カードの毎日/Card of the Day - グレゴリオ暦 コモン
April 1st 2011, Friday / 2011年04月01日 (1)
 毎日って素晴らしいね。大体24時間ずつの長さで変わることなく、いきなり全部がいっぺんに訪れたりすることなく順番に来てくれるというその信頼性。日々について歌ったものには例えば「イエスタディ/Yesterday」、「トゥモロー/Tomorrow」、そして「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?/Do They Know It’s Christmas?」などがある。
引用元:http://media.wizards.com/images/magic/daily/arcana/0401cardoftheday.jpg

 この日は三船敏郎の91回目の誕生日に当たる。この日は通常では1年の91日目に当たるが、うるう年の場合は92日目となる。
 2011年のこの日は金曜日であり、その確率は7分の1だ。
 この日の天気は世界のどこかでは快晴だが、その他のどこかではそうでもない。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
【翻訳】ミラディン軍、おせっかいを焼かれるの巻/Mirran Meddling【Daily MTG】
Tom LaPille
2011年02月25日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/ld/131

 ここ数ヶ月というもの、ミラディン軍とファイレクシア軍のいずれかの陣営を選ぶかということについて語ってきた。

 ミラディン包囲戦のプレリリースで選び、Game Day(註)やWar Leagues(註)でまた選ぶ機会があり、そして今それに関するテーマ週間の最終地点にたどり着いたというわけだ。
(註) Game Day
 新しいセットが出た直後にそれを用いて行われるスタンダードの公式大会らしい。

(註) War League
 各店舗ごとに開催される、陣営を選んでおこなわれるシールド戦のようなもの。敵対陣営に属するプレイヤーを倒すとステッカーがもらえたり、週1でブースターを買い足してデッキを強化したりできる。

 詳細は以下のリンクを参照のこと。(リンク先は英語)
 http://www.wizards.com/magic/tcg/events.aspx?x=mtgcom/events/warleague-mbs

 これらの催しが行われていることを聞いたとき、私はちょっとした自己満足に浸っていた。いや、何しろ私はすでにセットが発売される何ヶ月も前から選択を終えていたんだからね。

 しかし君たちとは違う理由から選択を迫られていたと考えるとこれを自慢するのはちょっとずるいことかもしれない。まず、ミラディン包囲戦の開発が4分の3ほど過ぎたあたりでどのようなことが起きていたのか、そこから話を始めようと思う。

 この頃、リード・デベロッパーであるErik Lauerは、戦争で対立している2つの陣営がいまいち統一感を欠いているように感じていた。

 そこで彼は自身のチームにいる2人のコア・デベロッパーである2人、私とMike Turianに、まずはそれぞれ陣営を選ぶよう指示した。

 さらに、全体としてのまとまりをより感じられるよう、1週間のあいだ、それぞれ少数のチームを指揮しつつ選んだ側のコモンとアンコモンに対して取り組むように、とのことだった。

 前にも述べたと思うが、私は他のメンバーに比べてリミテッドで感染デッキを組むのがひどく下手だった。これはミラディンの傷跡の開発が始まった頃から、すでにそうだった。

 そのようなわけで私にファイレクシア陣営を任されるはずもなく、かつMike自身もファイレクシア陣営を担当したがっていたため、私はミラディン軍を受け持つことになった。

 私は陣営だけでなく、何人かの優秀なウィザーズの社員も選ぶことができた。ここに彼らを紹介したいと思う。
Kelly Digges

 Kellyは今まさに君が閲覧しているウェブサイトの編集者の1人だ。しかし彼はときおり副業がてらR&Dの製品チームの仕事に時間を費やしてくれる。

 彼はワールドウェイクアーチエネミーのデザインチームに参加してくれた。最近では彼は私が率いたMagic 2012のデベロップメントチームに参加しており、そこで彼は、群を抜いて私好みとなったアンコモンの再録作業に貢献してくれた。

 今回の作業におけるKellyのもっとも大きな功績は彼のデザイナー的視点による美的センスだ。これによって私たちは自分たちの作る各カードがきちんと整理され実用にかなったものとなるよう配慮することとなった。それこそが今回の記事につながる物語だ。

Mark Purvis

 Markはマジックのブランド・マネージャーの1人だ。

 忙しい身でありながらも、ときおり製品チームのためにスケジュールを調整してくれるほどに彼もマジックを愛しており、それだけでなく大量のアイデアとエネルギーの両方を開発の場に持ち込める人物でもある。

 このミニチーム編成の直前に彼はすでにミラディンの傷跡の開発に参加していた。つまりしばらくの間は体が空かないだろうということを示唆していた。

 しかし、私とそして君にとっても幸運なことに、私とミラディン軍を援護してもらうための多少の時間を割かせてもらえるよう交渉出来るだけの余地が彼にはあったのだ。

Matt Tabak

 Matt Tabakは編集者であり、またMark Gottliebがフルタイムのデベロッパーへと転身したことで代わりに新たなマジック・ルール・マネージャーへ任命されたメンバーでもある。Mattは意固地なところもあるが、それこそまさに今回のチームに私が欲しかった資質でもある。

 私たちには時間がなかった。そして私たちの最終目標は最後に残されたわずかな不満要素をフォルダから搾り出すことだった。Mattはそれらを探し出すことに並外れて長けており、そのことは私たちの助けとなった。


 この記事の中で、君はプレーンテキストのフォント(註)で書かれた箇所を見かけることになると思う。この箇所にある全ての文はMagic R&D Wikiから直接引っ張ってきたものだ。Magic R&D Wikiというのは今回のミニチームに関する全てを私が納めておいた場所だ。
(註) プレーンテキストのフォント
 このブログの記事では斜体で表記してみた。

 このWikiはMultiverse(註)ではない。今回のチームが残してきたMultiverse的な資料はセットが印刷の準備へと回される前にフォルダが整理されたことで、ほとんど失われてしまった。
(註) Multiverse
 マジックのセットを制作するのに用いられている意見交換用のデータベース。
 実際にどんなコメントのやりとりがそこで行われているのかの例は以下を参照のこと。

 【翻訳】戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War【Daily MTG】
 http://regiant.diarynote.jp/201104100753293540/

 私はチームを始動させるに当たって、まずはCamera(当時、このセットはそう呼ばれていた)の世界では一体何が起きているのかについて、手早く概略をつかんでもらうことにした。

 KellyとMarkはR&Dの外部から参加しているので、私はまずは彼らにも私たちと同じだけの情報を共有してもらう必要があったのだ。
Cameraの概要

 # ミラディンは戦場である。

 # ファイレクシア軍がミラディンを侵略している。君がミラディン生まれであれば、
 # 侵略者から君と仲間の存在を守るために戦う毎日を過ごしていることになる。

 # もし戦いに関係ないことであればそれはカメラには映らない。
 # つまりCameraにも登場しない。

 実に上手いことやっているだろう。私もそう思う。

 Erikは私に3つの目標を与えた。私はそれをそのままチームへと引き渡した。
目的

 # ミラディン軍に関するコモンとアンコモンをもっといい感じに仕上げろ。

 # ミラディン軍に関するカードたちがもっと「共に戦っている」ように仕上げろ。

 # ミラディン軍に関するカードをもっと「ミラディン」っぽくしろ。

 Erikの目指す目的はもう1つあったが、それはチームへと引き渡されず、秘密のままにされた。

 それは、ミラディン軍とファイレクシア軍のカードたちが互いに対立している2つの異なる集団であるということを感じとれるようにしろ、というものだった。

 Erikはファイレクシアを担当しているMikeにも、最初に述べた3つの目的を伝えた。そしてMikeと私の仕事の結果によってErikの秘密の目的はこれ以上ないほど達成されたのではないか、と私は考えている。

 そうそう。追加の制約が用意されていた。もちろんだ。そうでなければ簡単すぎるだろう。
ルール

 # カード名に括弧書きが付与されていないものについては好きに変更してよい。

 # カード名に括弧書きが付与されているものはすでにコンセプトが固められている。
 # 変更する際には必ずそのコンセプトに敬意を払うこと。

 なお、上記の情報には含まれていないが、追加の制約がもう1つあり、これはミーティングでも皆へ伝えられた。

 各色の各レアリティに用意されているスロットの数は固定されている。ミラディン軍に新たな白いカードを追加するためにはファイレクシア軍のカードを1枚取り除く必要があり、それは両派閥のバランスを崩す行為となる。

 そのため、もし本当に新規のカードを追加したいのであれば、その代価としてすでに存在している全く同じ色の全く同じレアリティから1枚カードを取り除く必要があるということだ。

 この時点ですでにセットの半分はコンセプトデザインが完了していた。これが何を意味するかというと、イラストの指示はすでに作成済みでありイラストは今この時点ですでに承認を得るべく描かれている最中だということだ。

 既存のカードに対して望むいかなる変更も、すでに成し遂げられた仕事に対して敬意を払う必要がある。そう、括弧が付けられているということ、それはつまりクリエイティブチームがそのカードのコンセプトを固めた際に残した確かなサインなのだ。

                     ◇◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◇

 私は通常あまり生産的ではないとみなされる方法で最初のミーティングを費やした。

 不平不満だ!

 私は、まず全ての気に入らない点を一箇所に集めることで、何に取り組まなくていけないかのリストが作れるのではないか、それによってこのあと行う予定の2つのミーティングで必要となる労力を随分と軽減できるのではないか、と判断した。

 そのようなわけで、私たちを苛立たせる要素をリスト化したわけだ。これはのちに実に有益な材料となってくれた。私はこの方法で作業を行ったことに安堵している。

 集められた苦言の中から目立ったものを以下に並べてみた。プレイテスト時のカード名からもしかしたら実際のどのカードなのか、推測できるかもしれない。
 # 《Brave Conscript》はMattにとってひどく不恰好なものに見えた。

 # 《Dayhawk》と《Kemba’s Army》のいずれかは装備品に関するカードになるべきだ。
 # 《Kemba’s Army》は装備しているときに絆魂と警戒を持つことにしたらどうだろう?

 # 《Silver Wall》 - 3青 2/4 防衛、Presence- +2/+2 と防衛を失う

 # 《Oxidda Megasaur》 - 金属術を持っていてもいいかもしれない

 # 《Cauterize》、《Conduction Bolt》、《Goblin Grenadier》、《Slagstorm》と3点が多すぎ

 # 《Conduction Bolt》は超つまらない

 # 《Goblin Grenadier》の金属術の能力はおかしい

 # 《Signal Monkey》は飛行持ちのように《Treetop Bracers》能力を持っててもいい

 2回目のミーティングで私たちは最後に少しだけ残されていた苦言を集め終えた。それから大量のマイアをテーマとしたカードを作成した。それらの大半は既存のカードを真似ただけの劣化品にすぎなかったが、わずかに含まれていた傑作たちはそのままセットへと収録されることとなった。

 3回目となる最後のミーティングでは、変更が必要と思われた一部のカードを私はリストにしてまとめ、Erikへ提出した。

 私たちがどのような提案をしたのか、そしてその提案がどのような結果を生み出したかについては、以下に全て語られている。

 これを読んでもらえば、私たちのこの1週間に渡る集中的な作業がセットに対して実に劇的な変化をもたらしたことを君たちにも分かってもらえると思う。

 チームからの提案
 CU03:
   3青 1/4 防衛
   金属術- ~ あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしている限り、
   ~ は+2/+2の修整を受けるとともにそれが防衛を持たないかのように
   攻撃できる。

 * 彼は戦場にあるべきだ。戦場とはアタックを意味する。

 変更前のバージョンではこのカードは防衛を失わなかった。私たちはそれは間違っていると感じた。

 私たちが即興で決めた能力値はイマイチ不恰好なもので、かつそれは青のクリーチャーの全体的なカーブにも沿わないものだった。そこでErikは私たちの決めた値のかわりとなる能力値を用意してくれた。

 最終形
Spire Serpent / 尖塔の海蛇 (4)(青)
クリーチャー - 海蛇(Serpent)
防衛
金属術 ― あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしている限り、尖塔の海蛇は+2/+2の修整を受けるとともにそれが防衛を持たないかのように攻撃できる。
3/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Spire+Serpent/

 チームからの提案
 UG03:
   4緑 4/4 ~ の上にはカウンターを配置できない。

 * これは間違いなく感染と戦う力になってくれる。

 大成功!

 最終形
Melira’s Keepers / メリーラの守り手 (4)(緑)
クリーチャー - 人間(Human) 戦士(Warrior)
メリーラの守り手の上にはカウンターを配置できない。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Melira%27s+Keepers/

 チームからの提案
 CW01:
   白 1/1 金属術 ― +2/+2

 * 0/1のままでは《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》や
 * 《ハーダの自由刃/Hada Freeblade》などに対してあまりに見劣りがする。
 * では1/1にすると? 素晴らしい!
 * そうしたとしても印刷可能な強さだと思う。

 私たちが手を加える前も、このカードは今とまったく同じだった。

 0/1であったことを除いて。

 さて、結果を見ると印刷してもよいかどうかなどという心配は杞憂に過ぎなかったようだ。

 《献身的な補充兵/Ardent Recruit》は、水曜日にJacob Van Lunenが紹介してくれた(註)ように《鍛えられた鋼/Tempered Steel》デッキでスタンダードにおいてプレイされているし、マジック・オンラインのPauperでは親和デッキでプレイされている。
水曜日にJacob Van Lunenが紹介してくれた
 リンク先は以下のURL。Jacob Van Lunenによるデッキ紹介コラム。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/boab/131

 しかしそれ以外の場所ではそれほど活躍していない。

 これは申し分ない結果だ。

 最終形
Ardent Recruit / 献身的な補充兵 (白)
クリーチャー - 人間(Human) 兵士(Soldier)
金属術 ― 献身的な補充兵は、あなたが3つ以上のアーティファクトをコントロールしている限り+2/+2の修整を受ける。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ardent+Recruit/

 チームからの提案
UW03:
   警戒
   ~ は、それにつけられている装備品1つにつき、
   追加のクリーチャー1体をブロックできる。

 * ミラディン軍には装備品に関連したカードがあるべきだ。
 * 警戒を持ち、デカくて、複数をブロックできるのを
 * 全部一緒にしてしまえばいい感じになるだろう!

 たくさんのレオニンの戦士たちを描くように、というこのカードに関するイラストの指示はすでに承認済みだった。彼らに持つことになっている武器の数々は、装備品に紐づくこの能力をより飲み込みやすくしてくれる。

 このカードによって《岩投げの小隊/Rockcaster Platoon》、《ルーアム・ジン/Ruham Djinn》、そして《歩哨の樫/Sentry Oak》のような、どこか間の抜けたデカい白のアンコモンという伝統は途切れることなく継承されることとなった。

 最終形
Kemba’s Legion / ケンバの軍勢 (5)(白)(白)
クリーチャー - 猫(Cat) 兵士(Soldier)
警戒
ケンバの軍勢は、ケンバの軍勢につけられている装備品(Equipment)1つにつき、追加のクリーチャー1体をブロックできる。
4/6
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kemba%27s+Legion/

 チームからの提案
 UW02:
   1白白 2/2 飛行、先制攻撃、Warring

 * きっと飛行持ちのWarringクリーチャーが欲しくなるよ。

 なんてこった! こいつはセットに収録されなかった。しかし、かといって完全に姿を消してしまったわけでもない。

 Erikは回避能力つきの喚声持ち(この能力の開発時の名前は「Warring」だった)が複数作られることに少々不安を持っていた。これのかわりに用意された、回避能力持ちの喚声カードが何なのかはすぐに分かるよ。

 最終形
Accorder Paladin / 調和者隊の聖騎士 (1)(白)
クリーチャー - 人間(Human) 騎士(Knight)
喊声(このクリーチャーが攻撃するたび、他の各攻撃クリーチャーはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。)
3/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Accorder+Paladin/

 チームからの提案
UW01:
   1白 2/1 対アーティファクト専用の《忘却の輪/Oblivion Ring》

* みんな、こいつが気に入ったよ!

 Erikも気に入ったようだよ!

 彼はさらにパワーとタフネスの値を変更し、対象に出来るカードタイプも追加した。

 最終形
Leonin Relic-Warder / レオニンの遺物囲い (白)(白)
クリーチャー - 猫(Cat) クレリック(Cleric)
レオニンの遺物囲いが戦場に出たとき、アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とする。あなたはそれを追放してもよい。
レオニンの遺物囲いが戦場を離れたとき、その追放されたカードをオーナーのコントロール下で戦場に戻す。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Leonin+Relic-Warder/

 チームからの提案
 CR09 3赤赤 ソーサリー
   ~ はそのプレイヤーに4点のダメージを与える。
   金属術 ― あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしている場合、
   このターン、そのプレイヤーがコントロールするクリーチャーでは
   ブロックできない。

 * ダメージを増やすのはつまらないし、すでに赤の呪文には3点ダメージが
 * たくさんある。

 この変更が適用される前は、通常時のダメージが3点で、金属術達成時のダメージが6点だった。新しいバージョンはより触れ幅が大きくなっているが、このほうがより戦争における対立を示すのに合っている。

 3点のダメージに関する意見がどのカードから来ているかというと、《金屑の嵐/Slagstorm》や《不純の焼き払い/Burn the Impure》、そしてこの次に紹介するカードなどからだ。

 最終形
Concussive Bolt / 震盪の稲妻 (3)(赤)(赤)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。震盪の稲妻はそのプレイヤーに4点のダメージを与える。
金属術 ― あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしている場合、このターン、そのプレイヤーがコントロールするクリーチャーではブロックできない。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Concussive+Bolt/

 チームからの提案
 UR03
   3赤赤 3/3
   ~ が戦場に出たとき、あなたはアーティファクトを1つ生け贄に捧げてもよい。
   そうした場合《弧状の稲妻/Arc Lightning》の効果。

 * 前のバージョンは結びつきが足りないように感じられた。
 * こうすればアーティファクトを投げつけているように見えるだろ。

 これに関してはカードデザインを改良した例だ。私たちはダメージを3点から4点に上げようとは思わなかったが、その場にErikがいたおかげで助かった。

 以前のバージョンでは上で触れられているとおり、似たような能力ではあったが、金属術を達成していればコストを支払う必要なく使うことができるというものだった。今のバージョンのほうがずっと結びつきを感じられる。

 最終形
Kuldotha Flamefiend / カルドーサの炎魔 (4)(赤)(赤)
クリーチャー - エレメンタル(Elemental)
カルドーサの炎魔が戦場に出たとき、望む数のクリーチャーやプレイヤーを対象とする。あなたはアーティファクトを1つ生け贄に捧げてもよい。そうした場合、カルドーサの炎魔はそれらに4点のダメージを望むように割り振って与える。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kuldotha+Flamefiend/

 チームからの提案
 UR02
   2赤赤 3/1
   Presence- ~ は二段攻撃を持つ。

 * 既存のバージョンは本当にひどかった。


 前のバージョンだどのようなものだったか思い出せない。

 きっと本当にひどかったんだろう。

 最終形
Spiraling Duelist / らせんの決闘者 (2)(赤)(赤)
クリーチャー - 人間(Human) 狂戦士(Berserker)
金属術 ― らせんの決闘者は、あなたがアーティファクトを3つ以上コントロールしている限り、二段攻撃を持つ。
3/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Spiraling+Duelist/

 チームからの提案
 UA05とUA13 これらを抜くべきだ。

 * スペースが足りないため。
 * 《Myr Joiner》は他のマイアとの関連性が感じられない。
 * また《Biomantic Armor》はフレイバー的なセンスに乏しいように思われる。


 これらは、私たちが少々出過ぎた意見を述べてしまった例だ。最終的には、Erikはこれらのカードに肯定的で、かつリーダーは彼だった。こうしてこれらのカードは抜かれずに済んだ。

 最終形
Brass Squire / 真鍮の従者 (3)
アーティファクト クリーチャー - マイア(Myr)
(T):あなたがコントロールしている装備品(Equipment)1つと、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、前者を後者につける。
1/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Brass+Squire/

Silverskin Armor / 銀皮の鎧 (2)
アーティファクト - 装備品(Equipment)
装備しているクリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに、他のタイプに加えてアーティファクトでもある。
装備(2)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Silverskin+Armor/

 チームからの提案
 CA13
   3 アーティファクト
   ~ は蓄積(charge)カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
   (T), 蓄積カウンターを1個取り除く:クリーチャー1体を対象とする。
   このターン、それでは攻撃もブロックもできない。

 * アンコモンへ移動

 * コンセプトに沿うよう努力しているところ。
 * 石臼効果では少々不恰好だし結びつきも感じられない。
 * 加えて、それでは戦争にも戦闘にも関連性が見出せない。


 《叫び角笛/Shriekhorn》と《雷楽のラッパ吹き/Thundersong Trumpeter》を結びつけたのは確かKellyだったと思う。

 ともあれErikはこの変更を即座に却下した。

 変更後の効果はあまりに《転倒の磁石/Tumble Magnet》とかぶっていたし、蓄積カウンターを用いるシンプルなカードはコモンにこそふさわしいと考えたためだ。

(しばらくのち、セットの他のカードと大した関連性を持つことのない単独で働くコモンがあるのが良いことなのかを明らかにしたのもまたKellyだった。それは彼がセット発売直後に行われたドラフトで《叫び角笛/Shriekhorn》デッキを作った際に発見された。)

 最終形
Shriekhorn / 叫び角笛 (1)
アーティファクト
叫び角笛は蓄積(charge)カウンターが3個置かれた状態で戦場に出る。
(T),叫び角笛から蓄積カウンターを1個取り除く:プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分のライブラリーの一番上から2枚のカードを自分の墓地に置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Shriekhorn/

 チームからの提案
 《Signal Monkey》に以下の2つを加える。
  マナコストにさらに1マナを追加
  「~ は飛行か到達を持つクリーチャーによってしかブロックされない」の能力

 * あまりに脆すぎる。回避能力が必要。
 * また木々の間を駆け抜ける生き物だから《樹上の篭手/Treetop Bracers》の
 * 能力はフレイバー的にしっくりくる。

 これがこのコラムの最初の方で私が存在をほのめかしていた、回避能力を持つ喚声持ちクリーチャーだ。

 イラストのコンセプトで私が示唆した木々の絵は製品版のイラスト(註)には描かれなかった。しかしゲートウェイのプロモーション・カード(註)のバージョンではきちんと描かれている。
(註) 製品版のイラスト
 イラストには、木の枝ではなくミラディンの金属製の草が描かれている。
 製品版の《信号の邪魔者/Signal Pest》のイラストは以下を参照。
 参照:http://magiccards.info/mbs/en/131.html

(註) プロモーション・カード
 イラストには、木の枝っぽいものが描かれている。
 プロモーション・カードの《信号の邪魔者/Signal Pest》のイラストは以下を参照。
 参照:http://magiccards.info/grc/en/51.html

 最終形
Signal Pest / 信号の邪魔者 (1)
アーティファクト クリーチャー - 邪魔者(Pest)
喊声(このクリーチャーが攻撃するたび、他の各攻撃クリーチャーはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。)
信号の邪魔者は飛行か到達を持つクリーチャーによってしかブロックされない。
0/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Signal+Pest/

 チームからの提案
 新しいコモンカード:
   《Resilient Myr》 2
   アーティファクト・クリーチャー - マイア
   ~ が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、無色の1/1のマイア・
   アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
   1/1

 * こいつはかわいいしマイアっぽいと私たちは思っている。

 Erikもそう思ってくれたよ!

 しかし「墓地に落ちたとき」をトリガーとする能力はそのカードをファイレクシア陣営に属させることになっていた。愛すべきこのマイアに「墓地に落ちたとき」の能力を持たせたことで、私たちは相手陣営にコモンを贈呈する羽目になってしまったのさ!

 最終形
Myr Sire / マイアの種父 (2)
アーティファクト クリーチャー - マイア(Myr)
マイアの種父が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、無色の1/1のマイア(Myr)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Myr+Sire/

 チームからの提案
 新しいアンコモンカード:
   《Myr Overtron》 3
   アーティファクト・クリーチャー - マイア
   ~ のパワーとタフネスはそれぞれ、
   あなたがコントロールするマイアの数に等しい。
   */*

 * 新しいマイアのロードが欲しい。このシンプルな奴が気に入った。

 Erikは新たなマイアに関連するカードを加えるのはいいアイデアだと同意してくれたが、これをアンコモンに入れることには反対した。

 彼はカードを差し戻し、代わりのレアを作れるかどうか検討するようにと私に指示した。そして私は依頼にぴったり沿うこの逸品をMark Purvisから手に入れることが出来たんだ。

 最終形
Myr Turbine / マイアのタービン (5)
アーティファクト
(T):無色の1/1のマイア(Myr)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
(T),あなたがコントロールするアンタップ状態のマイア5体をタップする:あなたのライブラリーからマイア・クリーチャー・カードを1枚探し、それを戦場に出し、その後あなたのライブラリーを切り直す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Myr+Turbine/


 最初、チームを担当させてもらったときは、まさかErikが私たちの提案をこれほどまでにセットへ反映してくれるとは思いもよらなかった。

 また、このウィザーズという場所で働けることがいかに光栄なことかを、チームメンバーの達成してくれた仕事の質の高さから再確認することができた。

 ブランド・マネージャーとウェブサイト担当者さえもがセットの価値を最大限に高めるために現場へ身を投じ自らの手を汚してくれる、そしてそんなときでも最終的に上がってきた製品はただただ素晴らしいものにならざるをえない。

 ありがたいことに、プロジェクトを手助けしてくれたこの3人の素晴らしい紳士たちの活躍を君が見られるのはこれが最後ではないらしい。

 この3人は今現在まだ公式には発表できないとある製品に携わっている。彼らが今何をしているのかを君たちに伝える日が楽しみでしょうがない。

 出来る限り早くお伝えできるよう頑張るよ。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 月曜日が《稲妻のドラゴン/Lightning Dragon》で、フォイルに関する記事。
 火曜日が《天啓/Revelation》で、ワールド・エンチャントに関する記事。
 水曜日が《ファイレクシア化/Phyresis》で、フレイバーテキストの単語に関する記事。
 木曜日が《ピスタスの一撃/Pistus Strike》で、イラストに関する記事。
 金曜日が《カードの毎日/Card of the Day》で、エイプリルフールのネタ記事。

 さすがにここから一貫したテーマは読み取れないかな……。

余談2:《稲妻のドラゴン/Lightning Dragon》

 初のプレミアムカードに関する記事。原文では、Premium Foil(プレミアムフォイル)という表記で、MTG Wikiでは「プレミアム・カード/Premium Card」「Foil/フォイル」「キラカード」「箔押しカード」などの呼称が紹介されていた。

 初めてブースターに封入され始めた頃、仲間内ではフォイルもしくはフォイルカードと呼んでいた気がする。今もそう呼んでいるかな。欲しいカードのフォイルを引くと嬉しかったけど、しばらく経ってから、フォイルカードが反りやすいことに気づいてガッカリした(デッキに入れられない、という結論に達した)記憶がある。

余談3:《天啓/Revelation》

 ワールド・エンチャントがまだまだ現役だった頃にマジックを遊んでた。その頃はレジェンドルールが旧式だった。これら2つの特殊タイプは似ているようで効果が真逆だったため、当時はちょっと混乱した覚えがある。

 レジェンドは、後から出たほうが「ニセモノ」として扱われるため、先出し有効(後から出たほうが捨て札になる)。ワールド・エンチャントは、世界のルールを「上書き」するため、後出し有効(先に出されていたほうが捨て札になる)。

 慣れてしまえばどうということもないんだけど、これらのカードは両方とも実際に使われる頻度が低かったせいでなかなか慣れなかった。

 そうこうしているうちに、レジェンドルールも分かりやすく改訂され、ワールド・エンチャントも姿を消して、世界は平穏かつちょっと寂しいものとなった。

余談4:《ピスタスの一撃/Pistus Strike》

 Q&Aの最後の段落について補足しておくと、拙訳では「腱鞘炎」と訳した箇所は、原文では「carpal tunnel」となっている。

 これは正しくは「毛根管」という手の部位(もしくはその部位に痛みが生じること)で「腱鞘炎」とは異なる症状らしい。

 だけど、まあ雰囲気としては「虫どもを数えるのに指先を使いすぎて痛みがやしびれが走るようになったよ!」ってことが言いたいわけで、日本語で言うなら「腱鞘炎になった」が適当かな、と。

余談5:エイプリルフール

 元の記事を見てもらうと分かるんだけど「レアリティ」と「マナコスト」はこっちで勝手に付け加えた。正直、どう取り扱ってよいか迷うネタだった。

 公式サイトのエイプリルフールネタとしては、以下のリンク先の「ギデオン vs リリアナ」デッキのほうが分かりやすく面白い。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/136

余談6:カードアドバンテージとは?:初級編/Card Advantage: A Brief Overview

 リミテッドで、カードアドバンテージを得まくったのに試合には負けてしまった、なんて経験がある人向けの記事。多分。

 一部、読みやすさを重視して原文から意図的に変えた箇所がある。途中の「2マナ3/3+稲妻 デッキ」と「2マナ2/2+稲妻 デッキ」に関するくだり。

 原文では「2マナ2/2」については具体的なカード名が挙げられていた(もちろん《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》)。ただこれだと「2マナ3/3」がカード名なしなのに「2マナ2/2」だけカード名ありになってしまって、日本語にしたときに文章がどうしても読みづらかった。ちょっと悩んでから簡略化することに。
Gate to Phyrexia - アンティキティー アンコモン
Gate to Phyrexia (黒)(黒)
エンチャント
クリーチャーを1体、生け贄に捧げる:アーティファクト1つを対象とし、それを破壊する。この能力はあなたのアップキープの間にしかプレイできず、各ターンに1回のみ起動できる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gate+to+Phyrexia/

 アンティキティーで初めてファイレクシアが世に出たとき、それは2枚のカード、《Gate to Phyrexia》と《Phyrexian Gremlins》という姿で登場した(註1)。1994年という昔でさえ、ファイレクシア人はアーティファクトに敵対する工作を行っていたんだ!(註2)

(註1)《Gate to Phyrexia》と《Phyrexian Gremlins》
 これら2枚のカードは2011年02月28日のCard of the Dayにもペアで登場している。
 http://regiant.diarynote.jp/?day=20110228

(註2) アーティファクトに敵対する工作
 《Gate to Phyrexia》だけでなく《Phyrexian Gremlins》もアンチ・アーティファクトカード。
Phyrexian Gremlins (2)(黒)
クリーチャー - グレムリン(Gremlin)
あなたは、あなたのアンタップ・ステップにPhyrexian Gremlinsをアンタップしないことを選んでもよい。
(T):アーティファクト1つを対象とし、それをタップする。それは、Phyrexian Gremlinsがタップ状態である限り、それのコントローラーのアンタップ・ステップにアンタップしない。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyrexian+Gremlins/

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought - ミラージュ レア
Phyrexian Dreadnought / ファイレクシアン・ドレッドノート (1)
アーティファクト クリーチャー - ドレッドノート(Dreadnought)
トランプル
ファイレクシアン・ドレッドノートが戦場に出たとき、パワーの合計が12以上になるように好きな数のクリーチャーを生け贄に捧げない限り、これを生け贄に捧げる。
12/12
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyrexian+Dreadnought/

 《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》のイラストをよく目をこらして見れば、右下の隅にとても小さな魔法使いがいるのを見つけられるはずだ。
 だけど、どうしてわざわざ目をこらす必要があるんだい?
 2003年のこの記事(註1)を見れば済む話じゃないか!

(註1) この記事
 2003年04月14日のArcanaへのリンクが張ってある。
 以下にその記事の和訳。
イラスト解析:ファイレクシアンドレッドノート/Art Close-Up:Phyrexian Dreadnought
2003年04月14日/Monday, April 14, 2003
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/arcana/327

 マジックのイラストが君たちの見慣れている小さな長方形に縮められたとき、細部に宿る巧妙なネタのいくつかは失われ、そうでない場合もほとんどはプレイヤーが気づかないレベルにまで縮小されてしまう。

 ミラージュの《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》に描かれている小さな人物もその1つだ。

 長年この仕事に携わっているPete Ventersによって描かれたこのドレッドノートは、当時のマジックにおいて最大のサイズを誇るクリーチャーだった。いかに大きいかを表現するためにVentersは、その超弩級の巨大生物へ向かって呪文を唱える魔法使いを右下の隅に描いた。

 その隠れた小さな人物を見やすくするためにほぼ最大サイズまで拡大したイラストがこれだ。
元記事はここに《ファイレクシアン・ドレッドノート/Phyrexian Dreadnought》の拡大イラスト
http://www.wizards.com/global/images/mtgcom_arcana_327_pic1_en.jpg

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ファイレクシアの歩行機械/Phyrexian Walker - ビジョンズ コモン
Phyrexian Walker / ファイレクシアの歩行機械 (0)
アーティファクト クリーチャー - 構築物(Construct)
0/3
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyrexian+Dreadnought/

 《ファイレクシアの歩行機械/Phyrexian Walker》はマジックの歴史の中で、6枚目のコストが0マナのクリーチャーだった。その先輩には《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》、《Crimson Kobolds》、《Crookshank Kobold》、《Kobolds of Kher Keep》、そして《Shield Sphere》がいる。
 これ以降には《ドライアドの東屋/Dryad Arbor》と《メムナイト/Memnite》が新たにリストへ名を連ねている。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ファイレクシアの呪文集/Phyrexian Grimoire - テンペスト レア
Phyrexian Grimoire / ファイレクシアの呪文集 (3)
アーティファクト
(4),(T):対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは、あなたの墓地のカードの上から2枚のうち1枚を選ぶ。そのカードを追放し、他方をあなたの手札に加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyrexian+Grimoire/

 多くのトーナメントのフォーマットでは墓地の順序を好きなだけ変えてよいことになっている(註1)が、ヴィンテージやレガシーのようなエターナル環境ではいまだに墓地は元の順序のまま保持するよう定められている。
 なぜだろうか?
 《冥界の影/Nether Shadow》や《ファイレクシアの呪文集/Phyrexian Grimoire》のようなカードがその理由だ。(註2)
 いや、まあ、理由の大半は《冥界の影/Nether Shadow》だ。

(註1) 墓地の順番
 今日の記事で話に挙がっているのはマジックザギャザリング大会規定の話。これによるとどうやらウルザズ・サーガ以降は墓地の順序を気にするカードが作られていないらしい。
3.13 墓地の順序
 ウルザズ・サーガ以降のカードだけからなる形式においては、自分の墓地にあるカードの順番は好きに変更してもよい。対戦相手の墓地を見る時に順番を入れ替えてはならない。
 引用元:http://www.dcirules.org/resources/japanese/MTG_MTR_1Oct10_JP.doc

 なお、総合ルールでは基本的に墓地の順序は変えることができないことになっている。
404.2. それぞれの墓地は、一つの、表向きの束でなければならない。プレイヤーは、それぞれの墓地のカードをいつでも見ることができるが、その順序を変えることはできない。DCI認定イベントに適用される追加のルールによって、プレイヤーは墓地にあるカードの順番を変えてもよいとされることがある。
 引用元:http://mjmj.info/data/CompRules_j.html#r404

(註2) ~のようなカード
 墓地の順序を気にするカードとしてはその他に《死の火花/Death Spark》、《Krovikan Horror》、《ブージーアムの輪/Bosium Strip》、《Soldevi Digger》、《ヴォルラスの多相の戦士/Volrath’s Shapeshifter》、《ミストムーン・グリフィン/Mistmoon Griffin》、《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》、《死体のダンス/Corpse Dance》などがある。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut - ミラディン包囲戦 アンコモン
Phyrexian Juggernaut / ファイレクシアの巨大戦車 (6)
アーティファクト クリーチャー - 巨大戦車(Juggernaut)
感染(このクリーチャーは、クリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
ファイレクシアの巨大戦車は各ターンに可能ならば攻撃する。
5/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyrexian+Juggernaut/

 どうやら多様な文化はそれぞれ固有の巨大戦車/Juggernautを生み出すらしい。
 最初の《巨大戦車/Juggernaut》はおそらくドミナリア製だ。《オタリアの巨大戦車/Otarian Juggernaut》というものもある。ミラディン軍さえも独自の《ダークスティールの巨大戦車/Darksteel Juggernaut》を持っている。
 ファイレクシア軍がミラディンへの侵略を押し進めた際、彼らがその邪悪な発想力から《ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut》を生み出すまでにそう時間はかからなかった。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
【翻訳】戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War【Daily MTG】
Tom LaPille
2011年03月18日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/134

 Multiverseと呼ばれるマジックのセットを制作するのに用いられている意見交換用のデータベースがあり、このデータベースに残されたコメントを元に最新のデベロップメントに関する記事を書く、という由緒正しい伝統がウィザーズには存在する。

 ウィザーズ社に入社する以前は読者としてこれらの記事を楽しませてもらっていたし、今やそれらを書く側となったことを私は楽しんでいる。君たちの多くもこれらの記事を楽しんでくれていると思う。

 私がミラディンの傷跡に関するMultiverseの記事を書いてないことに誰か気づいたかもしれない。

 書けなかった理由は、Mutliverseのミラディンの傷跡に関するファイルには、記事にするだけの面白おかしいネタが見つからなかったからだ。しかし幸いなことにミラディン包囲戦には話したくなるようなネタがたんまりとあった。

 さあ、始めようか。

 その前に、コメント読むのに必要な情報をいつものように以下へ記しておくよ。

     Aaron Forsythe:
          マジック・R&Dディレクター
     Alexis Janson:
          第1回 Great Designer Search(註)の優勝者
     Doug Beyer:
          マジック・クリエイティブ・デザイナー
     Del Laugel:
          マジック・シニア・エディター
     Erik Lauer:
          ミラディン包囲戦、リード・デベロッパー
     Ken Nagle:
          マジック・デザイナー
     Mike Turian:
          ミラディン包囲戦、デベロッパー
     Mark Rosewater:
          マジック・ヘッド・デザイナー
     Tom LaPille:
          私だ!
     Ryan Miller:
          デュエルマスターズ・デザイナー
     Steve Warner:
          デュエルマスターズ・デザイナー 兼 マジック・プレイテスター
     Zac Hill:
          ミラディン包囲戦、デベロッパー
(註) Great Designer Search
 2006年に行われたデザイナーの一般公募。このリストに載っているKen Nagleも最終予選まで勝ち抜いた3人のうちの1人。以下、このコンテストに関する記事(リンク先は英語)。episodeは1から7まである。
 http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/designersearch/episode1

 2010年10月に第2回が行われている。
 第2回の2次試験の選択問題は日本の公式サイトにも載っている。

 選択問題
 http://archive.mtg-jp.com/reading/translated/010422/


Kemba’s Legion / ケンバの軍勢 (5)(白)(白)
クリーチャー - 猫(Cat) 兵士(Soldier)
警戒
ケンバの軍勢は、ケンバの軍勢につけられている装備品(Equipment)1つにつき、追加のクリーチャー1体をブロックできる。
4/6
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Kemba%27s+Legion/

Ken Nagle 3/12/2010:
 《岩投げの小隊/Rockcaster Platoon》や《ナカティルの狩り群れ/Nacatl Hunt-Pride》みたいな、間抜けな白のデカいアンコモン野郎がまた1匹! やったね! (^▽^)
Aaron Forsythe 3/19/2010:
 マジックのカードの中でも、こういうアンコモンのデカブツは特に好きだよ。

 このカードや先輩に当たるカードたちについては以前にも記事で語ったことがある。《ルーアム・ジン/Ruham Djinn》、《岩投げの小隊/Rockcaster Platoon》、それに《歩哨の樫/Sentry Oak》などが同じジャンルに含まれる。私たちは基本的にこいつらが大好きだ。

 ちょっと待って……Mike Turianが怒ってるぞ! みんな逃げろ!
Mike Turian 3/23/2010:
 じゃあなんで君たちは《ナカティルの狩り群れ/Nacatl Hunt-Pride》のとき、あんなに不満たらたらだったんだよ!?

 最初、私はここで問題にされているカードが《ナカティルの戦群れ/Nacatl War-Pride》のことかと思った。

 《ナカティルの戦群れ/Nacatl War-Pride》はなかなかにカッコいいカードなのだが、アンコモンとしては残念なことにルール的に複雑な点がいくつもあったからだ。

 彼がここで問題にしている《ナカティルの狩り群れ/Nacatl Hunt-Pride》について、過去に何があったのかは私はよく知らない。

 そのため推測することしか出来ないが、おそらく断片/Shardを表現するためのカードが自身でない色を起動コストとする能力を持つにも関わらず、その断片/Shardのメインカラーと自身の色が一致していないということを全メンバーが等しく納得していたわけではない、ということが原因ではないかと思う。


Mirran Crusader / ミラディンの十字軍 (1)(白)(白)
クリーチャー - 人間(Human) 騎士(Knight)
二段攻撃、プロテクション(黒)、プロテクション(緑)
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Mirran+Crusader/

 包囲戦の対立を体現するために《ヴェクの聖騎士/Paladin en-Vec》的なカードを対で作ろう、というアイデアを最初に言い出したのが誰だったかは思い出せない。

 何にせよそのアイデアは採用された。それらがどのような能力を持つべきかについては極めて明快だった。

 感染/Infectが相手を殺すのに10点しかかからないとしたら、対となるべきは二段攻撃/Double Strikeに決まっている。

 さてこれらのカードは存在を許されうるのか?

 黒い片割れのテキストとそのプレイされた結果は満足のいくものだった。しかし、そのもう片方に関しては……?
Zac Hill 02/01/2010:
 分かったのはこいつが今までに存在したカードの中で特に酷いってことだ
Ken Nagle 01/19/2010:
 こいつが出る前までは緑使うのも楽しかったのにな (´・ω・`)
Erik Lauer 01/22/2010:
 だな。こいつはあからさまに酷すぎる。けど、もう少しテストしてみたい。警戒+先制攻撃のほうがいいかも。
Mike Turian 01/25/2010: (註)
 ブロックするのは難しいかもしれないけど、巨大化する心配をしなくてよくなるのはいいニュースかもね
Erik Lauer 01/27/2010:
 そいつは笑える!
(註) Mike Turian
 原文ではコメントした人の名前は略称で表されている。ここの略称は原文では「MJ」となっていたけど、参加者の一覧に「MJ」が略称のメンバーがいない。
 Mで略称が始まるのは「MT(Mike Turian)」と「MR(Mark Rosewater)」のみ。記事内で一度も出てきていないのは「MT」なので「MJ」はおそらく「MT」タイプミスと推測した。

 今までも私たちがカードの出来を確かめるのに使ってきた手法を試してみることにした。そう、今しばらくそのままでカードをプレイしてみることにしたのだ。

 その結果、はっきりと示せる根拠があったわけではないが、このままでも大丈夫だろうということが徐々に分かってきた。

 このカードは強いが、強すぎるということはない。
Zac Hill 02/08/2010:
 こいつは結局のところ世に出しても大丈夫だって俺の中の何かが囁いてるよ。
Steve Warner 02/10/2010:
 こいつらが気に入った。もしかしたら白騎士と黒騎士のペアよりもみなの記憶に残るカードになるかもしれない。

 もちろん、これでテスト完了なんてことにはしなかった。
Zac Hill 02/16/2010:
 緑がこれに対処するにはありえないようなコンボ決めるしかないぞ。
Erik Lauer 02/17/2010:
 そうかな。赤がメインのデッキに対するプロテクション赤のほうがキツくない? 
 赤を散らした緑デッキは赤いクリーチャー除去を入れてることが多いけど、緑を散らした赤デッキはたいていの場合、緑のクリーチャー除去を入れてないでしょ。それとももしかして単色デッキに限った話?
Zac Hill 02/18/2010:
 まず「その1:大抵の緑デッキは感染のために緑黒で組まれる」。だけど「その2:稲妻があれば問題なし」か。
 気にしてたのはどっちかというと緑単色や緑白のサバイバルデッキだ。(註)
 パラディンよりこいつが問題となのは、4点ってダメージに耐えられるクリーチャーがデッキにいないし、ブロックして生き延びるだけすら出来る奴がいない。
 でも、まあ、今のままでいいとは思ってるけどね。
(註) サバイバルデッキ
 《適者生存/Survival of the Fittest》の能力を持つクリーチャー、《獣相のシャーマン/Fauna Shaman》を中心に据えたデッキの総称。

 このカードをプレイすればするほど分かってきたのは、このカードには剣を装備させたい、ということだ。

 《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》を装備させればさらなるプロテクションを得られるし、二段攻撃のおかげで剣の効果も2倍だ。

 剣を帯びたこいつによって繰り出される極めて凶暴な攻撃を見たアーロンは、カードに変更の余地がないか調査するよう私たちに依頼を投げてきた。
Aaron Forsythe 03/19/2010:
 私にはインフレが行き過ぎているように思われる。装備品を身に付けたこいつは、楽しいと呼ぶには程遠い。
 一段階弱めることはできないだろうか? アイデアとしては「その1:二段攻撃と感染を起動型能力にする」「その2:召喚コストを無色3点+有色1点にする」「その3:2/1にする」「その4:多色にする。赤白白と黒黒緑」。
 パワーを変えずにバリエーションを増やしてみたんだが。
Erik Lauer 03/19/2010:
 琴線に触れたのは2/1だね。
 あとはプロテクション:アーティファクトを持たせて装備できなくするとかかな。だけどそれだとさらに強くなるだけかも。
Tom LaPille 3/19/2010:
 タフネスを1にするがいいかな。
 それでも十分に強いとは思う。ただ傷跡のPlague系カードで殺せるようになっちゃうけどね。ほかの選択肢はその場しのぎな感じがするな。
Erik Lauer 03/20/2010:
 二段攻撃に起動コストがかかるのはいいと思うけど、感染が起動型になるのはちょっと気に食わないな(いや、感染はそのままで先制攻撃を起動型にしてもいいけど)

 それからしばらくのあいだ、私たちはいくつかのプレイテストのセッションに集中して取り組んだ。

 そのプレイテストで私たちは、私たちの生み出したバランスが正しいものだと証明するべく十字軍たちを最大限に活かせるデッキを十字軍抜きの最強デッキたち相手にプレイし続けた。

 今時点、この証明は完了していない。しかし最終的に私たちは元々のバランスに問題はなかった、という判断を下した。

 どちらの十字軍も構築を面白くしてくれるだろうと思っている。しかし環境を支配するほどに強すぎることもないだろう、とも。

 私たちはこの意見書をアーロンへ提出し、彼はそれに満足した。今のところ、私たちは基本的に正しかったように思われる。
Ken Nagle 03/21/2010:
 不思議な感じだね。
 ジョニー好きするような無害そのものの《Plague Vesicle》みたいなアーティファクトが色んなカードのパワーバランスを左右することになるなんてさ。

 ここでKenのコメントに出てきた《Plague Vesicle》というのは今現在《伝染病の留め金/Contagion Clasp》と呼ばれているものだ。

 私たちはこのカードを実際に今プレイされているよりもずっと高い頻度で用いていた。

 私たちはプレインズウォーカーたちがより迅速に奥義へと到達させるべく増殖の効果を用いることを楽しんだが、その使い道においては私たちが思っていたよりも使い勝手の悪いカードだった。

 私たちはスタンダード環境の未来をいつも的確に予想できるわけではないが、十字軍たちのケースに関しては上手く回っている。


White Sun’s Zenith / 白の太陽の頂点 (X)(白)(白)(白)
インスタント
白の2/2の猫(Cat)クリーチャー・トークンをX体戦場に出す。白の太陽の頂点をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/White+Sun%27s+Zenith/

 開発が始まったばかりの頃、頂点/Zenithサイクルがファイルへ加えられたとき、それらはまとめてデザインされた。

 そのうちの4枚は基本的に初期の状態のまま据え置かれたが、この1枚は違う。

 最初、これは無色のトークンを生み出した。
Erik Lauer 01/22/2010:
 これと《清浄の名誉/Honor of the Pure》が入ってるTomの作ったデッキ使ってたんだけど、このカードが生み出すのって無色のトークンであって白じゃないんだね。
 これ、合ってるの? 白・トークンとマイア・トークンはどっちもクリエイティブ的にはOKなの?

 《白の太陽の頂点/White Sun’s Zenith》はトークンを生み出すカードにも関わらず、それは現環境でトークンと最も相性の良いはずの白いカードと上手く働かない。

 ありがたいことに、クリエイティブからの返事はトークンを白にしてもよい、というものだった。ついでに、トークンは1/1か2/2のどちらかになるべきなのでそれも決めてくれ、とのことだった。
Erik Lauer 01/27/2010:
 Doug、決めたぜ! 白の2/2だ。猫の戦士は開発部の味方さ。
Doug Beyer 01/28/2010:
 了解、回答ありがとう。確かSOMには2/2の白い猫トークン入りがいたはずだからちょうどいい(残念ながら単なる猫で無職だけどね)

 このバージョンは最初、(X)(白)(白)のソーサリーだった。誰かが、ちょっとコストを上げてかわりにインスタントにできないか、というアイデアを出した。

 また同時期にZac Hillが猫の祝祭(Cat Festival)というアイデアは最高だという結論に達していた。
Zac Hill 02/01/2010:
 猫の祝祭! いえーい!
Zac Hill 03/09/2010:
 XWWWのインスタントでどうよ?
Erik Lauer 03/12/2010:
 XWWのソーサリーから、XWWWのインスタント、と。

 しかしErikはこのデザインが正解かどうか自信がなかったため、私たちに何か代替案があるかどうか意見を求めた。
Erik Lauer 03/12/2010:
 このままにするのと、インスタントのXWで、点数で見たマナコストがX以下の土地でないパーマネントを追放するのと、どっちがいい?
Aaron Forsythe 03/19/2010:
 このまま。
 Xの単位が猫の奴。
Tom LaPille 03/19/2010:
 このままがいいな。
Ryan Miller 03/23/2010:
 猫!
Mark Rosewater 03/25/2010:
 猫大好き。
 それはさておきこのサイクルは本当に使ってて楽しい。

 猫、万歳!


Oculus / 眼魔 (1)(青)
クリーチャー - ホムンクルス(Homunculus)
眼魔が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、あなたはカードを1枚引いてもよい。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Oculus/

Doug Beyer 01/05/2010:
 ラヴニカの《検分するスプライト/Surveilling Sprite》は同じ能力で飛行持ちなのに。
Ken Nagle 01/19/2010:
 青のドローカードが ま た 劣化するのか!
Zac Hill 01/20/2010:
 だけどこいつは青いゾンビだろ!?(註)
MLG 02/11/2010: (註)
 どこからどうみても《検分するスプライト/Surveilling Sprite》の下位互換。
Ken Nagle 02/22/2010:
 君たちはど素人か? ホムンクルスは 飛 べ な い だろうが!
Aaron Forsythe 02/18/2010:
 今のままでも青をやるときは必ず使うなあ。当時とは使われ方が違う気がする。
(註) 青いゾンビ
 フレイバー的な話をしているのか、青の2マナ1/1で能力持ちなのが《Drowned》を連想させるからなのか、意図は不明。ちなみに原文は「BUT IT’S A BLUE ZOMBIE ONEONEONE.」。

(註) MLG
 原文ではこのコメントを残した人物名として「MLG」という略称が使われているが、今回の記事に「MLG」が略称のメンバーはいない。また似たような略称もないため、とりあえず原文ママにしておいた。

 これに関しては私はAaronを支持する。

 毎回必ず《眼魔/Oculus》をピックするというわけではないが、サイドボード行きになることもまた少ないカードだ。

 ミラディン包囲戦でのこいつは、《生体解剖/Vivisection》の燃料として最適だし、セットに含まれる様々な装備品のどれかを持たせれば自身より少し大きいクリーチャーと相打ちをとりつつカードを引かせてくれる。

 ラヴニカにはクリーチャーを生け贄に捧げるというテーマも装備品に比重が置かれていたわけでもない。そのため《検分するスプライト/Surveilling Sprite》の能力は当時よりもこの環境においてずっと有用なものとなる。

 ここには記されていない会話の中で語られていたことに、すでに青はリミテッドで優遇されている、ということがあった。

 《堕落した良心/Corrupted Conscience》と《ヴィダルケンの解剖学者/Vedalken Anatomist》はセットの中でもトップクラスのアンコモンだ。

 またそれに加えて、《鋼の妨害/Steel Sabotage》、《水銀の噴出/Quicksilver Geyser》、《血清掻き/Serum Raker》などの非常に使い勝手の良いコモンがたくさん用意されている。

 私たちはリミテッドにおける青の強さに満足しており、《眼魔/Oculus》をそのままにしておいても十分に有効活用できることが分かったので、下位互換として世に出すことにした。ちなみにこいつの当時の名は《Twigleg》だった。(註)
(註) Twigleg
 ドイツの小説家、コーネリア・フンケの書いた「Dragon Rider」というファンタジー小説の登場人物であるホムンクルスの名前がTwiglegというらしい。
 参考:http://en.wikipedia.org/wiki/Dragon_Rider

 マジックのR&Dの伝統として、私は馬鹿げた仮定を問いかけてみた。
Tom LaPille 03/03/2010:
 《Twigleg》は飛べるかな? あとこいつはバスケでボッシュに勝てるかな?(註)
(註) ボッシュ
 マジック的に考えると《鉄のゴーレム、ボッシュ/Bosh, Iron Golem》。相手がこのデカブツでも、バスケ勝負で、かつ《眼魔/Oculus》が空を飛べればワンチャンスあるかもしれない。

 この馬鹿な問いに、Aaronが反応してくれた。
Aaron Forsythe 03/19/2010:
 トロント・ラプターズのクリス・ボッシュには勝てないだろうね。
(註) クリス・ボッシュ
 クリス・ボッシュはアメリカのバスケットボールリーグであるNBAの選手。めっちゃ強い。《眼魔/Oculus》が飛べたとしても勝ち目はない。
 ちなみに昨年までは文中にあるとおりトロント・ラプターズ所属だったけど、2010-2011シーズンからマイアミ・ヒートという別のチームへ移籍しているらしい。
 参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Chris_Bosh


Steel Sabotage / 鋼の妨害 (青)
インスタント
以下の2つから1つを選ぶ。「アーティファクト呪文1つを対象とし、それを打ち消す。」「アーティファクト1つを対象とし、それをオーナーの手札に戻す。」
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Steel+Sabotage/

 
Mike Turian 01/25/2010:
 このカードがヴィンテージに与える影響については検討済み?

 驚きだね。これはそうそう提起される問題ではないが、ここで挙がったようにまったく起きないというわけでもない。

 単独で見ると、これは結構怖い質問だ。何しろこれは、私たちがあまりにも強過ぎる「壊れた何か」を生み出そうとしている可能性を示しているからだ。

 幸いなことに、このカードは単なる一部のタイプのカードに対する「回答」となるカードに過ぎなかった。
Erik Lauer 01/26/2010:
 いい点をつくね (^▽^) 個人的にはこのカードは問題ないと思うよ。《Time Vault》を止められるようになるぐらいじゃない?

 もしこのカードがヴィンテージに影響を与えるとすれば、私はむしろ喜ばしく思う。

 《磁石のゴーレム/Lodestone Golem》をカウンターしたり、《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》をバウンスしたり、そういった崇高な仕事をしてくれるだろう。

 私たちは《呪文貫き/Spell Pierce》がレガシーとヴィンテージに与えた影響について好ましく思っているし、このカードも同様のポジションに落ち着くことになると思うよ。
Ken Nagle 02/16/2010:
 ヴィンテージに悪影響を与えるかも、って判断を下したことって今まであったっけ?
Erik Lauer 02/17/2010:
 下したとしてもそのせいでカード自体が大きく変更されることはないね。
 ただ「カードを変更するだけの価値があるほどの何か」ってのはあるかもしれない。《三なる宝球/Trinisphere》みたいに。

 Kenの質問はなかなか新しい視点だ。

 私たちは、エターナルのフォーマットに適応させるためだけに新しいセットのカードを積極的にねじ曲げるようなことは滅多にしない。

 なぜなら基本的にそのようなことはする必要がないからだ。

 今や1万2千枚を超えるマジックのカードがあり、私たちがどんなカードを思い描こうと大抵の場合はすでにそれに対する「回答」は用意されている。

 とはいえ、時には既存のカードとあまりに強い相互作用を起こしてしまうカードが生み出されることもある。例えば、《Mishra’s Workshop》と《三なる宝球/Trinisphere》のように。

 そういった場合は私たちも何らかの対応を迫られる。

 もっとも今回の《鋼の妨害/Steel Sabotage》のように何かに対する「回答」となるカードについては、新たなカードが活躍する助けになってくれるかもしれないという意味で非常に期待している。


Phyresis / ファイレクシア化 (1)(黒)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは感染を持つ。(それは、クリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyresis/

 このカードはそれほど特筆すべき点があるようには見えないかもしれない。

 ちなみに《ファイレクシア化/Phyresis》は誰かがファイレクシア人となった際に「感染する病気の名前」だ。そう考えるとこのカードがクリーチャーに「感染/Infect」を与えるというのはなかなか不思議な話だ。

 それはさておき、このMultiverseという場所はマジックの編集者たちの能力の1つが遺憾なく発揮される場所でもある。その能力とは「セットに何か不自然な点がないか察知する」ことだ。

 ほら、Delが何かに感づいたようだ。
Del Laugel 01/22/2010:
 今時点でこのセットには4つしかエンチャントがないぞ。
Erik Lauer 01/26/2010:
 クリーチャー用のオーラを足そうとする意欲が、装備品に置き換わってしまいがちな気がする。さらにその他のアーティファクトが全体エンチャントの居場所を奪ってしまっているのかも。

 Erikの言うとおりだ。

 今時点では通常エンチャントが担当している分野は他に任されてしまっているが、今年の夏にはいつもの見慣れたエンチャントが君たちの元へお届けされるよ。


Burn the Impure / 不純の焼き払い (1)(赤)
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。不純の焼き払いはそれに3点のダメージを与える。そのクリーチャーが感染を持つ場合、不純の焼き払いはそのクリーチャーのコントローラーに3点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Burn+the+Impure/

Ken Nagle 10/29/2009:
 これ、サイドボード行きになることがないよね。いつもメインに入ってる。
 そのせいで相手が感染デッキを対策するつもりがないときまで対策されちゃってる感じなんだけど。
Alexis Janson 11/16/2009:
 狙い通りだね。対立がサイドボードにじゃなくて表面に出てきてるってことだ。
Zac Hill 12/21/2009:
 同感。

 ここ最近の数ヶ月のあいだに、君はミラディン軍とファイレクシア軍のあいだで戦争が起きているということを感じ取れたかもしれない。私たちの生み出したカードのいくつかは実際にその戦争を暗示してさえいた。

 このカードはその中でも特にその対立を明確に示している1枚だ。

 いつか無邪気な子供がこのカードを手にとって、なんで感染/Infectに関する一言が付け加えられているんだろう、と不思議に思うかもしれない。それはあり得ることだが、私たちはミラディン軍とファイレクシア軍の衝突がカードから伝わるようにしたかった。

 これはリミテッドにおいてその対立をはっきりと表現してくれるカードだ。


Lead the Stampede / 暴走の先導 (2)(緑)
ソーサリー
あなたのライブラリーの一番上から5枚のカードを見る。あなたはその中から望む枚数のクリーチャー・カードを公開し、その公開したカードをあなたの手札に加えてもよい。残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lead+the+Stampede/

Aaron Forsythe 02/18/2010:
 これって《獣狩り/Beast Hunt》が弱すぎたことに対する埋め合わせかい?
Erik Lauer 02/24/2010:
 多分だけど、本来は緑の特権なはずの《巨大化/Giant Growth》と《不屈の自然/Rampant Growth》をアーティファクトに持たせてしまったことと、緑のクリーチャーの約半数がライフを攻められないことに対する埋め合わせだと思うよ!

 Erikの言い方は少々大げさだが、その内容自体は間違ってはいない。

 リミテッドではマナマイアによって5色全てにマナ加速が用意されており、構築でも同様に《太陽の宝球/Sphere of the Suns》と《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》が存在している。

 また、装備品によって《巨大化/Giant Growth》のような効果よりも基本的に効率よくクリーチャーをパンプすることが5色全てにおいて可能となっている。

 それだけでなく、多くの緑のクリーチャーが感染/Infectを持っており「普通の」デッキをドラフトで組むことが難しくなっている。

 Erikの理論に従えば、確かに緑はその埋め合わせとなる対価を得るべきなのだ。

 《暴走の先導/Lead the Stampede》は、君のデッキの他の59枚のカード(もしくは39枚のカード)をほぼ全て土地とクリーチャーだけで満たすよう要求する。これはデッキ構築をするうえで、小さくはない制約だ。

 しかしもしそうすることが出来たなら、このカードにはなかなかの価値が生じる。

 私はここ最近、このカードが構築で使われているのをよく見かける。特に例をあげるとするなら、このカードと《緑の太陽の頂点/Green Sun’s Zenith》を最大限に生かしたエルフのコンボデッキがエクステンデッドに存在する。


Titan Forge / タイタンの炉 (3)
アーティファクト
(3),(T):タイタンの炉の上に蓄積(charge)カウンターを1個置く。
(T),タイタンの炉から蓄積カウンターを3個取り除く:無色の9/9のゴーレム(Golem)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Titan+Forge/

Zac Hill 02/08/2010:
 このカードは本当にイイね。
Aaron Forsythe 02/18/2010:
 リミテッドで使ってみた。騙された。
Erik Lauer 02/18/2010:
 リミテッドですごい役に立ってくれたけどなあ。

 正しい回答が容易に発見できてしまうようなら、マジックはもっと退屈なものとなっていただろう。

 見ての通り、プロツアー最終日まで勝ち残ったことのある2人が、ドラフトで同じカードを使った際の評価について正反対の感想を述べている。

 やり込むに値するだけの奥深さをマジックに付与することに私たちが成功しているのを示す良い例と言える。


 さて、Multiverseの探訪の旅を楽しんでもらえただろうか。

 私は次のセットであるAction(仮名)のデベロップメントに参加しているが、今回のような記事の1つや2つを書けるようなネタがたっぷり用意されている。

 覚えている限りの今までのMultiverseのファイルの中でも特に多種多様なネタにあふれているから、これに関する記事を書くのが楽しみでしょうがない。

 その記事を君たちも楽しんでくれるだろうと信じているよ。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 今週は新たなるファイレクシアの出現に合わせて、ファイレクシアづくし。分かりやすい。だけど分かりやす過ぎるとまたそれもさみしい、という気もする(贅沢言うな)。

余談2:月曜日 《Gate to Phyrexia》

 記事で言及されている《Gate to Phyrexia》と《Phyrexian Gremlins》のペアは2011年02月28日にも一緒に登場している。その相方である《Phyrexian Gremlins》は、グレムリンという怪物の持つフレイバーとカードのフレイバーが見事にハマッていて、なんとなく嬉しい。

 グレムリンと言えば「機械にいたずらをして故障させてしまう小鬼」。そしてカードの能力は「アーティファクトをアンタップできなくする」。この「あくまで一時的な不具合を起こすだけで、復旧不能なまでに破壊はしない」のが、いかにもだなあ、と感心した次第。

 グレムリンが飽きてどっかに行ってしまうと、また何事もなかったかのようにアーティファクトが機能しだすわけで、持ち主は「あれぇ? 何がおかしかったんだろう?」と首をひねることになる。面白い。

余談3:水曜日 《ファイレクシアの歩行機械/Phyrexian Walker》

 記事では、点数で見たマナコストじゃなくて、あくまで実際のコストが0マナのクリーチャーのみを対象としている。だからマナ・コストが(X)や(X)(X)のクリーチャーは紹介されていない。

 今週のテーマを考えるとなかなか面白いことに、初めてコストが(X)のみだったクリーチャーもファイレクシアの一員だったりする。ビジョンズの《ファイレクシアの略奪機/Phyrexian Marauder》がそれ。

余談4:木曜日 《ファイレクシアの呪文集/Phyrexian Grimoire》

 今のスタンダード環境って、大会規定においては墓地の順序を気にしないのか。ちょっと驚いた。いや、前にも一度どっかで聞いたような気も少しするけど、すっかり忘れてた。

 確かにフラッシュバックを持つカードや墓地のカードの枚数を参照するカードと、順番を変えてはいけないというルールは、相反するというかトラブルの元になりそう。

 ある時期から「個人の記憶に頼るような状況は極力生み出したくない」というポリシーを重視するようになったはずだから、必要ない環境においては無視、というのは納得。

 余談。墓地の順序を気にするカードで、実際に対戦中に見たことあるのは《ブージーアムの輪/Bosium Strip》、《Soldevi Digger》、《浅すぎる墓穴/Shallow Grave》、《死体のダンス/Corpse Dance》、《冥界の影/Nether Shadow》、あと記事の注釈に書き忘れてたけど《灰燼のグール/Ashen Ghoul》も。

余談5:金曜日 《ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut》

 記事には「多様な文化はそれぞれ固有の巨大戦車/Juggernautを生み出すらしい」とある。なるほど。その中でも歴代最強を決めるとすれば、やっぱりドイツの生み出した《German Juggernaut》こと、殿堂入りプレイヤーであるカイ・ブッディになるのかな。

 ちなみに英語版Wikipediaにはカイ・ブッディの項目があり、上記の通り名である German Juggernaut もちゃんと紹介されている。
 参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Kai_Budde

余談6:戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War

 実生活が忙しかったり、口語体の文章が多くて訳が難航したりですごい時間がかかってしまった。元記事がアップされたのが03月18日だから、単純に考えると3週間以上かかってる。

 しかしコメント欄の訳は本当に難しい。会話の一部を抽出しているようなものなので、前後関係から類推することもできない場合がある。

 そうそう、わざわざ書く必要があるのかどうか分からないけど、翻訳記事の各ライターの口調や言葉遣いは全て創作でありご本人の人柄とは一切関係ありません。ご了承ください。

 以下、訳していてちょっと面白かった箇所。
原文:
 BUT IT’S A BLUE ZOMBIE ONEONEONE.

拙訳:
 だけどこいつは青いゾンビだろ!?

 ゾンビが何を意味しているのかはいまだに分かっていない。ここで言いたいのは、ONEONEONEって何よ?、ということ。

 パワーとタフネスだとすると、1/1だから3つ目の1が分からない。何か意味があるのかな、と、頑張って調べてみた。おそらくこういうことらしい。

 1.驚きを強調するために「!!!!!」と打つことがある。
 2.タイプミスで「!!!1!」となってしまうことがある。
 3.つまり「11111」は「!!!!!」とほぼ同義である。
 4.じゃあ強調で「ONEONEONE」って打ってもいいじゃん          ←今ここ

 いわゆるタイピングで文字を打ち込んでいるのを想定したネット上のスラングという感じ。あえて日本語で例を挙げるとすると (ry みたいなものかな?

余談7:Happy Magic

 何やら面白そうなサイトが始まったみたい。まだ記事が少ないので今後への期待も込めての紹介。ライターの方へのコメントも書き込めるみたい。

 内容の良し悪しをどうこうコメントするには実戦を離れすぎているので書き込めないけど、出来る方はぜひ。

 Happy Magic (http://www.happymtg.com/)
空飛ぶ絨毯/Flying Carpet - 第5版 レア
Flying Carpet / 空飛ぶ絨毯 (4)
アーティファクト
(2),(T):クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで飛行を得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Flying+Carpet/

 アラビアンナイトから第5版にかけてのあいだ《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet》の最後の一文には、対象が墓地へ送られたらこれも破壊される(註1)と書かれていた。
 不思議なことに第6版で収録された際にはこの一文が消え去っている。(註2)

(註1) 破壊される
 実はアラビアンナイトと第5版にも少し違いがあり、第5版では《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet》の乗り手が死んだとき、《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet》は「破壊される/destroy」のではなく「埋葬される/bury」(註3)されることになっていた。つまり第5版のときは「再生/regenerate」できなかった。
 以下、各版ごとの印刷されたテキスト。改行位置も実際のカードと同じ。
         ・アラビアンナイト版
                  (2) (T); Gives one creature
                  flying ability until end of
                  turn. If that creature is
                  destroyed before end of
                  turn, so is Flying Carpet.
         
         ・第5版
                  (2) (T); Target creature gains flying
                  until end of turn. If that creature is
                  put into any graveyard this turn,
                  bury flying carpet.
         
         ・第6版
                  (2) (T); Target creature gains flying
                  until end of turn.

(註2) 第6版に収録された際
 原文ではここに第6版の《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet》を表示するリンクが張ってある。

(註3) 埋葬する/bury
 廃止された用語の1つ。基本的に「bury target creature」は「destroy target creature. That creature cannot be regenerated」という意味。ただしカードによっては「生け贄/sacrifice」に置き換わっているものもあるみたい。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
邪悪なる力/Unholy Strength - 第4版 コモン
Unholy Strength / 邪悪なる力 (黒)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは+2/+1の修整を受ける。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Unholy+Strength/

 第4版の《邪悪なる力/Unholy Strength》におけるイラストの背景には不自然な空白が生じている。これはなぜならリバイスド版のイラスト(註1)には表示されていたペンタグラム(註2)を取り払ったためだ。

(註1) リバイスド版のイラスト
 原文ではリバイスド版の《邪悪なる力/Unholy Strength》を表示するリンクが張ってある。

(註2) ペンタグラム
 五芒星のこと。実際のイラストについては以下のリンク先を参照のこと。
 参照:http://magiccards.info/rv/en/41.html

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ジャッカルの使い魔/Familiar chacal - Magic 2010 コモン
Familiar chacal / ジャッカルの使い魔 (赤)
クリーチャー - 猟犬(Perro)
ジャッカルの使い魔は単独では攻撃したりブロックしたりできない。
2/2
日本語部分の引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Jackal+Familiar/

 スペイン語版(註1)の《ジャッカルの使い魔/Jackal Familiar》である《Familiar chacal》(註2)には誤訳がある。
 スペイン語版には「El Familiar chacal no puede atacar ni bloquear」と書かれており、これを訳すと「ジャッカルの使い魔は攻撃したりブロックしたりできない」となる。
 正しくは「ジャッカルの使い魔は単独では攻撃したりブロックしたりできない」である。

(註1) スペイン語版
 余談。
 今日のCard of the Dayはタイトルのカード名もスペイン語となっている。

(註2) 《Familiar chacal》
 実際に印刷されたテキストについては以下のリンク先をの画像を参照のこと。
 参照:http://magiccards.info/m10/es/143.html

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
Cyclopean Tomb - アルファ レア
Cyclopean Tomb (4)
アーティファクト
(2),(T):沼(Swamp)でない土地1つを対象とする。その上に湿地(mire)カウンターを1個置く。その土地は、その上に湿地カウンターが置かれている限り沼である。この能力は、あなたのアップキープの間にのみ起動できる。
Cyclopean Tombが戦場から墓地に置かれたとき、ゲームの残りの間、あなたの各アップキープの開始時に、いずれかの土地からCyclopean Tombによって置かれ、Cyclopean Tombによって取り除かれたことがない湿地カウンターをすべて取り除く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Cyclopean+Tomb/

  アルファの中でも最も混乱を招きやすいカードは《Cyclopean Tomb》だろう。これは印刷時にマナコストが記載されていなかったのだ(註1)。
 なおベータ版(註2)の際には正しいマナコストである(4)を得ている。

(註1) マナコストが記載されていなかった
 マナコストのないアルファ版の《Cyclopean Tomb》については以下のリンク先を参照のこと。
 参考:http://magiccards.info/al/en/240.html

(註2) ベータ
 ベータ版の《Cyclopean Tomb》については以下のリンク先を参照のこと。
 参考:http://magiccards.info/be/en/242.html

(余談) Cyclopean Tomb
 01月11日のCard of the Dayにて、ほぼ同じネタで取り上げられている。
 参考:http://regiant.diarynote.jp/201101120553337011/

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
大アナグマ/Giant Badger - アルファ レア
Giant Badger / 大アナグマ (1)(緑)(緑)
クリーチャー - アナグマ(Badger)
大アナグマがブロックするたび、それはターン終了時まで+2/+2の修整を受ける。
2/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Giant+Badger/

 《大アナグマ/Giant Badger》は、マジックの小説(註1)の後ろに添付されていたクーポン券を郵送することで入手可能であった5枚のカードのうちの1枚(註2)だ。
 《大アナグマ/Giant Badger》が第8版で再録されたことで、アナグマに関連したカードを待ち望んでいた大多数の声をようやく満足させることが出来た。

(註1) マジックの小説
 クーポン券が添付されていた小説は「Arena」(註3)、「Whispering Woods」(註4)、「Shattered Chains」、「Final Sacrifice」、そして「The Cursed Land」の5冊。
 このうち《大アナグマ/Giant Badger》が当たるのは「Shattered Chains」のクーポン券で、当たる可能性があったのは「The Cursed Land」のクーポン券だったらしい。
 参照:http://wiki.mtgsalvation.com/article/Promotional_cards(リンク先は英語)

(註2) 5枚のカードのうちの1枚
 その他の4枚は《闘技場/Arena》、《Mana Crypt》、《Sewers of Estark》、《Windseeker Centaur》。《闘技場/Arena》だけ日本語訳があるのは時のらせんで再録されているため。

(註3) 「Arena」
 日本語版が出ている(絶版)。邦訳は「アリーナ - 魔法の闘技場」。英語版では1冊目のマジックの小説だが、日本語版では「Whispering Woods」の邦訳に続く2冊目。
 参照:http://www.jfkmagic.sakura.ne.jp/mtgnovel.txt

(註4)「Whispering Woods」
 日本語版が出ている(絶版)。邦訳は「ささやきの森」。英語版では2冊目のマジックの小説だが、日本語版ではこれが最初に訳されている。
 参照:http://www.jfkmagic.sakura.ne.jp/mtgnovel.txt

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
【翻訳】ファイレクシア化は道半ば/Halfway Compleated【Daily MTG】
Tom LaPille
2011年04月08日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/ld/137

 最初に書いておくと《ボール・ライトニング/Ball Lightning》は「3マナ 6/1 トランプル、速攻、ターン終了時に生け贄」というクリーチャー。
 あと、記事内で青文字で斜体の箇所は、開発中に行われた開発部メンバー同士のやりとり。
 それでは本文をどうぞ。

 ミラディン軍とファイレクシア軍が半分ずつを占めているミラディン包囲戦というセットの開発では、全体では統一感を持たせつつも同時に互いに明確な違いが見えるように、多大なる労力が支払われた。

 どのようにしてそれが行われたか、その一例を前にも一度このサイトで紹介した(註)。その方法とは開発チームを2つに分けてそれぞれの陣営を担当させる、というものだった。
(註) サイトで紹介した
 リンク先は以下のURL。ミラディン陣営のカード開発に関するコラム。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/ld/131

 以下、上記コラムの拙訳。
 http://regiant.diarynote.jp/201104152100134979/

 そのときには、私が担当したのはミラディン陣営のみだったが、互いの陣営の特徴が何なのかについては両陣営の全員が理解していたはずだ。

 私たちは各グループの垣根を越え、今まではファイレクシア陣営に属していなかった色に関しては、どうすればその色に馴染むようなファイレクシア・カードが作れるのかということを長い時間かけて話し合った。

 今日はミラディン包囲戦のファイレクシア陣営のカードに関して、当時どのようなことが話し合われたのかを紹介したいと思う。

Priests of Norn / ノーンの僧侶 (2)(白)
クリーチャー - クレリック(Cleric)
警戒
感染(このクリーチャーは、クリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
1/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Priests+of+Norn/

 ミラディン包囲戦のデベロップメント・リーダーであるErikが担当した3つのセット全てにおいて、私はデベロッパーとして参加していた。その開発の中で、彼がマジックのどのような要素を好んでいるのかについて、私は多くを知ることができた。

 Erikは、ことリミテッドに関してはより長引きそうな試合を好んだ。彼の担当したセットに《角海亀/Horned Turtle》、《包囲マストドン/Siege Mastodon》、《装甲のカンクリックス/Armored Cancrix》などが入っている理由はそれだ。(註)
(註) 理由
 全てここで紹介されているクリーチャーはすべてタフネス偏重なバニラ・クリーチャーもの。ちなみに「バニラ」というのは特に能力を持っていない無印的なクリーチャーを指す俗語。

 《角海亀/Horned Turtle》はバニラの3マナ・1/4
 《包囲マストドン/Siege Mastodon》はバニラの5マナ・3/5
 《装甲のカンクリックス/Armored Cancrix》はバニラの5マナ・2/5

 《嵐潮のリバイアサン/Stormtide Leviathan》、《古えのヘルカイト/Ancient Hellkite》、そして《法務官の相談/Praetor’s Counsel》のような高コストのカードはいつでも輝けるというカードではない。

 しかし早い段階でそういったカードをピックした際には、それらのために必要な防御的なクリーチャーを十分にピックできるような可能性を用意したいとErikは考えている。

 私は、《ノーンの僧侶/Priests of Norn》そういった防御的なクリーチャーの中でも、僧侶だけに精神力によってより高みへのぼりつめることが出来た存在だと考えている。

 もっとも軽い希少度の立場に甘んじているにも関わらず、このカードを少し離れて全体的に眺めるとかなり奇妙なカードであることが分かる。

 通常、警戒能力持ちの1/4というクリーチャーは目立った活躍ができるスペックではない。何しろ《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》ですら日がな一日ブロックし続けることができるのだ。

 ところがここにある感染という能力が《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》にとって少々悩ましい状況を作り出してしまう。しかしブロックしないことを選んだ対戦相手は、またこの感染という能力によって毒カウンターがじりじりと溜まっていくのを落ち着かない気持ちで迎えることになる。

 実際のところ、《ノーンの僧侶/Priests of Norn》は伝統的な《角海亀/Horned Turtle》的な存在として働いてくれることは間違いない。しかしそれだけでなく、これはファイレクシア陣営のカードだな、と断言できるほどに、目新しくまた奇妙なことが出来るカードだと思う。

 最後に少し付け加えておくと、私は特にこのカードについて起こりがちなリミテッドのデッキ構築、つまり「非感染デッキにも関わらず感染を持つカード(=これ)を忍び込ませることになる」という、ファイレクシア陣営を暗示するようなメタ的な含意は面白いと思っている。

 あれ、なんでこいつがこっち側にいるんだろう? いや、気にする必要はないよ。1ヶ月か2ヶ月ほどしたら全てがこいつらの支配下に置かれるだけだからね。

 とりあえず今は3/3でこいつに向かって攻撃したりしないように気をつけていればいい。大丈夫、大丈夫、全て上手いこと片付くさ……。

Gore Vassal / 流血の臣下 (2)(白)
クリーチャー - 猟犬(Hound)
流血の臣下を生け贄に捧げる:クリーチャー1体を対象とし、それの上に-1/-1カウンターを1個置く。その後、そのクリーチャーのタフネスが1以上である場合、それを再生する。
2/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Gore+Vassal/

 Aaron Forsythe 3/19:
  「大丈夫か、Ball Lightning!? 助けに来たぜ!」
 Bill Rose 3/19:
  「お断りします」


 白という色はクリーチャーを救うことに喜びを感じる色だ。それはファイレクシアにあっても変わらないが、その救済には代価が伴う。

 私は多くの経験の浅いプレイヤーがこのカードの使い方でつまずくのを見てきた。

 自身のクリーチャーを再生したい、だけど-1/-1カウンターは相手のクリーチャーに乗せたい。このカードのルール的な動きは簡単に分かる。しかし実際どう使えばよいのかはそう簡単ではない。

 私たちは、2通りのまったく異なる使い方が出来てしまう上に自身のクリーチャーに用いた場合にはデメリットを残すようなカードを滅多に作ったりはしない。

 しかしこのカードを全体として見たときに生じるその奇怪さこそが、白のファイレクシア・カードとして機能している証だと私たちには受け取られた。皆がこのカードのために色の慣例を破るのをいとわなかったことに感謝したい。

Choking Fumes / 窒息の噴煙 (2)(白)
インスタント
各攻撃クリーチャーの上に-1/-1カウンターを1個ずつ置く。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Choking+Fumes/

 白のカードがいつもとちょっと違うことを示す、3つ目の例がこれだ。

 確かに、攻撃クリーチャーを罰するのは間違いなく白の分野だ。

 しかし通常、その罰が複数のクリーチャーに与えられることはないし、ましてやそれが-1/-1カウンターの形で与えられることはまずありえないと言っていい。

 白のファイレクシア・カードの中でいえば、それほど変わっていると言うほどでもないが、私からするとそれでもまだ十分に奇妙なカードだ。

Phyrexian Rebirth / ファイレクシアの再誕 (4)(白)(白)
ソーサリー
すべてのクリーチャーを破壊する。その後、無色のX/Xのホラー(Horror)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。Xは、これにより破壊されたクリーチャーの総数である。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyrexian+Rebirth/

 全体除去は元々白の分野だ。そのためそれをあえてファイレクシアっぽく捻じ曲げるのには少々骨を折った。

 ありがたいことに、ファイレクシア・チームが妙案を提供してくれた。

 しかしこのカードについて皆がどれほどまでにコメントを飛ばしあったかを見てくれれば、ファイレクシア・チームが考え出してくれた「捻じ曲げ方」が、いかに白という役割のボーダーラインすれすれだったか、君たちにも分かってもらえると思う。


 Erik Lauer 3/10:
   ファイレクシアチームから新しいカードが来たよ。

 Steve Warner 3/11:
   これどっからどう見ても黒のカードじゃね……?
   クリーチャータイプをスピリットか何かにすれば、もしかしたらありかも。

 Zac Hill 3/11:
   これは素晴らしい。

 Aaron Forsythe 3/19:
  素晴らしいとは思うけど【検閲削除】のほうがもっと好きだな。
  両方作っちゃダメなの? 片方は黒にする必要あり?

 Tom LaPille 3/19/2010:
  【検閲削除】は黒っぽい気がするね。

 Ken Nagle 3/21/2010:
  これがもし聖なるX/Xアバター・トークンを作るのなら白で問題ない。
  だけどその場合、ファイレクシアっぽさが無くなる。
  4黒黒のコストにしてX/Xのデーモンを出すのはどうかな。
  もしトークンが飛行持ちならPete Ventersのデーモン・トークンを再利用できる。
  トークンってのは、見た目がReiver Demonに似てるあれね。
  あー、でもそうすると、戦場に出たときに全てのクリーチャーを破壊する
  Reiver Demonっぽいカードを作ればいい、ってことになっちゃうか。

 Ryan Miller 3/23:
  これでいいよ! 白のウィニーデッキに入る全体除去だ!
  テーマに沿ってて面白い。
  ただ白なのにクリーチャータイプがホラーなのは変、ってのには同意
  (ダンス・ホールで踊ってる時なら別だけど)

 Kelly Digges 3/23:
  これは実に「白いファイレクシア」だと思う。
  こんな感じの黒いカードはどんなセットでも入りうるけど、
  白いバージョンはここでしかあり得ない。
  だからこそ白にあって欲しいと思う。
  異論は認める。

 Mark Rosewater (3/25/10):
  白のファイクレシアカードにふさわしいと思うよ。
  これは確かに白だけど、いつもの白じゃない。

 Zac Hill 4/5:
  このカード自体はいい。
  だけどエルズペス/これ/【検閲削除】と、全体除去が多すぎる気がする。
  似たような効果が増えすぎないよう注意する必要があるね。


 成績優秀で容姿端麗なDaily MTGの編集者であるKelly Diggesからのコメントこそが、そのままこのカードを白にした理由を簡潔に説明している。

 ファイレクシアとは何か? それは「目立たないほどわずかに侵してはならない境界線を侵しているもの」だ。

 カラーパイに敬意を払っていないわけではない。しかしそれは、このカードのような「わずかに踏み外したカード」を作るのを諦めるほどに絶対的なものでもない。

 最後に1つ。コメントの中で【検閲削除】と伏せさせてもらったカードは《黒の太陽の頂点/Black Sun’s Zenith》のことではない。注意をおこたらずアンテナを高くしていれば、それが出てきたときにはすぐ気づけるはずだ。

Serum Raker / 血清掻き (2)(青)(青)
クリーチャー - ドレイク(Drake)
飛行
血清掻きが戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、各プレイヤーはカードを1枚捨てる。
3/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Serum+Raker/

 このカードのデメリット部分は元々このクリーチャーのコントローラーにしか影響しなかった。その状態の際には、こいつはより大きなサイズとより低いコストを持っていた。

 その後、変化が生じた。

 Mark Rosewater (3/25/10):
  単にでかいデメリットを持っているってのは、ファイレクシアっぽくない気がする。
  やっぱり対戦相手が嫌がるような効果がないとね。
  せめて効果が全員に及ぶようにはできないかな。
  「~ が戦場からいずれかの墓地に置かれたとき、
   あなたはカードを2枚捨て、他のプレイヤーはカードを1枚捨てる。」

 Erik Lauer 3/25:
  全員が1枚捨てる、にしてみた。


 この変更のおかげでこのカードはファイレクシアっぽくなったとは思うが、私がそう思うのはMarkとは違う理由からだ。

 ドラフトでピックしたときとその後のデッキ構築中、「死亡時にトリガーされる効果は敵味方に対して公平に働くんだ」と自分に言い聞かせることは簡単だ。

 しかし実際には、青いデッキは長期戦に持ち込むことを想定していることが多い。土地は余すところなくプレイしたい……こいつの捨て札のために1枚とっておいたりすることなく。

 とはいえ、このジレンマもファイレクシア陣営のメンバーをチームに加えた結果として仕方ないものと受け止めなくてはいけないのだろう。

 ありがたいことに3/2飛行というスペックは、たまにしか発生しない捨て札というデメリットよりも価値があるものだ。

Vedalken Anatomist / ヴィダルケンの解剖学者 (2)(青)
クリーチャー - ヴィダルケン(Vedalken) ウィザード(Wizard)
(2)(青),(T):クリーチャー1体を対象とし、それの上に-1/-1カウンターを1個置く。あなたはそのクリーチャーをタップまたはアンタップしてもよい。
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Vedalken+Anatomist/

 Erik Lauer 3/10:
  ファイレクシアチームから新しいカードが来たよ。

 Zac Hill 3/11:
  Obey Your ~ ♪ ……いや、なんでもない。

 Erik Lauer 3/15:
  Your life burns faster ~ ♪

 Aaron Forsythe 3/19:
  うざい。

 Tom LaPille 3/19/2010:
  プレイしたくなるね。ロックバンドをだけど。

 Tabak 3/23:
  こいつはなかなかいいと思うよ。
  ただこれの名前と同じ題名の歌があった気がする……なんだっけ……


 Erikはスラッシュ・メタルの大ファンで、このカードをフォルダに入れる際に《Master of Puppets》という仮の名前(註)をつけていた。
(註) 《Master of Puppets》という名前
 メタリカというヘヴィメタル・バンドの歌に「Master of Puppest」という題名のものがあり、その歌い出しが「Obey your master. Your life burns faster. Obey your master. Master Master of puppets I’m pulling your strings.」であるらしい。

 Mark Rosewater (3/25/10):
  私だったら効果は「タップまたはアンタップ」に変えるね。
  そうしないと白のカードみたいだ。


 《流血の臣下/Gore Vassal》ほどではないが、このカードもまた悩ましい選択肢を迫られる可能性を秘めている。

 対戦相手のクリーチャーをタップするという使い方は誰でも簡単に思いつくだろう。

 しかしこの「またはアンタップ」が付け加えられたことで、ブロックのために使えるコンバットトリックとしての用法があることを示唆している。

 もちろんそれはタダじゃない。代価を支払う必要がある。

 私はチームにファイレクシアっぽさを混ぜることで多少気持ち悪いような、不安定な要素が生まれてしまうのもありだと考えている。

 さらに言うと、1枚か2枚のファイレクシア・カードがプレイヤーに悩ましい選択肢を与えてしまうのも悪くないと思っている。

Corrupted Conscience / 堕落した良心 (3)(青)(青)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
あなたはエンチャントされているクリーチャーをコントロールする。
エンチャントされているクリーチャーは感染を持つ。(それはクリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Corrupted+Conscience/

 ファイレクシアとは奪うことに他ならない。青という色もまた他から奪う色だ。またファイレクシアは、それすなわち感染/Infectでもある。

 これほどまでに明確なカードが他に作れただろうか? いや、無理だっただろう。ただこれに関しては1つの問題点が指摘された……

 Zac Hill 12/21:
  すげー、素晴らしい。

 MJG 1/12/10:
  カッコいいね。

 Aaron Forsythe 2/18:
  うーん、SOM(註)にもむかつくConfiscate(註)があったし、
  多分だけどACT(註)にも入ることになると思う。
  目を離さないほうがいいかもね。

 Mark Rosewater (3/25/10):
  これは戦争をテーマにしたセットにふさわしいと思う。
  それはそれとして、確かに気をつけたほうがいいだろうね。
  何せActionは通常のセットよりも多くの奪取系カードが必要になるだろうから。

(註) SOM
 Scars of Mirrodinの略。つまりミラディンの傷跡のこと。

(註) Confiscate
 永続的にコントロールを奪取するオーラ・カードである《押収/Confiscate》のこと。ここでは、相手のパーマネントのコントロールを奪うオーラ・カードの代名詞として使っており、遠まわしにミラディンの傷跡の《決断の手綱/Volition Reins》を指している。

(註) ACT
 Actionの略。次に発売が予定されているセットの仮の名前。

 ここで注意が喚起されているように、何かを奪うということはあまりにファイレクシア的なため、今後そういったカードを作る余地をきちんと残しておくよう気をつける必要がある。

 なお、結局のところこのカードは収録されることになった。

 このカードはミラディン軍とファイレクシア軍の対立を理解してもらう舞台装置として、あまりにも効果的なカードであった、というのがその理由だ。

Consecrated Sphinx / 聖別されたスフィンクス (4)(青)(青)
クリーチャー - スフィンクス(Sphinx)
飛行
いずれかの対戦相手がカードを1枚引くたび、あなたはカードを2枚引いてもよい。
4/6
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Consecrated+Sphinx/

 《聖別されたスフィンクス/Consecrated Sphinx》は一見したところただの飛んでるデカブツに見える。

 しかし実のところ、こいつは長いマジックの歴史の中で作られてきた数多くのムカつくクリーチャーの中でも、特に人の神経を逆撫でする1匹であることに私は気づいた。

 「お、いいドローステップ持ってるねえ、
  ちょっと僕もご一緒させてもらおうかな。
  あれ? もしかして僕のほうが君より多く引いてるのかな?」

 カードを引くという行為は通常において、自分のターンの中でも楽しい時間のはずだが、同時に対戦相手が2枚引くとあっては、とてもそうはいかないだろう。

 相手の健全な楽しみを奪ってしまうというこの行為は非常にファイレクシア的だ。その点で私はこのカードが気に入っている。

              ~~~~ ~~~~ ~~~~ ~~~~ 

 さて、ファイレクシアとは何かをそれとなく伝えるために私たちが用いた巧妙なテクニックについてここまで長々と述べてきた。

 しかし私たちにとっては、暗にほのめかすのではなくあからさまな形でファイレクシアの侵出が行われていることを示すのも、同じくらい重要なことだった。

 そして、ミラディンブロックの有名カードたちを引っ張り出してきて、それらに「感染」と書き足すことよりもあからさまな手段はそうはなかっただろう。
 原文ではここに《ヴィリジアンの堕落者/Viridian Corrupter》、《荒廃鋼の巨像/Blightsteel Colossus》、《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》の3枚の画像が並んでいる。

 それぞれミラディンの《ヴィリジアンのシャーマン/Viridian Shaman》、《ファイレクシアの巨像/Phyrexian Colossus》、《ちらつき蛾の生息地/Blinkmoth Nexus》にそのまま感染を加えたようなカード。

 実際にカードとなってしまうと、あまり語ることもないが、この処置を施す対象を選ぶのには熟慮に熟慮を重ねた。

 候補を収めたファイルには上記の3枚以外にも実に大量のカードが出番を待ち望んでいた。

 しかし私たちの最終的な決断は、少ない枚数であっても人気のあるカードたちであれば十分な効果を上げられるだろうし、その方が他のカードのためのスペースをより多く確保できるだろう、というものだった。

 《墨蛾の生息地/Inkmoth Nexus》と《ヴィリジアンの堕落者/Viridian Corrupter》の選択については私たちのもう1つの目的のためでもあった。それは構築レベルの感染デッキが生まれて欲しいというものだ。

 今日はこれだけだ。何しろミラディン包囲戦の中でもファイレクシア的なのは半分だけに過ぎない。

 これだけじゃ物足りない? すぐに(註)君にも満足してもらえると思うよ。
(註) すぐに
 原文では以下のリンクが張ってある。
 リンク先は新たなるファイレクシアのカードプレビュー。
 http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/arcana/677

余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 大雑把なくくりで言うと「再録カード」が今週のテーマだったような気がする。特に最初の4枚は「再録された際に目立った変更や修正が適用されたカード」だった。最後の1枚は「プロモーションカードから再録された珍しい例」ということだったんだと思う。

余談2:月曜日 《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet》

 これも先週のグレムリンのようにフレイバーとメカニズムが結びついたカードだった(過去形)。空飛ぶ絨毯に乗って意気揚々と敵陣へ向かうも、稲妻やら火の玉やらに乗り手が撃ち落とされてしまい、コントロールを失った絨毯はいずこかへ行方不明に……というのが最初のバージョン。

 でも、乗り手を失ったらとりあえず本来の持ち主である魔法使いの元へ自力で帰って来る魔法の絨毯、と考えるとそれはそれでファンタジーかもしれない。

 余談だけど、似ているようでちょっと違うのが《軍用船/War Barge》。これはクリーチャーに島渡りを与えることが出来るアーティファクトなんだけど、この効果を使っているターン内に《軍用船/War Barge》が破壊されると、島渡りを得ているクリーチャーたちも破壊される。

 元々島渡りできないクリーチャーが船を壊されたらおぼれるよね、という見事なフレイバー重視。そう考えると、自身が破壊されても乗り手の命だけは守ってくれる《空飛ぶ絨毯/Flying Carpet》は頑張ってる。もっと評価されるべき。

余談3:水曜日 《ジャッカルの使い魔/Familiar chacal》

 いくら「1マナ 2/2」が高スペックとはいえ「~ は攻撃したりブロックしたりできない」はさすがに代償として大きすぎる。このスペイン語版の実物を初めて見たスペイン人はどんな反応だったのかが気になるところ。

 なお「3マナ 5/5」で「~ は攻撃したりブロックしたりできない」というクリーチャーなら実在する。正確には「3マナ 0/0」で「移植5」の能力を持っているんだけど。

余談4:金曜日 《大アナグマ/Giant Badger》

 コメント欄で色々と指摘いただいた。多謝。個人的な結論としては、おそらく「全世界2千万人のアナグマ大好き人間たちもこれでようやく満足してくれるってなもんだ」みたいな冗談まじりの文章だったんだろう、ってことで。

余談5:ミラディン軍、おせっかいを焼かれるの巻/Mirran Meddling

 さすがに公式サイトのあの美しい凝ったレイアウトをダイアリーノートの限られたHTMLで再現するのは無理な話だった。ブラウザを2つ立ち上げて、横に並べて画像を確認しつつ読んでもらえると、より楽しめるかもしれない。

 もちろん今までも多少変わったレイアウトの記事を何度か訳したけれど(02月26日の「このカードはゾンビですか?」とか04月09日の「戦乱の舞台裏へ」とか)、ここまで特殊なものを訳したのは初めてな気がする。

余談7:検索ワード

 「mtg インベイジョン ドラフト」や「bury regenerate」など、いかにもなマジック用語が並ぶ中で、1つだけ気になった検索ワードが。

   2011年4月17日 01:34 戦乱カグラ
   2011年4月17日 01:21 戦乱カグラ
   2011年4月16日 20:14 戦乱カグラ
   2011年4月16日 13:58 戦乱カグラ
   2011年4月16日 13:19 戦乱カグラ
   2011年4月15日 23:38 戦乱カグラ
   2011年4月15日 21:07 戦乱カグラ
   2011年4月15日 20:37 戦乱カグラ
   2011年4月15日 20:00 戦乱カグラ
   2011年4月15日 19:40 戦乱カグラ
   2011年4月15日 18:41 戦乱カグラ

 何だこれ?

 そんな単語をこのブログで取り扱ったことあったっけ。戦乱カグラなんてカード名はないはずだし……じゃあ、なんだ? というわけで調べてみて分かったこと。

 1. どうやら「戦乱カグラ」なんていう名前のカードもゲームもないらしい
 2. だけど「閃乱カグラ -少女たちの真影-」という名前のゲームが3DSで出るらしい
 3. ゲームのジャンルは「爆乳ハイパーバトル」というらしい

 なるほど。単語については分かった。分かりたくないことまで分かった。要するに若い人たちが衝動(リビドー)のおもむくままに、うろ覚えのゲーム名をそのまま検索エンジンへ打ち込んだということか。

 しかし、そこでなんでこのブログに辿り着いたんだろう。うちのブログで「戦乱カグラ」なんて単語を使った記憶はないんだけど……自分で検索してみれば分かるか。

 (実行中)

 あー、そういうことか。分かった分かった。

 どうやら先日「戦乱の舞台裏へ/The Multiverse at War」をアップしたのとちょうど同じ時間帯に、お気に入りの日記の中に「閃乱カグラ」という題名で日記を書いた方がいたらしい。

 その時点で検索エンジンがページ情報を保持したため、合わせ技により「戦乱カグラ」がヒットするようになってしまったということ。

 せっかくなので、その日記を紹介しておく。
閃乱カグラ みそ@犬 (4月14日 17:44)

 以下が、みそ@犬さんの上記記事へのリンク。「閃乱カグラ」に関する情報が色々と紹介されている。間違ってこのブログに来てしまった方は、こちらへどうぞ。
 http://85374.diarynote.jp/201104141744391741/
Rare-B-Gone - アンヒンジド レア
Rare-B-Gone (2)(黒)(赤)
ソーサリー
各プレイヤーはすべてのレアのパーマネントを生け贄に捧げ、その後自分の手札を公開してすべてのレアカードを捨てる。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Rare-B-Gone/

 《Rare-B-Gone》が作られたのは神話レアが存在しない頃だ。しかしアン・シリーズ(註1)のルールマネージャーであるMark Rosewaterは「このカードは神話レアについても通常のレアと同じように効果を及ぼす」と決めた。

(註1) アン・シリーズ
 アン・シリーズ(Un-)とは、公式試合では使えないジョークセットであるアングルードアンヒンジドの2つのセットを指す。両方とも名前が「Un-」で始まるため。また、アン・セットとも呼ばれる。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ありふれた理由/Common Cause - メルカディアン・マスクス レア
Common Cause / ありふれた理由 (2)(白)
エンチャント
アーティファクトでないクリーチャーは、それらすべてが共通の色を持っている限り、+2/+2の修整を受ける。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Common+Cause/

 コモン(Common)という単語が英語版のカード名に含まれているカードは2枚ある。
 《ありふれた理由/Common Cause》と《Common Courtesy》だ。
 これらのうち、片方はレアでもう片方はアンコモンだ。奇妙なこともあるもんだね。

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411
ルーアム・ジン/Ruham Djinn - インベイジョン アンコモン
Ruham Djinn / ルーアム・ジン (5)(白)
クリーチャー - ジン(Djinn)
先制攻撃すべてのパーマネントの中で、白が最も多い色であるか、最も多い色の1つである限り、ルーアム・ジンは-2/-2の修整を受ける。
5/5
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Ruham+Djinn/

 多相(註1)を除いた場合、《ルーアム・ジン/Ruham Djinn》はマジックで唯一の白いジンである。そのため、ジン嫌いで有名な《King Suleiman》(註2)ともなんとか上手くやっていけるであろうジンがいるとすればこいつだけだろう。

(註1) 多相
 原文ではここに「テキストに Changeling を含む」という条件で検索したGatherer(公式カード検索ページ)へのリンクが張ってある。

(註2) 《King Suleiman》
 アラビアンナイトのカードで、カードテキストは以下の通り。
King Suleiman (1)(白)
クリーチャー - 人間(Human)
(T):ジン(Djinn)1つかイフリート(Efreet)1つを対象とし、それを破壊する。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/King+Suleiman/

元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0411

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