Card of the Day - 2011/03/21
2011年3月21日 Card of the Day虚空の杯/Chalice of the Void - ミラディン レアChalice of the Void / 虚空の杯 (X)(X)
アーティファクト
虚空の杯はその上にX個の蓄積(charge)カウンターが置かれた状態で戦場に出る。
いずれかのプレイヤーが、この上に置かれている蓄積カウンターに等しい、点数で見たマナ・コストを持つ呪文を唱えるたび、その呪文を打ち消す。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Chalice+of+the+Void/
2001年に南アフリカのケープタウンで行われたインビテーショナル(註1)で、Gary Wiseは優勝したときに作って欲しいカードとして《Artifact of Doom》(註2)を提出した。
彼は優勝できなかったがR&Dはそのカードが気に入ったため、それを《虚空の杯/Chalice of the Void》として作り直した。Gary Wiseのオリジナル版ではコストは(X)(X)ではなく(2)であったが、それが今の形に変更されるのに大した時間はかからなかった。
(註1) インビテーショナル
リンク先は以下のURL。2001年に行われたインビテーショナルの英語版カバレージ。
インビテーショナルは、その年のトッププレイヤーたちを招待して行われる大会で、優勝者は自身のデザインしたカードを実際に製品化してもらえる(とはいえ当然調整されるため、希望したそのままの形でカード化されたことは滅多に無い)。
http://www.wizards.com/sideboard/event.asp?event=mi01
(註2) 《Artifact of Doom》
リンク先は上記のカバレージにあるInformationメニューの「Players’ Card Submissions」。当時のインビテーショナルで各プレイヤーがデザインを希望したカードの情報が載っている。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
Card of the Day - 2011/03/22
2011年3月22日 Card of the Day金属モックス/Chrome Mox - ミラディン レアChrome Mox / 金属モックス (0)
アーティファクト
刻印 ― 金属モックスが戦場に出たとき、あなたの手札にあるアーティファクトでも土地でもないカードを1枚、追放してもよい。
(T):その追放されたカードと共通する好きな色のマナ1点をあなたのマナ・プールに加える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Chrome+Mox/
2004年のこのArcanaの記事(註1)によると《金属モックス/Chrome Mox》の光沢にはカーン(註2)が映り込んでいるらしい。
しかし、同じ記事に《Black Lotus》のイラストにブリトニー・スピアーズを見つけることが出来るとも書かれており、かつ記事の掲載は4月1日であったことも考えると、これは嘘かもしれない。
(註1) Arcanaの記事
リンク先は以下のURLで「Artist "Easter eggs"」(註3)という記事。何枚かのアーティファクトのイラストに関する記事。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/arcana/536
(註2) カーン
銀のゴーレムで、飛翔艦ウェザーライトの元乗組員。ウェザーライトサーガだけでなくミラディンの世界にも深い関わりがあるため、マジックの歴史への出現頻度は高く、登場しているエキスパンション数も非常に多い。
(註3) Artist "Easter eggs"
ついでなので翻訳しといた。イラストに関しては元記事を参照のこと。
内容が本当かどうかの判断は各人に任せる。
イラストレーターからの「イースターの卵」/Artist "Easter eggs"
2004年04月01日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/arcana/536
マジックのイラストレーターたちはどうやらそれなりに時間があるらしい。
過去にMagic Arcanaの記事で見てきたように、イラストレーターの方々はときにマジックのイラストに小さなネタ(たまに「イースターの卵」とも呼ばれる)を仕込むことを楽しんでいる。それが2インチ(5cm)サイズの画像に縮められた際にはかなり見つけづらいと知りつつ、だ。
例を挙げると、《金属モックス/Chrome Mox》にあるDonato Giancolra氏のイラストを注意深く眺めれば、モックスの金属の光沢に小さな人影が映り込んでいるのを見つけられるはずだ。
拡大図の下でなら、君にもその人影が実はウルザズサーガの有名な伝説のアーティファクトである《銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem》であることが分かるだろう。ここに、《金属モックス/Chrome Mox》の拡大されたイラスト。
《銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem》が映り込んでいるのが見える。
また《起源室/Genesis Chamber》のイラストにはマイアが巨大な構築物から撃ち出される様子が描かれている。描いた本人であるMark Tedin氏(およびこの記事を読んでいる君たち)を除くと構築物のふちに小さなルーンで「COMBO WITH SKULLCLAMP」と書かれていることを知っている人はあまりいない。ここに、《起源室/Genesis Chamber》の拡大されたイラスト。
小さな文字が構築物のふちに彫りこまれているのが見える。
より興味深いことに、なんと《Black Lotus》のイラストを拡大するとポップ歌手の代表であるブリトニー・スピアーズの顔を見つけることが出来る!
さらに驚くべきことは、このカードが描かれたときスピアーズ女史はまだ12歳に過ぎなかったにも関わらず、イラストレーターのChristopher Rush氏は21世紀に見られるであろう外見で彼女を描いているのだ。これは凄い!ここに、《Black Lotus》の拡大されたイラスト。
花びらにブリトニー・スピアーズの顔が見える。
ネタに協力してくれたJen Pageに感謝。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
Card of the Day - 2011/03/23
2011年3月23日 Card of the Day電位式キー/Galvanic Key - ミラディン コモンGalvanic Key / 電位式キー (2)
アーティファクト
瞬速
(3),(T):アーティファクト1つを対象とし、それをアンタップする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Galvanic+Key/
その名称がアレッサンドロ・ヴォルタ(註1)ではなくルイージ・ガルヴァーニ(註2)にちなんでいることを除けば、《電位式キー/Galvanic Key》は《通電式キー/Voltaic Key》のリメイクと言える。
それとも、もしかしたら18世紀頃のイタリアにいた物理学者たちの名前は関係なく、単に電気に関係した単語(註3)を用いているだけに過ぎないのかもしれない。
そのほうがあり得そうな話ではある。
(註1) アレッサンドロ・ヴォルタ
記事にあるように18世紀のイタリアにいた物理学者。電気に関する研究を行った。電圧の単位がボルトなのは彼の功績を賞してのこと。
参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%82%BF
(註2) ルイージ・ガルヴァーニ
記事にあるように18世紀のイタリアにいた物理学者。電気に関する研究を行った。彼の研究内容を元にアレッサンドロ・ヴォルタが作ったのが今の電池の祖となる存在である、ガルヴァーニ電池。
参照:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%8B
(註3) 電気に関係した単語
以下、余談。
「Galvanic」を名前に含むカードは3枚で「感電」や「電位式」などと訳されている。またGalvanizerという単語もあり、これは「感電者」と訳されている。
「Voltaic」を名前に含むカードは2枚でそれぞれ「通電式」と訳されている。またHypervoltという単語もあり、これは「超電撃」と訳されている。さらに非英語のカードも見ると「Arc」のスペイン語訳が「Voltaico」となっている(例:《Arc Mage》が《Mago Voltaico》)。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
Card of the Day - 2011/03/24
2011年3月24日 Card of the Day後陣のマイア/Omega Myr - ミラディン コモンOmega Myr / 後陣のマイア (2)
アーティファクト クリーチャー - マイア(Myr)
1/2
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Omega+Myr/
《先陣のマイア/Alpha Myr》は2/1であり、《後陣のマイア/Omega Myr》は1/2である。
もし《Beta Myr》から《Psi Myr》までが実在したとしても(註1)、残念ながら彼らのパワーとタフネスを表すのに必要な数字はマジックでは用いることができない。(註2)
(註1) 《Beta Myr》から《Psi Myr》
「Alpha/アルファ」と「Omega/オメガ」というのはギリシャ文字の最初と最後の文字であり、それぞれ英語で言うところの「A/エー」と「Z/ゼット」、日本語で言うところの「あ」と「ん」。
同様に「Beta/ベータ」はギリシャ文字の2文字目、「Psi/プサイ」は最後から2番目の文字。
(註2) マジックでは用いることができない
マジックはゲーム内で整数しか用いないという原則がある。
しかし銀枠の世界では分母が2の分数のみ認めるということになっている(アンヒンジドのFAQを参照のこと(註3))。つまり、ちょうど真ん中の文字のパワーとタフネスは「1.5/1.5」になるはずなので銀枠の世界でなら存在できる……かというと、残念ながらこれまた無理。
ギリシャ文字は24個、つまり偶数個なのでちょうど真ん中に当たる文字が存在しない。
(註3) アンヒンジドのFAQ
邦訳版は以下のリンク先を参照のこと。なもなも。
http://mjmj.info/data/obsolete/faq_unh_j.html
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
Card of the Day - 2011/03/25
2011年3月25日 Card of the Day災難の塔/Tower of Calamities - ミラディンの傷跡 レアTower of Calamities / 災難の塔 (4)
アーティファクト
(8),(T):クリーチャー1体を対象とする。災難の塔はそれに12点のダメージを与える。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Tower+of+Calamities/
昔、ミラディンには「塔」のカードが4枚あった(註1)。多少時間はかかったが、ミラディンの傷跡が《災難の塔/Tower of Calamities》でサイクルを完成させた。
(註1) 「塔」のカード
ミラディンに収録されていたのは以下の4枚。全て《災難の塔/Tower of Calamities》と同じく、出すのに4マナかかり、8マナ+タップで起動する。
《王者の塔/Tower of Champions》
ライフを10点回復。
《永劫の塔/Tower of Eons》
対象のクリーチャーを+6/+6する。
《運命の塔/Tower of Fortunes》
カードを4枚引く。
《つぶやきの塔/Tower of Murmurs》
対象のライブラリーを8枚削る。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
カードアドバンテージとは?:初級編/Card Advantage: A Brief Overview
Steve Sadin
2011年03月15日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/li/134
カードアドバンテージとはマジックの用語の中でも特に誤解されがちな言葉の1つだ。
そこでまず簡単な定義から始めよう。
一連のプレイ(もしくは決断)の結果、あるプレイヤーが1枚かそれ以上のカードを増やせていたら(訳注:対戦相手の総カード枚数と比べて相対的に増やせていたら)、そのプレイヤーはカードアドバンテージを得たと言える。
シンプルだろう?
では今度は実際のプレイからいくつかカードアドバンテージの例を見てみよう。
《真っ二つ/Slice in Twain》のようなカードは明らかにカードアドバンテージを得られるカードだ。君は対戦相手のカードを破壊しつつ、カードを1枚引ける。
似たような例として、《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》は場に影響を与えつつ自身の分のカードを補填できる。またしてもカードアドバンテージを得られるカードを発見できたわけだ。
《核への投入/Into the Core》は対戦相手のアーティファクトを2つも除去することが可能で、君に大きな優位を与えてくれる。
しかし、もし君の対戦相手が1つしかアーティファクトを持っておらず、かつそれを除去しなければならないとき、つまり対戦相手のアーティファクトに加えて君自身のアーティファクトを1つ失うことを強いられたとすると《核への投入/Into the Core》はカードディスアドバンテージを生み出す。
このような状況はそうそう起こることではないかもしれないが、もし対戦相手の元に君をねめつける《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》がおり(かつそれが相手の唯一のアーティファクトであったとき)、君は自分の《皮剥ぎの鞘/Flayer Husk》と相手の5/5飛行をゲームから除外することに躊躇することはほとんどないだろう。
《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》は適切な状況下でなら君にカード1枚(もしくはそれ以上)の優位を与えてくれるが、土地が足りない、もしくはもっと実益のあるカードが必要という理由でサイクリング同様の用い方をせざるを得ないときもたくさんある。
さらに言うと、対戦相手の除去呪文によって君が《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》を唱えようとしていた対象のクリーチャーが殺されてしまう、という形で対戦相手にアドバンテージを得る機会を与えてしまうという状況すらありえる。
もし《巨大化/Giant Growth》に対応して相手の《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》に君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込めば、結果としてカード1枚分のアドバンテージだ。
もし《審判の日/Day of Judgment》で君のクリーチャー1体と相手のクリーチャー5体を流せば、君は多大なるカードアドバンテージを得る。
もし《青の太陽の頂点/Blue Sun’s Zenith》をX=4で唱えれば、相当数のカード枚数を引ける。
もし《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》と対戦相手のクリーチャー2体を戦闘で交換することができれば、君はカードアドバンテージを得たと言える。
その通りだ。
《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のようなバニラクリーチャーですらカードアドバンテージを生み出すことが出来るのだ。
なぜなら《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》はそのサイズおよびその非アーティファクトという性質によってミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて対処できるカードが非常に限られており、複数のカードを合わせることなく除去することは難しい。
もちろん、ときには《喉首狙い/Go for the Throat》、《病気の拡散/Spread the Sickness》、《拘引/Arrest》、《決断の手綱/Volition Reins》、《堕落した良心/Corrupted Conscience》、《金屑化/Turn to Slag》などで場に出たこの緑の6/5を対処されてしまうこともあるが、逆にこれら以外のカードには対処出来ないということでもある。
君の対戦相手が、貴重な除去呪文や、同じくらい驚異的なクリーチャーや、どデカい装備品などをその手札いっぱいに抱えているのでもない限り、相手は《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》の進行方向に何枚かのカードを差し出すことでしか恐竜の絶滅を早める手立てはないのだ。
カードの質(Card Quality)について
人々はしばしばカードの質(Card Quality)によるアドバンテージと、カードアドバンテージ(Card Advantage)の違いを混同することがある。
カードの質によるアドバンテージを、カードアドバンテージやその他のアドバンテージ(ボードやテンポ)へと結びつけることは可能だ。いや、可能というか、多くの場合はイコールだ。
しかし君が対戦相手より「より良い」もしくは「よりデカい」カードをプレイすることが、そのまま継続的なアドバンテージを得ているということではない、ということも絶対的な事実だ。
もし君が「土地、2マナの3/3、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしており、対戦相手が「土地、2マナの2/2、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしていたとしよう。
この場合、君のクリーチャーが相手より「カードの質が高い」という点に大した意味はない。
もちろんこのマッチアップは君に大きく有利だ。なぜなら君のデッキのカードの大半は対戦相手のそれよりも強いのだから。しかし君のカードの質によるアドバンテージを持ってしても五分五分の勝負にすら持ち込めない試合展開だって何通りもあり得る。
もし対戦相手の手札に《稲妻/Lightning Bolt》があふれかえっており、単純に君を焼き殺せるとしたら、君のカードの質によるアドバンテージには何も意味もない。
もし君と対戦相手が、互いに出てくるクリーチャーを《稲妻/Lightning Bolt》片端から焼き殺していくような試合展開であれば、単に相手より多く呪文を引いたほうが勝つだろう。これまたカードの質によるアドバンテージには何の価値も無い。
また、カードの質によるアドバンテージに感謝することがあっても、カードアドバンテージを得られるような状況というのは滅多にない。あるとすれば、君の3/3を相手の2/2がチャンプブロックしたときか、3/3を相手が2体の2/2でブロックした際に片方の2/2へ君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込んだときくらいのものだ。
さて、また現実に目を向けてみよう。
目にする多くの交換の中で、弱いカードで強いカードを討ち取るのも見ることになるだろうし、これはこれで価値のあることだが、これらをカードアドバンテージと混同してはならない。
君がドラフトの後半でピックした《オーガの抵抗者/Ogre Resister》が相手の初手ピックの《エズーリの大部隊/Ezuri’s Brigade》と相打ちをとれたからといって、実際には君はカードアドバンテージを得てはいない。
君の場を一掃せんばかりだった《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》を《粉砕/Shatter》で破壊した場合、君は対戦相手がカードアドバンテージを得る機会を防いではいるが、君自身がそこから何らかのカードを得たわけではない。
対戦相手が君の《きらめく鷹/Glint Hawk》に向かって《喉首狙い/Go for the Throat》を唱えたことで、君が今からプレイしようと思っていた《不退転の大天使/Indomitable Archangel》の生存する可能性が上がったことは嬉しいことかもしれないが、それでも君と対戦相手のあいだで1対1の交換を行われたことは事実なのだ。
仮想的なカードアドバンテージ
ゲーム開始前の決断すらカードアドバンテージにつなげることができる。
もし君がアーテイファクトもエンチャントも入っていないデッキをプレイし、対戦相手の手札に《粉砕/Shatter》がいっぱいだった場合、君は対戦相手の手札を無駄カードに変えることでカードアドバンテージを得ている。
(注意して欲しいのは、この手のカードアドバンテージというのは純粋なカードアドバンテージとは異なるということだ。なぜなら君の対戦相手は物理的には一切その手札のカードを失っていない。しかし相手の手札に使い道のないカードがあるという事実は、カードの枚数差で君がアドバンテージを得ていることに他ならない)
そのため、ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡という環境でアーティファクトを一切含まないデッキを作れそうであれば、君はぜひともそうしたいと考えるだろう。
アーティファクトがあまりに多すぎたり、1枚か2枚かのアーティファクトに試合を決めるだけの力があるのでも無い限り、アーティファクトをサイドボードに押しやっておくことで対戦相手の《粉砕/Shatter》たちを無駄カードにするのが得策となるはずだ。
わずかなカードアドバンテージ
もし君が戦闘中に《主の呼び声/Master’s Call》を唱えて、対戦相手の《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と片方のトークンを相打ちさせることが出来れば、君はカード1/2枚分の得をしたことになる。
ここで得られるアドバンテージは《腐敗狼/Rot Wolf》で《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と相打ちをとりつつカードを引けた場合に比べると、大して印象深いものでもなければ、その後の展開に活かしやすいアドバンテージでもない。
しかしそれでも君はこの交換から、結果として確かなアドバンテージを得ているのだ。
こういった取るに足らないように見えるアドバンテージは積み重なると無視できないものであり、決して軽々しく取り扱うべきものではない。
場に残ったその1/1トークンがタダ同然で手に入ったからといって、また、すでにもう片方の1/1トークンで相手のカード1枚と交換を済ませているからといって、残ったトークンをどうでもよい機会に手ごろなチャンプブロッカーとして気軽に消費してよいわけではない。
そのカード(もしくはトークン)の入手方法は重要ではない。
一度、それが手札や場に加わった以上、君は他のリソースと同等の敬意をもってそれを扱うべきなのだ。この先に待っている戦闘について作戦を練るとき、その1/1マイアトークンで出来ることを考えるべきだ。
もしかしたら、それのもっとも有用な使い道は、このあとやってくるであろう《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のチャンプブロッカーとしてかもしれない。
それとも、1ターン待って装備品をつける先なのかもしれない。
それとも、2ターン後のダブルブロックの片割れとして使うべきなのかもしれない。
それとも……?
重要なことは、その得られたリソースに関して「この先、何ができるか」であり「過去にどうやってそれを得たか」ではないということだ。
最大限の利益を得るには
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドでは、単純な2対1交換は敵味方で1回ずつ行われることによりそこから得られたアドバンテージを相殺する。
もちろん《病的な略取/Morbid Plunder》が相手に引導を渡すこともあるし、《死体の野犬/Corpse Cur》や《生体解剖/Vivisection》によって得られるアドバンテージは相手にとってなかなかに壊滅的だ。
しかしこれらのカードから君が得たアドバンテージは、対戦相手が似たようなカードを用いたり、単により多い枚数の呪文を引くことで簡単に打ち消せる。
もし私が《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》を唱えて、その数ターン後に私の《ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut》を君が《真っ二つ/Slice in Twain》したら、カードアドバンテージは平らになる。
《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》、《真っ二つ/Slice in Twain》、《病的な略取/Morbid Plunder》やそういったカードたちはなかなか良いものではあるけれど、君はそれらを単体で用いた際に得られるアドバンテージだけを頼りにゲームを勝利することはできない。特にそれらを向こう見ずに使った場合はなおさらだ。
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて劇的なカードアドバンテージを得る手段はあまりない。そのため、アドバンテージを得られる機会を全て逃さずに生かすことが非常に重要になってくる。
4ターン目に出てきた相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を《真っ二つ/Slice in Twain》することもできるが、君はそのほんの数ターン先に対戦相手が戦場に《飛行機械の組立工/Thopter Assembly》を叩きつけた際に、最初の決断を心から後悔することになるだろう。
確かに《真っ二つ/Slice in Twain》は対戦相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を除去しつつ君にカード1枚分のアドバンテージを与えてくれる。
しかし、対処しなければ負けが確定するようなカードを対戦相手が自ら死刑台に置いてくれるのを待つことでも、君は1枚分のカードアドバンテージを得ることは出来るし、かつこの場合は必死に新たな解決方法を探す必要も無い。
似たような例として、対象となるカードがそろったからといってすぐに《病的な略取/Morbid Plunder》を唱えたいという人はあまりいないだろう。
もちろん、単にそうしなければ次のターンには負けてしまうため場の緊張を保つために唱えざるを得ないという状況もある。
しかし対戦相手が自らのリソースをほとんど使い果たしつつ君のクリーチャーを焼き払ってくれるのを待ってから、あらためて最も脅威となる2体を手札に戻せば、大体の場合、勝ちは約束されたようなものだ。
後に残るアドバンテージについて
例えば《生体解剖/Vivisection》のようなカードは即座に君にカードアドバンテージを与えてはくれるが、それに対して本当に必要なものを得るのにかかる時間は余分に必要になっているし、他のカードも必要だ。
慣れてないプレイヤーの目には《光明の大砲/Lux Cannon》はゲームを通じて莫大なカードアドバンテージを与えてくれるカードに見えるだろう。
確かに《光明の大砲/Lux Cannon》は君にカードアドバンテージを与えてくれるが、実際に稼動し始めるまでには長い時間がかかる(それだけでなく再度起動させるのにも長い時間がかかる)。
もちろんこの大砲を2回以上起動させることが出来ればおそらく負けることはないだろう。しかし他のどんなフィニッシャーでも、相手に対処されないのであれば、同じ結果が得られるはずだ。
そのようなわけで適切な環境下で用いられる《光明の大砲/Lux Cannon》は確かに有用だが、このカードがカードアドバンテージを得るのに適したリソースだとは考えないほうがいい。
その一方で、出した直後に壊されずに済んだ生体武器が与えてくれるアドバンテージはなかなか頼りになるものだ。
細菌トークンを相手のクリーチャーと相打ちさせた時点で君は1枚分のカードアドバンテージを得ている。なぜなら君の手元には好きに使ってよい装備品が残されているからだ。
もし残された生体武器の装備品を効果的に装備させる機会がなければそのアドバンテージには何も意味もない。しかし、もし《皮羽根/Skinwing》のおかげで空からのクロックで対戦相手を打ちのめすことができたり、《縒り糸歩き/Strandwalker》のおかげで場の優位を固めることが出来たなら、なかなかいい感じに試合を進められるのではないだろうか。
その他のアドバンテージについて
カードアドバンテージとは具体的に何を指すのかについて理解することは大事なことだ。
さらに、同じくらい重要なのは、マジックにおいてアドバンテージを得る手段はカードアドバンテージ以外にもあるということ、そして常にカードアドバンテージが最も重要とは限らないということだ。
結局のところ、何枚カードが引けたとしても、君自身が生きていなければ何の意味もないのだから。
Steve Sadin
2011年03月15日
元記事:http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/li/134
訳注:初めに。このコラムはリミテッド情報に関するアーカイブに含まれる記事であり、基本的にリミテッド環境に置いて発生しうるケースを想定している。
カードアドバンテージとはマジックの用語の中でも特に誤解されがちな言葉の1つだ。
そこでまず簡単な定義から始めよう。
一連のプレイ(もしくは決断)の結果、あるプレイヤーが1枚かそれ以上のカードを増やせていたら(訳注:対戦相手の総カード枚数と比べて相対的に増やせていたら)、そのプレイヤーはカードアドバンテージを得たと言える。
シンプルだろう?
では今度は実際のプレイからいくつかカードアドバンテージの例を見てみよう。
《真っ二つ/Slice in Twain》のようなカードは明らかにカードアドバンテージを得られるカードだ。君は対戦相手のカードを破壊しつつ、カードを1枚引ける。
似たような例として、《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》は場に影響を与えつつ自身の分のカードを補填できる。またしてもカードアドバンテージを得られるカードを発見できたわけだ。
《核への投入/Into the Core》は対戦相手のアーティファクトを2つも除去することが可能で、君に大きな優位を与えてくれる。
しかし、もし君の対戦相手が1つしかアーティファクトを持っておらず、かつそれを除去しなければならないとき、つまり対戦相手のアーティファクトに加えて君自身のアーティファクトを1つ失うことを強いられたとすると《核への投入/Into the Core》はカードディスアドバンテージを生み出す。
このような状況はそうそう起こることではないかもしれないが、もし対戦相手の元に君をねめつける《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》がおり(かつそれが相手の唯一のアーティファクトであったとき)、君は自分の《皮剥ぎの鞘/Flayer Husk》と相手の5/5飛行をゲームから除外することに躊躇することはほとんどないだろう。
《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》は適切な状況下でなら君にカード1枚(もしくはそれ以上)の優位を与えてくれるが、土地が足りない、もしくはもっと実益のあるカードが必要という理由でサイクリング同様の用い方をせざるを得ないときもたくさんある。
さらに言うと、対戦相手の除去呪文によって君が《テル=ジラードの抵抗/Tel-Jilad Defiance》を唱えようとしていた対象のクリーチャーが殺されてしまう、という形で対戦相手にアドバンテージを得る機会を与えてしまうという状況すらありえる。
もし《巨大化/Giant Growth》に対応して相手の《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》に君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込めば、結果としてカード1枚分のアドバンテージだ。
もし《審判の日/Day of Judgment》で君のクリーチャー1体と相手のクリーチャー5体を流せば、君は多大なるカードアドバンテージを得る。
もし《青の太陽の頂点/Blue Sun’s Zenith》をX=4で唱えれば、相当数のカード枚数を引ける。
もし《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》と対戦相手のクリーチャー2体を戦闘で交換することができれば、君はカードアドバンテージを得たと言える。
その通りだ。
《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のようなバニラクリーチャーですらカードアドバンテージを生み出すことが出来るのだ。
なぜなら《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》はそのサイズおよびその非アーティファクトという性質によってミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて対処できるカードが非常に限られており、複数のカードを合わせることなく除去することは難しい。
もちろん、ときには《喉首狙い/Go for the Throat》、《病気の拡散/Spread the Sickness》、《拘引/Arrest》、《決断の手綱/Volition Reins》、《堕落した良心/Corrupted Conscience》、《金屑化/Turn to Slag》などで場に出たこの緑の6/5を対処されてしまうこともあるが、逆にこれら以外のカードには対処出来ないということでもある。
君の対戦相手が、貴重な除去呪文や、同じくらい驚異的なクリーチャーや、どデカい装備品などをその手札いっぱいに抱えているのでもない限り、相手は《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》の進行方向に何枚かのカードを差し出すことでしか恐竜の絶滅を早める手立てはないのだ。
カードの質(Card Quality)について
人々はしばしばカードの質(Card Quality)によるアドバンテージと、カードアドバンテージ(Card Advantage)の違いを混同することがある。
カードの質によるアドバンテージを、カードアドバンテージやその他のアドバンテージ(ボードやテンポ)へと結びつけることは可能だ。いや、可能というか、多くの場合はイコールだ。
しかし君が対戦相手より「より良い」もしくは「よりデカい」カードをプレイすることが、そのまま継続的なアドバンテージを得ているということではない、ということも絶対的な事実だ。
もし君が「土地、2マナの3/3、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしており、対戦相手が「土地、2マナの2/2、《稲妻》」しか詰め込まれていないデッキをプレイしていたとしよう。
この場合、君のクリーチャーが相手より「カードの質が高い」という点に大した意味はない。
もちろんこのマッチアップは君に大きく有利だ。なぜなら君のデッキのカードの大半は対戦相手のそれよりも強いのだから。しかし君のカードの質によるアドバンテージを持ってしても五分五分の勝負にすら持ち込めない試合展開だって何通りもあり得る。
もし対戦相手の手札に《稲妻/Lightning Bolt》があふれかえっており、単純に君を焼き殺せるとしたら、君のカードの質によるアドバンテージには何も意味もない。
もし君と対戦相手が、互いに出てくるクリーチャーを《稲妻/Lightning Bolt》片端から焼き殺していくような試合展開であれば、単に相手より多く呪文を引いたほうが勝つだろう。これまたカードの質によるアドバンテージには何の価値も無い。
また、カードの質によるアドバンテージに感謝することがあっても、カードアドバンテージを得られるような状況というのは滅多にない。あるとすれば、君の3/3を相手の2/2がチャンプブロックしたときか、3/3を相手が2体の2/2でブロックした際に片方の2/2へ君が《稲妻/Lightning Bolt》を撃ち込んだときくらいのものだ。
さて、また現実に目を向けてみよう。
目にする多くの交換の中で、弱いカードで強いカードを討ち取るのも見ることになるだろうし、これはこれで価値のあることだが、これらをカードアドバンテージと混同してはならない。
君がドラフトの後半でピックした《オーガの抵抗者/Ogre Resister》が相手の初手ピックの《エズーリの大部隊/Ezuri’s Brigade》と相打ちをとれたからといって、実際には君はカードアドバンテージを得てはいない。
君の場を一掃せんばかりだった《鋼のヘルカイト/Steel Hellkite》を《粉砕/Shatter》で破壊した場合、君は対戦相手がカードアドバンテージを得る機会を防いではいるが、君自身がそこから何らかのカードを得たわけではない。
対戦相手が君の《きらめく鷹/Glint Hawk》に向かって《喉首狙い/Go for the Throat》を唱えたことで、君が今からプレイしようと思っていた《不退転の大天使/Indomitable Archangel》の生存する可能性が上がったことは嬉しいことかもしれないが、それでも君と対戦相手のあいだで1対1の交換を行われたことは事実なのだ。
仮想的なカードアドバンテージ
ゲーム開始前の決断すらカードアドバンテージにつなげることができる。
もし君がアーテイファクトもエンチャントも入っていないデッキをプレイし、対戦相手の手札に《粉砕/Shatter》がいっぱいだった場合、君は対戦相手の手札を無駄カードに変えることでカードアドバンテージを得ている。
(注意して欲しいのは、この手のカードアドバンテージというのは純粋なカードアドバンテージとは異なるということだ。なぜなら君の対戦相手は物理的には一切その手札のカードを失っていない。しかし相手の手札に使い道のないカードがあるという事実は、カードの枚数差で君がアドバンテージを得ていることに他ならない)
そのため、ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡という環境でアーティファクトを一切含まないデッキを作れそうであれば、君はぜひともそうしたいと考えるだろう。
アーティファクトがあまりに多すぎたり、1枚か2枚かのアーティファクトに試合を決めるだけの力があるのでも無い限り、アーティファクトをサイドボードに押しやっておくことで対戦相手の《粉砕/Shatter》たちを無駄カードにするのが得策となるはずだ。
わずかなカードアドバンテージ
もし君が戦闘中に《主の呼び声/Master’s Call》を唱えて、対戦相手の《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と片方のトークンを相打ちさせることが出来れば、君はカード1/2枚分の得をしたことになる。
ここで得られるアドバンテージは《腐敗狼/Rot Wolf》で《ファイレクシアの破棄者/Phyrexian Revoker》と相打ちをとりつつカードを引けた場合に比べると、大して印象深いものでもなければ、その後の展開に活かしやすいアドバンテージでもない。
しかしそれでも君はこの交換から、結果として確かなアドバンテージを得ているのだ。
こういった取るに足らないように見えるアドバンテージは積み重なると無視できないものであり、決して軽々しく取り扱うべきものではない。
場に残ったその1/1トークンがタダ同然で手に入ったからといって、また、すでにもう片方の1/1トークンで相手のカード1枚と交換を済ませているからといって、残ったトークンをどうでもよい機会に手ごろなチャンプブロッカーとして気軽に消費してよいわけではない。
そのカード(もしくはトークン)の入手方法は重要ではない。
一度、それが手札や場に加わった以上、君は他のリソースと同等の敬意をもってそれを扱うべきなのだ。この先に待っている戦闘について作戦を練るとき、その1/1マイアトークンで出来ることを考えるべきだ。
もしかしたら、それのもっとも有用な使い道は、このあとやってくるであろう《最上位のティラナックス/Alpha Tyrranax》のチャンプブロッカーとしてかもしれない。
それとも、1ターン待って装備品をつける先なのかもしれない。
それとも、2ターン後のダブルブロックの片割れとして使うべきなのかもしれない。
それとも……?
重要なことは、その得られたリソースに関して「この先、何ができるか」であり「過去にどうやってそれを得たか」ではないということだ。
最大限の利益を得るには
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドでは、単純な2対1交換は敵味方で1回ずつ行われることによりそこから得られたアドバンテージを相殺する。
もちろん《病的な略取/Morbid Plunder》が相手に引導を渡すこともあるし、《死体の野犬/Corpse Cur》や《生体解剖/Vivisection》によって得られるアドバンテージは相手にとってなかなかに壊滅的だ。
しかしこれらのカードから君が得たアドバンテージは、対戦相手が似たようなカードを用いたり、単により多い枚数の呪文を引くことで簡単に打ち消せる。
もし私が《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》を唱えて、その数ターン後に私の《ファイレクシアの巨大戦車/Phyrexian Juggernaut》を君が《真っ二つ/Slice in Twain》したら、カードアドバンテージは平らになる。
《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》、《真っ二つ/Slice in Twain》、《病的な略取/Morbid Plunder》やそういったカードたちはなかなか良いものではあるけれど、君はそれらを単体で用いた際に得られるアドバンテージだけを頼りにゲームを勝利することはできない。特にそれらを向こう見ずに使った場合はなおさらだ。
ミラディン包囲戦&ミラディンの傷跡のリミテッドにおいて劇的なカードアドバンテージを得る手段はあまりない。そのため、アドバンテージを得られる機会を全て逃さずに生かすことが非常に重要になってくる。
4ターン目に出てきた相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を《真っ二つ/Slice in Twain》することもできるが、君はそのほんの数ターン先に対戦相手が戦場に《飛行機械の組立工/Thopter Assembly》を叩きつけた際に、最初の決断を心から後悔することになるだろう。
確かに《真っ二つ/Slice in Twain》は対戦相手の《貫く徘徊者/Pierce Strider》を除去しつつ君にカード1枚分のアドバンテージを与えてくれる。
しかし、対処しなければ負けが確定するようなカードを対戦相手が自ら死刑台に置いてくれるのを待つことでも、君は1枚分のカードアドバンテージを得ることは出来るし、かつこの場合は必死に新たな解決方法を探す必要も無い。
似たような例として、対象となるカードがそろったからといってすぐに《病的な略取/Morbid Plunder》を唱えたいという人はあまりいないだろう。
もちろん、単にそうしなければ次のターンには負けてしまうため場の緊張を保つために唱えざるを得ないという状況もある。
しかし対戦相手が自らのリソースをほとんど使い果たしつつ君のクリーチャーを焼き払ってくれるのを待ってから、あらためて最も脅威となる2体を手札に戻せば、大体の場合、勝ちは約束されたようなものだ。
後に残るアドバンテージについて
例えば《生体解剖/Vivisection》のようなカードは即座に君にカードアドバンテージを与えてはくれるが、それに対して本当に必要なものを得るのにかかる時間は余分に必要になっているし、他のカードも必要だ。
慣れてないプレイヤーの目には《光明の大砲/Lux Cannon》はゲームを通じて莫大なカードアドバンテージを与えてくれるカードに見えるだろう。
確かに《光明の大砲/Lux Cannon》は君にカードアドバンテージを与えてくれるが、実際に稼動し始めるまでには長い時間がかかる(それだけでなく再度起動させるのにも長い時間がかかる)。
もちろんこの大砲を2回以上起動させることが出来ればおそらく負けることはないだろう。しかし他のどんなフィニッシャーでも、相手に対処されないのであれば、同じ結果が得られるはずだ。
そのようなわけで適切な環境下で用いられる《光明の大砲/Lux Cannon》は確かに有用だが、このカードがカードアドバンテージを得るのに適したリソースだとは考えないほうがいい。
その一方で、出した直後に壊されずに済んだ生体武器が与えてくれるアドバンテージはなかなか頼りになるものだ。
細菌トークンを相手のクリーチャーと相打ちさせた時点で君は1枚分のカードアドバンテージを得ている。なぜなら君の手元には好きに使ってよい装備品が残されているからだ。
もし残された生体武器の装備品を効果的に装備させる機会がなければそのアドバンテージには何も意味もない。しかし、もし《皮羽根/Skinwing》のおかげで空からのクロックで対戦相手を打ちのめすことができたり、《縒り糸歩き/Strandwalker》のおかげで場の優位を固めることが出来たなら、なかなかいい感じに試合を進められるのではないだろうか。
その他のアドバンテージについて
カードアドバンテージとは具体的に何を指すのかについて理解することは大事なことだ。
さらに、同じくらい重要なのは、マジックにおいてアドバンテージを得る手段はカードアドバンテージ以外にもあるということ、そして常にカードアドバンテージが最も重要とは限らないということだ。
結局のところ、何枚カードが引けたとしても、君自身が生きていなければ何の意味もないのだから。
今週のCard of the Day (2011年03月 第4週) とか
2011年3月27日 週のまとめ写真は中東のおもちゃ屋さんで見かけたボードゲーム「Cosmic Encounter」。リチャード博士のコラムによく登場するイメージがある。先週のコラムにも出てきてた。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ
月曜日の《虚空の杯/Chalice of the Void》と火曜日の《金属モックス/Chrome Mox》を見たときには「点数で見たマナコストが0点のアーティファクトかな」と推測して、水曜日の《電位式キー/Galvanic Key》であえなく撃沈。
新たに、個人名に紐づくネタなのかもしれない(月曜日 ゲリー・ワイズ、火曜日 ブリトニー・スピアーズ、水曜日 ルイージ・ガルヴァーニ)、と推測して、木曜日の《後陣のマイア/Omega Myr》に裏切られる。
単にミラディン時代のアーティファクトに関するネタなのか、と分かったふりをしてたら金曜日はミラディンの傷跡のカードでフィニッシュ。
余談2:《災難の塔/Tower of Calamities》
ミラディンに収録されていた4枚の塔カードに、ミラディンの傷跡5枚目の塔カードが加わったことでサイクルが完成、とあるけれど、5色の対応がイマイチしっくりこない。
いや、公式にどれがどの色と決まっているわけではないみたいなので、あくまで類推に過ぎないんだけど、以下のような感じ?
白 《王者の塔/Tower of Champions》
ライフを10点回復。
青 《運命の塔/Tower of Fortunes》
カードを4枚引く。
黒 《つぶやきの塔/Tower of Murmurs》
対象のライブラリーを8枚削る。
赤 《災難の塔/Tower of Calamities》
対象のクリーチャーに12点のダメージ。
緑 《永劫の塔/Tower of Eons》
対象のクリーチャーを+6/+6する。
何が気になってるかというと、黒(?)の《つぶやきの塔/Tower of Murmurs》。「つぶやき/Murmurs」という名前からして黒のカードだとは思うんだけど、対象を指定せずにただライブラリを削るという効果がどうにも黒というより青っぽい気がしてしまう。
なんというか、ライブラリを無作為にただ公開させる(墓地に落とす)という効果は「冷血に学術的興味から相手の知識をさらけださせて観察する」というイメージが個人的にはあって、これは青なんでないかなあ、という話。
対して黒は、まさに《Duress/脅迫》のフレイバーテキストである「心配しなくていいよ。 お前の秘密を全部奪うつもりはない。 一番大事なやつだけさ」のとおりに、相手が失いたくない知識や記憶を(プレイヤーが選んで)奪うことで力を誇示するイメージ。
余談3:史上初の大乱闘戦について/Lost in the Shuffle: Grand Melee
トレーディングカードゲームが全盛期のとき、この記事にあるように身内で独自ルールを作り、多人数対戦を試みたことが何度かあった。マジックでも「3対3のエンペラー戦」や「対角線上の2人を倒す5人対戦」など色々やったし、モンスターコレクションでも2対2の試合が出来ないかどうか試した気がする。
んで、総当り戦的な試合形式にすると、まさに今回の記事でリチャード博士がおっしゃっているように、互いに防御的な構えに入ってだらだらと間延びした試合になってしまうことが多かった。
大乱闘戦/Grand Meleeなら、確かに生き延びるだけ生き延びることに尽くしても最終的にはたった1.5点しか獲得できず、2人以上の左隣を退場させたプレイヤーに勝てないから、そりゃまあ攻撃的にもなる。楽しそうだな。
なお個人的に読んでいて楽しく、かつ訳すのも楽しかったのは、試合の名シーン(迷シーン?)たち。《因果応報/Karma》に対処できたと思いきや、さらに2枚の《因果応報/Karma》があった話とか《赤の防御円/Circle of Protection: Red》の話とか。
そしてリチャード博士の真骨頂とも言える「考察」という意味では、文末近くにある「実際のところ、勝者と敗者の差とは、プレイヤーたちのいる戦場が新たな局面を迎えるたびに、その手の届く限られた範囲の動静をどれだけ早く把握しきることが出来たかどうか、であった」が印象深い。試合中に変化するメタ・ゲームを的確に分析できるかどうか、って話かな。
余談4:公式サイト「今週のリプレイ!」
公式ページで連載している「鍛冶友浩の『今週のリプレイ!』」が毎週楽しみ。中東のネットワークだと5分の動画をロードするのに10分以上かかったりするけれど、それでもリプレイで実際に「強いカードの強いところ」を見るのが楽しい。
会社に入ってからマジックに直接触れる機会が激減し、海外に駐在するようになってからは皆無に等しい状態。トッププレイヤーたちのデッキリストを眺めるのは簡単だけれど、それがどうして強いのか、どのように強いのか、というのがイマイチ分からない中で、リプレイ動画はとても嬉しい。
Youtubeに有志の方々がリプレイ動画を載せてくれていたりするけれど、イラストと効果が暗記できていない身としては場に出たカードが何なのか分からないことがあるのがつらい。
その点、鍛冶さんのリプレイは全画面表示すればちゃんとカードがテキストが読めるので、いちいち検索して調べる手間が省ける。その上、プレイング解説つき。ありがたやありがたや。
Card of the Day - 2011/03/28
2011年3月28日 Card of the Day稲妻のドラゴン/Lightning Dragon - ウルザズ・サーガ レアLightning Dragon / 稲妻のドラゴン (2)(赤)(赤)
クリーチャー - ドラゴン(Dragon)
飛行
エコー(2)(赤)(赤)(あなたのアップキープの開始時に、これが直前のあなたのアップキープの開始時よりも後にあなたのコントロール下になっていた場合、そのエコー・コストを支払わない限りそれを生け贄に捧げる。)
(赤):稲妻のドラゴンはターン終了時まで+1/+0の修整を受ける。
4/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Lightning+Dragon/
初めてプレミアムフォイル(註1)がブースターパックにランダムに封入されたセットはウルザズ・レガシーだ。
しかし、その1つ前のセット(註2)のプレリリースカードは《稲妻のドラゴン/Lightning Dragon》で、これがマジック史上初のプレミアムフォイル仕様のカードであった。
(註1) プレミアムフォイル
箔押しされたカード。原文の記事では Premium Foil 。日本語ではプレミアムカードやフォイルなど様々な名前で呼ばれている。
(註2) 1つ前のセット
ウルザズ・サーガのこと。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
Card of the Day - 2011/03/29
2011年3月29日 Card of the Day天啓/Revelation - クロニクル レアRevelation / 天啓 (緑)
ワールド・エンチャント
すべてのプレイヤーは、それぞれの手札を公開した状態でプレイする。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Revelation/
《天啓/Revelation》はワールド・エンチャント(元々はエンチャント・ワールドと呼ばれていたもの)だ。これは特殊なパーマネントで、次元カードのように働く。
ワールド・エンチャントの働きの全てを知りたいなら、この記事(註1)を参照してくれ。
(註1) この記事
リンク先は以下のURLで「ワールド・エンチャント」に関する記事。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/arcana/1365
【翻訳】ワールド・エンチャントについて/World Enchantments【Daily MTG】
2007年06月28日
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/arcana/1365
《法の定め/Rule of Law》は1ターンに唱えられる呪文数のルールを変更する。
《ラースの灼熱洞/Furnace of Rath》は呪文が与えるダメージのルールを変更する。
《栄華の儀式/Rites of Flourishing》はプレイヤーが土地をプレイできる枚数と毎ターン引くカードの枚数のルールを変更する。
ポイントは、新たなルールをもたらすエンチャントがマジックには大量にあるということだ。原文ではここに《絶望の荒野/Forsaken Wastes》のカードが表示されている。
ある特殊タイプの全体エンチャントは、最後に定められたルールを新たなルールで上書きする。
主にレジェンドとミラージュで登場し、ビジョンズやホームランドやアライアンスでも少し顔を出したその「エンチャント(ワールド)」は、その場に新たなルールをもたらすというフレイバーを持った全体エンチャントで、場に1枚しか存在できないという特別なルールを持っていた。
今では「ワールド・エンチャント」(=特殊タイプ「ワールド」を持つエンチャント)と呼ばれているこれらは「レジェンド/Legend」ルールに似た「ワールド/World」というルール(註)の影響下にあった。
例えば、《The Abyss》が卓に出された瞬間、それは単にクリーチャーを苦しめる空間を生み出すだけでなく、《調和の中心/Concordant Crossroads》や《Gravity Sphere》などすでにその場に影響を及ぼしていた既存の「ワールド・エンチャント」と置き換えられる。
イメージ的には「皆のもの、それらは古いルールだ。今ここに従うべき新たなルールがもたらされたのだ」という感じだ。原文ではここに《調和の中心/Concordant Crossroads》と《The Abyss》のカードが、以下のキャプションとともに表示されている。
キャプション:
新たなワールド・エンチャントが、喜びの声をもって迎えられることもある。
うめき声(黒のノンクリーチャーデッキ使い以外の)をもって迎えられることもある
「ワールド」の特殊タイプが廃止された主な理由は、それがもたらすルールの複雑性に見合うだけの価値をゲーム環境にもたらしてくれなかったためだ。
エンチャントが、自身を破壊するルールを内包しているというのは多くの場合単なる欠陥に過ぎなかったし、大半の「ワールド・エンチャント」が表現したかったことというのは単純な全体エンチャントで実現可能だったのだ。
付記しておくと、ゲーム内の扱いという意味においては「ワールド・エンチャント」と大して変わらない「伝説の・エンチャント」が神河ブロックで登場している。
神河の世界にある強い力を持ったいくつかのエンチャント(例えば《魂の裏切りの夜/Night of Souls’ Betrayal》や本殿/Hondenサイクル)は戦場に複数枚出されることを防ぐために「伝説の」特性を得た。
またフレイバー的な理由から「伝説の」特性を得たエンチャント・カードも何枚かある。例えば、5枚の基本土地のスピリットを代表する最上位の神《世界の源獣/Genju of the Realm》だ。
(註) 「ワールド/World」というルール
原文では「ワールド/World」について、公式ルールの文面(420.5i)が丸ごと引用されている。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
Card of the Day - 2011/03/30
2011年3月30日 Card of the Dayファイレクシア化/Phyresis - ミラディン包囲戦 コモンPhyresis / ファイレクシア化 (1)(黒)
エンチャント - オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは感染を持つ。(それは、クリーチャーに-1/-1カウンターの形でダメージを与え、プレイヤーに毒(poison)カウンターの形でダメージを与える。)
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Phyresis/
《ファイレクシア化/Phyresis》のフレイバーテキストに出てくる「compleat」という単語について補足しておく。
これは「complete」の誤植ではない。「compleat」は古風だが実在する単語であるというだけでなく、ファイレクシアにとっては特別な意味を持つ言葉だ。
ダグ・ベイヤーが最近書いたSavor the Flavorの記事(註1)の中で説明していたように、これはファイレクシアによって何かが「完璧」な状態へと変わったことを示す言葉なのだ。
(註1) Savor the Flavor
リンク先は以下のURL。タイトルは"A Linguistic Look at Besieged"(註2)。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/stf/128
(註2) "A Linguistic Look at Besieged"
日本語公式サイトに日本語訳がある。タイトルは"言語学から見るミラディン包囲戦"(註3)。言語とか語源とかが好きな人にオススメ。
http://mtg-jp.com/reading/translated/001124/
(註3) "言語学から見るミラディン包囲戦"
まさに「compleat」という言葉についての説明がなされている箇所がある。
以下、引用。
マジックにおいては、"Compleat"はまた動詞でもある―快い意味ではない。それは誰かがファイレクシア人となる過程を意味するか、もしくはファイレクシアによって「完璧となった」状態を指す。
引用元:http://mtg-jp.com/reading/translated/001124/
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
ピスタスの一撃/Pistus Strike - ミラディン包囲戦 コモンPistus Strike / ピスタスの一撃 (2)(緑)
インスタント
飛行を持つクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。それのコントローラーは毒(poison)カウンターを1個得る。
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Pistus+Strike/
2007年にDoug Beyerは《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》のイラストに何体のクリーチャーがいるか数えてみて、725匹(註1)という結論に達した。
《ピスタスの一撃/Pistus Strike》にはそれより多い数のクリーチャーがいるようにも見えるが、どちらにせよこのカードではアンヒンジドの例のカード(註2)をブロックすることはできないので、確認する必要は無い。
(註1) 725匹
リンク先は、2007年05月のAsk Wizards。質問は、《Our Market Research Shows That Players Like Really Long Card Names So We Made this Card to Have the Absolute Longest Card Name Ever Elemental》(註2)が1体のクリーチャーにブロックされたとき最大でいくつになるのか、というもの(註3)。
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/askwizards/0507#052507
(註2) アンヒンジドの例のカード
《Our Market Research Shows That Players Like Really Long Card Names So We Made this Card to Have the Absolute Longest Card Name Ever Elemental》のこと。略称は《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》。以下にカードテキストを引用しておく。
Our Market Research Shows That Players Like Really Long Card Names So We Made this Card to Have the Absolute Longest Card Name Ever Elemental (1)(緑)(緑)
クリーチャー - エレメンタル(Elemental)
イラストランページ2(これがいずれかのクリーチャーによってブロックされるたび、ブロックしているクリーチャーの絵の中の2体目以降のクリーチャー1体につき+2/+2の修整を受ける。)
2/2
引用元:http://mtgwiki.com/wiki/Our_Market_Research_Shows_That_Players_Like_Really_Long_Card_Names_So_We_Made_this_Card_to_Have_the_Absolute_Longest_Card_Name_Ever_Elemental
(註3) ~が1体のクリーチャーにブロックされたとき最大でいくつになるのか
以下、リンク先の記事(の中で今日のCard of the Dayで話題にされていたQ&A)の和訳。
Ask Wizards - May, 2007
2007年05月01日25日の質問
元記事:http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtgcom/askwizards/0507#052507質問:
アンヒンジドの《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》は、単体の
クリーチャーにブロックされたとき最大でどれくらい大きくなるの?
ジャスティンより(アメリカ、ミネソタ州)
回答者:Doug Beyer(マジック・クリエイティブチーム)
とても、とっても、とーっても大きくなるよ。
うん、これは、あれだね。
完璧に正しい回答をするには、あいまい検索機能と柔軟なファジー思考回路を持った近未来的マジックイラスト専用人工知能システム(写真記憶付き)が必要となるタイプの質問だね。アンヒンジドのカードだし。
残念ながらそのマシンは商品として店頭に置いてあって今は使わせてもらえない。そんなわけで、かわりに私が駆り出されてきたわけさ。
(そでをまくりあげる)
状況をおさらいしよう。
《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》は「イラストランページ2」を持ってる。だから「これがいずれかのクリーチャーによってブロックされるたび、ブロックしているクリーチャーの絵の中の2体目以降のクリーチャー1体につき+2/+2の修整を受ける」。
つまりこの問題を解くには、そのイラストにもっとも多くクリーチャーが描かれているクリーチャーを見つける必要があるってことだね。
まずルールを決めようか。このカードの意図するところ(だと私が思っている)がブレないようにね。
まず1つ目、クリーチャーは実際にイラストに描かれているもののみ数える。示唆しているだけではダメだ。何らかの手段でクリーチャー化した《ボロスの駐屯地/Boros Garrison》(註)に描かれている建物の中には数千の兵士がいるかもしれないけど、そんなんは数えないってこと。
見えなきゃダメ。(註) 《ボロスの駐屯地/Boros Garrison》
イラストは以下のリンク先参照のこと。
http://magiccards.info/pch/en/131.html
2つ目としては、個別に数えられるクリーチャーのみだ。
《ウンヤロ蜂/Unyaro Bees》(註)にはすんごい数の蜂が描かれているけど、背景に描かれている蜂はひとかたまりの雲みたいな感じにモヤモヤッとしてる。
もしも私が対戦相手の《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》を《ウンヤロ蜂/Unyaro Bees》でブロックすることがあったら、蜂の形がよく分からなくなってきたあたりで数えるのをやめるね。そして悟った顔でうなずいて「あ、うん、致死ダメージだね」とか言いながら《ウンヤロ蜂/Unyaro Bees》を墓地に置くと思う。
私はジャッジではないけど、もし《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》がなんらかの手段でトランプルを得た場合でも、単体として判別可能な蜂の数までの+2/+2しか認めないと思うよ。(註) 《ウンヤロ蜂/Unyaro Bees》
イラストは以下のリンク先参照のこと。
http://magiccards.info/ts/en/231.html
じゃあ、先に進むことにしようか。
マジックのクリーチャーの大半はイラストに1体しかクリーチャーが描かれていないので、《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》は基本的にボーナスを得られない。
ってことで、質問に答えるために、私は何かのグループが描かれているイラストをまず探すことにした。兵士とか、群集とか、暴徒の群れとかどうかな。
いやいや、それより昆虫の群れだな。
《ウンヤロ蜂/Unyaro Bees》は、アイデアとしては悪くなかったんだ。ただ、ぼやけてしまって数えられないのが問題だっただけで。
《ファイレクシアの戦闘バエ/Phyrexian Battleflies》は良い例だね。これには間違いなく個別に数えられるハエが16匹もイラストにいるから。
《針蟻/Fire Ants》はもっとすごい。なにせ34匹もの蟻がいるから《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》にターン終了時まで+66/+66の修整を与えられるんだ。
いやいや、ところがどっこい、34匹なんて序の口だってことが判明した。
もうこれ以上探す必要はなくなったな、って思ったのは、《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》を見つけたときだ。0/1でしかないにも関わらず、そのイラストにはとーーーーーーーーーーーんでもない数の虫が数えられる状態で詰め込まれてたんだ。(註) 《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》
イラストは以下のリンク先参照のこと。
http://magiccards.info/sc/en/135.html
いや、本当だって。通常サイズのカードイメージじゃ分からないだけだ。大き目のイラストを見てくれ。特大サイズの《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》のイラスト
http://www.wizards.com/magic/images/mtgcom/arcana1000/ask0525_XantidSwarm_uncounted.jpg
なんだこりゃ!? これまた1枚のイラストにクリーチャーをわんさかと詰め込んだもんだね。一体全体、何匹いるんだろう? え? なんだい? おいおい、まさか勤務時間内にこのイラストの点を数えろって?
……本当に?
マジで?
まさか、ここに座って、1匹1匹余すところなく印を付けろって? David Martinの絵筆がはじき出した、魔法使いをいらつかせるためだけに生まれた虫どもに?
ああ、分かったよ。
725匹だ。多分ね。
本当に数えたのか、って? 本当に数えたのか、って!?特大サイズの《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》のイラスト(印付き)
http://www.wizards.com/magic/images/mtgcom/arcana1000/ask0525_XantidSwarm_counted.jpg
ああ、そのとおり。本当に印をつけたのさ。
というわけで、《ザンティッドの大群/Xantid Swarm》にブロックされた《OMRSTPLRLCNSWMTCTHTALCNEE》はターン終了時まで+1448/+1448されるから、1450/1450になるよ! やったね!
はてさて、1枚のイラストにこれを超える数のクリーチャーが描かれているカードがあるかどうか。どうだろうね。私はいないと思ってる。
お便りありがとう、ジャスティン。
医者からの請求書は君に送っとくよ。725匹のザンティッドどもをクリックしたせいで腱鞘炎になってしまったからね。
元記事:
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtg/daily/cardoftheday/0311
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