カードアドバンテージとは?:初級編/Card Advantage: A Brief Overview
Steve Sadin
2011年03月15日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/li/134
カードアドバンテージとはマジックの用語の中でも特に誤解されがちな言葉の1つだ。
そこでまず簡単な定義から始めよう。
一連のプレイ(もしくは決断)の結果、あるプレイヤーが1枚かそれ以上のカードを増やせていたら(訳注:対戦相手の総カード枚数と比べて相対的に増やせていたら)、そのプレイヤーはカードアドバンテージを得たと言える。
シンプルだろう?
では今度は実際のプレイからいくつかカードアドバンテージの例を見てみよう。
《真っ二つ/Slice in Twain》のようなカードは明らかにカードアドバンテージを得られるカードだ。君は対戦相手のカードを破壊しつつ、カードを1枚引ける。
似たような例として、《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》は場に影響を与えつつ自身の分のカードを補填できる。またしてもカードアドバンテージを得られるカードを発見できたわけだ。
《核への投入/Into the Core》は対戦相手のアーティファクトを2つも除去することが可能で、君に大きな優位を与えてくれる。
しかし、もし君の対戦相手が1つしかアーティファクトを持っておらず、かつそれを除去しなければならないとき、つまり対戦相手のアーティファクトに加えて君自身のアーティファクトを1つ失うことを強いられたとすると《核への投入/Into the Core》はカードディスアドバンテージを生み出す。
このような状況はそうそう起こることではないかもしれないが、もし対戦相手の元に君をねめつける《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》がおり(かつそれが相手の唯一のアーティファクトであったとき)、君は自分の《皮剥ぎの鞘/Flayer Husk》と相手の5/5飛行をゲームから除外することに躊躇することはほとんどないだろう。
《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》は適切な状況下でなら君にカード1枚(もしくはそれ以上)の優位を与えてくれるが、土地が足りない、もしくはもっと実益のあるカードが必要という理由でサイクリング同様の用い方をせざるを得ないときもたくさんある。
さらに言うと、対戦相手の除去呪文によって君が《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》を唱えようとしていた対象のクリーチャーが殺されてしまう、という形で対戦相手にアドバンテージを得る機会を与えてしまうという状況すらありえる。
もし《巨大化/Giant Growth》に対応して相手の《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》に君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込めば、結果としてカード1枚分のアドバンテージだ。
もし《審判の日/Day of Judgment》で君のクリーチャー1体と相手のクリーチャー5体を流せば、君は多大なるカードアドバンテージを得る。
もし《青の太陽の頂点/Blue Sun’s Zenith》をX=4で唱えれば、相当数のカード枚数を引ける。
もし《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》と対戦相手のクリーチャー2体を戦闘で交換することができれば、君はカードアドバンテージを得たと言える。
その通りだ。
《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のようなバニラクリーチャーですらカードアドバンテージを生み出すことが出来るのだ。
なぜなら《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》はそのサイズおよびその非アーティファクトという性質によってミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて対処できるカードが非常に限られており、複数のカードを合わせることなく除去することは難しい。
もちろん、ときには《喉首狙い/Go for the Throat》、《病気の拡散/Spread the Sickness》、《拘引/Arrest》、《決断の手綱/Volition Reins》、《堕落した良心/Corrupted Conscience》、《金屑化/Turn to Slag》などで場に出たこの緑の6/5を対処されてしまうこともあるが、逆にこれら以外のカードには対処出来ないということでもある。
君の対戦相手が、貴重な除去呪文や、同じくらい驚異的なクリーチャーや、どデカい装備品などをその手札いっぱいに抱えているのでもない限り、相手は《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》の進行方向に何枚かのカードを差し出すことでしか恐竜の絶滅を早める手立てはないのだ。
カードの質(Card Quality)について
人々はしばしばカードの質(Card Quality)によるアドバンテージと、カードアドバンテージ(Card Advantage)の違いを混同することがある。
カードの質によるアドバンテージを、カードアドバンテージやその他のアドバンテージ(ボードやテンポ)へと結びつけることは可能だ。いや、可能というか、多くの場合はイコールだ。
しかし君が対戦相手より「より良い」もしくは「よりデカい」カードをプレイすることが、そのまま継続的なアドバンテージを得ているということではない、ということも絶対的な事実だ。
もし君が「土地、2マナの3/3、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしており、対戦相手が「土地、2マナの2/2、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしていたとしよう。
この場合、君のクリーチャーが相手より「カードの質が高い」という点に大した意味はない。
もちろんこのマッチアップは君に大きく有利だ。なぜなら君のデッキのカードの大半は対戦相手のそれよりも強いのだから。しかし君のカードの質によるアドバンテージを持ってしても五分五分の勝負にすら持ち込めない試合展開だって何通りもあり得る。
もし対戦相手の手札に《稲妻/Lightning Bolt》があふれかえっており、単純に君を焼き殺せるとしたら、君のカードの質によるアドバンテージには何も意味もない。
もし君と対戦相手が、互いに出てくるクリーチャーを《稲妻/Lightning Bolt》片端から焼き殺していくような試合展開であれば、単に相手より多く呪文を引いたほうが勝つだろう。これまたカードの質によるアドバンテージには何の価値も無い。
また、カードの質によるアドバンテージに感謝することがあっても、カードアドバンテージを得られるような状況というのは滅多にない。あるとすれば、君の3/3を相手の2/2がチャンプブロックしたときか、3/3を相手が2体の2/2でブロックした際に片方の2/2へ君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込んだときくらいのものだ。
さて、また現実に目を向けてみよう。
目にする多くの交換の中で、弱いカードで強いカードを討ち取るのも見ることになるだろうし、これはこれで価値のあることだが、これらをカードアドバンテージと混同してはならない。
君がドラフトの後半でピックした《オーガの抵抗者/Ogre Resister》が相手の初手ピックの《エズーリの大部隊/Ezuri’s Brigade》と相打ちをとれたからといって、実際には君はカードアドバンテージを得てはいない。
君の場を一掃せんばかりだった《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》を《粉砕/Shatter》で破壊した場合、君は対戦相手がカードアドバンテージを得る機会を防いではいるが、君自身がそこから何らかのカードを得たわけではない。
対戦相手が君の《きらめく鷹/Glint Hawk》に向かって《喉首狙い/Go for the Throat》を唱えたことで、君が今からプレイしようと思っていた《不退転の大天使/Indomitable Archangel》の生存する可能性が上がったことは嬉しいことかもしれないが、それでも君と対戦相手のあいだで1対1の交換を行われたことは事実なのだ。
仮想的なカードアドバンテージ
ゲーム開始前の決断すらカードアドバンテージにつなげることができる。
もし君がアーテイファクトもエンチャントも入っていないデッキをプレイし、対戦相手の手札に《粉砕/Shatter》がいっぱいだった場合、君は対戦相手の手札を無駄カードに変えることでカードアドバンテージを得ている。
(注意して欲しいのは、この手のカードアドバンテージというのは純粋なカードアドバンテージとは異なるということだ。なぜなら君の対戦相手は物理的には一切その手札のカードを失っていない。しかし相手の手札に使い道のないカードがあるという事実は、カードの枚数差で君がアドバンテージを得ていることに他ならない)
そのため、ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡という環境でアーティファクトを一切含まないデッキを作れそうであれば、君はぜひともそうしたいと考えるだろう。
アーティファクトがあまりに多すぎたり、1枚か2枚かのアーティファクトに試合を決めるだけの力があるのでも無い限り、アーティファクトをサイドボードに押しやっておくことで対戦相手の《粉砕/Shatter》たちを無駄カードにするのが得策となるはずだ。
わずかなカードアドバンテージ
もし君が戦闘中に《主の呼び声/Master’s Call》を唱えて、対戦相手の《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と片方のトークンを相打ちさせることが出来れば、君はカード1/2枚分の得をしたことになる。
ここで得られるアドバンテージは《腐敗狼/Rot Wolf》で《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と相打ちをとりつつカードを引けた場合に比べると、大して印象深いものでもなければ、その後の展開に活かしやすいアドバンテージでもない。
しかしそれでも君はこの交換から、結果として確かなアドバンテージを得ているのだ。
こういった取るに足らないように見えるアドバンテージは積み重なると無視できないものであり、決して軽々しく取り扱うべきものではない。
場に残ったその1/1トークンがタダ同然で手に入ったからといって、また、すでにもう片方の1/1トークンで相手のカード1枚と交換を済ませているからといって、残ったトークンをどうでもよい機会に手ごろなチャンプブロッカーとして気軽に消費してよいわけではない。
そのカード(もしくはトークン)の入手方法は重要ではない。
一度、それが手札や場に加わった以上、君は他のリソースと同等の敬意をもってそれを扱うべきなのだ。この先に待っている戦闘について作戦を練るとき、その1/1マイアトークンで出来ることを考えるべきだ。
もしかしたら、それのもっとも有用な使い道は、このあとやってくるであろう《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のチャンプブロッカーとしてかもしれない。
それとも、1ターン待って装備品をつける先なのかもしれない。
それとも、2ターン後のダブルブロックの片割れとして使うべきなのかもしれない。
それとも……?
重要なことは、その得られたリソースに関して「この先、何ができるか」であり「過去にどうやってそれを得たか」ではないということだ。
最大限の利益を得るには
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドでは、単純な2対1交換は敵味方で1回ずつ行われることによりそこから得られたアドバンテージを相殺する。
もちろん《病的な略取/Morbid Plunder》が相手に引導を渡すこともあるし、《死体の野犬/Corpse Cur》や《生体解剖/Vivisection》によって得られるアドバンテージは相手にとってなかなかに壊滅的だ。
しかしこれらのカードから君が得たアドバンテージは、対戦相手が似たようなカードを用いたり、単により多い枚数の呪文を引くことで簡単に打ち消せる。
もし私が《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》を唱えて、その数ターン後に私の《ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut》を君が《真っ二つ/Slice in Twain》したら、カードアドバンテージは平らになる。
《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》、《真っ二つ/Slice in Twain》、《病的な略取/Morbid Plunder》やそういったカードたちはなかなか良いものではあるけれど、君はそれらを単体で用いた際に得られるアドバンテージだけを頼りにゲームを勝利することはできない。特にそれらを向こう見ずに使った場合はなおさらだ。
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて劇的なカードアドバンテージを得る手段はあまりない。そのため、アドバンテージを得られる機会を全て逃さずに生かすことが非常に重要になってくる。
4ターン目に出てきた相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を《真っ二つ/Slice in Twain》することもできるが、君はそのほんの数ターン先に対戦相手が戦場に《飛行機械の組立工/Thopter Assembly》を叩きつけた際に、最初の決断を心から後悔することになるだろう。
確かに《真っ二つ/Slice in Twain》は対戦相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を除去しつつ君にカード1枚分のアドバンテージを与えてくれる。
しかし、対処しなければ負けが確定するようなカードを対戦相手が自ら死刑台に置いてくれるのを待つことでも、君は1枚分のカードアドバンテージを得ることは出来るし、かつこの場合は必死に新たな解決方法を探す必要も無い。
似たような例として、対象となるカードがそろったからといってすぐに《病的な略取/Morbid Plunder》を唱えたいという人はあまりいないだろう。
もちろん、単にそうしなければ次のターンには負けてしまうため場の緊張を保つために唱えざるを得ないという状況もある。
しかし対戦相手が自らのリソースをほとんど使い果たしつつ君のクリーチャーを焼き払ってくれるのを待ってから、あらためて最も脅威となる2体を手札に戻せば、大体の場合、勝ちは約束されたようなものだ。
後に残るアドバンテージについて
例えば《生体解剖/Vivisection》のようなカードは即座に君にカードアドバンテージを与えてはくれるが、それに対して本当に必要なものを得るのにかかる時間は余分に必要になっているし、他のカードも必要だ。
慣れてないプレイヤーの目には《光明の大砲/Lux Cannon》はゲームを通じて莫大なカードアドバンテージを与えてくれるカードに見えるだろう。
確かに《光明の大砲/Lux Cannon》は君にカードアドバンテージを与えてくれるが、実際に稼動し始めるまでには長い時間がかかる(それだけでなく再度起動させるのにも長い時間がかかる)。
もちろんこの大砲を2回以上起動させることが出来ればおそらく負けることはないだろう。しかし他のどんなフィニッシャーでも、相手に対処されないのであれば、同じ結果が得られるはずだ。
そのようなわけで適切な環境下で用いられる《光明の大砲/Lux Cannon》は確かに有用だが、このカードがカードアドバンテージを得るのに適したリソースだとは考えないほうがいい。
その一方で、出した直後に壊されずに済んだ生体武器が与えてくれるアドバンテージはなかなか頼りになるものだ。
細菌トークンを相手のクリーチャーと相打ちさせた時点で君は1枚分のカードアドバンテージを得ている。なぜなら君の手元には好きに使ってよい装備品が残されているからだ。
もし残された生体武器の装備品を効果的に装備させる機会がなければそのアドバンテージには何も意味もない。しかし、もし《皮羽根/Skinwing》のおかげで空からのクロックで対戦相手を打ちのめすことができたり、《縒り糸歩き/Strandwalker》のおかげで場の優位を固めることが出来たなら、なかなかいい感じに試合を進められるのではないだろうか。
その他のアドバンテージについて
カードアドバンテージとは具体的に何を指すのかについて理解することは大事なことだ。
さらに、同じくらい重要なのは、マジックにおいてアドバンテージを得る手段はカードアドバンテージ以外にもあるということ、そして常にカードアドバンテージが最も重要とは限らないということだ。
結局のところ、何枚カードが引けたとしても、君自身が生きていなければ何の意味もないのだから。
Steve Sadin
2011年03月15日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/li/134
訳注:初めに。このコラムはリミテッド情報に関するアーカイブに含まれる記事であり、基本的にリミテッド環境に置いて発生しうるケースを想定している。
カードアドバンテージとはマジックの用語の中でも特に誤解されがちな言葉の1つだ。
そこでまず簡単な定義から始めよう。
一連のプレイ(もしくは決断)の結果、あるプレイヤーが1枚かそれ以上のカードを増やせていたら(訳注:対戦相手の総カード枚数と比べて相対的に増やせていたら)、そのプレイヤーはカードアドバンテージを得たと言える。
シンプルだろう?
では今度は実際のプレイからいくつかカードアドバンテージの例を見てみよう。
《真っ二つ/Slice in Twain》のようなカードは明らかにカードアドバンテージを得られるカードだ。君は対戦相手のカードを破壊しつつ、カードを1枚引ける。
似たような例として、《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》は場に影響を与えつつ自身の分のカードを補填できる。またしてもカードアドバンテージを得られるカードを発見できたわけだ。
《核への投入/Into the Core》は対戦相手のアーティファクトを2つも除去することが可能で、君に大きな優位を与えてくれる。
しかし、もし君の対戦相手が1つしかアーティファクトを持っておらず、かつそれを除去しなければならないとき、つまり対戦相手のアーティファクトに加えて君自身のアーティファクトを1つ失うことを強いられたとすると《核への投入/Into the Core》はカードディスアドバンテージを生み出す。
このような状況はそうそう起こることではないかもしれないが、もし対戦相手の元に君をねめつける《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》がおり(かつそれが相手の唯一のアーティファクトであったとき)、君は自分の《皮剥ぎの鞘/Flayer Husk》と相手の5/5飛行をゲームから除外することに躊躇することはほとんどないだろう。
《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》は適切な状況下でなら君にカード1枚(もしくはそれ以上)の優位を与えてくれるが、土地が足りない、もしくはもっと実益のあるカードが必要という理由でサイクリング同様の用い方をせざるを得ないときもたくさんある。
さらに言うと、対戦相手の除去呪文によって君が《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》を唱えようとしていた対象のクリーチャーが殺されてしまう、という形で対戦相手にアドバンテージを得る機会を与えてしまうという状況すらありえる。
もし《巨大化/Giant Growth》に対応して相手の《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》に君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込めば、結果としてカード1枚分のアドバンテージだ。
もし《審判の日/Day of Judgment》で君のクリーチャー1体と相手のクリーチャー5体を流せば、君は多大なるカードアドバンテージを得る。
もし《青の太陽の頂点/Blue Sun’s Zenith》をX=4で唱えれば、相当数のカード枚数を引ける。
もし《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》と対戦相手のクリーチャー2体を戦闘で交換することができれば、君はカードアドバンテージを得たと言える。
その通りだ。
《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のようなバニラクリーチャーですらカードアドバンテージを生み出すことが出来るのだ。
なぜなら《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》はそのサイズおよびその非アーティファクトという性質によってミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて対処できるカードが非常に限られており、複数のカードを合わせることなく除去することは難しい。
もちろん、ときには《喉首狙い/Go for the Throat》、《病気の拡散/Spread the Sickness》、《拘引/Arrest》、《決断の手綱/Volition Reins》、《堕落した良心/Corrupted Conscience》、《金屑化/Turn to Slag》などで場に出たこの緑の6/5を対処されてしまうこともあるが、逆にこれら以外のカードには対処出来ないということでもある。
君の対戦相手が、貴重な除去呪文や、同じくらい驚異的なクリーチャーや、どデカい装備品などをその手札いっぱいに抱えているのでもない限り、相手は《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》の進行方向に何枚かのカードを差し出すことでしか恐竜の絶滅を早める手立てはないのだ。
カードの質(Card Quality)について
人々はしばしばカードの質(Card Quality)によるアドバンテージと、カードアドバンテージ(Card Advantage)の違いを混同することがある。
カードの質によるアドバンテージを、カードアドバンテージやその他のアドバンテージ(ボードやテンポ)へと結びつけることは可能だ。いや、可能というか、多くの場合はイコールだ。
しかし君が対戦相手より「より良い」もしくは「よりデカい」カードをプレイすることが、そのまま継続的なアドバンテージを得ているということではない、ということも絶対的な事実だ。
もし君が「土地、2マナの3/3、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしており、対戦相手が「土地、2マナの2/2、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしていたとしよう。
この場合、君のクリーチャーが相手より「カードの質が高い」という点に大した意味はない。
もちろんこのマッチアップは君に大きく有利だ。なぜなら君のデッキのカードの大半は対戦相手のそれよりも強いのだから。しかし君のカードの質によるアドバンテージを持ってしても五分五分の勝負にすら持ち込めない試合展開だって何通りもあり得る。
もし対戦相手の手札に《稲妻/Lightning Bolt》があふれかえっており、単純に君を焼き殺せるとしたら、君のカードの質によるアドバンテージには何も意味もない。
もし君と対戦相手が、互いに出てくるクリーチャーを《稲妻/Lightning Bolt》片端から焼き殺していくような試合展開であれば、単に相手より多く呪文を引いたほうが勝つだろう。これまたカードの質によるアドバンテージには何の価値も無い。
また、カードの質によるアドバンテージに感謝することがあっても、カードアドバンテージを得られるような状況というのは滅多にない。あるとすれば、君の3/3を相手の2/2がチャンプブロックしたときか、3/3を相手が2体の2/2でブロックした際に片方の2/2へ君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込んだときくらいのものだ。
さて、また現実に目を向けてみよう。
目にする多くの交換の中で、弱いカードで強いカードを討ち取るのも見ることになるだろうし、これはこれで価値のあることだが、これらをカードアドバンテージと混同してはならない。
君がドラフトの後半でピックした《オーガの抵抗者/Ogre Resister》が相手の初手ピックの《エズーリの大部隊/Ezuri’s Brigade》と相打ちをとれたからといって、実際には君はカードアドバンテージを得てはいない。
君の場を一掃せんばかりだった《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》を《粉砕/Shatter》で破壊した場合、君は対戦相手がカードアドバンテージを得る機会を防いではいるが、君自身がそこから何らかのカードを得たわけではない。
対戦相手が君の《きらめく鷹/Glint Hawk》に向かって《喉首狙い/Go for the Throat》を唱えたことで、君が今からプレイしようと思っていた《不退転の大天使/Indomitable Archangel》の生存する可能性が上がったことは嬉しいことかもしれないが、それでも君と対戦相手のあいだで1対1の交換を行われたことは事実なのだ。
仮想的なカードアドバンテージ
ゲーム開始前の決断すらカードアドバンテージにつなげることができる。
もし君がアーテイファクトもエンチャントも入っていないデッキをプレイし、対戦相手の手札に《粉砕/Shatter》がいっぱいだった場合、君は対戦相手の手札を無駄カードに変えることでカードアドバンテージを得ている。
(注意して欲しいのは、この手のカードアドバンテージというのは純粋なカードアドバンテージとは異なるということだ。なぜなら君の対戦相手は物理的には一切その手札のカードを失っていない。しかし相手の手札に使い道のないカードがあるという事実は、カードの枚数差で君がアドバンテージを得ていることに他ならない)
そのため、ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡という環境でアーティファクトを一切含まないデッキを作れそうであれば、君はぜひともそうしたいと考えるだろう。
アーティファクトがあまりに多すぎたり、1枚か2枚かのアーティファクトに試合を決めるだけの力があるのでも無い限り、アーティファクトをサイドボードに押しやっておくことで対戦相手の《粉砕/Shatter》たちを無駄カードにするのが得策となるはずだ。
わずかなカードアドバンテージ
もし君が戦闘中に《主の呼び声/Master’s Call》を唱えて、対戦相手の《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と片方のトークンを相打ちさせることが出来れば、君はカード1/2枚分の得をしたことになる。
ここで得られるアドバンテージは《腐敗狼/Rot Wolf》で《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と相打ちをとりつつカードを引けた場合に比べると、大して印象深いものでもなければ、その後の展開に活かしやすいアドバンテージでもない。
しかしそれでも君はこの交換から、結果として確かなアドバンテージを得ているのだ。
こういった取るに足らないように見えるアドバンテージは積み重なると無視できないものであり、決して軽々しく取り扱うべきものではない。
場に残ったその1/1トークンがタダ同然で手に入ったからといって、また、すでにもう片方の1/1トークンで相手のカード1枚と交換を済ませているからといって、残ったトークンをどうでもよい機会に手ごろなチャンプブロッカーとして気軽に消費してよいわけではない。
そのカード(もしくはトークン)の入手方法は重要ではない。
一度、それが手札や場に加わった以上、君は他のリソースと同等の敬意をもってそれを扱うべきなのだ。この先に待っている戦闘について作戦を練るとき、その1/1マイアトークンで出来ることを考えるべきだ。
もしかしたら、それのもっとも有用な使い道は、このあとやってくるであろう《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のチャンプブロッカーとしてかもしれない。
それとも、1ターン待って装備品をつける先なのかもしれない。
それとも、2ターン後のダブルブロックの片割れとして使うべきなのかもしれない。
それとも……?
重要なことは、その得られたリソースに関して「この先、何ができるか」であり「過去にどうやってそれを得たか」ではないということだ。
最大限の利益を得るには
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドでは、単純な2対1交換は敵味方で1回ずつ行われることによりそこから得られたアドバンテージを相殺する。
もちろん《病的な略取/Morbid Plunder》が相手に引導を渡すこともあるし、《死体の野犬/Corpse Cur》や《生体解剖/Vivisection》によって得られるアドバンテージは相手にとってなかなかに壊滅的だ。
しかしこれらのカードから君が得たアドバンテージは、対戦相手が似たようなカードを用いたり、単により多い枚数の呪文を引くことで簡単に打ち消せる。
もし私が《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》を唱えて、その数ターン後に私の《ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut》を君が《真っ二つ/Slice in Twain》したら、カードアドバンテージは平らになる。
《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》、《真っ二つ/Slice in Twain》、《病的な略取/Morbid Plunder》やそういったカードたちはなかなか良いものではあるけれど、君はそれらを単体で用いた際に得られるアドバンテージだけを頼りにゲームを勝利することはできない。特にそれらを向こう見ずに使った場合はなおさらだ。
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて劇的なカードアドバンテージを得る手段はあまりない。そのため、アドバンテージを得られる機会を全て逃さずに生かすことが非常に重要になってくる。
4ターン目に出てきた相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を《真っ二つ/Slice in Twain》することもできるが、君はそのほんの数ターン先に対戦相手が戦場に《飛行機械の組立工/Thopter Assembly》を叩きつけた際に、最初の決断を心から後悔することになるだろう。
確かに《真っ二つ/Slice in Twain》は対戦相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を除去しつつ君にカード1枚分のアドバンテージを与えてくれる。
しかし、対処しなければ負けが確定するようなカードを対戦相手が自ら死刑台に置いてくれるのを待つことでも、君は1枚分のカードアドバンテージを得ることは出来るし、かつこの場合は必死に新たな解決方法を探す必要も無い。
似たような例として、対象となるカードがそろったからといってすぐに《病的な略取/Morbid Plunder》を唱えたいという人はあまりいないだろう。
もちろん、単にそうしなければ次のターンには負けてしまうため場の緊張を保つために唱えざるを得ないという状況もある。
しかし対戦相手が自らのリソースをほとんど使い果たしつつ君のクリーチャーを焼き払ってくれるのを待ってから、あらためて最も脅威となる2体を手札に戻せば、大体の場合、勝ちは約束されたようなものだ。
後に残るアドバンテージについて
例えば《生体解剖/Vivisection》のようなカードは即座に君にカードアドバンテージを与えてはくれるが、それに対して本当に必要なものを得るのにかかる時間は余分に必要になっているし、他のカードも必要だ。
慣れてないプレイヤーの目には《光明の大砲/Lux Cannon》はゲームを通じて莫大なカードアドバンテージを与えてくれるカードに見えるだろう。
確かに《光明の大砲/Lux Cannon》は君にカードアドバンテージを与えてくれるが、実際に稼動し始めるまでには長い時間がかかる(それだけでなく再度起動させるのにも長い時間がかかる)。
もちろんこの大砲を2回以上起動させることが出来ればおそらく負けることはないだろう。しかし他のどんなフィニッシャーでも、相手に対処されないのであれば、同じ結果が得られるはずだ。
そのようなわけで適切な環境下で用いられる《光明の大砲/Lux Cannon》は確かに有用だが、このカードがカードアドバンテージを得るのに適したリソースだとは考えないほうがいい。
その一方で、出した直後に壊されずに済んだ生体武器が与えてくれるアドバンテージはなかなか頼りになるものだ。
細菌トークンを相手のクリーチャーと相打ちさせた時点で君は1枚分のカードアドバンテージを得ている。なぜなら君の手元には好きに使ってよい装備品が残されているからだ。
もし残された生体武器の装備品を効果的に装備させる機会がなければそのアドバンテージには何も意味もない。しかし、もし《皮羽根/Skinwing》のおかげで空からのクロックで対戦相手を打ちのめすことができたり、《縒り糸歩き/Strandwalker》のおかげで場の優位を固めることが出来たなら、なかなかいい感じに試合を進められるのではないだろうか。
その他のアドバンテージについて
カードアドバンテージとは具体的に何を指すのかについて理解することは大事なことだ。
さらに、同じくらい重要なのは、マジックにおいてアドバンテージを得る手段はカードアドバンテージ以外にもあるということ、そして常にカードアドバンテージが最も重要とは限らないということだ。
結局のところ、何枚カードが引けたとしても、君自身が生きていなければ何の意味もないのだから。