《ヴォーパルス戦記譚》 第3回:スカウティング・マイ・アーミー
2012年8月18日 ヴォーパルス コメント (2) 「ヴォーパルスを1人プレイしてみてそこから浮かび上がった物語を文字に書き起こしてみよう」という誰が得するのか謎な企画の第3回目。その他、詳しいことは以下の第1回目を参照のこと。
《ヴォーパルス戦記譚》 第1回:虚飾の王の物語
http://regiant.diarynote.jp/201206102238015544/
前回は全力でフレイバー重視なものを書いたので、今回は逆にほぼゲームそのまま。ドラフト時にどういったことを考えながらカードをピックしているかをまとめてみた。おそらくゲーム未経験者にはほとんど意味が分からない内容になってる。ごめんなさい。
一応簡単にゲームの流れを説明すると、マジックのドラフトと同じ要領でカードをピックしていく。初手にランダムで配られる5枚の手札から1枚をピックし隣に回す、というのを5回繰り返して5枚の手札を獲得。そのうち4枚まで場に配置し、1枚を次ターンへキープ。これを4ターン繰り返す。実際に4人以下で遊ぶ場合は初手の何枚かが帰ってくるが、今回の1人プレイでは「5枚山札から引き1枚ピック、4枚山札から引き1枚ピック、以下略」という手順で遊んでいる。
もっと知りたい方は作者のブログに詳しいことが書いてある。PDF形式のルールブックもダウンロードできるし本当の意味でのリプレイも載っているので、興味があればぜひ。
ドラフト式カードゲーム『ヴォーパルス』の紹介
http://iwasgame.sakura.ne.jp/archives/445
また記事の表記として、ターンとピック順の表記は「1ターン目の1ピック目」を「1-1」とする(3ターン目の4ピック目は「3-4」となる)。《 》でくくっているものはカード名を表し、【 】でくくっているものは3種類ある資源を指す。
というわけで、はじまりはじまり。
《ヴォーパルス戦記譚》 第3回:スカウティング・マイ・アーミー
<プロローグ>
ここは北方に位置する名もなき島。幾多の小国をまとめあげた皇帝が崩御し、ついにまた100年の戦乱が始まろうとしている。ここはその小国の1つ。島の覇権を狙う諸侯の1人としての責務を負わされた現領主はまだ若く、養育係でもある相談役の老人が常に付き従っている状態である。
「若様、起きてくだされ」
「なんじゃ、じい。まだ日も昇っていないではないか」
実直そうな白髪の老人に揺り起こされた少年は眠たげに蒼い目をしょぼつかせながら外の暗さに顔をしかめた。起きたばかりでくしも入れていない金髪の巻き毛はくるくると好き勝手な方向に跳ねている。
「お忘れですか。今日は我が領地への仕官を望む者たちが訪れる日にございますぞ」
「いかん、そうじゃったな。今起きるぞ(ぐう)」
「若様! 器用な寝言はおやめくだされ!」
1ターン目
<1-1>
《バルダンダース》、《軍師》、《ベヒモス》、《ゴーレム》、《木こり》
「ほうほう、見所のありそうな面々が集まっておりますな」
「じい。お城の中庭が化け物でいっぱいに見えるんじゃが」
「そうでございますか?」
「うむ。とりあえずあのぐねぐねと形の定まらぬのはなんじゃ」
「あれは《バルダンダース》ですな。初手に選ぶにはちと弱いと言わざるを得ません。序盤はまずはなんと言ってもレベル2の建物を作ることにありますゆえ」
「建築ということは《木こり》かの。【木材】なくして建物なし、じゃったか」
「おお、きちんと勉強されておりますな。ええ、《木こり》は受けの広い良い選択と思います。《ゴーレム》は2ターン目の配置フェイズにレベル2の建物を作れますが、配置後となってしまうのでレベル2の建物の利点がイマイチ活かされませぬ」
「レベル2の建物の利点? 勝利点が稼げることじゃったか」
「若様、勉強をさぼっておりましたな。レベル2の建物の利点はなんというても、5枚目の配置です。通常は前衛に2枚と後衛に2枚の4枚までしかできない配置を5枚に増やせることこそがレベル2の建物を建築する最大の理由ですぞ」
「分かった、分かった。ところで、うちの城よりデカいあの豚はどうじゃ」
「論外です」
「そうか」
<1-2>
《ゴーレム》、《大蛇》、《画家》、《ファンガス》
「じい」
「おお、何かいい案がござりますか」
「なんだ。我が領地には化け物しかおらんのか」
「何をおっしゃいます! ごらんください。あそこに《画家》がおるではないですか」
「いやむしろ《画家》が何をしに来ているのかが気になるんじゃが」
「まあ、確かにこの中では一番弱いかもしれませんなあ。【食料】戦略なら《ファンガス》ですし、兵力重視ならば《大蛇》ですな。《大蛇》はのちに収入に替わりますので、兵力増強ともかみあいます」
「《ゴーレム》はいらんな。さっきもスルーしたし」
「いえいえ、若様。あのときとは状況が変わっておりますぞ! 【木材】を手に入れた今、このあとの3巡以内に【鉱石】が1つでも手に入れば《霊廟》を建てることが出来ますゆえ」
「それはよいことなのか?」
「《霊廟》は勝利点と収入を両方カバーできる良い建物です。《祝宴》と違い、カードに依存しません。その分、レベルアップの条件が厳しいですが《ゴーレム》であればその点をクリアできます。2ターン目に5枚配置できないデメリットを考えても、《ゴーレム》ピックは選択肢の1つとしてありと思われまする」
「なるほど。では《画家》以外から選ぶとするか。それでは《ゴーレム》にするかの」
「ほう、渋いですな。【鉱石】を引く自信がおありで」
「序盤は建築を重視せよとお主が常に言っておるでな」
「ではなぜ《ファンガス》ではないのですか? 《祝宴》と《奴隷市場》が狙えますぞ」
「わしはキノコが嫌いじゃ」
<1-3>
《癒し手》、《森の子供たち》、《時計職人》
「ようやく人の世界に戻れたようじゃな」
「それはようございますが、いまいちかみ合わない引きですな」
「かみ合わない?」
「ええ、《時計職人》を生かせるカードが今までのピックにはありません。《バルダンダース》を選んでいれば《癒し手》がそれを延命させられましたし、《ファンガス》を選んでいれば《森の子供たち》が《祝宴》を開けました」
「ではどいつもハズレというわけか」
「逆ですな。どれも受けの広いカードとも言えます。好きに選ばれるとよいでしょう」
「そうか。では《森の子供たち》にするかの」
「狙いは《奴隷市場》ですか?」
「いや、あの手にもってる赤い何かが気になってしょうがなくてな」
「そんな理由で!?」
「冗談じゃ。レベル2の建物に向けて一番手が広いと思ったからじゃ」
「安心しました」
<1-4>
《夢読み》、《ワーム》
「また化け物しかおらんぞ」
「いえ、《夢読み》がおります」
「船ごと飲み込みそうな馬鹿デカい口の化け物しかおらんではないか」
「あそこにうっすら人の形をした影が見えませんか? あれは《夢読み》と呼ばれる者です」
「人間か?」
「夢と現実のはざまに位置する者ですが、一応人間です。お金に卑しいところも人間です」
「ほんとじゃ。随分とふっかけてくるのう。うちの騎士団長の賃金ではないか」
「まあ、《ワーム》もそうですが」
「どうしようかの」
「今足りないのは兵力ですな。《ワーム》に残ってもらってはいかがでしょうか。実際に賃金を支払うかはあとでまた考えることにいたしましょう」
「怒らぬか?」
「大丈夫です。コストを支払うのはピック時ではなく配置時ですから」
<1-5>
《鉱夫》
「ヒゲのおっさんがおる」
「おお! ナイスな引きですぞ、若様! あれぞ、【鉱石】をもたらす《鉱夫》でございます」
「何を年甲斐もなく興奮しておる」
「いやいや、若様。【木材】ばかりの今の私たちにもっとも必要な資源ですゆえ」
「そうか、これで【木材】【木材】【鉱石】がそろったのか」
「それだけでなく、これで《霊廟》レベル2が見えました。確かに次のターンの配置時には4枚までしか置けませぬが、それを考えましても悪い取引ではありません」
「まあ、いずれにしても選択肢はないな。あのヒゲのおっさんを呼んできてくれ」
「御意にございます」
「さて、どう配置するかの」
「純粋に兵力を考えるならば、前衛に《木こり》と《ワーム》、後衛に《森の子供たち》ということになりますな。これで兵力6となります」
「しかしそれではろくな建築が出来ぬぞ」
「ビンゴ! そのとおりですぞ、若様!」
「うわ、びっくりした! なんじゃ、いきなり」
「おっしゃるとおりです。1ターン目は1点2点の兵力ではなく、先につながる建築を重視すべきなのです。うう、私の教育が身についておるようですな。じい、嬉しい」
「おおげさな。まあよいわ。では《鉱夫》と《木こり》だけ出すか。あとは基本の収入である2金を得れば、お金を全部使って《聖堂》を2レベルにできる」
「じいやチョップ!」
「痛っ! な、何をする!」
「さらに、じいやダイナマイト!」
「ぎゃー!」
「見損ないましたぞ、若様! 資源がそろっているのになんでお金を使い切りますか!」
「い、今の技はなんじゃ? とても痛かったぞ?」
「しかも、あれほど《霊廟》《霊廟》と口うるさく言ってきたのにこの仕打ち!」
「《霊廟》では1レベルどまりではないか」
「じいやギガドリルブレイク!」
「ぎゃーっ!!」
「なんのための《ゴーレム》ですか! 次のターンに《ゴーレム》でレベル2にすれば、さっそく経年カウンター分の勝利点が得られますぞ。さらに経年フェイズに収入までついてきます」
「しかし資源は大丈夫じゃろうか。我が国土はそれほど資源に富んでいるわけではないぞ」
「大丈夫です。《木こり》と《森の子供たち》が【木材】を集め、そこに《鉱夫》の【鉱石】があれば、《宝物庫》でも《兵舎》でも作れます」
「このターンそれを作るではダメなのか? レベル2の建物がある状態で2ターン目を迎えられるではないか」
「正直、そこは悩みどころかもしれませんな。しかし最序盤で《霊廟》レベル2を作れるのは非常に大きいですぞ」
「さっきの《ベヒモス》より大きいか」
「さっきの《ベヒモス》より大きいです」
「なら仕方ないの」
2ターン目
「2ターン目は《ゴーレム》を置くだけじゃの」
「そうですな。次のターンにキープする1枚を選ぶだけの簡単なお仕事です」
<2-1>
《射手》、《木こり》、《行商》、《ワーム》、《腐敗の王》
「じい、あの山よりデカくて腐りかけてる化け物はなんじゃ」
「しっ、あれをあまり長いこと見てはなりませぬ。魂をもっていかれますぞ」
「なんでそんなものを領内に入れた!」
「勝手に入ってきたようですな」
「では、しょうがないか。ところであの《ワーム》を見て思い出したんじゃが、1ターン目の《ワーム》はどうした」
「キープ可能なカードは1枚までなので、川に放流しました」
「怒られないか?」
「まあ、どの川も最後は海につながっとります。大丈夫でしょう」
「ならよい。して、このターンのピックはどうするかの」
「《腐敗の王》でしょう」
「魂を持っていかれるんじゃないのか」
「そのための《霊廟》です。《霊廟》さえ建築し終えれば、むしろ益しかもたらしません」
「ほう。それは幸甚」
「それまでは地下室にでもキープしておきましょう」
「野菜は別にしとかんと腐りそうじゃな」
<2-2>
《料理人》、《癒し手》、《時計職人》、《宝石獣》
「これは良い引きですな」
「そうか? これといって惹かれる者はおらんが」
「《鉱夫》を《宝石獣》にかえるという手があります。経年カウンターの数は変わりませんし、【鉱石】も出ます。1金で兵力不足を補えるというのはなかなか美味しい話ですぞ」
「わしにはあの《料理人》の皿にある肉のほうが美味しそうに見えるがの」
<2-3>
《開闢の巨人》、《トロール》、《ゴブリン》
「化け物しかおらんの」
「さすがに今回は否定できませんな」
「しかしあの巨人はデカすぎじゃ。デカすぎて頭が雲にかすんでおるぞ」
「あれを置いとく場所を用意するのは金がかかりそうですなあ」
「《ゴブリン》は安いのう。肉を食わせておけば働いてくれそうじゃ」
「しかしこのターンの配置は4枚までですからな。さすがに飼っておく余裕がありません」
「では《トロール》か?」
「これが実際のプレイヤー相手の戦争でしたら、相手の所持金を見て配備できない高額なカードばかり残すという手もありますな」
「お主も悪よのう」
「いえいえ、お代官様こそ」
<2-4>
《民兵》、《夢読み》
「おや? 《民兵》しかおらんぞ。2枚から選べるのではないのか」
「若様。また《夢読み》を見落としてますね」
「どこじゃ」
「あそこです。ほら、旗が3本しか立っていないのに、影が4本あるでしょう」
「おお、本当じゃ。なんか間違い探しみたいじゃのう」
「どちらをとられますか?」
「ふむ。どっちも使わん気がするが、何かあるか?」
「そうですね。《霊廟》と相性がよいのは《夢読み》ですが、このターンはさすがに出番はないでしょう。それでもキープの候補にはなるかもしれません」
「ではそうしよう」
<2-5>
《盗賊》
「じい、領内に《盗賊》が来ておるぞ」
「そのようですな」
「追い返しておけ」
「いったんピックはしておきましょう。そのあとあらためて捨て札にすればよろしいかと」
「早いところ追っ払ってしまいたいもんじゃが」
「では計画通り、《ゴーレム》を配置して終りかの」
「じいやクラッシュイントゥルード!」
「ぎゃー!」
「何を聞いていたのですか! もう2ターン目ですぞ。他の領主も兵力を整え出す時分です。遅れをとってはなりませぬ!」
「いや、でも1体しか出すスペースないではないか。《霊廟》のことを考えると経年カウンターが乗っているユニットをのかすのも惜しい」
「そこで《宝石獣》です。配置の直後に経年カウンターが1個置かれてしまうというデメリットを逆に利点に変えられます」
「おお、なるほど。ヴォーパルス面白いな」
「分かってもらえましたか」
「では配置は《鉱夫》を解雇して、《宝石獣》と《ゴーレム》を投入じゃな。キープはどうする?」
「《夢読み》も惹かれるものがありますが、ここはコストの安さと兵力の高さ、さらに《霊廟》があれば勝利点と収入の両方につながるその能力を買って、やはり《腐敗の王》でしょうな」
「なるほど。建築は無難に《宝物庫》にしとくか」
「《兵舎》も建てられますが今後も経年カウンターを置くプレイを重視するのであれば、安定した戦力の確保は難しいでしょう。《宝物庫》でよいと思います」
3ターン目
「先のターンと違い、今回の雇用は重要ですぞ」
「そうじゃな。気がつけば経年でみんな去ってしまって、残ったのは壊れかけた《ゴーレム》1体だけじゃ。これは少し気合いをいれていかんとな」
「ファイトですぞ、若様」
<3-1>
《射手》、《ケット・シー》、《ツリーフォーク》、《盗賊》、《狩人》
「ふーむ。可もなく不可もなしですな」
「また《盗賊》が来てるな」
「まあ今回は他にも選択肢がありますし、お帰り願いましょう」
「いや、考えてみたら兵力的にはありかもしれんのう」
「兵力を考えたら《射手》でしょうな。収入を考えれば《ケット・シー》、建築を考えるなら《狩人》で受け手を広くしておくべきかと」
「建築は厳しそうじゃな。何しろ資源がない」
「だからこそ得られる資源は逃さず手に入れておくべきかと思われます。《狩人》は最低限の兵力も持っておりますし」
「個人的には《ケット・シー》がいいんじゃが」
「ああ、なるほど。確かに《腐敗の王》ともかみ合いますな」
「いや、猫かわいいから」
「分かりました。では《狩人》で」
「え」
<3-2>
《労働者》、《料理人》、《騎士》、《奉納者》
「下働きにコックに騎士か。なんか本当に城へ仕事を探しに来た面々のようじゃな」
「まあ、あとの1人だけ明らかに浮いておりますが」
「え、お前にも見えるのか」
「あれは《奉納者》ですな」
「わしにしか見えない死神かと思った。良かった」
「能力もなかなか良いですぞ。《狩人》がいれば経年カウンターを稼げますから、勝利点と収入を増やすことができますゆえ」
「しかし2金のコストは考えものじゃな。このターンの建築を諦めることになるの」
「《奉納者》がいれば今後【木材】を引ければ収入に変換できます。建築するためにはどうせ資源を引かねばなりません。《労働者》や《料理人》よりは面白いと思います」
「そういえば《騎士》はどうじゃ?」
「無難ですなあ。《ゴーレム》と《腐敗の王》と合わせて兵力が11。2勝も狙える兵力です」
「そのわりに不満そうじゃな」
「面白味がありません」
「それは重要なのか」
「ゲームですので」
「そうか」
<3-3>
《狩人》、《ファンガス》、《労働者》
「またキノコがきおった」
「今回は《ファンガス》の必要はありませんな。《腐敗の王》と《奉納者》を配置することを考えますと、金が足りませんゆえ」
「《奉納者》を置かないという選択肢もありじゃろ」
「それは否定できませんが、その場合でも《狩人》でしょう。若様の軍勢なら兵力2でも一軍入り可能。無理に1点の兵力のために1金かかる《ファンガス》を選ぶ必要はありませんな」
<3-4>
《冒険家》、《ドラゴン》
「おお、本物の《ドラゴン》じゃ。初めてみたわ」
「若様、注目すべきはそっちではありません。《冒険家》です」
「《ドラゴン》はダメか。デカいしカッコいいぞ」
「いえいえ、《冒険家》しかあり得ません。何しろ《奉納者》と2人の《狩人》のおかげで経年カウンターを置く手はずは整っています。《冒険家》の見い出す【鉱石】があれば《宝物庫》は潤いますし、積まれた経年カウンターも《霊廟》で勝利点と収入になります。これ以上ないほどの引きですぞ」
「なんかそこまで言われると逆にとりたくなくなる」
「わ、若様!?」
「冗談じゃ」
<3-5>
《行商》
「なんか普通の商人じゃな。なんかほっとしたぞ。雇う理由はなさそうじゃがな」
「いやいや、これはなかなか面白い人材ですぞ」
「じゃが、今さら【木材】が1個増えたところで大差なかろう?」
「《奉納者》がいることを忘れてはなりません。《行商》は2金の収入になります」
「ふむ。それほど重要なことかのう。そもそも《腐敗の王》と《奉納者》で3金じゃ。《行商》の配置コストを支払うことはできん」
「《腐敗の王》の出番を遅らせるという選択肢は残っております。「腐ってやがる、早すぎたんだ」と、とある有名な《軍師》も申しております」
「それでは兵力が激減するぞ」
「不確かな兵力勝負よりも確実な建物の勝利点ですな。お気づきでないかもしれませんが、《奉納者》と《行商》がいれば基本収入と合わせて4金です。土地代が支払えますぞ」
「そうか、《行商》の【木材】があるから《祝宴》が建てられるのか」
「いえ、このターンは《聖堂》を建てたほうがよろしいかと」
「《祝宴》のほうがよいのではないか? 次のターン、《農民》などを引くかもしれん」
「それはそうですが、その場合、このターンを生き延びて経年カウンターをおいたユニットを解雇することになります。勝利点的にはプラスマイナスゼロでございます。さらにいうと、このターンに《祝宴》を作ってしまうと最終ターンに作れる建物がほとんどありません」
「最終ターンに《聖堂》でよいではないか。《狩人》2人はいるのだから、《祝宴》を作れば最低でも《聖堂》分の働きじゃ」
「その場合、最終ターンに《聖堂》を作るには土地代6金に加えて、【鉱石】を新たに2個産出するか、4金を余分に稼がないといけませんな。これはかなり厳しい条件です」
「ああ、そういえば《冒険家》は次のターンまでは生き延びられないんじゃったな」
「逆に、《腐敗の王》の配置を先延ばしにすることで《狩人》2人を生き延びさせられます」
「資源が残るわけか」
「次のターンの生産フェイズに《聖堂》2金、《行商》1金、《奉納者》1金、さらに基本収入2金でちょうど6金です。配置フェイズでお金を使いきっても土地代が捻出できますぞ」
「なるほど。最後の土地代も確保しつつ、《祝宴》レベル2の資源も生産できるか」
「そのとおりです」
「まずは配置じゃな。《腐敗の王》はもうしばらく地下室に寝かせておいて、《狩人》たちに前衛へ回ってもらおうかの」
「そのとおりです。《ゴーレム》を解体して、スペースをあけましょう。十分働いてくれました。上に乗っている経年カウンター1個がちょっと惜しいですが、しょうがありませんな」
「さて全員、配置を終えたぞ。《狩人》たちが【食料】をもってきてくれたが?」
「それは《奉納者》に祝福してもらいましょう。そうしてから食べれば、寿命と引き替えに知恵と経験が得られる魔法の品となります。《冒険家》に渡しておきましょう」
4ターン目
「ついに戦乱も終わりじゃの」
「あとは《腐敗の王》を配置するだけの簡単なお仕事ですな」
<4-1>
《鉱夫》、《古参兵》、《森の子供たち》、《行商》、《労働者》
「どれでもよいのう」
「実際のプレイであれば隣のプレイヤー次第で変わってきますな。《宝物庫》を持っているプレイヤーには《鉱夫》を回したくはないですし、資源に困っているプレイヤーには《森の子供たち》を回さずにおきたいところですぞ」
<4-2>
《ケット・シー》、《鉱夫》、《古参兵》、《時計職人》
「これまた小粒ぞろいじゃな」
「あえていえば《時計職人》でございましょうな。《冒険家》を引く可能性を考慮して」
<4-3>
《ワーム》、《農民》、《農民》
「やっぱり《祝宴》を作っておいたほうが良かったのではないのか?」
「そのようなことはありませぬ。新たに1人雇い入れるためには経年カウンター1個を諦めることになりますので、プラスマイナスは変わりません」
「じゃが《奉納者》がおるゆえ、1個の【食料】は2点の勝利点じゃ」
「おや?」
「おい」
「はっはっは。若様も一人前になられて」
「おいおい!」
<4-4>
《古きもの》、《鉄巨兵》
「じい、なんでも城の地下で恐ろしいものが見つかったとか」
「それが、古代の邪神が城の地下に封印されているのが見つかりまして」
「は? なんだと?」
「古代の邪神です。単体で、我が領地の全兵力を上回ります」
「ど、どうした?」
「6金で力を貸してやると言われましたが、そのような大金は逆立ちしても支払えない、と正直に伝えたところ、何も言わず地中深く潜っていきました」
「そうか」
「かわりに巨大ロボットの設計図を手に入れました」
「どうなっとるんだ、この国は」
<4-5>
《ゴブリン》
「また《ゴブリン》がおるのう」
「おりますな」
「腹を空かしておるようじゃの。なんか適当にくれてやれ」
「分かりました。雇いますか?」
「必要なかろう」
「配置じゃな」
「《腐敗の王》を前線に送り出すだけでございます。満を持しての登場ですな」
「《森の子供たち》の使い道はないかの。【食料】が《奉納者》の効果で経年カウンターに変わるゆえ、勝利点が増えるのではないか?」
「ないですなあ。すでに場にいる兵力たちは経年カウンターが乗っておりますゆえ、勝利点的には変化がありません」
「やはり《祝宴》だったのではないかのう」
「冷たい目をされるようになりましたな」
「食い物の恨みは恐ろしいのじゃ」
「まさか《祝宴》で飲み食いしたかったから怒ってらっしゃるんですか!?」
「(ぷい)」
<後書き>
文中で若様にも突っ込まれているが、もしかしたら3ターン目の建築は《祝宴》だったかもしれない。その場合、最終ターンに《森の子供たち》か《冒険家》を引ければレベル2の建物は建てられるし、レベル1どまりであっても【食料】を引けていれば勝利点自体はプラスだった可能性がある。
あと1人回しをする際には戦争勝利に必要な兵力を高めに見積もっているので、実際のプレイであれば戦争の勝利数はもう少し高いかもしれない。両隣の陣営次第では2ターン目の建築を《兵舎》にすることで今回の《宝物庫》より勝利点を稼げるはず(相手の勝利数を減らすという意味でも相対的な勝利点の上昇が見込める)。
そういった相手プレイヤー次第の点を除いても最適解を選べていない可能性があるので、もしお手元にカードがある人はぜひ再現してみて欲しい。ヴォーパルス面白いから、他にもリプレイ書いてくれる人が出てくると嬉しい。
《ヴォーパルス戦記譚》 第1回:虚飾の王の物語
http://regiant.diarynote.jp/201206102238015544/
前回は全力でフレイバー重視なものを書いたので、今回は逆にほぼゲームそのまま。ドラフト時にどういったことを考えながらカードをピックしているかをまとめてみた。おそらくゲーム未経験者にはほとんど意味が分からない内容になってる。ごめんなさい。
一応簡単にゲームの流れを説明すると、マジックのドラフトと同じ要領でカードをピックしていく。初手にランダムで配られる5枚の手札から1枚をピックし隣に回す、というのを5回繰り返して5枚の手札を獲得。そのうち4枚まで場に配置し、1枚を次ターンへキープ。これを4ターン繰り返す。実際に4人以下で遊ぶ場合は初手の何枚かが帰ってくるが、今回の1人プレイでは「5枚山札から引き1枚ピック、4枚山札から引き1枚ピック、以下略」という手順で遊んでいる。
もっと知りたい方は作者のブログに詳しいことが書いてある。PDF形式のルールブックもダウンロードできるし本当の意味でのリプレイも載っているので、興味があればぜひ。
ドラフト式カードゲーム『ヴォーパルス』の紹介
http://iwasgame.sakura.ne.jp/archives/445
また記事の表記として、ターンとピック順の表記は「1ターン目の1ピック目」を「1-1」とする(3ターン目の4ピック目は「3-4」となる)。《 》でくくっているものはカード名を表し、【 】でくくっているものは3種類ある資源を指す。
というわけで、はじまりはじまり。
《ヴォーパルス戦記譚》 第3回:スカウティング・マイ・アーミー
今回のフォーマット
拡張セット「ヴィシャス」使用。拡張セットからの追加建物は《奴隷市場》と《霊廟》。
<プロローグ>
ここは北方に位置する名もなき島。幾多の小国をまとめあげた皇帝が崩御し、ついにまた100年の戦乱が始まろうとしている。ここはその小国の1つ。島の覇権を狙う諸侯の1人としての責務を負わされた現領主はまだ若く、養育係でもある相談役の老人が常に付き従っている状態である。
「若様、起きてくだされ」
「なんじゃ、じい。まだ日も昇っていないではないか」
実直そうな白髪の老人に揺り起こされた少年は眠たげに蒼い目をしょぼつかせながら外の暗さに顔をしかめた。起きたばかりでくしも入れていない金髪の巻き毛はくるくると好き勝手な方向に跳ねている。
「お忘れですか。今日は我が領地への仕官を望む者たちが訪れる日にございますぞ」
「いかん、そうじゃったな。今起きるぞ(ぐう)」
「若様! 器用な寝言はおやめくだされ!」
1ターン目
<1-1>
《バルダンダース》、《軍師》、《ベヒモス》、《ゴーレム》、《木こり》
「ほうほう、見所のありそうな面々が集まっておりますな」
「じい。お城の中庭が化け物でいっぱいに見えるんじゃが」
「そうでございますか?」
「うむ。とりあえずあのぐねぐねと形の定まらぬのはなんじゃ」
「あれは《バルダンダース》ですな。初手に選ぶにはちと弱いと言わざるを得ません。序盤はまずはなんと言ってもレベル2の建物を作ることにありますゆえ」
「建築ということは《木こり》かの。【木材】なくして建物なし、じゃったか」
「おお、きちんと勉強されておりますな。ええ、《木こり》は受けの広い良い選択と思います。《ゴーレム》は2ターン目の配置フェイズにレベル2の建物を作れますが、配置後となってしまうのでレベル2の建物の利点がイマイチ活かされませぬ」
「レベル2の建物の利点? 勝利点が稼げることじゃったか」
「若様、勉強をさぼっておりましたな。レベル2の建物の利点はなんというても、5枚目の配置です。通常は前衛に2枚と後衛に2枚の4枚までしかできない配置を5枚に増やせることこそがレベル2の建物を建築する最大の理由ですぞ」
「分かった、分かった。ところで、うちの城よりデカいあの豚はどうじゃ」
「論外です」
「そうか」
<現在のピック>
《木こり》
<1-2>
《ゴーレム》、《大蛇》、《画家》、《ファンガス》
「じい」
「おお、何かいい案がござりますか」
「なんだ。我が領地には化け物しかおらんのか」
「何をおっしゃいます! ごらんください。あそこに《画家》がおるではないですか」
「いやむしろ《画家》が何をしに来ているのかが気になるんじゃが」
「まあ、確かにこの中では一番弱いかもしれませんなあ。【食料】戦略なら《ファンガス》ですし、兵力重視ならば《大蛇》ですな。《大蛇》はのちに収入に替わりますので、兵力増強ともかみあいます」
「《ゴーレム》はいらんな。さっきもスルーしたし」
「いえいえ、若様。あのときとは状況が変わっておりますぞ! 【木材】を手に入れた今、このあとの3巡以内に【鉱石】が1つでも手に入れば《霊廟》を建てることが出来ますゆえ」
「それはよいことなのか?」
「《霊廟》は勝利点と収入を両方カバーできる良い建物です。《祝宴》と違い、カードに依存しません。その分、レベルアップの条件が厳しいですが《ゴーレム》であればその点をクリアできます。2ターン目に5枚配置できないデメリットを考えても、《ゴーレム》ピックは選択肢の1つとしてありと思われまする」
「なるほど。では《画家》以外から選ぶとするか。それでは《ゴーレム》にするかの」
「ほう、渋いですな。【鉱石】を引く自信がおありで」
「序盤は建築を重視せよとお主が常に言っておるでな」
「ではなぜ《ファンガス》ではないのですか? 《祝宴》と《奴隷市場》が狙えますぞ」
「わしはキノコが嫌いじゃ」
<現在のピック>
《木こり》、《ゴーレム》
<1-3>
《癒し手》、《森の子供たち》、《時計職人》
「ようやく人の世界に戻れたようじゃな」
「それはようございますが、いまいちかみ合わない引きですな」
「かみ合わない?」
「ええ、《時計職人》を生かせるカードが今までのピックにはありません。《バルダンダース》を選んでいれば《癒し手》がそれを延命させられましたし、《ファンガス》を選んでいれば《森の子供たち》が《祝宴》を開けました」
「ではどいつもハズレというわけか」
「逆ですな。どれも受けの広いカードとも言えます。好きに選ばれるとよいでしょう」
「そうか。では《森の子供たち》にするかの」
「狙いは《奴隷市場》ですか?」
「いや、あの手にもってる赤い何かが気になってしょうがなくてな」
「そんな理由で!?」
「冗談じゃ。レベル2の建物に向けて一番手が広いと思ったからじゃ」
「安心しました」
<現在のピック>
《木こり》、《ゴーレム》、《森の子供たち》
<1-4>
《夢読み》、《ワーム》
「また化け物しかおらんぞ」
「いえ、《夢読み》がおります」
「船ごと飲み込みそうな馬鹿デカい口の化け物しかおらんではないか」
「あそこにうっすら人の形をした影が見えませんか? あれは《夢読み》と呼ばれる者です」
「人間か?」
「夢と現実のはざまに位置する者ですが、一応人間です。お金に卑しいところも人間です」
「ほんとじゃ。随分とふっかけてくるのう。うちの騎士団長の賃金ではないか」
「まあ、《ワーム》もそうですが」
「どうしようかの」
「今足りないのは兵力ですな。《ワーム》に残ってもらってはいかがでしょうか。実際に賃金を支払うかはあとでまた考えることにいたしましょう」
「怒らぬか?」
「大丈夫です。コストを支払うのはピック時ではなく配置時ですから」
<現在のピック>
《木こり》、《ゴーレム》、《森の子供たち》、《ワーム》
<1-5>
《鉱夫》
「ヒゲのおっさんがおる」
「おお! ナイスな引きですぞ、若様! あれぞ、【鉱石】をもたらす《鉱夫》でございます」
「何を年甲斐もなく興奮しておる」
「いやいや、若様。【木材】ばかりの今の私たちにもっとも必要な資源ですゆえ」
「そうか、これで【木材】【木材】【鉱石】がそろったのか」
「それだけでなく、これで《霊廟》レベル2が見えました。確かに次のターンの配置時には4枚までしか置けませぬが、それを考えましても悪い取引ではありません」
「まあ、いずれにしても選択肢はないな。あのヒゲのおっさんを呼んできてくれ」
「御意にございます」
<1ターン目のピック>
《木こり》、《ゴーレム》、《森の子供たち》、《ワーム》、《鉱夫》
「さて、どう配置するかの」
「純粋に兵力を考えるならば、前衛に《木こり》と《ワーム》、後衛に《森の子供たち》ということになりますな。これで兵力6となります」
「しかしそれではろくな建築が出来ぬぞ」
「ビンゴ! そのとおりですぞ、若様!」
「うわ、びっくりした! なんじゃ、いきなり」
「おっしゃるとおりです。1ターン目は1点2点の兵力ではなく、先につながる建築を重視すべきなのです。うう、私の教育が身についておるようですな。じい、嬉しい」
「おおげさな。まあよいわ。では《鉱夫》と《木こり》だけ出すか。あとは基本の収入である2金を得れば、お金を全部使って《聖堂》を2レベルにできる」
「じいやチョップ!」
「痛っ! な、何をする!」
「さらに、じいやダイナマイト!」
「ぎゃー!」
「見損ないましたぞ、若様! 資源がそろっているのになんでお金を使い切りますか!」
「い、今の技はなんじゃ? とても痛かったぞ?」
「しかも、あれほど《霊廟》《霊廟》と口うるさく言ってきたのにこの仕打ち!」
「《霊廟》では1レベルどまりではないか」
「じいやギガドリルブレイク!」
「ぎゃーっ!!」
「なんのための《ゴーレム》ですか! 次のターンに《ゴーレム》でレベル2にすれば、さっそく経年カウンター分の勝利点が得られますぞ。さらに経年フェイズに収入までついてきます」
「しかし資源は大丈夫じゃろうか。我が国土はそれほど資源に富んでいるわけではないぞ」
「大丈夫です。《木こり》と《森の子供たち》が【木材】を集め、そこに《鉱夫》の【鉱石】があれば、《宝物庫》でも《兵舎》でも作れます」
「このターンそれを作るではダメなのか? レベル2の建物がある状態で2ターン目を迎えられるではないか」
「正直、そこは悩みどころかもしれませんな。しかし最序盤で《霊廟》レベル2を作れるのは非常に大きいですぞ」
「さっきの《ベヒモス》より大きいか」
「さっきの《ベヒモス》より大きいです」
「なら仕方ないの」
<1ターン目まとめ>
1-1 《木こり》
1-2 《ゴーレム》
1-3 《森の子供たち》
1-4 《ワーム》
1-5 《鉱夫》
・前衛 《鉱夫》、《木こり》
・後衛 《森の子供たち》
・合計兵力 4点 (0勝換算)
・建築 《霊廟》 LV1
・残金3、キープカード《ゴーレム》
2ターン目
「2ターン目は《ゴーレム》を置くだけじゃの」
「そうですな。次のターンにキープする1枚を選ぶだけの簡単なお仕事です」
<現在のピック> ※キープカード含む
《ゴーレム》
<2-1>
《射手》、《木こり》、《行商》、《ワーム》、《腐敗の王》
「じい、あの山よりデカくて腐りかけてる化け物はなんじゃ」
「しっ、あれをあまり長いこと見てはなりませぬ。魂をもっていかれますぞ」
「なんでそんなものを領内に入れた!」
「勝手に入ってきたようですな」
「では、しょうがないか。ところであの《ワーム》を見て思い出したんじゃが、1ターン目の《ワーム》はどうした」
「キープ可能なカードは1枚までなので、川に放流しました」
「怒られないか?」
「まあ、どの川も最後は海につながっとります。大丈夫でしょう」
「ならよい。して、このターンのピックはどうするかの」
「《腐敗の王》でしょう」
「魂を持っていかれるんじゃないのか」
「そのための《霊廟》です。《霊廟》さえ建築し終えれば、むしろ益しかもたらしません」
「ほう。それは幸甚」
「それまでは地下室にでもキープしておきましょう」
「野菜は別にしとかんと腐りそうじゃな」
<現在のピック>
《ゴーレム》、《腐敗の王》
<2-2>
《料理人》、《癒し手》、《時計職人》、《宝石獣》
「これは良い引きですな」
「そうか? これといって惹かれる者はおらんが」
「《鉱夫》を《宝石獣》にかえるという手があります。経年カウンターの数は変わりませんし、【鉱石】も出ます。1金で兵力不足を補えるというのはなかなか美味しい話ですぞ」
「わしにはあの《料理人》の皿にある肉のほうが美味しそうに見えるがの」
<現在のピック>
《ゴーレム》、《腐敗の王》、《宝石獣》
<2-3>
《開闢の巨人》、《トロール》、《ゴブリン》
「化け物しかおらんの」
「さすがに今回は否定できませんな」
「しかしあの巨人はデカすぎじゃ。デカすぎて頭が雲にかすんでおるぞ」
「あれを置いとく場所を用意するのは金がかかりそうですなあ」
「《ゴブリン》は安いのう。肉を食わせておけば働いてくれそうじゃ」
「しかしこのターンの配置は4枚までですからな。さすがに飼っておく余裕がありません」
「では《トロール》か?」
「これが実際のプレイヤー相手の戦争でしたら、相手の所持金を見て配備できない高額なカードばかり残すという手もありますな」
「お主も悪よのう」
「いえいえ、お代官様こそ」
<現在のピック>
《ゴーレム》、《腐敗の王》、《宝石獣》、《ゴブリン》
<2-4>
《民兵》、《夢読み》
「おや? 《民兵》しかおらんぞ。2枚から選べるのではないのか」
「若様。また《夢読み》を見落としてますね」
「どこじゃ」
「あそこです。ほら、旗が3本しか立っていないのに、影が4本あるでしょう」
「おお、本当じゃ。なんか間違い探しみたいじゃのう」
「どちらをとられますか?」
「ふむ。どっちも使わん気がするが、何かあるか?」
「そうですね。《霊廟》と相性がよいのは《夢読み》ですが、このターンはさすがに出番はないでしょう。それでもキープの候補にはなるかもしれません」
「ではそうしよう」
<現在のピック>
《ゴーレム》、《腐敗の王》、《宝石獣》、《ゴブリン》、《夢読み》
<2-5>
《盗賊》
「じい、領内に《盗賊》が来ておるぞ」
「そのようですな」
「追い返しておけ」
「いったんピックはしておきましょう。そのあとあらためて捨て札にすればよろしいかと」
「早いところ追っ払ってしまいたいもんじゃが」
<2ターン目のピック>
《ゴーレム》、《腐敗の王》、《宝石獣》、《ゴブリン》、《夢読み》、《盗賊》
「では計画通り、《ゴーレム》を配置して終りかの」
「じいやクラッシュイントゥルード!」
「ぎゃー!」
「何を聞いていたのですか! もう2ターン目ですぞ。他の領主も兵力を整え出す時分です。遅れをとってはなりませぬ!」
「いや、でも1体しか出すスペースないではないか。《霊廟》のことを考えると経年カウンターが乗っているユニットをのかすのも惜しい」
「そこで《宝石獣》です。配置の直後に経年カウンターが1個置かれてしまうというデメリットを逆に利点に変えられます」
「おお、なるほど。ヴォーパルス面白いな」
「分かってもらえましたか」
「では配置は《鉱夫》を解雇して、《宝石獣》と《ゴーレム》を投入じゃな。キープはどうする?」
「《夢読み》も惹かれるものがありますが、ここはコストの安さと兵力の高さ、さらに《霊廟》があれば勝利点と収入の両方につながるその能力を買って、やはり《腐敗の王》でしょうな」
「なるほど。建築は無難に《宝物庫》にしとくか」
「《兵舎》も建てられますが今後も経年カウンターを置くプレイを重視するのであれば、安定した戦力の確保は難しいでしょう。《宝物庫》でよいと思います」
<2ターン目まとめ>
キープカード 《ゴーレム》
2-1 《腐敗の王》
2-2 《宝石獣》
2-3 《ゴブリン》
2-4 《夢読み》
2-5 《盗賊》
・前衛 《ゴーレム》、《宝石獣》
・後衛 《木こり》、《森の子供たち》
・合計兵力 7点 (1勝換算)
・建築 《霊廟》 LV2、《宝物庫》 LV2
・残金3、キープカード《腐敗の王》
※追記
配置時に《ゴーレム》の効果で《霊廟》がレベルアップ。また経年フェイズに合計3つの経年カウンターが経年によってとりのぞかれているので3金を獲得。
3ターン目
「先のターンと違い、今回の雇用は重要ですぞ」
「そうじゃな。気がつけば経年でみんな去ってしまって、残ったのは壊れかけた《ゴーレム》1体だけじゃ。これは少し気合いをいれていかんとな」
「ファイトですぞ、若様」
<現在のピック> ※キープカード含む
《腐敗の王》
<3-1>
《射手》、《ケット・シー》、《ツリーフォーク》、《盗賊》、《狩人》
「ふーむ。可もなく不可もなしですな」
「また《盗賊》が来てるな」
「まあ今回は他にも選択肢がありますし、お帰り願いましょう」
「いや、考えてみたら兵力的にはありかもしれんのう」
「兵力を考えたら《射手》でしょうな。収入を考えれば《ケット・シー》、建築を考えるなら《狩人》で受け手を広くしておくべきかと」
「建築は厳しそうじゃな。何しろ資源がない」
「だからこそ得られる資源は逃さず手に入れておくべきかと思われます。《狩人》は最低限の兵力も持っておりますし」
「個人的には《ケット・シー》がいいんじゃが」
「ああ、なるほど。確かに《腐敗の王》ともかみ合いますな」
「いや、猫かわいいから」
「分かりました。では《狩人》で」
「え」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《狩人》
<3-2>
《労働者》、《料理人》、《騎士》、《奉納者》
「下働きにコックに騎士か。なんか本当に城へ仕事を探しに来た面々のようじゃな」
「まあ、あとの1人だけ明らかに浮いておりますが」
「え、お前にも見えるのか」
「あれは《奉納者》ですな」
「わしにしか見えない死神かと思った。良かった」
「能力もなかなか良いですぞ。《狩人》がいれば経年カウンターを稼げますから、勝利点と収入を増やすことができますゆえ」
「しかし2金のコストは考えものじゃな。このターンの建築を諦めることになるの」
「《奉納者》がいれば今後【木材】を引ければ収入に変換できます。建築するためにはどうせ資源を引かねばなりません。《労働者》や《料理人》よりは面白いと思います」
「そういえば《騎士》はどうじゃ?」
「無難ですなあ。《ゴーレム》と《腐敗の王》と合わせて兵力が11。2勝も狙える兵力です」
「そのわりに不満そうじゃな」
「面白味がありません」
「それは重要なのか」
「ゲームですので」
「そうか」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《狩人》、《奉納者》
<3-3>
《狩人》、《ファンガス》、《労働者》
「またキノコがきおった」
「今回は《ファンガス》の必要はありませんな。《腐敗の王》と《奉納者》を配置することを考えますと、金が足りませんゆえ」
「《奉納者》を置かないという選択肢もありじゃろ」
「それは否定できませんが、その場合でも《狩人》でしょう。若様の軍勢なら兵力2でも一軍入り可能。無理に1点の兵力のために1金かかる《ファンガス》を選ぶ必要はありませんな」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《狩人》、《奉納者》、《狩人》
<3-4>
《冒険家》、《ドラゴン》
「おお、本物の《ドラゴン》じゃ。初めてみたわ」
「若様、注目すべきはそっちではありません。《冒険家》です」
「《ドラゴン》はダメか。デカいしカッコいいぞ」
「いえいえ、《冒険家》しかあり得ません。何しろ《奉納者》と2人の《狩人》のおかげで経年カウンターを置く手はずは整っています。《冒険家》の見い出す【鉱石】があれば《宝物庫》は潤いますし、積まれた経年カウンターも《霊廟》で勝利点と収入になります。これ以上ないほどの引きですぞ」
「なんかそこまで言われると逆にとりたくなくなる」
「わ、若様!?」
「冗談じゃ」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《狩人》、《奉納者》、《狩人》、《冒険家》
<3-5>
《行商》
「なんか普通の商人じゃな。なんかほっとしたぞ。雇う理由はなさそうじゃがな」
「いやいや、これはなかなか面白い人材ですぞ」
「じゃが、今さら【木材】が1個増えたところで大差なかろう?」
「《奉納者》がいることを忘れてはなりません。《行商》は2金の収入になります」
「ふむ。それほど重要なことかのう。そもそも《腐敗の王》と《奉納者》で3金じゃ。《行商》の配置コストを支払うことはできん」
「《腐敗の王》の出番を遅らせるという選択肢は残っております。「腐ってやがる、早すぎたんだ」と、とある有名な《軍師》も申しております」
「それでは兵力が激減するぞ」
「不確かな兵力勝負よりも確実な建物の勝利点ですな。お気づきでないかもしれませんが、《奉納者》と《行商》がいれば基本収入と合わせて4金です。土地代が支払えますぞ」
「そうか、《行商》の【木材】があるから《祝宴》が建てられるのか」
「いえ、このターンは《聖堂》を建てたほうがよろしいかと」
「《祝宴》のほうがよいのではないか? 次のターン、《農民》などを引くかもしれん」
「それはそうですが、その場合、このターンを生き延びて経年カウンターをおいたユニットを解雇することになります。勝利点的にはプラスマイナスゼロでございます。さらにいうと、このターンに《祝宴》を作ってしまうと最終ターンに作れる建物がほとんどありません」
「最終ターンに《聖堂》でよいではないか。《狩人》2人はいるのだから、《祝宴》を作れば最低でも《聖堂》分の働きじゃ」
「その場合、最終ターンに《聖堂》を作るには土地代6金に加えて、【鉱石】を新たに2個産出するか、4金を余分に稼がないといけませんな。これはかなり厳しい条件です」
「ああ、そういえば《冒険家》は次のターンまでは生き延びられないんじゃったな」
「逆に、《腐敗の王》の配置を先延ばしにすることで《狩人》2人を生き延びさせられます」
「資源が残るわけか」
「次のターンの生産フェイズに《聖堂》2金、《行商》1金、《奉納者》1金、さらに基本収入2金でちょうど6金です。配置フェイズでお金を使いきっても土地代が捻出できますぞ」
「なるほど。最後の土地代も確保しつつ、《祝宴》レベル2の資源も生産できるか」
「そのとおりです」
<3ターン目のピック>
《腐敗の王》、《狩人》、《奉納者》、《狩人》、《冒険家》、《行商》
「まずは配置じゃな。《腐敗の王》はもうしばらく地下室に寝かせておいて、《狩人》たちに前衛へ回ってもらおうかの」
「そのとおりです。《ゴーレム》を解体して、スペースをあけましょう。十分働いてくれました。上に乗っている経年カウンター1個がちょっと惜しいですが、しょうがありませんな」
「さて全員、配置を終えたぞ。《狩人》たちが【食料】をもってきてくれたが?」
「それは《奉納者》に祝福してもらいましょう。そうしてから食べれば、寿命と引き替えに知恵と経験が得られる魔法の品となります。《冒険家》に渡しておきましょう」
<3ターン目まとめ>
キープカード 《腐敗の王》
3-1 《狩人》
3-2 《奉納者》
3-3 《狩人》
3-4 《冒険家》
3-5 《行商》
・前衛 《狩人》、《狩人》、《冒険家》
・後衛 《奉納者》、《行商》
・合計兵力 6点 (0勝換算)
・建築 《霊廟》 LV2、《宝物庫》 LV2、《聖堂》 LV2
・残金2、キープカード《腐敗の王》
※追記
配置フェイズの終了時に《奉納者》の効果で《冒険家》に経年カウンターを2個置く。また経年フェイズに合計2つの経年カウンターが経年によってとりのぞかれているので2金を獲得。
4ターン目
「ついに戦乱も終わりじゃの」
「あとは《腐敗の王》を配置するだけの簡単なお仕事ですな」
<現在のピック> ※キープカード含む
《腐敗の王》
<4-1>
《鉱夫》、《古参兵》、《森の子供たち》、《行商》、《労働者》
「どれでもよいのう」
「実際のプレイであれば隣のプレイヤー次第で変わってきますな。《宝物庫》を持っているプレイヤーには《鉱夫》を回したくはないですし、資源に困っているプレイヤーには《森の子供たち》を回さずにおきたいところですぞ」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《森の子供たち》
<4-2>
《ケット・シー》、《鉱夫》、《古参兵》、《時計職人》
「これまた小粒ぞろいじゃな」
「あえていえば《時計職人》でございましょうな。《冒険家》を引く可能性を考慮して」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《森の子供たち》、《時計職人》
<4-3>
《ワーム》、《農民》、《農民》
「やっぱり《祝宴》を作っておいたほうが良かったのではないのか?」
「そのようなことはありませぬ。新たに1人雇い入れるためには経年カウンター1個を諦めることになりますので、プラスマイナスは変わりません」
「じゃが《奉納者》がおるゆえ、1個の【食料】は2点の勝利点じゃ」
「おや?」
「おい」
「はっはっは。若様も一人前になられて」
「おいおい!」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《森の子供たち》、《時計職人》、《農民》
<4-4>
《古きもの》、《鉄巨兵》
「じい、なんでも城の地下で恐ろしいものが見つかったとか」
「それが、古代の邪神が城の地下に封印されているのが見つかりまして」
「は? なんだと?」
「古代の邪神です。単体で、我が領地の全兵力を上回ります」
「ど、どうした?」
「6金で力を貸してやると言われましたが、そのような大金は逆立ちしても支払えない、と正直に伝えたところ、何も言わず地中深く潜っていきました」
「そうか」
「かわりに巨大ロボットの設計図を手に入れました」
「どうなっとるんだ、この国は」
<現在のピック>
《腐敗の王》、《森の子供たち》、《時計職人》、《農民》、《鉄巨兵》
<4-5>
《ゴブリン》
「また《ゴブリン》がおるのう」
「おりますな」
「腹を空かしておるようじゃの。なんか適当にくれてやれ」
「分かりました。雇いますか?」
「必要なかろう」
<4ターン目のピック>
《腐敗の王》、《森の子供たち》、《時計職人》、《農民》、《鉄巨兵》、《ゴブリン》
「配置じゃな」
「《腐敗の王》を前線に送り出すだけでございます。満を持しての登場ですな」
「《森の子供たち》の使い道はないかの。【食料】が《奉納者》の効果で経年カウンターに変わるゆえ、勝利点が増えるのではないか?」
「ないですなあ。すでに場にいる兵力たちは経年カウンターが乗っておりますゆえ、勝利点的には変化がありません」
「やはり《祝宴》だったのではないかのう」
「冷たい目をされるようになりましたな」
「食い物の恨みは恐ろしいのじゃ」
「まさか《祝宴》で飲み食いしたかったから怒ってらっしゃるんですか!?」
「(ぷい)」
<4ターン目まとめ>
キープカード 《腐敗の王》
4-1 《狩人》
4-2 《奉納者》
4-3 《狩人》
4-4 《行商》
4-5 《ゴブリン》
・前衛 《狩人》、《狩人》、《腐敗の王》
・後衛 《奉納者》、《行商》
・合計兵力 8点 (0勝換算)
・建築 《霊廟》 LV2、《宝物庫》 LV2、《聖堂》 LV2、《祝宴》 LV2
・残金11、キープカード《ゴブリン》
最終勝利点:40点
<後書き>
文中で若様にも突っ込まれているが、もしかしたら3ターン目の建築は《祝宴》だったかもしれない。その場合、最終ターンに《森の子供たち》か《冒険家》を引ければレベル2の建物は建てられるし、レベル1どまりであっても【食料】を引けていれば勝利点自体はプラスだった可能性がある。
あと1人回しをする際には戦争勝利に必要な兵力を高めに見積もっているので、実際のプレイであれば戦争の勝利数はもう少し高いかもしれない。両隣の陣営次第では2ターン目の建築を《兵舎》にすることで今回の《宝物庫》より勝利点を稼げるはず(相手の勝利数を減らすという意味でも相対的な勝利点の上昇が見込める)。
そういった相手プレイヤー次第の点を除いても最適解を選べていない可能性があるので、もしお手元にカードがある人はぜひ再現してみて欲しい。ヴォーパルス面白いから、他にもリプレイ書いてくれる人が出てくると嬉しい。