余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 基本地形がテーマだった模様。金曜日の《森/Forest》だけ、特定の基本地形ではなくて基本地形一般のことがネタにされてる。《平地/Plains》でもっともマイナーな「~渡り」である「平地渡り」をネタにしてたのを受けて、おそらくもっとも数の多いであろう「森渡り」についてネタにするのかな、と思ったら違った。

余談2:月曜日 《平地/Plains》

 なんで平地だけ「Plains」と複数形なんだろう。もしかしたら単数形でも「Plains」という表記なんだろうか、と思ったけど、「Plain」という英単語はちゃんと存在するらしく、いまだに不思議。
原文:
 Although historically hardly any cards have the ability to plainswalk, there are two cards that were created explicitly to block them. Sorry, Zodiac Rooster!

拙訳:
 歴史上マジックのカードで平地渡りを持ったカードはほとんど存在しないが、平地渡りを止めるためだけの能力を持つカードが2枚も存在する(註1)。かわいそうな《黄道の雄鶏/Zodiac Rooster》!

 意訳だらけ。

 まず「historically hardly any cards have the ability to plainswalk」の「hardly any cards have」をどう訳すか。直訳すると「ほぼ 0枚のカードが 持っている」となるのを日本語にするなら「ほとんどのカードが持っていない」。

 さらに、分かりやすさを考えて「カード」を「マジックのカード」にしたり、読みやすさを考えて「平地渡りの能力」を「平地渡り」にしたり、と細かい点で色々と(勝手に)足したり引いたりしている。

 次の「there are two cards that were created explicitly to block them」は「明示的に(明確に)それらを止めるために作られたカードが2枚ある」となるところを、ネタ的に面白くするために「~ためだけに」としたり「2枚も」としたり。

 最後の「Sorry, Zodiac Rooster!」も「ごめんよ!」と素直に訳す手もあったけど、直前で「Created」を「存在する」としたために「我々は平地渡りを止めるカードを作った。平地渡りを持ったクリーチャーに申し訳ない」という話の流れが失われてしまっていることを考えて「かわいそうな《黄道の雄鶏/Zodiac Rooster》!」としてみた。

余談3:火曜日 《島/Island》

 雑誌の公式記事でジョークを飛ばしたら、本当だと信じ込まれてしまい、火消しが大変だったらしい。今だったらネットで広報すればすぐ収まる……かな? ネットはネットで誤った情報が簡単に拡散するのだけれど。

 さらに余談。この日のネタを見て思い出したのは「マジック史上最強のカードは何?」という質問に対して、有名プレイヤーが「島」と答えたという逸話。なんだろう。世界各国にあるという「もっとも大切なものは塩」という故事を彷彿とさせるネタだと思う。

 ついでに訳の話。
原文:
 On pages 12-13 of Duelist #10 (April-May 1996)

拙訳:
 雑誌デュエリストの第10号(1996年 4~5月号)の12~13ページにかけて

 意外と難しかった。

余談4:水曜日 《沼/Swamp》

 訳の話。
原文:
 You might think the most Swamp-centric Limited format was Odyssey-Odyssey-Torment

拙訳:
 もしかしたら君は、もっとも《沼/Swamp》が重要視された限定構築環境は オデッセイ+オデッセイ+トーメント であった、と考えているかもしれない。

 他にも悩んだところはあるけど、とりあえず「Swamp-centric Limited format」かな。「沼中心の」がもっとも原文に近い形の訳だとは思う。

余談5:木曜日 《山/Mountain》

 訳の話。
原文:
 Because it was the only basic land included in the Arabian Nights set (due to a strange set of circumstances),

拙訳:
 《山/Mountain》は(複雑な事情により)アラビアンナイトに収録された唯一の基本地形であったため、

 括弧内の訳でちょっと迷った。原文に忠実に訳すなら「奇妙な事情により」かな。ただ「奇妙な偶然により」もしくは「複雑な事情により」のほうが日本語としては自然に感じられた。実際、何があったかをちゃんと調べれば、より的確な訳に出来るのかもしれない。

余談6:金曜日 《森/Forest》

 マナシンボルについて調べていたら、Mark Rosewater の「25 Random Things About Magic」というコラムを再発見した。この中に「マジックの開発時、マナコストの表記方法は今と違っていた」という話が紹介されていて(25個のうちの3個目)、これが非常に興味深かったので印象に残っていた。

  Making Magic: 25 Random Things About Magic
  http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/mm/26

 上記のマナコストの話はアーティファクト週間の記事で紹介されていたという記憶があったので、アーティファクト週間の記事を訳したとき「あれ? マナコストの話がない?」と不思議だった。こっちだったか。

 25個のネタは(それなりに知られたネタも多いとはいえ)やっぱり面白いので、既訳がなければ訳してみたい(ざっと探した限りではなさそう)。ただ、前半の「マジックに関する25のよもやま話」の後に続く「マーク・ローズウォーターに関する25のよもやま話」まで訳すかどうか……かなりの分量になる上に、本当にマジック関係ないんだよな。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 鳥がテーマだった模様。月曜日から順に「鳩、鳥、鷹匠、鵜、極楽鳥」という非常に分かりやすい顔ぶれ。同時期に Mark Rosewater が鳥という種族をネタにしたコラムを書いてそうな気がしてきた。あとで調べてみよう。

余談2:月曜日 《鳩散らし/Dovescape》

 カード名だけ見ると、たまに公園や広場で見かける、密集している鳩の集団に子供が突撃するあのシーンが浮かぶ。あと鳩が飛び出すというと「鳩が出ますよ!」という掛け声(?)を思い出す。今も言うんだろうか。いまだに「はい、チーズ」は生き残っているんだし、一部では使われてそう。

余談3:火曜日 《宝石の鳥/Jeweled Bird》

 訳とその他の話。
原文:
 So you have it to thank for the existence of Voidmage Prodigy

拙訳:
 《非凡な虚空魔道士/Voidmage Prodigy》が作られたのはこのカードのおかげというわけだ

 原語を見るに「作られた」というよりも「存在することができた」という感じではあるけど、まあ「作られた、生まれた」としたほうが自然かと。

 ところで「to thank for」とあるけど、前に翻訳したインタビュー記事によると、Kai Budde 本人はこのカードを気に入っていないらしい。まあ、出した要望とまったく違うカードに作り替えられているのだから当然といえば当然か。

   最も偉大なプレイヤーであるカイ・ブッディを
   偉大なプレイヤーであるPVがインタビューしてみた
   http://regiant.diarynote.jp/201109030558571439/
質問:
 インビテーショナルカードについてどう思いますか?

回答:
 分かってくれると思うけど、僕があのカードを作ったんじゃないよ。どのインビテーショナルでもみんなが提出するのはぶっ壊れたカードばかりで、開発側がそれらを見て勝手にあれやこれやとするのさ。だから《非凡な虚空魔道士/Voidmage Prodigy》のデザインに僕は一切かかわってない。

余談4:水曜日 《Soraya the Falconer》

 原文の「But with the advent of the Great Creature Type Update, she can give banding to any bird in Magic」を見て思ったのは「女性だったのか」ということ。イラストに全身像があるにも関わらず、普通に男性だと思い込んでた。

 訳の話。
原文:
 Clearly, the falconer spent the years since 1995 learning new skills.

拙訳:
 この鷹匠は1995年以降、新たな技を学ぶため、明らかに何年も修行し続けていたのだ。

 訳しづらかった。英語だと言いたいことはクリアに伝わってくるのに、じゃあ日本語でどうすればいいのか、というと難しくなるタイプの英文。対訳として考えなければ「どうやら明らかに1995年以降も修行を重ねてたようだね」かな。そこに「the falconer」とか「new skills」とかをはめ込む作業。

 さらに余談。鷹匠といえば、中東に住んでいたとき、ショッピングモールで実際に鷹匠を見た記憶がある。思ったよりも鷹が大きかったこと、腕に分厚い布を巻きつけててそこに力強い爪が食い込んでいたことが印象的だった。

 帰国後、入れ替わりで中東へ赴任することになった後輩と話していたとき「中東で鷹匠を教えてくれる人を探します」と目をキラキラさせてたのを思い出した。結局、習えたんだろうか。

余談5:木曜日 《エスパーの鵜/Esper Cormorants》

 原文では「Wikipediaによると~」とあるのに Wikipedia へのリンクが張られていないという稀有な例。それにしても地球の鵜には40以上もの種類がいるのか。意外だ。

 ああ、そうそう。「地球上の鵜は非常に幅広い種類がおり」の原文は「Earth-bound cormorants are widely varied」。冒頭の「Earth-bound」を「地球に限った場合」と解釈した。

余談6:金曜日 《極楽鳥/Birds of Paradise》

 翻訳の話としては、いまだに英単語「Prominent」の意味を覚えられない。太陽上に噴き出る炎を「プロミネンス」と呼ぶことは知っているのだけれど、それが何の助けにもならないのが困りもの。

 カードの話としては、結局、長いことマジックを遊んでいる中で一度も《極楽鳥/Birds of Paradise》を4枚そろえた瞬間はなかった。緑デッキを組むときは、貧乏人のお供、《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》で遊んでた。そのせいでプレイ中に見かけた印象もほとんどなく、このカードにまつわる思い出がない。

余談7:カードゲーム

 一時期遊んでたけど放置してた「Hearthstone」熱が再燃している。基本的にアリーナでプレイしている。平均勝率は4勝くらいで、まだ一度も12勝したことはない(11勝と10勝が1回ずつ)。

 アリーナでは、2日間かけて3敗するまでプレイしつつ、2日分のデイリークエストをこなしてる。これで、ほぼ収支がプラスマイナスゼロになる。たまに溜まったカードを眺めては、受信した電波を元に構築デッキ作って、ランクマッチでボコボコにされてる。

 アリーナの初手で「シークレットがあると毎ターンライフ回復」を引いたので「シークレットデッキ作ろう」と思ったら1枚しか引かなかったり、初手に「メカが出るとDivine Shieldがつく6/3」を引いたので「メカに寄せよう」とメカデッキ作ったら「メカは強いけど、6/3は普通に弱い」ということが分かったりする。ネット上に存在する点数表ももちろん参照してはいるけど、やっぱり自分の体験から「このカードは強い、弱い」「このカードの使いどころはいつ」というのを気づけると楽しい。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 今週のカードたちはなんか鳥つながりに見える。ただ《ブライトハースの指輪/Rings of Brighthearth》と《召喚の調べ/Chord of Calling》が良く分からない。ちなみに次の週(02月の第1週)はあからさまに Bird Week だったりする。謎だ。

余談2:月曜日 《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》

 プリンだと思ってたのはさておき訳の話。
原文:
 although the "Bryn Argoll" is Welsh for "Lost Hill". More or less.

拙訳:
 「ブリン・アーゴル」はウェール語で「失われた丘」という意味だ。まあ、おおよそのところは。

 誤訳している可能性がある。最後の「More or less」の部分で、何か、こうオチを言おうとしている雰囲気を感じるのに、それがイマイチ反映されていない。いや、反映しようにもネタを理解できていない。

余談3:火曜日 《三畳紀の卵/Triassic Egg》

 カードに乗せるカウンターの名前ネタ。2009年時点と今現在とでまた二転三転している辺りがさらに面白い。一時期、合理性とかフレイバーとかを鑑みて種族名や細かい表記や名前に手を入れた時期があり、さらにその後、可能な限り元のカード表記に近づけるという方針に切り替わった時期がある。振り回されるカードたちがちょっとかわいそう。

 ところで、三畳紀ってなんで畳なんだ。不思議。

余談4:水曜日 《ブライトハースの指輪/Rings of Brighthearth》

 個人的に「指輪」というマジックアイテムは他の装備に比べてワクワク感が高い。次点は「剣」。マジックで「剣」というと《大剣/Greatsword》という悲しい存在を思い出す、のはさておき訳の話。
原文:
 trying to build a bridge of understanding and tolerance by performing useful fire-related tasks

拙訳:
 彼らは自分たちのその有用な炎の力をふるうことで、種族間に理解と寛容の橋をを築こうとしたのだ。

 如何にも翻訳文丸出しな固さがあるな。特に前半。逆に味があると思えばいいか(訳した人が言っていいことではない)。それはさておき迷ったのは「useful」。

 便利な、使い勝手の良い、役に立つ、エトセトラエトセトラ。選択肢は多く、文章に合うものは少なく、色々と試してみた結果が上記の拙訳と相成った。悪くはないけど、良くもない、という感じ。

余談5:木曜日 《召喚の調べ/Chord of Calling》

 訳の話。
原文:
 It is therefore logical that the Extended Elves! deck that took Pro Tour–Berlin by storm

拙訳:
 それを見るに、プロツアーベルリンを席巻したエクステンデッドの Elvs! デッキが ~ は非常に理にかなっている。

 冒頭の「it is logical」は「非常に理にかなっている」と訳したけど、もう1つ思いついてた訳に「なんら矛盾しない」がある。まあ、前者のほうが自然だろう。

 あと「by storm」を「席巻した」と訳したのは個人的に気に入ってる箇所。

余談6:金曜日 《Chicken à la King》

 翻訳するとき「running around like a chicken with its head cut off」の意味が知りたくて、Google先生に「これ、どういう意味?」って聞いたら、先生が「お、知りたいか? 動画あるで?」と紹介してくれた。いや、実物は見たくないよ。意味だけでいいよ。

余談7:WIXOSS - ウィクロス

 後輩がウィクロスを始めたらしく「一緒にやりましょうよ!」と誘ってくれる。でも相手が1人しかいない状態でトレーディングカードゲーム始める元気はない。

 アニメは2ndシーズンまで全部視聴した。最後は力技でまとめた感があったけど、あれだけ貼りまくった伏線や謎をほぼ全て回収しつつ、あれだけ絶望してた登場人物たちがハッピーエンドに終わり、かつちょっと先を感じさせてくれる、という最終回は本当に「最後まで見て良かった」と思わせてくれた。

 というわけで、見て楽しかった創作物にはちゃんと還元したい。主題歌は購入したけど、気に入った回の入った円盤も1枚選んで手に入れてみるかなあ、と思ったりもする。

 そして販促によると DVD Box (税抜き 12,800円) の初回限定版を買うとデッキがついてくるらしい。一石二鳥だ。どうしたものか。トレカには八十岡さんが一枚かんでいるらしい、というのも迷う理由。好きなMTGプレイヤーなので。

 ああ、でもあらためて思い出すと、好きなのは「違う……私の名前は……蒼井晶!」と主人に牙をむくシーン、ちよりとエルドラの最後のシーン、それと最終回なので、最終巻ということになる。

 非常に見やすい公式サイトによると最後の DVD Box が発売されるのは 06月24日 らしい。よし。待つか(忘れそうな気もするけど)。

余談8:検索ワード

 最近の検索ワードの中で気になったのは以下のとおり。

  ・"The Supplicant", a beautiful statue, 「救いを求める乙女」
  ・フカメテンダ
  ・愛に微笑みを訳す
  ・女王 ゴブリン セックス
  ・覚醒のかぶと ヤフオク

 一部、コメントしづらいものがある(というか一体全体、何を期待して検索したんだ……)。1つ目の元ネタは分からないけど、なんとなく字面が美しかったので印象に残った。ここには挙げてない中では、とにかく「マナカーブ」の検索が多い。とにかく多い。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 月曜と火曜で、ドラムと笛吹きだったので「テーマは音楽かな」と思ったら水曜日から全然関係ないカード名が並んでしまった。うーん、王様(Lord)と淑女(Miss)と鼓手(Drum)と笛吹き(Piper)と乙女(Maiden)かあ……何かありそう、いや、むしろ何でもありそうというべきか。

余談2:月曜日 《ゴブリン・ウォー・ドラム/Goblin War Drums》

 Fallen Empireというセットはカードパワーにはイマイチ欠けていたけれど、同じカードにも複数用意されているイラストの多くがとても魅力的で、個人的には一番「トレーディングカード」していたように思う(《Order of Ebon Hand》が特に好きだった)。

 それはさておき訳の話。
原文:
 Frankly, this seems unlikely.

拙訳:
 正直なところ、本当とは思えない。

 どう訳すか。

   ・正直なところ、これは嘘だろうね。
   ・正直なところ、本当とは思えない。
   ・はっきり言わせてもらうが、ありそうもない話だ。
   ・率直に言って、ありそうもない話だ。
   ・たぶん、嘘だ。

 最後のはさすがに誤訳かな。あとは組み合わせの問題。

余談3:火曜日 《タールルームの笛吹き/Talruum Piper》

 マジックにおけるミノタウルスの一族と言えばハールーンとタールルームが2大勢力を誇るイメージ。どっちが優秀かというと、ハールーンの《ミノタウルスの探検者/Minotaur Explorer》も結構強いけど、やっぱり《タールルームの勇士ターンガース/Tahngarth, Talruum Hero》を有するタールルームかな。

 ちなみに記事では、無印の《タールルーム・ミノタウルス/Talruum Minotaur》は「run-of-the-mill Minotaurs」と紹介されていた。「Mill」とあったので、ライブラリ破壊効果と関係あるクリーチャーかな、と思ったら、「run-of-the-mill」で「平凡な」を表す英語の言い回しらしい。なんでだろ。不思議。

余談4:水曜日 《奈落の王/Lord of the Pit》

 初期のデカブツの中でトップクラスのカードパワーを誇り続けた強者。飛行でトランプルの「やり過ぎ」感がとても良いし、日本語訳の簡潔さも良い。

 そういえばこの日の記事に「magicthegathering.com」という旧公式サイトのアドレスが記載されていた。懐かしい。新しい公式サイトは始まった当初随分と評判悪かったけど、今はどうなんだろう。

余談5:木曜日 《Miss Demeanor》

 訳の話。
原文:
 Since that’s gone, though, the Ultimus and its Changeling cousins can be as rude as they like.

拙訳:
 幸いにしてこれが取り除かれたことで《霧衣の究極体/Mistform Ultimus》やその親戚である多相クリーチャーたちはいくらでも行儀悪くふるまえるようになったわけだ。

 迷ったのは「can be rude as they like」の部分。「乱暴に、粗野に、下品に」と選択肢が多い。最初は「上品(Proper Etiquette)」に対比させるために「下品」を使おうかと思ったけど「下品にふるまう」より「行儀悪くふるまう」のほうが、より自然な日本語かな、と思って上記の訳になった。

 余談。多相クリーチャーは上品ではなくなったけど、相変わらず「Mutant Ninja Turtle」のままだ。いつか「Teenager」のクリーチャータイプが出ることに期待してる。

余談6:金曜日 《鳥の乙女/Bird Maiden》

 訳の話。
原文:
 even the Bird Maidens were mentioned offhandedly in a few stories.

拙訳:
 しかしこの《鳥の乙女/Bird Maiden》もさりげなくいくつかの物語に登場しているのだ。

 「offhandedly」が難しかった。「ぶっきらぼうに」や「ぞんざいに」のような意味がまず見つかったので、どう訳そうかと迷いつつ、さらに調べてみて、上記の訳になった。

 さらに余談。

 MTG Wikiの《鳥の乙女/Bird Maiden》の項目に記載されている背景ストーリーがとても良かった。確かにノリが「シンドバッドの冒険」的な感じ。双子の捨て子がありがたがられる、という結びが優しくて好き。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 カード名を見ていると何か関連性というか「仲間」っぽい気がする。身体の一部(Head、Foot)とか、素材(Stone, Chain)とか、ファンタジー関連のゲーム用語かマジックアイテム名か(Curse, Crush, Lightning)とか。

 ただここまで狙いが曖昧なままで検索エンジンに頼ると「正解を当てる作業」ではなくて「当てはまる正解を見つける作業」になってしまいそうなので、諦めた(お手上げのポーズ)。

余談2:月曜日 《Headstone》

 ホームランドは初期の頃に(カードが弱いと知らず無駄に)大量に買ったセットなので、どマイナーなこのカードの効果もそらで覚えてる……と、思ったらカードのコストを間違えて覚えてた。

 これ、2マナだったっけ。いや、確かにキャントリップついてるけど、こんなあるのかないのか分からんような効果に2マナはどうかな。1マナでいいのに……という悪あがきはさておき訳の話。
原文:
 Headstone was the first time an instant was printed with the ability to remove a card from the opponent’s graveyard.

拙訳:
 そして対戦相手の墓地からカードを取り除く効果が初めてインスタントとして登場したのが、この《Headstone》だ。

 迷ったのは「Headstone was the first time an instant was printed」の「first」。意外とどこにでも置ける単語だったりする。

 ・インスタントとして登場させたのは、この《Headstone》が初めてだった
 ・対戦相手の墓地からカードを取り除く効果を初めてインスタントとして~
 ・対戦相手の墓地からカードを取り除く効果が初めてインスタントとして~
 ・インスタントに対戦相手の墓地からカードを取り除く効果を初めて持たせた

 どれが一番、日本語として自然なのか。1人で考えてるとどれもダメな気がしてきて、どうしようもなくなる。こういうとき相談相手が欲しくなる。

余談3:火曜日 《シルヴォクの開拓者/Sylvok Explorer》

 なぜ「対戦相手1人がコントロールする土地が生み出すことのできる好きな色のマナ1点を加える」という効果のカードを取り上げているのに《友なる石/Fellwar Stone》が引き合いに出されないのだろう。

 というわけで個人的な《友なる石/Fellwar Stone》の思い出を語り出してみる。その昔、初めてガチ対戦用に作ったデッキはRPGマガジンに紹介されていた青白パーミッションだった。

 基本的に第4版のカードのみで構成されており、《対抗呪文/Counterspell》や《魔力消沈/Power Sink》といった高性能打ち消し呪文と《剣を鍬に/Swords to Plowshares》や《神の怒り/Wrath of God》や《支配魔法/Control Magic》で対戦相手の呪文やクリーチャーをコントロールし、《セラの天使/Serra Angel》や《大気の精霊/Air Elemental》でトドメを刺すデッキだった。

 そのデッキのマナ加速として採用されていたのが、当時のほぼ唯一のまともなマナ加速アーティファクトだった《友なる石/Fellwar Stone》。何しろこれ以外のマナ加速アーティファクトといったら、1回タップしたら起きない《魔力の櫃/Mana Vault》、出すのに4マナかかる魔力貯蔵器シリーズ、タイプ2じゃ使えない上に1枚数万円するパワー9のモックスシリーズしかなかった。

 そんなわけで《友なる石/Fellwar Stone》は、ほぼ無色マナしか出ない2マナアーティファクトにも関わらず、長いことパーミッションデッキの「友なる」石だった。懐かしい。

余談4:水曜日 《鎖の呪い/Curse of Chains》

 訳の話。
原文:
 it also had the potential to provide extra uses for creatures with the (U) mechanic.

拙訳:
 それだけでなくアンタップシンボルの能力を持つクリーチャーを使いやすくするという可能性もまた秘められていた。

 意訳したのは「extra uses」の部分。

 文を含めて、そのまま直訳するなら「それはまたアンタップシンボルを持ったクリーチャーの追加の利用を提供するという可能性を秘めていた。」かな。

 1ターンに1回しか使えないはずの「アンタップシンボルマーク能力」を2回使えるようにする、という意味しかないとすれば「追加の利用」でもいい気がする。

 でもアンタップシンボルの能力はそもそも「安全にタップすることに苦労する」という面もあった気がするので、アンタップシンボル能力の可能性を引き出す……という意味で「使いやすく、有用性を高める」という風に訳したくなった。

余談5:木曜日 《踏み潰し/Crush Underfoot》

 冗談めかした口調な分、選択肢に迷う訳の話。
原文:
 that you’re using a giant when you cast it!

拙訳:
 これを唱えるとき、君は巨人の力をふるっているのだ!

 上記を含めて色々と思いついた。

  ・これを唱えるとき、君は巨人を使っているのだ!
  ・これを唱えるとき、君は巨人の力をふるっているのだ!
  ・これを唱えるとき、君は巨人の力を借りているのだ!

 You are using に様々な可能性が感じられる。

余談6:金曜日 《稲妻のすね当て/Lightning Greaves》

 目にもとまらぬ素早さを身につけることができるようになるすね当て。

 記事によると元々はその素早さのフレイバーを「速攻(登場するやいなや攻撃できる)」と「警戒(攻撃に出てもすぐ守備に戻れる)」で表現しようとしていたらしい。

 実際のカードでは「速攻」に加えて「被覆(素早すぎて敵の呪文が命中しない)」で素早さを、また「装備(0)」でその軽さも表現している。どっちもありだと思う。

 どうでもいいけど英語名のせいで、光速の異名を持ち重力を自在に操る高貴なる人が光速の速さを得るために装備してそうなアイテム、というイメージがある(どうでもいい)。

余談7:読書

 最近「一千一秒物語」を読み始めた。短編集のようなもの。確かダイアリーノートのどなたかがおススメしていたような気がする(気のせいかもしれないけど)ここに感想を書いてみる。

 最初の物語が表題の「一千一秒物語」で、いわゆるショートショートの集まりなんだけど……なんだこれ。夢をそのまま書き出したような支離滅裂な内容ばかりと見せかけて妙に一貫性がある。どう言ったらいいのか分からない。とことん綺麗に磨き上げたどこまでも正確な立方体のような感じ。何がすごいのか説明できないけど綺麗だった。

 2つ目の物語である「黄漠奇聞」は、前者よりもずっと普通の小説だったけど、ここ数年……いや、物ごころついてから読んできた物語の中でもトップクラスに「幻想的な物語(ファンタジーストーリー)」だった。整合性とか起承転結とかでない、腑には落ちないけど雰囲気だけでファンタジーを感じさせてくれるタイプの物語。すごい好き。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 2週間に渡って星座(黄道十二星座)の名前を含むカードが紹介された模様。

 《錆胞子の羊/Rustspore Ram》
   白羊宮(おひつじ座, 牡羊座, Aries): 03月21日 ~ 04月19日

 《雄オーロクス/Bull Aurochs》
   金牛宮(おうし座, 牡牛座, Taurus): 04月20日 ~ 05月20日

 《双つ術/Twincast》
   双児宮(ふたご座, 双子座, Gemini): 05月21日 ~ 06月21日

 《寄生牙のカニ/Wormfang Crab》
   巨蟹宮(かに座, 蟹座, Cancer): 06月22日 ~ 07月22日

 《ジャムーラン・ライオン/Jamuraan Lion》
   獅子宮(しし座, 獅子座, Leo): 07月23日 ~ 08月22日

 《触れられざる者フェイジ/Phage the Untouchable》
   処女宮(おとめ座, 乙女座, Virgo): 08月23日 ~ 09月22日

 《歪んだ秤/Crooked Scales》
   天秤宮(てんびん座, 天秤座, Libra): 09月23日 ~ 10月23日

 《ドロスの蠍/Dross Scorpion》
   天蝎宮(さそり座, 蠍座, Scorpio): 10月24日 ~ 11月22日

 《Centaur Archer》
   人馬宮(いて座, 射手座, Sagittarius): 11月23日 ~ 12月23日

 《スケープゴート/Scapegoat》
   磨羯宮(やぎ座, 山羊座, Capricorn): 12月24日 ~ 01月19日

 《清水のゴブレット/Clearwater Goblet》
   宝瓶宮(みずがめ座, 水瓶座, Aquarius): 01月20日 ~ 02月18日

 《島魚ジャスコニアス/Island Fish Jasconius》
   双魚宮(うお座, 魚座, Pisces): 02月19日 ~ 03月20日

余談2:月曜日 《錆胞子の羊/Rustspore Ram》

 2015年の干支でもある羊。ゲーム友達に向けて、年賀状に羊を描いているとき思ったのが「羊の登場するボードゲーム多いな」ということ。すぐ思いつくだけでも……

  ・カタンの開拓者たち
  ・アグリコラ
  ・ひつじとどろぼう
  ・シェフィー

 ……あれ? 別に多くなかった。そんな勘違いはさておき訳の話。
原文:
 The stacks on its shoulders spew rust-inducing spores,

拙訳:
 その肩に生える筒からは、触れたものを錆びつかせる胞子が吐き散らされるのだ。

 まだまだ知らない一般名詞や一般動詞が大量にあることを再確認させられた文。「Stack」で「筒」、「Spew」で「まき散らす」、「Induce」で「引き起こす」。ただ《煙突/Smokestack》の存在は知っているので、「Stack」で「筒」は比較的簡単に頭に入りそう。
原文:
 and the art clearly shows the swath of oxidation this beast-oh, excuse us, Sheep-has already carved.

拙訳:
 イラストでも、この獣(Beast)……いや、間違えた、この羊(Sheep)によって刻み込まれた酸化の爪跡がはっきりと見て取れる。

 括弧を用いた併記は文章の勢いを削ぐので、冗談めかした軽い文章には極力使いたくないのだけれど、そういう場所ほど「英語・日本語」の差異があるために注釈が必要になるというもどかしさ。

余談3:火曜日 《雄オーロクス/Bull Aurochs》

 過去の2012年7月25日のCard of the Dayでは《オーロクス/Aurochs》が取り上げられており、そのときも「実在する動物が元ネタであること」とそれが「すでに絶滅していること」が紹介されていた。

 さらに余談。牛の出てくるボードゲームといえば、なんといっても「6ニムト」。あとは「アグリコラ」にも登場する。牛、牛を使う(だけどマヤの好みじゃない)……他には思いつかないな。グーグル先生なら知ってるんだろうけど。

余談4:水曜日 《双つ術/Twincast》

 マジックに登場する双子のキャラクターといえば《山崎兄弟/Brothers Yamazaki》だけど、彼らは名前に「Twin(双子)」という単語が含まれないので落選したもよう。

 それはさておき訳の話。
原文:
 The distinct but related mechanics of copying spells and changing their targets have engaged in a sort of exchange program between red and blue over the years.

拙訳:
 関連性はあれど異なる2つメカニズム、「呪文のコピー」と「対象の変更」は、赤と青のあいだで長年おこなわれている交流プログラムの題材のように取り扱われてきた。

 よく読むと分かるけど「engaged」の訳を放棄している。「セットで」「対として」「ペアとして」「連れ合いのように」など候補は多かれど、なかなか上手いことはまらなかったので、最後は諦めた。「ふたご」が主題なんだし、ここは諦めちゃいけなかったような気もする。

原文:
 Cards such as Goblin Flectomancer and Wild Ricochet show that both colors continue to have a claim on both abilities under the right circumstances.

拙訳:
 《ゴブリンの捻術師/Goblin Flectomancer》や《野生の跳ね返り/Wild Ricochet》に見られるように、適切に表現される限りにおいて、赤も青も両方のメカニズムを有する資格を引き続き保持している。

 訳すとき、文が長くて難しかったので、分解しつつ対応する語を置いていく、という手法をとってみた。以下のような感じ。

   show that
   表している

   both colors
   両方の色で

   continue
   引き続き

   to have a claim on
   資格を有している

   both abilities
   どちらのメカニズムも

   under the right circumstances
   ???

 こうするとどこで難しさを覚えたのかが見える。どうやら最後の部分が直感的に分からなかったために訳しづらかったと判明したので、この部分だけ集中的に悩んでみて「適切に表現される限りにおいて」を導き出してから、ジグソーパズルを開始。

 余談。ジグソーパズルってまだ一般名詞なんだろうか。最近、めっきり聞かなくなった気がする。そして「めっきり」という言葉も聞かなくなった気がする。日常会話で使わないだけかな。

余談5:木曜日 《寄生牙のカニ/Wormfang Crab》

 かに座の代表は《寄生牙のカニ/Wormfang Crab》。ちなみにその昔、小学生たちのあいだでは生まれが「かに座」というだけでクラスのヒエラルキーが最下層に位置した時代があったらしい(その時期、日本にいなかったので詳しくは知らない)。

余談6:金曜日 《ジャムーラン・ライオン/Jamuraan Lion》

 訳の話。
原文:
 and in fact, the only other mono-white creature in Magic that has 3 power and costs less than four mana without any drawbacks or restrictions is Blade of the Sixth Pride.

拙訳:
 実のところ、このライオン以外に3マナ以下の白単色クリーチャーでデメリット無しにパワー3を持っているマジックのカードは《第六隊の刃/Blade of the Sixth Pride》だけだ。

 条件文が面倒くさい。

  ・ジャムーラン・ライオン以外である(the only other)
  ・白単色である(mono-white)
  ・クリーチャーである(creature)
  ・マジックのカードである(in Magic)
  ・パワーが3である(has 3 power)
  ・4マナより少ないマナコストである(costs less than four mana)
  ・不利な要素なしである(without any drawbacks)
  ・制限なしである(or restrictions)

 これらを全て並べた上で自然な日本語の文章にする、ということの難易度が非常に高かったので、最後の2つだけ1つにまとめさせてもらった。

 ああ、そうそう。

 「Drawback」って意外と訳しづらい。ダメージが入る、とか、毎ターンごとマナを支払う、とかそういうのを指すと思われる(「Restriction」は、ブロックできない、2体以上でないと攻撃できない、のような「制限」か)。

余談7:土曜日 《触れられざる者フェイジ/Phage the Untouchable》

 珍しく土日に Card of the Day の更新があった週。

 そしてマジックにおける乙女の代表として選ばれたのはフェイジさん。なお処女宮だけど(MTG Wikiによると)子供がいるらしい。知らなかった。びっくりした。
原文:
 But after a series of events involving her death, the Mirari, Braids, and the Cabal god Kuberr, Jeska was reborn as Phage ~

拙訳:
 しかし彼女の死に関わる一連の出来事(彼女の死、ミラーリの力、ブレイズの存在、陰謀団の神であるクベール)がジェシカをフェイジとして生まれ変わらせ ~

 これ、英文がどこで切れるのかよく分からなかった。どこで切るか次第で、以下のように内容が変化してしまう気がする(上記の拙訳はパターン2を採用している)。

   (パターン1)
   しかし一連の出来事(彼女の死、ミラーリの力、ブレイズの存在、
   陰謀団の神であるクベール)が彼女をフェイジとして生まれ変わらせた。

   (パターン2)
   しかし彼女の死に関わる一連の出来事(ミラーリの力、ブレイズの存在、
   陰謀団の神であるクベール)が彼女をフェイジとして生まれ変わらせた。

 ストーリーを熟知していれば悩むことなく訳せるのかも。

余談8:日曜日 《歪んだ秤/Crooked Scales》

 Libra (ライブラ、リーブラ) とも呼ばれるてんびん座を担当するのは《歪んだ秤/Crooked Scales》。見るたびに弱すぎると思ってたけど、リアルラックが高ければ毎ターン4マナでクリーチャーを破壊できるわけで、そもそもそういうカードか。

 余談。仕事上、外国の通貨を扱うことが多い中で「なんでイギリスポンドの単位は L なんだろう?」と不思議に思って調べたことがある。その答えが「ラテン語の Libra に由来するから」だった。Libra はラテン語で「天秤」を意味すると同時に「はかり、単位、目盛」も意味するらしい。

 そうそう。初めて遊んだファイナルファンタジーシリーズが3で、白魔法に「ライブラ」があったのを覚えている。効果は相手の能力値を知るというもの。初めて見たときは「ライブラリー(= 図書館)から来てるのかな」と思ってたけど、おそらく「相手の能力をはかってしまう」からなんだろうな、と今あらためて思う。

余談9:月曜日 《ドロスの蠍/Dross Scorpion》

 某ストライクさんが無限回収してるカードではないほうのサソリ。ところでドロスって名前の犯罪組織があったような気がしたけど、あらためて確認したところ、「バオー来訪者」の敵対組織の名前は「ドレス」だった。惜しい。
原文:
 Mixed in among Mirrodin’s Affinity cards were a few more traditional combo pieces.

拙訳:
 ミラディンのアーティファクトの中には、親和カードたちに混ざってコンボパーツとなる伝統的なアーティファクトたちもわずかながら存在していた。

 アーティファクトといえばコンボパーツだよね、というノリを上手く伝えられたか自信がない。それと「a few more」を「わずかながら」としたのはギリギリのラインかもしれない。
原文:
 This never really translated into big tournament success, because the Affinity cards were so good that even infinite combos couldn’t stand up to them.

拙訳:
 もっともこれが実際に大会で結果を残したという話は聞かない。何しろ親和の力はあまりに強すぎたため、無限コンボですら太刀打ちできなかったからだ。

 最後の方の「couldn’t stand up to them」の訳として「太刀打ちできない」はなかなか「日本語」になったんではないかと思った。自画自賛。

余談10:火曜日 《Centaur Archer》

 サジタリウス担当は《Centaur Archer》。ただの「Archer」というと一番有名なのはおそらく《エルフの射手/Elvish Archers》だろうけど、やはり射手座となればケンタウロスを選ばないわけにはいかない。

 この 3マナ 3/2 で能力持ちというそこそこのスペックを見たとき「少なくともウルザズサーガ以降のカードだろう」と思ったらアイスエイジだった。弓兵だから飛んでいるクリーチャーにダメージを与えられる、というフレイバー重視な点も含めて、当時としては珍しい気がする。

 さらに余談。サジタリウスというと思い出すのは、初代「世界樹の迷宮」の技能名「サジタリウスの矢」。頼れる存在だった。2ターンで終わるザコ戦闘では出番ないけど。

余談11:水曜日 《スケープゴート/Scapegoat》

 この「長々とヘイト値を稼いだ悪役を多くの犠牲を払ってようやく倒せたと思ったら無駄だった」という展開がすごい苦手。ある時期を境に「シリーズ通しての大目的があっさり失敗して、次シリーズへの引きになる」とストーリーを展開させることに人々がためらわなくなったイメージがある。特にシーズンを重ねている続きもの。もちろん商業的には理解できる。

余談12:木曜日 《清水のゴブレット/Clearwater Goblet》

 学生時代に清水というクラスメートがいて、なぜか執拗に柔道部に誘われたことを思い出した。あだ名が「ミッチー」だった。いまだに由来を知らずにいる。

 訳の話。
原文:
 While straight life gain has not always been a Tier One strategy, Clearwater Goblet was a key element of tournament-winning Prismatic decks on Magic Online.

拙訳:
 ライフ回復の能力がTier1の常連であったことはほとんどないが、マジックオンラインのPrismatic環境においては、この《清水のゴブレット/Clearwater Goblet》が大会を勝ち抜くデッキのキーカードの1枚だった。

 「a key element of tournament-winning Prismatic decks」が難しかった。キーカードというわけでもない。優勝デッキというわけでもない。普段使っているマジック用語から少し芯を外した表現。

 あとこの次の文章に出てくる「convoluted」という単語に馴染みがなく、これまた訳すのが難しかった。意味は「含む、巻き込む。入り組む、混乱する」というような感じらしい。イマイチつかみどころがない。

余談13:金曜日 《島魚ジャスコニアス/Island Fish Jasconius》

 絵が好き。あんかけみたい。
原文:
 The Island Fish Jasconius is taken from two classic tales.

拙訳:
 《島魚ジャスコニアス/Island Fish Jasconius》の元ネタは2つの有名な昔話からとられている。

 末尾の「two classic tales」が意外と難しかった。そのまま「2つのクラシックな話」と外来語を使うのも変だし、単に「2つの古い話」とするのも違う気がするし、色々考えた挙句に上記の通りとあいなった。「Classic」で「有名な」を含むような気がするんだけど、どうかなあ。

 あともう1つ、原文の「The First Voyage of Sindbad」の準公式日本語訳があるかどうかチェックしたけど(たとえば「Cinderella」なら「シンデレラ」、「Snow White」であれば「白雪姫」みたいな)それっぽいのが見つからなかった。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 「繰り返し」がテーマだったもよう。もしくは、すでに1ジャンルとしての地位を確立している「ループもの」かな。英語では「Re-Run」とある。直訳すると「再放送」だけど、さすがにこの日本語訳はちょっと違うだろ、と言われてしまいそう。

 話がそれるけど「ループもの」の名作って人に薦めづらい。「これ面白いよ」「なんで?」「……言えない」となる。叙述トリック系に通じるものがある。

 「単に、これ面白いから読め、でいいじゃん」

 そうだね。

余談2:月曜日 《Time Walk》

 記事の中で登場している《永劫での歩み/Walk the Aeonsの Aeons は複数形で、単数形は Aeon であり、これは Eon とも書く。意味はカード名にあるとおり「永劫」、ただ天文学で使われる際には「10億年」。

 10億というのは日本語だとそれほどキリがよく見えないかもしれないけど、海外ではちょうど One Billion (1,000,000,000) なのである。

 なんでこんな話をいきなり始めたかというと、つい最近、カール・セーガンの「百億の星と千億の生命」という本を読んでたのでタイムリーだなと思ったから。

 この本の原題が「Billions & Billions」(タイトルの邦訳が素晴らしいと思う)。このタイトルは、カール・セーガンの口癖として有名な言葉らしい……そしてカール・セーガンは実際にはこんな言葉を口にしてないらしい(とこの著書に書いてある)。

余談3:火曜日 《巻き直し/Rewind》

 このあたりから打ち消し呪文の弱体化が始まったイメージ。《雲散霧消/Dissipate》が懐かしかった、というのはさておき訳の話。
原文:
 there were cases of people playing Frantic Search and not even bothering to draw and discard, just so they could untap lands

拙訳:
 一部のプレイヤーに至ってはただ土地をアンタップできるからという理由で《大あわての捜索/Frantic Search》をプレイするため、カードを引くことや捨てることさえも興味がないといった有様だった

 あらためて読むと、意訳が甚だしいわりに日本語としても微妙。

 原文で難しかったのが「not even bothering to draw and discard」。「興味がない」という日本語を使って訳したかったのだけど、どうしても上手くいかなかった。

 あと、ぱっと読むと、ドローとディスカードをしない、という風にもとれるんだけど、カードの効果を無視するわけにはいかないだろうから、それはないだろ、と。

 大意はズレてないはずとはいえ、他にもっと良い訳し方がありそう。

余談4:水曜日 《永遠の統制/Eternal Dominion》

 訳の話。
原文:
 The teaser advertising campaign for Saviors of Kamigawa showed

拙訳:
 神河救済の販促キャンペーン時の広告には

 直訳ではない「なんとなく訳」。こんな感じかなあ、というふわふわした翻訳になってる。どんな「Teaser」だったか確認できればもう少し色々できるんだけど。

 もう1つ訳の話。
原文:
 "If you could only cast one spell for the rest of your life, what would it be?"

拙訳:
 「残りの人生、1つの呪文しか唱えられないとしたら、どの呪文にする?」

 もしかしたら公式訳があるのかもしれない、はさておき、1つの呪文かあ。

 《Teleport》は間違いなく太るからいらないし、《対抗呪文/Counterspell》はそもそも呪文を唱えてくる相手がいてのことだし……《治癒の軟膏/Healing Salve》かな。人生を狂わせない程度の便利呪文で。

余談5:木曜日 《永劫の輪廻/Enduring Renewal》

 生まれて初めて購入したマジック商品はアイスエイジのスターターパックだったけど、当時からコンボの話になると必ずといっていいほど挙がったこのカードを実際に見たのはかなり後になってからだった。マジックを遊び始めてから数年は基本地形にすら事欠く状況だった。

 いつもの昔話はさておき訳の話。
原文:
 R&D playtested it with Soul Warden and Wild Cantor to see if it was too risky

拙訳:
 開発部はこれが悪さをしないかどうか確認するために《魂の管理人/Soul Warden》と《野生の朗詠者/Wild Cantor》と一緒にテストしてみた

 ポイントは「if it was too risky」の意訳。原文に近づけるなら「危険性の有無をチェックする」みたいにするべきかもしれない。

余談6:金曜日 《生まれ変わった勇士/Reborn Hero》

 Card of the Day の最初の記事がネタにされている。それは2002年02月08日で、ほぼ13年前だ。個人的な驚きはその年月ではなく、13年前だというのにすでに取り上げられるカードが「トーメントのカード」だということ。

 トーメントはオデッセイブロックの2つ目のセットで、オデッセイ以前にはすでに、アイスエイジ、ミラージュ、テンペスト、ウルザ、マスクス、インベイジョン、と並んでいる。

 マジックの歴史の長さをあらためて思い知った。

余談7:ドワーフの城塞

 以下が公式の販促ページ。ヴォーパルスと同じデザイナーさんの作品。

  I Was Game:『ドワーフの城塞』
  http://c3ba95dc5fb36b51a14310b783.doorkeeper.jp/events/16376

 というわけで、ゲームマーケットで買って来たこの1人用ゲーム「ドワーフの城塞」が面白かったので、紹介がてら短編を書き出してみたら思いのほか長くなってしまった、というか、本当に長過ぎた。最終話に至っては文字数制限に引っ掛かった。

  以下が第1話目。ゴブリンからオークまで撃破。

  《ドワーフの城塞攻防記》 第1話:リョーマとジェシカ
  http://regiant.diarynote.jp/201412041447355994/

  以下が第2話目。ドラゴンパピーを撃破。

  《ドワーフの城塞攻防記》 第2話:竜鱗甲と勝利の確率
  http://regiant.diarynote.jp/201412050218092594/

  以下が第3話目。トロールとジンを撃破。

  《ドワーフの城塞攻防記》 第3話:分岐する未来
  http://regiant.diarynote.jp/201412070750474204/

  以下が最終話。ドラゴンからベヒモス、そしてエピローグ。

  《ドワーフの城塞攻防記》 最終話:ドワーフと人間の城塞
  http://regiant.diarynote.jp/201501021842482002/


 以下に裏話と解説。

第1話:リョーマとジェシカ

 元々は「システム面から語るための現代人と、フレイバー面から語るためのドワーフのコンビ」という発想から始まった。

 最初に書き上げたのは午前2時くらいで「やっと終わった。明日も朝早いのにまずい。とっとと寝よう」と寝床に入ったあと、書いた内容を思い出しながら眠りにつこうとした瞬間「間違ってた!」と気づいて跳ね起きた。

 初稿の展開は以下の通り。あとでまた解説するが、初戦の勝率が「36分の1」である、という前提(勘違い)の元に話が進んでいる。
「本当にゴブリンだよ……」

 呟くと震える足を手の平で叩いた。怖がっている場合でないことはよく分かっていた。リョーマは、竜撃砲と呼ばれるこの砲台を操作すべく城塞の最上階という安全な位置に立っていたが、唯一の仲間であるドワーフはたった1人で正門から白兵戦を挑む手はずになっているのだ。リョーマはもう一度、震える足を力いっぱい叩いて呟いた。

「大丈夫、負ける確率は36分の1だ」

 しかし、さっきまで米粒ほどに小さかったはずのその数字が、今ではスイカのように大きくなり、重く重くリョーマの胸にのしかかってきた。リョーマは重苦しさを振り払おうと、ただ1人の仲間のドワーフであるジェシカのことを考えた。そして彼女と出会った瞬間を思い出していた。

(中略)

「この砦に残ってるのはアタシ1人。もうすぐここにゴブリンどもがやってくるってのに残ってる樽は3つきりだし、竜撃砲も調整が終わってなくて通常弾しか撃てやしない」

 リョーマはポストカードを思い出す。ざっと目を通した裏面の情報を必死に脳裏に思い浮かべた。そしてなおも自嘲気味に続けられている相手の言葉をさえぎった。

「まったくサ、こんな状態で勝ち目なんて……」
「……36分の1だ」
「そうそう、それよりひどいかも」
「違うよ。ビール樽は3つあるって言ったよね。負ける確率は36分の1だ」

 確信満ちたリョーマの言葉に少女が目を丸くする。

「え?」
「そうだ、君は匠の技が使えるはずだろ。ビール樽を2つ空にすればゴブリンごとき5匹までなら楽勝のはずだ」
「そ、そうだけど、なんで知ってるのサ?」
「なんでもいい、もうすぐ来るんだろ、準備をしよう。僕が竜撃砲を受け持つよ。相手の出方次第だけど君が白兵戦だ。ことによったら匠の技の出番かもしれない。どちらにしても……負ける確率は36分の1だ」
「さっきも言ってたけど、なんてか、随分と具体的な数字だネ? まあいいさ、正直諦めてたけど、なんかアンタを見てたらいけそうな気がしてきたヨ」

 大きな口でニカッと笑う。

「アタシの名前はジェシカ」
「僕はリョーマ」

 勘違いというか、単に「樽爆弾」を見落としていた。「樽爆弾」を使わない場合、負ける可能性があるのは2つのサイコロの出目が【1】【1】だったときのみとなるので「36分の1」と言っている。

 個人的にはこっちのほうが話の展開が面白い気がするけど、さすがにゲーム紹介をしようというのに間違ったルールで紹介するわけにはいかない、と慌てて書き直した。

 作者の方のツイートを見るに、タイトルが改題前の《ドワーフの城塞に栄光あれ》になってるので、どうやらこの修正前の話をお読みになられてしまったらしい。申し訳ないやら恥ずかしいやら。

 あと第1話に関して触れる点としては、各種ネーミングか。リョーマとジェシカという名前には特に由来などはない。あえて言えば、イメージが引きずられないように「知り合いにいない名前」にしたくらいか。

 また、先に言ってしまうと、カルガン、リンデル、グリッドの名前にも元ネタはない。濁点を最低1つは入れようと思ったくらいか。

 主人公の高校の名前、常伏高校は少年ジャンプで連載していた「保健室の死神」から来ている(漫画では中学校)。この漫画の主人公である明日葉くんがBG部(ボードゲーム部)所属なので、高校名を「常伏高校」にして先輩の名前を「明日葉」にしようかな、というのが元々の案だった。結局、学校名だけ残った。

 ボードゲーム部の2人、高田と桂木も元ネタなし。あえていえば、高田はリアルに知り合いがいない名字なので、創作時にはよくお世話になる名前ではある。

 ついでに固有名詞の話。次の話で登場する「竜鱗甲(ドラゴンスケイル)」は、ちょっと連呼しすぎたと反省している。オリジナル単語の出番は「定期的に、でも少なく」にしないと鼻につく。

 あと、ルビは「ドラコスケイル」にして、第1話冒頭の「竜骨山脈(りゅうこつさんみゃく)」を「ドラコスパイン」にすれば統一感があったかもしれない、とか思った。


《第2話:竜鱗甲と勝利の確率》

 ドラゴンパピー戦で振り直すときの試行錯誤が楽しかったので、それを伝えたいと思って書いた話。あとは「なんで敵の強さちょうどだともらえる経験値が増えるのか」をなんとかフレイバー的に表現したかった。

 リョーマがゲーム内容を忘れたのは「全部覚えてるとこれから先も敵の表現をすべて数字でしないといけなくなるなあ」とフレイバーが弱まることを心配したため。ただ途中で気が変わって、結局思い出すこととなった(そして、なぜ忘れたり思い出したりしたのか、という理由付けを考えているうちに「もう1つのエピローグ」を思い付いた)。

 あと第2話では、味方の内部には対立構造を設定すること、という某小説家の教えに従って、リンデルのキャラクターが作られた(そもそもジェシカとカルガンは甘すぎだと思う)。

 最初に書いたときはリンデルとの対立がもっと深刻になる予定だった。
 砦の地下には食料貯蔵庫と宝物庫があったが、無駄に広い宝物庫は長らく収めるものもなく空のままだった。外から鍵のかかる部屋はそこだけだったので、仮の牢屋として使われることになった。

「安心しろ。飯は持って来てやる」
「それと、あとで寝床になるものもな」

 抵抗することなく部屋に入ったリョーマに2人が声をかけるが、力なく壁を見るだけだった。そんなリョーマの様子に一瞬だけためらってからリンデルが声をかけた。

「1つ言っておくぞ。俺は貴様をスパイだと断定したわけじゃないし、したいわけでもない。その可能性があることを最初から捨ててかかるのがおかしいとそう言っているだけなんだ。それが間違ってると思うならそれでいいさ」

 扉が閉じられた。暗闇の中、リョーマは壁にもたれて腰を下ろした。

 このシーンに先だって、砦内部の構造も考えたけど、上記の宝物庫を含め、ほとんど使わなかった。以下は、物語に使われなかった砦の各種設定の一部。

 <地下の食料貯蔵庫>
 その真上に1階の台所が位置しており、台所の床に開いた穴から板を下ろすことで階段を使わずに食料の上げ下げが出来る。

 <最上階>
 通常メンバーは2階の寝室を相部屋で使うことになっており、最上階である3階には隊長用の個室がある。またその個室からは(砦の背が接している)岩山のトンネルへと通じる隠し通路があり、最上階に追い詰められても本国へ抜けることが可能となっている(追撃を防ぐための爆破用の火薬もある)。

 <玄関ホール>
 玄関から入ったところは調度品の少ない広間になっている。天井までは2階分の高さがあり、2階のバルコニーにぐるりと囲まれた形となっている(敵を誘いこんだ際に守りやすくするため)。

 ジェシカとリンデルの対立のために「ジェシカの親は配備された砦を見捨てて逃げ出したという汚名を負っており、それが理由でジェシカは1人になろうと砦を後にしなかった。むしろ死地を求めているとさえいえる」という設定も考えたけど、ばっさりカット。

 砦の設定やキャラの背景など、ゲーム外のネタを書けば書くほど「ドワーフの城塞」というゲームの輪郭がどんどんぼやけていってしまうことのに気づいたため(今でも多すぎだろうとツッコまれそうだけど、元はさらに多かったということで)。


《第3話:分岐する未来》

 サブタイトルが気に入っている回。上手く内容とマッチしてる気がする。没案としては「策士、策に溺れる」「負けなければいい」「トロールとジン」などがある。

 タイトルなどのネーミングセンスが平均以下であるということは自覚しているので、たまに「これ上手くいったのでは」と思える瞬間があると嬉しくなる。

 話の内容としては「砦の発展(経験値の割り振り)を世界観に沿う形で表現する」というフレイバー的な目標と「戦闘時のサイコロの配置と振り直しというこのゲームの面白さを伝える」というシステム的な目標があった。

 特に「振り直し」が行われるとき、実際には何が起きているのかを考えるのが楽しかった。最終的には、一度引いてから再度攻めるという臨機応変な戦い方を表してるのかな、ということで。

 システム面では、振り直しの場合分けとそれぞれごとの確率を計算するのが(面倒ではあったけど)楽しかった。正解がないこと、そして失敗が自分のせいであると感じられるゲームは良いゲーム。


《最終話:ドワーフと人間の城塞》

 分量的には2話に分けてもいいくらいだったけど、どこで切ろうか迷ったことと、一気に終わらせたかったこともあって、無理やり詰め込んだ。

 その結果、案の定、Diarynote の文字数制限に引っかかり、冒頭の公式と過去話の紹介文すらギリギリまで削って、ようやく1つの記事に収めた。

 まずは対峙することになるモンスターたちの描写と説明を序盤で一気に終わらせてある。これは、各ステージの戦闘結果(システム的な解説)のあいだを詰め、ゲーム的な描写を凝縮しようと思ったため(が、結局ステージ間の描写が長くて、あまり上手くいってない)。

 次に、砦の発展(経験値の割り振り)の計画をまとめておいた。実際にドラゴン戦が始まる前におこなわれた、1人脳内作戦会議を書き起こしてある。なお、作戦を立てようとすればするほど、絶妙なバランスの上に成り立ってるゲームだなあ、と思わされた。

 そうそう。最終話の途中に参戦することとなった5人目のキャラはちょっとだけ悩んでから、結局ああなった。ビホルダーやゴールドドラゴン、ベヒモスと戦うというのはこの世界的にとんでもないことなのでは、と思ったので、新規参入の立場としての5人目に助けられた気がする。

 エピローグについては最後に回すとして、その前に最終話の小ネタや元ネタについて思いだせる限り、書いてみる。

「聞いたことがなくて当然だ。ビホルダーはただの妖魔の名前じゃない。その名前が指すのは世界にたった1体しか存在しない、ある個体の名だ。真のビホルダーは常に単一で、まがいものの存在は決して許されない。決してだ」

 昔のファイナルファンタジーやサガなどにはビホルダーが普通に登場していたが、ある時期を境に出なくなった。これはダンジョンズアンドドラゴンズの版権が理由と言われている……というのをフレイバー的に解釈してみた(というかネタにしてみた)。

  日本語版Wikipedia:ビホルダーの項目
  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%9B%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%BC

 あとリンデルの説明にあった「長大な叙事詩に関わるような歴戦の勇士であっても、その頭を地面にこすりつけ許しを乞う」は、上記のWikiediaにも紹介がある「土下座ェ門」の話が元ネタ。

 通常の生物の瞳が前についているのは未来へ向かうためと言われている。過去を背後とし、前に向かい生きていく使命があるからだと。

 とある歌詞が元ネタ。本当は「人の瞳が 背中についてないのは 前に向かい生きていく 使命があるから」というもので、妙な説得力というか、なんというか……すごい印象的な歌詞だったので。
 ゴールドドラゴン、またの名を神竜。炎と地に生きるドワーフにとって「ドラゴン」とは常に特別な存在であり、そのドラゴン族の頂点に立つゴールドドラゴンは神にも等しい存在だった。

 大海に浮かぶ主要な島々(この砦も、それらのうちで比較的大きな島の1つの辺境に位置している)には、それぞれの島ごと、1つの時代に唯1体のゴールドドラゴンが生まれると言われている。

 神にも等しい、とか、1つの時代に1匹、とかが「ダイの大冒険」に出てくるドラゴンの騎士っぽいな、と書いたあとにふと思った。まあ、よくある設定といえばそこまでで、別にそれが元ネタというわけでもない。

 そしてベヒモスは初雪とともに訪れた。

「あんなところに山あったっけ」
「心当たりないのう」
「こんな近くにあったらさすがのアタシでも気づくさネ」
「だよね」

 岩山の中腹に位置するドワーフの城塞。その見張り台からも視線の高さにその頂きがくるほどの真黒く小高い丘が、その色と対照的な無垢の初雪に覆われていた。黒豚の丸焼を岩塩で焼いたよう、と評したのはジェシカだった。

 ベヒモスが「デカい豚みたいで食べると美味しい」というヴォーパルス(ボードゲーム)の設定をどこまでネタにするか悩んで、結局は上記で軽く触れるだけにしといた。

 困ったのは、ベヒモスの巨大さを表現すればするほど「ドワーフたちとどうやって戦うんだ?」という難題に突き当たってしまうこと。最後は、仕方ないので「巨大な部分とは戦わなくてよし」という方向に話を持って行った。

 ベヒモス戦のフレイバー的な描写がないのは、長文買いてて気力が尽きかけていたということももちろんあるんだけど、それより、ラストは(濃い描写を避けて)あっさりと戦闘後に場面を移したかったから、ということが大きい。

 最後にリョーマは部屋を去る前にジェシカに右手を差し出した。静かな笑みを浮かべているリョーマに何かを感じかけたジェシカだったが、何も言わずにその手を力いっぱい握った。痛みに顔をしかめるリョーマにジェシカが声を出して笑う。その痛みと微笑みはリョーマにとって何よりも(例えるなら口づけをするよりも)特別で忘れえないものだった。

 最後の「例えるなら口づけよりも」は、初代リプレイシリーズのキャラを主人公にしたソードワールド短編集の収録されていた短編のラストが元ネタ。

 戦士の素質がないのに戦士になってしまった男とコンビを組んだユズがダンジョンに潜るという話は、その内容も面白かったし、特にラストがとても印象的だったのでお借りした。
 あれからリンデルはこの地で鍛えた腕を振るうべく新たな戦場を求め旅立った。カルガンは本国に戻り武術指南として若手を鍛えているらしい。

 ベヒモス戦のあと、そのまま5人で妖魔の本陣へと向かう、という「俺たちの戦いはこれからだ!」的な終わり方も考えていたけど、この物語は「ドワーフの城塞」であり、その本質は「タワーディフェンス」的な防衛ものであるはずだから、という考えて砦に残すことにした。

 ここは世界の北、夏は短く冬は長く厳しい。海には無数に浮かぶ島々。その中でも特に大きな島々にはそれぞれ黄金の竜が住まうという。

 それらの中の1つ、多くの種族が縄張りを争っている特に巨大な島の西部では、ドワーフと妖魔が南北に伸びる山脈を挟んで争いを続けている。

 島全体と全ての種族を巻き込む100年の戦乱が始まるのはそれから数年ののちのことだったが、その中でリョーマとジェシカが担った役割については、また別の物語となる。

 無理にヴォーパルスと絡める必要はなかったかもしれない、と思いつつも、徹頭徹尾にかけて趣味の塊であるこの物語をヴォーパルスと絡めない理由こそ逆に思いつかなかった。

 ヴォーパルス世界だとリョーマはなんなんだろう。《民兵》か《冒険者》あたりかな。これから経験を積んで強くなっていく予定だし、やっぱり《民兵》か。


《最終話:そして、もう1つのエピローグ》

 このラストで新たに生じるかもしれない「なぜ?」とか「どうして?」という疑問に答えていない気もするけど、書きたいことは全部書けたと満足しているエンディング。

 唯一、不安があるとすれば「テーブルトークRPG」の「キャラクターシート」を知らない人には伝わらないのではないか(そしてそういう人はボードゲーム好きの中にも一定数いるのではないか)ということくらいか。

 もっともそれを言ったらこの物語自体が「ドワーフの城塞」というそれほどメジャーとは言えないゲームを元ネタにしているわけで、考えてもしょうがない。

 何にせよ、リョーマとジェシカの物語を書き上げることが出来て満足してる。

 万が一(というか億が一)、元のゲームを遊んだことがないけどこの物語を読んでくれた、という方がいらっしゃったら、ぜひ「ドワーフの城塞」を遊んでみて、このリョーマとジェシカの物語がどうゲームとシンクロしているのか、確かめて欲しいところ。

 最後に。

 この素晴らしいゲームを生み出してくれたゲームデザイナーに感謝。

(ドワーフの城塞攻防記:本当の、本当に終わり)
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 珍しく金曜日にネタばれのあった今週のテーマは「スタートレック」。

 正直、解説がなかったら自力で気づいたとは到底思えない。SFの古典(Classic)は極力押さえようとはしているけど、まだまだ先は長い。最近ようやく銀河ヒッチハイクガイドシリーズを読み終えたところで、カール・セーガンやテッド・チャンすら1冊も読んでないのが現状。スタートレックシリーズなんてミスター・スポックの髪型くらいしか知らない。

 こういうとき、どうしても「生きているあいだに読める本の数は有限」という当たり前の事実が頭をよぎって、悲しさとも空しさともつかない気持ちになる。まあ、言い換えれば「生きているあいだに読む本に困ることはない」わけだ。コップに半分残った水をどうとらえるか、という話なのかもしれない。なお今現在読んでいる本は「紫色のクオリア」。

余談2:月曜日 《起源/Genesis》

 初めて見たときはとてつもなく強い効果だと思った。実際に使われ始めてみると「墓地に落とす手間」「3マナというコスト」「1ターンに1枚まで」が程よいバランスだった。いまだに初見で「強すぎるカード」を見抜けたことがない。

 それはさておき訳の話。
原文:
 First, it works from the graveyard instead of being in play or in a player’s hand where it’s more vulnerable to attack.

拙訳:
 1つ目として、このカードは戦場よりも手札よりも敵の妨害を受けにくい墓地にいるときに輝くカードであるということ。

 リアニメイトデッキと相性が良い、なぜなら「墓地にあると強いカード」だから、という文章。さすがに「どうして相性が良いのか」をわざわざ訳文で付記するのはやりすぎかと思ってやめた。

 でもたまに原文にない言葉を補わないと一読して意味が分からないかな、と思うこともあり、そこらへんは結局「訳している側の知識と教養」によってしまうのかもしれない。ある意味、どこまで補足するかが、訳す側の知識と教養の鏡となっているような。

余談3:火曜日 《精神蛆/Mind Maggots》

 この日でちょうどこのブログが訳してきた Card of the Day カテゴリの記事が1000件目だった。1年間にある平日の数は単純計算で260日くらいだから、ほぼ4年分だ。うん。まあ、それはさておき訳の話。
原文:
 The only difference is that the maggots are devouring cards before they’re even played.

拙訳:
 唯一の違いといえばこの蛆虫たちはプレイされる前のカードを貪欲に喰らってしまうという点だ。

 原文では「before they’re even played」が斜体となっている。日本語版では太字にすべきだったかな。いや、それだったら倒置法による強調のほうが(語順的な意味で)より原文のニュアンスに近いか。

 代替案:
  この蛆虫はカードを貪欲に喰らってしまう…なんとプレイされるより先にだ

 後半は色々と他にも選択肢がありそう。「戦場に出る」「プレイする」という言い換えもできそうだし、「Even」を拡大解釈して「プレイされるのを待つことすらせずに」みたいな訳もできそう。

余談4:水曜日 《神の怒り/Wrath of God》

 個人的には Quinton Hoover によるイラストと言えば何を置いてもまず《神の怒り/Wrath of God》がくる。あとは第4版の《再生/Regeneration》とか、リバイスドの《Earthbind》か。

 ところでコメント欄でも指摘があったように、古い記事はたまに画像が自動的に新しいカードイラストに更新されていることがある。固定リンクではなく、なんらかのスクリプトが働いているものと思われる。

 ただ(全てではないにしても)今回のように「この基本セットのときの~」とか「このイラストレーターのバージョンでは~」というネタにするために画像を出している記事もあるわけで、特定のセットのイラストにリンクしておくよう、ハードコーディングしておいたほうがいいのに、と思わないでもない。

 まあホームページを極力シンプルに管理しようとすると現状の形が楽なんだろうなあ、というのはよく分かるので、しょうがないと言えばしょうがない。

余談5:木曜日 《サルカン・ヴォル/Sarkhan Vol》

 「Khan」という単語のために今週採用されたらしい。今だったら「Khans of Tarkir」というさらにふさわしい単語がある。

 それはさておき訳の話。
原文:
 Planeswalkers require a lot of development work, especially when it comes to all the numbers on them.

拙訳:
 プレインズウォーカーの開発には非常に手間がかかる。そこに記載される数字については特にだ。

 間違ってないと思うのだけど、ちょっと自信がないのが「when it comes to all the numbers on them」。「come to number」という言い回しがあるわけではないよな……。なお原文の「all」は意図的に削った。なんか日本語的にしっくり来なかったから。

 ところで「原文準拠にこだわったり、あっさり削ったり、と一貫性のない訳だなあ」と思われるかもしれない。否定しないし、否定できない。ロジックで翻訳しているわけではないな、とあらためて思う。

余談6:金曜日 《数多のラフィーク/Rafiq of the Many》

 元の文章のネタ的に、どうしても原文の英語を併記しないと意味が通らない。仕方ないので(見た目が汚くなるのは承知の上で)細かに併記していくスタイルにした。

余談7:外来語

 某所のコメント欄で興味深い話題が取り上げられていた。内容は「外国語をカタカナに直すとき、何を重視するか」という話。

 「そこには統一規格があるべき」という考え方もあれば「元の音にどれだけ近づけられるか」という考え方もある。前者は、言葉には原理原則があり運用面からルールに従ったほうが良い、という感じかな、と。

 上記の2つ以外の面から思ったことを書いてみる。外国語のカタカナ化は「規格」や「原語の音」以外に「時代に左右される」要素もあるかと思っている。「いつカタカナにされたか」という話。

 ただ、これは「どうしてそうなったか」の説明であって「どうすべきか」の回答ではないので、最初に挙げた2つの考え方とは並列でない(いきなり言い訳から入るスタイル)。

 どういうことかというと、例えばミシンの語源は「Sawing Machine」であり「他と合わせる、統一する」のが「正解」であれば「マシン」にすべきである。また「ワイシャツ」は英語で「White Shirts」なので「ホワイトシャツ」が正しいことになる。

 でもいまさら新しいミシンが欲しいときに「新しいマシンが欲しい」と言われても混乱するだろうし、日本ではブルーやピンクの「ホワイトシャツ」が出回っている。これを「ホワイトシャツ」と呼ぶと混乱しそうな気がする。

 統一されていないカタカナ語という点では「ミクロ」と「マイクロ」がある。「ミクロの決死圏」を「マイクロの決死圏」とすべきなのか、「小型マイク」を「小型ミク」とすべきなのか(マイクロフォンをマイクと略した件についても長々と語りたいところ)。

 原語の音に近づけるという話の場合、ホームズの相棒は「ワトソン」なのか「ワトスン」なのか。そもそも「Watson」を発音するときに「ト」という音が出てこない気がする。「ワッスン」が一番近いかなあ。

 さらに話がそれるのを承知で語ると「音の転写」を重視するとなると、アメリカ英語とイギリス英語(≒オーストラリア英語)という要素が関わってくる。

 シンガポールやオーストラリアで、パソコンの画面を指して「ダイレクトリィ」と言われたときは何を指しているのか分からなかった(ちなみにフォルダ(Directory)のことだった)。分かるか、んなもん。

 話がそれまくったけど、結論としては「通じるかどうかだよな」ということ(いや、だからどうやったら通じやすいかという話をしているわけで(未完
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 あらためてアラーラの断片のカードたち。それ以外はレアリティも様々、内容も様々……と思いきや、全てが(赤)(緑)(黒)のいずれかに属するジャンド週間だったもよう、と先週の「週のまとめ」を使い回してみる。

余談2:月曜日 《サングライトのうねり/Sangrite Surge》

 この「Sangrite(サングライト)」はマジック世界に存在しない鉱石。よく似た単語に「Sangrita(サングリータ)」があるが、これは中南米のノンアルコールカクテルの名前である。「Sangria(サングリア)」と似ているがこっちはアルコールの入ったカクテルなので注意。なお冬場に外で飲む温めたサングリアはとても美味しい。

 それはさておき訳の話。
原文:
 Its precise origin is not known, but its effectiveness is unquestioned.

拙訳:
 この鉱石がどのようにして生まれたのかについてはっきりとは分かっていないが、その力に疑問の余地はない。

 よくある「英語で読む分には簡単に意味がとれるけど日本語にしづらい英語」の文章。とりあえず「be unquestioned」は「疑問の余地はない」でいいよね。問題は「effectiveness」かな。

 日本語の「一語」に訳そうとするとかなり厳しい。「効用」とか「効能」だと鉱石に秘められたパワーというよりお薬みたいになってしまう。大体からして具体的にどんな効果を発揮してくれる鉱物なのかもよく分からない。

 とりあえずそれっぽく訳した。

 ああ、そうそう。原文の冒頭は「Sangrite is a red crystal fround on Jund」となっていたけど、これは「found」の誤字とみなして訳した。そうすると意味が通るし。

余談3:火曜日 《血編み髪のクレシュ/Kresh the Bloodbraided》

 弱い方の血編み髪さんとか言うと怒られそうなので、訳の話。
原文:
 he is universally recognized as the greatest human warrior alive.

拙訳:
 生きている人間の戦士の中で最も偉大な戦士であることは誰もが認めている。

 日本語がなんかカッコ悪い。なんというか「生きている人間の戦士の中で最も偉大な戦士」が本当にカッコ悪い。もっと上手くやれそうな気もする。ただどうしても英語の「alive」を残そうとすると難しい。

 Mortalなら定命というカッコいい漢語があるんだけどなあ。

余談4:水曜日 《捕食者のドラゴン/Predator Dragon》

 プレステの誕生日だ、という余談はさておき訳の話。
原文:
 Pro Tour-Berlin showed that it’s equally happy to feast on Elves.

拙訳:
 どうやらエルフも喜んで喰らうことがプルツアーベルリン08で明らかになった。

 ちょっと考え込んだのは「happy to feast on ~」という箇所。「elf as a feast」ではなくて「to feast」なので動詞か。「feast on」ってあまり聞かない。

 いや、まあ、そもそも仕事で「feast」って使わないけど。

余談5:木曜日 《ジャンドの戦闘魔道士/Jund Battlemage》

 訳の話。
原文:
 And since the battlemage stands poised between life and death, he can cause either one, reducing a player’s life total or bringing forth Saprolings.

拙訳:
 つまりこの戦闘魔道士は生と死の狭間に立っているわけで、そのいずれも生じさせることができる……プレイヤーの総ライフを減少させることも、苗木を発生させることもだ。


 このほうが読みやすかろう、と考えた上で、いくつか意訳した箇所がある。原文で「Since(よって、~のため)」となっているところを「つまり」と訳していたり、単なるコンマで接続された文を「……」としたり。

 分からなかった単語があった。「Poised」がそれ。「兼ね合い、バランスをとる、落ち着いている、上手いこと収まっている」という感じの言葉っぽい。訳すことは出来たけど、使うのは難しそう。つかみきれてない感がある。「魂で理解」してない。

余談6:金曜日 《ゴブリンの山岳民/Goblin Mountaineer》

 訳の話。
原文:
 The difference is that on Jund, they die on purpose, aspiring to nothing more than to be eaten by a dragon.

拙訳:
 違いがあるとすれば、ジャンドのゴブリンたちはドラゴンに食われるためだけに自ら進んで死を選ぶという点があげられる。

 訳としては間違っていない気がするんだけど、世界設定を考えると間違ってるかもしれない。ジャンドの世界のゴブリンはドラゴンを崇拝し、生贄としてゴブリンを捧げるということなので「自ら死を選ぶ(they die on purpose)」は、ちょっと違うような気がする。

 とりあえず原文準拠で。

余談7:既訳

 某所で「2009年11月から2010年07月のCard of the Dayの既訳」を見つけてしまった。既訳に対しては一方的に退く方針でやってきたし、もう丸4年も訳したし潮時か、とも思ったけど、なんか逆に「もういいか」と思って続けることにした(よく分からない文章になってる。まあいいか)。

余談8:銀河ヒッチハイク・ガイド

 その昔、2011年01月頃に訳したカード命名に関する記事「カード名が殺されるとき/Name Killers」の中で出てきた《Zaphod the Dragon Hunter》の元ネタとおぼしき小説をようやく読むことができた(正しくは今現在、シリーズ全5巻の5巻目を読み進めているところ。新訳版)。

 小説自体が素晴らしく面白いことは間違いないとして、それをさらに際立たせているのは間違いなく訳者さんの腕だと思う。そもそもジョークを訳すこと自体が高難易度だというのに、それを「面白く訳す」のは神業としかいいようがない。

 あとがきの軽妙さも含めて、今まで読んだ訳者さんの中でトップクラスだ。とりあえず安原和見さんの名前は覚えた。他に「この人の訳なら大丈夫だろう」と思ってる方は、小尾芙佐さん、宇野利泰さん、田中明子さんなどがいらっしゃる(瀬田貞二さんは色んな意味で別枠)。

 逆に異様に読みづらいと感じた訳がつい最近あった。それはまた別の機会に。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 アメリカの11月第4週ということでサンクスギビング(感謝祭)。第4木曜日が休日となり、多くの学校や会社がそのまま連休に入る祭日。

 月曜日 《豊潤の角笛/Horn of Plenty》
                 ⇒ 感謝祭のシンボル
 火曜日 《霊廟の牢番/Mausoleum Turnkey
                 ⇒ 感謝祭といえば七面鳥(Turkey)の丸焼き
 水曜日 《Rod of Spanking》
                 ⇒ 「感謝せい(感謝さい)」だから

 火曜日のネタに気づけたときは笑ってしまった。そうきたか。いや、公式で答え合わせしてないから間違ってるかもしれないけど、かなり自信があるよ。

 なお水曜日のネタの原文は「Give thanks」となっていた。そのままでもいいかな、とも考えてから、やっぱり訳してみることにした。たまには某Takuさんのようにジョークの翻訳にもトライしてみるなり。

余談2:月曜日 《豊潤の角笛/Horn of Plenty》

 ゼウスの守備範囲の広さというか、バーリトゥード(何でもアリ)なところは幼少時代に原因があったのではないか、とか思ったり思わなかったり。それはさておき訳の話。
原文:
 It symbolizes the horn of the goat that suckled Zeus, which broke off and became filled with fruit.

拙訳:
 ゼウスに授乳した山羊の角がモチーフであり、その角は折れた際に中から果物が満ちたという。

 結構訳しづらい。ただ英文自体は理解する際に特に悩むことはない。「Symbolize」のように、中途半端に外来語が存在する単語がめんどくさい。「シンボル化」という言葉を含めようとするとどうしてもまとまらない。

余談3:火曜日 《霊廟の牢番/Mausoleum Turnkey》

 訳し甲斐のある文章の話。
原文:
 because it involves an opponent’s choice... but you get to choose the opponent!

拙訳:
 確かに対戦相手に選択する権利がある……しかし、どの対戦相手かは君が選べるのだから!

 そのまま訳すと「なぜなら対戦相手の選択が関わるからだ……しかし君が対戦相手を選べるのだ!」となるけど、せっかくの「面白い話」なのにそのままはもったいないかな、というわけで意訳。楽しかった。

余談4:水曜日 《Rod of Spanking》

 こういうカードに付き合ってくれる人と本気で嫌がる人とがいるから銀枠は難しい。初対面の相手に使うのは難易度高そう。

 そんな夢の無い話はさておき訳の話。
原文:
 See, because the card requires a target player to "give thanks". Get it?

拙訳:
 なぜ今日がこのカードかというと、対象のプレイヤーに「感謝せい」と強要するからだ。分かったかな?

 まあ、この訳に関することの大体のところはもう述べてしまった気もする。要は「とことんギャグに付き合うか」「無理せず無難に訳すか」の選択。せっかく日本語でも感謝祭と絡められると分かったのだから「とことん」でいいんじゃないかな、と思った次第。

 ところでサンクスギビングは、アメリカだと連休となることもあって当然知らない人はいない祭日なんだけど、日本だとほとんど知られていない。

 とはいえ、恵方巻やハロウィンといった、商魂たくましいとしかいいようのない様々なマーケティングを見ていると、サンクスギビングの平穏が脅かされる日もそう遠くない気がしてくる。

余談5:アメリカの行事

 サンクスギビング以外に日本だとほとんど知られていない行事ってなんかあったっけな、と調べてて思い出したのが「セントパトリックの日」。なぜかよく分からないけど緑とか四つ葉のクローバーとかが関係している行事。

 そこから英語版のWikipediaの「Four-leaf clover」の項目を見てたら「なおクローバーは四つ葉以上にもなりうる。今までに見つかった最大の枚数は56枚であり、日本の岩手県にある花巻町で2009年05月10日に見つかったものである」と書かれていた。

   英語版Wikipedia:Four-leaf clover の項目
   http://en.wikipedia.org/wiki/Four-leaf_clover

 いきなり日本の地名が出てきたからびっくりしてしまった。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 あらためてアラーラの断片のカードたち。それ以外はレアリティも様々、内容も様々……と思いきや、全てが(白)(青)(黒)のいずれかに属するエスパー週間だったもよう。

余談2:月曜日 《無知の処罰/Punish Ignorance》

 過去の2つの打消し呪文をそのまま足してた呪文。「打ち消す + 3点のライフルーズ」で(青)(青)(黒)、「打ち消す + 3点のライフゲイン」で(白)(青)(青)だから、「打ち消す + 3点ルーズ + 3点ゲイン」は (白)(青)(青)(黒)となる。

 計算は間違ってないはずだけど、過去に強かった呪文2つを合わせた割には不思議と弱そうに見える、というのはさておき訳の話。
原文:
 But on Punish Ignorance, Indra might provide the most dismissive quote of all

拙訳:
 しかし《無知の処罰/Punish Ignorance》に記載されているインドラの次の言葉こそ、もっとも相手を見下しているといえよう

 「dismissive」は「軽蔑的な、軽侮的な、否定的な、真剣に相手にしていない、そっけない」などの意味があるらしい。確かに似通ったところはあるけど、どれを選ぶかで随分と意味合いが変わってしまう。

 色々悩んでから、フレイバーテキストの公式日本語訳を鑑みて、「軽蔑している」や「相手にしていない」というより「見下している」が一番しっくり来るかな、と。

余談3:火曜日 《精神固めの宝珠/Mindlock Orb》

 訳の話。
原文:
 But that didn’t stop From the Lab columnist Noel deCordova from breaking it eight ways to Sunday when he previewed it!

拙訳:
 しかしその程度の不安なんて Noel deCordova にかかればなんてことない話だ。From the Lab のコラムを担当している彼は、このカードを用いて大会を最終日まで勝ち抜く方法を8つも思い付いてくれた!

 色々怪しい。

 まずは冒頭の「that didn’t stop」の箇所。「~を止めることはできない」なんだけど、「記事を書くのを止めることはできなかった」というより「デッキのネタをちゃんと思いつけた」という意味合いなので、原語をあまり尊重せず、訳をひねってみた。

 そっちはまだいいとして、問題は後半の「breaking it eight ways to Sunday」の箇所。「to Sunday」は大会3日目のベスト8への進出を指しているのは分かる。「breaking it eight ways」って何?

 ベスト8の「8」とは関係なさそう。もしかしたら「breaking eight ways =(予選を)8連勝する」かな。うーん、でも「breaking」されるのは「it (Mindlock Orb)」なんだよなあ。

余談4:水曜日 《急使の薬包/Courier’s Capsule》

 訳の話。
原文:
 The Esper control of winds is so powerful, they send messages composed of compacted wind!

拙訳:
 エスパーの魔法使いたちの風を操る力は非常に強力で、彼らは圧縮された風で出来た手紙を送りつけるほどだ。

 合ってるかなあ。いくつか不安な点が。

 前半は「powerful」なのが何かという点。「エスパーの風の魔法」なのか「エスパーが魔法で操る風」なのか。言い換えると「強い魔法」なのか「強い風」なのか。どっちともとれるよなあ。

 後半は、なんとなく雰囲気は伝わってくる英語を日本語訳するのが大変、という文章。「message」を「メッセージ、手紙、連絡事項、伝言」のどれにするかで全然変わってくるし、「compacted wind」というファンタジーっぽい感じをどうすればいいのか、とか。

 正直、あまり上手い訳ではない。おそらく間違ってはいない、という程度。

余談5:木曜日 《秘儀の聖域/Arcane Sanctum》

 訳の話。
原文:
 the Vedalken that live and study there have enchanted the clouds to create an area of permanently clear sky so that they can study the Filigree Texts more clearly

拙訳:
 そこに住み、勉学に励んでいるヴィダルケンたちが雲に魔法をかけて空の一部分が常に曇らないようにしており、そうすることで金銀の線細工が施された書物がより読みやすくなる、というわけだ。

 文の最初にある「that live and study there」というすっきり分かりやすい英語が意外と日本語にしづらかったり、空を晴れたままにする魔法と訳したいにも関わらず原文は「an area of permanently clear sky」となっていることで「空の一部分」と奥歯にものの挟まったような日本語になってしまったり、「the Filigree Texts」がなぜ大文字で始まるのか分からなかったり、読みやすくしたのではなく「more clearly」なので「より読みやすくした」としたり。

 そんなこんなが色々あった結果「いかにも翻訳文といった感じの固い日本語」が誕生した。これを、深いこと考えずに訳すなら以下のような感じかな。
拙訳(代替案):
 そこで勉学に励んでいるヴィダルケンたちは金銀の線細工が施された学術書の読みやすさのため、聖域の真上が常に晴れ間となるよう上空の雲に魔法をかけたのだ。

余談6:金曜日 《死の円舞曲/Macabre Waltz》

 MTG Wikiを見にいったら、まさにこの日の Card of the Day の記事から拾ってきたとおぼしき日本語文があった。視界に収める前に慌てて退散した(訳が引きずられてしまうので)。

 訳の話。
原文:
 They’re clerks, scribes, and in some cases, testaments to their owners’ majesty.

拙訳:
 彼らは事務官や書記官といった仕事から、時には自身の主人の遺書となることもあるという。

 「testaments to their owners’ majesty」はどうしたものか。「Testament」の訳の選択肢が多岐に渡る上に、どれを選んでもそれなりに文の意味が通ってしまうのが始末におえない。なお、くだんの MTG Wiki の訳では「主の威厳の証」としていた。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 アラーラの断片の固有キャラクターや背景世界の紹介。金曜日だけちょっと毛色が違うというかネタ枠というかだけど、まあいいじゃないか。

余談2:月曜日 《シーリアのエルフ/Cylian Elf》

 人名なのに「Cylia’s」ではなく「Cylian」なのか。人名の所有格(?)で形態変化を起こすパターンって現実だと何があるかな。とっさに思いつかない。シャーロキアン? いや、何か違うような。

 さらに余談。仕事柄、「~の」の形態変化で一番色んなパターンを見る機会があるのは「国名」。「America」が「American」、「France」が「French」、「Singapore」が「Singaporian」、「Bahrain」が「Bahraini」などなど。

 直感的に分かる国のが多いにしても、いまだに分からないものもある。すぐ思いつく例で言えば「Thailand」や「Bangladesh」などがそれ。「Thailandish」や「Thailandian」じゃないよな、多分。「~land」で唯一分かるのは「Holland」だけど、これは「Dutch」だからなあ。

余談3:火曜日 《大祖始の守り手/Keeper of Progenitus》

 盛大に原語を引用してしまった訳について。
原文:
 According to the elves of Naya, the Breaking of the World was caused by the great Progenitus, who tired of the world and unleashed five storms: Wildfire, Earthquake, Windstorm, Flood, and Void.

拙訳:
 ナヤのエルフたちによると世界の破壊(Breaking of the World)を起こしたのは《大祖始/Progenitus》であり、その理由は世界に飽いたためと言われている。《大祖始/Progenitus》は世界を破壊するべく5つの嵐(野火、地震、突風、洪水、虚無)を起こした。

 世界の破壊(Breaking of the World)とは特にアラーラの世界が断片へと分かたれてしまった事象を指す言葉らしい。5つの嵐も原文併記にしようかと思ったけど、原文でセミコロンが使われているため二重括弧になってしまうので止めた。

 ところで、5つの嵐と言うからには5つの色に対応しているかと思ったら、そんなことないのね。WildfireとEarthquakeは赤だし、WindstormとFloodは青だし、Voidは黒だ。赤と青と黒って名称なんだっけ。忘れた。

余談4:水曜日 《クァーサルの伏兵/Qasali Ambusher》

 到達を持っているが、射手ではない。樹上に潜んでるイメージなのかな。それなら飛行クリーチャーも迎撃しそう。ただ、それだと平地の有無関係ないな。

 細かいことは忘れて訳の話。
原文:
 Once, the Cloud Nacatl had a vast civilization in the treetops.

拙訳:
 一時、雲のナカティルたちは樹上に強大な文明を築いていた。

 「Vast civilization」も少し迷ったけど、話題にしたいのは冒頭部分。日本語で「ある一時期」という意味で「いっとき」という言葉がある。漢字にすると「一時」。13PMの意味の「いちじ」とも読める。

 「からい」と「つらい」と同じく、漢字で書いても……いや、漢字で書くことによって別の読み方と別の意味をとってしまう単語が苦手。しかしそうは言っても平仮名で「いっとき」はあまりにもあまりだし。

余談5:木曜日 《鼓声狩人/Drumhunter》

 この日のネタ(広い森の中、太鼓で連絡を取り合う)を読んだときに真っ先に思い出したのは指輪物語。別に指輪物語がこの種のネタの祖だと言い張るつもりではなくて、読んだのが随分前なので単に懐かしい、という話。

 ちなみに指輪物語の映画版では太鼓で連絡取り合うシーンは削られてる。

 訳の話。
原文:
 The roots of each of the trees has a different sound that they can instantly identify,

拙訳:
 木々の根はその種類によって、すぐに違いの分かるほどに異なる音が出るため ~

 訳しておいてなんだけど、太鼓を作るのに根っこって使うのかな。最初、反射的に「木の幹」と訳したあと、すぐ「Rootは根っこだ」と気づいた。

余談6:金曜日 《古霊の踏み行く処/Where Ancients Tread》

 古霊(≒パワー5以上の大型クリーチャー)を止めることはできない。だから彼らは行きたいところに行きたいように行く。そんな話なのかな。そしてその踏み行く先にいる対戦相手やそのクリーチャーはなすすべなく踏みつけられる(5点のダメージを受ける)という。

 召喚した瞬間に相手へダメージを与えることを考えると、狙った相手の頭上に大型クリーチャーを召喚してそのまま落下させてる、と考えるのも面白そう。いや、喰らってる相手からしたらたまったもんじゃないだろうけど。
余談1:先週のCard of the Dayとか

 先週のまとめを遅れて更新したのでリンクを張っておく。

  http://regiant.diarynote.jp/201411230348311129/

余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 金曜日は明らかにハロウィンを意識しているのが分かる。月曜日から木曜日がよく分からない。特にハロウィンと関係あるようにも思えない。

 ただなんかテーマ性がありそうにも見えて、月曜日から順に「天使」「不実」「堕天使」「生き埋め」と並んでいる。何かありそう。分からないけど。

余談2:月曜日 《戦誉の天使/Battlegrace Angel》

 単体で攻撃することを前提とすれば「5マナ 5/5 飛行 絆魂」となる。うん。いや、強いは強いんだけどさ、その昔「5マナ 5/5 飛行 絆魂 + 先制攻撃 + プロテクション2種」という化け物がいらっしゃったことをどうしても思い出してしまう。

 《大天使/Archangel》 「呼ばれた気がした」

 呼んでません。

余談3:火曜日 《不実/Treachery》

 こいつが出た当時は土地をアンタップさせないためにフィズらせようと(立ち消えさせようと)あれこれ苦労したものだけど、そもそも「5マナ払ってオーラを張る」という状況はパーミッション側が苦労するべき場面であって、なんでビートダウン側が骨を折らなくちゃいけないんだ。あらためて考えると本当にこのカードはおかしい。

 というのを言い表している箇所の訳の話。
原文:
 Or better than free, if you have lands that tap for more than one mana. This turned out to be too good.

拙訳:
 いや、もしプレイヤーが2マナ以上生み出せる土地を持っているなら、タダ以上の効果だ。これはさすがに強すぎた。

 最後の「This turned out to be too good」で困った。詳しく言うと「Turn out to be」の部分をどうするか。

  候補1:これによってこのカードは強くなりすぎた
  候補2:この効果は良すぎる
  候補3:これはさすがに強すぎた           ← 採用

余談4:水曜日 《堕天使/Fallen Angel》

 強いかどうかは難しいところだけど、絵のインパクトという意味では上位ランク入り間違いなしかな。まあ、いいや。訳の話。

原文:
 It had a shot at being in Tenth Edition, but the Selecting Tenth Edition vote went for Nantuko Husk instead.

拙訳:
 このカードは第10版で再度収録されるチャンスを得たが、「第10版を選ぼう」の投票結果は《ナントゥーコの鞘虫/Nantuko Husk》に軍配が上がった。

 最後を上手く「日本語」に出来た(適切な「日本語」を選べた)と思う。マジックの世界に軍配はないだろうけど、背景ストーリーの訳でもないし、いいかな、と。

余談5:木曜日 《生き埋め/Buried Alive》

 初めてベリードアライブデッキと出会ったときに驚いたのは、デッキの回し方もさることながら「アイスエイジはそこそこ買ってたのに、そのクリーチャー(= Ashen Ghoul)初めて見る」ということ。ネットの無い当時、新たなカードと構築デュエル中に出会うことは日常茶飯事だったんじゃよ……(遠い目)。

 こっちはパーミッションデッキだったけど、ラスも打消しも意味がないし、4枚のソープロだけじゃ足りないし、まさに天敵だった。あと「でも出たターンには殴れませんよね?」「ちゃんと速攻もってます」みたいな会話をした気がする。

余談6:金曜日 《All Hallow’s Eve》

 2009年のハロウィンにもまた同じカードがネタにされており、その内容も今回とほぼ同じだった。違う点といえばその上に乗せるカウンターの名前について触れていることくらい。

余談7:老魔法使いフェルドンの物語:ロランの微笑み

 久しぶりに長文を訳した気がする。きっかけは某ブログでこの記事へのリンクが貼られていて「誰か訳してくれないかなー」とあったので、出番かな、とリンクをクリックした次第。

 全くの初見の記事を読みながら訳していったので、途中で「これ以上もう読まないほうがいいんじゃないのか。これ、実はバッドエンドなんじゃないのか。ここらでやめたほうが精神衛生上いいんじゃないのか」と何度かギブアップしそうになった。

 最後まで読んでよかった。明るい学者さんが好き。しかし《フェルドンの杖/Feldon’s Cane》くらいしか名前の出てこないキャラにまでこんなストーリーが用意されてるとは……マジックすごいな。

 ちなみにカード化されたフェルドンについては以下のリンク先の記事で紹介されている。いや、実はカード化されたフェルドンをたった今初めて見たんだけど……手に持ってるのは……の頭だよね?

  StarCityGames.com:Feldon Of The Third Path
  http://www.starcitygames.com/article/29776_Feldon-Of-The-Third-Path.html

 背景ストーリー知らずに見たら、なんてことのない絵。

 さて、訳の話。

原文:
 Loran died in part because of that devastation.

拙訳:
 ロランの死因の一部は大破壊のせいと言える。

 選択肢が多くて迷った。「死因の一部は」「理由の1つには」「死んだ原因の一部は」「死を迎えることとなった一因は」などなど、色々見ているうちに何がなんだか分からなくなるパターン。

 直接の原因じゃないことが分かればいいや、が結論(いいのか?)。

原文:
 When she could not get out of bed, Feldon sat beside her and read to her, told her stories of his own youth, and listened to hers.

拙訳:
 彼女がベッドから起き上がれなくなったとき、フェルドンは彼女の傍らに座り、本を読み上げたり、自身の若いころの話をしたり、彼女の話に耳を傾けたりした。

 いや、訳に困った箇所じゃないんだ。何度も涙腺を刺激されたこの物語で、最初に泣きそうになったのがこのくだり。ゆっくりと、だけど確実に訪れる未来が見えてしまって…… (´・ω・`)

 あえて訳の話をすると「could not get out of bed」はそのまま訳すと「ベッドから出られなくなった」なんだけど、まあ「起き上がれなくなった」のほうが衰弱している様子を表す日本語としては、より適切かな、と。

原文:
 but when she took ill that last, final time, she had to surrender the garden to the weeds and the cold rains.

拙訳:
 その後長く(その生涯の果てまで)続いた病の前に、ついに諦めざるをえなかった。そして庭園ははびこる蔦と冷たい雨へと明け渡された。

 庭園の手入れについて語られている箇所。御覧の通り、後半は原文に沿っていない。「ロランは病のために、庭園を蔦や冷たい雨へと明け渡さざるを得なかった」のほうが原文に近い。どちらが読みやすいか、で決めた。

 さらに言うと、前半の括弧でくくった部分も迷いがある。「その後、長いこと続くこととなった病、そうその人生の最期まで続いた病」という「意味」の文章を、どう「日本語に訳す」か。

 英語のコンマでくくられた部分はやっぱり難しい。まあ、そういう文法的な部分はさておいても「生涯の果てまで」は、あらためて見ると、ちょっと……もう少しなんとか出来たような気もする。

原文:
 Feldon’s tears were lost in the rain.

拙訳:
 フェルドンの涙は雨の中に溶けて行った。

 あからさまな意訳。ここはとことん行ってよし、と勝手に判断した。

原文:
 He could not keep the life within her. His magics had failed him and had failed his love.

拙訳:
 彼女の中に命を留めることも出来なかった。彼の魔法は為すべきことを為せなかった。彼の魔法は、彼の愛を救えなかった。

 後半の文章が難しかった。「His magics has failed him and had failed his love」って、どういうことだ。日本語に訳すのが目的である以上は「彼の魔法は彼に対して失敗し、彼の愛を失敗させた」と訳すわけにはいかない。

 色々と考えた挙句「きっとこういう意味だ」と踏み切った。後悔はない。

原文:
 He pulled the energies from those lands, as he learned to do in Terisia City with Drafna, Hurkyl, the archimandrite, and the other mages of the Ivory Towers.

拙訳:
 彼はこの土地から力を引き出すことが出来た。彼はその業をテレシアの町にある象牙の塔で、ドラフナやハーキル、また修道院の長や他の魔法使いたちとともに学んだ。

 てっきり「archimandrite」はマジック世界の用語かと思ったら、現実にある言葉(修道院長)だった。びっくりだ。

 ちなみに、たった今、あらためて原文を読んでちょっと不安になった。まさかとは思うけど「Hurkyl, the archimandrite」で一語じゃないよな……(MTG Wikiチェック中)……え!? ドラフナとハーキルって夫婦なの!?(そっちか)

原文:
 The wire arrived, and the gears (iron, not brass), sheets of copper, and some of bronze.

拙訳:
 金属の紐、真鍮ではなく鉄の歯車、銅の板(一部は青銅)が届けられた。

 今回の翻訳に際して、古き良き(?)ファンタジー翻訳に沿う形で、固有名詞以外のカタカナを出来る限り避けてみた。ギアではなく歯車、ワイヤーではなく金属の紐。

 個人的な趣味嗜好ではあるけど、そのほうが「魔法の物語」な気がして。

 ついでにこの箇所の訳について書いておくと、訳そうとしたとき「あれ? Brassって日本語でなんだっけ? えーと《City of Brass》の日本語版の名前が……思いだせない」と悔しい思いをした(どうでもいい)。

原文:
 She had studied with Urza himself and knew something of artifice.

拙訳:
 彼女はウルザ自身とともに学んだことがあり、今回の彼の企てに必要な知識について知っている可能性があった。

 ロランの蔵書を書庫に広げるシーン。最初に読んだとき「Artifice」を「Artifact(アーティファクト)」の変化形かと勘違いして「ロランはウルザとともに学んだことがあったためアーティファクトについて何か知っている可能性があった」みたいな意味に解釈してしまった。

 その後、もう一度「Artifice」の単語が出てきたときに間違いに気づいた。「Artifice」で「陰謀、策略、企み」という意味だった。あぶないあぶない。

原文:
 Later she lost the use of one of them, crippled by Ashnod. He went back and forth, removing and replacing the arm. Finally he restored the statue to its complete state.

拙訳:
 のちに彼女はアシュノッドによってその片方を失った。彼は同じようにその腕をつけかえた。そしてついに彼は人型を完全にすることに成功した。

 実はいまだに原文の意味が分かっていない。アシュノッドと相見えた際に片腕を失った(動かせなくなった)ということまでは分かる。

 その直後にある「彼は忙しく動き回って、腕を取り外し、別の腕と取り換えた」というのはいつの話だ。実際のロランの腕か? それとも機械人形のことか? 実在のロランのようにわざと機械人形の片腕も不自由にしたのか?

 よく読むと分かるけど、日本語はすごい曖昧な文章になってる。良くない。

原文:
 The package contained a note as well, signed by Drafna, master of the School of Lat-Nam. It said simply, "I understand."

拙訳:
 小包には短いメモが付随していた。そこに記されたサインはラト=ナムの学院長であるドラフナのものだった。メモにはただ一言「分かりました」とあった。

 読みながらのリアルタイム翻訳だったので、最初に訳したときはこの「I understand」がこの物語のキーとなる言葉だと気づかなかった。まあ、それでなくても、この短いフレーズが非常に深い意味を持っていることは分かった。

 ドラフナが何に対して「understand」と言ったのか。

 「I understand what you want, and has packed it for you」なのか「I understand why you wished this powerstone」なのか「I understand your feeling」なのか……いかようにでも受け取れるこの短い言葉を日本語訳するのか。困った。

 一瞬だけ「分かりました(I understand)」と併記しておこうかとすら思ったほど。さすがにやめたけど。

原文:
 The Loran he had built was a creature of copper skin and geared muscles.

拙訳:
 彼が生み出したロランは銅の肌と歯車の関節を持った化け物にすぎなかった。

 意訳の範囲を超えているかもしれないけど、ここで「筋肉」という言葉はなんか雰囲気を壊す気がしたんだ。それに歯車だから関節部分としてもいいと思ったんだ(駄目かもしれない)。

原文:
 In the week that followed Feldon returned to the fireside, staring into the flickering flames as if they held some secret.

拙訳:
 その1週間のあいだにフェルドンは再び暖炉の傍へと戻っていた。揺れる炎をただ見つめていた。まるでその中に彼の知らない秘密を隠しているのではないかと疑うかのように。

 末尾が原文(if they held some secred)と意味が異なっている。意図的に変えた。理由は上手く説明できない。そのまま訳すこともできたけど、こっちのほうが本来の意味なんじゃないかと思ったから。

原文:
 Now it was a barren landscape, its soil runneled and ravined by eternal rain.

拙訳:
 現在のこの地は荒野が広がるばかりで、絶え間ない雨が生み出す小さな川がそこかしこの山峡を縫うように流れていた。

 何度読んでも原文がよく分からなかった。「runnel」が「小さな川」であり「ravine」が「山峡」なのはいいとして、それらの動詞形が使われている。「Soil(大地)」が「小川してたり、山峡してたり」する?

 あらためて読みなおすに、延々と降り続く雨のせいで大地に川や谷が刻み込まれた、という意味かな。そうだとすると今の訳は間違っているな。

原文:
 Instead, he taught Feldon of the woods, and they crossed and re-crossed his small domain, which he had so laboriously held against all invaders.

拙訳:
 そのかわり、彼はフェルドンに森の力を伝授した。彼らはともに隠者の領域であるその小さな森を端から端まで何度も往復した。隠者が侵略者に対抗するべく精力的に行ってきたように。

 長々と引用したけど、単に「laboriously」が分からなかった、というだけの話。「Labor」という言葉の仲間なのね。理解した。

2014/11/28 追記
 これ、訳が間違ってた。最後の「which he had ~」は(森を往復したことではなく)「his small domain」にかかってるんだ。「he had so」の「so」は「~のように、そのように~」の意味じゃない。「非常に、とても」の「so」だ。

  誤:森を往復した。隠者が侵略者に対抗するべく精力的に行ってきたように
  正:森を往復した。隠者が侵略者に対して全力をかけて守ってきたその森を

原文:
 "Is this one who is dear still alive?" he asked.

拙訳:
 「そのお相手はまだ生きてるのかい?」と彼は尋ねた。

 隠者の口調をどうしようかな、という話。森を護る隠者とはいえ、すでに狂いかけてまともではない、という境遇の彼にふさわしい口調は、少なくとも真面目な「ですます調」ではないだろう、と。

 この後も色んなキャラが登場するけど、それぞれ口調をどうしようかは思案のしどころだった。日本語は口調一つで随分と印象も変わってしまうものだから。

原文:
 Where once there were expanses of white beach now only leprous gray moss flourished, and the lake itself was little more than wide expanses of stagnant, oily water broken by pungent algae blooms in greasy shades of green and red.

拙訳:
 白い砂浜が広がっていたであろう場所には今やまだらに灰色の苔がはびこっているだけだ。澱んだ湖水は粘り気を見せており、その湖面には鼻にツンとくる刺激臭を放つ藻類が緑や赤にてらてらと光っている。

 知らない単語のオンパレード。やっぱりファンタジーの情景を描こうとすると、経理や営業の仕事ではなかなかお目にかかれない英単語が大量に登場することになるのな。具体的には「leprous」「pungent」「algae」など(なお、単に知識量が足りてないだけ、ということは分かっているのでツッコミ無用)。

原文:
 The provender seemed insufficient for such opulent surroundings, but Feldon said nothing and accepted the sorceress’s hospitality.

拙訳:
 その食べ物は彼女の豪勢な身なりにはふさわしくないようにも感じられたが、フェルドンは何も言わずにただ魔女の馳走を拝領した。

 あえてちょっと気取った日本語にしてみた。場面が場面だし、いいかな、と。

原文:
 "She isn’t real," cried Feldon, spitting out the words.

拙訳:
 「現実じゃない!」
 フェルドンは言葉を吐き出すかのように叫びを上げた。

 ここのセリフの訳はなかなか手こずった。「彼女は本物じゃない!」「彼女は現実じゃない!」などの素直な訳から「彼女はどこだ!」などの意訳も含めて、色々タイプしては消してた。

 最後には「怒りに駆られたているから極力短く、でも出来る限り原文に即した形で」ということで、今の形にしてみた。迷った。

原文:
 "Ah," said the master, "and your love is such a pale, insubstantial thing that you cannot part with a hunk of metal for it."

拙訳:
 「おやおや」と男は言った。「お前の愛はそんなものか? なんと薄っぺらく儚いものだろう。そんな鉄くずの塊ひとつ手放せないとは」

 意図的に原文の単語を無視した箇所の1つ。具体的には「hunk of metal」を「金属の塊」ではなく「鉄くずの塊」としたところ。「金くず」という選択肢もあったかな、と今更気づいた。

原文:
 Something heavy and wet thumped against the door, sounding like a bag of wet earth. Slowly Feldon pulled himself to his feet (he no longer had his cane) and shuffled to the door. The door gave another sloshing thud and then another, as Feldon reached it and grasped the knob.

拙訳:
 何か重たく濡れたものが扉にぶつかる音がした。まるで濡れた袋を叩きつけたような音だった。フェルドンはゆっくりと苦労して立ちあがった(彼は頼りとなる杖を失っていた)。そして扉に急いだ。扉をもがくように叩く音が再び響いた。そしてまた。フェルドンは手を伸ばしドアノブをつかんだ。

 全体的に難しかった。要はホラー小説を書かないといけない箇所だったので、ここの前後も含めて、不気味で救いのない雰囲気をかもしだす文章を模索する必要があった。大変だった。

 あと「thumped」「shuffled」「sloshing」「thud」などなど、この沼地に訪れてからは知らない単語がまたぞろ一気に現れて大変だった。

原文:
 "But what about when I use fire," asked Feldon, "or when the hermit calls a great wurm?"

拙訳:
 「しかし実際の火を操ることもあるし、隠者が呼びだした巨大なワームは?」

 このフェルドンのセリフの意図するところを読み解くのが難しかった。何しろ直前で学者が小難しいことを言い出したせいで、フェルドンと同じくらい混乱していたので。

 ちなみにこれに対する学者の回答は「Yes, in those cases it is a real fire and a real wurm, but the magic alters it.(確かにその場合は実際の炎や実際のワームが操られてることになる。だけど結局は魔法の力で変容させられたものだ)」。

 フェルドンの言う場合は「本当の炎と本当のワームが出現している」らしい。だからそう意味にとれるようにあえて「実際の火」などと訳してみた。学者さんの言うことは難しい。

原文:
 Both scholars nodded. Feldon found the duplication unnerving and dismissed the part of the spell that held the magical scholar in place.

拙訳:
 2人の学者が同時に頷いた。フェルドンは複製した学者が煩わしくなったので魔法の力を打ち切った。

 ここは原文を読んでて笑ってしまった。いちいち同じ動作しなくても。

原文:
 "You can summon your lost love back," said the scholar, "if that’s what you truly want."

拙訳:
 「失った恋人を召喚すればいい。もし君が本当にそれを望むならね」

 どこか抜けたところのある学者からかけられた最後の言葉に、いきなりスッと頭が冷えるような感覚があった。そんな感覚を味わってもらえるような日本語訳にしたかった。

 成功したかどうかは読んでもらった方にしか分からないことだけど、成功していたら、とても嬉しい。

原文:
 The joy of life with her and the sadness of her departure felt like a great bubble rising within him. He fed his memories of the land into that bubble, memories of the mountains, the forests and shore, the swamps and the temple, and he filled it with power and life.

拙訳:
 彼女と共に過ごした楽しい日々、彼女を失ったときの悲しい日々がまるで巨大な泡のように彼の内側から浮かんできた。フェルドンはそれぞれの土地で得て来た記憶をその泡に込めた。山々で過ごした記憶、森で、岸辺で、沼で、神殿で過ごした記憶を魔法と生命の力で泡に込めた。

 何が起きてるのやらよく分からない、魔法の描写。雰囲気さえ伝わればいいか、と考えて訳した。ここについては訳し間違えててもバレないんじゃないかなあ、と思ったことは秘密だ。

原文:
 "Why am I here?"

拙訳:
 「私はここで何をしているのかしら」

拙訳:
 「私はなんでここにいるのかしら」

 同じ言葉が何度も出てくるけど、訳し変えている。英語は(日本語と違って)曖昧さがなくてハッキリとしている、と言う人がいるが、同意できないのは、こういう訳をしているとき。

 だってロランのこの「Why am I here?」をどう受け取るかは読んだ人次第なんじゃないかと……それでも訳すのだけれど。

原文:
 The spell-Loran paused, then smiled slightly.
 "I understand," she said at last.

拙訳:
 ロランはじっと動かなかった。そしてかすかに微笑み、最後にこう言った。
 「分かったわ」

 物語を通じて何度も登場する「I understand」の1つ。このあと、フェルドンも消えゆくロランを前に「I understand」と呟く。

 さて、最後は、この物語を最後まで読んで良かったと思わせてくれた、そんな会話を書き記して終わろうかと思う。
原文:
 "That is what you truly wanted?" asked the scholar.
 "That is what I truly wanted," said Feldon.

拙訳:
 「それは君が本当に望んだことだったのかい?」
 「それが私が本当に望んだことだったんだ」

余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 当時、発売直前(直後?)だったアラーラの断片のカードたち。今週はグリクシス(黒を中心とした青黒赤)の断片に関するカードたちがテーマだった模様。月曜から順に「デーモンとそれが住まう地」「人間を裏切りアンデッドに身を堕とした王」「死体を鑑定するゾンビ」「ゾンビの好物」「デビルとデーモンの関係性」。こうゾンビの話が多いと思い出すのが、ゾンビのテーマ週間に書かれた以下の記事。

  原文:
   I cc: Dead People
   http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/mr61

  拙訳:
   このカードはゾンビですか?
   http://regiant.diarynote.jp/201102260801103424/

余談2:月曜日 《アンクスの大悪魔/Archdemon of Unx》

 「Unx」ってマジック世界で一番短い地名かもしれない、とか思いつつ訳の話。
原文:
 It was once a grand stadium but now spawns only pain. And archdemons. And also skittering skeleton-things.

拙訳:
 かつてはそこに大闘技場が存在もしていたが、
 今そこから生み出されるものは苦痛のみだ。
 ああ、それと大悪魔も生み出されている。
 そうそう、ついでに元気に蠢く骸骨たちも生み出されているね。

 素直に(愚直に)訳すのであれば「~苦痛のみだ。それと大悪魔だ。それとまた動き回る骸骨などだ」となるけど、このままでは冗談めかした原文に対してあまりにも無味乾燥に思われたので「ああ、それと~」とか「そうそう、ついでに~」とか付け加えてある。

 ところで、拙訳ではさらっと誤魔化してあるけど「skeleton-thing」って、なんだろう。「骸骨的な」? 「骸骨やそれに類するもの」? 「骸骨っぽい見た目」?

余談3:火曜日 《裏切り者の王、セドリス/Sedris, the Traitor King》

 セドリスやグリクシスについてMTG Wikiを参照しに行ったらこの Card of the Day の記事を参照(翻訳)したとおぼしき箇所があって、かぶらないようにしないとまずいな、と思った次第。しかし本当に背景設定について困ったときに MTG Wiki は頼りになる。感謝。

 訳の話。
原文:
 Now, he rules as a powerful lich over the land known as "Grixis"―Vithian for "Traitor".

拙訳:
 そして今や彼は力あるリッチとしてグリクシスという名で知られる地を治めている。その名はヴィティア語で「裏切り者」という意味である。

 細かい点としては、ダブルクオテーションを鍵括弧にするかどうか、とか、「Vithian」を「ヴィティア語」にするか「ヴィティアの言葉」にするかどうか。

 それより迷ったのは語順。やはり「グリクシス……それはヴィティア語で「裏切り者」を意味するッ!」というのがオチなわけで、この「裏切り者という意味である」は文末に置きたい。

 当然「グリクシス」という単語はその直前に置きたい。しかし日本語だとそれが難しい。「グリクシス」の直後に「それはヴィティア語で ~」とおこうとした場合、体言止めを使う必要がある。

 仮にやるなら「力あるリッチとして治めているその地はグリクシス、ヴィティア語で「裏切り者」という意味だ」のようになる。ただ体言止めはあまりにも……なんというか……小説表現というか、訳す側の主張が強すぎるような気がして避けたかった。

 そんなこんなで平易な日本語文をとるかわりに原文より長くなった次第。

余談4:水曜日 《死体の鑑定人/Corpse Connoisseur》

 軽い叙述トリックみたいなネタだった。「黒い帽子のコレクター」と言ったら「黒い帽子をコレクションしている人」であると同時に「黒い帽子がトレードマークの(何かの)コレクター」という意味にもとれる、みたいな。

 ただ「死体の鑑定人」のカード名は確かに両方の意味にとれるんだけど「肉袋の匪賊」はちょっと厳しい。職業名(?)である「匪賊」を見て「ああ、略奪者の意味をもつ古語ね」と知ってる人がどれだけいるのか。

 これはちょっと原文も交えて話したいのでここで訳の話。

原文:
 Compare this to Fleshbag Marauder, who, as far as we know, does not maraud fleshbags.

拙訳:
 《肉袋の匪賊/Fleshbag Marauder》と比較してみるとよく分かるだろう。我々の知る限り、この匪賊は肉袋を略奪したりはしない。

 英語の「Fleshbag Marauder does not maraud fleshbags」という軽快な文章が、日本語にすると「肉袋の匪賊は肉袋を略奪したりはしない」となってしまう。かと言ってカード名ネタなので「肉袋の略奪者は肉袋を略奪したりはしない」では(公式訳的に)意味が通らない。ジレンマ。

 ちなみにマジックと全く関係ない話をすると「Marauder(マローダー)」と聞いて真っ先に思い出すには「ブレイド・オブ・アルカナ」というTRPGシステム。ヒーローが悪堕ちすると変化してしまう超生命体が「マローダー」。大抵の場合、これがシナリオのラスボスになる。

余談5:木曜日 《荒廃稲妻/Blightning》

 《荒廃稲妻/Blightning》の極意、それは《精神腐敗/Mind Rot》と《溶岩の撃ち込み/Lava Spike》を組み合わせた全く新しい呪文。この呪文が活躍しだしたときに意外に思ったのは「あまり強くない2枚も、そのまま1枚となると強いんだな」ということ。

 単に《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》が強かった可能性もあるけど、訳の話。

原文:
 According to the flavor text of Blightning, the smell of smoldering brain matter is a rare treat. This, of course, makes perfect sense given the number of zombies on Grixis.

拙訳:
 この《荒廃稲妻/Blightning》のフレイバーテキストによると、脳みその燻る臭いは「珍しいご馳走」らしい。これはもちろんグリクシスに大量のゾンビがいることを考えればむしろ当然ともいえることだ。

 ポイントは2文目の冒頭にある「of course」の意味。これをどうとるかで訳が変わる。何が「もちろん」なのか?

  1.「脳みそがご馳走」なのは当たり前である
  2.「脳みその燻る臭いが珍しい」のは当たり前である

 ゾンビは「汁気たっぷりの脳みそ(nice juicy brains)」を好むので「燻る臭いのする脳みそ(smell of smoldering brain)」を見かけることは珍しいのは至極当然である、という意味かな、と考えて訳してみた。

 ちなみにその他の候補。

  没訳:グリクシスに大量のゾンビがいることを考えると実に筋が通っている
  没訳:グリクシスに大量のゾンビがいるという事実の確かな裏付けとなる

余談6:金曜日 《災いの悪魔/Scourge Devil》

 そもそもデーモンとデビルって何が違うの、と思いつつも違う点から訳の話。
原文:
 Devils on Grixis are small, not that smart, and exceedingly sadistic.
 In order for the demons to rely on the devils’ loyalty, a fresh supply of helpless victims is always necessary.

 これをまず直訳気味に訳してみると……
直訳版:
 グリクシスに住まうデビルたちはあまり大きくなく、あまり賢くなく、そしてきわめて嗜虐的である。
 デーモンたちはデビルの忠誠を信用するため、無力な生け贄たちの新鮮な供給を常に必要としている。

 逆に単語ごとの訳を捨て、とことん意訳してみると……
意訳版:
 グリクシスに住まうデビルたちは比較的小さい体を持ち、あまり賢くもないが、きわめて嗜虐的な性質を有している。
 彼らを使役するデーモンたちはその忠誠心をつなぎとめるため、無力な生け贄たちを絶え間なく供給する必要に迫られている。

 両方を試しに作ってみた上で、すり合わせてもみると……
拙訳:
 グリクシスに住まうデビルたちは比較的小さく、あまり賢くもなく、そしてきわめて嗜虐的な性質を有している。
 デーモンたちはデビルたちの忠誠心をつなぎとめるため、無力な生け贄たちの絶え間ない供給を常に必要としている。

 ……という感じ。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 当時、発売直前(直後?)だったアラーラの断片のカードたち。それ以外に特に共通点はない模様。タイプも「伝説のクリーチャー、クリーチャー、インスタント、クリーチャー、クリーチャー、」と様々、色も「(白)(青)(黒)、(赤)、(青)、(緑)、(白)」と様々。

余談2:月曜日 《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》

 「伝説の」というタイプ(?)についてネタにしている記事。当時と今とでは「伝説の」扱いが異なっているので、念のため付記しておいた。

 個人的な話。マジックを遊び始めた頃は、第4版 + アイスエイジ + クロニクル 辺りを使っていたので「伝説の」クリーチャーを使う機会はそこそこあった。すぐ思い出せる範囲では、絵が綺麗だったのでデッキに入れてた《Skeleton Ship》や、《Burnt Offering》するためにリアニメイトデッキに入っていた《アクセルロッド・グナーソン/Axelrod Gunnarson》など。ワールドエンチャントとの挙動の違いに仲間と悩まされたのもいい思い出。

 訳の話。

原文:
 For Sharuum the Hegemon, being Legendary is not a drawback. (中略) they can even be played if one’s already in play on the other side of the table

拙訳:
 《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》の場合、伝説のクリーチャーであることは決してデメリットというわけではない。(中略) 対戦相手がすでに《覇者シャルム/Sharuum the Hegemon》を出していてもプレイすることは可能だ

 あらためて読み直してみると「対戦相手がすでに出していてもプレイすることが出来るから、伝説のクリーチャーであることはデメリットではない」という文脈はおかしい気がする。これだけだと「伝説であること」はデメリットな気がする。少なくともメリットではない。デメリットと訳すべきは「Disadvantage」の場合であって「Drawback」はもっと適切な訳があるかも。

余談3:火曜日 《ヴィーアシーノの骸骨/Viashino Skeleton》

 ヴィーアシーノと言えば「赤」で、骸骨と言えば「黒」。色のフレイバーとしては何ら問題ない。ただ「4マナ 2/1、能力は再生のみ、しかもコストが手札」はさすがに弱すぎないかなあ。当時って墓地を肥やすのがそこまで強い時代だったっけか。

 訳の話。

原文:
 It doesn’t seem quite fair that a skeleton can get Skeletonized, does it?

拙訳:
 ところで骸骨を《骸骨化/Skeletonize》できるのはちょっとズルい気がするんだけど、君はどう思う?

 色々とツッコミどころのある訳だろうと思われるけど、個人的に一番気にしているのは、原文にないにも関わらず文頭につけた接続詞、「ところで」。最後の一文だけ、あまりに直前の話題から飛んでるので、付けずにはいられなかった。

余談4:水曜日 《陸亀の体勢/Tortoise Formation》

 Wikipediaによると、ローマ軍歩兵の隊列の一種である「テストゥド」は、英語で「Tortoise Formation」とも呼ばれるらしい。日本語訳の「~の体勢」と言われると、いまいち移動する感じを受けないのが残念。あえて翻訳テンプレートをガン無視するなら《隊列:亀の型》かな。まあ、イラストを見ると、どうみても動くつもりなさそうなので公式日本語訳のが適切かもしれない。

余談5:木曜日 《神触れ/Godtoucher》

 その昔、少年ジャンプに「神撫手」という漫画が連載されてたな。

余談6:金曜日 《鋤引きの耕し獣/Yoked Plowbeast》

 頭からつま先まで難しかった訳の話。

原文:
 While the elves look on the gargantuans of Naya with awe, the humans are more down-to-earth. The Yoked Plowbeast exemplifies the humans’ approach to these massive creatures.

拙訳:
 ガルガンチュアンにナヤのエルフたちが畏怖をもって接しているのに対して、人間たちはもっと現実的だ。人間たちがこれらの大型クリーチャーにどのように接しているのか、この《鋤引きの耕し獣/Yoked Plowbeast》がよく示している。

 1つ1つ順番に。

 (1) look on A with awe

 「畏れ、敬愛」をもって何をしているのかというと「look on」しているらしい。「見ている」わけでも「眺めている」わけでもないだろう。でもさすがに「look」を「崇めている」として良いものか。

 (2) be more down-to-earth

 そのまま日本語でも「地に足をつけた」という意味があるけど、じゃあそう訳せば意味が通るかというと別問題なわけであって「エルフたちはガルガンチュアンたちを崇めている。人間はもっと地に足をつけている」だとわけが分からない。

 (3) exemplify A’s approach to B

 「AのBに対するアプローチの好例である」らしい。アプローチという外来語に英語の「approach」が持つニュアンスが含まれているのか、いまいち自信がなかった。

 そもそも「鋤引きの耕し獣が良い例」で文章として意味が通るのか。「鋤引きの耕し獣に対する人間の扱い方が良い例」と補わないと日本語になっていない気がするような気もするし、いやいや読めば分かるだろ、という気もするし、うーんうーん。

 難しかった。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 これといったテーマが見えなかった週。あえて言えば「時間や空間の隔たりや関係性」を感じる内容だったかもしれない。ただ、なんとなくそう思ったというだけで、テーマとは到底呼べないけども。

 月曜日 《月抑え/Moonhold》
                   ゴブリンと周囲の空間の間に生じている裂け目について

 火曜日 《ティラナックス/Tyrranaxht》
                   ダークスティールとフィフスドーンの間に生じたこと

 水曜日 《ワタリガラスの使い魔/Raven Familiar》
                   トレイリアの魔術師と使い魔の間にあるつながりについて

 木曜日 《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》
                   ミラディンから第9版の間に生じたレアリティ変更のこと

 金曜日 《Freyalise Supplicant》
                   ホームランド、インベイジョン、コールドスナップ、
                   さらに時のらせんの間に登場し続けたフレイアリーズの話

 書き出してみると本当に関連性ないな。もしかしたらカード名の単語が特定の創作作品を表しているというパターンなのかもしれない。まったく思いつかないけど。

余談2:月曜日 《月抑え/Moonhold》

 全般的に訳が難しかった訳の話。

原文:
 Luckily for these goblins, things return to normal shortly.
 But what does "shortly" mean to the one inside the frozen time?

拙訳:
 これらのゴブリンたちにとっては幸運なことに、すぐに全ては正常に戻るはずだ。
 しかし凍りついた時間の内側にいるゴブリンにとっての「すぐ」とは一体?

 訳が難しかった言葉と言い回しは、1つ目の文では「Things」と「Normal」、2つ目の文は「what does "shortly" mean」。

 こういう「Things」みたいな「物事というか世界というか万物というか、まあ、どう訳してもいいよ」という単語はやっぱり難しい。夜ごはん? なんでもいいよ。そんな物ぐさ父さんに通じるものがある。

 その次の「Normal」って何だよ。時間の流れがどうなると「Normal」なんだ。普通に戻るのか、正常に戻るのか、通常に戻るのか。静止した時間が動きだせば「Normal」なのか。難しい。

余談3:火曜日 《ティラナックス/Tyrranaxht》

 訳の話。
原文:
 The Tyrranax is a large (10 feet tall and 25 feet high, according to the art description) beast that lives in the Tangle, the twisted forest from which the green sun burst forth at the end of Darksteel and launching the Fifth Dawn.

拙訳:
  《ティラナックス/Tyrranax》は絡み森に生息している巨大生物だ(イラストレーターへの指示書によると10フィートから25フィートほどの大きさとある)。ちなみに絡み森というのは、ダークスティールの終わり頃に緑の太陽が生じた場所であり、緑の太陽の誕生はフィフス・ドーンの始まりでもあった。

 丸ごと引用してしまったけど、要は「原文は1文だけど分かりやすさ優先で小分けにした」という話。何しろ原文がバケツリレーのように収縮文を次々とぶら下げているので、日本語の形にしづらかった。

 あとちょっと困ったのは歴史というか時系列。訳したはいいけど、本当に「1.ダークスティール」「2.緑の太陽の誕生」「3.フィフス・ドーン」の順で時系列が正しいのか自信がなかった。

 個々のカードのフレイバー解釈が好きなだけで、背景ストーリーはあまり追ってないんだよなあ。これでもヴォーソス勢に混ぜてもらえるのか、少々不安。

余談4:水曜日 《ワタリガラスの使い魔/Raven Familiar》

 懐かしい。カードを1枚引ける上に「チャンプブロックすればエコーを払わずに済むのが逆にお得」な気がしてしまって、対戦相手も攻撃の手が鈍る、という「一粒で二度も三度も美味しい」クリーチャー。

 召喚するだけで幸せな気持ちになれるクリーチャーはそう多くない。

 基本的にエコーは払われないんだけど、たまにそのまま殴りだして、意外と無視できないダメージを稼ぎだしたりもする。相手からしてみると本当にうざかったろうなあ。

余談5:木曜日 《ロクソドンの戦槌/Loxodon Warhammer》

 訳の話。
原文:
 But when it was put into Ninth Edition, it was bumped to rare, largely because of its effect on drafts.

拙訳:
 第9版に収録されるにあたり、レアに格上げされた。その理由の大半はドラフトに与える影響のためだ。

 末尾の「its effect on drafts」をどこまで訳すか。「強すぎる」「バランスを崩す」ということを含めるかどうか。原文に忠実に訳すならそこまで入れる必要はないんだけど……入れてもいい気もして、でも結局「原文尊重」にしてみた。

余談6:金曜日 《Freyalise Supplicant》

 この記事から4年後にフレイアリーズ本人がカード化されるとは読者の誰も(もしかしたら記事の著者でさえ)予想できなかったに違いない。さらに、まさか短髪で眼帯を着用しているとは……びっくりだ。

  イゼ速(フレイアリーズが紹介されてる記事)
  http://izesoku-mtg.doorblog.jp/archives/40967823.html

 ちなみにフレイアリーズって名前、昔遊んでた頃から聞き覚えはあるんだけど、実際にその名を冠したカードをデッキに入れた記憶がほとんどない。

 友好色のクリーチャーを生け贄に捧げて対象にダメージとか、相手が黒の呪文を唱えた際に(緑)(緑)でカード引けるエンチャントとか、敵味方のタップを中途半端に阻害するとか……あらためて見ても、遊び始めた頃の初心者が使うようなカードじゃなかったし、今見てもやっぱり弱い気がする。

 はてさて、ご本人はご活躍できるのか。

余談7:シューティング近況

 先日、久しぶりに「赤い刀 真」を遊んで、初めて1面クリア時に5000万点を超えることができた。そのまま3面までノーボム、4面終盤で1ボム、5面中盤と終盤で2ボム、6面終盤で1ボム、6面ボスで2ボムで真ボス到達。

 前回の反省を生かして積極的に前半にボムを連打。相手がレーザーを撃ってる最中に形態変化させることで念身アイテムを大量回収。念身のままで押しきれるかと思いきや、被弾しすぎて早々に解除する羽目になり、1本しかない刀に身を任せて接敵。

 最後はオートボムで稼いだ時間の隙に距離を取って、弾幕が復活するまでの短時間にぎりぎり撃破。残機もボムもゼロの薄氷の勝利。最後は21億点ちょいだったはず。

 そろそろ次のタイトルに手を出すか、と思いつつネシカ筐体に座ると「斑鳩」が目に入った。ああ、そういえばネシカに入ってるんだっけ。

 シューティング勢を名乗るなら避けては通れないけど、そのあまりにパターンを強いてくるスタイルに耐えきれず、避けてきたタイトル。もう一度トライしてみようかな、と最近また遊び始めた。

 最初は「敵が白だから白に切換え」と考えながら遊んで、すぐに本質に気づいた(というか思い出した)。「考えるな。覚えろ」だ。道中もボス戦も「判断する時間」はない。

 逆に考えれば、反射神経や瞬間的な判断力は求められないわけで、年齢的な衰えはあまり障害にならないとも言える。ネットと動画で予習するかなあ。

 ここまでがアーケードの話。ここからコンシューマ。

 実は中東に住んでた頃、友人が使わなくなったという理由でXBOX360をタダでくれたことがあった。喜び勇んで、一次帰国時にシューティングタイトル(「エスプガルーダ2」「怒首領蜂大復活」。両方とも初回限定版)を購入。

 しかし中東の自宅にあったテレビがXBOX360と上手く接続できず、使えなかった。さらに数年前に帰国してから今までずっとテレビのない生活に突入したため、押し入れに眠りっぱなし。

 先月ついにテレビを購入したので、まだ動くかどうか怪しいながらも接続してみることにした。そしてケーブルが紛失していることに気づく。なんてこった。

 先週末に電器店でケーブルを購入。ここまでして本体が故障してたらがっかりだな、と不安になるも、あっさり起動に成功。さっそく「エスプガルーダ2」を起動。

 アーケードモードってこんなドット粗かったっけかと首をひねったり、XBOX360版のグラフィックが綺麗すぎて感動したり、「おねーちゃーん!」「よくも……よくもツバメを!」とブラコン少女に怒られたり、サントラをPCに取り込んだり。

 さらに「アーケード版」「ブラックレーベル版」以外に「ノービス版」とかいう謎のモードがあったり、説明書によるとクリアすれば「おまけモード」も見られるようになるらしかったり……先は長い。

 パッドだとレバー操作が難しいし、さらには「ショット、連射、覚醒、ボム」のボタン割り振りも悩みどころなので、そのうちスティックも買ってしまいそう。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 変化前と変化後があるために、複数回カード化されたことのあるマジックの背景ストーリーのキャラクター、かつその変化後のカード。まあ、いくつかは前後(Before、After)ではなく並行世界(Parallel)だけど。

 月曜日
    変化後:《呪われたミリー/Mirri the Cursed》
    変化前:《猫族の戦士ミリー/Mirri, Cat Warrior》

 火曜日
    変化後:《汚らわしき者バルソー/Balthor the Defiled》
    変化前:《頑強なるバルソー/Balthor the Stout》

 水曜日
    変化後:《堕落した者アーテイ/Ertai, the Corrupted》
    変化前:《熟達の魔術師アーテイ/Ertai, Wizard Adept》

 木曜日
    変化後:《贖われし者、ライズ/Rhys the Redeemed》
    変化前:《放浪者ライズ/Rhys the Exiled》

 金曜日
    変化後:《一なる否命/Iname as One》
    変化前1:《生相の否命/Iname, Life Aspect》
    変化前2:《死相の否命/Iname, Death Aspect》

 先にまとめてしまうと、この週はこの変化(変身、合体、いびつ)に関連する言葉が多くて難しかった。以下が関連する語句。

    ・In one of the alternate-reality storylines ~
    ・outcome is depicted on Curiosity, and the twisted, alternate outcome
    ・~ and was reanimated as Balthor the Defiled.
    ・Ertai changed from his original ~
    ・The twisted, evil version of Ertai was ~
    ・That Which Brings Life and That Which Takes Life are combined?

 どう訳したかはブログの記事をご参照のこと。

余談2:月曜日 《呪われたミリー/Mirri the Cursed》

 この時期のカードにしては珍しく「イラストからは飛んでるかどうか分かりづらい」クリーチャー。吸血鬼だから飛んでるということなんだろうな。

 考えてみると、大体の吸血鬼カードもイラストからは飛行かどうか分かりづらい奴らが多いイメージあるので、そういう意味では正統派吸血鬼なのかもしれない。

 ついでなので吸血鬼がテーマ週間だったときの記事も紹介しておく。

 【翻訳】ヴァンパイアに聞いてみよう!/Interview With Some Vampires【Daily MTG】
  著者:Mark Rosewater/2006年02月13日
  http://regiant.diarynote.jp/201103050019455223/

 【翻訳】吸血いっとく?/Care for a Bite?【Daily MTG】
  著者:Mark Rosewater/2009年10月19日
  http://regiant.diarynote.jp/201105011719012769/

 吸血鬼ネタはそれくらいにして訳の話。
原文:
 In one of the alternate-reality storylines hinted at on Planar Chaos cards, ~

拙訳:
 次元の混乱のカードからうかがい知ることのできるもう1つの現実を描いた物語の中の1つに ~

 色々あるんだけど、あえて1つに絞るとしたらやっぱり「the alternate-reality storylines」かな。「もう1つのあり得た世界(歴史)を描いた次元の混乱」をどう表現するか。原文のニュアンスが伝わってればいいんだけど。

余談3:火曜日 《汚らわしき者バルソー/Balthor the Defiled》

 伝説のクリーチャーにつきものの二つ名を冠されているバルソーだけど、汚らわしき者、はちょっとかわいそうだなあ。

 《シルヴォクののけ者、メリーラ》   「のけ者よりはかっこいいよ」
 《塵を飲み込むもの、放粉痢》     「掃除機よりはかっこいいよ」
 《ヨハン》                  「二つ名があるだけいいじゃねぇか」
 《死者の王、ケルゥ》           「ははは、皆さん、ドンマイドンマイ」
 《メリーラ》《放粉痢》《ヨハン》      「「「 お前は関係ないだろ!!! 」」」

 あとカッコいい二つ名と言うと「引き裂かれし永劫」とか「竜英傑」とか「黒き剣の継承者」とか「黎明をもたらす者」とかかな。ダッコンかっこいいよ、ダッコン。
原文:
 Balthor’s second death comes at Kamahl’s hands, who goes on to slay Laquatus himself.

拙訳:
 バルソーの二度目の死はカマールの手によるものだった。その後、カマールは元凶であるラクァタスを殺すべく先へと進んだ。

 難しかったのは末尾の「~ goes on to slay Laquatus himself」。バルソーを殺したその足でラクァタスの元へと向かった、なぜ向かったのかと言えばそのラクァタスを殺すためだ、ということなんだけど、そう書くわけにもいかず。

 「go on to slay」は、成敗しに行ったのか、討伐しに行ったのか、単に殺しに行ったのか。最後の「himself」の表現したいところはなんだったのか。色々迷うところの多い、訳すのが楽しい文だった。

余談4:水曜日 《堕落した者アーテイ/Ertai, the Corrupted》

 アーテイというと堕落する前の《熟達の魔術師アーテイ/Ertai, Wizard Adept》のほうが印象に残ってる。タップ能力が「呪文1つを対象とし、それを打ち消す」というあまりにも問答無用な効果。当時の仲間内の対戦では、1ターン生き延びた瞬間に相手が投了することすらあった。

 もう1つ、アーテイというと印象的なのは、ホビージャパンのホームページで連載されていた高木律先生のMTG漫画「スターライト・マナバーン」。

 その第34回目の後書きでは、その回に登場した各カード1枚1枚についてコメントしてたんだけど、そのときの《熟達の魔術師アーテイ/Ertai, Wizard Adept》のコメントが以下。
 アーテイ
   アーティだと思ってた
   GAMEぎゃざ誌で連載していた頃
   堂々とアーティって書きました!

 分かる。同じくずっとアーティだと思ってた。

 今はもう読めない漫画の話はさておき訳の話。
原文:
 The twisted, evil version of Ertai was eventually destroyed by Squee by accident.

拙訳:
 もう1つの現実における邪悪なアーテイはスクイーによって偶然滅ぼされた。

 冒頭の「Twisted」も大概面倒なんだけど、末尾もこれまた面倒くさい。冗談めかした「By accident」を最後にオチとして持ってくるのは、日本語の語順だとちょっと難しい。

 最後に持って来て「邪悪なアーテイはスクイーによって滅ぼされた。偶然で。」としたほうが原文のノリに近かったかもしれない。ただ自然な日本語かというと、また別の問題で。

 難しい。

余談5:木曜日 《贖われし者、ライズ/Rhys the Redeemed》

 訳の話。
原文:
 Instead, we, the audience, got to see what he would have been like in a society built around mutual support.

拙訳:
 そのかわり読者である我々は、「放浪させられた」彼が、周囲の協力を得ることが出来ていればたどり着くことができたであろう立場を知ることができるわけだ。

 前半部分の日本語訳には分かりやすさのために補足をつけてる。後半部分は、なんというか……訳としては間違ってないかもしれないけど日本語としては正しいかどうか微妙。いや、なんか見なおしてたら訳としても怪しい気がしてきた。

  > he would have been like in a society built around mutual support

 えーと、ちょっと分解してみるか。どこがどこにかかっているか確認。

  > he would have been like
                 [in a society
                          【built around mutual support】
                  ]

 訳してみる。

  > 彼がどのようになっていたか
                 [社会、集団生活
                          【互いに支え合う中で築かれた】
                  ]

 うーん。まあ、当たらずとはいえ遠からずかなあ。意訳しすぎている可能性はあるとして、誤訳とはまた違う問題点かもしれない(※ 個人の感想です)。

余談6:金曜日 《一なる否命/Iname as One》

 合体元の「マナコスト」「能力」「パワー・タフネス」をそのまま足したクリーチャーというと、ミラージュにいた《ヴィーアシヴァン・ドラゴン/Viashivan Dragon》を思い出す……と思ったらちょっと違ってた。

 能力とパワー・タフネスはほぼそのままだったけど、合体前のマナコストが (3)(緑) と (3)(赤) で、合体後が (2)(赤)(赤)(緑)(緑) だった。惜しい。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 週の最初の3日間がキーワード能力込みのカード名だったので、それがテーマかな、と考えていたら、木曜日と金曜日のカード名はキーワード能力となんの関係もないものだった。

 これはまたギブアップかな、と思いながら、なんとなく自分で翻訳した Card of the Day の記事を読み返していたとき、月曜日の翻訳時に自分でつけた注釈が目に入る。
アラーラの断片に登場するキーワード能力は以下の通り。

  ・Devour(貪食)
  ・Unearth(蘇生)
  ・Exalted(賛美)
  ・Cycling(サイクリング)

 ……あっ、もしかしてそういうことか!?

  月曜日:《Unearth》
              = アラーラの断片の Unearth(蘇生)
  火曜日:《Devouring Light》
              = アラーラの断片の Devour(貪食)
  水曜日:《Exalted Angel》
              = アラーラの断片の Exalted(賛美)
  木曜日:《Sarcomite》
              = アラーラの断片の Cycling(サイクリング)
  金曜日:《Pentavus》
              = アラーラの断片 それ自体

 ポイントは木曜日と金曜日。木曜日の《Sacromite》は確かに Cycling という単語は書かれていないが、2マナ支払って捨てることでカードを1枚引くことができる。つまり「場にあるカードをサイクリングする」カードと言える。

 これはこじつけじゃない。Mark Rosewater が書いた サイクリング週間をテーマにした記事の中で「私はウルザズ・デスティニーで、一風変わったサイクリングを生み出した。それはすでに戦場にあるカードをサイクリングする、というものだ」と言及している。

 これに対して、金曜日の《Pentavus》はちょっと自信がない。言いたいのは「アラーラの断片」と「Pentavus」は、どちらも「5つの断片から成っている」ということ。月曜日の記事の内容とそこで示唆しているキーワード能力、火曜日から木曜日のカードの選択。それらを組み合わせることで導き出される結論は……

 ということだと思うんだけど、どうかなあ。

余談2:月曜日 《発掘/Unearth》

 3マナ以下のクリーチャーしか入っていない黒単色のウィニーコモンデッキに入れてた記憶がある。《カーノファージ/Carnophage》や《悪臭のインプ/Foul Imp》といったデメリット持ち高性能小型クリーチャー、《ダウスィーの殺害者/Dauthi Slayer》や《ダウスィーの匪賊/Dauthi Marauder》といったシャドークリーチャー、あと《暗黒の儀式/Dark Ritual》とか土地とかを詰め込んだデッキ。

 意外と楽しかったデッキはさておき訳の話。
原文:
 Someday, someone will ask you "(中略)." This is going to be the card they’re thinking of.

拙訳:
 もしいつか誰かに「(中略)」と聞かれたとしよう。その質問者の想定している解答が今日のカードだ。

 ごらんのとおり、ちょっとニュアンスが変わっている。いや、まあ、ちょっとじゃないかもしれないけど、とにかく変わっている。そのまま訳すなら「いつか、誰かが君に『(中略』と尋ねるだろう。これが彼らの考えているカードになる」という感じか。

 ……問題ないように見えるな。なんで変えたんだっけ。
原文:
 "What is the only card not in Shards of Alara with two of that set’s keywords on it?"

拙訳:
 「アラーラの断片に登場するキーワード能力が2つ含まれているにも関わらず、アラーラの断片に収録されていない唯一のカードは何か」

 この原文を一読しただけで内容を理解できるのは頭がいい人だと思う。

 語順そのままにすると「なんでしょう / 唯一のカードは / 入っていない / アラーラの断片に / 2つ / そのセットのキーワードが / それに記載がある」という感じ。論理パズルみたいになってる。

余談3:火曜日 《貪る光/Devouring Light》

 この記事に出てくるような「公式に和訳されていないキーワード能力」を訳すのは不可能に近いので、直訳ですらないベタ訳(という言葉があるかどうかは知らないけど)。

 速攻で諦めた「Crittercast」に比べるともう少し選択の余地があった(そして迷った)のは「less flavorful name」かな。「フレイバーに欠けている、趣がない、無味乾燥的な、味のない」などの候補から「無味乾燥な」を選択した。

 もっとも原文に近いのは「フレイバーに欠けている」だと思うけど、もっとも「日本語」だなと思ったものを選択してみた。

余談4:水曜日 《賛美されし天使/Exalted Angel》

 2003年01月23日以来、5年ぶり2度目の登場。つまり《賛美されし天使/Exalted Angel》が世に出てからもう10年以上経つということ。ひええ。光陰矢のごとしだ……なんと恐ろしい!
原文:
 Every face-down morph creature could potentially be a lifelinked 4/5 flier attacking on the fourth turn. Scary!

拙訳:
 あらゆる裏向きの変異クリーチャーが、4ターン目に絆魂つきの 4/5 飛行クリーチャーとなって襲い掛かってくる可能性があった……なんと恐ろしい!

 口語で考えるなら「こわっ!」と最後につけるのがもっともそれっぽいんだけど、文章として訳すことを考えると、うん、もうちょっと固くてもいいかな、と考えた次第。でもこの日の前後の記事も「もっと口語寄りのジョークっぽい文章」だったら、最後は「こわっ!」としてた気がする。不思議な話だけどね。

 そう考えると、記事というのは1つ1つの記事がそれ単体で完結することなく、複数の記事が互いに影響しあっていると言えるのかもしれない。まるでメタゲームだ。

余談5:木曜日 《サルコマイトのマイア/Sarcomite》

 このまとめを書いているときに気付いたんだけど、接頭辞は「Sarco-」だ。間違えて「Sacro-」にしてた(修正済み)。おそらく「Sacrifice」が頭にあったんだと思う。よくよく考えてみたら《肉占い/Sarcomancy》なんだから「肉 = Sarco-」だよ。

 もう1つ訳の話。
原文:
 so you’ve got a Myr (magic artificial creature) that’s been made from meat, not metal. Creepy!

拙訳:
 つまり君の手元にいるそのクリーチャーは、金属ではなく肉で作られたマイア(魔法の人工的なクリーチャー)だということだ。ゾッとするね!

 何点かあるので順番に。

 1つ目は文頭の「so you’ve got」。直訳するなら「君が持っているのは、君が手に入れたのは」になるところを、もう少しゲーム寄りにしつつも、カードではなく生き物っぽく扱って「手元にいる」にしてみた次第。

 2つ目は原文にはない(もしくは原文側では省略されている)部分。具体的には「そのクリーチャーは」の箇所で、これは無くても意味が通じる。あったほうが読みやすいかなあ、というのが追加した理由。

  現在:君の手元にいるそのクリーチャーは、金属ではなく肉で作られた ~
  修正:君の手元にいるのは、金属ではなく肉で作られた ~

 3つ目は末尾の「Creepy!」。色々と訳し甲斐のある箇所だと思う。「怖いね!」でも「キモいね!」でも「おどろおどろしいね!」でもなんでもいい。なんでもいいが一番困るのよ!、ってことかもしれない。

余談6:金曜日 《ペンタバス/Pentavus》

 《テトラバス/Tetravus》は飛んでるし、それの生み出すトークンも飛んでる。《ペンタバス/Pentavus》の場合、生み出すトークンは飛んでるけど《ペンタバス/Pentavus》は飛んでない。ちょっと不思議。《ペンタバス/Pentavus》の基部だけなんか違う種族っぽい。

 言語の話。

 テトラは「4」を意味するギリシャ語で、ペンタは「5」を意味するギリシャ語。これらを使った言葉としてよく引き合いに出されるのは「テトラポッド」と「ペンタゴン」。さらに上の「6」を意味するヘクサは、ボードゲーマーには「ヘックス(6角形)」で知られている。

 「じゃあ「7」と「8」は何なの?」
 「セプタとオクタ」
 「ああ、セプタ―ってマジックのカードにあるね」
 「それ関係ない」

 ちなみに英語を知ってる人にこの話をすると大体「9月」と「10月」の英語名称との不整合の話になる。もしくはギリシャ語の数字から覚えた人が「9月」と「10月」の名称で混乱するパターンもある。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 ものすごい久しぶりに「何か隠されたテーマがありそうな Card of Day」に出会えた気がする。今年に入ってからは新セットのキーワード能力やFAQなどが主で、それからしばらくお休みを挟んで、2008年09月の最初は Masters Edition 2 の紹介。

 以下がカード名および記事で取り上げられたキーとなりそうな英単語。

  月曜日:Flash
  火曜日:Grand Melee/Pit/Cleric
  水曜日:Pit Scorpion
  木曜日:Krazy Kow/Krazy Kat
  金曜日:Meddling Kids

 火曜日で Pit という単語が出てきて、水曜日が Pit Scorpion だったので、何かあるかなと思ったけど、うん、関係なさそうだ。

 うーん。記事の内容としては「瞬殺コンボとエラッタ」「カードイラストとクリーチャータイプ(?)」「クリーチャータイプ」「カード名の元ネタ」「カードイラスト」という感じ。見事にバラバラだ。どうしようもないな。

 これで隠されたテーマが「2008年09月当時に流行っていた何か(映画、小説、ゲーム)」だったりすると難易度が跳ね上がるので、考えないことにする。ギブアップ。

余談2:月曜日 《閃光/Flash》

 このカードのエラッタが改訂された瞬間、ハルクフラッシュというすさまじいコンボデッキがその産声を上げた。 Diarynote でも結構な話題となった記憶がある。2ターンキルでむしろ遅い方、現実的なレベルで0ターンキルを可能とする瞬殺コンボは、しかし自身が生みの親に瞬殺されるというオチがついた。

 めでたしめでたし。
原文:
 Originally, Flash was kept in check by the clause that buried the creature if the player couldn’t pay for it.

拙訳:
 元々、《閃光/Flash》は、プレイヤーがコストを支払えない場合はそのクリーチャーを埋葬する、という注意書きによってバランスをとっていた。

 ご推察のとおり、迷ったのは「kept in check by the clause」。「チェックされている」とか「監視の目を光らせる」のように原文に即した訳にする選択肢もあった。

 ただ「マナコストを払わなければ墓地送りになること」によって達成されていることは「監視すること、チェックすること」ではなくて「バランスをとること」だと思われたので意訳。

 ああ、そうそう。もしかしたら今の人からすると「buried the creature を埋葬と訳したのはなんで? 意訳?」と思うかもしれないので蛇足ながら付け加えておくと、その昔、ルール用語に「Bury/埋葬」という言葉があった。これは「~を破壊する。それは再生できない」を指す言葉。

 ルール用語を減らすためか、用途が狭すぎるため不要と判断されたのかは分からないけど、とにかく今ではもうそれ自体が歴史の彼方に埋葬済み。南無。

余談3:火曜日 《大会戦/Grand Melee》

 カード名は「大きな会戦」で「大会戦(だいかいせん)」なんだろうけど、どうしても語頭の「大会(たいかい)」という熟語がまず目に入ってしまうせいで「たいかいせん」というルビが脳内でふられてしまう。

 それにイラストの舞台は「闘技場」であり、戦っているのも「1対1」であることを考えると、個人的には「会戦」よりも「大会」のほうがしっくりくる。いや、実際は多数のアタッカーと多数のブロッカーがぐちゃぐちゃぶつかりあうことをイメージした効果なんだろうけどさ。

 カード名はそれくらいにして訳の話。
原文:
 Thanks to the effects of the spell, the cleric shares the barbarian’s rage.

拙訳:
 どうやら呪文の効果のおかげでこのクレリックもまたバーバリアンの激怒(Rage)を共有できているようだ。

 文章自体が訳しづらいことに加えて、そもそも「Barbarian’s rage」がどれほど知られている言葉なのか、という問題がある。

 ここで言う「Barbarian(バーバリアン)」は、怒りがピークをこえると尋常でない攻撃力を発揮する能力(=Rage)を持つ。どちらかというと日本では「Berserker(バーサーカー)」という名前で知られているイメージに近いかもしれない。

 直接的な元ネタは、同じウィザーズ社が発売している「ダンジョンズアンドドラゴンズ」の第3版以降の職業と特殊能力と思われる(さらにさかのぼるとBerserker(バーサーカー)に行きつくんだろうけど)。

 閑話休題。

 とにかく「Barbarian’s rage」をどう訳すかという問題がまずあった。「バーバリアンの激怒」「バーバリアンの激情」などが候補に挙がって、最終的にはダンジョンズアンドドラゴンズの対訳に従って「激怒」。

 そして文章自体の訳へ。

 正直、かなり訳しづらかった。よく出てくる割には取扱いに困る「Thanks to ~」もそうだし「cleric shares the barbarian’s rage」もそう。「Rage」を「Share」するのが「Thanks to」なことなのか? 皮肉的な表現なんだろうか。

 そもそもクレリックは回復と防御の呪文を操る職業であって、1対1で戦うような職業ではない。それが闘技場に放り込まれたりしたら、おそらくまともに戦えないのではないか、「困る」「とまどう」「おののく」ことになるのではないか。

 ということを考えると、この《大会戦/Grand Melee》の呪文の効果のおかげで、激情にかられて目の前の敵にただただ殴りかかるしかない状態(= Barbarian’s Rage)に陥るのはむしろありがたい話だよね、というのが今回の記事。

 と解釈して訳した次第。どっとはらい。

余談4:水曜日 《地獄の蠍/Pit Scorpion》

 Diarynote で毎日日記を更新されてるストライクさんが無限回収してるカードかと思ったら、そっちは《巨大蠍/Giant Scorpion》だった。ちなみに記事が書かれたのは2008年、《巨大蠍/Giant Scorpion》が収録されているゼンディカーが発売されたのが2009年なので、記事に挙げられている「3匹しかいないサソリ」には含まれていない。

 ミラディンの傷跡で毒カウンターが華々しく復活する前、第4版の頃は「毒」を表現する方法には大きく分けて3つあったように思う。「毒カウンター」と「ダメージ」と「クリーチャー破壊」。

 毒を「ダメージ」で表現していたカードは、例えば《ナフス・アスプ/Nafs Asp》。
Nafs Asp / ナフス・アスプ (緑)
クリーチャー - 蛇(Snake)
ナフス・アスプがプレイヤーにダメージを与えるたび、そのプレイヤーは自分の次のドロー・ステップの開始時に、そのプレイヤーがそのドロー・ステップより前に(1)を支払わないかぎり、1点のライフを失う。
1/1
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Nafs+Asp/

 現在のオラクルではライフロスになっているけど、第4版の頃はダメージだった。むしろエラッタが出たことを知らなかった。そうか、毒が毒を呼んでしまうからか(誘発能力によるダメージそれ自体が「ダメージを与えるたび」の条件を満たしてしまう)。気づかなかった。

 毒を「クリーチャー破壊」で表現していたカードは、例えば《茂みのバジリスク/Thicket Basilisk》や《コカトリス/Cockatrice》。俗にバジリスク能力とも呼ばれていた。
Thicket Basilisk / 茂みのバジリスク (3)(緑)(緑)
クリーチャー - バジリスク(Basilisk)
茂みのバジリスクが壁(Wall)でないクリーチャーをブロックするか、壁でないクリーチャーによってブロックされた状態になるたび、戦闘終了時にそのクリーチャーを破壊する。
2/4
引用元:http://whisper.wisdom-guild.net/card/Thicket+Basilisk/

 バジリスクやコカトリスというフレイバーを考えると、毒というより石化能力というべきかもしれない。それでも、のちに「暗殺者(Assassin)」がこの能力を保有していたりするので、やはり毒という側面はあると思う。

 しかし、そうか、《ナフス・アスプ/Nafs Asp》にエラッタ出てるのか。驚いた。

余談5:木曜日 《Krazy Kow》

 全く知らなかった知識に触れるチャンスを与えてくれるのも Card of the Day の魅力の1つ。「Krazy Kat」は Wikipedia をみるとそこそこ有名な漫画らしい。そもそも日本語版 Wikipedia にこれだけ詳細が書かれる作品も珍しい。

 正直ここ読んでる人でこの作品知ってる人はほぼいないだろうから訳の話。
原文:
 Krazy Kow was originally a reference to Mad Cow Disease, but got changed somewhere along the way due to concerns about sensitivity.

拙訳:
 元々は狂牛病を元ネタにしたカードだったが、最終形になるまでのあいだに変更が入った。おそらくデリケートな問題に配慮してのことだろう。

 原文では1文だったのを2文に分けてみた。

 そもそも英語の「due to concerns about sensitivity」が直訳すると実に日本語にならないのが問題。「Sensitivity を Concern して」の英単語部分をそのまま名詞に置き換えようとすると「感受性に配慮して」や「感度を気遣って」となる。

 言いたいことはそうじゃないだろう、ということで「Sensitivity」を「センシティブな事柄(デリケートな問題)」と捉えることにした。

 さらなる余談。

 狂牛病の懸念から日本赤十字社では今でも「1980~1996年のあいだに通算1ヶ月以上の英国滞在」もしくは「1997~2004年のあいだに通算6ヶ月以上の英国滞在」をした人物からの献血をお断りしている。実はこの条件に当てはまる身のせいで、いまだに献血ができない。

 さらにさらなる余談。対象国問わず、リスク軽減のために海外帰国日(入国日)から4週間以内の人物からの献血はお断りしているらしい。知らなかった。もっとも長いこと献血に出向いていない(出向けない)わけだから条件を知らなくて当然と言えば当然。

  日本赤十字社:献血をご遠慮いただく場合 > 海外旅行者および海外で生活した方
  http://www.jrc.or.jp/donation/about/refrain/detail_10/

余談6:金曜日 《Meddling Kids》

 元ネタである《翻弄する魔道士/Meddling Mage》が 2/2 で《Meddling Kids》が 2/3 。つまり大の大人1人よりも子供3人のほうが強いのか。いや考えてみたらそれもそうだな。小中学生3人に襲われたら勝てない気がする。子供って大人の足を蹴りつけるときに一切の手加減を加えないし。

余談7:誤訳

 紡さんのブログで触れられていたけど、どうやらまた色々と誤訳らしき事例が散見されているらしい。毎回のことだから別に気にもならないし、そもそも(ここの週のまとめを見れば分かる通り)人のことをどうこう言えるわけがない。

 それはそれとして「日本語マジック史上、もっとも印象的だった誤訳は?」と問われれば、それは今なお《ダウスィーの精神ドリッパー/Dauthi Mindripper》がダントツ。

 なぜ訳し間違えたのかがあまりにも明快、なぜカタカナしたのかがとにかく不明、結果として不思議と愛嬌のある響きとなってしまったその名前、など、どれをとっても他の追随を許さない。

 なおこれは印象的だった「誤訳」の話。ぐるぐる。
余談1:今週のCard of the Dayのテーマ

 先週に引き続きマジックオンラインの Masters Edition 2 に収録されたカードたちがテーマだった模様。当時ですら懐かしかったカードたちなので2014年の今となると……いや昔すぎてあまり変わらないな。

 ところで訳しててふと気づいたんだけど、2008年当時の Card of the Day は、まだ紹介するカードのレアリティが記事に表記されてた頃なんだな。

 確かレアリティ表記をとりやめたのは2013年の春先だったかな。もう1年半以上経つのか。なんか懐かしい。当時は Card of the Day が終わってしまうなんて考えもしなかった。

 楽しい時間はいつまでも続くはず、なんて根拠もなく信じていたんだ(落ち着け)

余談2:月曜日 《戦の惨害/Ravages of War》

 三国志は分からないので訳の話。
原文:
 Armageddon was given a Historical Chinese twist to appear in Portal Three Kingdoms.

拙訳:
 《ハルマゲドン/Armageddon》は(中略)中国の歴史に合うよう一ひねり加えられることとなった。ポータル三国志に収録するためだ。

 色々と訳すに困る単語が並んでいるんだけど、それ以前にまず語順をどうするかで迷ったので「given a Historical Chinese twist to appear in」をまず簡易化してみる。

   Armageddon was given a 【A】 to appear in 【B】.

 訳し方としては大きく分けて2通りあると思われた。前者がいわゆる自然な日本語の語順で、後者は英語の語順そのまま。

   Armageddonは【B】に登場させるために【A】を与えられた
   Armageddonは【A】を与えられた。【B】に登場するためだ

 英語の語順では【A】が先にくる。この場合、読者に「なぜ? ……ああ、なるほど」と驚きを提供する語順になる。具体的には「《ハルマゲドン》は中国っぽくなるように、ひとひねり加えられた(読者:なんでだろう?)、ポータル三国志に収録するためだ(読者:そういうことか)」という語順。

 日本語の自然な語順にすると【A】と【B】が逆になり「ポータル三国志に収録するために 中国っぽくなるよう ひとひねり加えた(読者:そういうことか)」となる。

 元の記事を書いた人がそこまで意識したかどうかは分からないけど、せっかくそういう文章を書いていただいたので訳に反映させることにしよう、というわけで英語と同じ語順に訳した次第。

 さて語順が片付いたあとは個々の単語を倒さないといけない。「Historical Chinese twist」は、ぱっと読み流す分には簡単なんだけど、いざ訳そうとすると、どうすればいいか分からなくなる、という難敵。

 こういうときは、いっぱい候補を並べたあと、適当に組み合わせて一番しっくりくる訳を探すという作業になる。そして日本語がゲシュタルト崩壊を起こす。

 <前半:Historical Chinese>
             ・中国の歴史
             ・中国の世界観
             ・中国っぽさ
             ・中国の実際の歴史
             ・中国四千年の歴史

 <後半:twist>
             ・変更
             ・一工夫
             ・ひねり
             ・ひとひねり

 ……という作業工程。

余談3:火曜日 《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》

 アライアンス当時も軽くて強いアーティファクトはいっぱいあったので、このゴリラは頼りになった。特に火力で体力を削りきりたい赤の天敵となる回復手段、《Zuran Orb》や《象牙の塔/Ivory Tower》など。

 アライアンスは《Arcane Denial》や《ゲリラ戦術/Guerrilla Tactics》などコモンに使いやすくて4枚欲しくなるカードが多かったイメージがある。そもそもレアがなかったし、学生に優しいエキスパンションだったかもしれない。

 そんなことより当時のパックを開封しないでおけば今頃札束に化けたのに、というあさましい考えはさておき訳の話。
原文:
 the Gorilla Shaman was best known for feasting on the zero-cost artifacts that tended to fill up Vintage games.

拙訳:
 《ゴリラのシャーマン/Gorilla Shaman》は、ヴィンテージ環境に蔓延していた0マナアーティファクトを好き放題にしていたことでよく知られている。

 いや「feasting on the zero-cost artifacts」って何? えーと「Feast on」で「楽しむ、堪能する」という意味があるのか。なるほど。いや、分からないんだけど。

 このシャーマンからすると0マナアーティファクトは「敵」や「障害」ではなくて、むしろ「楽しみ」や「おもちゃ」であり「お客さん」であり「大歓迎」ってことなのかな……というのをどう訳せばいいんだ、と悩んだ挙句が拙訳。

 これに比べると「tended to fill up」はあまり悩まなかったかな。「ヴィンテージ環境を埋め尽くしていた」はすぐ脳内で却下された。

余談4:水曜日 《Infernal Darkness》

 これ、訳す分には大して悩まないんだけど、意味が分からない。いや、納得できない、というべきかもしれない。とりあえず原文と拙訳を並べてみる。
原文:
 See the tiny mountains in the foreground?
 That’s actually an enormous demon blotting out the sun itself!

拙訳:
 手前にある小さな山脈が見えるかい?
 実はこれ、太陽を隠している馬鹿でかいデーモンなんだ!

 まずはイラストを見てくれ。

   《Infernal Darkness》のイラスト
   http://magiccards.info/ia/en/23.html

 確かにイラストの一番手前に Tiny Mountains がある。そして巨大なデーモンが太陽を隠しているイラストが描かれている。でもその「太陽を隠している巨大なデーモン」と「手前の小さな山々」はどうみても別個の存在。

 何か勘違いしてるのか、何か読み間違えているのか。

余談5:木曜日 《オークの木こり/Orcish Lumberjack》

 原文があって……

    Orcish Lumberjack inspired a number of other "lumberjacks"

 訳の候補がいくつも浮かんで……

   《オークの木こり》から着想を得て生み出された多くの「木こり」
   《オークの木こり》に端を発して多くの「木こり」が生まれた
   《オークの木こり》を元ネタとして多くの「木こり」が生み出された

 最後はノリと勢いで決める。

余談6:金曜日 《白き盾の騎士団/Order of the White Shield》

 原文があって……

    Under the leadership of Lucilde Fiksdotter,
    the Order of the White Shield’s goal was
    to hunt down and kill the nefarious Lim-Dul.

 訳しやすいように順番を変えて……

    the Order of the White Shield’s goal was
    Under the leadership of Lucilde Fiksdotter,
    to hunt down and kill the nefarious Lim-Dul.

 人名の日本語表記(ルシルド・フィクスドッター、リム=ドゥール)を調べたり、直訳よりカッコいい訳(goal = × ゴール、× 目的、○ 使命)を模索したりして完成。

    白き盾の騎士団の使命、
    それはルシルド・フィクスドッターの指揮の元、
    非道なるリム=ドゥールを狩り出して処刑することであった

 比較的スムーズに訳せた中で一番迷ったのは「to hunt down and kill」の箇所かな。「追い詰める」のか「狩り出す」のか、「殺す」のか「処刑する」のか。

 とりあえず騎士団なのでカッコいい方向で。

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