言っても《白き盾の騎士団/Order of the White Shield》。軽いコスト、いっぱいついた能力、カードイラストが4種類もある上にどれもカッコいい。対となる黒の《Order of the Ebon Hand》と合わせて大好きだった。
Fallen Empireは色々とツッコミどころのあるエキスパンションではあったけれど、イラスト違いがいっぱいあったのは個人的に高評価。好きなカードがコモンに多かったこともそれを後押ししてる。《アイケイシアの投槍兵/Icatian Javelineers》とか《Hymn to Tourach》とか、4種類のイラスト全部をデッキに入れてた記憶がある。
余談3:火曜日 《魏の大将 曹仁/Cao Ren, Wei Commander》
この日の記事を読むと 馬術/Horsemanship はある意味苦肉の策だったのかもしれないけど、フレイバー的には上手くハマッたんではないかと思ってる。
歩兵がわらわらと群れていようと意にも介さずに騎馬が駆け抜けていく、というのが個人的にはイメージしやすいし、加えて、相手が飛んでいようといまいと地上を猛スピードで駆け抜けて振り切ってしまう、というのもカッコいい。
ポータル三国志のカードは詳しくないので実在するのかどうかは分からないけど、到達/Reach みたいに「馬術を持つかのようにブロックに参加できる」クリーチャーが槍兵や壁でいればフレイバー的には完璧だな。
余談4:水曜日 《司令官グレヴェン・イル=ヴェク/Commander Greven il-Vec》
名前長い。
余談5:木曜日 《呉の大都督 周瑜/Zhou Yu, Chief Commander》
三国志の山場の1つである「赤壁の戦い」に関する記事。三国志に詳しくないのがこういう記事のときに響いてくる。いつか読まなくちゃいけないリストには常にランクインしているんだけど。
今回、記事を訳すに当たって軽く確認してみて初めて知ったんだけど、「赤壁の戦い」って水辺の戦闘だったのね。その名前から、赤茶けた断崖絶壁を前にした平地と山地の境界線で起きた戦闘なのかとずっと勘違いしてた。
ところで 周瑜/Zhou Yu についても簡単に調べてみた。どうやら有能な武将さんだったらしい。別に「水軍しか指揮できない」とか「陸に上がると無能」だったわけでもないらしい。なんかかわいそうだな、この能力。まあ、サイズがとんでもないというアドバンテージと相殺か。
余談6:金曜日 《徴用/Commandeer》
「-der」と「-deer」の違いを「鹿/Deer」に引っ掛けたダジャレの回。
それはさておき、英語で「-eer」で終わる単語って珍しいような気がして、ちょっと探してみた。4文字の単語(BeerとかPeerとか)はさておき、思っていたよりもはあったけど、やっぱりそれほどの数はないみたい。
新たに発見した中で個人的に印象的だったのは「Basketeer」。意味は「バスケットボール選手」。あと、そういえば「The Rocketeer/ロケッティア」って映画があったな、と少し懐かしい気持ちになった。
Card of the Day - 2011/06/13
2011年6月13日 Card of the Day裏切り者グリッサ/Glissa, the Traitor - ミラディン包囲戦 神話レアGlissa, the Traitor / 裏切り者グリッサ (黒)(緑)(緑)
伝説のクリーチャー - ゾンビ(Zombie) エルフ(Elf)
先制攻撃、接死
いずれかの対戦相手がコントロールするクリーチャー1体が戦場から墓地に置かれるたび、あなたの墓地にあるアーティファクト・カード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
3/3
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Glissa%2C+the+Traitor/
ミラディンを支配しようとする準備が整うその瞬間まで、ファイレクシア人はグリッサを停滞の中に留めておいた。ミラディンとファイレクシアの戦争が開始されたとき、彼女の主である闇の指導者たちの意志を実現するため、グリッサは絡み森へと帰還した。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
Card of the Day - 2011/06/14
2011年6月14日 Card of the Day裏切り者の王、セドリス/Sedris, the Traitor King - アラーラの断片 神話レアSedris, the Traitor King / 裏切り者の王、セドリス (3)(青)(黒)(赤)
伝説のクリーチャー - ゾンビ(Zombie) 戦士(Warrior)
あなたの墓地にある各クリーチャー・カードは蘇生(2)(黒)を持つ。((2)(黒):そのカードを戦場に戻す。そのクリーチャーは速攻を得る。次のターン終了ステップの開始時か、それが戦場を離れる場合に、それを追放する。蘇生はソーサリーとてのみ行う。)
5/5
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sedris%2C+the+Traitor+King/
セドリスは、ヴィティア王国の最後の命ある指導者であったが、彼は自身の王国と魂をデーモン・ロードたちに捧げてしまった。
今や力あるリッチとなった彼は、グリクシスという名で知られるようになった地(註1)を支配している。グリクシス、それはヴィティア語で「裏切り者」を意味する言葉である。
(註1) グリクシスという名で知られるようになった地
ちなみに首都があった地は セドリス/Sedris の名にちなんで今では セドラクシス/Sedraxis と呼ばれている。この 次元/Plane における最大の 死滅都市/Necropolis らしい。
参照:http://www.wizards.com/magic/magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/stf/5
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
Card of the Day - 2011/06/15
2011年6月15日 Card of the Day現し世の裏切り者、禍我/Maga, Traitor to Mortals - 神河救済 レアMaga, Traitor to Mortals / 現し世の裏切り者、禍我 (X)(黒)(黒)(黒)
伝説のクリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
現し世の裏切り者、禍我はその上に+1/+1カウンターがX個置かれた状態で戦場に出る。
現し世の裏切り者、禍我が戦場に出たとき、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、この上の+1/+1カウンターの数に等しい点数のライフを失う。
0/0
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Maga%2C+Traitor+to+Mortals/
水面院(註1)を略奪したあと、禍我はさらに鬼について学ぶため、竹沼の地(註2)へと向かい、そこを放浪した。
最終的にはその名の示すとおり、彼は人間たちよりも精霊たちに共感を抱くようになっていった。
(註1) 水面院
読みは「みなも」。《水辺の学舎、水面院/Minamo, School at Water’s Edge》のこと。イラストにあるように滝壺の上空に浮いている学校らしい。
参照:http://magiccards.info/chk/jp/279.html
(註2) 竹沼
神河における主な黒マナの生成地である沼地。人間以外の住人は、鼠人/Nezumi-bito や 大峨/O-bakemono などで、負の吹き溜まりみたいな場所。
人間の住居は基本的に、過去には町として栄えていた 沼居/Numai と呼ばれる地に限られているらしい。
(追記) その他、参照したホームページや記事について
MTG Wiki:背景世界
http://mtgwiki.com/wiki/%E8%83%8C%E6%99%AF%E4%B8%96%E7%95%8C
MTG Salvation Wiki
http://wiki.mtgsalvation.com/article/Main_Page
公式サイト:我らがチャンピオンだ、我が友よ
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/feature/227
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
Card of the Day - 2011/06/16
2011年6月16日 Card of the Day裏切り者の手中/Traitor’s Clutch - 時のらせん コモンTraitor’s Clutch / 裏切り者の手中 (4)(黒)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+1/+0の修整を受けるとともに黒になり、シャドーを得る。(それは、シャドーを持つクリーチャーのみブロックでき、シャドーを持つクリーチャーによってのみブロックされる。)
フラッシュバック(1)(黒)(あなたはあなたの墓地にあるこのカードを、そのフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後それを追放する。)
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Traitor%27s+Clutch/
時のらせんのカードである《裏切り者の手中/Traitor’s Clutch》には、いかなる0/1であろうと《冥界の裏切り者/Nether Traitor》(註1)によく似た何かへと変える力がある。
あるブロックのカードが同じブロック自身のカードを元ネタとしていることは、そう珍しい話ではないのだ!
(註1) 《冥界の裏切り者/Nether Traitor》
Nether Traitor / 冥界の裏切り者 (黒)(黒)
クリーチャー - スピリット(Spirit)
速攻
シャドー(このクリーチャーは、シャドーを持つクリーチャーのみブロックでき、シャドーを持つクリーチャーによってのみブロックされる。)
他のクリーチャーが戦場からあなたの墓地に置かれるたび、あなたは(黒)を支払ってもよい。そうした場合、あなたの墓地にある冥界の裏切り者を戦場に戻す。
1/1
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Nether+Traitor/
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
Card of the Day - 2011/06/17
2011年6月17日 Card of the Dayバザールの交易商人/Bazaar Trader - ワールドウェイク レアBazaar Trader / バザールの交易商人 (1)(赤)
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
(T):プレイヤー1人と、あなたがコントロールするアーティファクトかクリーチャーか土地を1つを対象とする。前者は後者のコントロールを得る。
1/1
参照元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Bazaar+Trader/
ちょっと待った! これは「交易」じゃないだろ? 何しろ「タダでものを押しつけている」だけなんだからさ! こんなおかしなバザー、あり得ないよ!
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
【翻訳】ゴブリンが私にさせたこと/Mons Made Me Do It【Daily MTG】
Mark Rosewater
2002年10月7日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr41
ゴブリン週間へようこそ!
今週はマジックに最も古くから存在し、かつ最も愛された種族を探っていこうと思う。
実のところ、椅子に腰を下ろしていざこの記事を書き始めようとしたときには、あまりにも膨大なネタを持つこのトピックについてどう取り扱ったものか見当もつかなかった。しかしそこで閃いたんだ。
私が書くべきはゴブリンそれ自体のようにデタラメで馬鹿馬鹿しいものに決まっているじゃないか。もし君が曖昧で風変りな記事を読みたくないなら、今週の記事は飛ばしたほうがいいかもしれないね。もし君がついて来てくれるなら、帽子が飛ばされないようにちゃんと押さえていたほうがいい。トバすからね。
ゴブリンについてあまり知られていない10の事実
1.ゴブリンは自分たちが石を開発したと思っている。世界最古の武器として。
2.ゴブリンは10匹から15匹程度の個体が集まって暮らしている
3.ゴブリンは返り討ちにあう危険性のないものであれば大体食べる
4.ゴブリンの好む日課はセックス、ギャンブル、真新しい武器防具をいじることである
5.ゴブリンはデカイことは良いことだと信じている。
(20kgの棍棒よりいいものって何? 50kgの棍棒に決まってるだろう!)
6.ゴブリンが征服と略奪を繰り返すのはより多くの居住スペースが必要だからである
7.ゴブリンにとって、より大きな鼻と足と手を持つものがより魅力的な異性である
8.ゴブリンの名前は生まれ落ちる瞬間の母親のうなり声からとってつけられる
9.ゴブリンの両親は自分の子供を多くの場合、捨てたり、物々交換に使ったり、
配偶者と同じように賭けのチップに使ったり、家族ごと交換したりする。
10.ゴブリンにとって最も大きな財産はその生産性の高さである
(試行の回数が多ければそれだけ試行錯誤から得られる経験値も大きい)
スクイーの名前の由来
ビジョンズの開発時、私は命名とフレイバーテキストを担当するチームに所属していた。あるミーティングの開始時、私はその時点で決まっていた《連続突撃/Relentless Assault》のフレイバーテキストが気に入らない旨を伝えた。それは「ゴブリンの童謡/ときの声」という題名の童謡だった。題名は私好みだったが、その童謡自体は好きになれなかったからだ。
チームのリーダーであるPete Venters(その通り、カードのイラストレーターとしても有名な彼だ。当時、今なおクリエイティブテキスト部として存続している部署を率いていたのは彼だった)は、変えたければ変えてもよいがタイムリミットはこのミーティングが終わるまでだ、と告げた。
そこでミーティングが行われている間、私は代わりとなる童謡を生み出そうと必死になった。まず最初に考えたのはゴブリンにとって「ときの声」とは「逃げ出したくなる何か」のはずだということだった。そこから浮かんだ「Flee/逃げる」に対して「Tree/木」と韻を踏ませることにした。
考えたのは、何匹かの木を登れるゴブリンが敵の軍勢を発見した、という状況だ。童謡に登場させる2匹のゴブリン(2匹登場させた理由はそのほうが童謡っぽい気がしたからだ)の名前については1音節でかつ韻を踏むものである必要があった。特に2匹目については「Tree/木」と上手いこと韻を踏む必要があった。
まず最初に思いついた名前は「Flog/フロッグ」だった。これは実にゴブリンっぽい名前に感じられた。さらに「Tree/木」と韻を踏む1音節の名前も思いついた。「Squee/スクイー」だ。これでいいんじゃなかろうか、ということでそれに決めた。
ちょうどそのときミーティングが終わった。
数ヶ月後、ストーリーマネージャーであるMichael Ryanと一緒にウェザーライトの物語に取り組んでいたとき、道化役としての役割を持つ登場人物であるゴブリンに名前をつける必要が生じた。私たちは両方ともくだんの童謡を思い出した(Michaelもまたフレイバーテキストチームに参加していた)。私たちはスクイーという名前が気に入っていたんだ。
これがスクイーという名前の由来というわけだ。
実際のゴブリン・カードについて
ゴブリン・カードは良くふざけた名前がつけられる。以下に挙げたゴブリン・カードは全て実際に印刷されたことがあるものだ(え? はいはい、分かったよ、正しく言うならば以下の1枚は実際に印刷されたわけじゃなくコンピューター上にしか存在しない)。
・Goblin Artisans / ゴブリン職工団 (アンティキティー)
・Goblin Bookie (アングルード)
・Goblin Bowling Team (アングルード)
・Goblin Bully/ごろつきゴブリン (ポータル)
・Goblin Chirurgeon (フォールン・エンパイア)
・Goblin Commando (スターター)
・Goblin Flotilla (フォールン・エンパイア)
・Goblin Gardener / ゴブリンの庭師 (ウルザズ・デスティニー)
・Goblin Lackey / ゴブリンの従僕 (ウルザズ・サーガ)
・Goblin Legionnaire / ゴブリンの軍団兵 (アポカリプス)
・Goblin Masons / ゴブリンの石工 (ウルザズ・デスティニー)
・Goblin Medics / ゴブリンの衛生兵 (ウルザズ・レガシー)
・Goblin Mutant / ゴブリンの突然変異 (アイスエイジ)
・Goblin Polka Band (アストラルセット)
・Goblin Pyromancer / ゴブリンの紅蓮術士 (オンスロート)
・Goblin Ringleader / ゴブリンの首謀者 (アポカリプス)
・Goblin Sharpshooter / ゴブリンの名手 (オンスロート)
・Goblin Ski Patrol (アイスエイジ)
・Goblin Sledder / ゴブリンのそり乗り (オンスロート)
・Goblin Snowman / ゴブリンの雪だるま (アイスエイジ)
・Goblin Soothsayer / ゴブリンの占い屋 (ミラージュ)
・Goblin Spelunkers / ゴブリンの洞窟探検家 (ウルザズ・サーガ)
・Goblin Spy / ゴブリンのスパイ (インベイジョン)
・Goblin Swine-Rider / 豚乗りゴブリン (ビジョンズ)
・Goblin Welder / ゴブリンの溶接工 (ウルザズ・レガシー)
Goblin Chirurgeonの "Chirurgeon" って何?
長い間、私はこの単語を造語だと思っていた。
しかしそうではなかった。
アメリカン・ヘリテッジ・ディクショナリーという辞書によると、この "Chirurgeon" (発音は「キー・ラー・ジェン」となる)は、ラテン語を元とするフランスの言葉からきた中世の英語らしい。その意味は「Surgeon/外科医」だそうだ。
君たちが見たことのないゴブリン・カードについて
開発部のデータベースを覗いたところ、一度も世に出ることなく終わった(もしくは終わるかもしれない)ゴブリンたちを見つけたのでここに紹介する。
・Goblin Armorer
・Goblin Assault Leader
・Goblin Cheerleading Squad
・Goblin Cleric Mocker
・Goblin Duelist
・Goblin Fanatic
・Goblin Firestarter
・Goblin Gatling Gun
・Goblin Hit Squad
・Goblin Homeowners
・Goblin Megaboss
・Goblin Pumpster
・Goblin Sandstalker
・Goblin Vulture Riders
《ゴブリンの山岳民/Goblin Mountaineer》のフレイバーテキスト
原文:
Goblin Mountaineer, barely keeps his family fed.
日本語訳:
ゴブリンの山岳民は、家族を食べさせていくのさえ難しい現状だ。
ゴブリン・カードのデザインについて
この記事は分類上デザインについての記事ということになっているので、ここでは私がデザインした何枚かのゴブリン・カードについて話そうと思う。
何年もの間、私はあるカードをマジックに登場させてようと試みては失敗していた。それの仮の名は「Reflip/コイン投げ直し」で、プレイヤーにコインを投げ直させてくれるマナコストが(赤)のインスタントだった。
このカードを見た各セットのデベロップメント・チームはことごとくセットからそれを除外した。何しろR&Dは構築環境からコイン投げを締め出すことに細心の注意を払っていたからだ。
アングルードを手掛けることになって、このカードを登場させてみてはどうだろうという考えがよぎった。何せこのセットがトーナメントリーガルになる日は永遠に来ないはずだ。
強くするために繰り返しその効果を使えるカードとし、またアングルードには乱数発生要素がコイン以外にもダイスもあったので「振り直し」の文言も付け足した。
ウルザズ・デスティニーのデザインで、私は「場を離れたとき」の効果を色々試していた。赤には2つの「何かを破壊する」効果を入れることにしていた。1つは土地を壊し、もう1つは壁を壊す。
さて何かを壊すことに関してゴブリンたちより向いている種族はいるだろうか? いるわけがない。さらにゴブリンの伝統に従い、カード名には壊される対象の何かを作る職業名を用いることにした……そう、他の種族であればそれを作るのだが、さてゴブリンの場合は?
その通り、彼らの場合は、同じ職業でもそれらを作るより壊すことの方に長けているんだ。そのようなわけでカード名は《ゴブリンの庭師/Goblin Gardener》と《ゴブリンの石工/Goblin Masons》 と相成ったわけだ。
テンペストのデザイン時には、私が Martyr(殉教者)と呼んでいたサイクルがあった。それぞれは生け贄に捧げると効果を誘発する能力を持つ C の1/1クリーチャーだった(Cというのは、R&Dが色マナ1点のマナコストを持つカードを呼ぶ俗称で、Cは「Colored mana」の略だ)。
デベロップメント・チームのチェックを潜り抜けることが出来たのはそのうちの2枚、《モグの狂信者/Mogg Fanatic》と《ブラッド・ペット/Blood Pet》だけだった。それ以外の3枚のうちの2枚、《不運な研究者/Hapless Researcher》と《心優しきボディガード/Benevolent Bodyguard》は何年かののちにジャッジメントに収録された。
緑の Martyr(殉教者)はどうなったかって? まあ、いつの日か登場するかもね。
ウェザーライト・サーガが主要なストーリー部分を占めていた時代、各セットに最低1人はウェザーライト号のクルーを収録したいと考えていた。メルカディアン・マスクスのデザイン中、私たちは収録するクルーをスクイーとすることに決めた。
さて、スクイーが非常に人気のあるキャラクターであることを私はよく分かっていた。実のところ、全てのウェザーライト号のクルー中で最も人気のあるキャラクターだと私は信じていた。そのため使い勝手がよいだけでなく、かつフレイバー的に合致したカードにする必要があると考えたわけだ。。
彼の物語上の役割を考えたとき、天啓が閃いた。スクイーはギャグ担当であり、それは彼が漫画的な存在であり、つまり彼はただただ死なないということだ。そこでそのフレイバーをカードのメカニズムに反映することにしてみた。君が何をどうしようと、こいつを退場したままにしておくことは出来ないんだ。
カードが世に出てあと、小説版のストーリーでも実際に何度でも蘇れるようにと小説家はスクイーに再生能力を与えてくれた。
"Mons" って誰?
Mons JohnsonというのはRichard Garfieldの友人だ。
そしてこのMonsはゴブリンが大好きだった。
この「大好き」というのは「ゴブリンに夢中だった」とかそんなレベルじゃない。ここで言っている「大好き」というのは、「ゴブリンに狂い、ゴブリンにとりつかれ、ゴブリンへの愛にあまりに胸が張り裂けんばかり」に大好きだったということだ。
MonsはR&Dにほんの少しのあいだ在籍していた。R&Dにいる間、彼は大量のゴブリンデッキを作った。「ゴブリン・ステイシス」、「ゴブリンポテンス」、「ゴブリゲドン」などなどだ。
Monsはゴブリンのために生きた。そんな彼のために、Richardはアルファの開発時に、Monsという単語をゴブリン全般を指す単語にすべきだと感じた。いや、まあ、全般は言い過ぎか。ゴブリンのリーダー的な存在にしたかった。
そのようなわけでMonsという言葉はマジックとゴブリンの歴史に名を刻んだんだ。
Mons Johnsonの飲み会で使えるちょっとしたクイズについて
もし君が(飲酒できる年齢に達しているとして)友人のマジック・プレイヤーたちと酒場にいて、1杯賭けようという話になった。そんなときに役に立つマジック・クイズだ。
アルファのには、マナコストが(赤)で1/1ゴブリンがいる(ヒント。ついさっきまで話していた単語。ついでに言っておくと《ゴブリン気球部隊/Goblin Balloon Brigade》じゃないよ)。さて、そいつの名前を何も見ないで書けるかどうか。
まあ、試しにどんな綴りだったか思い出してみてくれ。答えはこの下にある。
まだまだ下だよ。
まだまだ。
まだだよ。
まだだってば。
そうだね、ここらで止めてもいいんだけど、なんか楽しくなってきた。
よし!
そろそろイライラしてきた?
こういうことがゴブリンがするようなことなんだよ。
いや、マジで。
いや、ゴブリンがパソコン持ってたらの話だけどね。
質問を忘れちゃった人のためにもう1回。
アルファの1/1のバニラのゴブリンの綴りはなーんだ? 答えはこの下。
おっと、まだ終わらせるつもりはないよ。
まだだね。
こんだけ時間を使ってしまったからには、もう止められないだろ?
まだギブアップするには早すぎるぞ。
映画「オースティン・パワーズ」のオーディオコメンタリーでマイク・マイヤーズが言ってた。
ジョークのオチは引っ張れるだけ引っ張れ、って。
面白さがそれだけ増すんだそうな。
さらに引っ張ると、さらに増す。
ただ、ある点を超えた時点でつまらなくなる。
だけどさらに引っ張ると、また面白くなってくる。
面白さが戻ってきただろ?
今はどう?
今は?
これについてたくさんのEメールが来るだろうなあ。
いつでも止めていいんだぜ? ほら。
ほーら、止めらんなかった。ね?
君は私の手の平の上だ! 逃げられないぞ! ふわはははっ!
分かったよ。もういいか。答えの時間だ。下へどうぞ。
また引っ掛かった。
とはいえそろそろ時間だ。最後に答えをお見せすることにしよう。
君はきっと、いつかチャーリー・ブラウンもルーシーの持ってるボールを蹴ってくれると信じているタイプの人間だろうね。
実は私もなんだ。高校の卒業アルバムでは「一番の楽観主義者」で1位をとったよ。
1位をとれると自分でも信じてたしね。
あまりにも楽観的だから血液型もB型さ。「レット・イット・ビー」ってね。
このジョーク(そう呼べるのであれば)は小さい頃からの持ちネタだよ。
さて、さすがに今回は本当に答えを明かす時間だ。
さすがにここまで引っ張ってしまうと盛り上がりには欠けてしまうだろうけど、このコラムもどこかで終わらせないといけない。さて、答えは……
チャーリー・ブラウンはいつまでもボールを蹴らないだろうね!
どちらにせよ、答えは教えてあげよう。さてそのカードの綴りは? 答えは「Mons’s Goblin Raiders」さ。おそらく大半の君たちは「Mons’s」の s の片方を見落としただろうね。
さて、これでゴブリン週間の記事は終わりだ。みんながこの記事を楽しんでくれたことを祈ってるよ。ああ、ここで言っているみんなというのはここまで飽き飽きしつつも読み終えてくれた君たちだ。
来週はオンスロートの舞台裏について語ろうと思う。
それまでは次の文章に辿りつくまで画面をスクロールさせてくれ。
<文章・終わり>
Mark Rosewater
2002年10月7日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr41
ゴブリン週間へようこそ!
今週はマジックに最も古くから存在し、かつ最も愛された種族を探っていこうと思う。
実のところ、椅子に腰を下ろしていざこの記事を書き始めようとしたときには、あまりにも膨大なネタを持つこのトピックについてどう取り扱ったものか見当もつかなかった。しかしそこで閃いたんだ。
私が書くべきはゴブリンそれ自体のようにデタラメで馬鹿馬鹿しいものに決まっているじゃないか。もし君が曖昧で風変りな記事を読みたくないなら、今週の記事は飛ばしたほうがいいかもしれないね。もし君がついて来てくれるなら、帽子が飛ばされないようにちゃんと押さえていたほうがいい。トバすからね。
ゴブリンについてあまり知られていない10の事実
1.ゴブリンは自分たちが石を開発したと思っている。世界最古の武器として。
2.ゴブリンは10匹から15匹程度の個体が集まって暮らしている
3.ゴブリンは返り討ちにあう危険性のないものであれば大体食べる
4.ゴブリンの好む日課はセックス、ギャンブル、真新しい武器防具をいじることである
5.ゴブリンはデカイことは良いことだと信じている。
(20kgの棍棒よりいいものって何? 50kgの棍棒に決まってるだろう!)
6.ゴブリンが征服と略奪を繰り返すのはより多くの居住スペースが必要だからである
7.ゴブリンにとって、より大きな鼻と足と手を持つものがより魅力的な異性である
8.ゴブリンの名前は生まれ落ちる瞬間の母親のうなり声からとってつけられる
9.ゴブリンの両親は自分の子供を多くの場合、捨てたり、物々交換に使ったり、
配偶者と同じように賭けのチップに使ったり、家族ごと交換したりする。
10.ゴブリンにとって最も大きな財産はその生産性の高さである
(試行の回数が多ければそれだけ試行錯誤から得られる経験値も大きい)
スクイーの名前の由来
ビジョンズの開発時、私は命名とフレイバーテキストを担当するチームに所属していた。あるミーティングの開始時、私はその時点で決まっていた《連続突撃/Relentless Assault》のフレイバーテキストが気に入らない旨を伝えた。それは「ゴブリンの童謡/ときの声」という題名の童謡だった。題名は私好みだったが、その童謡自体は好きになれなかったからだ。
チームのリーダーであるPete Venters(その通り、カードのイラストレーターとしても有名な彼だ。当時、今なおクリエイティブテキスト部として存続している部署を率いていたのは彼だった)は、変えたければ変えてもよいがタイムリミットはこのミーティングが終わるまでだ、と告げた。
そこでミーティングが行われている間、私は代わりとなる童謡を生み出そうと必死になった。まず最初に考えたのはゴブリンにとって「ときの声」とは「逃げ出したくなる何か」のはずだということだった。そこから浮かんだ「Flee/逃げる」に対して「Tree/木」と韻を踏ませることにした。
考えたのは、何匹かの木を登れるゴブリンが敵の軍勢を発見した、という状況だ。童謡に登場させる2匹のゴブリン(2匹登場させた理由はそのほうが童謡っぽい気がしたからだ)の名前については1音節でかつ韻を踏むものである必要があった。特に2匹目については「Tree/木」と上手いこと韻を踏む必要があった。
まず最初に思いついた名前は「Flog/フロッグ」だった。これは実にゴブリンっぽい名前に感じられた。さらに「Tree/木」と韻を踏む1音節の名前も思いついた。「Squee/スクイー」だ。これでいいんじゃなかろうか、ということでそれに決めた。
ちょうどそのときミーティングが終わった。
数ヶ月後、ストーリーマネージャーであるMichael Ryanと一緒にウェザーライトの物語に取り組んでいたとき、道化役としての役割を持つ登場人物であるゴブリンに名前をつける必要が生じた。私たちは両方ともくだんの童謡を思い出した(Michaelもまたフレイバーテキストチームに参加していた)。私たちはスクイーという名前が気に入っていたんだ。
これがスクイーという名前の由来というわけだ。
実際のゴブリン・カードについて
ゴブリン・カードは良くふざけた名前がつけられる。以下に挙げたゴブリン・カードは全て実際に印刷されたことがあるものだ(え? はいはい、分かったよ、正しく言うならば以下の1枚は実際に印刷されたわけじゃなくコンピューター上にしか存在しない)。
・Goblin Artisans / ゴブリン職工団 (アンティキティー)
・Goblin Bookie (アングルード)
・Goblin Bowling Team (アングルード)
・Goblin Bully/ごろつきゴブリン (ポータル)
・Goblin Chirurgeon (フォールン・エンパイア)
・Goblin Commando (スターター)
・Goblin Flotilla (フォールン・エンパイア)
・Goblin Gardener / ゴブリンの庭師 (ウルザズ・デスティニー)
・Goblin Lackey / ゴブリンの従僕 (ウルザズ・サーガ)
・Goblin Legionnaire / ゴブリンの軍団兵 (アポカリプス)
・Goblin Masons / ゴブリンの石工 (ウルザズ・デスティニー)
・Goblin Medics / ゴブリンの衛生兵 (ウルザズ・レガシー)
・Goblin Mutant / ゴブリンの突然変異 (アイスエイジ)
・Goblin Polka Band (アストラルセット)
・Goblin Pyromancer / ゴブリンの紅蓮術士 (オンスロート)
・Goblin Ringleader / ゴブリンの首謀者 (アポカリプス)
・Goblin Sharpshooter / ゴブリンの名手 (オンスロート)
・Goblin Ski Patrol (アイスエイジ)
・Goblin Sledder / ゴブリンのそり乗り (オンスロート)
・Goblin Snowman / ゴブリンの雪だるま (アイスエイジ)
・Goblin Soothsayer / ゴブリンの占い屋 (ミラージュ)
・Goblin Spelunkers / ゴブリンの洞窟探検家 (ウルザズ・サーガ)
・Goblin Spy / ゴブリンのスパイ (インベイジョン)
・Goblin Swine-Rider / 豚乗りゴブリン (ビジョンズ)
・Goblin Welder / ゴブリンの溶接工 (ウルザズ・レガシー)
Goblin Chirurgeonの "Chirurgeon" って何?
長い間、私はこの単語を造語だと思っていた。
しかしそうではなかった。
アメリカン・ヘリテッジ・ディクショナリーという辞書によると、この "Chirurgeon" (発音は「キー・ラー・ジェン」となる)は、ラテン語を元とするフランスの言葉からきた中世の英語らしい。その意味は「Surgeon/外科医」だそうだ。
君たちが見たことのないゴブリン・カードについて
開発部のデータベースを覗いたところ、一度も世に出ることなく終わった(もしくは終わるかもしれない)ゴブリンたちを見つけたのでここに紹介する。
・Goblin Armorer
・Goblin Assault Leader
・Goblin Cheerleading Squad
・Goblin Cleric Mocker
・Goblin Duelist
・Goblin Fanatic
・Goblin Firestarter
・Goblin Gatling Gun
・Goblin Hit Squad
・Goblin Homeowners
・Goblin Megaboss
・Goblin Pumpster
・Goblin Sandstalker
・Goblin Vulture Riders
《ゴブリンの山岳民/Goblin Mountaineer》のフレイバーテキスト
原文:
Goblin Mountaineer, barely keeps his family fed.
日本語訳:
ゴブリンの山岳民は、家族を食べさせていくのさえ難しい現状だ。
ゴブリン・カードのデザインについて
この記事は分類上デザインについての記事ということになっているので、ここでは私がデザインした何枚かのゴブリン・カードについて話そうと思う。
Goblin Bookie (赤) - アングルード
- ゴブリン(Goblin)
(赤),(T):直前に投げられたコイン1枚を投げ直すか、直前に振られたダイス1個を振り直し、代わりにその出目を使用する。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Goblin+Bookie/
何年もの間、私はあるカードをマジックに登場させてようと試みては失敗していた。それの仮の名は「Reflip/コイン投げ直し」で、プレイヤーにコインを投げ直させてくれるマナコストが(赤)のインスタントだった。
このカードを見た各セットのデベロップメント・チームはことごとくセットからそれを除外した。何しろR&Dは構築環境からコイン投げを締め出すことに細心の注意を払っていたからだ。
アングルードを手掛けることになって、このカードを登場させてみてはどうだろうという考えがよぎった。何せこのセットがトーナメントリーガルになる日は永遠に来ないはずだ。
強くするために繰り返しその効果を使えるカードとし、またアングルードには乱数発生要素がコイン以外にもダイスもあったので「振り直し」の文言も付け足した。
Goblin Gardener / ゴブリンの庭師 (3)(赤) - ウルザズ・デスティニー
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
ゴブリンの庭師が戦場から墓地に置かれたとき、土地1つを対象とし、それを破壊する。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Goblin+Gardener/
Goblin Masons / ゴブリンの石工 (1)(赤) - ウルザズ・デスティニー
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
ゴブリンの石工が戦場から墓地に置かれたとき、壁(Wall)1つを対象とし、それを破壊する。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Goblin+Masons/
ウルザズ・デスティニーのデザインで、私は「場を離れたとき」の効果を色々試していた。赤には2つの「何かを破壊する」効果を入れることにしていた。1つは土地を壊し、もう1つは壁を壊す。
さて何かを壊すことに関してゴブリンたちより向いている種族はいるだろうか? いるわけがない。さらにゴブリンの伝統に従い、カード名には壊される対象の何かを作る職業名を用いることにした……そう、他の種族であればそれを作るのだが、さてゴブリンの場合は?
その通り、彼らの場合は、同じ職業でもそれらを作るより壊すことの方に長けているんだ。そのようなわけでカード名は《ゴブリンの庭師/Goblin Gardener》と《ゴブリンの石工/Goblin Masons》 と相成ったわけだ。
Mogg Fanatic / モグの狂信者 (赤) - テンペスト
クリーチャー - ゴブリン(Goblin)
モグの狂信者を生け贄に捧げる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。モグの狂信者はそれに1点のダメージを与える。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mogg+Fanatic/
テンペストのデザイン時には、私が Martyr(殉教者)と呼んでいたサイクルがあった。それぞれは生け贄に捧げると効果を誘発する能力を持つ C の1/1クリーチャーだった(Cというのは、R&Dが色マナ1点のマナコストを持つカードを呼ぶ俗称で、Cは「Colored mana」の略だ)。
デベロップメント・チームのチェックを潜り抜けることが出来たのはそのうちの2枚、《モグの狂信者/Mogg Fanatic》と《ブラッド・ペット/Blood Pet》だけだった。それ以外の3枚のうちの2枚、《不運な研究者/Hapless Researcher》と《心優しきボディガード/Benevolent Bodyguard》は何年かののちにジャッジメントに収録された。
緑の Martyr(殉教者)はどうなったかって? まあ、いつの日か登場するかもね。
Squee, Goblin Nabob / ゴブリンの太守スクイー (2)(赤) - メルカディアン・マスクス
伝説のクリーチャー - ゴブリン(Goblin)
あなたのアップキープの開始時に、あなたはあなたの墓地にあるゴブリンの太守スクイーをあなたの手札に戻してもよい。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Squee%2C+Goblin+Nabob/
ウェザーライト・サーガが主要なストーリー部分を占めていた時代、各セットに最低1人はウェザーライト号のクルーを収録したいと考えていた。メルカディアン・マスクスのデザイン中、私たちは収録するクルーをスクイーとすることに決めた。
さて、スクイーが非常に人気のあるキャラクターであることを私はよく分かっていた。実のところ、全てのウェザーライト号のクルー中で最も人気のあるキャラクターだと私は信じていた。そのため使い勝手がよいだけでなく、かつフレイバー的に合致したカードにする必要があると考えたわけだ。。
彼の物語上の役割を考えたとき、天啓が閃いた。スクイーはギャグ担当であり、それは彼が漫画的な存在であり、つまり彼はただただ死なないということだ。そこでそのフレイバーをカードのメカニズムに反映することにしてみた。君が何をどうしようと、こいつを退場したままにしておくことは出来ないんだ。
カードが世に出てあと、小説版のストーリーでも実際に何度でも蘇れるようにと小説家はスクイーに再生能力を与えてくれた。
"Mons" って誰?
Mons JohnsonというのはRichard Garfieldの友人だ。
そしてこのMonsはゴブリンが大好きだった。
この「大好き」というのは「ゴブリンに夢中だった」とかそんなレベルじゃない。ここで言っている「大好き」というのは、「ゴブリンに狂い、ゴブリンにとりつかれ、ゴブリンへの愛にあまりに胸が張り裂けんばかり」に大好きだったということだ。
MonsはR&Dにほんの少しのあいだ在籍していた。R&Dにいる間、彼は大量のゴブリンデッキを作った。「ゴブリン・ステイシス」、「ゴブリンポテンス」、「ゴブリゲドン」などなどだ。
Monsはゴブリンのために生きた。そんな彼のために、Richardはアルファの開発時に、Monsという単語をゴブリン全般を指す単語にすべきだと感じた。いや、まあ、全般は言い過ぎか。ゴブリンのリーダー的な存在にしたかった。
そのようなわけでMonsという言葉はマジックとゴブリンの歴史に名を刻んだんだ。
Mons Johnsonの飲み会で使えるちょっとしたクイズについて
もし君が(飲酒できる年齢に達しているとして)友人のマジック・プレイヤーたちと酒場にいて、1杯賭けようという話になった。そんなときに役に立つマジック・クイズだ。
アルファのには、マナコストが(赤)で1/1ゴブリンがいる(ヒント。ついさっきまで話していた単語。ついでに言っておくと《ゴブリン気球部隊/Goblin Balloon Brigade》じゃないよ)。さて、そいつの名前を何も見ないで書けるかどうか。
まあ、試しにどんな綴りだったか思い出してみてくれ。答えはこの下にある。
まだまだ下だよ。
まだまだ。
まだだよ。
まだだってば。
そうだね、ここらで止めてもいいんだけど、なんか楽しくなってきた。
よし!
そろそろイライラしてきた?
こういうことがゴブリンがするようなことなんだよ。
いや、マジで。
いや、ゴブリンがパソコン持ってたらの話だけどね。
質問を忘れちゃった人のためにもう1回。
アルファの1/1のバニラのゴブリンの綴りはなーんだ? 答えはこの下。
おっと、まだ終わらせるつもりはないよ。
まだだね。
こんだけ時間を使ってしまったからには、もう止められないだろ?
まだギブアップするには早すぎるぞ。
映画「オースティン・パワーズ」のオーディオコメンタリーでマイク・マイヤーズが言ってた。
ジョークのオチは引っ張れるだけ引っ張れ、って。
面白さがそれだけ増すんだそうな。
さらに引っ張ると、さらに増す。
ただ、ある点を超えた時点でつまらなくなる。
だけどさらに引っ張ると、また面白くなってくる。
面白さが戻ってきただろ?
今はどう?
今は?
これについてたくさんのEメールが来るだろうなあ。
いつでも止めていいんだぜ? ほら。
ほーら、止めらんなかった。ね?
君は私の手の平の上だ! 逃げられないぞ! ふわはははっ!
分かったよ。もういいか。答えの時間だ。下へどうぞ。
また引っ掛かった。
とはいえそろそろ時間だ。最後に答えをお見せすることにしよう。
君はきっと、いつかチャーリー・ブラウンもルーシーの持ってるボールを蹴ってくれると信じているタイプの人間だろうね。
実は私もなんだ。高校の卒業アルバムでは「一番の楽観主義者」で1位をとったよ。
1位をとれると自分でも信じてたしね。
あまりにも楽観的だから血液型もB型さ。「レット・イット・ビー」ってね。
このジョーク(そう呼べるのであれば)は小さい頃からの持ちネタだよ。
さて、さすがに今回は本当に答えを明かす時間だ。
さすがにここまで引っ張ってしまうと盛り上がりには欠けてしまうだろうけど、このコラムもどこかで終わらせないといけない。さて、答えは……
チャーリー・ブラウンはいつまでもボールを蹴らないだろうね!
どちらにせよ、答えは教えてあげよう。さてそのカードの綴りは? 答えは「Mons’s Goblin Raiders」さ。おそらく大半の君たちは「Mons’s」の s の片方を見落としただろうね。
さて、これでゴブリン週間の記事は終わりだ。みんながこの記事を楽しんでくれたことを祈ってるよ。ああ、ここで言っているみんなというのはここまで飽き飽きしつつも読み終えてくれた君たちだ。
来週はオンスロートの舞台裏について語ろうと思う。
それまでは次の文章に辿りつくまで画面をスクロールさせてくれ。
<文章・終わり>
訳注:
先に終わりだけ見ようとした人は反省してから上に戻って、ちゃんとMark Rosewater氏のジョークに付き合ってあげること。
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