【翻訳】2人でサイクリング週間の旅に出よう/A Cycling Built For Two【Daily MTG】
Mark Rosewater
2004年3月22日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/daily/mr116
サイクリング週間へようこそ。
この記事を始めるにあたって私は少々不安に気持ちになっている。なぜなら以前すでにサイクリングをテーマ週間に採用したことがあるからだ。
あれは2002年の9月、オンスロートのプレビュー週間だった。私はサイクリングに関する記事を書いたんだ。「Cyclying Cycling (註)」ってタイトルだ。
サイクリングに関してさらにまったく新しい記事を書くことができるだろうか? 私はあらためて自分の過去の記事を読み返してみたんだ。
そして驚いたことに、それはなかなか良い記事ではあったにも関わらず、サイクリングどっぷりというような内容ではなかったことに気づいた。記事は古いメカニズムを再利用することについてだった。
つまり私はまだ一度も本当にサイクリングのためのコラムを書いたことがないのだ。
今、この瞬間まではね。
ねえ、知ってる?
このコラムはサイクリングに関する各種トリビアから始めようと思う。
1. サイクリングが初めて収録されたセットは?
2. サイクリングが初めてデザインに入ったセットは?
3. サイクリングをデザインしたのは誰?
4. サイクリングは元々なんと呼ばれていた?
5. サイクリングは元々どんな効果だった?
6. サイクリングを持った初めてのカードは?(複数)
7. サイクリングが収録された2番目のセットは?
8. サイクリングが収録された2番目のブロックは?
9. サイクリングがそのデザインに入っていた2番目のセットは?
10. ウルザズ・サーガにはサイクリングコストが(2)でないカードが最初は入ってた?
11. ウルザズ・デスティニーに入っていたサイクリングをひねった効果のカードは?
12. なんでオンスロートにサイクリングが再録されることになったのか?
13. オンスロートの特殊なサイクリングたちはどのようにしてデザインされたのか?
さて、君はいくつ答えられるかな?
この記事を読み終わる頃には、これら全てに対する答えが得られるはずだ。人類がいまだかつて得られなかったほどのサイクリングに関する知識を君は得ていることだろう。
せっかく得られた力を決して悪用しないように。
1. サイクリングが初めて収録されたセットは?
サイクリングが初めて登場したのはウルザズ・サーガだ。
良いトリビアのクイズはまず簡単な質問から始まるものだ。そうすることで回答者を油断させ、ガードを下げさせることができるからだ。これを非常に上手く実践している例はTV番組の「Who Wants to Be a Millionaire?」(註)だ。
余談だが、このTV番組の$250,000の段階のクイズの1つは「サイの群れはなんと呼ぶ?(註)」だった。勉強になっただろう? マジックは有益なものだということが分かってもらえたと思う。
2. サイクリングが初めてデザインに入ったセットは?
良いトリビアのクイズのもう1つの条件は早い段階から難易度の高い質問をぶつけることだ。そうすることで回答者が恐れを抱くようになる。覚えておいてくれ。良いトリビアとは、まず油断させ、次に怖がらせることだ。
まず油断、次に恐怖だ。
もっとも、伝統的なトリビアではこんなに早く怖がらせる必要もないんだが、私は早いところこの記事の要点に触れたかったんだ。そう、サイクリングはどこから来たのか、ということだ。
答えは(他の多くの似た質問に対する答えと同じように)テンペストだ。
テンペストは私が初めてデザインしたセットだ。そしてMike Elliottの初めてデザインしたセットでもある。そしてアラビアンナイト以降でRichard Garfieldが初めてデザインしたセットでもある(どこかにいるであろうさらなるトリビア好きの君のために付け加えておくと、このセットの4人目のメンバーはCharlie Catinoという男だ)。
ここだけの話だが、おそらく今存在しているマジックのカードのうちの4分の3は私たち3人のいずれかがデザインしたものだ。
想像して欲しい。この3人が初めて一堂に会し、それぞれが何年も暖めていたアイデアを持ち寄ったら何が起きるか。創造力が爆発した、そうとしか言いようがない。
たとえば通常の大型セットはデザインチームの手を離れて次に引き渡されるときには大体4つから6つのメカニズムが入っているのが普通だ(念のため。キーワード能力だけじゃなくて、全てのメカニズムを含んだ数字だ)。
テンペストがデザインチームの手を離れたとき、いくつのメカニズムがそこにあったか?
24個だ。
いや、だから聞こえただろ。
24個だ!
ああ、そうそう、ちなみにこれは私が初めてデザインチームリーダーを務めたセットでもある。良いデザインは、メカニズムを大体4つから6つまでしぼりこむ作業を経て行われる。
ところがあの頃の私はまだ若かった。ぜい肉をそぎおとすという作業の重要性をまったく分かっていなかった。良いと思ったメカニズムを全てデザインに放り込んでしまったんだよ。
そうそう。良いと思われたメカニズムは24個あった。
3. サイクリングをデザインしたのは誰?
ほとんどの人が私だと思ったんじゃないかな。結局、これは私のコラムだからね。
残念ながら不正解だ。ここで(またちょっと脇道にそれてしまうが)私が学んできたコミュニケーション論について話そうと思う。ああ、大丈夫、ちゃんとマジックの話題に帰ってくるよ。
さて、もし君がテレビの仕事につきたいと願うなら、大学でこれでもかというほどの時間をかけてテレビについて学ばなければならない。
テレビの持つもっとも大きな力の1つに、一般大衆をだますことができるということが挙げられる。大きな力となっている理由はこれが非常に目立たない手段で行われるためだ。
私が今日ここで話したいのは、私が「表現による世界構築(Environment by Representation)」と呼んでいる効果だ(もっとふさわしい呼称があったはずだが忘れてしまった。ここに挙げた名称は私の造語だ)。
「表現による世界構築(Environment by Representation)」という考え方は、人が世界を理解しようとするとき、直接的にそれに触れることによってだけではなく、それが「テレビにどれほど頻繁に映るか」ということを通じておこなってもいるということだ。
もっともよい例は犯罪だろう。
テレビに映る犯罪のうち、90%は凶悪なものであり、残りの10%が軽犯罪だ。ところが実際の比率は逆であり、1つの凶悪犯罪に対して9つの軽犯罪が起きている。テレビがそれを逆に映し出すことによって、一般大衆は実際よりも世界はずっと危険であるという認識を持つことになる。
さて、なぜ私はわざわざこのことをマジックのコラムで言及したのだろう?
それは、私のコラムでも同じような現象が起きており、その幻想を取り払いたいからだ。私がデザインについて語るとき、ほとんどは「私自身がデザインしたもの」について語っている。
なぜか?
それは、私が自分自身のデザインしたことについてなら何でも知っているからだ。過去のデータから何から全て自分で持っており、それらについて完璧に話すことが出来るからだ。私自身のデザインについてならいくらでも興味深い話を語れる。
そのため、マジックのデザインに関する私の記事を読んでいる皆からすると、まるでマジックのカードのうち、その9割が私のデザインであるかのような印象を受けるだろう。
実際はそうではない。
現実には、どれほどそのセットへ関わったかにもよるが、私のデザインしたカードが占める割合はセットごとにおおよそ5%から50%までのあいだだ。
また私は基本的に新たなメカニズムのデザインに関わることが多い。それは経験を積んだデザイナーである私の重要な役割の1つだからだ。
しかしマジックのデザインは、献身的なデザイナーたちによるチーム作業だ。
私はそのチームの一員だ。
今は確かに私が全体を俯瞰する立場にあるが、私の記事から受ける印象だけで、仕事の大半を私1人がやっているのでは、というような誤った認識を持たないで欲しい。
さて、サイクリングをデザインしたのは誰か?
答えは Richard Garfield だ。
4. サイクリングは元々なんと呼ばれていた?
サイクリングはそれが生まれたばかりのとき「Sliding」と呼ばれていた。
5. サイクリングは元々どんな効果だった?
以下にあげるのが「Sliding」の元祖テンプレート文だ。
Sliding
(あなたがカードを引くとき、それを全てのプレイヤーに公開することで
それをあなたのライブラリーの一番下へ移動させ、次のターンのアップ
キープの開始時に新たなカードを1枚引く)
ここで言う「元祖」というのは、テンプレートチームのチェック前、デザインチームが用いていたテンプレート文という意味だ。このメカニズムはテンプレートチームへ渡るずっと以前の段階で、デベロップメントチームによって却下された。
(なお、Bill Roseというただ1人の例外を除いて、デザイナーチームの中にテンプレートをきちんと書けるメンバーは1人もいない。なお私はそのデザイナーチームの中にあって平均以下だ。本当だよ)
あと、もしかしたら「次のターンのアップキープの開始時」というのは君たちの目にはとても奇妙に映るかもしれない。過去においてはこれがキャントリップのテンプレートだったんだ。
そう、アイスエイジの頃のキャントリップは「次のターンのアップキープの開始時」まで効果を現さなかった。そしてR&Dはより直感的に分かりやすいようにということで、よりシンプルな「カードを1枚引く」にこれを変えてくれた。
ウルザズ・サーガのデザインの際、「Sliding」もその新しいキャントリップのテンプレートに直すことにした。そして新しいテンプレートはマナコストを要求するものとなった。
なぜならマナコストが不要なサイクリングカードというのは実質的にデッキをカード1枚分圧縮できるということになってしまうからだ。
もう1つの変更点はカードの移動先だ。元々はサイクリングされたカードはライブラリの底へ移動していた。私たちはそれを墓地へ落ちるように変更した。
そのほうが分かりやすいと思ったから、ということに加えて、リミテッドにおける積み込みの問題を回避するためでもあった。
6. サイクリングを用いてデザインされた最初のカードは?(複数回答可)
Richard Garfieldが最初期にデザインしたカードは全てコモンだった。
彼が作ったカードの効果は全てすでに存在するカードのもので、かつその効果がしばしば限定的になってしまうものだった。これらに「Sliding」を付与することで、そういったカードを候補から除いてしまうようなデッキにも入れられるようになるからだ。
以下にあげるのが私の過去フォルダからそのまま取り出してきた、テンペストのデザイン時に作られた最初の「Sliding」カードだ。
cb22
Sliding Dark Ritual
3B
Mana Source
Black
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Add BBBBBBB to your mana pool.(あなたのマナプールに(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)を加える)
"For Timmy"
cr06
Sliding Dwarf
1R
Summon Dwarf
Red
Artist
1/1
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Mountainwalk
cr18
Sliding Stone Rain
3R
Sorcery
Red
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Destroy target land.(土地1つを対象とし、それを破壊する。)
cg19
Sliding Wild Growth
G
Enchant Land
Green
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Sliding Wild Growth adds G to your mana pool each time enchanted land is tapped for mana.(エンチャントされている土地がマナを引き出す目的でタップされるたび、それのコントローラーは自分のマナ・プールに(緑)を加える)
cg20
Sliding Tranquility
3G
Sorcery
Green
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Destroy all enchantments.(すべてのエンチャントを破壊する。)
7. サイクリングが収録された2番目のセットは?
君たちのうち、ほとんどはオンスロートと答えるだろうね。
正解はウルザズ・レガシーだ。
良いトリビアのクイズの条件その2だ。少々ずるがしこくないといけない。
8. サイクリングが収録された2番目のブロックは?
これの答えがオンスロートだ。
9. サイクリングがそのデザインに入っていた2番目のセットは?
ウルザズ・サーガだ。
またひっかかったかな?
10. ウルザズ・サーガにはサイクリングコストが(2)でないカードが最初は入ってた?
もちろん入っていたさ。ウルザズ・レガシーのデザインチーム((Mike ElliotとHenry Sternと私)は、マナでないサイクリングコストについてあれこれ試した。
以下にあげる2枚が初期の頃のフォルダから引っ張りだしてきたものだ。どちらもライフをコストとしており、どちらも黒いカードだ。
CB09_GU
Minor Reanimation
B
Sorcery
Black
Choose target creature card in your graveyard with total casting cost 3 or less and put that creature into play.(あなたの墓地にある、点数で見たマナ・コストが3以下であるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。)
Sliding: 2 life
reanimate
sliding
alt slide for mana and probably 1B
UB04_GU
Black’s Sucky Artifact Destruction
3B
Sorcery
Black
Destroy target artifact.(アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。)
Sliding: 2 life
sliding
alt slide for mana
そしてウルザズ・デスティニーでは、デザインチーム(メンバーは私1人だけ)は代替コストのサイクルを試してみた。
Saving Grace
1W
Instant
White
Cycling: Tap two white creatures(サイクリング:白のクリーチャーを2体タップする)
Prevent 4 damage to target creature.(クリーチャー1体を対象とする。このターン、それに与えられる次のダメージを4点軽減する。)
Spell Pluck
1U
Interrupt
Blue
Cycling: Return two islands you control to your hand(サイクリング:あなたのコントロールする島を2枚手札に戻す)
Counter target spell with a casting cost of 3 or less.(呪文1つを対象とする。その点数で見たマナ・コストが3以下である場合、それを打ち消す。)
Lotta Diggin’
1B
Sorcery
Black
Cycling: Pay 2 life(サイクリング:2点のライフを支払う)
Remove up to three target cards from any graveyard.(いずれかの墓地にあるカードを最大3枚までゲームから追放する。)
Land Be-Gone
3R
Sorcery
Red
Cycling: Sacrifice a land(サイクリング:土地を1つ生け贄に捧げる。)
Destroy target land.((土地1つを対象とし、それを破壊する。)
Splendor in the Grass
1G
Instant
Cycling: return a creature you control to your hand(サイクリング:あなたのコントロールするクリーチャーを1体手札に戻す)
Prevent all combat damage to creatures you control.(あなたのコントロールするクリーチャーに与えられる全ての戦闘ダメージを軽減する)
どちらのケースでも代替コストのサイクリングはデザインの段階で切り捨てられた。
なぜか?
なぜなら、マナを無視することはトラブルの元だからだ。さて、あの「やっちまった」だらけなウルザズ・サーガ・ブロックにおいて、「何か問題を起こすかもしれない」などという理由からカードのデザインを諦めたなんて信じられない、と思う人もいるかもしれない。
だが皮肉なことに事実だ。興味深いことにオンスロート・ブロックで再度マナを必要としないサイクリングコストを模索したときも同じ結論に達した。
もしかしたらマナコストの変化について何か思い付いた人がいるかもしれない。(2)以外のコストだったカードはなかったのか? 違うマナコストをR&Dは試そうとしなかったのか?
しなかった。私たちは新しいメカニズムは一定であったほうがプレイヤーたちに受け入れられやすいだろうと考えたんだ。実際のところ、サイクリングは数字部分なしでキーワードされかかったくらいだ。
私たちは数字を2で固定しておきたかったので、能力のコストは常に2にしようという話になっていた。幸運なことに当時の私たちは、選択肢は残しておくべきだ、と自分たちを説得することに成功した。
現在では、キーワードを作る際は出来る限り「縛り」は少なくしておくこと、ということになっている。もしスレッショルドが今作られていれば、それは「スレッショルド - 7」という形になっていただろうね。
11. ウルザズ・デスティニーに入っていたサイクリングをひねった効果のカードは?
ほとんどのプレイヤーは気づいていないようだが、ウルザズ・デスティニーにもちょっとひねった形のサイクリングが存在していた。しかしそのカードにはサイクリングという言葉が使われていなかったので、私の試みに気づいた人はほとんどいなかったようだ。
「ひねり」とは何か?
それは「すでに戦場にあるカードをサイクリングする」というものだ。
戦場に出たあとに「サイクリング」することができるパーマネントがここでいうひねりを加えたカードたちだ。これらは全て、2マナとそのカードを払うことでカードを1枚引くことが出来る。そう、まるでサイクリングのようにね。
このメカニズムから得られる教訓は、デザイナーはときに少々控え目過ぎるということだ。当時の自分が今と同じだけのノウハウを持っていたら、上記の能力に「サイクリング」という単語を含むなんらかのキーワードを与えたくなっていたと思う。
そうすればプレイヤーたちにも意図が伝わったはずだ。(絶対そうした、と言っているわけではないよ。与えたくなっていただろう、という話だ)
ウルザズ・デスティニーのデザインを始めた頃は、こういった「戦場にあるカードをサイクリングする」カードが多く作られていた。
この記事を書くに当たって私は事前にリサーチをしたわけだが(そのとおり、私は実際にリサーチをしたんだよ。R&Dという名前は伊達じゃない)、その際に初期の開発フォルダの中を見ると上記のようなカードを大量に発見したんだ(枚数が気になるなら教えてあげよう。19枚だ)。
以下にあげるのはその中から実際に印刷されることのなかったカードで、かつ興味深いであろうと思われるものをピックアップしてみた(あとそれらに関するちょっとしたコメントをつけてみた)。なおこれらがかなり初期の段階のデザインファイルから発見されたということは忘れないで欲しい。
Peaceful Afterlife
W
Enchantment
White
No effects are generated when cards are put into the graveyard.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
ウルザズ・デスティニーの代表的なメカニズムの1つは「戦場を離れたとき」の効果だ。これはエコーとも「戦場にあるカードをサイクリングする」効果とも相性が良い。このカードはそういった「戦場を離れたとき」の効果をいじめるために作られたものだ。
問題はこのカードはルール的に上手く働かないということだった。(少なくとも当時のルールチームはそう言ってた(たった今、Paulに聞いてみたけど、やっぱりダメだってさ))。
Bounce Field
U
Enchant Creature
Blue
When CARDNAME is put into any graveyard from play, return target creature to owner’s hand.
U: Return enchanted creature to owner’s hand.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
あらためて見てみると、これは青の起動型能力がなかったほうがデザイン的には良かったように思われる。しかしこのカードからも当時の私が場から離れた際に誘発する能力と場からサイクリングするカードとで色々試していたことがよく分かる。
ウルザズ・デスティニーではこれの仲間がたくさん作られたが、デベロップメントチームはそれをふるいにかけて特に良いものだけを残した(ちなみにデベロップメントチームはこれらに Clever Card というあだ名をつけていた)。
Phyrexian Sporespitter
2BB
Summon Horror
Black
3/3
When CARDNAME is put into any graveyard from play, all creatures in play get -1/-1 until end of turn.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
このカードはウルザズ・レガシーのファイレクシアなクリーチャーたちとインベイジョンの《疫病吐き/Plague Spitter》とをかけあわせたものだ
Crazed Soldier
3R
Summon Soldier
Red
3/1
CARDNAME cannot block.
When CARDNAME is put into any graveyard, target creature gets +4/-4.
That creature’s toughness may not drop below 1.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
血に渇いた兵士がその死によって他のクリーチャーに《血の渇き/Blood Lust》を与えるというこのカードのアイデアを私は非常に気に入っていた。攻撃的な感情の昂りが受け継がれるという感じだ。
Wild Emus
2GGG
Summon Beast
Green
3/3
When CARDNAME leaves play, all your creatures get +2/+2 and trample until end of turn.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
このカードはレアだった。このカードの問題点は、追加の効果が勝負を決めてしまうほど強いものだと「カードを1枚引く」なんてことはどうでもよくなってしまうという点だ。
Cycling Sol Ring
2
Artifact
Artifact
(T): Add 2 to your mana pool.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
自分でも頭がおかしいんじゃないかとしか思えない時期が私にあった、という証拠としてこれを紹介したい。
まず《太陽の指輪/Sol Ring》を表現するにはぶっ壊れているという言葉すら生ぬるい。そこで私はマナコストを増やしてみた。そしてさらに能力を足してみた!?
それもプラスとなる能力だ。少なくとも弱い能力ではない(片方の能力でマナを生み出して、そのマナで自身を生け贄に捧げてカードを引くこともできる。弱くはないだろ?)。
ウルザズディステニーのカードのパワーレベルがあまりに高かった理由の一端がここから垣間見えるかもしれない。
この7年間で私のデベロップメントの技術は当時よりかは向上したと断言できるよ(デベロップメントの技術は、デザインうんぬんではなくどちらかというとカードのパワーレベルをきちんと把握できるかどうか、だからね)。
12. なんでオンスロートにサイクリングが再録されることになったのか?
その答えにはいくつもの要素が絡み合っている。
再録された理由の1つとしては、サイクリングがビン(Bin)に入っていたからだ。ああ、君は「ビン(Bin)って何?」と聞くだろうね。ここ最近、R&Dはメカニズムをどう扱うかということについて考えを変えることにしたんだ。
過去には、メカニズムとは限られたリソースだと考えられていた。しかし現在では私たちはメカニズムを道具(Tools)だと考えている。もしそのメカニズムが上手く働いたなら、私たちはそれをありがたく何度でも再利用させてもらうことにしている。
これが何を意味しているか?
まず私たちは新しいメカニズムを生みだしたとき、それがきちんと働いてくれるかどうか、またみんなからそれに対してどのような反応が返ってくるかどうか、を注意深く観察する。
もし全てが上手く回ったなら(つまりメカニズムはきちんと働き、かつみんなに受け入れられたなら)私たちはそれをビンに放り込む。このビンに入っているメカニズムは全てゲームを破たんさせないことが保証されており、再利用可能なメカニズムだ。
ウルザズサーガブロックの時代にサイクリングは非常に人気があり皆に受け入れられた。そしてまたR&Dが特にお気に入りに選ぶだけの機能性もあった。
これが再録された2つ目の理由となる。サイクリングは皆に好まれたというだけでなく、ゲームそれ自体に対して良い働きを見せるんだ。
まずサイクリングは、私がメカニズムに求める最も重要な資質を持っていた。
エレガントさだ。
サイクリングはシンプルで、かつ分かりやすく、しかしそれにも関わらず奥深い戦術性をも持っており、それがこのメカニズムを非常に身のあるものにしていた。プレイヤーはこれを長い時間かけてあれやこれやと試してみて、なお飽きることがない。
もしサイクリングの長所が上記にあげた事柄だけがだったとしてもビンには放り込まれるに十分なメカニズムだったが、サイクリングにはもう1つ重要なポイントがある。
数週間前、私は"Starting Over"(註)という記事でマジックのマナソースシステムの重要性について述べた。
このシステムにはたくさんの長所があるが、それでも無視できない1つの問題点がある。マナ事故だ。ゲームはそもそもそれが始まらなければ楽しむことはできない。
そういうわけで、全てのセットはそのデザインの目的の1つに、プレイヤーのマナ事故の回数を減らすことがある。この問題を解決するために私たちが取り得る手段は多岐にわたるが、いずれにせよどんなブロックにも必ず対抗策が入っているよう注意を払っている。
サイクリングというメカニズムはこういった対抗策の1つだ。
どのように問題を解決してくれるのか? その答えは3つある。
1つ目として、サイクリングカードは低いマナコストでサイクリングできる。これによって土地の枚数が少ないときに新たな土地を得る確率を上げてくれる。
2つ目として、土地が余っているときに余分なマナの使い道となってくれる。要するに、マナをカードに換えてくれる。より正確に言うなら、マナを手札の質を上げるために使うことが出来るようになる。
これによってプレイヤーはデッキ内の土地比率を上げることができる。なぜならサイクリングカードは長い目で見ればそのサイクリングという効果によって引きすぎた土地のバランスをとってくれるからだ。
(サイクリングすることによってすでにプレイされた余分な土地からのマナをさらに土地をプレイするディスアドバンテージを打ち消すのに使うことが出来る、とも言える)
3つ目として、サイクリングによって、コモンのサイクリング土地を作ることができた。サイクリング土地こそがマナのバランスをとる手段の最も純粋にして的確な例と言える。マナが必要なときには土地に、そうでないときには他のカードになってくれる。
ここまでがサイクリングが再録された2つ目の理由で、3つ目の理由としてあげられるのはサイクリングには工夫をこらす余地がたくさんあり、私たちはその奥深さを追求することに心ひかれていたからだ(これについては次の質問と回答でもっと詳しく話そうと思う)。
再録された理由の4つ目は、サイクリングはオンスロートが必要としていたパーツにぴったりだったからだ。
部族というテーマは非常にクリーチャー偏重なものだ。そこで私たちにはノン・クリーチャー・カードと上手く働いてくれるメカニズムが必要となったわけだ(おっと、待てよ。サイクリングはクリーチャーとも上手く働くんじゃないかい?)
最終的にはこれら全ての理由が合わさり、サイクリングは復活を遂げたというわけさ。
13. オンスロートの特殊なサイクリングたちはどのようにしてデザインされたのか?
オンスロートで登場した新発明は3つある。
1つ目は新たなサイクリングコストだ。
これは大して脳みそを使う必要もない発明だったので、特に語ることもない。これによって柔軟性のあるコストが設定できるようになり多くのカードが改善された(例えばサイクリング土地のように)。
2つ目はカードがサイクリングされることをトリガーに誘発する能力を持ったカードだ。こういったアイデアのカードが元々はウルザズ・サーガのファイルにもたくさん作られていたことを考えると、なかなか興味深い。
私たちはこのアイデアを一時棚上げした。当時は必要ないと思われたからだ。オンスロートを迎えるに当たって、私たちは埃まみれだったそれを棚からおろして新カードをデザインしたというわけだ。
3つ目はサイクリングされた際に追加効果をもたらすカードだ。
サイクリングの本来持っているフレイバー(違う呪文を手に入れるために手札の呪文を諦める、というフレイバー)を保つため、もたらされる追加効果は本来唱えられたときの効果を弱めたものであるべきだと私は考えた。
こうすることで選択肢が生まれる。呪文の出力を最大にするか、もしくは弱い出力のかわりに追加の呪文を得るか。
ちょっとプレイテストをしただけで、これらの3つの発明が再録されることとなったサイクリングに十分すぎるほどの活力を与えてくれることが分かった。
サイクリングには他にも革新的なアイデアが隠されているだろうか?
もちろんだ。
それらはどういうアイデアなのか?
それを知るためにはサイクリングの三度目の登場を待つしかないだろうね(言うまでもないと思っていたけど、気づいてない人のために付け加えておこう。サイクリングはまたいつの日か帰ってくるよ)
前へ進み続けよう(サイクリングだけに)
さて、そんなわけでサイクリングのあれやこれやについての3500文字はこれで終了だ。この興味深いメカニズムを調査する旅を楽しんでもらえただろうか。
来週のコラムでは何週間も前に「Talk To Me(註)」のコラムで私から君たちへ投げかけた100の質問についてついに取り上げることとなる。ぜひ読みにきてくれ。
それまで君たちが再発見の喜びにひたれるよう祈っているよ。
Mark Rosewater
2004年3月22日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/daily/mr116
サイクリング週間へようこそ。
この記事を始めるにあたって私は少々不安に気持ちになっている。なぜなら以前すでにサイクリングをテーマ週間に採用したことがあるからだ。
あれは2002年の9月、オンスロートのプレビュー週間だった。私はサイクリングに関する記事を書いたんだ。「Cyclying Cycling (註)」ってタイトルだ。
(註) Cyclying Cycling
原文では以下のURLへリンクが張られている。内容は記事の続きに書かれている通り、なぜ古いメカニズムをあらためて持ちだしてきたのかについて。
Cyclying Cycling
http://www.wizards.com/Default.asp?x=mtgcom/daily/mr38
サイクリングに関してさらにまったく新しい記事を書くことができるだろうか? 私はあらためて自分の過去の記事を読み返してみたんだ。
そして驚いたことに、それはなかなか良い記事ではあったにも関わらず、サイクリングどっぷりというような内容ではなかったことに気づいた。記事は古いメカニズムを再利用することについてだった。
つまり私はまだ一度も本当にサイクリングのためのコラムを書いたことがないのだ。
今、この瞬間まではね。
ねえ、知ってる?
このコラムはサイクリングに関する各種トリビアから始めようと思う。
1. サイクリングが初めて収録されたセットは?
2. サイクリングが初めてデザインに入ったセットは?
3. サイクリングをデザインしたのは誰?
4. サイクリングは元々なんと呼ばれていた?
5. サイクリングは元々どんな効果だった?
6. サイクリングを持った初めてのカードは?(複数)
7. サイクリングが収録された2番目のセットは?
8. サイクリングが収録された2番目のブロックは?
9. サイクリングがそのデザインに入っていた2番目のセットは?
10. ウルザズ・サーガにはサイクリングコストが(2)でないカードが最初は入ってた?
11. ウルザズ・デスティニーに入っていたサイクリングをひねった効果のカードは?
12. なんでオンスロートにサイクリングが再録されることになったのか?
13. オンスロートの特殊なサイクリングたちはどのようにしてデザインされたのか?
さて、君はいくつ答えられるかな?
この記事を読み終わる頃には、これら全てに対する答えが得られるはずだ。人類がいまだかつて得られなかったほどのサイクリングに関する知識を君は得ていることだろう。
せっかく得られた力を決して悪用しないように。
1. サイクリングが初めて収録されたセットは?
サイクリングが初めて登場したのはウルザズ・サーガだ。
良いトリビアのクイズはまず簡単な質問から始まるものだ。そうすることで回答者を油断させ、ガードを下げさせることができるからだ。これを非常に上手く実践している例はTV番組の「Who Wants to Be a Millionaire?」(註)だ。
(註) Who Wants to Be a Millionaire?
アメリカのクイズ番組。日本でも「クイズ$ミリオネア」として放映された。賞金額の低い簡単な問題を正解することで、賞金額の高い難しい問題に挑戦できるようになる。しかし一度でも不正解だと賞金はゼロとなる。
余談だが、このTV番組の$250,000の段階のクイズの1つは「サイの群れはなんと呼ぶ?(註)」だった。勉強になっただろう? マジックは有益なものだということが分かってもらえたと思う。
(註) サイの群れをなんと呼ぶ?
サイ(Rhino)の群れは英語で「Crash」と呼び、そのまんまな《Crash of Rhinos》というカードがある。直訳すると「サイの群れ」だが、日本語版カード名は「サイの暴走」となっている。実際イラストもそんな感じだった。
2. サイクリングが初めてデザインに入ったセットは?
良いトリビアのクイズのもう1つの条件は早い段階から難易度の高い質問をぶつけることだ。そうすることで回答者が恐れを抱くようになる。覚えておいてくれ。良いトリビアとは、まず油断させ、次に怖がらせることだ。
まず油断、次に恐怖だ。
もっとも、伝統的なトリビアではこんなに早く怖がらせる必要もないんだが、私は早いところこの記事の要点に触れたかったんだ。そう、サイクリングはどこから来たのか、ということだ。
答えは(他の多くの似た質問に対する答えと同じように)テンペストだ。
テンペストは私が初めてデザインしたセットだ。そしてMike Elliottの初めてデザインしたセットでもある。そしてアラビアンナイト以降でRichard Garfieldが初めてデザインしたセットでもある(どこかにいるであろうさらなるトリビア好きの君のために付け加えておくと、このセットの4人目のメンバーはCharlie Catinoという男だ)。
ここだけの話だが、おそらく今存在しているマジックのカードのうちの4分の3は私たち3人のいずれかがデザインしたものだ。
想像して欲しい。この3人が初めて一堂に会し、それぞれが何年も暖めていたアイデアを持ち寄ったら何が起きるか。創造力が爆発した、そうとしか言いようがない。
たとえば通常の大型セットはデザインチームの手を離れて次に引き渡されるときには大体4つから6つのメカニズムが入っているのが普通だ(念のため。キーワード能力だけじゃなくて、全てのメカニズムを含んだ数字だ)。
テンペストがデザインチームの手を離れたとき、いくつのメカニズムがそこにあったか?
24個だ。
いや、だから聞こえただろ。
24個だ!
ああ、そうそう、ちなみにこれは私が初めてデザインチームリーダーを務めたセットでもある。良いデザインは、メカニズムを大体4つから6つまでしぼりこむ作業を経て行われる。
ところがあの頃の私はまだ若かった。ぜい肉をそぎおとすという作業の重要性をまったく分かっていなかった。良いと思ったメカニズムを全てデザインに放り込んでしまったんだよ。
そうそう。良いと思われたメカニズムは24個あった。
3. サイクリングをデザインしたのは誰?
ほとんどの人が私だと思ったんじゃないかな。結局、これは私のコラムだからね。
残念ながら不正解だ。ここで(またちょっと脇道にそれてしまうが)私が学んできたコミュニケーション論について話そうと思う。ああ、大丈夫、ちゃんとマジックの話題に帰ってくるよ。
さて、もし君がテレビの仕事につきたいと願うなら、大学でこれでもかというほどの時間をかけてテレビについて学ばなければならない。
テレビの持つもっとも大きな力の1つに、一般大衆をだますことができるということが挙げられる。大きな力となっている理由はこれが非常に目立たない手段で行われるためだ。
私が今日ここで話したいのは、私が「表現による世界構築(Environment by Representation)」と呼んでいる効果だ(もっとふさわしい呼称があったはずだが忘れてしまった。ここに挙げた名称は私の造語だ)。
「表現による世界構築(Environment by Representation)」という考え方は、人が世界を理解しようとするとき、直接的にそれに触れることによってだけではなく、それが「テレビにどれほど頻繁に映るか」ということを通じておこなってもいるということだ。
もっともよい例は犯罪だろう。
テレビに映る犯罪のうち、90%は凶悪なものであり、残りの10%が軽犯罪だ。ところが実際の比率は逆であり、1つの凶悪犯罪に対して9つの軽犯罪が起きている。テレビがそれを逆に映し出すことによって、一般大衆は実際よりも世界はずっと危険であるという認識を持つことになる。
さて、なぜ私はわざわざこのことをマジックのコラムで言及したのだろう?
それは、私のコラムでも同じような現象が起きており、その幻想を取り払いたいからだ。私がデザインについて語るとき、ほとんどは「私自身がデザインしたもの」について語っている。
なぜか?
それは、私が自分自身のデザインしたことについてなら何でも知っているからだ。過去のデータから何から全て自分で持っており、それらについて完璧に話すことが出来るからだ。私自身のデザインについてならいくらでも興味深い話を語れる。
そのため、マジックのデザインに関する私の記事を読んでいる皆からすると、まるでマジックのカードのうち、その9割が私のデザインであるかのような印象を受けるだろう。
実際はそうではない。
現実には、どれほどそのセットへ関わったかにもよるが、私のデザインしたカードが占める割合はセットごとにおおよそ5%から50%までのあいだだ。
また私は基本的に新たなメカニズムのデザインに関わることが多い。それは経験を積んだデザイナーである私の重要な役割の1つだからだ。
しかしマジックのデザインは、献身的なデザイナーたちによるチーム作業だ。
私はそのチームの一員だ。
今は確かに私が全体を俯瞰する立場にあるが、私の記事から受ける印象だけで、仕事の大半を私1人がやっているのでは、というような誤った認識を持たないで欲しい。
さて、サイクリングをデザインしたのは誰か?
答えは Richard Garfield だ。
4. サイクリングは元々なんと呼ばれていた?
サイクリングはそれが生まれたばかりのとき「Sliding」と呼ばれていた。
5. サイクリングは元々どんな効果だった?
以下にあげるのが「Sliding」の元祖テンプレート文だ。
Sliding
(あなたがカードを引くとき、それを全てのプレイヤーに公開することで
それをあなたのライブラリーの一番下へ移動させ、次のターンのアップ
キープの開始時に新たなカードを1枚引く)
ここで言う「元祖」というのは、テンプレートチームのチェック前、デザインチームが用いていたテンプレート文という意味だ。このメカニズムはテンプレートチームへ渡るずっと以前の段階で、デベロップメントチームによって却下された。
(なお、Bill Roseというただ1人の例外を除いて、デザイナーチームの中にテンプレートをきちんと書けるメンバーは1人もいない。なお私はそのデザイナーチームの中にあって平均以下だ。本当だよ)
あと、もしかしたら「次のターンのアップキープの開始時」というのは君たちの目にはとても奇妙に映るかもしれない。過去においてはこれがキャントリップのテンプレートだったんだ。
そう、アイスエイジの頃のキャントリップは「次のターンのアップキープの開始時」まで効果を現さなかった。そしてR&Dはより直感的に分かりやすいようにということで、よりシンプルな「カードを1枚引く」にこれを変えてくれた。
ウルザズ・サーガのデザインの際、「Sliding」もその新しいキャントリップのテンプレートに直すことにした。そして新しいテンプレートはマナコストを要求するものとなった。
なぜならマナコストが不要なサイクリングカードというのは実質的にデッキをカード1枚分圧縮できるということになってしまうからだ。
もう1つの変更点はカードの移動先だ。元々はサイクリングされたカードはライブラリの底へ移動していた。私たちはそれを墓地へ落ちるように変更した。
そのほうが分かりやすいと思ったから、ということに加えて、リミテッドにおける積み込みの問題を回避するためでもあった。
6. サイクリングを用いてデザインされた最初のカードは?(複数回答可)
Richard Garfieldが最初期にデザインしたカードは全てコモンだった。
彼が作ったカードの効果は全てすでに存在するカードのもので、かつその効果がしばしば限定的になってしまうものだった。これらに「Sliding」を付与することで、そういったカードを候補から除いてしまうようなデッキにも入れられるようになるからだ。
以下にあげるのが私の過去フォルダからそのまま取り出してきた、テンペストのデザイン時に作られた最初の「Sliding」カードだ。
cb22
Sliding Dark Ritual
3B
Mana Source
Black
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Add BBBBBBB to your mana pool.(あなたのマナプールに(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)(黒)を加える)
"For Timmy"
cr06
Sliding Dwarf
1R
Summon Dwarf
Red
Artist
1/1
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Mountainwalk
cr18
Sliding Stone Rain
3R
Sorcery
Red
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Destroy target land.(土地1つを対象とし、それを破壊する。)
cg19
Sliding Wild Growth
G
Enchant Land
Green
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Sliding Wild Growth adds G to your mana pool each time enchanted land is tapped for mana.(エンチャントされている土地がマナを引き出す目的でタップされるたび、それのコントローラーは自分のマナ・プールに(緑)を加える)
cg20
Sliding Tranquility
3G
Sorcery
Green
Artist
Sliding (When you draw card, reveal it to all players to put it on the bottom of your library and draw another card at the start of the next turn’s upkeep )
Destroy all enchantments.(すべてのエンチャントを破壊する。)
7. サイクリングが収録された2番目のセットは?
君たちのうち、ほとんどはオンスロートと答えるだろうね。
正解はウルザズ・レガシーだ。
良いトリビアのクイズの条件その2だ。少々ずるがしこくないといけない。
8. サイクリングが収録された2番目のブロックは?
これの答えがオンスロートだ。
9. サイクリングがそのデザインに入っていた2番目のセットは?
ウルザズ・サーガだ。
またひっかかったかな?
10. ウルザズ・サーガにはサイクリングコストが(2)でないカードが最初は入ってた?
もちろん入っていたさ。ウルザズ・レガシーのデザインチーム((Mike ElliotとHenry Sternと私)は、マナでないサイクリングコストについてあれこれ試した。
以下にあげる2枚が初期の頃のフォルダから引っ張りだしてきたものだ。どちらもライフをコストとしており、どちらも黒いカードだ。
CB09_GU
Minor Reanimation
B
Sorcery
Black
Choose target creature card in your graveyard with total casting cost 3 or less and put that creature into play.(あなたの墓地にある、点数で見たマナ・コストが3以下であるクリーチャー・カード1枚を対象とし、それを戦場に戻す。)
Sliding: 2 life
reanimate
sliding
alt slide for mana and probably 1B
UB04_GU
Black’s Sucky Artifact Destruction
3B
Sorcery
Black
Destroy target artifact.(アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。)
Sliding: 2 life
sliding
alt slide for mana
そしてウルザズ・デスティニーでは、デザインチーム(メンバーは私1人だけ)は代替コストのサイクルを試してみた。
Saving Grace
1W
Instant
White
Cycling: Tap two white creatures(サイクリング:白のクリーチャーを2体タップする)
Prevent 4 damage to target creature.(クリーチャー1体を対象とする。このターン、それに与えられる次のダメージを4点軽減する。)
Spell Pluck
1U
Interrupt
Blue
Cycling: Return two islands you control to your hand(サイクリング:あなたのコントロールする島を2枚手札に戻す)
Counter target spell with a casting cost of 3 or less.(呪文1つを対象とする。その点数で見たマナ・コストが3以下である場合、それを打ち消す。)
Lotta Diggin’
1B
Sorcery
Black
Cycling: Pay 2 life(サイクリング:2点のライフを支払う)
Remove up to three target cards from any graveyard.(いずれかの墓地にあるカードを最大3枚までゲームから追放する。)
Land Be-Gone
3R
Sorcery
Red
Cycling: Sacrifice a land(サイクリング:土地を1つ生け贄に捧げる。)
Destroy target land.((土地1つを対象とし、それを破壊する。)
Splendor in the Grass
1G
Instant
Cycling: return a creature you control to your hand(サイクリング:あなたのコントロールするクリーチャーを1体手札に戻す)
Prevent all combat damage to creatures you control.(あなたのコントロールするクリーチャーに与えられる全ての戦闘ダメージを軽減する)
どちらのケースでも代替コストのサイクリングはデザインの段階で切り捨てられた。
なぜか?
なぜなら、マナを無視することはトラブルの元だからだ。さて、あの「やっちまった」だらけなウルザズ・サーガ・ブロックにおいて、「何か問題を起こすかもしれない」などという理由からカードのデザインを諦めたなんて信じられない、と思う人もいるかもしれない。
だが皮肉なことに事実だ。興味深いことにオンスロート・ブロックで再度マナを必要としないサイクリングコストを模索したときも同じ結論に達した。
もしかしたらマナコストの変化について何か思い付いた人がいるかもしれない。(2)以外のコストだったカードはなかったのか? 違うマナコストをR&Dは試そうとしなかったのか?
しなかった。私たちは新しいメカニズムは一定であったほうがプレイヤーたちに受け入れられやすいだろうと考えたんだ。実際のところ、サイクリングは数字部分なしでキーワードされかかったくらいだ。
私たちは数字を2で固定しておきたかったので、能力のコストは常に2にしようという話になっていた。幸運なことに当時の私たちは、選択肢は残しておくべきだ、と自分たちを説得することに成功した。
現在では、キーワードを作る際は出来る限り「縛り」は少なくしておくこと、ということになっている。もしスレッショルドが今作られていれば、それは「スレッショルド - 7」という形になっていただろうね。
11. ウルザズ・デスティニーに入っていたサイクリングをひねった効果のカードは?
ほとんどのプレイヤーは気づいていないようだが、ウルザズ・デスティニーにもちょっとひねった形のサイクリングが存在していた。しかしそのカードにはサイクリングという言葉が使われていなかったので、私の試みに気づいた人はほとんどいなかったようだ。
「ひねり」とは何か?
それは「すでに戦場にあるカードをサイクリングする」というものだ。
戦場に出たあとに「サイクリング」することができるパーマネントがここでいうひねりを加えたカードたちだ。これらは全て、2マナとそのカードを払うことでカードを1枚引くことが出来る。そう、まるでサイクリングのようにね。
このメカニズムから得られる教訓は、デザイナーはときに少々控え目過ぎるということだ。当時の自分が今と同じだけのノウハウを持っていたら、上記の能力に「サイクリング」という単語を含むなんらかのキーワードを与えたくなっていたと思う。
そうすればプレイヤーたちにも意図が伝わったはずだ。(絶対そうした、と言っているわけではないよ。与えたくなっていただろう、という話だ)
ウルザズ・デスティニーのデザインを始めた頃は、こういった「戦場にあるカードをサイクリングする」カードが多く作られていた。
この記事を書くに当たって私は事前にリサーチをしたわけだが(そのとおり、私は実際にリサーチをしたんだよ。R&Dという名前は伊達じゃない)、その際に初期の開発フォルダの中を見ると上記のようなカードを大量に発見したんだ(枚数が気になるなら教えてあげよう。19枚だ)。
以下にあげるのはその中から実際に印刷されることのなかったカードで、かつ興味深いであろうと思われるものをピックアップしてみた(あとそれらに関するちょっとしたコメントをつけてみた)。なおこれらがかなり初期の段階のデザインファイルから発見されたということは忘れないで欲しい。
Peaceful Afterlife
W
Enchantment
White
No effects are generated when cards are put into the graveyard.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
拙訳:
平和的な死後の生命
(白)
エンチャント
白の呪文
カードが墓地に置かれた際には何も効果を発しない。
(2),~を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
ウルザズ・デスティニーの代表的なメカニズムの1つは「戦場を離れたとき」の効果だ。これはエコーとも「戦場にあるカードをサイクリングする」効果とも相性が良い。このカードはそういった「戦場を離れたとき」の効果をいじめるために作られたものだ。
問題はこのカードはルール的に上手く働かないということだった。(少なくとも当時のルールチームはそう言ってた(たった今、Paulに聞いてみたけど、やっぱりダメだってさ))。
Bounce Field
U
Enchant Creature
Blue
When CARDNAME is put into any graveyard from play, return target creature to owner’s hand.
U: Return enchanted creature to owner’s hand.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
拙訳:
跳ね返る地面
(青)
エンチャント・クリーチャー
青の呪文
~が場から墓地に置かれたとき、対象のクリーチャーをオーナーの手札に戻す。
(青):エンチャントされているクリーチャーをオーナーの手札に戻す。
(2),~を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
あらためて見てみると、これは青の起動型能力がなかったほうがデザイン的には良かったように思われる。しかしこのカードからも当時の私が場から離れた際に誘発する能力と場からサイクリングするカードとで色々試していたことがよく分かる。
ウルザズ・デスティニーではこれの仲間がたくさん作られたが、デベロップメントチームはそれをふるいにかけて特に良いものだけを残した(ちなみにデベロップメントチームはこれらに Clever Card というあだ名をつけていた)。
Phyrexian Sporespitter
2BB
Summon Horror
Black
3/3
When CARDNAME is put into any graveyard from play, all creatures in play get -1/-1 until end of turn.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
拙訳:
ファイレクシアの胞子吐き
(2)(黒)(黒)
ホラーの召喚
黒の呪文
3/3
~が場から墓地に置かれたとき、場にいる各クリーチャーはそれぞれ-1/-1の修整を受ける。
(2),~を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
このカードはウルザズ・レガシーのファイレクシアなクリーチャーたちとインベイジョンの《疫病吐き/Plague Spitter》とをかけあわせたものだ
Crazed Soldier
3R
Summon Soldier
Red
3/1
CARDNAME cannot block.
When CARDNAME is put into any graveyard, target creature gets +4/-4.
That creature’s toughness may not drop below 1.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
拙訳:
狂った兵士
(3)(赤)
兵士の召喚
赤の呪文
3/1
~はブロックできない。
~が場から墓地に置かれたとき、対象のクリーチャー1体は+4/-4される。
そのクリーチャーのタフネスは1より下にはならない。
(2),~を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
血に渇いた兵士がその死によって他のクリーチャーに《血の渇き/Blood Lust》を与えるというこのカードのアイデアを私は非常に気に入っていた。攻撃的な感情の昂りが受け継がれるという感じだ。
Wild Emus
2GGG
Summon Beast
Green
3/3
When CARDNAME leaves play, all your creatures get +2/+2 and trample until end of turn.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
拙訳:
野生のエミューの群れ
(2)(緑)(緑)(緑)
ビーストの召喚
緑の呪文
3/3
~が場を離れた際、あなたのクリーチャーはターン終了時まで+2/+2の修整とトランプルを得る。
(2),~を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
このカードはレアだった。このカードの問題点は、追加の効果が勝負を決めてしまうほど強いものだと「カードを1枚引く」なんてことはどうでもよくなってしまうという点だ。
Cycling Sol Ring
2
Artifact
Artifact
(T): Add 2 to your mana pool.
2, Sacrifice CARDNAME: Draw a card.
拙訳:
サイクリングできる太陽のリング
(2)
アーティファクト
アーティファクト呪文
(T):あなたのマナ・プールに{2}を加える。
(2),~を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
自分でも頭がおかしいんじゃないかとしか思えない時期が私にあった、という証拠としてこれを紹介したい。
まず《太陽の指輪/Sol Ring》を表現するにはぶっ壊れているという言葉すら生ぬるい。そこで私はマナコストを増やしてみた。そしてさらに能力を足してみた!?
それもプラスとなる能力だ。少なくとも弱い能力ではない(片方の能力でマナを生み出して、そのマナで自身を生け贄に捧げてカードを引くこともできる。弱くはないだろ?)。
ウルザズディステニーのカードのパワーレベルがあまりに高かった理由の一端がここから垣間見えるかもしれない。
この7年間で私のデベロップメントの技術は当時よりかは向上したと断言できるよ(デベロップメントの技術は、デザインうんぬんではなくどちらかというとカードのパワーレベルをきちんと把握できるかどうか、だからね)。
12. なんでオンスロートにサイクリングが再録されることになったのか?
その答えにはいくつもの要素が絡み合っている。
再録された理由の1つとしては、サイクリングがビン(Bin)に入っていたからだ。ああ、君は「ビン(Bin)って何?」と聞くだろうね。ここ最近、R&Dはメカニズムをどう扱うかということについて考えを変えることにしたんだ。
過去には、メカニズムとは限られたリソースだと考えられていた。しかし現在では私たちはメカニズムを道具(Tools)だと考えている。もしそのメカニズムが上手く働いたなら、私たちはそれをありがたく何度でも再利用させてもらうことにしている。
これが何を意味しているか?
まず私たちは新しいメカニズムを生みだしたとき、それがきちんと働いてくれるかどうか、またみんなからそれに対してどのような反応が返ってくるかどうか、を注意深く観察する。
もし全てが上手く回ったなら(つまりメカニズムはきちんと働き、かつみんなに受け入れられたなら)私たちはそれをビンに放り込む。このビンに入っているメカニズムは全てゲームを破たんさせないことが保証されており、再利用可能なメカニズムだ。
ウルザズサーガブロックの時代にサイクリングは非常に人気があり皆に受け入れられた。そしてまたR&Dが特にお気に入りに選ぶだけの機能性もあった。
これが再録された2つ目の理由となる。サイクリングは皆に好まれたというだけでなく、ゲームそれ自体に対して良い働きを見せるんだ。
まずサイクリングは、私がメカニズムに求める最も重要な資質を持っていた。
エレガントさだ。
サイクリングはシンプルで、かつ分かりやすく、しかしそれにも関わらず奥深い戦術性をも持っており、それがこのメカニズムを非常に身のあるものにしていた。プレイヤーはこれを長い時間かけてあれやこれやと試してみて、なお飽きることがない。
もしサイクリングの長所が上記にあげた事柄だけがだったとしてもビンには放り込まれるに十分なメカニズムだったが、サイクリングにはもう1つ重要なポイントがある。
数週間前、私は"Starting Over"(註)という記事でマジックのマナソースシステムの重要性について述べた。
(註) Starting Over
原文では以下のURLへリンクが張られている。マリガン週間(!)のコラム。
http://www.wizards.com/Default.asp?x=mtgcom/daily/mr112b
このシステムにはたくさんの長所があるが、それでも無視できない1つの問題点がある。マナ事故だ。ゲームはそもそもそれが始まらなければ楽しむことはできない。
そういうわけで、全てのセットはそのデザインの目的の1つに、プレイヤーのマナ事故の回数を減らすことがある。この問題を解決するために私たちが取り得る手段は多岐にわたるが、いずれにせよどんなブロックにも必ず対抗策が入っているよう注意を払っている。
サイクリングというメカニズムはこういった対抗策の1つだ。
どのように問題を解決してくれるのか? その答えは3つある。
1つ目として、サイクリングカードは低いマナコストでサイクリングできる。これによって土地の枚数が少ないときに新たな土地を得る確率を上げてくれる。
2つ目として、土地が余っているときに余分なマナの使い道となってくれる。要するに、マナをカードに換えてくれる。より正確に言うなら、マナを手札の質を上げるために使うことが出来るようになる。
これによってプレイヤーはデッキ内の土地比率を上げることができる。なぜならサイクリングカードは長い目で見ればそのサイクリングという効果によって引きすぎた土地のバランスをとってくれるからだ。
(サイクリングすることによってすでにプレイされた余分な土地からのマナをさらに土地をプレイするディスアドバンテージを打ち消すのに使うことが出来る、とも言える)
3つ目として、サイクリングによって、コモンのサイクリング土地を作ることができた。サイクリング土地こそがマナのバランスをとる手段の最も純粋にして的確な例と言える。マナが必要なときには土地に、そうでないときには他のカードになってくれる。
ここまでがサイクリングが再録された2つ目の理由で、3つ目の理由としてあげられるのはサイクリングには工夫をこらす余地がたくさんあり、私たちはその奥深さを追求することに心ひかれていたからだ(これについては次の質問と回答でもっと詳しく話そうと思う)。
再録された理由の4つ目は、サイクリングはオンスロートが必要としていたパーツにぴったりだったからだ。
部族というテーマは非常にクリーチャー偏重なものだ。そこで私たちにはノン・クリーチャー・カードと上手く働いてくれるメカニズムが必要となったわけだ(おっと、待てよ。サイクリングはクリーチャーとも上手く働くんじゃないかい?)
最終的にはこれら全ての理由が合わさり、サイクリングは復活を遂げたというわけさ。
13. オンスロートの特殊なサイクリングたちはどのようにしてデザインされたのか?
オンスロートで登場した新発明は3つある。
1つ目は新たなサイクリングコストだ。
これは大して脳みそを使う必要もない発明だったので、特に語ることもない。これによって柔軟性のあるコストが設定できるようになり多くのカードが改善された(例えばサイクリング土地のように)。
2つ目はカードがサイクリングされることをトリガーに誘発する能力を持ったカードだ。こういったアイデアのカードが元々はウルザズ・サーガのファイルにもたくさん作られていたことを考えると、なかなか興味深い。
私たちはこのアイデアを一時棚上げした。当時は必要ないと思われたからだ。オンスロートを迎えるに当たって、私たちは埃まみれだったそれを棚からおろして新カードをデザインしたというわけだ。
3つ目はサイクリングされた際に追加効果をもたらすカードだ。
サイクリングの本来持っているフレイバー(違う呪文を手に入れるために手札の呪文を諦める、というフレイバー)を保つため、もたらされる追加効果は本来唱えられたときの効果を弱めたものであるべきだと私は考えた。
こうすることで選択肢が生まれる。呪文の出力を最大にするか、もしくは弱い出力のかわりに追加の呪文を得るか。
ちょっとプレイテストをしただけで、これらの3つの発明が再録されることとなったサイクリングに十分すぎるほどの活力を与えてくれることが分かった。
サイクリングには他にも革新的なアイデアが隠されているだろうか?
もちろんだ。
それらはどういうアイデアなのか?
それを知るためにはサイクリングの三度目の登場を待つしかないだろうね(言うまでもないと思っていたけど、気づいてない人のために付け加えておこう。サイクリングはまたいつの日か帰ってくるよ)
前へ進み続けよう(サイクリングだけに)
さて、そんなわけでサイクリングのあれやこれやについての3500文字はこれで終了だ。この興味深いメカニズムを調査する旅を楽しんでもらえただろうか。
来週のコラムでは何週間も前に「Talk To Me(註)」のコラムで私から君たちへ投げかけた100の質問についてついに取り上げることとなる。ぜひ読みにきてくれ。
それまで君たちが再発見の喜びにひたれるよう祈っているよ。
(註) Talk To Me
Mark Rosewaterから読者へ100の質問を投げかけているコラム。好きな数の質問に答えてよいが、回答に用いてよいのは「1人当たり100単語まで(only get to use 100 words)」という縛りがある。
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr111