余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 金曜日が来るまでは何の疑いもなく「ああ、カード名に Traitor/裏切り者 が含まれているカードが今週のテーマか」と思ってたんだけど、なんなんだ、あの金曜日のカード。まあ、一応 Traitor に非常に響きの近い単語は入ってるけど……。

余談2:月曜日 《裏切り者グリッサ/Glissa, the Traitor》

 先制攻撃と接死だけでも十分に単体でシナジーしているのに、それに加えて「対戦相手がコントロールするクリーチャー1体が戦場から墓地に置かれるたび」を持つという、1人で全て完結している感のあるグリッサさん。

 単騎での強さを追い求めるヴォリンクレックスさんの派閥に組しただけのことはある。

 ところで、このグリッサさんを見ていると、緑緑を含む3マナの伝説のクリーチャーで「表」と「裏」が作られている、ということから《猫族の戦士ミリー/Mirri, Cat Warrior》を思い出す。こっちも女性だな、そういえば。

 ただし、ミリーの「裏」である《呪われたミリー/Mirri the Cursed》は黒単色。さらに、ミリーは「表」が3マナで「裏」が4マナなのに対して、グリッサは「表」が4マナで「裏」が3マナ。どう見ても対照性などはないので、個人的になんとなく思い出した、というレベルの話。

 というか、そもそもミリーの場合は同一人物じゃなくて平行宇宙の存在。

余談3:火曜日 《裏切り者の王、セドリス/Sedris, the Traitor King》

 こういう「名前の由来」とか「語源」とか「~の言葉で~を意味している」という話はとても好き。そういうのが話のカギになっているとさらによい。ずっと序盤からいるキャラの名前が実は……のように、序盤からずっと目の前にカギはぶら下げられてたのに、みたいなどんでん返しが好き。

 ウェザーライトサーガにもそういうキャラがいたような……敵が変装したキャラか何かで、本当の名前のアナグラムを名前として名乗ってた奴。何か、別の作品と勘違いしてるかな。

余談4:水曜日 《現し世の裏切り者、禍我/Maga, Traitor to Mortals》

 神河物語も、背景ストーリーをあまり把握してない。王様が敵に騙されて精霊の宝物を盗み出してしまって、人間と精霊が争うようになり、本当の悪役が裏でほくそえんでる、という展開だっけか。

 まあ、その程度の理解なので登場人物もよく知らず、この 禍我/Maga もずっと デーモン/Demon だと思ってた。だって名前が「禍我/Maga」だよ!? 太い角を生やした身長3mくらいのマッチョなデーモンを想像してもしょうがないじゃないか。

余談5:金曜日 《バザールの交易商人/Bazaar Trader》

 だから、今週のカードの中で、なんでこれだけ Traitor/裏切り者 じゃなくて Trader/交易商人 なんだ? まあ、記事にあるとおり、ある意味「裏切って」はいるわけだけど、ちょっと解せない。

 個人的に好きなカードである《裏切り者の都/City of Traitors》の出番があるかも、という予想は見事に外れてしまった。さみしい。

 なお《裏切り者の都/City of Traitors》を使ってたのはテンペスト時代の白単ウィニー。

 白白が必要なクリーチャーが多いこのデッキに、なぜ無色2点しか生み出せないこいつが入っていたかというと、その主な理由は1ターン早く《ハルマゲドン/Armageddon》を撃つため(ごくまれに、2ターン目に《サルタリーのチャンピオン/Soltari Champion》を召喚するのに使ったりもしたけど、別にそれが目的で入れてたわけではないので)。

 1ターン目と2ターン目にクリーチャーを展開し、「4ターン目までになんとかすればいいか」と無警戒に3ターン目を返してきた相手に《ハルマゲドン/Armageddon》をぶっ放すと、大体そのまま勝てた。ただ、経験値が高い相手はきっちりその可能性をケアしてきて、やっぱり上手い人ってのは違うなー、と思わされた試合も多かった。

余談6:ウィンストンドラフトとは?/Winston Draft

 題名こそウィンストンドラフトに関するものになっているけど、むしろ「アーロン・フォーサイスが先週記事を休まざるを得なかった理由」と「開発部とドラフトについて」が大半を占めている、そんな記事。

 その「開発部とドラフトについて」書かれた中に、ロチェスタードラフトの話が取り上げられていた。

 学生時代に一度だけロチェスタードラフトをやってみたことある。一度しか試していないのに結論づけるのは難しいかもしれないけど、やっぱり普通のブースタードラフトのほうが楽しいと思った。

 敬遠してしまう主な理由は、身もフタもないけど記事に書かれている通りで「時間がかかる割りに、それほど面白くない」から。

 仲間内で遊ぶ分には、ごちゃごちゃと会話しながら進めたい(多分、本来はダメなんだろうけど)。だけどそれやるとピックに他人の意思が影響してしまう。簡単に言うと、手を伸ばした瞬間に「ああ、それ取らないで!」みたいな。

 じゃあ黙って遊ぶか、というと、とんでもなく息苦しい場になる。ブースタードラフトなら自分の手にあるカードをじっと眺めているだけだからそれでもいいんだけど、ロチェスターの場だと、他人の番にすることがない(慣れれば早く終わるからそうでもない?)。

 とはいえ、ロチェスタードラフトでしか出来ないこと、起きないことってのもあるわけで(同じカードが2枚出ない、どんな爆弾カードも必ず1枚は存在する、など)、結局はメリットとデメリットを天秤にかける、って話になるんだろう。

 ああ、そうそう。準備が大変、ってのを忘れてた。全カード1枚ずつを用意するのって、意外と面倒くさい。確かうちらのときは一部プロキシ・カードを使ったような気がする。やっぱりそこまでして遊びたいフォーマットかというと返答に窮してしまうものがある。

 さて、対してウィンストンドラフトがどうかというと、実は遊んだことがない。あったかもしれないけど、記憶にはない。

 2人いればよし、適当に集めた90枚のカードがあれば出来る、再利用も可能、というのはお手軽そうでいい。だけど、まあ、やったことないから、具体的な感想はなんとも。

 次に帰国するとき、やってみようかな。ブースター6つを用意して……ああ、今は土地が1枚入ってるのか。ブースター6つから土地を除くと84枚。1人当たり42枚は少ないかな? ブースター7つで98枚のほうが良さそう。

 何にせよ、次の帰国は、またしばらく先のことではあるけれど。

余談7:公式サイト

 公式サイトのグランド・マナ・ツアーが意外と面白かった。冗談めかしてはいるけれど、実際に肌で感じてみると色々と変わって見えてくるものがある、というのは本当の話。

  公式サイト:グランド・マナ・ツアー
  http://mtg-jp.com/reading/translated/001704/

 もっとも、今現在住んでる場所は基本地形より特殊地形のほうが簡単に見つかる環境。《砂漠/Desert》、《不毛の大地/Wasteland》、《乾燥台地/Arid Mesa》……ってか、冗談抜きで基本地形に該当しそうな地形が見当たらない。

 ある意味、黒マナは出るんだけど、なぜか赤の魔法にしか使えない不思議。実際、工場地帯へ行くと煙突の先に《火炎/Flare》がゆらめいてる。
締め付け/Stranglehold - 統率者 レア
Stranglehold / 締め付け (3)(赤)
エンチャント
あなたの対戦相手はライブラリーを探せない。
いずれかの対戦相手が追加ターンを開始する場合、代わりにそのプレイヤーはそのターンを飛ばす。

 特にこのカードに関するトリビアはない。
 単に私たちは皆さんにこのカードのフレイバーテキストを楽しんで欲しいだけだ。
 蛮人の出す謎に対する正しい答えは、己の知性に喉を詰まらせて死ぬことだ。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
謎の守り手/Riddlekeeper - マジック・ザ・ギャザリング-統率者 レア
Riddlekeeper / 謎の守り手 (2)(青)
クリーチャー - ホムンクルス(Homunclus)
クリーチャーが1体あなたかあなたのコントロールするいずれかのプレインズウォーカーに攻撃するたび、そのクリーチャーのコントローラーは自分のライブラリーの一番上から2枚のカードを自分の墓地に置く。
1/4

 《謎の守り手/Riddlekeeper》は ホムンクルス/Homunclus であり、これはマジックにおいてなかなかレアなクリーチャータイプ(註1)だ。
 ところでこいつは未来予知の《結ばれた奪い取り/Bonded Fetch》(註2)となんらかの関係がありそうに見えてしょうがないんだが、君はどう思う?

(註1) レアなクリーチャータイプ
 原文では文章のこの箇所に、サブタイプが ホムンクルス/Homunculus である、という条件で検索した結果へリンクが張られている。

(註2) 《結ばれた奪い取り/Bonded Fetch》
 未来予知の「未来からやってきた」タイムシフトカード。当然のように ホムンクルス/Homunculus。その外見については以下のリンク先を参照のこと。
 参照:http://magiccards.info/fut/en/50.html

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
野生への貢ぎ物/Tribute to the Wild - マジック・ザ・ギャザリング-統率者 アンコモン
Tribute to the Wild / 野生への貢ぎ物 (1)(緑)
インスタント
各対戦相手はアーティファクト1つかエンチャント1つを生け贄に捧げる。

 マローの魔術師のうち、ムルタニとモリモについては過去にフレイバーテキスト(註1)で登場したことがあるが、今まで知られることのなかったマローの魔術師、モドルーニが姿を現したのはこのカード(註1)が初めてだ。(註2)

(註1) このカード
 《野生への貢ぎ物/Tribute to the Wild》のフレイバーテキストは以下の通り。
原文:
 "You may enter, but leave those lifeless things of your world behind."
 -Modruni, maro-sorcerer.
日本語訳:
 「入るのは構わぬが、お前の世界のその生命無き物は置いてくるがよい。」
 --マローの魔術師、モドルーニ
引用元:http://gatherer.wizards.com/Pages/Card/Details.aspx?multiverseid=236998

(註2) フレイバーテキスト
 マローの魔術師、ムルタニとモリモの言葉がフレイバーテキストに載っているのはそれぞれ以下の通り。

 ムルタニは、自身である《マローの魔術師ムルタニ/Multani, Maro-Sorcerer》のフレイバーテキストに本人の言葉が載っている。
原文:
 "To make peace with the forest, make peace with me."
 -Multani, to Urza
 引用元:http://magiccards.info/ul/en/107.html

日本語訳:
 森と和平を結びたいなら、わたしと和平を結ぶことだ。
 --- ムルタニからウルザへ
 引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Multani%2C+Maro-Sorcerer/

 モリモも、自身である《マローの魔術師モリモ/Molimo, Maro-Sorcerer》のフレイバーテキスト(註3)に本人の言葉が載っている。ちなみに、初出のインベイジョンと再録されたArchenemyでそれぞれフレイバーテキストの内容は異なっている。

 また第10版Duels of the Planeswalkersで再録された際には、トランプル能力の注釈文が長々と追加されたせいでフレイバーテキストのスペースがなくなっている。

(註3) 《マローの魔術師モリモ/Molimo, Maro-Sorcerer》のフレイバーテキスト
 インベイジョンArchenemyそれぞれのフレイバーテキストは以下のとおり。なおArchenemyには日本語版がない。
【インベイジョン版】
原文:
 "The world calls and I answer."
 引用元:http://magiccards.info/in/en/199.html

日本語訳:
 世界が呼び、私が応える。
 引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/INV199/

【Archenemy版】
原文:
 "My mind is the spread of the canopy. My heart is the embrace of the roots. I am deathless Llanowar, its fury and its peace."
 引用元:http://magiccards.info/dpa/en/74.html

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
マグマの力/Magmatic Force - マジック・ザ・ギャザリング-統率者 レア
Magmatic Force / マグマの力 (5)(赤)(赤)(赤)
クリーチャー - エレメンタル(Elemental)
各アップキープの開始時に、クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。マグマの力はそれに3点のダメージを与える。
7/7
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Magmatic+Force/

 統率者のセットに収録されている《マグマの力/Magmatic Force》と《天界の魔力/Celestial Force》(註1)のコンビは、両方とも各プレイヤーのアップキープの開始時に何かをしてくれるカードだ。
 彼らは《新緑の魔力/Verdant Force》(註2)と何か関係があるんだろうか? あるのかもしれないよ!

(註1) 《天界の魔力/Celestial Force》
 本文にあるとおり《マグマの力/Magmatic Force》と対になっているクリーチャー。
Celestial Force / 天界の魔力 (5)(白)(白)(白)
クリーチャー - エレメンタル(Elemental)
各プレイヤーのアップキープの開始時に、あなたは3点のライフを得る。
7/7
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Celestial+Force/

(註2) 《新緑の魔力/Verdant Force》
 元祖「トリプルシンボルを含む8マナで各アップキープに何かする」クリーチャー。
Verdant Force / 新緑の魔力 (5)(緑)(緑)(緑)
クリーチャー - エレメンタル(Elemental)
各アップキープの開始時に、緑の1/1の苗木(Saproling)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
7/7
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Verdant+Force/

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
吸肉/Syphon Flesh - マジック・ザ・ギャザリング-統率者 アンコモン
Syphon Flesh / 吸肉 (4)(黒)
ソーサリー
他の各プレイヤーはクリーチャーを1体生け贄に捧げる。あなたはこれにより生け贄に捧げられたクリーチャー1体につき、黒の2/2のゾンビ(Zombie)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Syphon+Flesh/

 統率者の《吸肉/Syphon Flesh》のおかげで「命」「心」「魂」に加えて「肉」も吸い上げられるようになった(註1)。ちなみに他に吸い上げられるものは「呪文」と……えーと「リスティック」もだね(註2)。

(註1) 「生命力」「心」「魂」
 それぞれ《吸命/Syphon Life》(註3)、《吸心/Syphon Mind》、《吸魂/Syphon Soul》というカードがある。全て「相手が何かを失い、かわりに自分がそれを得る」カード。

(註2) 「呪文」と「リスティック」
 それぞれ《呪文の吸い上げ/Spell Syphon》と《リスティックの吸管/Rhystic Syphon》というカードがある。「リスティック」の方はライフを吸い上げるカードだけど、「呪文」のほうは「~を支払わない限り打ち消す」系統の不確定な打ち消しカウンター。

(註3) 《吸命/Syphon Life》
 ちなみにMTG Wikiによると、ミラディンのプレイテスト時には《Life Syphon》というカードがあったらしい。プレイテスト中のファイルを紹介しているMark Rosewater氏のコラムの中で言及されていたカード(以下のリンク先は英語)。
 参照:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr96

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
 以下の基本セット2012の紹介記事で言及されていた、過去の戦略記事を翻訳してみた。
 http://regiant.diarynote.jp/201108071520473612/

 以下の通り、既に訳されていた方がいたことにあとから気づいたけど、自分の翻訳記事からリンクを張るならやっぱり自力で訳した記事の方がよかろうということでアップしてみる。

 既訳:Who’s The Beatdown?
 http://72743.diarynote.jp/200612211801140000/

DOJOからまた1つ/Another Classic from THE DOJO
元記事:http://www.starcitygames.com/php/news/article/3692.html

 遥か昔、世界初のマジック専門サイトであるDojoがあった。このサイトはマジックのもっとも基礎的な原理をいくつも世に広めたという点において今なお伝説的な存在だ。ほぼ全ての戦術的なセオリーはその起源を辿ればDojoに記事を寄せていた偉大なるライターたちに辿り着く。本気でマジックに取り組んでいるプレイヤーであれば誰でも、これら古いベテランたちへ感謝の念を忘れてはいけない。

 残念ながら、経済的なあれやこれやという実にありがたい事情により、このDojoというサイトはビジネスが立ちゆかなくなり2000年に閉鎖されることとなってしまった。そのとき、4年という歳月をかけて集積された叡智を救うべく土壇場で、とある働きかけが為された。編集部は将来的にも記事が閲覧可能となるよう、マジックのコミュニティに対し記事のアーカイブ化を求めたのだ。

 Dojoの記事の中でも特に価値の高いものはこのサイトに再掲載している。なぜならこれらは今日のマジックにとっても今なお力となるものだからだ。このStarCityGames.comのサイトでは内容に手を加えずそのまま載せている。ただ最近のプレイヤーたちが見たことがないであろう古いカードにリンクを加えてはいる。そうすることで紹介されている戦術を理解する助けになるはずだと考えたからだ。

 Dojoに記事を寄せていたライターの多くは今なおマジックで活動しており、他のサイトでも記事を書いている。コミュニティが育った功労者である彼らへときにはエールを送ってくれ。

<編集部より>

ビートダウン VS ビートダウンはあり得ない/Who’s The Beatdown?
Mike Flores
1999年01月01日
元記事:http://www.starcitygames.com/php/news/article/3692.html

 トーナメントでもっともよく目撃するミスは(小さいもの、大きいもの含めて)似たようなデッキで対戦している際に、自分がビートダウン側なのかコントロール側なのかの見極めを誤っているというものだ。

 自身の立ち位置を見誤っている側が負けるのは自明の理だ。

 分かると思うが、似たようなデッキ同士のマッチアップは、それらのデッキが真の対称性を持っていない限り(つまり完璧なミラーマッチでない限り)片方のデッキがビートダウン側となり、もう片方がコントロール側とならざるを得ない。このことは、例えば両方のプレイヤーがアグレッシブなデッキを使っているときなどに激しいジレンマを産む。

 ここで具体的な例を挙げてみよう。

 ワシントンDCで行われたプロツアー予選での話だ。私のチームメイトであるAl Tranは、ベスト8を賭けてスライデッキ(註)と対戦していた。Alが使っていたのは白赤のジャンクデッキ(註1)だ。ジャンクデッキは、通常、アグレッシブなデッキとして分類される……しかし、スライデッキとの対戦時は別だ。
(註) スライデッキ
 低マナ域のクリーチャーと火力で固めた赤単。序盤から攻撃に特化した小型クリーチャーで攻め立て、ブロッカーは火力で排除し、相手のライフが残り少なくなったら火力を直接本体へ集中させて勝つ。

(註) 白赤のジャンクデッキ
 赤と白の低マナ域の優良カードを集めたビートダウンデッキ。《サバンナ・ライオン/Savannah Lions》などのウィニークリーチャーで攻めつつ、《稲妻/Lightning Bolt》、《呪われた巻物/Cursed Scroll》などの除去でブロッカーを排除し、同じ火力でとどめをさす。
 参照:http://mtgwiki.com/wiki/PT_Jank

 マッチアップは1勝1敗の五分五分となり、第3試合の結果によってベスト8が決まることとなった。Alの対戦相手が先攻を取り、《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を場に出した。

 この時点でAlの手札には2枚の《呪われた巻物/Cursed Scroll》、2枚の《剣を鍬に/Swords to Plowshares》、1枚の《名誉の道行き/Honorable Passage》、そして数枚の土地があった。
Jackal Pup / ジャッカルの仔 (赤)
クリーチャー - 猟犬(Hound)
ジャッカルの仔にダメージが与えられるたび、それはあなたにそのダメージに等しい点数のダメージを与える。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Jackal+Pup/

Cursed Scroll / 呪われた巻物 (1)
アーティファクト
(3),(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード名を1つ指定する。あなたの手札からカードを1枚、無作為に公開する。そのカードが指定されたカードであった場合、呪われた巻物はそれに2点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cursed+Scroll/

Swords to Plowshares / 剣を鍬に (白)
インスタント
クリーチャー1体を対象とし、それを追放する。それのコントローラーは、そのパワーに等しい点数のライフを得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Swords+to+Plowshares/

Honorable Passage / 名誉の道行き (1)(白)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。このターン、あなたが選んだ発生源1つが次にそれに与えるすべてのダメージを軽減する。赤の発生源からのダメージがこれにより軽減された場合、名誉の道行きはその発生源のコントローラーに同じ点数のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Honorable+Passage/

 Alは《ジャッカルの仔/Jackal Pup》の牙を鍬に変えることはせず、最初の攻撃によって2点のダメージを受けることを選択した。対戦相手はさらにもう1体のジャッカルを用意した。Alはこれにも《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を唱えず、《稲妻/Lightning Bolt》を引くか巻物のマナが溜まるのを待っていた。

 Alは自身の2ターン目にもう1枚土地を置き《呪われた巻物/Cursed Scroll》を設置した。これによってアンタップしている土地は1枚。

 対戦相手の3ターン目に3枚目の山が着地し、君の予想通り《ボール・ライトニング/Ball Lightning》が後に続いた。Alは《剣を鍬に/Swords to Plowshares》を《ボール・ライトニング/Ball Lightning》に唱えざるを得なかった。Alはこれによってその後の数ターンは稼げたが、結局は《稲妻/Lightning Bolt》に焼かれて死んでしまった。

 何が問題だったのだろうか?

 Alが使っていたのはビートダウンデッキだ。そのため彼は対戦相手にダメージを与えつつ《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を除去したかった。しかし今回のマッチアップの限れば、彼は自身のデッキをコントロールデッキとしてプレイべきだった。

 分かってもらえると思うが、スライデッキはジャンクよりずっと速いデッキなのであり、ジャンク側が勝つためにはスライデッキの序盤を除去呪文で抑え込み、中盤から《呪われた巻物/Cursed Scroll》で相手をロックするという作戦で行くしかない。

 何しろスライデッキ側にはこちらより枚数の多い《稲妻/Lightning Bolt》や《呪われた巻物/Cursed Scroll》があるわけで、ジャンク側が勝つためには、自身のデッキに入っている同じカードたちを駆使してライフを安全圏に保っておく必要があるのだ。

 2匹の《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を《剣を鍬に/Swords to Plowshares》で除去することによってスライデッキ側に4点のライフを回復させてしまうことは、ライフレースにおいて表面上は不利に見えるかもしれない。

 しかし上記の例を見てもらえば分かるとおり、結果的にAlは《ボール・ライトニング/Ball Lightning》に対してそれを唱えることで6点のライフを献上している。そうしてさえ、2体の《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を除去するまでに少なくとも8点以上のダメージを受けてしまっているのだ。

 《ジャッカルの仔/Jackal Pup》を《剣を鍬に/Swords to Plowshares》し、《ボール・ライトニング/Ball Lightning》に対して《名誉の道行き/Honorable Passage》を唱えておいたほうが、ずっとAlにとって有益だったはずだ。

 そうしていればライフを20点近くに保ったまま中盤に突入することが可能となり、あらためてその時点から《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》や《サルタリーの僧侶/Soltari Priest》などで攻撃に転じることが出来ていたはずだからだ。

 似たような対比がコントロールデッキ同士がぶつかり合った際にも見られる。同じプロツアー予選で私はハイタイド(註)でカウンタースリヴァー(註)に挑んでいた。通常であれば不利なマッチアップだ。
(註) ハイタイド
 コンボデッキの一種。キーカードは、唱えたターンだけ《島/Island》から1点余分に青マナが出るようになる《High Tide》と各種フリースペル(唱えたらマナコスト分の枚数の土地をアンタップできる呪文の総称)。
 これらが組み合わさると1ターンにいくつも呪文を唱えつつマナがどんどん増えるという状態に持っていける。勝ち手段は複数あるが、この記事のデッキは生み出した大量のマナで《天才のひらめき/Stroke of Genius》(= X枚のカードを対象のプレイヤーに引かせるインスタント呪文)を相手に打ち込むタイプらしい。

(註) カウンタースリヴァー
 クロック・パーミッションの一種、というか元祖。低マナ域のクリーチャーで攻めつつ、余らせたマナで相手の動きを阻害して殴りきるタイプのデッキ。序盤から毎ターンコンスタントにダメージを刻み続けることを「クロックを刻む(時計の針を刻む)」と呼ぶことからその名がついたらしい。

 対戦相手のデッキにはこういったデッキで見慣れたスリヴァーたちと《崇拝/Worship》、さらに打ち消し呪文と《呪われた巻物/Cursed Scroll》とが入っていた。

 彼の過ちは、このマッチアップにおいて自身がコントロールデッキ側だと考えたことだ。

 2ターン目に《水晶スリヴァー/Crystalline Sliver》をプレイしたあと、さらにその2ターン後に彼は《崇拝/Worship》を唱えた。マナを使い切った相手に、私は《天才のひらめき/Stroke of Genius》を唱えてデッキを空にしてやった。

(1試合目で私は彼を《パリンクロン/Palinchron》で撲殺した。それだけでなく私が対戦相手に見せたカードは主に《撹乱/Disrupt》や《魔力の乱れ/Force Spike》やドロー呪文だけだったため、おそらく彼は私のデッキがヘビークリーチャーに頼ったデッキと判断したのだろう)
Palinchron / パリンクロン (5)(青)(青)
クリーチャー - イリュージョン(Illusion)
飛行
パリンクロンが戦場に出たとき、土地を最大7つまでアンタップする。
(2)(青)(青):パリンクロンをオーナーの手札に戻す。
4/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Palinchron/

 どうやって勝ったかはあまり関係ない。彼はこの対戦において自分の側がコントロールデッキだと考えていた。しかし実際は明らかにこちら側がコントロールデッキだったのだ。

 私は彼と同等かそれ以上の量の打ち消し呪文を持っており、彼がスリヴァーを入れているスペースに私はドローやデッキ操作を入れていた。彼がデュアルランドを入れているかわりに私は《Thawing Glaciers》を入れていた。
Thawing Glaciers
土地
Thawing Glaciersはタップ状態で戦場に出る。
(1),(T):あなたのライブラリーから基本土地カードを1枚探し、そのカードをタップ状態で戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。次のクリンナップ・ステップの開始時に、Thawing Glaciersをオーナーの手札に戻す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Thawing+Glaciers/

 私は《Thawing Glaciers》によって土地が止まらないことを保証されており、また私は彼の《渦まく知識/Brainstorm》を何枚かすでに《撹乱/Disrupt》してもいた。これはつまり長期戦になりさえすれば私の勝ちが決まっているということだ。

 彼がすべきだったのは、こっちの体制が整う前に私のライフをゼロにすることだったのだ。

 彼のデッキの勝ちパターンは、パワー2以上のスリヴァーを何体かプレイしてそれらで毎ターン攻撃をしつつ、立たせておいたマナで相手の脅威となる呪文だけを打ち消す、というものだ(脅威となる呪文とは、ご存知の通り《神の怒り/Wrath of God》や《仕組まれた疫病/Engineered Plague》、さらには今回の対戦でいえばコンボの要である《High Tide》も含まれる)。

 まず初めに彼はもっとアグレッシブに攻めるべきだった。今回のようにたった1体の《水晶スリヴァー/Crystalline Sliver》で攻めるだけでは、私に《Thawing Glaciers》とドロー呪文を使う時間をそれだけ与えることになってしまう。次に、タップアウトすることは死と同義だ。私からしてみれば《転換/Turnabout》を撃つ手間を省いてもらっているだけだ。

 似たようなデッキで対戦する際に、自身がどちら側としてプレイすべきかを確認する指針としては以下のような点が挙げられる。

 1. よりダメージ源を持っている側は? 通常、そっちがビートダウン側であるべきだ。
 2. より除去を持っている側は? 通常、そっちがコントロール側であるべきだ。
 3. より打ち消しとドローを持っている側は? ほぼ確実にそっちがコントロール側だ。

 もし君がビートダウン側であれば、君のすべきことは対戦相手よりも早く相手を倒すことだ。もし君がコントロール側であれば、君のすべきことは序盤のビートダウンからの攻撃を切り抜け、カードアドバンテージを得られる中盤以降へ辿り着くことだ。

 ビートダウン側とコントロール側の見極めに関する良い例として、1998年のアメリカ選手権のトップ8で発生した、David PriceとAndrew Pacificoによるスライデッキ同士の対戦を見てみよう。

 表面上はこれら2人のプレイヤーは非常に似通ったデッキ(註)を使っているように見える。しかしよく見るとそこには大きなデザインの違いがあることが分かる。
(註) デッキ
 原文にデッキ内容は載っていないが、別のページで運良く発見したので紹介しておく。

Andrew Pacifico

 メインデッキ

  4 《ボール・ライトニング/Ball Lightning》
  1 《蛮行ゴブリン/Goblin Vandal》
  4 《ジャッカルの仔/Jackal Pup》
  4 《モグの狂信者/Mogg Fanatic》
  4 《モグの下働き/Mogg Flunkies》
  3 《スークアタの槍騎兵/Suq’Ata Lancer》
  2 《ヴィーアシーノの砂漠の狩人/Viashino Sandstalker》

  3 《呪われた巻物/Cursed Scroll》
  4 《火炎破/Fireblast》
  4 《火葬/Incinerate》
  4 《ショック/Shock》
  2 《音波の炸裂/Sonic Burst》
  
  17 《山/Mountain》
  4 《不毛の大地/Wasteland》
  
 サイドボード

  3 《モグの偏執狂/Mogg Maniac》
  3 《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk》
  3 《発展の代価/Price of Progress》
  3 《紅蓮破/Pyroblast》
  3 《呪文ショック/Spellshock》

David Price

 メインデッキ

  4 《ボール・ライトニング/Ball Lightning》
  4 《投火師/Fireslinger》
  4 《鉄爪のオーク/Ironclaw Orcs》
  4 《ジャッカルの仔/Jackal Pup》
  4 《モグの狂信者/Mogg Fanatic》
  
  4 《呪われた巻物/Cursed Scroll》
  4 《火炎破/Fireblast》
  2 《ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan》
  4 《火葬/Incinerate》
  4 《ショック/Shock》
  1 《音波の炸裂/Sonic Burst》
  
  17 《山/Mountain》
  4 《不毛の大地/Wasteland》
  
 サイドボード

  4 《ボトルのノーム/Bottle Gnomes》
  3 《ドワーフ鉱夫/Dwarven Miner》
  1 《ドワーフの秘術師/Dwarven Thaumaturgist》
  1 《炎の嵐/Firestorm》
  4 《紅蓮破/Pyroblast》
  1 《拷問室/Torture Chamber》
  1 《破壊的脈動/Shattering Pulse》

参照元:http://www.starcitygames.com/php/news/print.php?Article=13967

 DavidのデッキはPacificoよりも《呪われた巻物/Cursed Scroll》の枚数が多く、また彼のデッキには《ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan》と《投火師/Fireslinger》も入っている。彼のデッキでビートダウンと呼べるのは《ジャッカルの仔/Jackal Pup》と《ボール・ライトニング/Ball Lightning》くらいのものだ。それら以外のカードは、どちらかというとコントロール寄りであったり、汎用性に富んだものと言える。

 Pacificoのデッキはそれよりもずっとダメージを与える機能に寄ったものだ。除去に貢献することのない攻撃に特化した軽いクリーチャーが大半を占めている。《ジャッカルの仔/Jackal Pup》と《ボール・ライトニング/Ball Lightning》に加えて、彼のデッキには《蛮行ゴブリン/Goblin Vandal》、《モグの下働き/Mogg Flunkies》、《スークアタの槍騎兵/Suq’Ata Lancer》、そして《ヴィーアシーノの砂漠の狩人/Viashino Sandstalker》が入っている。さらに言うと、Pacificoのデッキには《投火師/Fireslinger》と《ボガーダンの鎚/Hammer of Bogardan》が無く、《呪われた巻物/Cursed Scroll》も3枚しか入っていない。

 先手をとれるのは間違いなくDavidのデッキだが、この対戦において彼のデッキはより長期戦に適したデッキであり、つまりはコントロール側である。ある試合で、Davidがプレイしたのはほとんど土地と巻物だけだった。彼はPacificoのクリーチャーを相打ちや火力で除去してから巻物でロックを固め、カードアドバンテージを多少得たところでゲームを終わらせてしまった。

 もしDavidがPacificoに正面切ってダメージレースを挑んでいたら、勝てていたかどうかは分からない。2人のプレイヤーがひたすら互いのクリーチャーを相手プレイヤーへ突撃させた場合、より攻撃に特化したカードを持っているほうが勝つはずだ(とはいえDavidは「King of Red」の通称で呼ばれる男であり、スライデッキの戦い方も当然熟知しているはずではあるが)。

 最後に、スーサイドブラック(註)とスライのマッチアップを考えてみよう。
(註) スーサイドブラック
 異様に前のめりな黒単。低マナコストかつ高性能なかわりに自分のリソースをがりがり削ってしまうカードを大量にぶちこんだデッキ。自殺志願者のようなそのプレイからSuicide(=自殺)の名がつけられた。

 よりダメージに特化しているデッキはどっちだ?

 スーサイドブラックだ。

 コストに比して高いパワーを持つクリーチャーを多く持つ。例えば《カーノファージ/Carnophage》や《肉占い/Sarcomancy》、たまに《肉裂き怪物/Flesh Reaver》も見かける。ときには《憎悪/Hatred》まで入っている。これは自分のライフさえも削ってくれるカードだ。
Carnophage / カーノファージ (黒)
クリーチャー - ゾンビ(Zombie)
あなたのアップキープの開始時に、あなたがライフを1点支払わない限り、カーノファージをタップする。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Carnophage/

Sarcomancy / 肉占い (黒)
エンチャント
肉占いが戦場に出たとき、黒の2/2のゾンビ(Zombie)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
あなたのアップキープの開始時に、ゾンビが1体も戦場に存在しない場合、肉占いはあなたに1点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Sarcomancy/

Flesh Reaver / 肉裂き怪物 (1)(黒)
クリーチャー - ホラー(Horror)
肉裂き怪物がクリーチャーか対戦相手にダメージを与えるたび、肉裂き怪物はあなたにその点数に等しい点数のダメージを与える。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Flesh+Reaver/

Hatred / 憎悪 (3)(黒)(黒)
インスタント
憎悪を唱えるための追加コストとして、X点のライフを支払う。
クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで+X/+0の修整を受ける。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Hatred/

 より除去を持っているデッキはどっちだ?

 スライだ。

 仮にスーサイドブラック側が《呪われた巻物/Cursed Scroll》を使っていたとしても、スライ側は常にそれを上回るだろう。さらにスライにはウィニークリーチャーだけでなく火力がある。

 スライデッキは非常に早い(平均して4ターンキル出来る)が、スーサイドブラックは(そのデッキ内容や儀式の引きにもよるが)2~3ターンキルが可能だ。

 ここまで見ると、明らかにビートダウン側はスーサイドブラックであり、コントロール側はスライだ。しかしそれでもなお、スーサイドブラックはビートダウン側になることはできない。

 クロックを刻むためのクリーチャーを並べることが出来ないからだ。特に《肉占い/Sarcomancy》と《肉裂き怪物/Flesh Reaver》を出せない。なぜならスライには大量の火力が用意されている。

 またスーサイドブラックには《憎悪/Hatred》をプレイする機会は訪れないだろう。本体がそのまま《火葬/Incinerate》されてしまう恐れがあるからだ。

 これらの点により、実際のところスーサイドブラックがビートダウンすることはあり得ず、コントロール側に回らざるを得ない。

 このマッチアップを目撃したことのある人であれば(少なくともスライ側が事故っていないときのこのマッチアップを目撃したことがあれば)、スーサイドブラックがいかにコントロール寄りにプレイされるかをご存知のはずだ。

見切りを誤る = 敗北

 サイドボード後は、スーサイドブラック側が有利だと言われている。

 大量の「自分を傷つける」カードたちのかわりにクリーチャー除去とライフ回復を加えることで、より的確にコントロールデッキを演じることが可能となり、相性は随分と改善される(もしくは一方的となる)からだ。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 今週は、新セットの統率者で初めて収録された新カードたちのお披露目。多人数プレイ推奨のフォーマットだけあって「対戦相手が多いほどお得」なカードばかり。

余談2:月曜日 《締め付け/Stranglehold》

 フレイバーテキストの紹介というだけの記事。このフレイバーテキストがなんか上手いこと言ってるっぽいんだけど、正直なところ内容を理解できていない。

 原文:
  The correct answer to a barbarian’s riddle is to choke on your cleverness and die.
 日本語:
  蛮人の出す謎に対する正しい答えは、己の知性に喉を詰まらせて死ぬことだ。

 なぞなそっぽいフレイバーテキストなので、注釈で補足を入れようかと思ったんだけど、そもそも書いてる本人が内容を理解できていないので諦めた。

 最初見たときは「ああ、なるほどね。蛮人が襲ってきたら小ざかしい知恵で対抗しようとしても力で押し潰されちゃうよね」と分かったつもりになったんだけど、何度も読んでいるうちによく分からなくなってきた。

 そもそも「蛮人の出す謎」とは何か? 大した脳みそを持ってない輩が出してきたなぞなぞということなんだろうか。それだと「子供のなぞなぞなのに、無理に深い意味があるようにとって自滅しないように」という警句になるのかもしれない。

 でもそうだとしたら「己の知性に喉を詰まらせて死ぬこと」が「正しい答え」なわけないよな。その場合の「正しい答え」は「シンプルに考えてシンプルに答えること」になるはず。

 というわけで、別の解釈を考える。

 「蛮人の挑戦に素直に頭を使って答えようなんて自殺行為だ」という意味なんだろうか。ほとんど最初の解釈と同じだけど、これも「自殺行為 = 正しい答え」になってしまうから、意味不明。

 要するに難しいのは「正しい答え = 死ぬこと」の箇所なんだな。分かった。ここから切り崩していくしかない。

 「正しい答え(correct answer)」がどういう意味か。普通に考えたら「死ぬこと」が「正しい」わけはないんだから、これはきっと「唯一の解答である = 他の選択肢がない」ということなのではないかと考えてみる。

 ここで言っている「唯一の選択肢」は「己の知性に喉を詰まらせて死ぬこと」。つまり「頭を使ったせいで死んでしまう」こと。

 余談なんだけど、イラストを見ると確かに「喉を詰まらせて死んでいる」。このイラストのままで、かつフレイバーテキストが「蛮人に出した謎に対して返って来た答えは、自身の知性に喉を詰まらせて死ぬことだった」とかであれば、「出題者 = 非蛮人、回答者 = 蛮人」という分かりやすい話になるんだけど。

 閑話休題。

 というわけで、最終的な解釈は「蛮人に何かを問われました。そのときは何をしても無駄です。唯一の選択肢は、あれやこれやと頭を使って考えをめぐらしている間に首を絞められて死にます」という感じ。

 イマイチ、腑に落ちないけど、これでいいや。

余談3:火曜日 《謎の守り手/Riddlekeeper》

 未来予知の「未来から来たタイムシフトカード」である《結ばれた奪い取り/Bonded Fetch》は、統率者の時代から来たのかもしれない……だって統率者のホムンクルス、《謎の守り手/Riddlekeeper》に外見がそっくりなんだぜ、という話っぽい。

 どうせだったら《結ばれた奪い取り/Bonded Fetch》自体も統率者に収録してしまえば、さらに「ああ、この未来から来ていたのか」と納得できるのに。

 とか言いつつ、実は統率者に収録されているカードリスト知らないんだけど。

余談4:水曜日 《野生への貢ぎ物/Tribute to the Wild》

 新たなマローの魔術師、モドルーニの登場。名前は「Modruni」で、何かのアナグラムっぽいようにも見える。アナグラムの解読は頭の固い人間には向かない作業なので、そういうのが得意な人に任せる。

 個人的に気になったのはどちらかというとモリモの収録セット。

 フレイバーテキストの確認をしているときに知ったんだけど、どうやらモリモはアーチエネミー版が存在するらしい。どうせ多人数フォーマットに収録するなら「パワーとタフネスはそれぞれ、すべてのプレイヤーの手札にあるカードの総数に等しい」の能力を持っているムルタニを収録すればいいのに、と思った。

 もしかして再録禁止カードなんだろうか、と思ったら本当にそうだった。

余談5:木曜日 《マグマの力/Magmatic Force》

 元祖が 《新緑の魔力/Verdant Force》、白に《天界の魔力/Celestial Force》と来たんだから、そこは《マグマの魔力/Magmatic Force》じゃないの?

 とはいえ、誰も関連性を思いつかなかった、なんてことはあるわけないと思うので、きっと色々と話し合った結果に決まった訳なんだろうな。

  「当然、訳は《マグマの魔力》しかありえねーだろ!」
  「《マグマの魔力》ってなんだよ! マグマに魔力があんのかよ!」
  「じゃあ、あんた、《新緑の魔力》なら説明できるってのかよ!」
  「やめて、2人とも! こんな……こんなことになるくらいなら……!」
  「……まずい! 彼女を止めろ! 窓から投げ捨てるつもりだ!」
  「止めないで! 争いの種になるくらいなら、いっそ!」

 冗談はさておき、こういった訳が決まるまでの経緯については結構気になってたりする。1人の考えでさくっと決まるような話じゃなさそうだし、もし機会があれば経緯を見てみたい。ぐるぐる。

余談6:金曜日 《吸肉/Syphon Flesh》

 「肉」を吸われたら、もう「魂」とか「心」とか関係ないような気がするんだけど。

 それはさておき、記事のオチでリスティックについて言葉を濁しているんだけど、この「えーと」という間はどういう意味なのかについて考えてみた。

 1つには「リスティックを吸い取る、ってなんだよ、リスティックを吸い取るって」という意味でのためらいという可能性。もう1つに「あまり思い出したくないけど、ほら、あのがっかりメカニズムのリスティックにも Syphon があるよ」という意味でのためらい、という可能性。

 まあ、前者だろうけどね。

余談7:より良いエンチャントのために(その1)/Enchantment For Better Things, Part One

 ぶっちゃけると、1枚目に紹介されている《死体の花/Cadaverous Bloom》に関する記事の中の、Mark Rosewater と Mike Long の会話を訳したかっただけだったりする。

 《霊の鏡/Spirit Mirror》のトークンに《平和な心/Pacifism》を貼り付けられた話なども面白かったけど、主目的はあくまで《死体の花/Cadaverous Bloom》。

 とはいえ、前編を訳した以上、後編も訳すつもり。個人的に後編の見どころだと思っているのは、2人のマーク(Mark Rosewater、Mark Gottlieb)が対決するところ。

余談8:Tom LaPilleのプロツアー名古屋旅行記/Magical Mystery Tour

 諸事情により急いで訳したので、ところどころ訳が粗い部分がある。
原文:
 This was frustrating, but I can only imagine it happens elsewhere in the world, so I’m glad I experienced it.

拙訳:
 これはあまり楽しい出来事ではなかったが、同じミスは世界のどこかでも起こっているだろうと思う。そう考えると、こんな目にあったのも無駄ではない。

 「one can only imagine」の箇所の訳。間違ってはいないけど「想像に難くない」としたほうが日本語がカッコ良かったかもしれない。その場合「同様のミスが世界のどこかで起きてしまっているということは想像に難くない」のようになる。ただ本音を言うと、原文の「so I’m glad I experienced it」を正しくつかめているのかよく分からない。おそらく「起きやすいミスだから自分で経験しておくことは今後のマジックの開発に携わる上で無駄にはなるまい」という意味だと思ってるんだけど、はてさて。
原文:
 The tools that the Mirage Block versions of this deck used to sacrifice their lands were much more primitive than the cards this fellow was using,

拙訳:
 ミラージュブロック構築時代のこのコンボデッキが自身の土地を破壊するのに使っていたカードは、今回のこの人物が使っていたものよりずっと原始的なカードだった。

 これも訳は間違っていないと思う。単に日本語がカッコ悪いという話。色々と訳の粗い文なんだけど、特に「primitive」の箇所。これは確かに「原始的、粗野」という意味なんだけど、さすがにそのまま訳したのは失敗だったかもしれない。文脈から考えると「当時の弱いカード」を指しているようだから「~よりもずっと非効率的なカード」とか「~よりも貧弱なカード」とかのほうがふさわしい気がする。
原文:
 It was surreal to have Sands of Time / Equipoise reach out of the depths of time and cause me a little bit of misery.

拙訳:
 《時の砂/Sands of Time》と《平衡/Equipoise》が深い時の底から蘇り、私にちょっとした不幸を届けてくれたことは不思議な体験だった。

 自動翻訳かお前は、と言いたくなるような訳。もっとも、じゃあどう訳そうかというと難しい。原文が繊細で詩的な文なので、ちょっとでも意訳を試みると簡単に壊れてしまいそう。まあ、根本的な問題は「surreal」なんだけど。日本だと「シュールレアリスム」で知られてる単語。
原文:
 Nominally speaking, some part of my job is supposed to be research. We sometimes do targeted research like focus testing or surveys,

拙訳:
 名目上、リサーチは私の仕事の一部だ。私たちは時々はターゲットを絞ったリサーチを行う。対象を決めたテストやアンケートなどだ。

 「Nominally」をわざわざ「名目上」と直訳しなくてもよかったかもしれない。「~ということになっている」のほうが自然だったかな。それと「targeted research」の訳だけど、これはどうしたものか。この場合の「Target」は「顧客」なのかな。「顧客リサーチ」とか「顧客を対象としたリサーチ」のような……でも、そもそも顧客以外を対象にしたリサーチなんてないだろうし。

余談9:禁止カード

 今週のマジックコミュニティは、どこもかしこもこの話題で持ちきりだった。

 久しぶりの禁止カードということもあるし、スタンダードから落ちるまでの期間が短いことや、発売したばかりの構築済みに含まれているカードが対象、などなど、これほど話題に事欠かないネタも珍しい。

 とはいえ、実際にカードを持っているわけでもなし、実際に使われたことがあるわけでもなし、ほとんど影響を受けないそんな自分が何か言ってもしょうがないわけで。

 1つだけ言えるとすれば、次がないといいな、ということ。

 やっぱり禁止カードは、色んな人にとって残念な話。今までそのカードに負けてきた人からすれば釈然としないものがあるかもしれないし、今そのカードを持っている人はがっかりするし、新たにパックから引いてしまった人もがっかりするし……禁止カードなんて出ないにこしたことない。

余談10:基本セット2012

 徐々に公式サイトでもプレビューが出始めた基本セット2012。《平和な心/Pacifism》のカードイラストがミラージュ版で懐かしい、とか、そういえばもう《魂の絆/Spirit Link》は存在しなくて《絆魂/Lifelink》なんだっけ、とか、つらつら眺めているだけでも楽しい。

 そうそう。毎度毎度プレビューサイトを探すのがとんでもなく手間なんだけど、どうにかして欲しいな。なんで日本語公式サイトのトップページに基本セットのプレビューへ飛べるリンクを置いてくれないんだろう。
 基本セット2012・特設サイト
 http://www.wizards.com/magic/tcg/products.aspx?x=mtg/tcg/products/magic2012

 まあ、それはそれとして。

 新しいカードで個人的にヒットだったのは《マナリス/Manalith》と《Greatsword/大剣》。

 前者はその名前と能力とイラストとが噛み合いすぎてる。そのうち《厳かなマナリス/Grim Manalith》とか《翡翠のマナリス/Jade Manalith》とか出してくれないかな。

 後者の《Greatsword/大剣》は(強さの残念っぷりは後述するとして)そのファンタジーRPGそのものであるシンプルなネーミングと効果とイラストが素晴らしい。どうせ《Kiteshield》を《カイトシールド》と訳すなら、こっちも《グレートソード》にしてくれればいいのにな。もったいない。

 さて、避けて通れない効果の残念っぷりについて。
Greatsword / 大剣 (3)
アーティファクト - 装備品(Equipment)
装備しているクリーチャーは+3/+0の修整を受ける。
装備(3)((3):あなたがコントロールするクリーチャー1体を対象とし、それにつける。装備はソーサリーとしてのみ行う。このカードはつけられていない状態で戦場に出て、クリーチャーが戦場を離れても戦場に残る。)

 よく、レアリティが違うから比べられない、と言われるけど、その言い訳が通用するレベルを遥かにこえてないか、これ。

 神話レアの「剣」と比べるとさすがに2段階レアリティを理由にされそうなので、レアの「剣」と比べてみようか。どっちでもいいけど、とりあえず《光と影の剣》で比較してみる。

 1.マナコスト
    《大剣》は(3)
    《光と影の剣》は(3)
                             結果:互角
 2.パワーとタフネス
    《大剣》は +3/+0
    《光と影の剣》は +2/+2
                             結果:互角?
 3.装備コスト
    《大剣》は(3)
    《光と影の剣》は(2)
                             結果:《光と影の剣》の勝ち
 4.プロテクション
    《大剣》はなし
    《光と影の剣》は「プロテクション (白と黒)」
                             結果:《光と影の剣》の勝ち
 5.その他の追加効果
    《大剣》はなし
    《光と影の剣》は《死者再生》と《治癒の軟膏》
                             結果:《光と影の剣》の勝ち

 個人的に一番ひどいと思うのは「装備コスト」。いくらなんでもそれくらいは許してあげて欲しい、と思った。差分値をとりまとめてみるとこんな感じか。

 【デメリット】
    ・パワー修整値を1点下げる
    ・レアリティを1段階上げる

 【メリット】
    ・タフネス修整値が2点上がる
    ・装備コストが1点減る
    ・プロテクション (白) を得る
    ・プロテクション (黒) を得る
    ・攻撃が通った際に《死者再生》の効果
    ・攻撃が通った際に《治癒の軟膏》の効果

 パワーとタフネスの修整値でメリット・デメリットを相殺したとすると、レアリティを一段階上げることで「装備コストが下がって、プロテクション (白) を得て、プロテクション (黒) を得て、攻撃が通った際に《死者再生》を誘発して、攻撃が通った際に《治癒の軟膏》を誘発する」ってことだぞ。

 それがレアリティ一段階の差だとすると、《光と影の剣》をさらに神話レアに押し上げることで、それ1本だけで世界を薙ぎ払える剣が生まれるんじゃないか。……いや、《世界薙ぎの剣/Worldslayer》の話じゃなくて。

 ここでさらに《骨断ちの矛槍/Bonesplitter》(マナコスト(1)、装備コスト(1)、修整値 +2/+0、コモン)の話を持ちだしてもいいんだけど、もう《Greatsword/大剣》のライフはゼロよ!、という叫びが聞こえて来たのでここまでにしとく。

余談10:基本セットの名前

 ところでいまだに新しい基本セットの呼び方に慣れない。第4版から入った身としては、単純に「第 N 版」で続けてくれれば楽なのに、と思う。ネット上でも呼び方が「基本セット2012」、「M12」、「M2012」、「基本セットM12」のように表記が色々で検索しづらい。

 変えた理由は、おそらく週刊少年ジャンプで連載されていた「ジョジョの奇妙な冒険」が「スティール・ボール・ラン」になったことや、週刊少年チャンピオンで連載されていた「グラップラー刃牙」が「バキ」になってからさらに「範馬刃牙」になったことと同じ理由じゃないかと、推測してる。

 つまり「積みあがった数字が大きいと、新規読者(ユーザ)が二の足を踏むから」じゃないかと思った。「第13版」とか見せられたら「そんな長い歴史があるのか。今から入っても大丈夫なんだろうか」となるかもしれないけど「M2012」なら「ああ、今年度の商品なんだな」で済む。

 全て憶測だけど。
精神の制御/Mind Control - 基本セット2011 アンコモン
Mind Control / 精神の制御 (3)(青)(青)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mind+Control/

 《精神の制御/Mind Control》は《説得/Persuasion》(註1)のフレイバーを変えただけのものだ。ちなみに《説得/Persuasion》は古代の《支配魔法/Control Magic》(註2)をよりバランスのとれたコストに直したものだ。
 では、少し昔の時代は(3)(青)(青)を払うとどのようなクリーチャー奪取の手段を提供してくれたのだろうか?
 《不実/Treachery》(註3)だ。
 これは、クリーチャーを奪取するだけでなく、土地もアンタップすることが出来た。実にバランスのとれたカードだね!

(註1) 《説得/Persuasion》
Persuasion / 説得 (3)(青)(青)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Persuasion/ (注釈文は省略)

(註2)《支配魔法/Control Magic》
Control Magic / 支配魔法 (2)(青)(青)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
あなたは、エンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Control+Magic/

(註3)《不実/Treachery》
Treachery / 不実 (3)(青)(青)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
不実が戦場に出たとき、土地を最大5つまでアンタップする。
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Treachery/

(余談) 句読点について
 なぜか《支配魔法/Control Magic》のテキストだけ「あなたはエンチャントされている~」ではなく「あなたは、エンチャントされている~」と読点(、)が挿入されている。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
正義の執政官/Archon of Justice - イーブンタイド レア
Archon of Justice / 正義の執政官 (3)(白)(白)
クリーチャー - 執政官(Archon)
飛行
正義の執政官が戦場から墓地に置かれたとき、パーマネント1つを対象とし、それを追放する。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Archon+of+Justice/

 最初に印刷されたバージョンでは《正義の執政官/Archon of Justice》のルールテキストに含まれている単語数は18個だった。
 これが基本セット2012で帰って来る時(註1)には、新用語である「死亡する」の表現のおかげで単語数をきっかり半分になる(註2)。
 もしこのような単語数の減少が、つまり3年ごとに50%減の傾向が今後も継続したら、2020年には《正義の執政官/Archon of Justice》のルールテキストはわずか一語になっているはずだ。

(註1) 基本セット2012で帰って来る時
 原文では以下のURLへのリンクが張られている。内容は基本セット2012で登場するメカニズムについての紹介と解説。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/feature/144

 日本語版はこちら。
 http://www.wizards.com/magic/tcg/article.aspx?x=mtg/tcg/magic2012/mechanics

(註2) きっかり半分になる
 改行位置もカードの表記に合わせて書くと、以下の通り。
イーブンタイド版 (単語数:18)(註3)
   Flying
   When Archon of Justice is put into
   a graveyard from play, remove target
   permanent from the game.

 基本セット2012版 (単語数:9)
   Flying
   When Archon of Justice dies, exile
   target permanent.

 ついでなので日本語版も数えてみた(句読点もカウント)。一応こっちも減りはするけど、さすがに英語版のように半分とまでは減らない。
イーブンタイド版 (54文字)
   飛行
   正義の執政官が場からいずれかの墓地に置か
   れたとき、パーマネント1つを対象とし、そ
   れをゲームから取り除く。

 基本セット2012版 (38文字)
   飛行
   正義の執政官が死亡したとき、パーマネント
   1つを対象とし、それを追放する。

(註3) 単語数について
 イーブンタイド版のルールテキストを、基本セット2012の表記適用前である最新オラクルに従って書き表すと以下の通り。
イーブンタイド版 (単語数:16)(註4)
   Flying
   When Archon of Justice is put into
   a graveyard from the battlefield, exile target
   permanent.

 「死亡する」の表記を用いていないにも関わらず単語数が減少している。

 そう、実は、単語数が大幅に減少したのは「死亡する」の効果だけでなく「remove target ~ from the game」が「exile target ~」に変更されたのが理由の1つでもある。なお日本語版も同様。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
ラノワールのエルフ/Llanowar Elves - アルファ コモン
Llanowar Elves / ラノワールのエルフ (緑)
クリーチャー - エルフ(Elf) ドルイド(Druid)
(T):あなたのマナ・プールに(緑)を加える。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Llanowar+Elves/

 ようやく《大蜘蛛/Giant Spider》の基本セット皆勤賞(註1)が確定したが、しかしこの《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》は残念にもそれを逃した経緯がある。
 初心者に誤解を招きやすい複数形を名前に含むにも関わらず、最近のマジックからも締め出されずにいるほど人気のあるこのエルフたちはほぼ全ての基本セットに収録されている。たった1つの例外を除いて。
 例外とは第8版であり、公式サイトで行われた「第8版を選ぼう」(註2)において《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》は《極楽鳥/Birds of Paradise》との対決に敗れてしまったのだ。

(註1) 基本セット皆勤賞
 全ての基本セットに収録されているカードを俗にこう呼ぶ。原文の表記は Core Set Survivor で、以下のURLへのリンクが張ってある。内容は皆勤賞カードの枚数の推移。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/arcana/718

 皆勤賞カードは、もちろん一番最初の基本セットであるアルファ版に収録されていたカードのみが候補で、その後、基本セットの版数が進むに連れて該当者が減っていった。

 実は今時点の皆勤賞保持者は基本土地を除くとここで挙げられている《大蜘蛛/Giant Spider》、たった1枚を残すのみ(註3)。1つ前のセットでただ2枚残っていた皆勤賞のもう1枚の片割れである《巨大化/Giant Growth》はすでに収録されないことが決定している。

(註2) 「第8版を選ぼう」
 第8版から第10版では、2枚のカード(もしくは複数枚のカード)のどちらを次の基本セットに収録するかをユーザに投票で決めてもらうという企画が公式サイト上で開催された。

 第8版の《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》が負けた対決というのは以下の組み合わせの候補から1つ選ぶというもの。緑1マナの定番マナクリーチャー2体の1体は必ず落ちるという対決。

   候補1:
      《極楽鳥/Birds of Paradise》+《ぶどう棚/Vine Trellis》
   候補2:
      《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》+《ユートピアの木/Utopia Tree》

(註3) 《大蜘蛛/Giant Spider》
 ちなみに、皆勤賞の最後の1枚となったこの《大蜘蛛/Giant Spider》の基本セット2012でのフレイバーテキストは以下の通り。皆勤賞のことを知ってから読むと、また違った意味があるようにも見える。
原文:
 "The wild is always changing, but it does have a few constants."
 ---Garruk Wildspeaker

日本語版:
 「原野は変わり続けているが、変わらぬ物もある。」
 ---野生語りのガラク

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611
オーラ術師/Auramancer - オデッセイ コモン
Auramancer / オーラ術師 (2)(白)
クリーチャー - 人間(Human) ウィザード(Wizard)
オーラ術師が戦場に出たとき、あなたの墓地にあるエンチャント・カード1枚を対象とする。あなたは、それをあなたの手札に戻してもよい。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Auramancer/

 マジックのカード命名ルール(註1)の中でも特に厳しくチェックされるルールの1つは「ゲームの用語がカード名に含まれていてよいのは実際にその用語のメカニズムに関連する働きをそのカードが持つ場合に限る」というものだ(いくつかの例外はあるが)。
 もちろん、このルールを適用できるのは、その命名する当時にすでにその用語が存在していた場合のみだ。
 今では「オーラ」はエンチャントのサブタイプの1つではあるが、このかわいい「何とかマンサー」さんがマンサーできるのはエンチャントであればなんでもよい。オーラには限らない。

(註1) マジックのカード命名ルール
 マジックの命名ルールについて興味のある方は、数多くあるそのルールについて事細かに説明されたこちらの公式コラムを参照のこと。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/db12

 以下は上記コラムの拙訳。
 http://regiant.diarynote.jp/201101290607062000/

 ちなみにゲームの用語と命名に関するルールについては、上記コラムの6番目に紹介されている説明を参照のこと。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0611

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